特許第6345890号(P6345890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6345890
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】照明デバイス、レンズ及び方法
(51)【国際特許分類】
   F21V 5/00 20180101AFI20180611BHJP
   F21K 99/00 20160101ALI20180611BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20180611BHJP
   F21V 13/00 20060101ALI20180611BHJP
   F21V 14/00 20180101ALI20180611BHJP
【FI】
   F21V5/00 510
   F21K99/00
   G02B5/02
   F21V13/00
   F21V14/00
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-560158(P2017-560158)
(86)(22)【出願日】2016年5月11日
(86)【国際出願番号】EP2016060551
(87)【国際公開番号】WO2016184748
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2017年11月17日
(31)【優先権主張番号】15168365.3
(32)【優先日】2015年5月20日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ティッセン ヨアンネス マリア
(72)【発明者】
【氏名】フォルナサ ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】セプハノフ ルスラン アフメドヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】バン デ ワウー インゲ
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/170289(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/124224(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/122459(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 5/00
F21K 99/00
F21V 13/00
F21V 14/00
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って主方向に光ビームを放出する照明デバイスであって、
光源と、
前記光軸上に設けられ、前記光軸に沿って前記光源に対して移動可能である正屈折レンズと、
前記光軸上に設けられ、FWHMが3°乃至15°の範囲内にあるブラーリング強度を有する混合構造部と、
を含み、
前記混合構造部の前記ブラーリング強度は、前記光軸からの半径方向における距離の増加と共に、徐々に且つ連続的に増加する、照明デバイス。
【請求項2】
前記混合構造部の前記ブラーリング強度は、少なくとも1.1倍だけ、好適には少なくとも1.6倍だけ、前記光軸から前記半径方向において増加することを特徴とする、請求項1に記載の照明デバイス。
【請求項3】
前記ブラーリング強度のFWHMは、4.5°乃至10°の範囲内にあることを特徴とする、請求項1又は2に記載の照明デバイス。
【請求項4】
前記ブラーリング強度は、ガウスプロファイルに従う分布を有することを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の照明デバイス。
【請求項5】
前記混合構造部は、前記光源と前記正屈折レンズとの間に設けられることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の照明デバイス。
【請求項6】
前記混合構造部は、別箇の担体上に設けられることを特徴とする、請求項5に記載の照明デバイス。
【請求項7】
前記混合構造部は、前記光源に向いている前記正屈折レンズの光入射面上に設けられることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の照明デバイス。
【請求項8】
前記混合構造部は、1つの部分にあることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の照明デバイス。
【請求項9】
前記混合構造部は、ファセット、凹面又は凸面小型レンズ、プリズム、プリズムリッジ、ガス包有物、艶消しされた表面、サンドブラストされた表面、エッチングされた表面、液体包有物、固体包有物からなる群から選択される少なくとも1つのマイクロサイズのテクスチャを有することを特徴とする、請求項1乃至8の何れか一項に記載の照明デバイス。
【請求項10】
前記混合構造部は、幾何学的な規則的構造部となっていることを特徴とする、請求項1乃至9の何れか一項に記載の照明デバイス。
【請求項11】
前記混合構造部は、ランダム構造部となっていることを特徴とする、請求項1乃至9の何れか一項に記載の照明デバイス。
【請求項12】
前記正屈折レンズは、非球面レンズであることを特徴とする、請求項1乃至11の何れか一項に記載の照明デバイス。
【請求項13】
前記正屈折レンズは、直径Dを有し、前記光源は、直径DLSを有し、D/DLS>=6、好適には、D/DLS>=8であることを特徴とする、請求項1乃至12の何れか一項に記載の照明デバイス。
【請求項14】
FWHMが3°乃至15°の範囲内にあるブラーリング強度を有する混合構造部を備えたレンズであって、
前記混合構造部の前記ブラーリング強度は、光軸からの半径方向における距離の増加と共に、徐々に且つ連続的に増加する、レンズ。
【請求項15】
光ビームの所望品質又は必要品質を得る方法であって、前記方法は、
一次光ビームを生成する光源を選択するステップと、
二次光ビームについて、色収差及び形状差異のうちの少なくとも一方の少なくとも1つの所望閾値又は必要閾値を選択するステップと、
前記一次光ビームの前記二次光ビームへの変換のための混合構造部を提供するステップであって、前記混合構造部は、光軸上に設けられ、FWHMが3°乃至1°の範囲内にあるブラーリング強度FWHMを有し、前記混合構造部の前記ブラーリング強度は、前記光軸からの半径方向における距離の増加と共に、徐々に且つ連続的に増加する、前記ステップと、
前記二次光ビームの前記少なくとも1つの所望閾値又は必要閾値が得られる最小追加ブラーリングを決定するために、前記混合構造部の前記ブラーリング強度を変化させることによって、前記一次光ビームの前記変換を変化させるステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光軸に沿って主方向に光を放出する光源と、光軸上に設けられるレンズとを含む照明デバイスに関する。本発明は更に、レンズと、光ビームの所望品質又は必要品質を得る方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、スポット照明デバイスは、小売店照明及び博物館照明において広く適用されている。配光は、主に光源と、光学的ソリューション、即ち、リフレクタ、TIR−コリメータ又はレンズといった光学部品とによって規定される。各光学的ソリューションは、それ自身の特性、利点及び欠点を有し、光学的構成の選択は、応用の要件に大きく依存する。
【0003】
例えばTIR−コリメータは、高光学効率及び配光の妥当な制御を有するソリューションであるが、可変ビーム幅を作ることができない。リフレクタは、より広いビームには優れた光学効率を有するソリューションになるが、直接光に起因して、通常は、配光において鮮明なカットオフを示さない。これは、ある程度までは、ディープリフレクタによって又は直接光を遮蔽することによって改善することができるが、これは、効率を下げ、非常に細いビームは依然として困難なままである。フレネルレンズは、屈折/反射リングのエッジにおける回折の発生により、配光の均一性を下げる傾向がある。優れた強度分布を有する細いビームは、凸状の正レンズを使用して作ることができるが、色収差及び光源の可視像を示すという欠点を有する。更に、上記正レンズと併せて、例えばLEDが光源として使用される場合、ランバート(Lambertian)LED源からの一部の光はレンズに入らず、ハウジング内で吸収されるので、光学的効率が比較的低くなるというリスクが増加される。ビームの幅は、レンズとLEDとの間の距離を調整することによって変更することができる。
【0004】
それぞれ、自身の欠点を有する従来技術の既知のソリューションを考慮すると、例えば5°〜90°の範囲、例えば5°〜40°又は8°〜20°の範囲から選択される頂角を有する仮想錐体内で放出される一方で、比較的鮮明であり、標準の光強度分布と比較的均一の色配光とを維持する光のビームである非常に細いビームから広いビームまで変化可能なビーム幅を提供する照明デバイスが必要である。このような照明デバイスは、例えば小さい物から大きい物を様々に展示する店舗又は博物館内の物体の照明である数多くの応用に役立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、冒頭段落に説明されたようなタイプであって、ビーム幅を変えることができ、また、上記欠点の少なくとも1つが抑えられる照明デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、冒頭段落に説明されたようなタイプの照明デバイスは、レンズが、光軸に沿って光源に対して移動可能であり、FWHMが3°乃至15°の範囲にあるブラーリング強度を有する混合構造部が、光軸上に設けられることを特徴とし、混合構造部のブラーリング強度は、光軸からの半径方向における距離Rの増加と共に徐々に且つ連続的に増加する。
【0007】
本発明は、好適には、特に博物館照明及びハイエンド小売店照明といった応用において光の質が非常に重要であるスポット照明に使用されることが好適である。本発明による照明デバイスは、細いビーム、可変ビーム、優れた色均一性、回転方向における優れた強度均一性及び優れた半径方向強度プロファイルの組み合わせを提供する。混合構造部は、色収差に起因する色アーチファクト及び他のアーチファクトを低減するように使用される。光線は、レンズの外縁に向かってより急に曲がるので、ブラーリングによる色収差の補正がより重要であり、したがって、レンズの中心よりもエッジに近い方が幾分強い。必要なブラーリング強度は、レンズ材料、レンズ形状、光源形状及び光源からレンズまでの距離といった幾つかのパラメータに依存する。一般に、混合構造部は、曖昧さの増加及びビームの広がりの両方の現象をもたらす。曖昧さは、色収差及び投影面上の光源の結像を無くすので望ましい。しかし、ビームの広がりは、照明デバイスのビーム幅制御の範囲を制限し、しばしば、ビームエッジの鮮明なカットオフを減少させるので望ましくない。したがって、これらの2つの相反する現象の適切な設定が選択されなければならない。
【0008】
好適には、混合構造部のブラーリング強度は、この効果に適切に対処するために、光軸から半径方向において、少なくとも1.1倍、例えば1.25倍だけ増加するが、ビームの不鮮明なエッジ及び/又はビームの広がりを回避するために、1.6倍未満であることが好適である。ほんの一例として、中心において、混合構造部によって追加された5°のFWHMのブラーリング強度を有するレンズは、レンズのエッジにおいて、5.5°乃至9°のFWHMの範囲内のブラーリング強度を有することが好適である。
【0009】
ブラーリング強度は、次の通りに決定される。即ち、最初に、レーザビームの(光)線のコリメートされた束、即ち、基本的に0°の半値全幅(FWHM)を有する光ビーム(即ち、レーザビーム)が取られる。当該光線の束のコリメートされたビームは、混合構造部を通り伝搬し、結果として、ビームの光の少し発散する光線の束への広がりがもたらされる。当該少し発散する光線は、錐体軸(光軸と一致してもよい)の周りで仮想錐体へと伝搬し、仮想錐体は、3°乃至15°の範囲内の頂角を有する。コリメートされたビーム(FWHM=0°を有する)における光線の束からの光の広がったビームにおける相互に発散する光線の束への広がりは、FWHMとして測定され、混合構造部のブラーリング強度として規定される。即ち、本発明では、特に、上記ブラーリング強度は、3°乃至15°のFWHMの範囲内であるように設定される。所望のブラーリング強度は、例えばサンドブラスト加工された表面であるランダムマイクロサイズ構造部によって又は例えば円角錐のモザイク模様表面である規則的なマイクロサイズ幾何学的構造部によって得ることができる。マイクロサイズとは、1μm、即ち、少なくとも可視光の波長よりももっと長いサイズから約5000μm又は好適には1000μmまでの範囲内のサイズを意味する。ランダム構造部は、一般に、作ることが比較的簡単であり、ブラーリング強度に、好ましい滑らかなビームエッジを有するガウス状ビームを与えるようにするので有利である。ブラーリングが、ガウス分布又はプロファイルを有する場合、ブラーリング強度は、ガウスシグマ、即ち、σでも表すことができ、ここで、σ=FWHM/2.355である。ブラーリングは、横断方向では異なっていてもよい。即ち、x方向では、ブラーリングは例えばたった3°であるが、横断y方向では、ブラーリングは例えば12°であってよく、これは、所望のビームパターンとは無関係である。
【0010】
一般に、FWHM3°乃至15°の範囲におけるブラーリング強度は、標準強度プロファイルを有し、また、均一色分布を有するビームをもたらすように思われる。したがって、例えば光源がLEDである場合、このような程度の散乱は、照明デバイスに、動作中に、所望の質の光ビームを放出される。特に、ブラーリング強度の3°の下限値は、ビームに、許容可能に低い程度の色収差を有するようにさせる。即ち、色収差は、観察可能となる閾値レベルちょうどであるか又は下回る。特に、色空間として、CIE(u’,v’)色度図を使用する場合、ビーム内の色収差は、ほとんどの応用について実用的かつ許容可能に低い値であるビームの平均色から上記色空間における座標の0.0055(u’,v’)未満の半径を有する円よりも小さい。好適には、上記半径は、座標の0.0013(u’,v’)以下である。即ち、(u’,v’)図の白色領域において、色差が人間によってもはや観察されない50%の確率におけるちょうど知覚可能な色度差を下回る。上記半径が、(u’,v’)座標の0.0011以下である場合、色差は、人間によってもはや観察可能ではない。ブラーリング強度が高いほど、色収差の不在及びユークリッド差異(Euclidian difference)の不在、即ち、投影ビームにおける光源像の可視性の不在に関して、ビームの均一性が良くなる。しかし、ブラーリングは過度になるべきではない。したがって、ブラーリング強度の15°の上限値よりも下では、照明デバイスによって放出される光ビームは、依然として、ほとんどの応用について許容可能に細いことが可能である。
【0011】
更に、ブラーリングは、拡散散乱と混同されるべきではない。拡散散乱では、拡散散乱が生じる各位置は、ランバート光源として挙動し、元の一次光ビームの比較的小さいエタンデュが増加される。しかし、本発明では、ブラーリングは、事実上常に、ある程度の表面粗さ、内部凹凸又は境界による数パーセント(例えば5%)の散乱を含む。本発明では、混合構造部による拡散散乱は、ある程度まで許可され、混合構造部に衝突する光の最大25%まで拡散散乱されてよい。例えばサンドブラスト又はエッチングによって得られる混合構造部の場合、大量の拡散散乱の高いリスクがある。サンドブラストされた又はエッチングされた表面による拡散散乱の量は、例えばサンドブラスティング/エッチングの度合いによって、また、これにより得られたパターンの密度によって制御される。即ち、処理表面は、混合構造部に衝突する光のかなりの部分(例えば少なくとも75%)が影響を受けずに、その元の経路に沿って伝搬するようにほんの軽くサンドブラスト/エッチングされる。混合構造部による拡散散乱は、例えばマイクロサイズのランダムテクスチャ又は小型レンズ、プリズム、ファセットのようなマイクロサイズの規則的な幾何学的構造であるエンボス加工構造部を含む混合構造部の実施形態を用いて制御することがより容易である。エンボス加工構造部の丸みを帯びたエッジ及び急な推移部の不在によって、このようなエンボス加工構造部は、通常、例えば3%といったように10%以下の少ない拡散散乱が伴う。
【0012】
投影ビームにおける光源の結像の度合いに関して、長さにおける幾何学的な差異が測定され、本発明では、ユークリッド差異がこのために使用される。ユークリッド差異は、ユークリッド距離、即ち、ユークリッド空間における2点間の直線距離として使用される。そのために、追加ブラーリングのない投影光ビームにおける光源の像に関して、2つの(好適には最も異なる)横断面のユークリッド差異の基本値が測定される。次に、同じ横断面に亘って、ブラーリングが追加された投影光ビームにおける光源の像に関して、ユークリッド差異が決定され、上記基本値によって分割され、ユークリッド差異の正規化値がもたらされる。この正規化値が選択された所望の閾値を下回る場合、例えばここでは10%を下回る場合、光源の結像は十分に不在であると見なされる又は不可視であると見なされる。
【0013】
照明デバイスの所望のビーム特性に依存して、光源及びレンズ材料を選択することができる。光源は、好適にはLED又は複数のLED(例えば白色、RGBW又はRGBA)である。これらは比較的安価であり、低電圧応用を可能にし、半球状に順方向においてのみ発光するからである。しかし、或いは、小型HIDランプ又はハロゲンランプを光源として使用することもできる。
【0014】
レンズは、例えば屈折性非球面レンズ、球面レンズ、双曲線レンズ、凸凹レンズ、平凸レンズ又は両凸レンズであってよい。正レンズは、一般に、比較的細いビームになるように、光の方向を転換し、光を収束し及び/又は光をコリメートする。色収差は、様々な波長の屈折率の違いによってもたらされる。レンズ材料は、例えば軟質ガラス、硬質グラス、石英ガラス、又は、PMMA、ポリカーボネート若しくはポリエチレンといったポリマー材料から選択されるが、他の(コ)ポリマーも可能である。ガラスレンズは、一般に、例えば光源によってもたらされる高温に幾分優れた耐性があるが、一方で、合成レンズは、ガラスレンズよりも(重量が)幾分軽い。
【0015】
次の表は、幾つかの適切なレンズ材料の屈折率と波長との関係を示す。
【表1】
【0016】
上記されたように、光源(LED)がレンズの焦点に近い又は焦点内にある場合、光源の像が、例えば壁又は被照明物体である投影面上に投影される。この像はあまり鮮明ではないが、好適である滑らかで均一の回転対称ビームではない。照明デバイスの一実施形態は、ブラーリング強度のFWHMが4.5°乃至10°の範囲内にあることを特徴とする。ブラーリング強度のFWHM>=4.5°は、照明デバイスに、投影面上への光源の結像が事実上取り除かれたビームを放出させる。即ち、投影ビームにおける結像光源のユークリッド差異の正規化値は10%未満である。ブラーリング強度のFWHM<=10°は、照明デバイスに、比較的鮮明なカットオフを有するビームを放出させる。即ち、投影ビームの外側の輪郭エッジは、比較的鮮明に観察される一方で、比較的細いビームを維持することができる。
【0017】
照明デバイスの一実施形態は、混合構造部が光源とレンズとの間に提供されることを特徴とする。上記されたように、混合構造部は、曖昧さの増加とビームの広がりとの相反する現象を有する。したがって、これらの2つの相反する現象の適切な設定が選択されなければならない。レンズの出射面上に提供される混合構造部を有する照明デバイスは、本発明の1つの適切な実施形態ではあるが、光源からの光がレンズのバルクに入る前の位置(レンズの上流)に提供される、即ち、レンズの入射面に配置される又は光源とレンズとの間に配置される混合構造部の方が、一般に、混合構造部をレンズの出射面又はレンズの後(レンズの下流)に提供することよりも、上記2つの相反する現象間のより良いバランスをもたらすように思われる。つまり、レンズの入射面の前又は入射面上での小さいブラーリングが、FWHMビーム幅を著しく増加することなく、ビームを滑らかにする。
【0018】
照明デバイスの一実施形態は、混合構造部が別箇の担体上に提供されることを特徴とする。これは、レンズ自体に混合構造部を提供するステップが回避されるので、比較的簡単なソリューションである。更に、レンズの上流でも下流でもよい所望の位置に混合構造部を配置することが単純に可能にされる。更に、第1の混合構造部の第2の異なる混合構造部による取り換えも比較的簡単で安価である。
【0019】
照明デバイスの一実施形態は、混合構造部が光源に向いているレンズの光入射面上に提供されることを特徴とする。したがって、照明デバイスに必要な部品数が低減され、照明デバイスの組み立てがより簡単になる。
【0020】
照明デバイスの一実施形態は、混合構造部が1つの部分にあることを特徴とし、これは、2つの部分に設けられる、即ち、レンズの入射面及び出射面上に設けられる代替混合構造部、又は、3つの部分に設けられる、即ち、別箇の担体上とレンズの入射面及び出射面上とに設けられる代替混合構造部に比べて、照明デバイスの組み立てを比較的簡単にする。しかし、これらの代替案は、所望の曖昧さ及び不所望のビームの広がりの2つの相反する現象間のバランスを細かく調整する可能性を十分に提供する。
【0021】
照明デバイスの一実施形態は、混合構造部が、ファセット、凹面又は凸面小型レンズ、プリズム、プリズムリッジ、ガス包有物、艶消しされた表面、サンドブラストされた表面、エッチングされた表面、粉末包有物からなる群から選択される少なくとも1つのマイクロサイズのテクスチャを有することを特徴とする。マイクロサイズとは、1μm、即ち、少なくとも可視光の波長よりももっと長いサイズから約5000μm、好適には1000μm以下までの範囲内のサイズを意味する。これは、比較的微細な構造部は、ブラーリングを細かく調整する可能性を十分に提供するからである。ガス包有物、艶消しされた表面、サンドブラストされた表面、エッチングされた表面、固体及び/又は液体包有物といった、これらが埋まっている材料とは異なる屈折率を有するランダムブラーリング構造部は、所望の曖昧さの増加を得る一方で、比較的細いビームを保つのに適している。或いは、例えば小型レンズ又はプリズムのテクスチャである幾何学的構造部を使用して、上記所望の効果を実現してもよい。ランダム構造部に比べて、幾何学的構造部の利点は、ランダム構造部よりも幾何学的構造部を用いた方が、光学的機能をよりうまく制御できる点である。その一方で、ランダム構造部は、場合によっては製造が簡単である。
【0022】
複数の小型レンズは、凸小型レンズ及び/又は凹小型レンズを含む。これらのレンズの最適光パワーは、上記されたようにユークリッド差異を測定することによって分かる。照明デバイスの一実施形態は、混合構造部が、規則的な幾何学的構造部として、例えば三角形、四角形、長方形、六角形又は正方形との八角形の組み合わせのモザイク模様表面として具体化されることを特徴とする。規則的な構造部の利点は、正しい混合特性を有するように混合構造部をデザインすることがより簡単である点である。幾何学的形状の例としては、
−光入射面に追加され、例えば三角形構成に置かれるドーム、
−光入射面から引かれ、例えば六角形構成に置かれるドーム、
−例えば正方形構成に置かれる放物隆起又は凹部、
−スター形状構成に光入射面に追加される円柱又は錐体。これは、非円形光源の結像を主に相殺する。ビーム幅への影響は制限されるが、色収差の相殺への影響は低減する。これは、光源が円形ではないことが、色収差よりも問題である場合に利点がある。
−同心構成で光入射面に追加される円環体。これは、主に色収差に影響を有し、非環状にはあまり影響がない。ビーム広がりの効果はより大きい。
【0023】
混合構造部によるブラーリングの度合いは、例えばガス包有物、粒子包有物の密度及び/若しくはサイズ、又は、エンボス加工されたテクスチャプロファイル、プリズム構造部の角度(の広がり)、小型レンズの直径及び半径といった混合構造部のマイクロサイズ要素の幾つかのパラメータによって変化させることができる。更に、混合構造部の材料の屈折率を使用して、ブラーリングの度合いを変化させることができ、又は、混合構造部の表面を形成する及び/又はファセット加工する任意の他の構造部を使用して、ブラーリングの度合いを変化させてもよい。すべてのこれらの表面の重要な特性は、レンズ表面の各位置において、曖昧さを少し増加させ、及び/又は、光の入来ビームを広げる機能である。
【0024】
照明デバイスの一実施形態は、レンズが非球面レンズであることを特徴とする。非球面屈折レンズは、光学収差を低減するが、通常の凸状屈折レンズよりも幾分より複雑な表面プロファイルを有する。凸状屈折レンズは、照明デバイスが比較的効率的であるようにする。これは、光が屈折材料の外表面に比較的垂直に屈折材料に入る及び屈折材料から出るので、フレネル反射が比較的少ないからである。
【0025】
照明デバイスの一実施形態は、レンズが直径Dを有し、光源が直径DLSを有し、D/DLS>=6、好適には、D/DLS>=8であることを特徴とする。D/DLS>=6について、この場合、光源は、レンズに比べて比較的小さいサイズを有するので、多かれ少なかれ、点状の光源であると見なされ、投影ビームにおける光源の結像は、十分に回避することができる。D/DLS>=8の場合、投影ビームにおける光源の結像が、基本的に完全に人間には見えないようにされるので、一層よい結果が得られる。本発明は、例えばハロゲンランプ、高圧ガス放電ランプ(HID)及びLEDであるスポット照明器具における使用から知られている様々な光源に使用することができる。LEDの利点は、LEDが、通常、ハロゲンランプ及びHIDのような全方向性光源よりもより効率的な光入力を可能にする約120°のFWHMのランバート発光パターンで開始する点である。全方向性光源の場合、光源のすぐ後ろの反射鏡が、効率を向上させるのに役立つであろう。(小型)蛍光灯又はOLEDといったより大きい光源は、それらの大きいエタンデュによって、好適ではない。
【0026】
本発明は更に、ブラーリング強度を有する混合構造部が提供されたレンズに関する。FWHMは3°乃至15°の範囲内にあり、混合構造部のブラーリング強度は、光軸からの半径方向における距離Rの増加と共に、徐々に且つ連続的に増加する。このようなレンズは、本発明による照明デバイスに適用可能であるだけでなく、固定レンズ、即ち、光源に対して移動可能ではないレンズを有し、ビーム幅はダイアフラムによって制御される照明デバイスにも適している。
【0027】
本発明は更に、光ビームの所望又は必要品質を得る方法に関する。上記方法は、
一次光ビームを生成する光源を選択するステップと、
二次光ビームについて、色収差及び形状差異のうちの少なくとも一方の少なくとも1つの所望閾値又は必要閾値を選択するステップと、
一次光ビームの二次光ビームへの変換のための混合構造部を提供するステップであって、混合構造部は光軸上に設けられ、FWHMが3°乃至1°の範囲内にあるブラーリング強度FWHMを有し、混合構造部のブラーリング強度は、光軸からの半径方向における距離Rの増加と共に、徐々に且つ連続的に増加する、上記ステップと、
二次光ビームの少なくとも1つの所望閾値又は必要閾値が得られる最小追加ブラーリングを決定するために、混合構造部のブラーリング強度を変化させることによって、光ビームの変換を変化させるステップとを含む。
【0028】
光ビームの変換を評価し、最小値のブラーリングを用いて所望閾値又は必要閾値に達するための便利な方法は、得られた値を追加散乱の関数としてプロットする方法である。プロットが閾値を下回る追加ブラーリングの量が、最少追加ブラーリングである。幾何学的差異の可能な尺度はユークリッド差異である。
【0029】
上記方法において、よりコリメートされた二次光ビームを提供するようにレンズが追加されてもよい。しかし、レンズの存在は、二次ビームにおける光源の結像に影響を及ぼすので、追加ブラーリングを提供する混合構造部のブラーリング特性がそれに応じて調整されなければならない可能性はある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明は、以下に略図によって更に説明される。
【0031】
図1図1は、本発明による照明デバイスの第1の実施形態の横断面を示す。
図2図2は、既知の照明デバイス及び図1の照明デバイスによって得られるビームのビームスポット及び特性を示す。
図3A図3Aは、混合構造部によって追加されたブラーリングに関して、レンズによるLED光源の結像の関係を示す。
図3B図3Bは、混合構造部によって追加されたブラーリングに関して、レンズによるLED光源の結像の関係を示す。
図4A図4Aは、レンズの入射面上に提供される本発明による混合構造部の第1の例を示す。
図4B図4Bは、レンズの入射面上に提供される本発明による混合構造部の第1の例を示す。
図5A図5Aは、本発明による混合構造部の第2の例を示す。
図5B図5Bは、混合構造部の変化に関して、結像のシミュレーション結果を示す。
図6A図6Aは、本発明による混合構造部の第3の例を示す。
図6B図6Bは、混合構造部の変化に関して、結像のシミュレーション結果を示す。
図7A図7Aは、追加ブラーリングを有さない場合及び有する場合の光度プロファイルを示す。
図7B図7Bは、追加ブラーリングを有さない場合及び有する場合のFWHM=13°を有するビームの横断面の色差du’v’を示す。
図8A図8Aは、光軸からの半径方向距離の関数としてブラーリング強度の一例を示す。
図8B図8Bは、光軸からの半径方向距離の関数としてブラーリング強度の一例を示す。
図8C図8Cは、光軸からの半径方向距離の関数としてブラーリング強度の一例を示す。
図8D図8Dは、光軸からの半径方向距離の関数としてブラーリング強度の一例を示す。
図8E図8Eは、光軸からの半径方向距離の関数としてブラーリング強度の一例を示す。
図8F図8Fは、光軸からの半径方向距離の関数としてブラーリング強度の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明による照明デバイス1の第1の実施形態の横断面を示す。照明デバイスは、光軸5を中心として光軸の周り配置されるハウジング3を含み、光軸を中心として光軸上に取り付けられる光源7を収容する。図1における光源は、約1cmの直径DLSを有するドーム9を含むLEDである。LEDは、一次光ビーム12を放出する。ハウジングは更に、光軸を中心として光軸上に取り付けられ、約7cmのレンズ直径Dを有し、光軸に沿って及び/又は光軸に亘って光源に対して移動可能であるガラスレンズ11、即ち、LIBA2000を含む。レンズは、光入射面13と光出射面14とを有する。光入射面には、約4.5°のFWHMのブラーリング強度を有する混合構造部15が提供されている。ブラーリングはガウス分布を有する。照明デバイスは、二次光ビーム16を放出する。
【0033】
図2は、3つの既知の照明デバイス2によって得られる二次ビームと、図1の本発明の実施形態による照明デバイス1から得られるビーム18とのビームスポット及び特性の印象を与える。図示されるように、本発明の照明デバイスでは、二次光ビームの比較的細いビームスポット17を得ることができる。当該二次光ビームは、可変及び均一であり、ビームエッジ19において鮮明なカットオフを有する。本発明による照明デバイスは、一般に、すべての既知の照明デバイスよりも優れ、また、可変ビームの特徴により、TIRコリメータを使用する照明デバイスよりも幾分効率が劣るのみである。当該光学効率は、TIRレンズが使用されない場合は比較的低い。これは、ランバートLED源からの一部の光がレンズに入射せず、ハウジング内で吸収されるからである。一方で、TIRレンズは、基本的にすべての光を捕捉するが、可変ビームを可能にしないため、本発明の目的を果たさない。レンズに直接入らない光は、吸収されるのではなく反射され、光学効率を増加するが、これは、ビームを広げるリスクを高めてしまう。
【0034】
図3A及び図3Bは、混合構造部によって追加された散乱に関して、レンズによるLED光源の結像の関係を示す。結像及び色収差を抑えるために、レンズの入射面のブラーリング強度は、ビーム内に可視である像がもはやない程度にまで曖昧さが増加するまで増加される。可視性は、理論上正方形であるLED光源1のA−Aと斜め線B−Bとに亘る強度横断面間の相対的差異として規定される。これらの横断面間の差異は、ベクトル間のユークリッド差異として規定される。これらの横断面間の差異は、多くのやり方で規定することができるが、ここでは、ユークリッド距離が使用される。しかし、像の可視性は、常に差異に比例し、定義とは無関係である。任意のブラーリングのない像形成の場合における差異は、1に正規化され、したがって、図3Bは、相対的差異をユークリッド距離で示す。混合構造部によって追加されたブラーリングに関して、LED光源のレンズによる結像の関係の図3Bの曲線21によって示されるように、ブラーリング強度が増加すると、像はより不明瞭となり、したがって、横断面間の差異は減少する。即ち、強度プロファイルは丸に近づく。図3Bでは、点20における最大可視性の10%の閾値にある像形成は、像形成の不在として規定される。曲線から、理論上正方形のLED光源のこの特定の場合では、FWHMについてのブラーリング強度は、投影ビームにおける結像の不在について約9°である。円形により近い実際の光源の場合、より軽度のブラーリングが十分であり、一般に、丸い光源については、約4°の追加ブラーリング強度が、結像に適切に抑えるためには十分である。なお、応用要件に依存して、例えば最大可視性の20%又は5%である他の閾値を使用してもよく、また、ユーザテストによって規定されてもよい。壁に投影される像が、ブラーリングなしの場合23と、約9°のFWHMの追加ブラーリングを有する場合25とについて示されている。同様のモデルを使用して、ブラーリング構造部の最低要件を規定して、色収差の可視効果を低減/除去することができる。図6A及び図6Bを参照されたい。
【0035】
図4Aは、ガラスレンズ11の入射面13上に提供される本発明のランダム混合構造部15の第1の例を示す。入射面は、レンズが制御されたブラーリング特性(図4Aでは、約4.5°のFWHMでの追加ブラーリング)を有するようにさせる典型的なテクスチャ27を有する。ランダム混合構造部は、10分の数マイクロメートルから数百のマイクロメートルまで変化する直径/サイズと、約1マイクロメートルから約20マイクロメートルまで変化する高さとを有する不規則な凸凹を含むテクスチャを有する。混合構造部を有するレンズは、レンズの熱いガラスをモールドに圧入することによって作成され、(ミラー)テクスチャは、モールドの平面側にある。表面構造部を作成する他の方法を使用してもよく、例えばガス包有物又は粉末包含を使用する方法、又は、透明レンズ若しくは担体の表面をエッチング剤若しくはサンドブラスティングで処理する方法を使用してもよい。或いは、テクスチャ加工された混合構造部は、同じ所望のブラーリング効果を達成する小型レンズ又はプリズムのテクスチャによって得ることもできる。図4Bは、ステッププロファイラによって測定されるレンズ上に提供されるテクスチャの一部のプロファイルを示す。
【0036】
図5A及び図5Bは、レンズ11上に六角形に配列された小型レンズ31のモザイク模様表面を含む本発明による混合構造部15の第2の例と、小型レンズ曲率に関連して、結像のシミュレーション結果(図5B)とを示す。図5Aに、六角形に配列された小型レンズの混合構造部のテクスチャが示される。凸状の六角形に配列された球面小型レンズの規則的構造部の影響は、ランダム構造部と同様にシミュレートされ、光源の像の可視性は、混合構造部が不在である場合の100%に設定される。この例では、PMMAレンズの入射面上に提供される各小型レンズについて、0.9mmの直径が使用される。これは、一例に過ぎず、他の適切な材料及び1mm以下の任意の直径も、製造のために小さ過ぎない又は光の波長に近過ぎない限り、即ち、直径が少なくとも1μmである限り、使用することができる。小型レンズは、約3mmのレンズの曲率半径を有する0.9mmの球面キャップであり、図5Aに示されるように、六角形配列に置かれる。多くのシミュレーションが、小型レンズの数と小型レンズの0.9mmの(投影)直径とを維持しつつ、様々な異なるレンズ曲率半径について行われる。図5Bに、結果がプロットされる。グラフ33は、LEDの像の可視性が、約3mmのレンズ半径及び0.9mmの(投影)直径を有する点35において〜10%まで低減されたことを示し、したがって、もはや可視ではないと見なされる。
【0037】
図6Aに示されるように、約100μmのサイズの直径を有する六角形ファセット32を有するファセット加工表面を有する混合構造部15の第3の実施形態についても同様のシミュレーションが行われている。混合構造部の当該第3の実施形態は、光源と、レンズの入射面から3.6mm上流にあるレンズとの間に配置される1mmの厚さの別個の担体34の入射面上に提供される。図6Bにおいて、これらのシミュレーションの結果がグラフ33によって示される。担体の平面の主表面に対するファセットの平均配向(ファセット傾斜と呼ばれる)の変化によって、上記主表面は光軸にほぼ垂直に方向付けられた状態で、混合構造部のブラーリング強度は変化し、これは、約20°のファセット傾斜まで行われる。平均ファセット傾斜が約7°より多い場合、即ち、点35以降、光源の結像は10%未満である。ランダムに分布したファセットのファセット加工表面を有する混合構造部の結果が示されているが、シミュレーションから、(実現したいと思うこの広がりビームの形状が何であるかに依存して)他の分布を使用することも可能であり、また、ファセット傾斜の小さい角度(20°まで)に関して、ファセットの正確な角分布は関与せず、即ち、均等分布を使用することもできると思われる。
【0038】
図7A及び図7Bは、追加ブラーリングを有さない場合37と、ガウス分布を有するハーフビームの4.23°のFWHMの追加ブラーリングを有する場合39との強度プロファイル(図7A)と、追加ブラーリングを有さない場合41と、ガウス分布を有する8.5°のFWHMの追加ブラーリングを有する場合43とのFWHM=13°を有するビームの横断面の色差du’v’(図7B)とを示す。混合構造部を用いて、色収差によってもたらされる色アーチファクト及び例えば結像である他のアーチファクトが最小限に抑えられる。必要とされるブラーリング強度は、材料、レンズ形状、光源形状及び光源からレンズまでの距離といった幾つかのパラメータに依存する。必要とされる混合構造部は、以下に説明される方法を使用するシミュレーションによって決定することができる。
【0039】
混合構造部の効果のシミュレーションのために、直径12mmの丸い光源が使用され、色差を規定するために、du’v’が使用される。基準は、u’v’加重平均である。スポット照明の色アーチファクト用のエネルギースター(TM)基準は、du’v’<=0.005が最大強度の10%以内であることを必要とするが、様々な応用が様々な要件を有してよい。博物館照明といった非常に要件が厳しい応用では、最大強度の1%以内のdu’v’<=0.005が適用される。
【0040】
シミュレーションでは、レンズの入射面に提供されるガウス分布を有する8.5°のFWHMの追加ブラーリングが適用される。図7Aにおけるグラフは、ビーム内の角度に関して、線形強度分布を示す。実線はブラーリングなしの強度分布であり、点線は上記混合構造部を有する同じレンズの光強度分布を示す。図7Aにプロットされるグラフは、ブラーリングが、ビームの鮮明さ、即ち、約8°を有するビームを滑らかにするが、FWHMビーム幅への影響は非常に限定されている、即ち、ほんの約2°であることを示す。即ち、図7Aにおけるグラフは、レンズの入射面上の小さい(ガウス)ブラーリングは、FWHMビーム幅を増加させることなく、ビームを滑らかにすることを示す。ビームの鮮明さは、強度が最大強度の90%から最大強度の10%まで減少する角度空間(angular space)として説明することができる。角度空間が小さい場合、ビームは鮮明である。図7Aは、混合構造部による追加ブラーリングのない光ビームでは、強度は、小さい角度空間において90%から10%まで減少する、即ち、約5°における90%から約7.5°における10%まで減少することを示す。図7Aは更に、混合構造部による追加ブラーリングのある光ビームでは、配光は、基本的にガウス分布である曲線に従い、また、強度が90%から10%まで減少する角度空間は、この場合、ずっと大きく、即ち、約3°における90%から約9°における10%に減少することを示す。したがって、追加ブラーリングを有するビームは、あまり鮮明ではないが、光源及びリフレクタの同等の組み合わせによって得られるものより依然として鮮明である。
【0041】
図7Bにおけるグラフは、ビーム内の角度に関してdu’v’を示す。実線は、強度が依然として高い6°と7°との間の領域におけるdu’v’の大きい増加を示す。即ち、図7Aにおけるグラフは、当該領域における強度は、最大で、最大強度のほぼ40%であることを示す。これは、エネルギースター基準には準ぜず、要件の厳しい応用では容認できない。これとは対照的に、図7Bにおける点線は、du’v’が最大強度の1%の強度において、約0.002であることを示す。これは、混合構造部によってもたらされるブラーリング効果の結果である。本発明による照明デバイスは、強度分布及び色差du’v’について点線の特徴を有し、上記エネルギースター(TM)基準の仕様を満たす。更には、ブラーリングは、色収差が容認可能であるために、少し少なくてもよく、これにより、ビームの強度プロファイルが幾分良くなる。最適値は、トライアルアンドエラー処理においてシミュレーションによって規定することができる。好適には、ビーム広がりの所望量は、色収差の不在及び結像の不在について必要とされる2つの最小値のうちの大きい方であり、両方の基準は満たされるが、任意の目に見えるメリットなしにビーム幅を広げる可能性のある任意の追加の不必要な広がりが回避される。
【0042】
レンズの入射面上のブラーリングのFWHMが、ブラーリング構造部なしでのビーム角のFWHMよりも大きい場合、ビーム幅のFWHMは増加する。これは、FWHMにおける最大広がりが、ブラーリング構造部のない同じレンズ形状のビーム幅のFWHMに等しいという結論をもたらす。これが、基準系の変更できないパラメータに起因して十分な結果をもたらさない場合、より大きいビームが容認されるべきである。
【0043】
図8A乃至図8Fは、光軸からの半径方向距離の関数としてブラーリング強度のFWHMの例を示す。図示されるように、ブラーリング強度は、半径方向Rにおける様々なプロファイルに従って変化する。ブラーリング強度のFWHMは、一定の小さい勾配(図8B)で、幾分増加する勾配(図8A)で、幾分減少する勾配(図8C)で又は急増する勾配(図8E)で徐々に増加してよい。ブラーリング強度は、段階的であるが、連続的且つ徐々に増加し、1つの階段を有しても(図8F)又は複数のステップ(図8D)を有してもよい。図示されるように、ほとんどの場合、混合構造部のブラーリング強度FWHMは、少なくとも1.1倍、好適には少なくとも1.6倍だけ光軸から半径方向Rにおいて増加する。図8Dでは、当該倍率は約2.8である。図8A乃至図8Fは、幾つかの例を示すに過ぎず、他の勾配も想到可能であることは明らかである。
【要約】
本発明は、光軸に沿って主方向に光ビームを放出する照明デバイスに関する。照明デバイスは、光源と、光軸上に設けられ、光軸上を光源に対して移動可能である正屈折レンズとを含む。照明デバイスは更に、光軸上に提供され、FWHMが3°乃至15°の範囲内にある追加的ブラーリング強度を有する混合構造部を含む。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F