【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、冒頭段落に説明されたようなタイプの照明デバイスは、レンズが、光軸に沿って光源に対して移動可能であり、FWHMが3°乃至15°の範囲にあるブラーリング強度を有する混合構造部が、光軸上に設けられることを特徴とし、混合構造部のブラーリング強度は、光軸からの半径方向における距離Rの増加と共に徐々に且つ連続的に増加する。
【0007】
本発明は、好適には、特に博物館照明及びハイエンド小売店照明といった応用において光の質が非常に重要であるスポット照明に使用されることが好適である。本発明による照明デバイスは、細いビーム、可変ビーム、優れた色均一性、回転方向における優れた強度均一性及び優れた半径方向強度プロファイルの組み合わせを提供する。混合構造部は、色収差に起因する色アーチファクト及び他のアーチファクトを低減するように使用される。光線は、レンズの外縁に向かってより急に曲がるので、ブラーリングによる色収差の補正がより重要であり、したがって、レンズの中心よりもエッジに近い方が幾分強い。必要なブラーリング強度は、レンズ材料、レンズ形状、光源形状及び光源からレンズまでの距離といった幾つかのパラメータに依存する。一般に、混合構造部は、曖昧さの増加及びビームの広がりの両方の現象をもたらす。曖昧さは、色収差及び投影面上の光源の結像を無くすので望ましい。しかし、ビームの広がりは、照明デバイスのビーム幅制御の範囲を制限し、しばしば、ビームエッジの鮮明なカットオフを減少させるので望ましくない。したがって、これらの2つの相反する現象の適切な設定が選択されなければならない。
【0008】
好適には、混合構造部のブラーリング強度は、この効果に適切に対処するために、光軸から半径方向において、少なくとも1.1倍、例えば1.25倍だけ増加するが、ビームの不鮮明なエッジ及び/又はビームの広がりを回避するために、1.6倍未満であることが好適である。ほんの一例として、中心において、混合構造部によって追加された5°のFWHMのブラーリング強度を有するレンズは、レンズのエッジにおいて、5.5°乃至9°のFWHMの範囲内のブラーリング強度を有することが好適である。
【0009】
ブラーリング強度は、次の通りに決定される。即ち、最初に、レーザビームの(光)線のコリメートされた束、即ち、基本的に0°の半値全幅(FWHM)を有する光ビーム(即ち、レーザビーム)が取られる。当該光線の束のコリメートされたビームは、混合構造部を通り伝搬し、結果として、ビームの光の少し発散する光線の束への広がりがもたらされる。当該少し発散する光線は、錐体軸(光軸と一致してもよい)の周りで仮想錐体へと伝搬し、仮想錐体は、3°乃至15°の範囲内の頂角を有する。コリメートされたビーム(FWHM=0°を有する)における光線の束からの光の広がったビームにおける相互に発散する光線の束への広がりは、FWHMとして測定され、混合構造部のブラーリング強度として規定される。即ち、本発明では、特に、上記ブラーリング強度は、3°乃至15°のFWHMの範囲内であるように設定される。所望のブラーリング強度は、例えばサンドブラスト加工された表面であるランダムマイクロサイズ構造部によって又は例えば円角錐のモザイク模様表面である規則的なマイクロサイズ幾何学的構造部によって得ることができる。マイクロサイズとは、1μm、即ち、少なくとも可視光の波長よりももっと長いサイズから約5000μm又は好適には1000μmまでの範囲内のサイズを意味する。ランダム構造部は、一般に、作ることが比較的簡単であり、ブラーリング強度に、好ましい滑らかなビームエッジを有するガウス状ビームを与えるようにするので有利である。ブラーリングが、ガウス分布又はプロファイルを有する場合、ブラーリング強度は、ガウスシグマ、即ち、σでも表すことができ、ここで、σ=FWHM/2.355である。ブラーリングは、横断方向では異なっていてもよい。即ち、x方向では、ブラーリングは例えばたった3°であるが、横断y方向では、ブラーリングは例えば12°であってよく、これは、所望のビームパターンとは無関係である。
【0010】
一般に、FWHM3°乃至15°の範囲におけるブラーリング強度は、標準強度プロファイルを有し、また、均一色分布を有するビームをもたらすように思われる。したがって、例えば光源がLEDである場合、このような程度の散乱は、照明デバイスに、動作中に、所望の質の光ビームを放出される。特に、ブラーリング強度の3°の下限値は、ビームに、許容可能に低い程度の色収差を有するようにさせる。即ち、色収差は、観察可能となる閾値レベルちょうどであるか又は下回る。特に、色空間として、CIE(u’,v’)色度図を使用する場合、ビーム内の色収差は、ほとんどの応用について実用的かつ許容可能に低い値であるビームの平均色から上記色空間における座標の0.0055(u’,v’)未満の半径を有する円よりも小さい。好適には、上記半径は、座標の0.0013(u’,v’)以下である。即ち、(u’,v’)図の白色領域において、色差が人間によってもはや観察されない50%の確率におけるちょうど知覚可能な色度差を下回る。上記半径が、(u’,v’)座標の0.0011以下である場合、色差は、人間によってもはや観察可能ではない。ブラーリング強度が高いほど、色収差の不在及びユークリッド差異(Euclidian difference)の不在、即ち、投影ビームにおける光源像の可視性の不在に関して、ビームの均一性が良くなる。しかし、ブラーリングは過度になるべきではない。したがって、ブラーリング強度の15°の上限値よりも下では、照明デバイスによって放出される光ビームは、依然として、ほとんどの応用について許容可能に細いことが可能である。
【0011】
更に、ブラーリングは、拡散散乱と混同されるべきではない。拡散散乱では、拡散散乱が生じる各位置は、ランバート光源として挙動し、元の一次光ビームの比較的小さいエタンデュが増加される。しかし、本発明では、ブラーリングは、事実上常に、ある程度の表面粗さ、内部凹凸又は境界による数パーセント(例えば5%)の散乱を含む。本発明では、混合構造部による拡散散乱は、ある程度まで許可され、混合構造部に衝突する光の最大25%まで拡散散乱されてよい。例えばサンドブラスト又はエッチングによって得られる混合構造部の場合、大量の拡散散乱の高いリスクがある。サンドブラストされた又はエッチングされた表面による拡散散乱の量は、例えばサンドブラスティング/エッチングの度合いによって、また、これにより得られたパターンの密度によって制御される。即ち、処理表面は、混合構造部に衝突する光のかなりの部分(例えば少なくとも75%)が影響を受けずに、その元の経路に沿って伝搬するようにほんの軽くサンドブラスト/エッチングされる。混合構造部による拡散散乱は、例えばマイクロサイズのランダムテクスチャ又は小型レンズ、プリズム、ファセットのようなマイクロサイズの規則的な幾何学的構造であるエンボス加工構造部を含む混合構造部の実施形態を用いて制御することがより容易である。エンボス加工構造部の丸みを帯びたエッジ及び急な推移部の不在によって、このようなエンボス加工構造部は、通常、例えば3%といったように10%以下の少ない拡散散乱が伴う。
【0012】
投影ビームにおける光源の結像の度合いに関して、長さにおける幾何学的な差異が測定され、本発明では、ユークリッド差異がこのために使用される。ユークリッド差異は、ユークリッド距離、即ち、ユークリッド空間における2点間の直線距離として使用される。そのために、追加ブラーリングのない投影光ビームにおける光源の像に関して、2つの(好適には最も異なる)横断面のユークリッド差異の基本値が測定される。次に、同じ横断面に亘って、ブラーリングが追加された投影光ビームにおける光源の像に関して、ユークリッド差異が決定され、上記基本値によって分割され、ユークリッド差異の正規化値がもたらされる。この正規化値が選択された所望の閾値を下回る場合、例えばここでは10%を下回る場合、光源の結像は十分に不在であると見なされる又は不可視であると見なされる。
【0013】
照明デバイスの所望のビーム特性に依存して、光源及びレンズ材料を選択することができる。光源は、好適にはLED又は複数のLED(例えば白色、RGBW又はRGBA)である。これらは比較的安価であり、低電圧応用を可能にし、半球状に順方向においてのみ発光するからである。しかし、或いは、小型HIDランプ又はハロゲンランプを光源として使用することもできる。
【0014】
レンズは、例えば屈折性非球面レンズ、球面レンズ、双曲線レンズ、凸凹レンズ、平凸レンズ又は両凸レンズであってよい。正レンズは、一般に、比較的細いビームになるように、光の方向を転換し、光を収束し及び/又は光をコリメートする。色収差は、様々な波長の屈折率の違いによってもたらされる。レンズ材料は、例えば軟質ガラス、硬質グラス、石英ガラス、又は、PMMA、ポリカーボネート若しくはポリエチレンといったポリマー材料から選択されるが、他の(コ)ポリマーも可能である。ガラスレンズは、一般に、例えば光源によってもたらされる高温に幾分優れた耐性があるが、一方で、合成レンズは、ガラスレンズよりも(重量が)幾分軽い。
【0015】
次の表は、幾つかの適切なレンズ材料の屈折率と波長との関係を示す。
【表1】
【0016】
上記されたように、光源(LED)がレンズの焦点に近い又は焦点内にある場合、光源の像が、例えば壁又は被照明物体である投影面上に投影される。この像はあまり鮮明ではないが、好適である滑らかで均一の回転対称ビームではない。照明デバイスの一実施形態は、ブラーリング強度のFWHMが4.5°乃至10°の範囲内にあることを特徴とする。ブラーリング強度のFWHM>=4.5°は、照明デバイスに、投影面上への光源の結像が事実上取り除かれたビームを放出させる。即ち、投影ビームにおける結像光源のユークリッド差異の正規化値は10%未満である。ブラーリング強度のFWHM<=10°は、照明デバイスに、比較的鮮明なカットオフを有するビームを放出させる。即ち、投影ビームの外側の輪郭エッジは、比較的鮮明に観察される一方で、比較的細いビームを維持することができる。
【0017】
照明デバイスの一実施形態は、混合構造部が光源とレンズとの間に提供されることを特徴とする。上記されたように、混合構造部は、曖昧さの増加とビームの広がりとの相反する現象を有する。したがって、これらの2つの相反する現象の適切な設定が選択されなければならない。レンズの出射面上に提供される混合構造部を有する照明デバイスは、本発明の1つの適切な実施形態ではあるが、光源からの光がレンズのバルクに入る前の位置(レンズの上流)に提供される、即ち、レンズの入射面に配置される又は光源とレンズとの間に配置される混合構造部の方が、一般に、混合構造部をレンズの出射面又はレンズの後(レンズの下流)に提供することよりも、上記2つの相反する現象間のより良いバランスをもたらすように思われる。つまり、レンズの入射面の前又は入射面上での小さいブラーリングが、FWHMビーム幅を著しく増加することなく、ビームを滑らかにする。
【0018】
照明デバイスの一実施形態は、混合構造部が別箇の担体上に提供されることを特徴とする。これは、レンズ自体に混合構造部を提供するステップが回避されるので、比較的簡単なソリューションである。更に、レンズの上流でも下流でもよい所望の位置に混合構造部を配置することが単純に可能にされる。更に、第1の混合構造部の第2の異なる混合構造部による取り換えも比較的簡単で安価である。
【0019】
照明デバイスの一実施形態は、混合構造部が光源に向いているレンズの光入射面上に提供されることを特徴とする。したがって、照明デバイスに必要な部品数が低減され、照明デバイスの組み立てがより簡単になる。
【0020】
照明デバイスの一実施形態は、混合構造部が1つの部分にあることを特徴とし、これは、2つの部分に設けられる、即ち、レンズの入射面及び出射面上に設けられる代替混合構造部、又は、3つの部分に設けられる、即ち、別箇の担体上とレンズの入射面及び出射面上とに設けられる代替混合構造部に比べて、照明デバイスの組み立てを比較的簡単にする。しかし、これらの代替案は、所望の曖昧さ及び不所望のビームの広がりの2つの相反する現象間のバランスを細かく調整する可能性を十分に提供する。
【0021】
照明デバイスの一実施形態は、混合構造部が、ファセット、凹面又は凸面小型レンズ、プリズム、プリズムリッジ、ガス包有物、艶消しされた表面、サンドブラストされた表面、エッチングされた表面、粉末包有物からなる群から選択される少なくとも1つのマイクロサイズのテクスチャを有することを特徴とする。マイクロサイズとは、1μm、即ち、少なくとも可視光の波長よりももっと長いサイズから約5000μm、好適には1000μm以下までの範囲内のサイズを意味する。これは、比較的微細な構造部は、ブラーリングを細かく調整する可能性を十分に提供するからである。ガス包有物、艶消しされた表面、サンドブラストされた表面、エッチングされた表面、固体及び/又は液体包有物といった、これらが埋まっている材料とは異なる屈折率を有するランダムブラーリング構造部は、所望の曖昧さの増加を得る一方で、比較的細いビームを保つのに適している。或いは、例えば小型レンズ又はプリズムのテクスチャである幾何学的構造部を使用して、上記所望の効果を実現してもよい。ランダム構造部に比べて、幾何学的構造部の利点は、ランダム構造部よりも幾何学的構造部を用いた方が、光学的機能をよりうまく制御できる点である。その一方で、ランダム構造部は、場合によっては製造が簡単である。
【0022】
複数の小型レンズは、凸小型レンズ及び/又は凹小型レンズを含む。これらのレンズの最適光パワーは、上記されたようにユークリッド差異を測定することによって分かる。照明デバイスの一実施形態は、混合構造部が、規則的な幾何学的構造部として、例えば三角形、四角形、長方形、六角形又は正方形との八角形の組み合わせのモザイク模様表面として具体化されることを特徴とする。規則的な構造部の利点は、正しい混合特性を有するように混合構造部をデザインすることがより簡単である点である。幾何学的形状の例としては、
−光入射面に追加され、例えば三角形構成に置かれるドーム、
−光入射面から引かれ、例えば六角形構成に置かれるドーム、
−例えば正方形構成に置かれる放物隆起又は凹部、
−スター形状構成に光入射面に追加される円柱又は錐体。これは、非円形光源の結像を主に相殺する。ビーム幅への影響は制限されるが、色収差の相殺への影響は低減する。これは、光源が円形ではないことが、色収差よりも問題である場合に利点がある。
−同心構成で光入射面に追加される円環体。これは、主に色収差に影響を有し、非環状にはあまり影響がない。ビーム広がりの効果はより大きい。
【0023】
混合構造部によるブラーリングの度合いは、例えばガス包有物、粒子包有物の密度及び/若しくはサイズ、又は、エンボス加工されたテクスチャプロファイル、プリズム構造部の角度(の広がり)、小型レンズの直径及び半径といった混合構造部のマイクロサイズ要素の幾つかのパラメータによって変化させることができる。更に、混合構造部の材料の屈折率を使用して、ブラーリングの度合いを変化させることができ、又は、混合構造部の表面を形成する及び/又はファセット加工する任意の他の構造部を使用して、ブラーリングの度合いを変化させてもよい。すべてのこれらの表面の重要な特性は、レンズ表面の各位置において、曖昧さを少し増加させ、及び/又は、光の入来ビームを広げる機能である。
【0024】
照明デバイスの一実施形態は、レンズが非球面レンズであることを特徴とする。非球面屈折レンズは、光学収差を低減するが、通常の凸状屈折レンズよりも幾分より複雑な表面プロファイルを有する。凸状屈折レンズは、照明デバイスが比較的効率的であるようにする。これは、光が屈折材料の外表面に比較的垂直に屈折材料に入る及び屈折材料から出るので、フレネル反射が比較的少ないからである。
【0025】
照明デバイスの一実施形態は、レンズが直径D
Lを有し、光源が直径D
LSを有し、D
L/D
LS>=6、好適には、D
L/D
LS>=8であることを特徴とする。D
L/D
LS>=6について、この場合、光源は、レンズに比べて比較的小さいサイズを有するので、多かれ少なかれ、点状の光源であると見なされ、投影ビームにおける光源の結像は、十分に回避することができる。D
L/D
LS>=8の場合、投影ビームにおける光源の結像が、基本的に完全に人間には見えないようにされるので、一層よい結果が得られる。本発明は、例えばハロゲンランプ、高圧ガス放電ランプ(HID)及びLEDであるスポット照明器具における使用から知られている様々な光源に使用することができる。LEDの利点は、LEDが、通常、ハロゲンランプ及びHIDのような全方向性光源よりもより効率的な光入力を可能にする約120°のFWHMのランバート発光パターンで開始する点である。全方向性光源の場合、光源のすぐ後ろの反射鏡が、効率を向上させるのに役立つであろう。(小型)蛍光灯又はOLEDといったより大きい光源は、それらの大きいエタンデュによって、好適ではない。
【0026】
本発明は更に、ブラーリング強度を有する混合構造部が提供されたレンズに関する。FWHMは3°乃至15°の範囲内にあり、混合構造部のブラーリング強度は、光軸からの半径方向における距離Rの増加と共に、徐々に且つ連続的に増加する。このようなレンズは、本発明による照明デバイスに適用可能であるだけでなく、固定レンズ、即ち、光源に対して移動可能ではないレンズを有し、ビーム幅はダイアフラムによって制御される照明デバイスにも適している。
【0027】
本発明は更に、光ビームの所望又は必要品質を得る方法に関する。上記方法は、
一次光ビームを生成する光源を選択するステップと、
二次光ビームについて、色収差及び形状差異のうちの少なくとも一方の少なくとも1つの所望閾値又は必要閾値を選択するステップと、
一次光ビームの二次光ビームへの変換のための混合構造部を提供するステップであって、混合構造部は光軸上に設けられ、FWHMが3°乃至1°の範囲内にあるブラーリング強度FWHMを有し、混合構造部のブラーリング強度は、光軸からの半径方向における距離Rの増加と共に、徐々に且つ連続的に増加する、上記ステップと、
二次光ビームの少なくとも1つの所望閾値又は必要閾値が得られる最小追加ブラーリングを決定するために、混合構造部のブラーリング強度を変化させることによって、光ビームの変換を変化させるステップとを含む。
【0028】
光ビームの変換を評価し、最小値のブラーリングを用いて所望閾値又は必要閾値に達するための便利な方法は、得られた値を追加散乱の関数としてプロットする方法である。プロットが閾値を下回る追加ブラーリングの量が、最少追加ブラーリングである。幾何学的差異の可能な尺度はユークリッド差異である。
【0029】
上記方法において、よりコリメートされた二次光ビームを提供するようにレンズが追加されてもよい。しかし、レンズの存在は、二次ビームにおける光源の結像に影響を及ぼすので、追加ブラーリングを提供する混合構造部のブラーリング特性がそれに応じて調整されなければならない可能性はある。