特許第6345787号(P6345787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6345787抗ANG2抗体とCD40アゴニストとの併用療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6345787
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】抗ANG2抗体とCD40アゴニストとの併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20180611BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 15/02 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 5/18 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 5/06 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 5/10 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20180611BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20180611BHJP
   C07K 16/22 20060101ALN20180611BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20180611BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20180611BHJP
【FI】
   A61K39/395 D
   A61K39/395 E
   A61K39/395 N
   A61K39/395 T
   A61P43/00 121
   A61P35/00
   A61K45/00
   A61P11/00
   A61P19/08
   A61P1/18
   A61P17/00
   A61P25/00
   A61P15/00
   A61P1/04
   A61P15/02
   A61P5/00
   A61P5/14
   A61P5/18
   A61P5/06
   A61P5/10
   A61P35/02
   A61P13/08
   A61P13/10
   A61P13/12
   A61P13/02
   A61P1/16
   A61P13/00
   A61P37/04
   !C07K16/46ZNA
   !C07K16/22
   !C07K16/28
   !C12N15/00 A
【請求項の数】18
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-541193(P2016-541193)
(86)(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公表番号】特表2017-504600(P2017-504600A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】EP2014078233
(87)【国際公開番号】WO2015091655
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年8月17日
(31)【優先権主張番号】13198753.9
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】14158331.0
(32)【優先日】2014年3月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ツィッペリウス, アルフレート
【審査官】 伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−526848(JP,A)
【文献】 特表2012−504943(JP,A)
【文献】 特表2005−508176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/22
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を含む医薬であって、CD40アゴニストとの組み合わせで、a)がんを治療するはがんの進行を遅らせる、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長する、又はc)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激する、又はd)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にするの医薬であり、
抗ANG−2抗体及びCD40アゴニストが、同時に、別々に又は連続的に投与される、医薬
【請求項2】
ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体及びCD40アゴニストを含む、a)がんを治療する又はがんの進行を遅らせるための、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長するための、又はc)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激するための、又はd)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にするための医薬であって、
抗ANG−2抗体及びCD40アゴニストが、同時に、別々に又は連続的に投与される医薬。
【請求項3】
)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせる、b)がんに罹患した患者の生存期間を延長するの請求項1又は2に記載の医薬
【請求項4】
抗ANG2抗体がヒト抗体であるか又はヒト化抗体である、請求項1〜3の何れか一項に記載の医薬
【請求項5】
抗ANG2抗体が、表面プラズモン共鳴よって決定される場合、1.0x10−8mol/l未満のK値でヒトANG2に特異的に結合する、請求項1からの何れか一項に記載の医薬
【請求項6】
抗ANG2抗体がIgG抗体である、請求項1からの何れか一項に記載の医薬
【請求項7】
抗ANG2抗体が、TIE2受容体とのヒトANG−2の相互作用を15nM以下のIC50で阻害する、請求項1からの何れか一項に記載の医薬
【請求項8】
CD40アゴニストが、アゴニスト性CD40抗体又はアゴニスト性CD40Lポリペプチドである、請求項1からの何れか一項に記載の医薬
【請求項9】
CD40アゴニストが、アゴニスト性CD40抗体である、請求項1からの何れか一項に記載の医薬
【請求項10】
i)抗ANG2抗体が
(a)配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;又は
(b)配列番号3の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号4の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;
を含み、及び
i)アゴニスト性CD40抗体が
(a)配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;又は
(b)配列番号7の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号8の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;
を含む、請求項に記載の医薬
【請求項11】
i)抗ANG2抗体が
配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;
i)アゴニスト性CD40抗体は
(a)配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、請求項に記載の医薬
【請求項12】
抗ANG2抗体が、ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体である、請求項9から11の何れか一項に記載の医薬
【請求項13】
i)ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体が
配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;及び
配列番号9の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;
及び
ii)アゴニスト性CD40抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む
請求項12に記載の医薬
【請求項14】
i)ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体が
配列番号11の、配列番号12の、配列番号13の、及び配列番号14のアミノ酸配列を含み;及び
ii)アゴニスト性CD40抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む
請求項12に記載の医薬
【請求項15】
がんが、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞性細胞肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部又は頸部のがん、皮膚又は眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん胃がん、結腸がん、乳がん卵管の癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣の癌、外陰部の癌、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓又は尿管のがん、腎細胞癌、腎盂癌、中皮腫、肝細胞がん、胆管がん、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、多形性膠芽腫、星状細胞腫、シュワン腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫、リンパ腫又はリンパ性白血病である、請求項1から14の何れか一項に記載の医薬
【請求項16】
がんが固形腫瘍を含む、請求項15に記載の医薬
【請求項17】
CD40アゴニストとの組み合わせで、a)がんを治療する又はがんの進行を遅らせるための、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長するための、又はc)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激するための、又はd)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にするための医薬の製造における、ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体の使用であって、
抗体及びCD40アゴニストが、同時に、別々に又は連続的に投与される使用。
【請求項18】
a)がんを治療する又はがんの進行を遅らせるための、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長するための、又はc)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激するための、又はd)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にするための医薬の製造における、ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体及びCD40アゴニストの使用であって、
抗体及びCD40アゴニストが、同時に、別々に又は連続的に投与される使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体のCD40アゴニストとの併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生及び血管リモデリングに重要な役割を果たすアンジオポエチンは、増殖する腫瘍の血管新生促進装備一式の一部である。重要なことに、それらは抗VEGF療法の間の二次耐性を導く大きな要因の一つである(Saharinen, P., et al., Trends Mol Med 17 (2011) 347-362)。アンジオポエチン−1(Ang1)及びアンジオポエチン−2(Ang2)は、Tie2受容体リガンドである。Ang1は血管を安定化し成熟させる傾向があるが(Yancopoulos, G. D., et al., Nature 407 (2000) 242-248)、Ang2は血管を不安定化することによって、腫瘍の血管形成及び増殖を促進する。従って、Ang2はその機能においてAng1と対向する(Cascone, T. et al, J Clin Oncol 30 (2012) 441-444)。この考え方に従うと、Ang1でなくAng2を遮断すると腫瘍血管を正常化し(Falcon, B. L., H. Hashizume, et al., Am J Pathol 175 (2009) 2159-2170)、抗VEGF療法に対する獲得耐性を克服するのに役立つことが観察されている(Chae, S. S., W. S. Kamoun, et al., Clin Cancer Res 16 (2010) 3618-3627; Thomas, M., et al. PLoS One 8 (2013) e54923)。
【0003】
免疫調節抗体は、治療アプローチを提供し、抗腫瘍免疫応答を直接増強するために、又は抗がんワクチンのためのアジュバントとして使用されるかも知れない(Melero, I., et al. Nat Rev Cancer 7 (2007) 95-106)。アゴニスト抗CD40抗体は、これらの試薬の中で最も効果的なクラスの一つを構成する。CD40は、樹状細胞、B細胞及びマクロファージなどの抗原提示細胞(APC)上に発現する腫瘍壊死因子の細胞表面メンバーである。抗CD40アゴニストを使用した前臨床研究は、抗原提示細胞(APC)上の抗体を架橋したCD40を動作させると、通常はCD40リガンドを介して提供されるCD4 T細胞の助けの代わりとなり、CD8エフェクターT細胞の活性化並びに増殖を促進することができることを示唆している(Li, F. et al, Science 333 (2011) 1030-1034)。更に、CD40活性化マクロファージはまた、直接的な殺腫瘍機能を発揮することができる(Beatty, G. L., et al. Science 331 (2011) 1612-1616); Vonderheide, R. H., et al. Oncoimmunology 2 (2013) e23033)。
【0004】
免疫抑制性腫瘍微小環境は、抗腫瘍免疫及び免疫療法アプローチのための主な障害をもたらす(Beatty, G. L., et al. Science 331 (2011) 1612-1616)。
【0005】
発明の要旨
本発明者は、抗ANG2抗体がCD40アゴニストの有効性を増強させ又は腫瘍の進行を遅延させ、又はがん、例えば固形腫瘍に罹患した患者の生存期間を延ばすことを見いだしてきた。進行の遅延、生存期間の延長並びに投与量の減少による副作用のリスクの低下は患者にとって大きなメリットを表している。
【0006】
驚くべきことに、CD40アゴニストと組み合わせた抗ANG2抗体による腫瘍の治療は、腫瘍の進行までの時間及び生存の時間に対して強い相乗効果を示した(一方、CD40アゴニストと組み合わせた抗VEGF抗体の組み合わせはわずかな効果を示すのみであった)。
【0007】
本発明の一態様は、ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体であり、抗体は、a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせることに使用のため、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長することに使用のため、又はc)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激することに使用のため、又はd)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にすることに使用のため、CD40アゴニストと組み合わせて投与される。
【0008】
本発明の一態様は、CD40アゴニストであり、CD40アゴニストは、a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせることに使用のため、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長することに使用のため、又はc)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激することに使用のため、又はd)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にすることに使用のため、ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体と組み合わせて投与される。
【0009】
一態様において、本発明は、a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせるため、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長するため、又はc)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激するため、又はd)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にするための方法を提供し、該方法は、抗ANG2抗体の有効量、及び及びCD40アゴニストの有効量をそれを必要とする患者へ投与する工程を含む。
【0010】
別の態様において、本発明は、がんの治療のための医薬の製造における抗ANG2抗体の使用を提供し、ここで該抗体はCD40アゴニストとの投与のためのものである。
【0011】
本発明の別の態様は、
a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせることに使用のため、又は
b)がんに罹患した患者の生存期間を延長することに使用のため、又は
c)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激することに使用のため、又は
d)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にすることに使用のための、
医薬の製造におけるヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体であり;
ここで抗体はCD40アゴニストと組み合わせて投与される。
【0012】
本発明の別の態様は、
a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせることに使用のため、又は
b)がんに罹患した患者の生存期間を延長することに使用のため、又は
c)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激することに使用のため、又は
d)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にすることに使用のための、
医薬の製造におけるCD40アゴニストであり;
ここでCD40アゴニストは、ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体とともに投与される。
【0013】
本発明の別の態様は、a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせることに使用のため、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長することに使用のため、又はc)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激することに使用のため、又はd)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にすることに使用のため、CD40アゴニストと組み合わせて投与される、ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体である。
【0014】
本発明の別の態様は、
a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせることに使用のため、又は
b)がんに罹患した患者の生存期間を延長することに使用のため、又は
c)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激することに使用のため、又は
d)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にすることに使用のための、
医薬の製造においてCD40アゴニストと組み合わせたヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体である。
【0015】
一態様において、本発明は、a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせるため、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長するため、又はc)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激するため、又はd)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にするための方法を提供し、該方法は、抗ANG2抗体の有効量、及び及びCD40アゴニストの有効量をそれを必要とする患者へ投与する工程を含む。
【0016】
本発明の別の態様は、a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせるため、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長するため、又はc)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激するため、又はd)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にするための、ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体及び組み合わせて使用のためのCD40アゴニストである。
【0017】
本発明の別の態様は、
a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせため、又は
b)がんに罹患した患者の生存期間を延長するため、又は
c)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激するため、又は
d)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にするための、
医薬の製造において使用のためのヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体及びCD40アゴニストである。
【0018】
本発明の別の態様は、
a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせため、又は
b)がんに罹患した患者の生存期間を延長するため、又は
c)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激するため、又は
d)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にするための、
医薬の製造において組み合わせたヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体及びCD40アゴニストの使用である。
【0019】
一実施態様において、抗ANG2抗体はヒト又はヒト化抗体である。
【0020】
好ましくは、抗ANG2抗体は、表面プラズモン共鳴(BiacoreTM)によって決定される場合、1.0x10−8mol/l未満のK値でヒトANG2に特異的に結合する。
【0021】
抗ANG2抗体は、好ましくはIgG抗体であり、より好ましくは、抗ANG2抗体は、ヒトIgG1又はIgG4サブクラスである。
【0022】
好ましい一実施態様において、抗ANG2抗体は、TIE2受容体とのヒトANG−2の相互作用を15nM以下のIC50で阻害する。
【0023】
一実施態様において、CD40アゴニストは、アゴニスト性CD40抗体又はアゴニスト性CD40Lポリペプチドである。
【0024】
好ましい一実施態様において、CD40アゴニストは、アゴニスト性CD40抗体である。
【0025】
一実施態様において、
i)抗ANG2抗体は
(a)配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;又は
(b)配列番号3の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号4の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;
を含み、及び
(ii)アゴニスト性CD40抗体は
(a)配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;又は
(b)配列番号7の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号8の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;
を含む。
【0026】
好ましい一実施態様において、
i)抗ANG2抗体は
配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;又は
及び
(ii)アゴニスト性CD40抗体は
配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む。
【0027】
好ましい一実施態様において、抗ANG2抗体は、ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体である。
【0028】
好ましい一実施態様において、
i)ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体は
配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;及び
配列番号9の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;
及び
(ii)アゴニスト性CD40抗体は
配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む。
【0029】
好ましい一実施態様において、
i)ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体は
配列番号11の、配列番号12の、配列番号13の、及び配列番号14のアミノ酸配列を含み;及び
(ii)アゴニスト性CD40抗体は
配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む。
【0030】
好ましい一実施態様において、がんは固形腫瘍を含む。
【0031】
好ましい一実施態様において、がんは、結腸直腸がん、卵巣がん、神経膠芽腫、胃がん、膵臓がん、乳がん、肺がん、肝細胞がんである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】アゴニスト性CD40抗体と組み合わせた抗ANG2抗体(及び抗ANG2+抗VEGF抗体(=抗VEGF/ANG2))のインビボ抗腫瘍効果(がんの進行(腫瘍増殖)の遅延及び治療された患者の生存期間の延長)−グラフは、3つの独立した実験からプールされたデータを表す。マウスは、図に示される抗体の組み合わせを用いて治療された。
図2】皮下同系MC38結腸癌モデルにおけるアゴニスト性CD40抗体と組み合わせた抗ANG2抗体(二重特異性)のインビボ抗腫瘍効果。2A:対照(黒四角)と比較したアゴニスト性CD40抗体単剤療法(白丸)の腫瘍増殖阻害。2B:対照(黒四角)と比較した二重特異性ANG2/VEGF抗体単剤療法(白丸)の腫瘍増殖阻害。2C:対照(黒四角)と比較したアゴニスト性CD40抗体及び二重特異性ANG2/VEGF抗体の組み合わせ(白丸)の腫瘍増殖阻害。
図3】雌のBalb/cマウスにおける同系CT26WTモデルにおけるアゴニスト性CD40抗体と組み合わせた抗ANG2抗体(二重特異性)のインビボ抗腫瘍効果。
【0033】
発明の詳細な記述
本発明は、患者におけるがんの治療方法で使用するための抗ANG2抗体に関し、該方法は、被験体へ抗ANG2抗体及びCD40アゴニストを投与することを含み、本発明者らは、薬剤のこの組み合わせは、治療された患者の癌の進行(腫瘍増殖)の遅延及び生存期間の延長をもたらすことを本明細書において実証する。
【0034】
ヒトアンジオポエチン−2(ANG−2)(あるいはANGPT2又はANG2と略す)(配列番号15)は、Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60及びCheung, A.H., et al, Genomics 48 (1998) 389-91に記載されている。アンジオポエチン−1及び−2(ANG−1(配列番号108)及びANG−2(配列番号107)は、血管内皮細胞内で選択的に発現されるチロシンキナーゼのファミリーであるTieのリガンドとして発見された。Yancopoulos, G.D., et al., Nature 407 (2000) 242-48。いまやアンジオポエチンファミリーの4つの確定したメンバーがある。アンジオポエチン−3及び−4(Ang−3及びAng−4)は、マウス及びヒトにおける同じ遺伝子座の広く分岐したカウンターパートを表すことができる。Kim, I., et al., FEBS Let, 443 (1999) 353-56; Kim, I., et al., J Biol Chem 274 (1999)26523-28。ANG−1及びANG−2はそれぞれアゴニスト及びアンタゴニストとして組織培養実験において元々同定された(ANG−1について: Davies, S., et al., Cell, 87 (1996) 1161-1169;及びANG−2について: Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60を参照)。既知の全てのアンジオポエチンは主にTie2に結合し、Ang−1及び−2の両方とも3nMの親和性(Kd)でTie2に結合する。Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60。Ang−1はECの生存を支持し、内皮の完全性を促進することが示され、Davis, S., et al., Cell, 87 (1996) 1161-1169;Kwak, H.J., et al., FEBS Lett 448 (1999) 249-53; Suri, C., et al., Science 282 (1998) 468-71; Thurston, G., et al., Science 286 (1999) 2511-14; Thurston, G., et al., Nat. Med. 6 (2000) 460-63、ANG−2は逆の効果を有しており、生存因子VEGF又は塩基性線維芽細胞増殖因子の非存在下で血管の不安定化及び体縮を促進した。Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60。しかしながら、ANG−2機能の多くの研究は、より複雑な状況を示唆している。ANG−2は、血管出芽及び血管退行の両方において役割を果たしている血管リモデリングの複雑な調節因子である可能性がある。ANG−2のそのような役割を支持し、発現解析では、血管新生発芽の成人の設定において、VEGFと共に、ANG−2が急速に誘導されるが、一方ANG−2は、血管退行の設定においてVEGFの非存在下で誘導されることを明らかにしている。Holash, J., et al., Science 284 (1999) 1994-98; Holash, J., et al., Oncogene 18 (1999) 5356-62。文脈依存の役割と一致し、ANG−2は、同じ内皮特異的受容体であって、Ang−1によって活性化されるが、その活性化に対する文脈依存効果を有するTie−2に特異的に結合する。Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60。
【0035】
用語「ヒトANG2」は、ヒトタンパク質アンジオポエチン2(配列番号15)を指す。本明細書で使用されるように、「ヒトANG2への結合」若しくは「ヒトANG2への特異的結合」又は「ヒトANG2に結合する」若しくは「抗ANG2抗体」とは、ヒトANG2抗原に対して、KD値が1.0x10−8mol/l以下、一実施態様においてKD値が1.0x10−9mol/l以下の結合親和性で特異的に結合する抗体を指す。結合親和性は、表面プラズモン共鳴技術(BIAcore(登録商標),GE−Healthcare Uppsala,Sweden)などの標準的な結合アッセイを用いて決定される。本明細書で使用される「ヒトCSF−1Rに結合する抗体」は、ヒトCSF−1R抗原に対して、KD 1.0x10−8mol/l以下(一実施態様において1.0x10−8mol/l − 1.0x10−13mol/l))の結合親和性で、一実施態様においてKD 1.0x10−9mol/l以下(好ましくは、1.0x10−9mol/l − 1.0x10−13mol/l)の結合親和性で、特異的に結合する抗体を指す。
【0036】
典型的には、本明細書中に記載される治療のために有用であるヒトANG2に結合する抗体は、例えば、WO2010/069532(例えば、好ましくは抗ANG2抗体<ANG−2>Ang2i_LC06、<ANG−2>Ang2i_LC07、又は<ANG−2>Ang2i_LC10);WO2011/014469(例えば、好ましくは抗ANG2抗体H1H685P);US2011/150895(例えば、抗ANG2抗体SAIT−Ang−2−5、SAIT−Ang−2−6又はそのヒト化バージョン);WO2009/097325(例えば、MEDI1(WO2009/097325の配列番号3)のVL及び(MEDI5)(WO2009/097325の配列番号7)のVHにより特徴づけられる抗体MEDI1/5);WO2009/105269;WO2006/068953又はWO03/030833に開示され及び詳細に記載される。
【0037】
好ましい一実施態様において、本明細書に記載される治療のために有用であるヒトANG2に結合する抗体は、
(a)配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;又は
(b)配列番号3の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号4の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列
を含むことを特徴とする。
【0038】
好ましい一実施態様において、抗ANG2抗体は、ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体である。
【0039】
典型的には、本明細書に記載される治療のために有用である、ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体は、例えば、WO2010/040508、WO2011/117329又はWO2012/131078に開示され及び詳細に記載される。また、WO2010/069532;WO2011/014469;US2011/150895;WO2009/097325;WO2009/105269;WO2006/068953又はWO03/030833に記載されるANG2抗体のVH及びVLは、WO2010/040508、WO2011/117329又はWO2012/131078に記載される抗VEGF結合アーム及び構造を使用する二重特異性抗体内部で使用することができる。
【0040】
好ましい一実施態様において、
ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体は
配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;及び
配列番号9の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む。
【0041】
好ましい一実施態様において、
i)ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体は
配列番号11の、配列番号12の、配列番号13の、及び配列番号14のアミノ酸配列を含む。
【0042】
CD40抗原は、腫瘍壊死因子受容体(TNF−R)ファミリーに属する50kDaの細胞表面糖タンパク質である。(Stamenkovic et al., EMBO J. 8:1403-10 (1989))。CD40は、Bリンパ球、樹状細胞、単球、マクロファージ、胸腺上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、及び平滑筋細胞を含む多くの正常及び腫瘍細胞型において発現される。(Paulie S. et al., Cancer Immunol. Immunother. 20:23-8 (1985); Banchereau J. et al., Adv. Exp. Med. & Biol. 378:79-83 (1995); Alderson M. R. et al., J. of Exp. Med. 178:669-74 (1993); Ruggiero G. et al., J. of Immunol. 156:3737-46 (1996); Hollenbaugh D. et al., J. of Exp. Med. 182:33-40 (1995); Yellin M. J. et al., J. of Leukocyte Biol. 58:209-16 (1995);及びLazaar A. L. et al., J. of Immunol. 161:3120-7 (1998))。CD40は、全てのBリンパ腫及び全ての固形腫瘍の70%において発現される。恒常的に発現するが、CD40は、LPS、IL−1β、IFN−γ及びGM−CSFなどの成熟シグナルによって抗原提示細胞において上方制御される。
【0043】
CD40活性化は、体液性及び細胞性免疫応答の調節に重要な役割を果たしている。CD40の活性化を伴わない抗原提示は、耐性につながる可能性があるが、一方、CD40シグナル伝達は、かかる耐性を元に戻し、全ての抗原提示細胞(APC)による抗原提示を増強し、ヘルパーサイトカイン及びケモカインの分泌を引き起こし、共刺激分子の発現及びシグナル伝達を増加させ、免疫細胞の細胞溶解活性を刺激することができる。CD40は、B細胞増殖、成熟及びクラスイッチングに重要な役割を果たしている。(Foy T. M. et al., Ann. Rev. of Immunol. 14:591-617 (1996))。CD40シグナル伝達経路の破壊は、異常な血清免疫グロブリンアイソタイプ分布、CD4+ T細胞プライミングの欠如、二次体液性応答の欠損をもたらす。例えば、X連鎖高IgM症候群は、ヒトCD40L遺伝子の突然変異に関連する疾患であり、患者がIgMアイソタイプのもの以外の抗体を産生することのできないことを特徴とし、CD40及びCD40Lの間の生産的な相互作用が効果的な免疫応答のために必要であることを示唆している。
【0044】
CD40LによるCD40の係合は、TRAF(TNF−R関連因子)とのCD40細胞質ドメインの会合をもたらす。(Lee H. H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:1421-6 (1999); Pullen S. S. et al., Biochemistry 37:11836-45 (1998); Grammar A. C. et al., J. of Immunol. 161:1183-93 (1998); Ishida T. K. et al., Proc. Acad Acad. Sci. USA 93:9437-42 (1996); Pullen S. S. et al., J. of Biol. Chem. 274:14246-54 (1999))。TRAPとの相互作用は、NFカッパB及びJun/AP1経路の両方の活性化に至ることができる。(Tsukamoto N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:1234-9 (1999); Sutherland C. L. et al., J. of Immunol. 162:4720-30 (1999))。細胞型に応じて、このシグナル伝達は、IL−6(Jeppson J. D. et al., J. of Immunol. 161:1738-42 (1998); Uejima Y. et al., Int. Arch. of Allergy & Immunol. 110:225-32, (1996), IL-8 (Gruss H. J. et al., Blood 84:2305-14 (1994); von Leoprechting A. et al., Cancer Res. 59:1287-94 (1999); Denfeld R. W. et al., Europ. J. of Immunol. 26:2329-34 (1996)), IL-12 (Cella M. et al., J. of Exp. Med. 184:747-52 (1996); Ferlin W. G. et al., Europ. J. of Immunol. 28:525-31 (1998); Armant M. et al., Europ. J. of Immunol. 26:1430-4 (1996); Koch F. et al., J. of Exp. Med. 184:741-6 (1996); Seguin R. and L. H. Kasper, J. of Infect. Diseases 179:467-74 (1999); Chaussabel D. et al., Infection & Immunity 67:1929-34 (1999)), IL-15 (Kuniyoshi J. S. et al., Cellular Immunol. 193:48-58 (1999)) などのサイトカイン及びケモカイン(MIP1alpha、MIP1beta、RANTES、その他)(McDyer J. F. et al., J. of Immunol. 162:3711-7 (1999); Schaniel C. et al., J. of Exp. Med. 188:451-63 (1998); Altenburg A. et al., J. of Immunol. 162:4140-7 (1999); Deckers J. G. et al., J. of the Am. Society of Nephrology 9:1187-93 (1998))の分泌の増強、MHC クラスI及びII(Santos-Argumedo L. et al., Cellular Immunol. 156:272-85 (1994))の発現の増加、及び接着分子(例えば、ICAM)(Lee H. H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 96:1421-6 (1999); Grousson J. et al., Archives of Dermatol. Res. 290:325-30 (1998); Katada Y. et al., Europ. J. of Immunol. 26:192-200 (1996); Mayumi M. et al., J. of Allergy & Clin. Immunol. 96:1136-44 (1995); Flores-Romo L. et al., Immunol. 79:445-51 (1993)) 及び共刺激分子(例えば、B7)(Roy M. et al., Europ. J. of Immunol. 25:596-603 (1995); Jones K. W. and C. J. Hackett, Cellular Immunol. 174:42-53 (1996); Caux C. et al., Journal of Exp. Med. 180:1263-72 (1994); Kiener P. A. et al., J. of Immunol. 155:4917-25 (1995))の発現の増加をもたらす。CD40の係合により誘発されるサイトカインは、T細胞の生存及び活性化を増強する。
【0045】
細胞及び免疫機能の強化に加えて、CD40活性化の効果は、ケモカイン及びサイトカインによる細胞の動員及び分化;単球の活性化;細胞溶解性Tリンパ球(CTL)及びナチュラルキラー(NK)細胞の細胞溶解活性の増加;CD40陽性腫瘍におけるアポトーシスの誘導;CD40陽性腫瘍の免疫原性の増強;及び腫瘍特異的抗体の産生を含む。細胞媒介性免疫応答におけるCD40活性化の役割もまた良く確立されており、それは、 Grewal et al., Ann. Rev. of Immunol. 16:111-35 (1998); Mackey et al., J. of Leukocyte Biol. 63:418-28 (1998);及びNoelle R. J., Agents & Actions -- Suppl. 49:17-22 (1998)において概説される。
【0046】
交差提示モデル系を用いた研究は、APCのCD40活性化は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の生成のためのヘルパーT細胞の必要性に取って代わることができることを示した。(Bennett et al., Nature 393:478-480 (1998))。CD40L欠損マウスからの証拠は、ヘルパーT細胞プライミングにおけるCD40シグナル伝達のための明確な必要性を示している。(Grewal I. S. et al., Science 273:1864-7 (1996); Grewal I. S. et al., Nature 378:617-20 (1995))。CD40の活性化は、他の免疫寛容原性、抗原を有するB細胞をコンピテントなAPCに変換する。(Buhlmann J. E. et al., Immunity 2:645-53 (1995))。CD40の活性化は、臍帯血前駆細胞の樹状細胞への成熟及び分化を誘導する。(Flores-Romo L. et al., J. of Exp. Med. 185:341-9 (1997); Mackey M. F. et al., J. of Immunol. 161:2094-8 (1998))。CD40の活性化はまた、機能的樹状細胞への単球の分化を誘導する。(Brossart P. et al., Blood 92:4238-47 (1998))。更に、CD40の活性化は、APC−CD40誘導性サイトカインを介してNK細胞の細胞溶解活性を増強する(Carbone E. et al., J. of Exp. Med. 185:2053-60 (1997); Martin-Fontecha A. et al., J. of Immunol. 162:5910-6 (1999))。これらの観察は、CD40は、APCの成熟、ヘルパーサイトカインの分泌、共刺激分子の上方制御、及びエフェクター機能の増強を誘導することによって、免疫応答の開始及び増強に必須の役割を果たしていることを示している。
【0047】
体液性及び細胞傷害性免疫応答の開始及び成熟におけるCD40シグナル伝達の重要な役割は、このシステムを免疫促進のための理想的な標的としている。かかる増強は、一般的に、活性化APCの交差提示を介して免疫系に提示される腫瘍抗原に対する有効な免疫応答を備え付けるために特に重要であり得る。(Huang A. Y. et al., Ciba Foundation Symp. 187:229-44 (1994); Toes R. E. M. et al., Seminars in Immunol. 10:443-8 (1998); Albert M. L. et al., Nature 392:86-9 (1998); Bennett S. R. et al., J. of Exp. Med. 186:65-70 (1997))。
【0048】
幾つかのグループは、インビトロ及びインビボでの抗腫瘍応答に対するCD40活性化の有効性を実証している。(Toes R. E. M. et al., Seminars in Immunol. 10:443-8 (1998))。2つのグループが、ウイルスにより形質転換された細胞による腎細胞癌及び皮下腫瘍の肺転移モデルを使用して、腫瘍特異的抗原に対する耐性を元にもどすことができ、CD40の活性化がT細胞の効率的な抗腫瘍プライミングをもたらすことを独立に実証した。(Sotomayor E. M. et al., Nature Medicine 5:780-787 (1999); Diehl L. et al., Nature Medicine 5:774-9 (1999))。免疫細胞の非存在下での抗腫瘍活性は、SCIDマウスにおけるヒト乳がん系統モデルにおけるCD40L及び抗CD40抗体治療によって報告された。(Hirano A. et al., Blood 93:2999-3007 (1999))。抗CD40抗体によるCD40の活性化は、最近、マウスモデルにおいて、CD40+及びCD40−リンパ腫を根絶することが示された。(French R. R. et al., Nature Medicine 5:548-53 (1999))。更に、Glennie及び共同研究者による以前の研究は、抗CD40抗体によるシグナル伝達活性がエフェクターを漸加することが可能な他の抗表面マーカー抗体よりもインビボ腫瘍クリアランスを誘導するためにより効果的であると結論している。(Tutt A. L. et al., J. of Immunol. 161:3176-85 (1998))。これらの観察と一致して、抗CD40抗体は、インビボでCD40+腫瘍細胞に対する活性について試験されたときに、全てではないが大部分の殺腫瘍活性はADCCよりもむしろCD40のシグナル伝達と関連していた。(Funakoshi S. et al., J. of Immunotherapy with Emphasis on Tumor Immunol. 19:93-101 (1996))。別の研究では、骨髄樹状細胞は、様々な薬剤を用いてエクスビボで処置され、インビボでの抗腫瘍活性について試験された。これらの研究は、CD40Lで刺激されたDCは、抗腫瘍応答を備え付ける最も成熟し、最も有効な細胞であることを実証した。
【0049】
抗腫瘍免疫はまた、腫瘍ワクチンに対する野生型及びCD40−/−マウスの応答を比較することによって実証されている。これらの研究は、CD40−/−マウスは、正常マウスにおいて観察された腫瘍免疫を達成することができないことを示している。(Mackey M. F. et al., Cancer Research 57:2569-74 (1997))。別の研究では、腫瘍を有するマウスからの脾細胞は、腫瘍細胞により刺激され、エクスビボで抗CD40抗体を活性化して処置され、増強された腫瘍特異的CTL活性を有することが示された。(Donepudi M. et al., Cancer Immunol. Immunother. 48:153-164 (1999))。これらの研究は、CD40が、CD40陽性及び陰性腫瘍の両方において、抗腫瘍免疫において重要な位置を占めることを示している。CD40は、リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、鼻咽頭、膀胱、卵巣、及び肝臓の癌の大部分、及び一部の乳癌及び結腸直腸癌で発現されるため、CD40の活性化は、広範囲の臨床適用を有することができる。
【0050】
本明細書で使用される「CD40アゴニスト」は、CD40/CD40L相互作用を刺激する任意の部分を含む。この文脈において使用されるCD40は、好ましくはヒトCD40を指し、従って、CD40アゴニストは、好ましくは、ヒトCD40のアゴニストである。典型的には、これらの部分は、アゴニスト性CD40抗体又はアゴニストCD40Lポリペプチドとなるであろう。これらの抗体は、一例として、CD40/CD40L結合相互作用を特異的に刺激する、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体のscFv、及び抗体断片を含む。好ましい一実施態様において、アゴニスト性CD40抗体は、キメラ、完全ヒト又はヒト化CD40抗体を含むであろう。好ましい別の実施態様において、アゴニスト性CD40抗体は、キメラ、完全ヒト又はヒト化CD40抗体を含む。
【0051】
「アゴニスト」は、細胞上の受容体と結合し、受容体の天然リガンドによって開始されたものと類似であるか又は同じである反応又は活性を開始する。「CD40アゴニスト」は、限定されないが、以下の応答の何れか又は全てを誘導する:B細胞の増殖及び/又は分化;ICAM−1、E−セレクチン、VC AMなどの分子を介した細胞間接着の上方制御;IL−1、IL−6、IL−8、IL−12、TNFなどの炎症促進性サイトカインの分泌;TRAF(例えば、TRAF2及び/又はTRAF3)、NIK(NF−κB誘導キナーゼ)、IカッパBキナーゼ(IKK/.beta.)などのMAPキナーゼ、転写因子NF−κB、Rasなどの経路及びMEK/ERK経路、PI3K AKT経路、P38のMAPK経路等によるCD40受容体を介したシグナル伝達;XIAP、mcl−1、bcl−xなどの分子による抗アポトーシスシグナルの伝達;B及び/又はT細胞記憶生成;B細胞の抗体産生;B細胞アイソタイプスイッチイング、MHCクラスII及びCD80/86などの細胞表面発現の上方制御。
【0052】
アゴニスト活性は、B細胞応答のアッセイにおいて測定される場合、陰性対照によって誘導されるアゴニスト活性よりも少なくとも30%、10 35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%,又は100%大きいアゴニスト活性を意図している。
【0053】
好ましい一実施態様において、CD40アゴニストは、B細胞応答のアッセイにおいて測定される場合、陰性対照によって誘導されるアゴニスト活性よりも少なくとも2倍大きい又は少なくとも3倍大きいアゴニスト活性を有する。
【0054】
従って、目的のB細胞応答がB細胞増殖である場合、アゴニスト活性は陰性対照によって誘導されるB細胞増殖のレベルよりも少なくとも2倍大きい又は少なくとも3倍大きいB細胞増殖のレベルの誘導であろう。
【0055】
一実施態様において、CD40に結合しない抗体は、陰性対照としての役割を果たす。「有意なアゴニスト活性を有しない」物質は、B細胞応答のアッセイにおいて測定される場合、陰性対照によって誘導されるアゴニスト活性よりも最大で約25%大きい、好ましくは最大で約20%大きい、15%大きい、10%大きい、5%大きい、1%大きい、0.5%大きい、又は実に約0.1%大きいアゴニスト活性を示すであろう。
【0056】
「アゴニスト性CD40抗体」又は「活性化CD40抗体」又は「アゴニスト性若しくは活性化抗CD40抗体」は、本明細書において使用される場合、ヒトCD40に結合し、かつ、CD40を発現する細胞、組織又は生物に添加されると、一以上のCD40活性を少なくとも約20%増加させる抗体を意味する。幾つかの実施態様において、抗体は、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、85%、CD40活性を活性化する。
【0057】
幾つかの実施態様において、活性化抗体は、CD40Lの存在下で添加される。
【0058】
好ましい別の実施態様において、アゴニスト性CD40抗体のアゴニスト活性は以下のように測定される。
【0059】
抗CD40抗体による細胞株Jyの免疫原性の増加
CD40陽性のJIYOYE細胞(ATCC CCL87)(「Jy細胞」)が培養され、RPMI培地中で維持された。JIYOYE細胞は、完全RPMI培地中で本発明の抗CD40抗体(21.4.1)又はアイソタイプ対応抗体(抗KLH)とともに24時間インキュベートされた。次いで、細胞を洗浄し、25ミリグラムのマイトマイシンC(Sigma)/7mLの培地で60分間処理された。次いでこれらの細胞は37℃で6日間単離されたヒトT細胞と共に1:100の比でインキュベートされた。(5%のCO)。T細胞を、その後、回収し、洗浄し、CTL活性のレベルが、新鮮なクロム51(New England Nuclear,Boston,Mass.)標識したJIYOYE細胞に対して決定された。特異的CTL活性は、特異的細胞溶解の%=(細胞溶解Jy(cpm)−自発的細胞溶解(cpm))/(総細胞溶解(cpm)−自発的細胞溶解(cpm))として計算された。
【0060】
好ましい一実施態様において、本明細書中で使用されるアゴニスト性CD40抗体は、(上記の)インビトロのJIYOYE細胞(ATCC CCL87)アッセイにおいて測定される場合、少なくとも50%、CD40陽性JIYOYE細胞(ATCC CCL87)において免疫原性を増加させた。
【0061】
アゴニスト性CD40抗体はまた、本明細書において抗CD40活性化抗体と命名され、幾つかの重要な機構を介して腫瘍根絶に寄与することができる。これらの中で最も重要なのは、増強された腫瘍抗原のプロセシング及び提示、並びに腫瘍特異的CD4+及びCD8+リンパ球の活性化をもたらす、CD40陽性腫瘍細胞それら自身の増強された抗原提示又は免疫原性のための宿主樹状細胞の活性化である。更なる抗腫瘍活性は、CD40シグナル伝達の他の免疫増強効果(ケモカイン及びサイトカインの生産、単球の動員及び活性化、及び増強されたCTL及びNK細胞溶解活性)、並びにアポトーシスの誘導による又はADCCをもたらす体液性応答を刺激することによるCD40+腫瘍の直接的な死滅によって媒介され得る。アポトーシス細胞及び瀕死の腫瘍細胞は、プロセスされ、CD40で活性化したAPCによって提示される腫瘍特異的抗原の重要な源になることができる。
【0062】
本発明は、ヒトCD40に結合し、CD40のアゴニストとして作用する単離された抗体又はその抗原結合部分を記載する。
【0063】
アゴニスト性CD40抗体は、例えば、Beatty et al., Science 331 (2011) 1612-1616, R. H. Vonderheide et al., J Clin Oncol 25, 876 (2007); Khalil, M, et al., Update Cancer Ther. 2007 June 1; 2(2): 61-65に記載され、モデル抗体としてのアゴニストCD40ラット抗マウスIgG2a mAb FGK45は、S. P. Schoenberger, et al, Nature 393, 480 (1998)に記載され;マウス交差反応性アゴニスト性CD40抗体クローン1C10は、Santos-Argumedo L. et al., Cell Immunol. 156 (1994) 272-285及びHeath AW et al. Eur J Immunol 24 (1994) 1828-34に記載される。臨床試験での例としては、例えば、CP−870,893及びダセツズマブ(アゴニストCD40抗体、CAS番号880486−59−9,SGN−40;ヒト化S2C6抗体)(Khalil, M, et al, Update Cancer Ther. 2007 June 1; 2(2): 61-65)である。
【0064】
好ましい一実施態様において、アゴニスト性CD40抗体は、Pfizerが開発した完全ヒトIgG2アゴニスト性CD40抗体であるCP−870,893である。それはヒトCD40に3.48×10−10MのKDで結合するが、CD40Lの結合をブロックしない(例えば、U.S.7,338,660又はEP1476185を参照(ここではCP−870,893は抗体21.4.1として記載される)。CP−870,893(US7,338,660の抗体21.4.1)は、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPDSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELNRLRSDDTAVYYCARDQPLGYCTNGVCSYFDYWGQGTLVTVSS(配列番号5)(US7,338,660の配列番号42に対応する)の重鎖可変領域のアミノ酸配列、(b)DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGIYSWLAWYQQKPGKAPNLLIYTASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANIFPLTFGGGTKVEIK(配列番号6)(US7,338,660の配列番号44に対応する)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含むこと;及び/又は;アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)アクセッション番号PTA−3605を有するハイブリドーマ21.4.1により産生される抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を有することを特徴とする。ダセツズマブ及び他のヒト化S2C6抗体は、US6,946,129及びUS8,303,955に記載される。
【0065】
従って、好ましい一実施態様において、ANG−2又はANG−2/VEGF抗体との併用療法において使用されるアゴニスト性CD40抗体は、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPDSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELNRLRSDDTAVYYCARDQPLGYCTNGVCSYFDYWGQGTLVTVSS(配列番号5)(US7,338,660の配列番号42に対応する)の重鎖可変領域のアミノ酸配列、(b)DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGIYSWLAWYQQKPGKAPNLLIYTASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANIFPLTFGGGTKVEIK(配列番号6)(US7,338,660の配列番号44に対応する)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含むこと;及び/又は;アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)アクセッション番号PTA−3605を有するハイブリドーマ21.4.1により産生される抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を有することを特徴とする。ダセツズマブ及び他のヒト化S2C6抗体は、US6,946,129及びUS8,303,955に記載される。
【0066】
好ましい一実施態様において、ANG−2又はANG−2/VEGF抗体との併用療法において使用されるアゴニスト性CD40抗体は、ヒト化S2C6抗体である。ヒト化S2C6抗体は、例えば、mAB S2C6(ATCCにPTA−110として寄託)の重鎖及び軽鎖可変ドメインのCDR1、2及び3に基づいている。マウスmAB S2C6の重鎖及び軽鎖可変ドメインのCDR1、2及び3は、US6,946,129に記載され、開示される。一実施態様において、アゴニスト性CD40抗体は、ダセツズマブである。一実施態様において、アゴニスト性CD40抗体は、(a)EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSFTGYYIHWVRQAPGKGLEWVARVIPNAGGTSYNQKFKGRFTLSVDNSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGIYWWGQGTLVTVS(配列番号7)の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び(b)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRSSQSLVHSNGNTFLHWYQQKPGKAPKLLIYTVSNRFSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYFCSQTTHVPWTFGQGTKVEIKR(配列番号8)の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0067】
一実施態様において、アゴニスト性CD40抗体は、ヒト抗体である。本明細書に使用される、用語「ヒト抗体」は、可変及び定常ドメイン配列がヒト配列に由来する抗体を意味する。ヒトアゴニスト性抗CD40抗体は、開示内容全体が参照により本明細書に援用されるWO03/040170に詳細に記載される。ヒト抗体は、ヒト患者における非ヒト抗体の使用に関連している免疫原性及びアレルギー性応答を最小化することが期待されるため、本発明の治療方法において実質的な利点を提供する。
【0068】
本発明に有用な他の例示的なヒト抗CD40抗体は、WO03/040170に記載される3.1.1、3.1.1 H−A78T、3.1.1 H−A78T−V88A−V97A、7.1.2、10.8.3、15.1.1、21.4.1、21.2.1、22.1.1、22.1.1 H−C109A、23.5.1、23.25.1、23.28.1、23.28.1H−D16E、23.29.1、24.2.1、3.1.1H−A78T−V88A−V97A/3.1.1L−L4M−L83V及び23.28.1L−C92Aと指定された抗体のアミノ酸配列を有する抗体、並びにその典型的な抗体の何れかのCDR又は可変領域を含む抗体を含む。
【0069】
ある実施態様において、がん又は腫瘍の治療は、がん細胞の増殖を阻害し、腫瘍の重量又は体積の増加を阻害し又は防止し、及び/又は腫瘍の重量又は体積の減少を引き起こす。幾つかの実施態様において、がん治療は患者の生存期間を延長する。ある実施態様において、腫瘍増殖は、治療されていないものと比較して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%又は75%阻害される。幾つかの実施態様において、がん又は腫瘍は、CD40陽性である。
【0070】
本発明においては、代替的に、当該技術分野で知られているように、用語「CD40L」又は「CD154」は、全哺乳動物、例えば、ヒト、ラット、非ヒト霊長類、マウスのCD40L、並びにその断片、変異体、オリゴマー、及びそのコンジュゲートを含み、少なくともその対応する哺乳動物のCD40ポリペプチド、例えば、ヒトCD40に結合する。本発明において、投与されるCD40Lは、CD40Lポリペプチド又は前記CD40LポリペプチドをコードするDNAを含み得る。このようなCD40Lポリペプチド及びDNAは、特に、Immunex米国特許第6,410,711号;米国特許第6,391,637号;米国特許第5,981,724号;米国特許第5,961,974号及び米国特許出願公開第20040006006号に開示される天然型CD40L配列及びその断片、変異体、及びオリゴマーを含み、その特許及び出願並びにそこに開示されたCD40L配列は、本明細書にその全体が参考として援用される。
【0071】
CD40Lポリペプチドは、本発明によるCD40アゴニストとして使用することができ、特に、Immunex米国特許第6,410,711号;米国特許第6,391,637号;米国特許第5,981,724号;米国特許第5,961,974号及び米国特許出願公開第20040006006号に開示される天然型CD40L配列及びその断片、変異体、及びオリゴマーを含み、その特許及び出願並びにそこに開示されたCD40L配列は、本明細書にその全体が参考として援用される。
【0072】
「エピトープ」なる用語は、抗体に特異的に結合することが可能な抗原の決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面のグルーピングからなり、通常エピトープは特異的な3次元構造の特徴並びに特異的な電荷特性を有する。コンホメーション及び非コンホメーションエピトープは、変性溶媒の存在において、後者ではなく、前者への結合が失われることにおいて区別される。
【0073】
本明細書で使用される「可変ドメイン」(軽鎖の可変ドメインVL、重鎖の可変ドメインVH)は、抗体を抗原に結合させることに直接関与する軽鎖及び重鎖の対のそれぞれを示す。軽鎖及び重鎖ドメインは同じ一般構造を有し、各ドメインは、その配列が広範囲に保存され、3つの「超可変領域」(又は相補性決定領域、CDR)により結合されている4つのフレームワーク(FR)領域を含む。フレームワーク領域はβシート立体構造を採り、CDRはβシート構造を連結するループを形成しうる。各鎖のCDRは、フレームワーク領域によりその3次元構造で保持され、他の鎖のCDRと共に抗原結合部位を形成する。抗体の重鎖及び軽鎖CDR3領域は、本発明に係る抗体の結合特異性/親和性に特に重要な役割を果たし、よって本発明の更なる目的を提供する。
【0074】
「抗体の抗原結合部位」は、本明細書で使用されるとき、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。抗体の抗原結合部位は、「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」又は「FR」領域は、ここで定義する超可変領域の残基以外の可変ドメイン残基である。従って、抗体の軽鎖及び重鎖可変ドメインは、NからC末端に、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。特に、重鎖のCDR3は、抗原結合に最も寄与する領域であり、抗体の特性を定める。CDR及びFRは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991) の標準的定義に従って決定され、及び/又は「超可変ループ」からの残基である。
【0075】
本発明で使用される「核酸」又は「核酸分子」なる用語は、DNA分子及びRNA分子を含むことを意図している。核酸分子は一本鎖又は二本鎖であってよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0076】
この出願中において使用される「アミノ酸」なる用語は、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、スレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、及びバリン(val、V)を含む天然に生じるカルボキシα−アミノ酸の群を示す。
【0077】
抗体の「Fc部分」は、抗体の抗原への結合に直接的にかかわらないが、様々なエフェクター機能を示す。「抗体のFc部分」は当業者に良く知られており、抗体のパパイン切断に基づいて定義される。重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、抗体又は免疫グロブリンは、クラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに分けられ、これらの幾つかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、IGA1、及びIgA2に更に分けることができる。重鎖の定常領域に従って、免疫グロブリンの異なるクラスは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。抗体のFc部分は、補体活性化は、C1qの結合及びFc受容体結合に基づいて、ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)及びCDC(補体依存性細胞傷害)に直接関与している。補体活性(CDC)は、ほとんどのIgG抗体サブクラスの定常領域に対する補体因子C1qの結合により開始される。補体系に対する抗体の影響は、特定の状態に依存するが、C1qへの結合は、Fc部分に定められた結合部位により引き起こされる。そのような結合部位は、先端技術において知られており、例えば、Boackle, R.J., et al., Nature 282 (1979) 742-743; Lukas, T.J., et al., J. Immunol. 127 (1981) 2555-2560; Brunhouse, R., and Cebra, J.J., Mol. Immunol. 16 (1979) 907-917; Burton, D.R., et al., Nature 288 (1980) 338-344; Thommesen, J.E., et al., Mol. Immunol. 37 (2000) 995-1004; Idusogie, E.E., et al., J. Immunol.164 (2000) 4178-4184; Hezareh, M., et al., J. Virology 75 (2001) 12161-12168; Morgan, A., et al., Immunology 86 (1995) 319-324; EP0307434により記載される。このような結合部位は、例えば、L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331、及びP329である(Kabat,E.AのEU指標に従い番号付け、下記参照)。通常、サブクラスIgG1、IgG2及びIgG3の抗体は、補体活性化及びC1q及びC3結合を示すが、IgG4は補体系を活性化させず、C1q及びC3に結合しない。
【0078】
一実施態様において、本明細書に記載される抗体は、ヒトIgGクラスのもの(即ち、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4サブクラスのもの)である。
【0079】
好ましい実施態様において、抗体はヒトIgG1サブクラスのもの又はヒトIgG4サブクラスのものである。一実施態様において、本明細書に記載されるのは、ヒトIgG1サブクラスのものである。一実施態様において、本明細書に記載される抗体は、ヒトIgG4サブクラスのものである。
【0080】
一実施態様では、本発明による抗体はヒト起源由来のFc部分、及び好ましくはヒト定常領域の他の部分全てを含む。本明細書で使用される場合、用語「ヒト起源由来のFc部分」とは、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のヒト抗体のFc部分の何れか、好ましくはヒトIgG1サブクラスからのFc部分、ヒトIgG1サブクラスからの変異Fc部分(一実施態様において、L234A+L235Aにおける変異を含む)、ヒトIgG4サブクラスからのFc部分又はヒトIgG4サブクラスからの変異Fc部分(一実施態様において、S228Pにおける変異を含む)であるFc部分を意味する。
【0081】
一実施態様において、本明細書に記載される抗体は、定常鎖がヒト起源のものであることを特徴とする。このような定常鎖は、先端技術において知られており、例えば、Kabat,E.A.により記載される(例えば、Johnson, G. and Wu, T.T., Nucleic Acids Res. 28 (2000) 214-218を参照)。
【0082】
本発明は、患者にCD40アゴニスト(例えばアゴニスト性CD40抗体)の治療的有効量とともに本明細書に記載の抗ANG2抗体の治療的有効量を投与することを特徴とする、治療を必要とする患者の治療のための方法を含む。本発明は、記載された治療のために、CD40アゴニスト(例えばアゴニスト性CD40抗体)とともに本明細書に記載の抗ANG2抗体の使用を含む。
【0083】
本明細書に記載された抗体は、好ましくは組み換え手段によって産生される。そのような方法は先端技術において広く知られており、原核細胞及び真核細胞におけるタンパク質の発現を含み、その後の抗体ポリペプチドの単離、及び通常は薬学的に許容される純度までの精製を伴う。タンパク質発現のために、軽鎖及び重鎖又はその断片をコードする核酸は標準的な方法によって発現ベクターに挿入される。発現は、CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、酵母、又は大腸菌細胞などの適当な原核生物又は真核生物宿主細胞中で行われ、抗体は細胞(上清から又は細胞溶解後)回収される。
【0084】
組み換えによる抗体の産生は、最新技術分野において周知であり、例えば、Makrides, S.C., Protein Expr. Purif. 17 (1999) 183-202; Geisse,S., et al., Protein Expr. Purif. 8 (1996) 271-282; Kaufman, R.J., Mol.Biotechnol. 16 (2000) 151-161; Werner, R.G., Drug Res. 48 (1998) 870-880の総説に記載されている。
【0085】
抗体は、細胞全体に、細胞溶解物中に、又は部分精製形態あるいは実質的に純粋な形態で存在してもよい。細胞成分又は他の汚染物、例えば他の細胞核酸又はタンパク質を除去するために、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、及び当技術分野で周知の他のものを含む標準的な技術によって、精製が行われる。Ausubel, F., et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照。
【0086】
NS0細胞における発現は、例えば、Barnes, L.M., et al., Cytotechnology 32 (2000) 109-123; Barnes, L.M., et al., Biotech. Bioeng. 73 (2001) 261-270により説明される。一過性発現は、例えば、Durocher, Y., et al., Nucl. Acids. Res. 30 (2002) E9に記述される。可変ドメインのクローニングは、Orlandi, R., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 3833-3837; Carter, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 4285-4289; Norderhaug, L., et al., J. Immunol. Methods 204 (1997) 77-87に記述される。好適な一過性発現系(HEK293)は、 Schlaeger, E.-J., and Christensen, K., in Cytotechnology 30 (1999) 71-83及びSchlaeger, E.-J., in J. Immunol. Methods 194 (1996) 191-199により記述される。
【0087】
発明による重及び軽鎖可変ドメインは、プロモーター、翻訳開始、定常領域、3’非翻訳領域、ポリアデニル化、及び転写終結の配列と組み合わせられ、発現ベクターコンストラクトが形成される。重及び軽鎖発現コンストラクトは単一ベクターに組み入れられ、宿主細胞に同時に、連続的に、又は別々にトランスフェクトされ、次いでそれは融合され両鎖を発現する単一宿主細胞が形成される。
【0088】
原核生物に適している制御配列は、例えば、プロモーター、必要に応じてオペレーター配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー及びポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
【0089】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作動可能に連結」している。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されている場合、そのポリペプチドのDNAに操作可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に操作可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にある場合、コード配列と操作可能に結合している。一般に、「作動可能に連結した」とは、連結しているDNA配列は連続しており、分泌リーダーの場合には、リーディング・フレームにあり連続している。しかし、エンハンサーは連続している必要はない。連結は、好都合な制限部位での連結反応によって達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーは、従来の慣例に従って使用される。
【0090】
モノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーなどによって培養培地から適切に分離される。モノクローナル抗体をコードするDNA及びRNAは容易に単離され、従来の手順を用いて配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、DNAとRNAの供給源として機能することができる。一度単離されると、DNAは、発現ベクターに挿入することができ、これらは次いで、本来ならば免疫グロブリンタンパク質を生成しないHEK293細胞、CHO細胞、又はミエローマ細胞などの宿主細胞中にトランスフェクトされ、宿主細胞中で組換えモノクローナル抗体の合成を得る。
【0091】
本明細書中で用いる「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養物」なる表現は相互に交換可能に用いられ、かかる標記は子孫を含む。よって、「形質転換体」や「形質転換細胞」のような用語には、初代対象細胞と何世代移行したかを問わずそれから由来した培養物とを含む。また、全ての子孫は、意図的な又は不慮の突然変異により、DNA量において、厳密には同一でない可能性もあると理解される。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされた場合、同じ機能又は生物活性を有する変異子孫も含まれる。
【0092】
別の態様では、本発明は、本発明の、モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分の一又は複数の組み合わせを含有し、薬学的に許容可能な担体と共に製剤化された、組成物、例えば薬学的組成物を提供する。
【0093】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」は、生理学的適合性の、ありとあらゆる溶剤、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収/再吸収遅延剤、及び同様なものを含む。好ましくは、担体は注射又は注入に適している。
【0094】
本発明の組成物は、当該技術で知られている種々の方法で投与することができる。当業者に理解されているように、投与の経路及び/又は方式は、所望する結果に応じて変えられるであろう。
【0095】
薬学的に許容可能な担体は、無菌の水溶液又は分散系及び無菌の注射可能溶液又は分散系の調製のための無菌粉末を含む。薬学的に活性な物質に対するこのような媒体及び薬剤の使用は当分野で知られている。水に加えて、担体は、例えば、等張緩衝生理食塩水でありうる。
【0096】
選択された投与経路にかかわらず、適切な水和形態、及び/又は本発明の薬学的組成物で使用される本発明の化合物は、当業者に知られている一般的な方法により、薬学的に許容可能な剤形に処方される。
【0097】
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、患者にとって毒性であること無く、特定の患者、組成物、及び投与の形式について所望の治療応答を達成するのに有効である活性成分の量を得るために、変更されてもよい(有効量)。選択された投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物、又はそれらのエステル、塩、もしくはアミドの活性、投与の経路、投与の時間、使用される特定の化合物、使用される特定の組成物と併用して使用される他の薬物、化合物及び/又は材料の排出速度、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般健康状態及び事前治療歴、ならびに、医療技術分野において周知である同様の因子を含む様々な薬物動態因子に依存するであろう。
【0098】
用語「治療の方法」又はその等価物は、例えば、がんに適用される場合、患者においてがん細胞の数を減少又は除外するように又はがんの症状を緩和する設計されている手順若しくは採るべき道を指す。がん又は別の増殖性疾患を「治療する方法」は、がん細胞もしくは他の疾患が実際に排除されること、細胞の数もしくは疾患が実際に減ること、又はがんもしくは他の疾患の症状が実際に緩和されることを必ずしも意味しない。しばしば、がんを治療する方法は、成功の可能性が低いが、それにも関わらず、患者の病歴及び推定生存年数を所与として、全体的に有益な採るべき道を誘導するとみなされて実施されることとなる。
【0099】
用語「組み合わせて投与される(administered in combination with)」又は「共投与(co-administration)」、「共投与する(co-administering)」又は「併用療法(combination therapy)」、「ともに投与される(administered with)」又は「併用療法(combination treatment)」は、本明細書に記載される抗ANG2抗体、及び本明細書に記載されるアゴニスト性CD40抗体の、例えば別々の処方/適用(又は単一の処方/適用)としての投与を言う。同時投与は、同時もしくは何れかの順序で連続的であることができ、好ましくは両方(又は全て)の活性薬剤がその生物学的活性を同時に発揮する期間がある。前記抗体及び前記更なる薬剤は、連続的注入を介して(例えば、静脈内に(iv))同時に又は連続的に共投与される。両方の治療薬が連続的に共投与される場合、投与量は同日に別々の投与で投与され、又は薬剤の一つが第1日に、2番目のが第2日から第7日に、好ましくは第2日から第4日に共投与される。従って、一実施態様において、用語「連続的に(逐次的に)」は、第一成分の投与後7日以内に、好ましくは第一成分の投与後4日以内を意味し;用語「同時に」は同時刻でを意味する。抗ANG2抗体及び/又はアゴニスト性CD40抗体の維持(投与)量に関する用語「共投与」は、維持投与量は、治療サイクルが両方の薬剤で適切である場合、例えば毎週、両方を共投与することができることを意味する。又は、更なる薬剤が、例えば初日から第3日おきに、投与され、前記抗体は毎週投与される。又は維持投与量は、1日以内又は数日以内の何れかで連続的に共投与される。
【0100】
抗体は、患者に対して、研究者、獣医、医師又は他の臨床医によって求められている、組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を惹起するであろうそれぞれの化合物もしくはそれらの組み合わせの量である「治療的有効量」(又は単に「有効量」)で投与されるのは自明である。
【0101】
本明細書で使用する場合、用語「患者」又は「被験体」は、好ましくは、がん、又は前がん状態若しくは病変の治療を必要とするヒトを指す。しかし、用語「患者」は、ヒト以外の動物、例えば、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ及び非ヒト霊長類など、とりわけ、治療を必要としている哺乳動物を指すことができる。
【0102】
共投与の量及び共投与のタイミングは、タイプ(種、性別、年齢、体重など)、及び治療される患者の状態、及び治療される疾患又は状態の重症度に依存するであろう。前記抗ANG2抗体と更なる薬剤は、患者に対して、一時に又は一連の治療にわたって、例えば同じ日に、又は翌日に適切に共投与される。
【0103】
疾患のタイプ及び重症度に依存して、前記抗ANG2抗体及び/又はアゴニスト性CD40抗体の約0.1mg/kgから50mg/kg(例えば、0.1−20mg/kg)が、患者への両方の薬剤の共投与のための初期候補投与量である。本発明は、がん、とりわけ結腸がん、卵巣がん、膠芽細胞腫、胃がん、膵臓がん、乳がん、肺がん、肝細胞がんに罹患した患者の治療のための本発明による抗体の使用を含む。
【0104】
アゴニスト性CD40抗体組み合わせた抗ANG2抗体に加えて、化学療法剤も投与することができる。
【0105】
一実施態様において、本明細書に記載される抗ANG2抗体及び本明細書に記載されるアゴニスト性CD40抗体とともに投与されうる係る付加的化学療法剤は、限定されないが、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン及びクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、及びセムスチン(メチル−CCNU)などのニトロソ尿素;テモダール(TM)(テモゾロミド);トリエチレンメラミン(TEM)、トリエチレン、チオホスホルアミド(チオテパ)、ヘキサメチルメラミン(HMM、アルトレタミン)などのエチレンイミン/メチルメラミン;ブスルファンなどのスルホン酸アルキル;ダカルバジンなどのトリアジン(DTIC)を含むアルキル化剤;メトトレキサート及びトリメトレキサートなどの葉酸類似体、5−フルオロウラシル(5FU)、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC、シタラビン)、5−アザシチジン、2,2’−ジフルオロデオキシシチジンなどのピリミジン類似体;6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、2’−デオキシコフォルマイシン(ペントスタチン)、エリスロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダラビン及び2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2−CdA)などのプリン類似体を代謝拮抗剤;パクリタキセル、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、及びビノレルビンなどのビンカアルカロイド、タキソテール、エストラムスチン、及びリン酸エストラムスチンなどの抗有糸分裂薬;エトポシド及びテニポシドなどのポドフィロトキシン(ppipodophylotoxin);ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンC及びアクチノマイシンなどの抗生物質;L−アスパラギナーゼなどの酵素;インターフェロン−α、IL−2、G−CSF及びGM−CSFなどの生物学的応答調節剤を含む天然物;オキサリプラチン、シスプラチン及びカルボプラチンなどの白金配位錯体、ミトキサントロンなどのアントラセンジオン、ヒドロキシ尿素などの置換尿素、N−メチルヒドラジン(MIH)及びプロカルバジンを含むメチルヒドラジン誘導体、ミトタン(O、P−DDD)及びアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤を含むその他の薬剤;プレドニゾン及び等価物などの副腎皮質ステロイドアンタゴニスト、デキサメタゾン及びアミノグルテチミド;ジェムザール(TM)(ゲムシタビン)、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン及び酢酸メゲストロールなどのプロゲスチン;ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール等価物などのエストロゲン;タモキシフェンなどの抗エストロゲンを含むホルモン及びアンタゴニスト;プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン/等価物を含むアンドロゲン;フルタミド、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体及びロイプロリドなどの抗アンドロゲン;及びフルタミドなどの非ステロイド性抗アンドロゲン、を含む抗腫瘍剤が含まれる。エピジェネティックな機構を標的とする治療薬(Therapies)は、限定されないが、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、脱メチル化剤(例えば、Vidaza)を含み、そして転写抑制(ATRA)治療薬の放出は、抗原結合タンパク質と組み合わせることができる。一実施態様において、化学療法剤は、タキサン(例えば、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール))、修飾パクリタキセル(例えば、アブラキサン及びオパキシオ)、ドキソルビシン、スニチニブ(スーテント)、ソラフェニブ(ネクサバール)、及びその他のマルチキナーゼ阻害剤、オキサリプラチン、シスプラチン及びカルボプラチン、エトポシド、ゲムシタビン、及びビンブラスチンからなる群から選択される。一実施態様において、化学療法剤は、タキサン(例えばタキソール(パクリタキセル)、ドセタキセル(タキソテール)、修飾パクリタキセル(例えばアブラキサン及びオパキシオ)からなる群から選択される。一実施態様において、付加的化学療法剤は、5−フルオロウラシル(5−FU)、ロイコボリン、イリノテカン、又はオキサリプラチンから選択される。一実施態様において、化学療法剤は、5−フルオロウラシル、ロイコボリン及びイリノテカン(FOLFIRI)である。一実施態様において、化学療法剤は、5−フルオロウラシル、ロイコボリン及びオキサリプラチン(FOLFOX)である。
【0106】
付加的化学療法剤との併用療法の具体的な例は、例えば、乳がんの治療用に、タキサン(例えば、ドセタキセル又はパクリタキセル)又は修飾パクリタキセル(例えば、アブラキサン又はオパキシオ)、ドキソルビシン)、カペシタビン及び/又はベバシズマブ(アバスチン)による治療;卵巣がんには、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドキソルビシン(又は修飾ドキソルビシン(Caelyx又はDoxil))、又はトポテカン(ハイカムチン)による治療;腎臓がんの治療用に、マルチキナーゼ阻害剤、MKI、(スーテント、ネクサバール、又は706)及び/又はドキソルビシンによる治療;扁平上皮癌の治療用にオキサリプラチン、シスプラチン及び/又は放射線とヒトCSF−1R抗体による治療;肺がんの治療用に、タキソール及び/又はカルボプラチンによる治療が含まれる。
【0107】
従って、一実施態様において、付加的化学療法剤は、乳がんの治療用に、タキサン(ドセタキセル又はパクリタキセル又は修飾パクリタキセル(アブラキサン又はオパキシオ)、ドキソルビシン、カペシタビン及び/又はベバシズマブの群から選択される。
【0108】
抗ANG2抗体/アゴニスト性CD40抗体の併用療法の一実施態様においては、付加的化学療法剤は投与されない。
【0109】
本発明はまた、そのような疾患に罹患した患者の治療のための方法を含む。
【0110】
本発明は、本発明による抗体の有効量を薬学的に許容される担体と一緒に含む薬学的組成物の製造法、及びその方法のための本発明による抗体の使用を提供する。
【0111】
本発明は、がんに罹患した患者の治療のために、好ましくは薬学的に許容される担体と一緒に、医薬品の製造のための本発明による抗体の有効量での使用を更に提供する。
【0112】
本発明はまた、がんに罹患した患者の治療のために、好ましくは薬学的に許容される担体と一緒に、医薬品の製造のための本発明による抗体の有効量での使用を提供する。
【0113】
以下に、本発明の幾つか特定の実施態様が記載される。
1:
ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体であって、抗体は、a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせることに使用のため、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長することに使用のため、又はc)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激することに使用のため、又はd)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にすることに使用のため、CD40アゴニストと組み合わせて投与される。
2:
抗体が、a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせることに使用のため、b)がんに罹患した患者の生存期間を延長することに使用のため、CD40アゴニストと組み合わせて投与される、ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体。
3:
抗ANG2抗体がモノクローナル抗体である、実施態様1又は2に記載の使用のための抗ANG2抗体。
4:
抗ANG2抗体がヒトであるか又はヒト化されている、実施態様1から3の何れか一項に記載の使用のための抗ANG2抗体。
5:
抗ANG2抗体が、表面プラズモン共鳴(BiacoreTM)によって決定される場合、1.0x10−8mol/l未満のK値でヒトANG2に特異的に結合する、実施態様1から4の何れか一項に記載の使用のための抗ANG2抗体。
6:
抗ANG2抗体がIgG抗体である、実施態様1から5の何れか一項に記載の使用のための抗ANG2抗体。
7:
抗ANG2抗体が、TIE2受容体とのヒトANG−2の相互作用を15nM以下のIC50で阻害する、実施態様1から6の何れか一項に記載の使用のための抗ANG2抗体。8:
CD40アゴニストが、アゴニスト性CD40抗体又はアゴニスト性CD40Lポリペプチドである、実施態様1から7の何れか一項に記載の使用のための抗ANG2抗体。
9:
CD40アゴニストが、アゴニスト性CD40抗体である、実施態様1から7の何れか一項に記載の使用のための抗ANG2抗体。
10:
i)抗ANG2抗体が
(a)配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;又は
(b)配列番号3の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号4の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;
を含み、及び
(ii)アゴニスト性CD40抗体が
(a)配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;又は
(b)配列番号7の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号8の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;
を含む、実施態様9に記載のヒトANG−2に結合する抗体。
11:
i)抗ANG2抗体が
配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;又は
及び
(ii)アゴニスト性CD40抗体は
(a)配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、実施態様9に記載のヒトANG−2に結合する抗体。
12:
抗ANG2抗体が、ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体である、実施態様9に記載の使用のための抗ANG2抗体。
13:
i)ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体が
配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;及び
配列番号9の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;
及び
ii)アゴニスト性CD40抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、実施態様10に記載のヒトANG−2に結合する抗体。
14:
i)ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体が
配列番号11の、配列番号12の、配列番号13の、及び配列番号14のアミノ酸配列を含み;及び
ii)アゴニスト性CD40抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、実施態様10に記載のヒトANG−2に結合する抗体。
15:
がんが、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞性細胞肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部又は頸部のがん、皮膚又は眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、結腸がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣の癌、外陰部の癌、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓又は尿管のがん、腎細胞癌、腎盂癌、中皮腫、肝細胞がん、胆管がん、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、多形性膠芽腫、星状細胞腫、シュワン腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫、リンパ腫又はリンパ性白血病である、実施態様1から14の何れか一項に記載の使用のためのヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体。
16:
がんが固形腫瘍を含む、実施態様15に記載の使用のためのヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体。
17:
がんが、結腸がん、卵巣がん、膠芽細胞腫、胃がん、膵臓がん、乳がん、肺がん、肝細胞がんである、実施態様15に記載の使用のためのヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体。
18:
治療の方法において、抗ANG2抗体及びCD40アゴニストが、同時に、別々に又は連続的に被験体に投与される、実施態様1から17の何れか一項に記載の使用のためのヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体。
【0114】
アミノ酸配列の説明
配列番号1 <ANG−2>E6Qの可変重鎖ドメインVH
配列番号2 <ANG−2>E6Qの可変軽鎖ドメインVL
配列番号3 <ANG−2>Ang2i_LC06の可変重鎖ドメインVH
配列番号4 <ANG−2>Ang2i_LC06の可変軽鎖ドメインVL
配列番号5 CP−870,893(U.S.7,338,660の抗体21.4.1)の可変重鎖ドメインVH
配列番号6 CP−870,893(U.S.7,338,660の抗体21.4.1)の可変軽鎖ドメインVL
配列番号7 ヒト化S2C6重鎖可変ドメインVH変異体
配列番号8 ヒト化S2C6軽鎖可変ドメインVL変異体
配列番号9 <VEGF> ベバシズマブの可変重鎖ドメインVH
配列番号10 <VEGF>ベバシズマブの可変軽鎖ドメインVL
配列番号11 二重特異性ANG2/VEGF抗体XMab1<VEGF>軽鎖
配列番号12 二重特異性ANG2/VEGF抗体XMab1<ANG2>軽鎖
配列番号13 二重特異性ANG2/VEGF抗体XMab1<VEGF>重鎖
配列番号14 二重特異性ANG2/VEGF抗体XMab1<ANG2>重鎖
配列番号15 ヒトアンジオポエチン−2(ANG−2)
配列番号16 ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)
配列番号17 <VEGF>B20−4.1の可変重鎖ドメインVH
配列番号18 <VEGF>B20−4.1の可変軽鎖ドメインVL
【0115】
以下に、本発明の実施態様が記載される。
1:
ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体であって、抗体は、a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせることに使用のため、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長することに使用のため、又はc)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激することに使用のため、又はd)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にすることに使用のため、CD40アゴニストと組み合わせて投与される。
2:
抗体が、a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせることに使用のため、b)がんに罹患した患者の生存期間を延長することに使用のため、CD40アゴニストと組み合わせて投与される、ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体。
3:
i)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体、及び
ii)a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせることに使用のため、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長することに使用のため、又はc)T細胞活性(一実施態様においてCD8エフェクターT細胞活性)又はマクロファージ活性(一実施態様においてCD40活性化マクロファージ活性)などの免疫応答又は機能を刺激することに使用のため、又はd)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体を用いた治療に対してがんを感受性にすることに使用のための医薬の製造のためのCD40アゴニスト
の組み合わせの使用。
4:
i)ヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体、及び
ii)a)がんを治療すること又はがんの進行を遅らせることに使用のため、又はb)がんに罹患した患者の生存期間を延長することに使用のための医薬の製造のためのCD40アゴニスト
の組み合わせの使用。
5:
抗ANG2抗体がヒトであるか又はヒト化されている、実施態様1から4の何れか一項に記載の使用のための抗ANG2抗体又はその使用。
6:
抗ANG2抗体が、表面プラズモン共鳴(BiacoreTM)によって決定される場合、1.0x10−8mol/l未満のK値でヒトANG2に特異的に結合する、実施態様1から5の何れか一項に記載の使用のための抗ANG2抗体又はその使用。
7:
抗ANG2抗体がIgG抗体である、実施態様1から6の何れか一項に記載の使用のための抗ANG2抗体又はその使用。
8:
抗ANG2抗体が、TIE2受容体とのヒトANG−2の相互作用を15nM以下のIC50で阻害する、実施態様1から7の何れか一項に記載の使用のための抗ANG2抗体又はその使用。
9:
CD40アゴニストが、アゴニスト性CD40抗体又はアゴニスト性CD40Lポリペプチドである、実施態様1から8の何れか一項に記載の使用のための抗ANG2抗体又はその使用。
10:
CD40アゴニストが、アゴニスト性CD40抗体である、実施態様1から9の何れか一項に記載の使用のための抗ANG2抗体又はその使用。
11:
i)抗ANG2抗体が
(a)配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;又は
(b)配列番号3の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号4の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;
を含み、及び
(ii)アゴニスト性CD40抗体が
(a)配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;又は
(b)配列番号7の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号8の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列;
を含む、実施態様10に記載のヒトANG−2に結合する抗体又はその使用。
12:
i)抗ANG2抗体が
配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;又は
及び
(ii)アゴニスト性CD40抗体は
(a)配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、実施態様10に記載のヒトANG−2に結合する抗体又はその使用。13:
抗ANG2抗体が、ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体である、実施態様10に記載の使用のための抗ANG2抗体又はその使用。
14:
更に、ヒトVEGFに結合する抗体が、CD40アゴニストと組み合わせて投与される又は組み合わせて使用される、実施態様10に記載の使用のための抗ANG2抗体又はその使用。
15:
i)ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体が
配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;及び
配列番号9の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;
及び
(ii)アゴニスト性CD40抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、実施態様13に記載のヒトANG−2に結合する抗体又はその使用。
16:
i)ヒトANG−2に結合し及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体が
配列番号11の、配列番号12の、配列番号13の、及び配列番号14のアミノ酸配列を含み;及び
ii)アゴニスト性CD40抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、実施態様13に記載のヒトANG−2に結合する抗体又はその使用。
17:
i)ヒトVEGFに結合する抗体が、
配列番号9の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み;及び
ii)アゴニスト性CD40抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、実施態様14に記載のヒトANG−2に結合する抗体又はその使用。
18:
がんが、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞性細胞肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部又は頸部のがん、皮膚又は眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、結腸がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣の癌、外陰部の癌、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓又は尿管のがん、腎細胞癌、腎盂癌、中皮腫、肝細胞がん、胆管がん、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、多形性膠芽腫、星状細胞腫、シュワン腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫、リンパ腫又はリンパ性白血病である、使用のための、又は実施態様1から17の何れか一項に記載の使用のためのヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体又はその使用。
19:
がんが固形腫瘍を含む、実施態様18に記載の使用のためのヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体又はその使用。
20:
がんが、ANG−2の発現又は過剰発現により更に特徴づけられる、実施態様18又は19に記載の抗体又は使用。
21:
がんが、結腸がん、卵巣がん、膠芽細胞腫、胃がん、膵臓がん、乳がん、肺がん、肝細胞がんである、実施態様18から20の何れか一項に記載の使用のためのヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体。
22:
治療の方法において、抗ANG2抗体及びCD40アゴニストが、同時に、別々に又は連続的に被験体に投与される、実施態様1から21の何れか一項に記載の使用のためのヒトアンジオポエチン2(ANG−2)に結合する抗体。
【実施例】
【0116】
実施例1
ヒトANG−2のTIE2受容体との相互作用の阻害(実験A)
ヒトANG−2/ヒトTie2の相互作用の遮断は、受容体相互作用をELISAによって示された。384ウェルMaxisorpプレート(Nunc)を室温で2時間0.5μg/mlのヒトTie2(R&D Systems,UK,カタログ番号313−TI又は社内で製造された材料)でコーティングし、振盪下、室温で1時間、0.2%のTween−20及び2%のBSA(Roche Diagnostics GmbH,DE)を補充したPBSでブロックした。一方で、PBS中の精製抗体の希釈物を0.2/mlのhuAngiopoietin−1/2(R&D Systems #923−AN/CF,R&D Systems,UK,カタログ番号623−AN又は社内製造された材料)とともに室温で1時間インキュベートした。洗浄後、0.5μg/mlのビオチン化抗アンジオポエチン1/2クローン(R&D Systems #BAF923,BAM0981 R&D Systems,UK)及び1:3000希釈ストレプトアビジンHRP(Roche Diagnostics GmbH,DE,カタログ番号11089153001)の混合物を1時間添加した。その後、プレートをPBSTで6回洗浄した。プレートを室温で30分間、新たに調製したABTS試薬(Roche Diagnostics GmbH,DE、緩衝液#204 530 001、タブレット#11 112 422 001)で顕色させた。吸光度を405nmで測定した。
【0117】
得られた阻害濃度は以下の表に要約される。
【0118】
ヒトANG−2のTIE2受容体との相互作用の阻害(実験B)
相互作用ELISAを室温で384ウェルマイクロタイタープレート(MicroCoat、DE、カタログ番号464718)上で行った。各インキュベーション工程の後、プレートをPBSTで3回洗浄した。ELISAプレートを、1時間(h)、5μg/mlのTie−2タンパク質でコーティングした。その後、ウェルを室温で1時間、0.2%のTween−20及び2%のBSA(Roche Diagnostics GmbH,DE)を補充したPBSでブロックした。PBS中の精製二重特異性Xmab抗体の希釈物を0.2μgのhuAngiopoietin−2(R&D Systems,UK、カタログ番号623−AN)と一緒に室温で1時間インキュベートした。洗浄後、0.5μg/mlのビオチン化抗アンジオポエチン−2クローンBAM0981(R&D Systems,UK)及び1:3000希釈ストレプトアビジンHRP(Roche Diagnostics GmbH,DE,カタログ番号11089153001)の混合物を1時間添加した。その後、プレートをPBSTで3回洗浄した。プレートを室温で30分間、新たに調製したABTS試薬(Roche Diagnostics GmbH,DE、緩衝液#204 530 001、タブレット#11 112 422 001)で顕色させる。吸光度を405nmで測定し、IC50を決定した。
【0119】
XMab1、ヒトANG2に及びヒトVEGFに結合する二重特異性抗体(WO2011/117329及び配列番号11−14の配列を参照)は、12nMのIC50でTie−2へのANG−2の結合の阻害(ANG2/Tie2の受容体相互作用の阻害)を示した。
【0120】
実施例2
アゴニスト性CD40抗体と組み合わせた抗ANG2抗体のインビボ抗腫瘍効果(がんの進行(腫瘍増殖)の遅延及び治療された患者の生存期間の延長)
方法
C57BL/6マウスに500.000の同系MC38腫瘍細胞が皮下注射され、腫瘍が40−60mmの大きさに達した16日目から開始して治療された。
【0121】
腫瘍が1500mm(エンドポイント)のサイズに達したとき、マウスを獣医の規制に従って安楽死させた。抗ANG2抗体として、<ANG−2>Ang2i_LC06のVH及びVL(配列番号3−4)に基づいた単一特異性IgG1抗体が使用された。ベバシズマブがマウス交差反応性でないため、マウス交差反応性の代替として、<VEGF>B20−4.1のVH及びVL(配列番号17−18)に基づいたVEGF抗体が、<VEGF>ベバシズマブのVH及びVL(配列番号9−10)の代わりに使用された。これらの抗体は、単独で、又は組み合わせて使用された。同様の理由で、アゴニスト性CD40抗体CP−870893(U.S.7,338,660の抗体21.4.1)(配列番号5−6のVH及びVLを参照)の代わりに、マウス交差反応性アゴニスト性CD40抗体クローン1C10(Santos-Argumedo L. et al., Cell Immunol. 156 (1994) 272-285, Heath AW et al. Eur J Immunol 24 (1994) 1828-34を参照;例えば、Abnovaカタログ#MAB5607から入手可能)が、具体的にはマウスIgG1のフォーマット(マウスIgG1定常領域と組み合わせて、クローン1C10の可変領域VH及びVLから生成可能であり又はロックフェラー大学から入手可能である)で使用された。比較のためにまた、単一特異性の抗VEGF抗体<VEGF>B20−4.1(配列番号17−18)との組み合わせも検討された。しかし、トランスジェニックヒト化マウスを用いた同様の実験又は臨床試験を、作用機序に基づいて同様の結果を期待して、アゴニスト性CD40抗体CP−870893(U.S.7,338,660の抗体21.4.1)及び二重特異性ANG2/VEGF抗体XMab1(配列番号11−14)を使用して行うことができる。
【0122】
治療は、示された用量で、以下の以下のスケジュールに従って適用された。
【0123】
結果
結果を図1に示す。グラフは3つの独立した実験からプールされたデータを表す。マウスは、図に示される抗体の組み合わせを用いて治療された。
【0124】
要約
我々のデータは、使用された全試薬は、独力でいくばくかの抗腫瘍活性を示すことを実証する。抗VEGF抗体と組み合わせた場合に、アゴニスト性抗CD40抗体の組み合わせは僅かな効果を示すだけであったが、抗ANG2抗体(単一特異性ANG2抗体又は抗ANG2/抗VEGF抗体の組み合わせの何れか)とアゴニスト性CD40抗体との組み合わせは、腫瘍細胞の増殖、進行の遅延及び生存期間の延長に強い相乗効果を示した。最も強い効果は、アゴニスト性CD40抗体と抗ANG2/抗VEGF抗体の組み合わせとの組み合わせについて観察することができた。腫瘍を有するマウスの大部分は、抗Ang−2及び抗CD40の何れかと組み合わせた治療又は抗ANG2/抗VEGF抗体(抗VEGF/Ang−2)と抗CD40との組み合わせにより治癒された。従って、これらの組み合わせは、癌患者のための実質的な治療的有用性を提供することができる。
【0125】
実施例3
皮下同系MC38結腸癌モデルにおけるアゴニスト性CD40抗体と組み合わせた抗ANG2抗体(二重特異性)のインビボ抗腫瘍効果
マウス結腸直腸腺癌細胞株MC−38の細胞(Beckman Research Institute of the City of Hope,California,USAから入手)は、5%COで水飽和大気中、37℃で、10%FCS及び2mMのL−グルタミンを補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM,PAN Biotech)中で培養された。接種の日に、MC38腫瘍細胞を培養フラスコからPBSで回収し、培養培地に移し、遠心分離し、一回洗浄し、PBSに再懸濁した。細胞の注入のために、最終力価を1×10細胞/mlに調整した。その後この懸濁液100μl(1×10細胞)を6−10週齢の雌C57BL/6Nマウスに皮下接種した。動物の群は、対照抗体(MOPC−21(10mg/kgを腹腔内に週1回)及び/又は2A3(100μgを腹腔内に1回);Bio X Cell,West Lebanon)により、及び抗CD40モノクローナル抗体FGK45(アゴニストCD40ラット抗マウスIgG2a mAb FGK45(S. P. Schoenberger, et al, Nature, 393, 480 (1998)、BioXcellから入手可能)CD40クローンFGK.45、100μg、腹腔内、二重特異性ANG2/VEGF抗体の第一用量と同時に1回)と組み合わせた二重特異性抗ANG2抗体により治療された。二重特異性は、ANG2結合アームのための<ANG−2>E6QのVH及びVL(配列番号1−2)に基づいた二重特異性ANG2/VEGF抗体であった。マウス交差反応性の代替VEGF結合アームとして、<VEGF>B20−4.1のVH及びVL(配列番号17−18)が、<VEGF>ベバシズマブのVH及びVL(配列番号9−10)の代わりに使用された。構造は、しかしながら、XB1と同じであった(VH/VLs<VEGF>のみがB20−4.1のマウス交差反応性のものと交換された)。
【0126】
腫瘍が確立され、単独療法については50から80mm又は併用療法については200mmの平均サイズに達した後に、治療が開始された。腫瘍体積を週に2回測定し、動物の体重を並行してモニターした。結果を図7に示す。アゴニスト性CD40 mAbとの二重特異性ANG2/VEGF抗体の組み合わせは、腫瘍は21日目に退縮へと進み(TGI>100%)、同系MC38マウス腺癌モデルにおける単剤療法よりも改善された抗腫瘍効果を示した。32日目では、10匹の動物のうち5匹は無腫瘍であった。
【0127】
実施例4
雌のBalb/cマウスにおける同系CT26WTモデルにおけるAng2/VEGF抗体(CrossMab;LC06/B20.4.1)及びCD40抗体(FGK4.5;iTME−0004−0005)単独又は組み合わせの抗腫瘍効果
【0128】
実験手順
試験薬剤
ANG2結合アームのための<ANG−2>E6QのVH及びVL(配列番号1−2)に基づいた二重特異性ANG2/VEGF抗体。マウス交差反応性の代替VEGF結合アームとして、<VEGF>B20−4.1のVH及びVL(配列番号17−18)が、<VEGF>ベバシズマブのVH及びVL(配列番号9−10)の代わりに使用された。構造は、しかしながら、XB1と同じであった(VH/VLs<VEGF>のみがB20−4.1のマウス交差反応性のものと交換された)。二重特異性ANG2/VEGF抗体は、Roche Diagnostics GmbH,Penzberg,Germanyで生成された。CD40抗体(FGK4.5;iTME−0004−0005)はAdipogen/Biomolから入手した。
【0129】
抗体緩衝液は、20mMのヒスチジン及び140mMの塩化ナトリウム液(pH6.0)を含んでいた。抗体溶液は、投与前にストックから上記の緩衝液中に適切に希釈された。
【0130】
細胞株及び培養条件
マウスCT26WT細胞株を、5%COで水飽和大気中37℃で、10%ウシ胎児血清(PAA Laboratories,Austria)及び2mMのL−グルタミンを補充したRPMI1640中でルーチン的に培養した。
【0131】
動物
到着時に6〜7週齢の雌のBalb/cマウス(Charles River,Sulzfeld,Germanyから購入)は、コミットガイドライン(GV−Solas;Felasa;TierschG)に従って、12時間明/12時間暗黒の日々のサイクルによる特定病原体を含まない条件下で維持された。実験研究プロトコールは見直され、地方政府によって承認された(Regierung von Oberbayern;登録番号55.2−1−54−2531.2−32−10)。到着後、新しい環境に慣れるため及び観察のために、動物を1週間動物施設で維持した。継続的な健康管理が定期的に実施された。ダイエット食品(Altromin)及び水(フィルター処理)は自由に与えられた。
【0132】
モニタリング
動物は、臨床症状や副作用の検出のために毎日管理された。モニタリングのため、実験を通して、動物の体重を毎週2回記録し、無作為化後に腫瘍体積をキャリパーで測定した。
【0133】
動物の治療
動物の治療は、腫瘍細胞接種後12日目に、約130mmの腫瘍体積で無作為化の日に開始された。投薬後、投与の経路及び治療スケジュールが適用されている:
図1
図2A
図2B
図2C
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]