特許第6345783号(P6345783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニヴァーシティ−インダストリー コーオペレイション グループ オブ キュン ヒー ユニヴァーシティの特許一覧

特許6345783麦芽抽出物を含有する成長障害予防または治療用組成物
<>
  • 特許6345783-麦芽抽出物を含有する成長障害予防または治療用組成物 図000003
  • 特許6345783-麦芽抽出物を含有する成長障害予防または治療用組成物 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6345783
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】麦芽抽出物を含有する成長障害予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/8998 20060101AFI20180611BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180611BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20180611BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20180611BHJP
【FI】
   A61K36/8998
   A61P3/00
   A61P5/00
   A61P19/00
   A61P43/00 111
   A61P43/00 171
   A23L33/105
   A23K10/30
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-534216(P2016-534216)
(86)(22)【出願日】2014年11月24日
(65)【公表番号】特表2016-539943(P2016-539943A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】KR2014011323
(87)【国際公開番号】WO2015076631
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2016年7月25日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0143747
(32)【優先日】2013年11月25日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514136462
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ−インダストリー コーオペレイション グループ オブ キュン ヒー ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】キム,ホチョル
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン・ウォグ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ‐ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ドンフン
【審査官】 鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−0715653(KR,B1)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0090514(KR,A)
【文献】 特開2007−084503(JP,A)
【文献】 特開平02−234616(JP,A)
【文献】 特開昭63−119655(JP,A)
【文献】 医薬品開発基礎講座 XI 薬剤製造法(上),株式会社 地人書館,1971年,pp.15-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/8998
A23L 33/105
A61P 3/00
A61P 5/00
A61P 19/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Hordeum vulgareエタノール水溶液抽出物を含有する、成長障害予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記成長障害は、家族性低身長、体質的成長遅延、特発性低身長、骨軟骨異形成症、ダウン症候群またはターナー症候群による低身長、子宮内成長遅延、プラダーウィリー症候群による低身長、ラッセルシルバー症候群による低身長、ヌーナン症候群による低身長、慢性全身性疾患による低身長、成長ホルモン欠乏症による低身長、甲状腺低下症による低身長、思春期早発症による低身長、クッシング症候群による低身長、および精神社会的小人症よりなる疾患から選択されたものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記成長障害の予防または治療は骨長成長促進によるものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
経口投与されるものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
Hordeum vulgareエタノール水溶液抽出物を含有する、成長障害予防または改善用食品組成物。
【請求項6】
健康機能飲料である、請求項5に記載の食品組成物。
【請求項7】
Hordeum vulgareエタノール水溶液抽出物を含有する飼料組成物であって、前記Hordeum vulgareエタノール水溶液抽出物抽出物は動物の骨長成長促進剤として使用される、飼料組成物。
【請求項8】
成長障害予防、改善または治療用薬剤を製造するための請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麦芽抽出物を有効成分として含有する骨長成長促進用組成物に関する。具体的には、本発明は、麦芽抽出物を有効成分として含有する成長障害予防または治療用薬学的組成物、成長障害予防または改善用食品組成物および飼料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
低身長(short stature)とは、同年齢で同じ性別の小児の身長正規分布上で身長が3%(100名中、小さい方から3番目)未満である場合をいう。このような低身長の原因は、病気ではないものの、遺伝的傾向および体質的に背の低い正常変異低身長と、病気によって二次的に生じてくる低身長に区別することができる。
【0003】
前記正常変異低身長はさらに家族性低身長、体質的成長遅延、および特発性低身長に分類することができる。前記家族性低身長は遺伝的に背が低い場合である。体質的成長遅延は、体質的に成長が遅くから現れる場合であって、現在の身長は低いが、思春期の遅くから現れ、成長が遅くまで続いて最終成人身長は正常範囲に達する。また、特発性低身長とは、一般に身長が平均に比べて−2標準偏差スコア未満であるか或いは第3百分位数以下であり、低身長を誘発すべき原因がなく、出生時に正常体重をもって生まれ、四肢と体幹(脊椎)体形が正常であり、十分な栄養を摂取し、精神社会的問題がないうえ、成長ホルモンの分泌が正常な児童の場合を指す(非特許文献1:シンチュンホ、成長ホルモン療法の最新知見、Korean J Ped. Vol. 49. No. 7. 2006)。
【0004】
一方、病気によって二次的に生じてくる低身長は、一次性成長障害(内因性障害)と二次性成長障害(外因性障害)に区分される。前記一次性成長障害としては、骨軟骨異形成症、染色体異常(ダウン症候群またはターナー症候群)による低身長、不当軽量児(子宮内成長遅延)、プラダーウィリー症候群による低身長、ラッセルシルバー症候群による低身長、ヌーナン症候群による低身長などがある。また、前記二次性成長障害としては、栄養不足による低身長、慢性全身性疾患による低身長、成長ホルモン欠乏症による低身長、甲状腺低下症による低身長、思春期早発症による低身長、クッシング症候群による低身長、精神社会的小人症などがある。
【0005】
低身長で病院を訪問する大多数の小児は、正常変異に属する低身長である。外国の研究によれば、低身長を主訴に来院した患者の原因を分析したとき、家族性および体質性低身長80%、成長ホルモン欠乏症10%、甲状腺機能異常4%、慢性腎不全などの慢性疾患3%、染色体異常1%、骨異形成1%、精神的疾患1%などと報告された(成長調節関連機能性評価体系の構築、2003)。
【0006】
低身長の治療に主に使用されている成長ホルモン製剤は、初期には小児における成長ホルモン欠乏症による低身長症にのみ使用されたが、その使用領域が拡大してターナー症候群、慢性腎不全による低身長症、および成人成長ホルモン欠乏症へと拡大した。最近では、FDAによって、不当軽量児やプラダーウィリー(Prader−Willi)症候群、および身長2.25SD以下の特発性低身長症など、身長における追いつき成長が難しそうな小児へと適応が拡大することになった(非特許文献2:イギョンア等、特発性低身長症小児における成長ホルモンの治療効果、2005, 非特許文献3:Raben MS. Treatment of a pituitary dwarf with human growth hormone. 1958)。韓国内では、2009年8月、組み換えヒト成長ホルモンが食品医薬品安全庁から小児の特発性低身長症に対する適応を新たに追加して許可を受けた。
【0007】
特に、特発性低身長症の多くの子供たちは、1〜2年間の成長ホルモンの使用後に身長増加が観察されるが、最終成人身長の増加有無については不明である。これまでの成長ホルモン治療効果に関する発表を総合したCochrane報告によれば、最初の年には成長速度が成長ホルモン未使用の子供に比べて2.86cm程度増加し、平均5.3年間成長ホルモンを使用したところ、最終成人身長が4〜6cm高くなる。最終成人身長の増加効果は、成長ホルモンの用量が高いほど大きく、最終成人身長に到達するまで使用してこそ現れ、低身長症の児童が成長ホルモン治療後に心理的利得を得るのかについても一貫性のある結論はない(非特許文献1:シンチュンホ、成長ホルモン療法の最新知見、Korean J Ped. Vol. 49. No. 7. 2006)。また、特発性低身長症における成長ホルモンの投与は、倫理的に病気のない子供に治療薬剤を使用することであり、高用量を使用しなければならず、一般人への成長ホルモンの使用が非常に高価なので、最終成人身長を2.5cm高くするために35,000ドルがかかるという問題点がある。治療期間が長くなるほど成長効果が低下して用量をさらに上げなければならず、成長ホルモンの使用を中断すると、一時的に成長速度がさらに減少し、個人によって治療効果が非常に異なるが、誰がよく反応するのかを予測することが可能な指標はない。高用量の成長ホルモンを長期間使用する場合に今後発生する可能性のある問題に対する長期の観察結果がない状態で成長ホルモンの使用を決定することは容易ではない(非特許文献1:シンチュンホ、成長ホルモン療法の最新知見、Korean J Ped. Vol. 49. No. 7. 2006)。
【0008】
一方、従来の成長ホルモン注射剤は、週6〜7回、毎晩寝る前に家庭で皮下注射によって投与するようになっている。毎日注射を打たれる成長期の子供は肉体的苦痛と心理的負担感を抱えることになり、子供に注射を打つ保護者の立場でも厄介さと心理的負担感が少なくない。また、旅行や長期外出の際に注射の冷蔵保管及び運搬が難しく、家族のほか、他人の視線を避けて注射を打つ心理的負担感などがある(非特許文献4:カンヘヨン等、小児成長ホルモン欠乏症の治療に使用される成長ホルモン徐放型注射剤の経済性評価、2009)。現在、毎日注射剤を投与している患児の保護者を対象にアンケート調査をした結果、毎日注射投与時の患児の生活の質の加重値又は効用値は、平均0.584(0〜100点スケールで応答したものを0〜1点スケールに換算した値)であって、正常な健康状態の生活の質(100点)の58.4%水準であることが分かった。週1回の注射剤に切り替える場合、予想される生活の質は、平均0.784であって、正常な健康状態の生活の質の78.4%水準であることが分かった(非特許文献4:カンヘヨン等、小児成長ホルモン欠乏症の治療に使用される成長ホルモン徐放型注射剤の経済性評価、2009)。一般に、成長ホルモンを投与される児童の3%は薬物の副作用を経験することが知られている。関節痛や筋肉痛などが起こることがあるが、大人よりは頻度が低く、注射部位に脂肪萎縮が起こることがあり、一時的に女性化乳房が生じることがある。また、甲状腺ホルモンを含むホルモンと代謝物質の変化が発生することがあるため、3〜6ヶ月の間隔で甲状腺機能検査を実施し、不当軽量児の一部では顔の非対称がより深化することもある。頭蓋腔内圧の上昇は小児からよく観察され、特にターナー症候群、慢性腎不全および器質性成長ホルモン欠乏症の患者からよく観察されるが、成長ホルモンの使用を中断すれば好転し、後で成長ホルモンを再び使用した場合は、一部では再発することがある(非特許文献1:シンチュンホ、成長ホルモン療法の最新知見、Korean J Ped. Vol. 49. No. 7. 2006)。
【0009】
欧州医薬品庁(EMA)および米国FDAは、フランスで発表された「小児期に「ソマトロピン製剤」を投与した患者を対象にした長期疫学研究」の結果に基づいて、小児期成長不全治療剤「ソマトロピン製剤」の死亡率増加リスクに対する検討を開始した。フランス全域にわたって同製剤を投与された約7,000人の青年層を分析した結果、一般人(フランス全体人口集団)に比べて「ソマトロピン製剤」を投与した患者の死亡率が約30%高く、死亡率リスクは許可用量以上の過量を投与するときに増加した(食品医薬品安全庁、2010)。
【0010】
2009年の韓国内の年齢別人口分布によると、成長治療を受ける時期である5〜14歳の人口は約600万人で、このうち低身長症に該当する数は全体の3%に相当する約180,000人であり、2009年基準の保険対象者は20%程度に相当する36,000人であるが、健康保険審査評価院によると、低身長に関連し、健康保険の支援を受けて成長ホルモン処方を受けた全体人員は2009年を基準に1万2012人であって、保険対象者である低身長症患者のうち、約24,000人、約66.6%が低身長症治療を受けていない。低身長症患者の多くが治療を受けられないのは、保険の適用を受けて成長ホルモン治療をしたとしても、1年に250〜300万ウォンの費用が発生し、低身長症の約80%を占める特発性低身長症は保険の適用を受けられず、1年に1,000〜1,500万ウォンに達する高コストが経済的な負担になることがあり、また、毎日注射を打たれるべき子供の肉体的苦痛、心理的負担感などに起因すると推定される。
【0011】
成長ホルモン治療は、成長効果だけ見れば、医学的研究において他の方法に比べて優れた成長効果を示すことが立証されたが、コストや利便性などの様々な要素が複合されるため、満足度は29.1%にしかならないことが分かった(非特許文献5:ホギョン、バクミジョン、大学病院の成長クリニックを来院した児童からのアンケート調査による身長成長管理実態分析、Korean Journal of Pediatrics Vol.52, No.5, 2009)。低身長症治療剤の経口用製品に対する世界的な潜在市場規模が50億ドル以上(ハンオル製薬、企業説明会、2009年)と予測されるほどに、市場のニーズが大きい。
【0012】
一方、東洋文化圏の下で疾病治療および健康増進を目的に漢方薬は非常に好まれており、成長クリニックを訪れた子供の親を対象に調査を行った結果、子供の身長を高くするために漢方医院で成長促進漢方薬を服用する場合が、成長ホルモン治療を受ける場合の13倍に達するほどに、漢方薬製剤への接近性が成長ホルモンに比べて非常に高い。2006年から2007年までに韓国のサンゲベック病院成長クリニックを訪問した児童823人(男児416人、女児407人)の親を対象に調査を行った結果、子供の身長を高くするために人為的な管理をした場合は全体の33.4%であり、この中でも漢方医院で成長促進漢方薬を服用した場合は37.8%と最も多く、身長を育てるに役立つサプリメントを食べた場合は37.1%であり、運動器具療法を行った場合は3.0%、成長ホルモン治療を受けた場合は2.9%であった(非特許文献5:ホギョン、バクミジョン、大学病院の成長クリニックを来院した児童からのアンケート調査による身長成長管理実態分析、Korean Journal of Pediatrics Vol.52, No.5, 2009)。漢方の臨床で使われる処方の多くは、成長モデルに対する有効性が明らかにされていない状態であり、これによる薬物動態学および薬力学的指標が足りない。臨床で常用される漢方薬について、まず、実験動物レベルで成長モデルに対する有効性を解明して現代科学的に証明し、効能の高いものは開発する必要がある。成長クリニックを訪問した児童823人の親を対象に調査を行った結果、成長治療後の満足度は、成長ホルモン療法が29.1%と最も高く、運動器具は6.6%、漢方薬は6.2%であり、成長サプリメントは2.8%と最も低かった。成長ホルモン注射剤の場合、他の方法に比べては最も満足度が高く、成長効果だけ見れば、医学的研究において他の方法に比べて優れた成長効果を示すことが立証されたが、コストや利便性などの様々な要素が複合されて満足度は29.1%にしかならないことが分かった(非特許文献5:ホギョン、バクミジョン、大学病院の成長クリニックを来院した児童からのアンケート調査による身長成長管理実態分析、Korean Journal of Pediatrics Vol.52, No.5, 2009)。
【0013】
したがって、経口投与が可能で低身長症治療効果に優れる、副作用がない天然物由来の製剤の開発が求められている。
【0014】
麦芽は、イネ科の大麦(Hordeum vulgare L.)の芽を出させて乾燥させた後、軽く炒め作った薬材である。麦芽酵素であるアミラーゼが生成され、麦もやしと呼ばれてビール醸造の原料として使用されることもある。漢方医学では、脾胃虚弱による消化器疾患、消化不良および乳汁分泌不足などの治療に使用された。
【0015】
本発明者らは、天然物由来の低身長症治療剤の候補物質を研究中に、麦芽抽出物を低濃度(30mg/kg)で経口投与する場合、成長ホルモンよりも優れた骨長成長効果を示すことを見出し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】非特許文献1:シンチュンホ、成長ホルモン療法の最新知見、Korean J Ped. Vol. 49. No. 7. 2006
【非特許文献2】イギョンア等、特発性低身長症小児における成長ホルモンの治療効果、2005
【非特許文献3】Raben MS. Treatment of a pituitary dwarf with human growth hormone. 1958
【非特許文献4】カンヘヨン等、小児成長ホルモン欠乏症の治療に使用される成長ホルモン徐放型注射剤の経済性評価、2009
【非特許文献5】ホギョン、バクミジョン、大学病院の成長クリニックを来院した児童からのアンケート調査による身長成長管理実態分析、Korean Journal of Pediatrics Vol.52, No.5, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、麦芽抽出物を有効成分として含有する成長障害予防または治療用薬学組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、麦芽抽出物を有効成分として含有する成長障害予防または改善用食品組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の別の目的は、麦芽抽出物を有効成分として含有する飼料組成物を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、成長障害治療のための薬剤の製剤における使用のための麦芽抽出物の用途を提供することにある。
【0021】
本発明の別の目的は、麦芽抽出物を有効成分として含有する組成物を投与することにより、成長障害を予防または治療する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の目的を達成するために、本発明は、麦芽抽出物を有効成分として含有する薬学的組成物、食品組成物および飼料組成物を提供する。以下、これらのそれぞれについて詳細に考察する。
【0023】
薬学的組成物
本発明は、麦芽抽出物を有効成分として含有する成長障害予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0024】
前記麦芽抽出物は、水、アルコールまたはこれらの混合溶媒から抽出することができる。前記アルコールは、C1〜C4の低級アルコールを使用することが好ましく、メタノールまたはエタノールを使用することがさらに好ましい。抽出方法は、振とう抽出、ソックスレー(Soxhlet)抽出または還流抽出方法を利用することができるが、これに限定されない。抽出温度は、40〜100℃であることが好ましく、60〜80℃であることがさらに好ましい。また、抽出時間は2〜24時間であることが好ましく、抽出回数は1〜5回であることが好ましい。
【0025】
前記麦芽抽出物を含有する本発明の薬学的組成物は、表1、図1及び図2から確認されたように、骨長成長効果が既存の治療剤たる成長ホルモンよりも優れており、これにより成長障害予防または治療用として使用できる。
【0026】
特に、本発明の薬学的組成物は、経口投与(p.o)するにも拘らず、低濃度(30mg/kg)で有意な効果を示しているので、麦芽抽出物を高用量で含有しなければならない製剤学的負担が減少するため、経口用治療剤として使用できる。
【0027】
また、本発明の薬学的組成物は、生薬成分を有効成分として含んでいるので、既存の成長ホルモン製剤から発生する副作用なしに前記成長障害を効果的に予防または治療することができる。
【0028】
一方、前記成長障害は正常変異低身長症、または疾病によって二次的に生じてくる低身長症でありうる。前記正常変異低身長症は家族性低身長、体質的成長遅延または狭義の特発性低身長でありうる。また、疾病によって二次的に生じてくる低身長症は一次性成長障害(内因性障害)または二次性成長障害(外因性成長障害)である。前記一次性成長障害としては、骨軟骨異形成症、染色体異常(ダウン症候群またはターナー症候群)による低身長、不当軽量児(子宮内成長遅延)、プラダーウィリー症候群による低身長、ラッセルシルバー症候群による低身長、およびヌーナン症候群による低身長があり、前記二次性成長障害としては、慢性全身性疾患による低身長、成長ホルモン欠乏症による低身長、甲状腺低下症による低身長、思春期早発症による低身長、クッシング症候群による低身長、および精神社会的小人症がある。
【0029】
本発明の麦芽抽出物は、本発明の薬学的組成物の総重量に対して0.1〜50重量%で含むことが好ましい。ところが、前記含有量は、必ずしもこれに限定されるものではなく、患者の状態と疾患の種類および進行程度に応じて変化できる。
【0030】
本発明の薬学的組成物において、前記麦芽抽出物は、成人基準1日約1mg〜1gの用量で単回乃至数回投与が可能であり、好ましくは10mg〜150mg、さらに好ましくは20mg〜50mgの用量で単回乃至数回投与が可能である。しかし、麦芽抽出物の投与量は、患者の重症度、年齢、性別、体重などの患者の状態と薬物の剤形、投与経路及び投与期間に応じて適切に調節できる。
【0031】
また、本発明の薬学的組成物は、毒性や副作用がないため、長期間服用時にも安心して使用することができる。
【0032】
本発明の薬学的組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で薬学的に許容される希釈剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、pH調節剤、酸化防止剤、溶解補助剤などの添加剤を含むことができる。
【0033】
希釈剤は、砂糖、デンプン、微結晶セルロース、乳糖(乳糖水和物)、グルコース、D−マンニトール、アルギン酸塩、アルカリ土類金属塩、粘土、ポリエチレングリコール、無水リン酸水素カルシウム、またはこれらの混合物などを使用することができる。
【0034】
結合剤は、デンプン、微結晶セルロース、高分散性シリカ、マンニトール、D−マンニトール、ショ糖、乳糖水和物、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ポリビニルピロリドン共重合体(コポビドン)、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、天然ガム、合成ガム、コポビドン、ゼラチン、またはこれらの混合物などを使用することができる。
【0035】
崩壊剤は、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプンまたは前糊化澱粉などの澱粉または変性澱粉;ベントナイト、モンモリロナイト、またはビーガム(veegum)などの粘土;微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなどのセルロース類;アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸などのアルギン類;クロスカルメロース(croscarmellose)ナトリウムなどの架橋セルロース類;グアーガム、キサンタンガムなどのガム類;架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)などの架橋重合体;重炭酸ナトリウム、クエン酸などの沸騰性製剤、またはそれらの混合物を使用することができる。
【0036】
前記潤滑剤は、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水素化植物油、安息香酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、コロイド性二酸化ケイ素またはこれらの混合物などを使用することができる。
【0037】
前記pH調節剤は、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エーテル酸ナトリウム、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸などの酸性化剤と、沈降炭酸カルシウム、アンモニア水、メグルミン、炭酸ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、三塩基リン酸カルシウムなどの塩基性化剤などを使用することができる。
【0038】
前記酸化防止剤は、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムなどを使用することができる。 溶解補助剤はラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ドキュセートナトリウム、ポロキサマー(poloxamer)などを使用することができる。
【0039】
本発明の薬学的組成物は、経口投与のために錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などの固形製剤に製剤化できる。このような固形製剤は、前記麦芽抽出物と少なくとも一つの賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて製造できる。また、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も一緒に使用できる。また、前記薬学的組成物は、経口のための懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などの液状製剤に製剤化でき、水、流動パラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを用いて液状製剤に製剤化できる。
【0040】
また、本発明の薬学的組成物は、非経口投与のための製剤化のために、滅菌した水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれ得る。
【0041】
非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用できる。
【0042】
本発明において、用語「投与」は、いずれかの適切な方法で患者に本発明の薬学的組成物を導入することを意味し、本発明の薬学的組成物の投与経路は、目的組織に到達することができる限り、いかなる一般的な経路を通じても投与できる。経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与、腔内投与、腹腔内投与、硬膜内投与が採用できるが、これに限定されない。例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳室内(intracerebroventricular)注射によって投与できる。
【0043】
また、本発明に係る薬学的組成物は、成長障害治療効果を持つ他の活性成分をさらに含むことができる。
【0044】
本発明に係る薬学的組成物は、成長障害を予防または治療するために単独で、またはホルモン療法、薬物療法などの様々な方法と併用して使用できる。
【0045】
食品組成物
本発明は、麦芽抽出物を有効成分として含有する成長障害予防または改善用食品組成物を提供する。
【0046】
前記麦芽抽出物は、薬学的組成物の場合と同様にして調製することができる。
【0047】
本発明に係る前記食品組成物は、麦芽抽出物をそのまま添加し、或いは他の食品組成物、健康機能食品または飲料に通常的に添加剤などをさらに含むことができる。
【0048】
例えば、本発明の食品組成物は、白糖、結晶果糖、ブドウ糖、D−ソルビトール、マンニトール、イソマルトオリゴ糖、ステビオサイド、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなどの甘味剤、無水クエン酸、DL−リンゴ酸、コハク酸およびその塩などの酸味剤、安息香酸及びその誘導体などの保存剤、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。また、本発明の食品組成物は、天然果物ジュースおよび野菜飲料を製造するための果肉を含有することができる。このような添加剤の割合は、本発明の食品組成物100重量部当たり約20重量部以下の範囲で使用できる。
【0049】
本発明の食品組成物が飲料である場合、飲料に通常含まれる香味剤または天然炭水化物をさらに含むことができる。前記天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖などの単糖類、マルトース、スクロースなどの二糖類、デキストリン、シクロデキストリンなどの多糖類、またはキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールでありうる。また、前記香味剤としては、ソーマチン、ステビア抽出物(レバウジオシドA、グリシルリジンなど)の天然香味剤、またはサッカリン、アスパルテームなどの合成香味剤でありうる。前記食品組成物が飲料である場合、天然炭水化物は、組成物100mL当たり、一般的には約1〜20g、好ましくは約5〜12g含有できる。
【0050】
本発明の前記食品組成物は、粉末、顆粒、錠剤、カプセルまたは飲料の形で製造され、食品、飲料、ガム、お茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類として使用できる。
【0051】
また、本発明の前記食品組成物は、成長障害を予防または改善するための薬剤、食品及び飲料などに添加できる。例えば、本発明の食品組成物は、食品、飲料、ガム、お茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などに添加できる。
【0052】
本発明の前記食品組成物は、成長障害の予防または改善のために食品または飲料に添加できる。本発明の組成物は、食品の全体重量に対して1〜5重量%で添加でき、飲料100mLに0.02g〜10g、好ましくは0.3g〜1gの割合で添加できる。
【0053】
飼料組成物
本発明は、麦芽抽出物を有効成分として含有する飼料組成物を提供する。前記麦芽抽出物は、薬学的組成物の場合と同様にして調製することができる。
【0054】
本発明の麦芽抽出物は、骨長成長効果を示すため、動物の成長促進剤として飼料組成物に含有できる。
【0055】
具体的に、本発明に係る麦芽抽出物を有効成分として含む飼料は、当業界における公知の様々な形態の飼料に製造可能であり、好ましくは、濃厚飼料、粗飼料および/または特殊飼料である。
【0056】
濃厚飼料としては、小麦、オート麦、トウモロコシなどの穀類を含む種実類、穀物を精製して得る副産物として米糠、ふすま、大麦糠などを含む糠類、豆、アブラナ、ゴマ、亜麻仁、ココヤシなどを採油して得る副産物である油粕類、およびサツマイモ、ジャガイモなどから澱粉を取り出した残りである澱粉残渣の主成分たる残存澱粉質類などの残渣類、魚粉、魚かす、魚類から得た新鮮な液状物を濃縮させたものであるフィッシュソリュブル(fish soluble)、肉粉、血粉、羽毛粉、脱脂粉乳、乳からチーズ、スキムミルクからカゼインを製造するときの残液であるホエイ(whey)を乾燥させた乾燥ホエイなどの動物性飼料、酵母、クロレラ、海藻類などがある。
【0057】
粗飼料としては、野草、牧草、青刈りなどの生草飼料、飼料用カブ、飼料用ビート、カブの一種であるルタバガなどの根菜類、生草、青刈作物、穀実などをサイロに入れて乳酸発酵させた貯蔵飼料であるサイレージ(silage)、野草、牧草を刈り取って乾燥させた乾草、種畜用作物のわら、マメ科植物の葉などがある。
【0058】
特殊飼料としては、カキ殻、岩塩などのミネラル飼料、尿素またはその誘導体であるジウレイドイソブタンなどの尿素飼料、天然飼料の原料のみを配合したときに不足しがちな成分を補充し或いは飼料の貯蔵性を高めるために配合飼料に微量で添加する物質である飼料添加物、栄養補助食品などがある。
【0059】
本発明に係る飼料組成物は様々な飼料添加剤を含むことができる。
【0060】
本発明において、用語「飼料添加物」とは、栄養素の補充や体重減量の予防、飼料内フィブリンの消化利用性の増進、油質改善、繁殖障害の予防、受胎率の向上、夏季高温ストレスの予防など、様々な効果を目的として飼料に添加する物質をいう。本発明の飼料添加剤は、飼料管理法上の補助飼料に該当し、炭酸水素ナトリウム(重曹)、ベントナイト(bentonite)、酸化マグネシウム、複合鉱物質などの鉱物質製剤、亜鉛、銅、コバルト、セレンなどの微量鉱物質であるミネラル製剤、ケロチン、ビタミンE、ビタミンA、D、E、ニコチン酸、ビタミンB複合体などのビタミン剤、メチオニン、リジンなどの保護アミノ酸剤、脂肪酸カルシウム塩などの保護脂肪酸剤、生菌剤(乳酸菌製)、酵母培養物、カビ発酵物などの生菌、酵母剤などをさらに含むことができる。
【0061】
本発明に係る飼料組成物は、骨長成長を目的とする個体であれば特に限定されず、いずれのものでも適用可能である。前記個体は、動物、例えば、非−霊長類(例えば、牛、豚、馬、猫、犬、ラットおよびマウス)および霊長類(例えば、サル、例えばカニクイザル(cynomolgous)およびチンパンジー)をはじめとする哺乳動物を示す。別の実施形態において、前記個体は、畜産用動物(例えば、馬、牛、豚など)またはペット(例えば、犬または猫)である。
【0062】
本発明に係る飼料組成物の投与量は、動物の種(species)、サイズ(size)、重量(weight)、年齢(age)などの多数の要因に左右される。原則として、典型的な服用量は動物/日あたり0.001〜10gの範囲でありうる。但し、これに限定されない。
【0063】
成長障害の予防、改善または治療方法
また、本発明は、上述した薬学的組成物、食品組成物または飼料組成物を、これを必要とする対象体に投与する段階を含む、成長障害予防、改善または治療方法を提供する。また、本発明において、前記対象体は哺乳類、特にヒトを含む。
【0064】
本発明において、前記成長障害は、正常変異低身長症、または疾病によって二次的に生じてくる低身長症である。前記正常変異低身長症は家族性低身長、体質的成長遅延、狭義の特発性低身長でありうる。また、疾病によって二次的に生じてくる低身長症は、一次性成長障害(内因性障害)または二次性成長障害(外因性成長障害)である。前記一次性成長障害としては、骨軟骨異形成症、染色体異常(ダウン症候群またはターナー症候群)による低身長、不当軽量児(子宮内成長遅延)、プラダーウィリー症候群による低身長、ラッセルシルバー症候群による低身長、およびヌーナン症候群による低身長があり、前記二次性成長障害としては、慢性全身性疾患による低身長、成長ホルモン欠乏症による低身長、甲状腺低下症による低身長、思春期早発症による低身長、クッシング症候群による低身長、および精神社会的小人症がある。
【発明の効果】
【0065】
本発明に係る麦芽抽出物は、低濃度で経口投与(p.o.)するにも拘らず、既存の治療剤である成長ホルモンよりも著しく優れた骨長成長効果を示す。よって、本発明の薬学的組成物および食品組成物は成長障害を効果的に予防、改善または治療し、本発明の飼料組成物は動物の骨長成長促進効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】ラットにおけるテトラサイクリン注射の後、沈着した後肢脛骨の骨端部成長板に沈着して発生する発光を蛍光顕微鏡で撮影した写真である。
図2】ラットにおける骨長成長度合いを示すグラフである。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例及び実験例を提示する。しかし、これらの実施例および実験例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0068】
<実施例1>麦芽(H. vulgare)抽出物の製造
麦芽は、ヤクスダンから購入して慶熙大学校漢方医科大学本草学教室の検証を受けた後で使用した。麦芽抽出物を製造するために、まず、麦芽100gに70%エタノール1Lを添加した後、80℃で3時間還流抽出し、濾紙によって濾過を行った。前記抽出液を減圧濃縮した後、凍結乾燥させて13.47g(収率13.5%)を製造した。
【0069】
<実験例1>麦芽抽出物の骨長成長効果の確認−テトラサイクリン染色法
<1−1>実験動物の準備
実験動物として100g内外の4週齢のSD系(sprague−dawly、サムタコ、韓国)雌ラットを購入して飼料と水を十分に供給しながら、実験環境に適応するようにした。1週間程度の適応期間を与えた後、動物実験を行った。
【0070】
<1−2>骨長成長効果の確認
全実験群で投与を開始して2日後、テトラサイクリン(塩酸テトラサイクリン、Sigma T7660)20m/kgを腹腔注射した。投与2日後にラットを頚椎脱臼して犠死させ、左右脛骨(tibia)を分離し、4℃で3日間固定液に固定(fixation)させた後、50mM EDTAに1日間放置して脱灰し、凍結に対する保護のために、30%スクロース(sucrose)に一晩浸しておいた。前述の方法で脱水された骨組織を凍結した後、切断機(sliding microtome;HM440E、Zeiss、ドイツ)を用いて40μmずつ切断することにより、脛骨(tibia)近位部(proximal part)の矢状切片(sagital section)を収集した。骨成長測定のために、40μmで収集された脛骨近位部の矢状切片をスライドガラス上にそれぞれ載置し、乾燥させた後、蛍光顕微鏡を用いて波長400nmの紫外線の下で撮影した(図1参照)。イメージ分析プログラムであるImageJ(NIH、米国)を用いて成長板と骨組織内テトラサイクリンの沈着により形成された蛍光バンド間の長さを測定し、成長効果の判定のために、対照群と比較するStudent’s t−testとANOVA testを使用した。
【0071】
<1−3>麦芽抽出物の投与
実施例1で製造された麦芽抽出物を30mg/kgの濃度でラットの体重100g当たり1.0mLの体積で2次蒸留水に溶かして投与した。これに対し、対照群は、同じ体積の2次蒸留水を投与した。麦芽抽出物は、テトラサイクルリン投与2日前から実験終了日までの4日間、1日2回経口投与した。
【0072】
<1−4>陽性対照群の投与
陽性対照群は、組み換えヒト成長ホルモンが骨成長を増加させるという報告に基づいて(Isgaard J, Nilsson A, Lindahl A, Jansson JO, およびIs aksson OG:Effects of local administration of GH and IGF−1 on longitudinal bone growth in rats. Am J Physiol 250:E367−72., 1986)、組み換え成長ホルモン(recombinant human growth hormone、rhGH;LG Lifescience、Eutropin(登録商標))20μg/kgをラットの体重100g当たり0.1mLの体積で投与した。陽性対照群はテトラサイクルリン投与2日前から実験終了日までの4日間、1日1回皮下注射し、他の群は蒸留水を皮下注射した。
【0073】
<1−5>麦芽抽出物の骨長成長効果の確認
テトラサイクルリン染色法で骨長成長を直接測定した結果、陽性対照群で360.1±35.8μm/日(n=5)であって、正常対照群337.8±30.0μm/日(n=6)に比べて6.6%高い骨長成長率を示したが、有意ではなかった。
【0074】
麦芽30mg/kg(p.o.)投与群は、394.5±41.38μm/日(n=6)の骨長成長率を示すことにより、正常対照群に比べて有意に骨成長効果が現れることを確認した(16.8%、p<0.001)(図2参照)。したがって、麦芽抽出物を投与したとき、骨長成長効能が著しく上昇したことを示すことを確認した。
【0075】
前記実験結果は、下記表1のとおりである。
【0076】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る麦芽抽出物を有効成分として含む組成物は、成長障害を予防、改善または治療することができる。
図1
図2