(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照しながら本発明の第一実施形態である表示装置が説明される。
図1Aに一実施形態の表示装置の一画素分の概略の断面図が、
図2に
図1Aの駆動素子部の等価回路が、
図3A〜3G及び
図4A〜4Gにその製造工程の断面図及び平面図がそれぞれ示されている。
【0012】
本発明の一実施形態の表示装置は、
図1A及び
図1Bにその断面の説明図が示されるように、駆動素子13上に絶縁層(いわゆる平坦化膜)25を形成したTFT基板20と、液晶組成物を含む液晶層32と、液晶層32を介してTFT基板20に対向する、透明電極33を備えた対向基板50と、対向基板50の液晶層32に対向する面と反対面に設けた偏光板34と、を有している。そして、表示領域内に互いに隣接する第一領域Rと第二領域Tとからなる複数個の画素を有し、第一領域Rは、TFT基板20の絶縁層25の上方に反射電極31を備え、第二領域Tは、TFT基板20の絶縁層25の上に第一電極41、有機層43、及び第二電極44を積層した発光素子40とを備えている。発光素子40は、各画素の発光領域毎に全体を覆う被覆層45を有し、被覆層45の辺縁は、絶縁層25と接合している。
【0013】
すなわち、本実施形態の表示装置は、一画素の第一領域Rに反射型の液晶表示素子30が形成され、一画素の第一領域Rと隣接する第二領域Tに例えば有機EL表示素子などの発光素子40が形成されている。反射型の液晶表示素子30は、反射電極31と液晶層32と透明電極33と偏光板34とで構成されている。この液晶層32、透明電極33を含む対向基板50、及び偏光板34は、第二領域Tの方まで延びて、表示装置の全体に形成されている。また、発光素子40は、第一電極41と発光領域を画定する、いわゆる絶縁バンクと呼ばれる第二の絶縁層42と、有機層43と、第二電極44と、その周囲を被覆する被覆層45とを含んでいる。第二の絶縁層42は、第一領域Rの絶縁層25の上にも同じ材料で、かつ、ほぼ同じ厚さに形成されているが、第二領域Tのいわゆる絶縁バンクと呼ばれる第二の絶縁層42とは分離されているので、第一領域Rでの第二の絶縁層は第三の絶縁層42aと称される。本実施形態では、この発光素子40の被覆層45が発光素子40の有機層43や第二電極44を包含するように被覆してその辺縁が絶縁層25と接合していることに特徴がある。
【0014】
ここに辺縁とは、絶縁層25と接合するために絶縁層25の側に延びる面の縁部を意味し、例えば
図1Aに示されるように、被覆層45の端部とか、図示されていないが、この被覆層45がさらに第一領域Rの第三の絶縁層42a上に延びて形成され、その途中で
図1Aに示されるように絶縁層25と接合される中間部も含む。要するに、絶縁層25の露出部に向かう被覆層45の部分を意味する。
【0015】
前述のように、本発明者らは、
図5に示される従来の表示装置では、無機膜からなる透明絶縁層95が表面に形成されているにもかかわらず、水分の浸入によって、有機層93が劣化することを見出した。そして、本発明者らが、さらに鋭意検討を重ねて調べた結果、
図5に示される従来の構造では、液晶表示素子80の反射電極(画素電極)85と、液晶表示素子80用のTFT82のドレインとを接続するためのコンタクト85aを形成する際に水分が浸入することを見出した。すなわち、コンタクト85aを形成するために、透明絶縁層95及びカソード電極94にもコンタクト孔が形成される。そのため、このコンタクト孔の形成の際に水分が浸入し、その水分が有機層93まで達して有機層93を劣化させていることを見出した。特に、カソード電極94として、光を透過させるMg-Agが代表的に用いられるが、発光素子40のカソード電極94はMg-Agに限らず水分で腐食しやすく、コンタクト孔の形成時に発生した腐食はカソード電極94の層全体に拡がり、有機層93の劣化を引き起こすことを本発明者らは見出した。
【0016】
発光素子40(以下、有機EL表示素子40ともいう)の構成は後で詳述されるが、本実施形態では、
図1Aに示されるように、有機EL表示素子40の第二電極(カソード電極)44は、第二領域T内の有機EL表示素子40の上層に形成され、有機層43と共に被覆層(TFE;Thin Film Encapsulation)45で包含されている。被覆層(TFE)45は、第二電極44及び有機層43を包含し、少なくとも一部(辺縁)が絶縁層25と接合している。すなわち、この被覆層45は、後述されるように、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜などの無機絶縁膜で形成されており、絶縁層25と接合されている。要するに、有機層43や第二電極44が被覆層45によって包含されているということは、被覆層45によって完全に包囲されていることを意味し、前述の特許文献1に示されるように、コンタクトのための貫通孔も形成されていないことを意味している。そのため、本実施形態の有機EL表示素子40の有機層43及び第二電極44は、完全に外気と遮断されて保護さており、そのことに本実施形態の特徴がある。
【0017】
この被覆層45と絶縁層25との接合は、
図1Aに示されるように、絶縁層25の表面に密接するように形成されてもよい。特に、後述されるように、絶縁層25が無機絶縁膜で形成される場合には、被覆層45も無機絶縁膜であるため、絶縁層25の表面のみの接合であっても、完全に密着し、水分の浸入を防止し得るので好ましい。絶縁層25がポリイミドなどの有機膜であっても、その接合面積が大きければ、有機EL表示素子40は十分に防水され得る。
【0018】
しかし、
図1Bに部分拡大図が示されるように、絶縁層25に溝(トレンチ)が形成され、その溝内にも被覆層45の一部が埋め込まれる構造に形成されることによって、その接合面積が大きくなるので好ましい。すなわち、このような溝内に被覆層45の一部が埋め込まれることにより、被覆層45と絶縁層25とは、溝の内壁で接合されることになる。従って、接合部の距離が長くなる。この被覆層45の一部の埋め込みの深さは深いほど接合面の経路が長くなるので好ましい。特に好ましくは、
図1Bに示されるように、絶縁層25の下層である金属膜(コンタクト12d1又は配線用の金属膜)又は無機絶縁膜(パシベーション膜24)と接するように形成されることが好ましい。さらに好ましくは、例えば補助容量14の電極14dの上のパシベーション膜24など平坦部の広い場所に形成されることが好ましい。前述のように、無機膜同士の接合であれば、その密着性に優れ、防湿効果が大きいからである。この無機膜同士を接触させるためには、例えば第一領域R側の補助容量電極14d(
図1A参照)の上のパシベーション膜24と接触させる構造でもよい。すなわち、反射電極31の下側に延びても、コンタクト孔が形成されない場所であれば問題はない。製造方法が後述されるように、被覆層45は、反射電極31の形成前に形成される。
【0019】
このように、無機膜同士の密着によって封止されることが最も好ましい。しかし、本実施形態では、このような無機膜同士の接合に限らず、被覆層45と絶縁層25との接合、被覆層45の端部などが絶縁層25に形成される溝の内部まで埋め込まれる(溝の側面で接合する)ことも本時実施形態の態様である。なお、溝内への埋め込みにおいて、その溝の深さは、できるだけ深いほど効果が大きいが限定はされない。
【0020】
前述のように、液晶層32は、第一領域Rと第二領域Tとでその厚さがあまり異ならないことが好ましい。そこで、
図1Aに示されるように、有機EL表示素子40の発光領域を画定する第二の絶縁層42が形成される際に、第一領域Rにも第二の絶縁層42と同じ材料の絶縁層が形成されている。しかし、
図1Aに示される例では、この第二の絶縁層42が、第一領域Rと第二領域Tとの境界部で分断され、その境界部で絶縁層25が露出している。その露出した絶縁層25の表面に被覆層45が接合されている。なお、第一領域R側における、第二の絶縁層42と同じ材料の層は第三の絶縁層42aと呼ばれる。このように、第一領域Rにも第三の絶縁層42aが形成されることによって、液晶層32の下層の高さを二つの領域R、T間で近づけながら(厳密には被覆層45の厚さ、約1μmの差がある)、第二の絶縁層42と第三の絶縁層42aとの分断によって、絶縁層25を露出させ、被覆層45と絶縁層25との接合が容易にされている。その結果、被覆層45によって、有機層43、及び第二電極44が容易に封止され得る。この第二の絶縁層42と第三の絶縁層42aとの境界は、第一領域Rと第二領域Tとの境界部に限定されない。前述のように、例えばコンタクト13d3用のコンタクト孔を形成する部分が第三の絶縁層42a側になるように分断されれば、どこでもよい。
【0021】
(TFT基板20)
TFT基板20は、例えばガラス基板又はポリイミドなどの樹脂フィルムなどからなる絶縁基板21の一面に駆動用TFT(薄膜トランジスタ、以下単にTFTという)11、電流供給用TFT12、スイッチ用TFT13(
図2参照)などの駆動用TFTや、バスラインなどの配線が形成され、その表面を平坦にする、いわゆる平坦化膜と呼ばれる絶縁層25が形成されている。絶縁層25は、TFTなどが形成された部分と形成されない部分との凹凸をなくして表面を平坦にすることが目的であるため、ポリイミドなどの有機材料で形成されることが好ましい。しかし、前述のように、封止のために被覆層45との接合を考慮すると、絶縁層25は、無機材料で形成されてもよい。絶縁層25がSiO
yやSiN
xなどの無機材料でCVD法などによって形成される場合、平坦化するのに数μmの厚さが必要となるので、成膜時間が長くなる。しかし、SOG(スピンオングラス)などにより容易に平坦化することはできる。なお、
図1Aに示される図では、素子の構造が概念的に示され、各素子の全てが、正確には記載されていない。
【0022】
液晶表示素子30及び有機EL表示素子40の駆動用の回路は、例えば
図2に等価回路図で示されるような構成になっている。すなわち、駆動用TFT11のゲートがゲートバスライン16に接続され、ゲートバスライン16にゲート信号(選択信号)が印加されることによって横に並ぶ一行の画素が選択され得る。また、駆動用TFT11のソースがソースバスライン15に接続されて縦に並ぶ一列の画素にデータ信号が入力され得る状態になっている。そして、選択信号が与えられたゲートバスライン16とデータ信号が与えられたソースバスライン15の交差する画素のみが、与えられたデータ信号に基づいて表示できるようになっている。駆動用TFT11のドレインが電流供給用TFT12のゲートに接続され、表示情報に対応して有機EL表示素子40に流れる電流が制御される。また、駆動用TFT11のドレインは、スイッチ用TFT13を介して、液晶層32及び液晶用補助容量14に接続されている。液晶層32は、電気的にはキャパシタと抵抗とが並列接続された等価回路で
図2のように示される。なお、この液晶層32と並列に接続される補助容量14は、アクティブマトリクス表示でスキャンする際の反射電極31の電圧を保持するように形成されている。
【0023】
第二ゲートバスライン19は、スイッチ用TFT13のゲートに接続され、スイッチ用TFT13の動作のオンオフを制御する。スイッチ用TFT13のソースは、駆動用TFT11のドレイン、すなわち電流供給用TFT12のゲートに接続されている。電流供給用TFT12のドレインは、電流バスライン17に接続され、そのソースは有機EL表示素子40のアノード電極に接続されている。この有機EL表示素子40のカソード電極44は、コンタクトH(18c1、18c2)でカソードバスライン18に接続されている。
【0024】
スイッチ用TFT13は、液晶表示素子30による表示と、有機EL表示素子40による表示とを切り替えるために設けられている。すなわち、駆動用TFT11によってその画素が選択されており、スイッチ用TFT13のゲートに接続される第二ゲートバスライン19に与えられる信号によってスイッチ用TFT13がオンになると、ソースバスライン15が液晶層32に接続され、液晶表示素子30によって画像が表示される。このスイッチ用TFT13がオンの場合、電流供給用TFT12に電流を流さないように、電流バスライン17がオフにされる。駆動用TFT11が選択され、スイッチ用TFT13がオフの場合には、駆動用TFT11は液晶層32には接続されず、電流供給用TFT12をオンにし、有機EL表示素子40によって画像が表示される。
【0025】
このスイッチ用TFT13は、液晶表示素子30と有機EL表示素子40とを独立して駆動し得るようにするためのものである。すなわち、有機EL表示素子40は、NTSC比で100%という広い色再現範囲を有することが多い。しかし、反射型液晶表示素子30は、色再現範囲が狭く明るい表示ができるように設計されることが多い。そのため、液晶表示素子30と有機EL表示素子40とを同時に表示すると有機EL表示素子40の表示が阻害されてしまう。そのため、有機EL表示素子40の動作の際には、液晶表示素子30が動作しないようにされている。
【0026】
(液晶表示素子30)
液晶表示素子30は、一画素のうち、半分程度の第一領域Rの全面に形成された反射電極31と、液晶層32と、対向電極33と、偏光板34とで、反射型の液晶表示素子として形成されている。液晶層32は、第一領域Rのみに形成することは難しく、対向電極33と共に第二領域Tも含めた全面に形成されている。
図1Aに示される例では、カラーフィルタ35が対向基板50の絶縁基板51と対向電極33との間に形成されている。図示されていないが、この対向基板50の液晶層32と接する面には、液晶配向層が形成される。
【0027】
この反射電極31は、いわゆる画素電極で第一領域Rのほぼ全面に形成されている。この反射電極31は、後述される有機EL表示素子40の各画素において、有機EL表示素子40の発光領域を画定する絶縁バンクとなる第二の絶縁層42と同じ材料で同時に形成される第一領域R側の第三の絶縁層42aの上に形成されている。反射電極31は、この第三の絶縁層42aに形成されるビアコンタクト13d3及び絶縁層25に形成されるビアコンタクト13d2を介して前述のスイッチ用TFT13のドレイン13dにコンタクト13d1を介して接続されている。反射電極31は、例えば0.05μm以上で、0.2μm以下のAl(アルミニウム)と0.01μm以上で、0.05μm以下のIZO(インジウム・ジンク・オキサイド)との積層膜で形成される。
【0028】
液晶層32は、所望の液晶材料を含有する液晶組成物を含み、例えばECB(Electrically Controlled Birefringence)モードなどの種々の表示モードに適用される液晶材料が用いられ得る。偏光板を設けずに表示を行う場合には、ゲスト・ホスト型の液晶材料が用いられ得る。液晶層32は、偏光板34との協働で、反射電極31と対向電極33との両電極間の電圧のオンオフに応じて入射光を画素ごとに遮断/通過させる。ECBモードであれば、光が液晶層32を透過し反射電極31に到達するまでに、電圧オン時に、1/4波長の位相差を生じる厚さに形成されることが好ましい。液晶層32の両面、すなわち、TFT基板20の液晶層32に面する最表面、及び対向基板50の液晶層32に面する最表面には、図示しない液晶配向層が形成されている。この液晶配向層は、液晶分子の配向を規制するもので、紫外線照射やラビング加工によってその配向方向が規制される。
【0029】
この液晶配向層により、液晶層の配向が制御されるが、例えば液晶層32の両面に電圧が印加されない状態で、液晶分子が垂直に配列されるように液晶配向層が制御される。そうすることにより、後述されるように、反射電極31と対向電極33との間にしきい値以上の電圧が印加されない状態で外光の反射光は外に出ず、黒色表示、すなわちノーマリブラックになる。この場合、TFT基板20側の液晶配向層は、有機EL表示素子40が形成されているので、ラビング加工や紫外線照射を行い難い。そのため、プレチルト(傾き)角は形成されず、実質的に垂直配向になるが、対向基板50側の液晶配向層には、80°から89.9°のプレチルト角が形成されることが好ましい。この程度のプレチルト角が形成されることにより、両電極間に電圧が印加された際に主にセル厚み方向の中央付近の液晶分子が水平配向に移行しやすい。
【0030】
偏光板34は、
図1Aに示される例では、円偏光板が用いられている。円偏光板は、直線偏光板と1/4波長の位相差板との組み合せで形成される。さらに、幅広い波長に対して1/4波長条件を示すように、1/2波長板が併用される場合もある。位相差板は、一軸延伸された光学フィルムからなっている。この円偏光板を通過した光は、直線偏光の位相が1/4波長ずれ、例えば右偏光となる。前述のように、液晶層32の両面に設けられる反射電極31と対向電極33にしきい値以上の電圧が印加されないで、液晶層32が垂直配向であれば、外光はそのまま液晶層32を通過して、反射電極31で反射することにより偏光が右円偏光から左円偏光に逆転する。このため、入射方向を逆進して円偏光板34に戻った外光は直線偏光板の透過軸と90°直交した角度の直線偏光となり、偏光板34を通ることができなくなり、黒色表示となる。一方、液晶層32の両面の電極にしきい値以上の電圧が印加されることによって、液晶分子が水平配向となり、外光は液晶層32でさらに1/4波長の位相がずれるため、反射電極31に到達する際には、1/2波長の位相差になり、直線偏光として反射する。反射した後、外光は入射のときと逆の経路を経るため、偏光板を透過して白色表示となる。なお、偏光板34は、円偏光板に限定されるものではなく、表示モードに応じて直線偏光板でもよい。
【0031】
対向電極33は、前述のように、液晶層32の画素ごとに電圧を印加したり、しなかったりするための全画素に共通の電極である。そのため、表示画面の全面に形成され、後述される有機EL表示素子40が形成される第二領域Tにも形成されている。この対向電極33は、光を透過させる必要があるため、透光性(透明)の導電膜によって形成される。例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などによって形成される。
【0032】
(有機EL表示素子)
有機EL表示素子40は、一画素の第二領域Tに形成され、
図1Aに示されるように、絶縁層25の第二領域Tの表面に形成される第一電極41と、その周囲に形成される第二の絶縁層42と、その第二の絶縁層42で囲まれる第一電極(アノード電極)41の上に形成される有機層43と、その上の有機EL表示素子のほぼ全面に形成される第二電極(カソード電極)44と、その周囲を被覆する被覆層45とで形成されている。
【0033】
第一電極41は、例えばアノード電極として形成される。本実施形態の場合、
図1Aの上側から表示画面を見ることになるため、第一電極41は反射電極として形成され、発光した光を全て上方に放射する構造になっている。そのため、光反射性の材料で、この電極41と接する有機層43などとの仕事関数の関係などによりその材料が選定される。例えば、ITO/APC/ITOの積層膜により形成される。
【0034】
第二の絶縁層42は、絶縁バンク又は隔壁とも呼ばれるもので、有機EL表示素子40の発光領域を画定すると共に、アノード電極41とカソード電極44とが接触して導通することを防ぐために形成されている。この第二の絶縁層42で囲まれた第一電極41の上に有機層43が積層される。この第二の絶縁層42は、例えばポリイミドやアクリル樹脂などの樹脂で形成される。この第二の絶縁層42は、前述のように、第一領域Rと第二領域Tの高さを合せる意味からも、液晶表示素子30の領域にも形成される。すなわち、液状の樹脂が全面に塗布され、その後にパターニングされて有機EL表示素子40の第一電極41の周囲の第二の絶縁層42及び第一領域Rの第三の絶縁層42aが形成される。この際、有機EL表示素子40側の第二の絶縁層42と、液晶表示素子30側の第三の絶縁層42aとが分断されて絶縁層25を露出させることに本実施形態の特徴がある。有機EL表示素子40の有機層43や第二電極(カソード電極)44が被覆層45によって完全に被覆されるのに都合がよい。この分断の場所は、前述のように、第一領域Rと第二領域Tとの境界である必要はなく、第二の絶縁層42がコンタクト孔を含まない位置であればよい。例えば
図1Aに示される例で、補助容量14用の電極14dの上方で分断されてパシベーション膜24を露出させ得る位置でもよい。この場合、絶縁層25もエッチングされて直接パシベーション膜24が露出されてもよいし、分断されて露出した絶縁層に溝が形成されてもよい。いずれの場合でも、被覆層45は、絶縁層25のエッチングされた側面と接合している。
【0035】
有機層43は、第二の絶縁層42に囲われて露出する第一電極41の上に積層される。この有機層43は、
図1Aなどでは一層で示されているが、種々の材料が積層されて複数層で形成される。また、この有機層43は水分に弱く全面に形成してからパターニングをすることができないため、蒸着マスクを用いて、蒸発又は昇華させた有機材料を選択的に必要な部分のみに蒸着することによって形成される。
【0036】
具体的には、例えば第一電極(アノード電極)41に接する層として、正孔の注入性を向上させるイオン化エネルギーの整合性の良い材料からなる正孔注入層が設けられる場合がある。この正孔注入層上に、正孔の安定な輸送を向上させると共に、発光層への電子の閉じ込め(エネルギー障壁)が可能な正孔輸送層が、例えばアミン系材料により形成される。さらに、その上に発光波長に応じて選択される発光層が、例えば赤色、緑色に対してはAlq
3に赤色又は緑色の有機物蛍光材料がドーピングされて形成される。また、青色系の材料としては、DSA系の有機材料が用いられる。一方、カラーフィルタ35で着色される場合には、発光層は全てドーピングすることなく同じ材料で形成され得る。発光層の上には、さらに電子の注入性を向上させると共に、電子を安定に輸送する電子輸送層が、Alq
3などにより形成される。これらの各層がそれぞれ数十nm程度ずつ積層されることにより有機層43の積層膜が形成されている。なお、この有機層43と第二電極44との間にLiFやLiqなどの電子の注入性を向上させる電子注入層が設けられることもある。本実施形態では、有機層43はこれら各有機層及び無機層を含み得る。
【0037】
前述のように、有機層43の積層膜のうち、発光層は、RGBの各色に応じた材料の有機層が堆積されてもよい。
図1Aに示される例では、発光層が同じ有機材料で形成され、カラーフィルタ35により発光色が特定されている。また、正孔輸送層、電子輸送層などは、発光性能を重視すれば、発光層に適した材料で別々に堆積されることが好ましい。しかし、材料コストの面を勘案して、RGBの2色又は3色に共通して同じ材料で積層される場合もある。
【0038】
このLiF層などの電子注入層などを含む全ての有機層43の積層膜が形成された後に、その表面に第二電極44が形成される。具体的には、第二電極(例えばカソード電極)44が有機EL表示素子40の上に形成される。この第二電極44も、前述のバンク層と同様に、第一領域Rまで延びて形成されてもよいが、コンタクト孔が形成されない場所までで、しかも被覆層45によって完全に被覆される必要がある。第二電極44は透光性の材料、例えば、薄膜のMg-Ag共晶膜により形成され、水分で腐食しやすいからである。
【0039】
この第二電極44の表面には、例えばSi
3N
4、SiO
2など無機絶縁膜からなる被覆層45が一層、又は二層以上の積層膜によって形成される。例えば一層の厚さが0.01μmから0.05μm程度で、好ましくは二層程度の積層膜で形成される。この被覆層45は、異なる材料で多層に形成されるのが好ましい。被覆層45は、複数層で形成されることによって、ピンホールなどができても、複数層でピンホールが完全に一致することは殆ど無く、外気から完全に遮断する。前述のように、この被覆層45は、有機層43及び第二電極44を完全に被覆するように形成される。そのため、第二の絶縁層42よりも下の絶縁層25と接合するように形成される。
【0040】
前述のように、絶縁層25が無機材料で形成されていれば、被覆層45も無機絶縁膜であるため、絶縁層25の表面で接合しても、その接合は十分に得られる。しかし、絶縁層がポリイミドなどの有機層である場合には、被覆層45との密着性が低下する。そのため、例えば
図1Bに示されるように、絶縁層25に溝(トレンチ)が形成され、その中まで被覆層45の一部が埋め込まれることが好ましい。被覆層45の一部というのは、例えば被覆層45の端部は第一領域Rの方に延びていて、その端部が埋め込まれていなくても、その途中の一部で絶縁層25の中に埋め込まれていてもよいという趣旨である。もちろん第二電極44が包含されていることが必要である。この絶縁層25内への埋め込みは、絶縁層25を貫通していなくて途中まででも効果はある。しかし、
図1Bに示されるように、絶縁層25の下層の金属膜や無機絶縁膜と接合させることによって、密着性が向上し、より一層封止が確実に行われ得る。一部の埋め込みでも、その埋め込まれた部分の被覆層45は、絶縁層25の溝の内壁で接合する。
【0041】
以上により有機EL表示素子40が形成される。
図1Aに示されるように、この有機EL表示素子40の上にも液晶層32や対向電極33が形成されている。前述のように、液晶層32を第一領域Rのみに形成することは難しいからである。しかし、電極は対向電極だけであり、反射電極(画素電極)31に対応する電極はない。そのため、前述の液晶層32の両面に印加される電圧がオフの場合と同じ状況になる。すなわち、外光に対してはノーマリブラックになるが、有機EL表示素子40で発光する光は、液晶層32は垂直配向のため、液晶層32がないのと同じであり、何の変化もなく円偏光板34を通過する。そして円偏光板34を通過した光は、そのまま視認されるので、有機EL表示素子で発光により表示される画像は、そのまま正面側から視認される。
【0042】
なお、有機EL表示素子40で発光した光は、円偏光板34を通ることによって、円偏光板で半分ぐらいに減衰する。しかし、この円偏光板34は第二領域Tにも形成されることが好ましい。その理由は、外光が正面から入る場合に、有機EL表示素子40の第一電極41が前述のように、光反射性の材料で形成されていることから、正面から入射した光が、有機EL表示素子40内の第一電極41などで反射して外に出ると表示画面が非常に見難くなる。しかし、円偏光板34があれば、前述のように第一電極41などで反射すると、円偏光の回転方向が逆転するため、反射光は円偏光板を通ることができなくなる。その結果、反射光をカットすることができる。外光の多いときは、有機EL表示素子40は動作させないが、液晶表示素子30の動作中でも、有機EL表示素子40の動作の有無にかかわらず、反射光は発生するので、液晶表示素子の動作中でも、円偏光板34が第二領域Tにないと液晶表示素子の視認特性が大幅に低下する。
【0043】
(対向基板)
対向基板50は、例えばガラス又は透明(透光性)フィルムなどの基板に、カラーフィルタ35と対向電極33とが形成される。液晶表示素子30では、表示画面をカラーにするには種々の方法があるが、カラーフィルタ35で、画素ごとに赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色の画素を形成するために設けられる。有機EL表示素子40側でも、前述のように、カラーフィルタを用いてカラー表示がされ得るが、有機層の材料を選択することによって直接赤(R)、緑(G)、青(B)の光を発光させる場合には、カラーフィルタは不要になる。この対向基板50には、図示されていないが、液晶層32と対向する面に液晶配向層が形成され、ラビング加工などがなされる。
【0044】
この対向基板50と、有機EL表示素子40などが形成されたTFT基板20とが、反射電極31と対向電極33とが対向するように一定の間隙をあけて、周囲で、図示しないシール剤層により接着される。そして、その間隙部に液晶組成物が注入されることによって、前述の液晶層32が形成されている。そして、対向基板50の液晶層32と反対側の面に前述の円偏光板34が設けられている。
【0045】
(TFT基板及び有機EL表示素子の製造方法)
次に、TFT基板20及びその上に形成される有機EL表示素子40の製造工程が、
図3A〜3G及び
図4A〜4Gを参照しながら説明される。
【0046】
まず、
図3Aに示されるように、絶縁基板21の上に半導体層22及びカソードバスライン18が形成され、その上にSiO
2などからなるゲート絶縁膜23が形成される。そして、半導体層22の所定の領域に不純物がドープされて、スイッチ用TFT13のソース13s、ドレイン13d(
図1A参照)、電流供給用TFT12のドレイン12d、ソース12s(
図1A参照)がそれぞれ形成される。そして、ゲート絶縁膜23の上に、スイッチ用TFT13のゲート電極13g、電流供給用TFT12のゲート電極12g、及び補助容量14用の電極14dが形成される。その表面にSiN
xなどからなるパシベーション膜24が形成される。そして、スイッチ用TFT13のソースコンタクト13s1、ドレインコンタクト13d1、電流供給用TFT12のソースコンタクト12s1、ドレインコンタクト12d1、及びカソードコンタクト18c1などが形成され、その表面を平坦にする絶縁層25が、例えばポリイミドなどによって形成される。この絶縁層25は、前述のように、SOGなどの無機膜で形成されてもよい。このTFTやバスラインの配置を示す平面図が
図4Aに示されている。
【0047】
次に、
図3Bに示されるように、スイッチ用TFT13のドレインと接続するコンタクト13d2及び有機EL表示素子40の第一電極41が、それぞれ絶縁層の表面に形成される。この液晶用のコンタクト13d2は、コンタクト孔を形成して導電層などの埋め込みによって形成されるが、有機EL用の第一電極(アノード電極)は、前述のように、有機層43との関連があり、ITO/APC(Ag-Pd-Cu合金)/ITOの積層膜によって形成される。このときの平面図が
図4Bに示されている。
【0048】
次に、
図3Cに示されるように、ポリイミド、アクリル樹脂などによって第二の絶縁層42が形成される。第二の絶縁層42は、有機EL表示素子40の各画素を区分するもので、第一電極41の周囲に凸部を有するように形成される。この第二の絶縁層42は、前述の樹脂で形成される。従って、液状の状態で全面に樹脂膜が形成され、その後、パターニングにより、所望の位置に所望の形状で形成される。本実施形態では、TFT基板20の全面に、第一電極41の周囲に形成される凸部の高さに合せた厚さで塗布され、パターニングによって第一電極41や第三の絶縁層42aとの境界部などを露出させている。この際、第一領域Rにも第三の絶縁層42aが形成されるが、少なくとも第一領域Rの画素電極31と接続するためのコンタクト13d3は、第一領域R側の第三の絶縁層42aになるように、第二の絶縁層42と第三の絶縁層42aとが分離され、その間に絶縁層25が露出するように形成される。前述のように、この上に形成される被覆層45が有機EL表示素子40の有機層43やその上の第二電極44を完全に被覆し得るようにするためである。
【0049】
この第二の絶縁層42のパターニングの際に、第一領域Rのコンタクト13d2と接続するコンタクト孔が形成され、第三のコンタクト13d3が形成される。その結果、この第二の絶縁層42及び第三の絶縁層42aは、例えば
図4Cに示されるように、第二の絶縁層42が第一電極41の周囲に形成され、その外周に第二の絶縁層42と離間して第三の絶縁層42aが形成されている。そして、第三の絶縁層42aの一部にスイッチ用TFT13のドレイン13dに接続された第三のコンタクト13d3が露出している。
【0050】
その後、
図3D及び
図4Dに示されるように、有機層43が形成される。この有機層43は、水分や酸素に弱くパターニングすることができないため、蒸着マスクを用いて、必要な領域のみに蒸着される。すなわち、
図3Dの第二の絶縁層42の凸部上に合せて蒸着マスクが配置され、るつぼなどから昇華又は気化された有機材料が第二の絶縁層42により囲まれた第一電極41の上のみに積層される。この有機材料は、前述のように、種々の材料で積層される。
【0051】
次に、
図3E及び
図4Eに示されるように、カソード電極となる第二電極44が有機層43及び第二の絶縁層42の凸部を含めた有機EL表示素子40のほぼ全面に形成される。この第二電極44は、例えばMg-Ag合金が用いられ、蒸着マスクを用いた蒸着により形成される。この第二電極44は、
図4Eに平面図が示されるように、第二の絶縁層42が周囲に残るように形成されるが、一部は第二の絶縁層42を超えて形成される。この場合でも、第三の絶縁層42aとの間には一定の間隔を有する(絶縁層25が露出する)ように形成される。
【0052】
その後、
図3F及び
図4Fに示されるように、被覆層45が形成される。この被覆層45は、有機層43を水分や酸素から保護するための層で、SiN
xやSiO
yなどの無機膜で形成される。しかも、成膜の際にピンホールが形成される場合があり得るため、少なくとも二層を有する多層膜で形成されることが好ましい。この被覆層45は、CVD法、又はALD(Atomic Layer Deposition)法などによって形成される。好ましくは、被覆層45は、異なる材料で多層に積層される。この被覆層45は、例えば
図4Fに示されるように、有機EL表示素子40の上に形成されるが、第一領域である液晶表示素子30側に延びて形成されていてもよい。但し、コンタクト13d3を跨がないようにする必要がある。コンタクト13d3の上にも形成されると、被覆層45にコンタクトのための貫通孔を形成する必要が生じる。被覆層45にコンタクト孔が形成さると、水分の浸入を招き、その内面を伝って、第二電極44や有機層43側に水分が浸入するからである。
【0053】
この被覆層45は、全面に形成されてから、エッチングによりパターニングされてもよい。被覆層45が絶縁層25と接合していて、水分の浸入を阻止するからである。しかし、マスクを用いて、所望の場所のみに堆積することもできる。後者の方が、水分の浸入を防止するという観点からは好ましい。前述の
図1Bに示されるように、この被覆層45の一部が絶縁層25に形成されるトレンチの内部に埋め込まれる場合には、前述の
図3Cで第二の絶縁層42がパターニングされた後に、さらに、絶縁層25をエッチングしてトレンチを形成しておき、前述の被覆層45を形成することによって、その一部をトレンチ内に埋め込むことができる。この絶縁層25に形成するトレンチの深さを、その下層にあるパシベーション膜24やコンタクト部12d1などの無機の絶縁膜や金属膜が露出する深さとすることが好ましい。被覆層45は、前述のように無機絶縁膜であり、無機膜同士が接することによって、強力な接合が得られるからである。
【0054】
その後、
図3G及び
図4Gに示されるように、第一領域Rの第三の絶縁層42aの表面に液晶表示素子30用の反射電極(画素電極)31が形成される。その結果、反射電極31は、コンタクト13d3と電気的にも接続される。この反射電極31は、例えばAlとIZOで形成される。この反射電極31も、有機EL表示素子40の全面を除いた一画素のほぼ全面に形成される。この場合も、全面に蒸着などによって形成された反射膜をパターニングにより形成されてもよい。被覆層45によって完全に有機層43などが被覆されているからである。しかし、マスクを被せて所望の領域のみに形成されてもよい。これにより、TFT基板20側の第一領域R、第二領域Tの素子が形成される。この後、図示されていないが、この表面の全面に液晶配向層が形成される。
【0055】
一方、対向基板50側は、
図1Aに示されるように、ガラス板又は樹脂フィルムなどの絶縁基板51に透光性の対向電極33及び必要な場合には、カラーフィルタ35や図示しない液晶配向層が重ね合せて形成される。絶縁基板51の対向電極33と反対面には、偏光板34が設けられる。偏光板34が円偏光板の場合には、絶縁基板側に1/4波長の位相差坂、その上に直線偏光板が重ねて配置される。
【0056】
そして、有機EL表示素子40などが形成されたTFT基板20と対向基板50とがその電極が対向するように一定間隙をもって周囲でシール剤層によって貼り合される。その後に、その間隙部に液晶組成物が充填されることによって、液晶層32が形成される。その結果、反射電極31が形成された第一領域に反射型の液晶表示素子30が形成され、第二領域Tに有機EL表示素子40が形成されて一画素を構成する表示装置が得られる。
【0057】
(表示装置の動作)
この表示装置で、外光の明るいときは、第二ゲートバスライン19に信号を送ってスイッチ用TFT13を動作せると共に、ゲートバスライン16への選択信号と、ソースバスライン15へのデータ信号によって、駆動用TFT11が選択されることにより、第一領域Rの液晶表示素子30がソースバスライン15へのデータ信号に応じた画像を表示する。一方、夜間又は室内などの暗い場所では、第二ゲートバスライン19への信号がオフにされ、スイッチ用TFT13がオフになる。同時に電流バスライン17が接続され、駆動用TFT11でこの画素が選択されている場合には、電流供給用TFT12がオンになり、ソースバスライン15へのデータ信号に応じて、有機EL表示素子40の点灯が制御され、画面の全体によって画像が表示される。
【0058】
以上のように、本実施形態の表示装置によれば、昼間など外光が十分にある場合には、反射型液晶表示素子として動作し、外光が暗くなったら、消費電力が比較的少ない有機EL表示素子によって画像が表示される。その結果、非常に省電力で、電池消耗の少ない表示装置が得られる。そのため、携帯電話や携帯情報端末(PDA)などの携帯機器などに便利に使用し得る。
【0059】
通常、表示に利用可能な面積は、表示面積全体から画素間のスペースを除いた約80%である。有機層43の面積(第二絶縁層42の内側)は、蒸着法により有機層を成膜する場合、約30%以下にせざるを得ず、残りの50%が反射表示領域Rとして利用出来る。この時、反射表示部の反射率は約8%となるが、外光照度が3万ルクス(曇り空)の下では、反射表示部は800cd/m
2となり、充分に明るい表示が実現出来る。
【0060】
発光素子40の輝度は、通常500cd/m
2程度であるが、この理由は、外光下で視認出来る様にするためである。本実施形態では、反射表示部の効果により、そこまで高輝度にする必要がない。また、輝度よりも信頼性を重視した有機EL材料の選定が出来るというメリットも有している。
【0061】
(まとめ)
(1)本発明の一実施形態に係る表示装置は、駆動素子上に絶縁層(平坦化膜)を形成したTFT基板と、
液晶組成物を含む液晶層と、
前記液晶層を介して前記TFT基板に対向する、透明電極を備えた対向基板と、
前記対向基板の前記液晶層に対向する面と反対面に設けた偏光板と、
を有する表示装置において、
前記表示装置は、表示領域内に互いに隣接する第一領域と第二領域からなる複数個の画素と、を有し、
前記第一領域は、前記TFT基板の前記絶縁層の上方に反射電極を備え、
前記第二領域は、前記TFT基板の前記絶縁層の上に第一電極、有機層、及び第二電極を積層した発光素子と、を備え、
前記発光素子は、各画素の発光領域毎に全体を覆う被覆層を有し、
前記被覆層の辺縁は、前記絶縁層と接合している。
【0062】
本実施形態によれば、被覆層は、コンタクト孔などが形成されない場所で、有機EL表示素子の有機層及び第二電極を包含するように形成されている。しかも、その一部は平坦化膜又は無機膜と接している。そのため、水分や酸素の浸入が完全に阻止される。その結果、有機層の劣化は生じない。従って、長時間に亘って、有機EL表示素子の出力などの特性の劣化は生じない。有機EL表示素子の高い信頼性が得られる。
【0063】
(2)前記TFT基板は、前記発光素子の前記発光領域を区画する第二の絶縁層をさらに備え、前記第二の絶縁層は、前記絶縁層の上に前記第一領域にも配置し、かつ、前記第一領域と前記第二領域との間で分断されている。そうすることによって、第一領域Rと第二領域Tとの積層の高さがほぼ同じになる。その結果、その上に配される液晶層の厚さもほぼ均一になり、液晶層の特性が良好に維持され得る。一方、第一領域と第二領域とで第三の絶縁層とバンク層とが分断されているので、被覆層が完全に有機層側を被覆しやすい。
【0064】
(3)前記被覆層の前記辺縁は、前記絶縁層に形成された溝内まで埋め込まれている。そうすることにより、水分の浸入経路が長くなるので、水分の接合面を介して浸入する可能性が低下するので好ましい。
【0065】
(4)前記被覆層の前記辺縁は、前記絶縁層の下にある金属膜又は無機絶縁膜と接していることが好ましい。無機膜同士の接触は、非常に強力に接合が維持される。
【0066】
(5)前記絶縁層に形成される溝が前記TFT基板のコンタクトの上、又は前記駆動素子の上に形成されるパシベーション膜の平坦な部分に形成されることが、前記被覆層と無機膜との接合を得やすいので好ましい。
【0067】
(6)前記絶縁層が無機膜で形成され、前記被覆層が前記絶縁層の表面で接合されていることが好ましい。溝を掘ってその中に被覆層の一部が埋め込まれなくても、非常に密着性良く被覆層と平坦化膜とが接合されるからである。
【0068】
(7)前記第一領域の表示と前記第二領域の表示とを切り替えるスイッチ用TFTが前記TFT基板に形成されていることが好ましい。それぞれの発光(表示)が干渉することなく行われるからである。
【0069】
(8)前記液晶層がノーマリブラックに配向され、前記偏光板が円偏光板からなり、前記第二領域の上にも形成されていることが好ましい。第二領域での外光の反射光を円偏光板によってカットされ得るからである。
【0070】
(9)前記TFT基板は前記液晶層と対向する表面に第一液晶配向層を有し、かつ、前記対向基板は前記液晶層と対向する表面に第二液晶配向層を有し、前記液晶層の液晶分子は、前記TFT基板の近傍で実質的に垂直配向をなし、かつ、前記対向基板の表面に対してプレチルトを有することが好ましい。ノーマリブラックであれば、有機EL表示素子側で液晶層を介在していても、有機EL表示素子の発光に何ら影響を受けないからである。
【0071】
(10)前記プレチルトの角度が、前記対向基板の表面に対して、80°から89.9°であることが好ましい。水平配向への移行がスムーズになるからである。
TFT基板(20)の第一領域(R)で、絶縁層(25)の上方に形成され、反射電極(31)、液晶層(32)、及び対向電極(33)を有する反射型液晶表示素子(30)と、TFT基板(20)の絶縁層(25)の上の第二領域(T)に形成され、第一電極(41)、有機層(43)、及び第二電極(44)を有する有機EL表示素子(40)とを有している。そして、有機EL表示素子(40)の第二電極(44)及び有機層(43)を包含すべく、少なくとも有機EL表示素子(40)の表面に被覆層(45)が形成され、被覆層(45)の一部は絶縁層(25)と接合している。その結果、有機層の劣化が生じないで、信頼性の高い複合型の表示装置が得られる。