(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346003
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】アスファルト舗装路のすべり止め工法
(51)【国際特許分類】
E01C 7/35 20060101AFI20180611BHJP
E01C 7/32 20060101ALI20180611BHJP
E01C 7/18 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
E01C7/35
E01C7/32
E01C7/18
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-133545(P2014-133545)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-11522(P2016-11522A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502217997
【氏名又は名称】昭和瀝青工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080724
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 久喜
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 貴久
(72)【発明者】
【氏名】本松 資朗
(72)【発明者】
【氏名】大原 基憲
(72)【発明者】
【氏名】上坂 憲一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 一成
【審査官】
荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−314102(JP,A)
【文献】
特開平02−256703(JP,A)
【文献】
特開2002−105904(JP,A)
【文献】
特開平11−209906(JP,A)
【文献】
特開2009−108628(JP,A)
【文献】
特開2005−320198(JP,A)
【文献】
特開2012−233663(JP,A)
【文献】
米国特許第05918429(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/35
E01C 7/18
E01C 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水性アスファルト舗装の骨材飛散防止用として、固化材を散布し、舗装路表層部骨材に固化物を形成する工法において、該固化材はアスファルト乳剤であり、金属線のワイヤーブラシによって1回ブラッシングすることによって、舗装路の表層部の表面骨材の固化物被膜に筋状の凹凸を形成し、すべり抵抗値を64〜86BPNにすることを特徴とする舗装路のすべり抵抗値の増大方法。
【請求項2】
ワイヤーブラシの線径は、0.2〜0.4mmである請求項1記載のすべり抵抗値の増大方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト舗装路のすべり止め工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装、特に近年増加している排水性舗装の予防修繕工法として、工法の簡便さや低コストの面から、アスファルト乳剤を散布する方法が注目されている。この方法は、アスファルト舗装内部のひび割れの修復、表層と基層の間の遮水性の回復並びに路面の骨材飛散等を抑制する点では極めて優れた方法であるが、単に乳剤を散布し、アスファルトを成膜させるだけでは、施工後の骨材表面が比較的厚いアスファルト被膜に覆われることにより、結果として施工直後のすべり抵抗性が低下するという傾向がある。
これらの問題を解決するため、乳剤の組成を変更したり、乳剤に砂を混ぜて散布したり、乳剤散布直後に砂を散布するなどの方法が行われてきた。しかし、これらの方法は例えば乳剤の組成を変更する方法では、補修後の性能が必ずしも十分でなかったり、砂を利用する方法では、砂がすぐに飛散する、砂が乳剤や樹脂に埋もれるとすべり止め効果が小さいなどの問題があった。
【0003】
これらの欠点を解消するため、例えば特許文献1のようなすべり止め舗装方法も考案されている。これは、砂の散布を行い、さらにその上に砂を混合したトップコートを施すものである。
【0004】
この方法では、上記した欠点はある程度解消はされている。しかし、砂を使用するものであるため、どうしても砂により空隙詰まりが発生し、肝心の排水性が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−108223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、排水性アスファルト舗装路の排水性を確保しつつ、そのすべり抵抗値を大きくする方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明すべり抵抗値の増大方法を完成したものであり、その特徴とするところは、排水性アスファルト舗装の骨材飛散防止用として、固化材を表面から散布し、舗装表層部の骨材上に固化物の被膜を形成し、次いで、研磨具によって、舗装路の表層部の表面骨材の固化物被膜に筋状の凹凸を形成する点にある。
【0008】
排水性アスファルト舗装は、従来の密粒アスファルトコンクリートと比較して、当然ながらバインダーが少ないため、骨材の飛散が大きくなる。即ち、同じような車体通過量であれば、どうしても骨材が飛散して欠損部が生じたり、クラックが発生したりする時間が短くなる。即ち、舗装路としても寿命が短くなる。
【0009】
これを防止、軽減するため、骨材の飛散を防止するため、舗装の表面から固化材を散布して硬化させ飛散を軽減している。勿論、排水性を維持していることが前提である。
【0010】
この固化材の表面散布方式は、骨材の飛散防止の効果はあるが、骨材を固化材で覆い、それが自然に平滑になり硬化するものである。よって、固化材が平滑に硬化しているため、表面は散布前のざらざらの表面からすると非常にすべりやすくなる。この固化材は、アスファルト乳剤でも、樹脂を混合した改質アスファルトでも、アスファルトを使用しない樹脂のみのものでもよい。要するに流動性があり、硬化するものであればよい。
【0011】
この固化材には細骨材を混合してもよい。例えば、珪砂やその他通常、セメントに混合される細骨材でよい。
【0012】
この固化材が硬化、あるいは得られる最終固化物が強靭な樹脂等の場合は半硬化した後、研磨具によって筋状の凹凸を形成するのである。ここで、研磨具とは固化物被膜表面の硬化体に凹凸を形成できれば良い。例えば、ワイヤーブラシやブラスト装置、その他の研磨具でよい。
【0013】
ここで表面骨材とは、道路の表面に露出している骨材をいう。しかし、露出している骨材すべてでなくともよい。また、この表層部の表面骨材は、その道路の表面側の頂部であり、現実的には自動車のタイヤが変形して接する程度までをいう。しかし、これも接する部分すべてでなくてもよい。
【0014】
この表層部の表面骨材の固化物被膜への筋状の凹凸の形成は、固化物被膜を金属線などで擦ることによって形成する。例えば、ワイヤーブラシで表面を引っ掻くことにより固化物被膜に筋状の凹凸を発生させる。ワイヤーブラシとしては、その線径が0.2mm〜0.4mm程度のものを密に植え込んだもの、あるいはより強度を増すために50〜100本程度の金属線を撚って束状にしたものを密に植え込んだものが好適である。これに一定以上の荷重をかけて、路面と水平方向に引っ掻くか、あるいは回転させて引っ掻き傷つける。ブラッシングは1回で十分であり、固化物被膜が残っていても問題はない。勿論、何回かブラッシングして、固化物被膜がある程度除去されてもよい。
【0015】
また、複数個のブラシを装着した研磨機を引きずって研磨する場合には、轍部やその他の路面の凹部に路面の凸部と同様の荷重がかかるように、各ブラシの幅は10センチメートル以下とし、それらが独立して動き一定荷重がかかる形態が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明には次のような効果がある。
(1) 骨材表面の平滑な固化物被膜に凹凸が形成され、固化物被膜が平滑でなくなることにより、すべり抵抗値が大きくなる。
(2) 作業が簡単で、固化材が硬化あるいは半硬化した後研磨具で一回通過するだけでも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明方法の1例を実施する道路の部分断面図である。
【
図2】本発明方法の1例を示す道路の部分断面図である。
【
図3】本発明方法の1例を示す道路の部分断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図面に示す実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
実施例1
排水性舗装(舗装後5年を経たもの、この状態の断面図を
図1に示す。排水性であるため、骨材1間には隙間がある。)の表面よりアスファルト乳剤(固形分60%。エングラー度10)を1m
2あたり0.5L散布し、表面を完全に黒変させた。この状態の断面図を
図2に示す。
【0019】
図2に示されたように各骨材は固化物により被膜され、骨材間の接着力は強化される。また固化物被膜により空隙率はごくわずか低下するものの、排水性に必要とされる空隙率は維持される。しかし
図1の骨材1の表面の細かい凹凸が、固化物2によって覆われ平滑になってしまうためすべり抵抗が小さくなっていることは容易に想像できる。実際、この段階ですべり抵抗性(BPN)を3か所で測定したところ表1のブラシ前のように低い値を示した。
【0020】
次にこの舗装表面を線径0.35mmのSUS製金属線を約80本撚って束状にしたものを20束、直径70mmの円の周囲に配置した電動研磨用カップ状ワイヤーブラシで、1カップ状ワイヤーブラシあたり10kgの荷重をかけて1回擦った後にすべり抵抗性を再測定したところ、表1のブラシ後のように大幅に改善した。この状態を
図3に示す。この図から明らかなように、骨材の下方や横での固着は変わらず、表面に凹凸が発生しているのがわかる。よって、表層部への固化材の趣旨は失わず、すべり抵抗値が回復したのである。
【0021】
【表1】
【0022】
実施例2.
上記と同様の条件でアスファルト被膜を形成し、すべり抵抗性を測定した後、線径0.25mmの真鍮製金属線を数千本、外径70mm、内径40mmの円周状に15mm巾で植え込んだ電動研磨用カップ状ワイヤーブラシでカップ状ワイヤーブラシ1個あたり20kgの荷重をかけて1回擦った後にすべり抵抗性を再測定したところ、表2のブラシ後のように大幅に改善した。
【0023】
【表2】
【符号の説明】
【0024】
1 骨材
2 固化物被膜