特許第6346005号(P6346005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メタウォーター株式会社の特許一覧

特許6346005運転管理要員の不調検出支援システム、不調検出支援方法及びそのプログラム
<>
  • 特許6346005-運転管理要員の不調検出支援システム、不調検出支援方法及びそのプログラム 図000002
  • 特許6346005-運転管理要員の不調検出支援システム、不調検出支援方法及びそのプログラム 図000003
  • 特許6346005-運転管理要員の不調検出支援システム、不調検出支援方法及びそのプログラム 図000004
  • 特許6346005-運転管理要員の不調検出支援システム、不調検出支援方法及びそのプログラム 図000005
  • 特許6346005-運転管理要員の不調検出支援システム、不調検出支援方法及びそのプログラム 図000006
  • 特許6346005-運転管理要員の不調検出支援システム、不調検出支援方法及びそのプログラム 図000007
  • 特許6346005-運転管理要員の不調検出支援システム、不調検出支援方法及びそのプログラム 図000008
  • 特許6346005-運転管理要員の不調検出支援システム、不調検出支援方法及びそのプログラム 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346005
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】運転管理要員の不調検出支援システム、不調検出支援方法及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20120101AFI20180611BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20180611BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20180611BHJP
【FI】
   G06Q10/06
   G06Q50/22
   G06Q50/10
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-133820(P2014-133820)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-12260(P2016-12260A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】宗平 博史
【審査官】 衣川 裕史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−130944(JP,A)
【文献】 特開2014−048802(JP,A)
【文献】 特開2007−061285(JP,A)
【文献】 特開2009−123189(JP,A)
【文献】 特表2004−512061(JP,A)
【文献】 特開2001−327472(JP,A)
【文献】 米国特許第06605038(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
G16H 10/00−80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転管理要員が携帯する要員携帯端末と、前記運転管理要員の心身の異常を検出する判断材料をシステム管理者に提示する管理装置と、を備えるシステムであって、
前記要員携帯端末は、
設定された起床予定時刻を記憶して、前記起床予定時刻に前記運転管理要員の起床を促す目覚まし手段と、
前記起床予定時刻、前記運転管理要員が床から出た起床時刻及び前記運転管理要員が所定のチェックポイントに達した到達時刻の情報からなる時刻情報を記憶する第1の時刻記憶手段と、
前記時刻情報を送信する送信手段と、を有し、
前記管理装置は、
前記時刻情報を受信する受信手段と、
前記運転管理要員毎に受信した前記時刻情報を記憶する第2の時刻記憶手段と、
前記第2の時刻記憶手段に記憶された前記運転管理要員毎の前記時刻情報を数理的に処理して、前記運転管理要員の心身の異常を検出する判断材料を前記システムの管理者に提示する心身異常提示手段と、を有する
ことを特徴とする運転管理要員の不調検出支援システム。
【請求項2】
前記心身異常提示手段は、
前記運転管理要員が起床に実際にかかった時間を起床にかかる標準時間で割った目覚めにくさ値と、前記運転管理要員が起床後に前記所定のチェックポイントに実際に達するまでにかかった時間から起床後に前記所定のチェックポイントに達する標準時間を減じた値に基づいた出社遅延値と、に基づいて前記運転管理要員の心身の異常を検出する判断材料を前記システム管理者に提示することを特徴とする請求項1に記載の運転管理要員の不調検出支援システム。
【請求項3】
前記心身異常提示手段は、更に、
前記目覚めにくさ値と前記出社遅延値との積として与えられる総合指標値を前記システム管理者に提示することを特徴とする請求項2に記載の運転管理要員の不調検出支援システム。
【請求項4】
前記心身異常提示手段は、更に、
直交座標上の一方の座標軸上の前記目覚めにくさ値と、他方の座標軸上の前記出社遅延値との交点を、日毎にプロットして表示する表示手段を有することを特徴とする請求項2に記載の運転管理要員の不調検出支援システム。
【請求項5】
前記要員携帯端末は、
改ざん防止機能を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の運転管理要員の不調検出支援システム。
【請求項6】
運転管理要員が携帯する要員携帯端末と、前記運転管理要員の心身の異常を検出する判断材料をシステム管理者に提示する管理装置と、を備えるシステムにおける運転管理要員の不調検出支援方法であって、
前記要員携帯端末は、前記運転管理要員起床にかかった時間と、前記運転管理要員が起床してから所定のチェックポイントに達するまでにかかった時間とを毎日収集
前記管理装置は、前記要員携帯端末により収集された時間を用いて、前記運転管理要員が起床に実際にかかった時間を起床にかかる標準時間で割った目覚めにくさ値と、前記運転管理要員が起床後に所定のチェックポイントに実際に達するまでにかかった時間から起床後に前記所定のチェックポイントに達する標準時間を減じた値に基づいた出社遅延値と、を算出、前記目覚めにくさ値と前記出社遅延値を、前記運転管理要員の心身の異常を検出する判断材料として提示する
ことを特徴とする運転管理要員の不調検出支援方法。
【請求項7】
運転管理要員毎に起床にかかった時間と、起床してから所定のチェックポイントに達するまでにかかった時間とを毎日収集する第1処理と、
前記運転管理要員毎に収集した時間から前記運転管理要員が起床に実際にかかった時間を起床にかかる標準時間で割った目覚めにくさ値と、前記運転管理要員が起床後に前記所定のチェックポイントに実際に達するまでにかかった時間から起床後に前記所定のチェックポイントに実際に達する標準時間を減じた値に基づいた出社遅延値と、を算出する第2処理と、
前記目覚めにくさ値と前記出社遅延値を、前記運転管理要員の心身の異常を検出する判断材料として提示する第3処理と、
を要員携帯端末及び管理装置のコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転管理要員の不調検出支援システム、不調検出支援方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
システムを安全・安定に運転管理するためには、経験に応じたノウハウを身に付けた運転管理要員の存在が不可欠である。又、システムを安全・安定に運転管理するためのノウハウ等のマニュアル化を進めることも重要である。
【0003】
ところが、運転管理要員の中には、職場での人間関係、プライベートな悩み等の様々なストレスから、ある日突然、出社できなくなる者がある。
特許文献1には、高齢者施設の入居者の生活リズムの特徴量を算出し、この特徴量を観測することにより、起床後の行動パターンの異常を判定する生活見守りシステムが提案されている。又、特許文献2には、従業員の行動履歴を従業員毎に記憶し、記憶された従業員の行動特性の範囲内から外れた場合に、行動範囲外になったことを通知する従業員行動管理方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−190306号公報
【特許文献2】特開2011−123579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の生活見守りシステム及び従業員行動管理方法では、高齢者の行動パターンの異常及び従業員の行動の異常を検出することはできても、運転管理要員の心身の変調を早期に検出することはできない。
【0006】
そこで、本発明は、運転管理要員の心身の変調を早期に検出することができる不調検出支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面の運転管理要員の不調検出支援システムは、運転管理要員が携帯する要員携帯端末と、前記運転管理要員の心身の異常を検出する判断材料をシステム管理者に提示する管理装置と、を備えるシステムであって、前記要員携帯端末は、設定された起床予定時刻を記憶して、前記起床予定時刻に前記運転管理要員の起床を促す目覚まし手段と、前記起床予定時刻、前記運転管理要員が床から出た起床時刻及び前記運転管理要員が所定のチェックポイントに達した到達時刻の情報からなる時刻情報を記憶する第1の時刻記憶手段と、前記時刻情報を送信する送信手段と、を有し、前記管理装置は、前記時刻情報を受信する受信手段と、前記運転管理要員毎に受信した前記時刻情報を前記時刻管理テーブルに記憶する第2の時刻記憶手段と、前記第2の時刻記憶手段に記憶された前記運転管理要員毎の前記時刻情報を数理的に処理して、前記運転管理要員の心身の異常を検出する判断材料を前記システムの管理者に提示する心身異常提示手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
第2側面の運転管理要員の不調検出支援方法は、運転管理要員毎に起床にかかった時間と、起床してから所定のチェックポイントに達するまでにかかった時間とを毎日収集する第1処理と、前記運転管理要員毎に収集した時間から前記運転管理要員が起床に実際にかかった時間を起床にかかる標準時間で割った目覚めにくさ値と、前記運転管理要員が起床後に所定のチェックポイントに実際に達するまでにかかった時間から起床後に前記所定のチェックポイントに達する標準時間を減じた値に基づいた出社遅延値と、を算出する第2処理と、前記目覚めにくさ値と前記出社遅延値を、前記運転管理要員の心身の異常を検出する判断材料として提示する第3処理と、を有することを特徴とする。
【0009】
第3側面のプログラムは、前記第1処理、前記第2処理、及び前記第3処理を要員携帯端末及び管理装置の有するコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0010】
不調検出支援システムは、運転管理要員が起床に実際にかかった時間を起床にかかる標準時間で割った目覚めにくさ値と、運転管理要員が所定のチェックポイントに実際に達するまでにかかった時間から起床後に所定のチェックポイントに達する標準時間を減じた値に基づいた出社遅延値と、に基づいて心身の異常を検出する判断材料をシステム管理者へ提供するようにしている。これにより、運転管理要員の心身の異常を早期に発見できるので、システム管理者は、システムを安全・安定に維持管理するための処置を早めに打つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の運転管理要員の不調検出の原理を説明するための図である。
図2】本発明の実施形態1の運転管理要員の不調検出支援システムのシステム構成図である。
図3図2中の要員携帯端末10の概略を示す機能ブロック図である。
図4図2中の管理装置50の概略を示す機能ブロック図である。
図5図4中の時刻管理テーブル53の例を示す図である。
図6図5の管理装置50における時刻管理テーブル53の一部を表示した表示例である。
図7】本発明の実施形態2における運転管理要員の不調検出のための表示例である。
図8】本発明の実施形態3における運転管理要員の不調検出のための表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面に基づいて、実施形態について詳細に説明する。
【実施形態1】
【0013】
(実施形態1の原理)
図1は、本発明の運転管理要員の不調検出の原理を説明するための図である。
図1を参照しつつ、本発明の運転管理要員の不調検出の原理を説明する。
【0014】
先ず、各運転管理要員と、運転管理要員が運転、管理等するシステムを管理するシステム管理者との間で、目覚まし手段が動作してから起床するまでにかかる標準時間Tsy(例えば、15分)及び起床してから所定のチェックポイントに達するまでの標準時間Tsx(例えば、20分)を予め決めておく。
【0015】
次に、各運転管理要員が実際に起床にかかった時間と、所定のチェックポイント(例えば、最寄の駅、バス停車場等)に達するまでに実際にかかった時間とを毎日記録し、記録した「起床してから所定のチェックポイント達するまでの時間」及び「起床にかかった時間」を、X−Y座標にプロットする。
【0016】
図1を見ると、X−Y座標上で4つのA,B,C,Dの領域に分かれている。
A領域:X≦Tsx且つY≦Tsy
B領域:X≦Tsx且つTsy<Y
C領域:Tsx<X且つY≦Tsy
D領域:Tsx<X且つTsy<Y
ここで、A領域は、寝起きが良く、スムーズに出社できており異常なしと判断できる領域である。B領域は、寝起きが悪いが、スムーズに出社できている領域である。
【0017】
C領域は、寝起きは良いが、スムーズに出社できておらず、一度起床したものの再び寝てしまう二度寝のリスクがある領域である。更に、D領域は、寝起きが悪く且つスムーズに出社できておらず、出社遅延や欠勤のリスクがある領域である。
【0018】
このように、運転管理要員毎に、起床するまでにかかる標準時間Tsyと、起床してから所定のチェックポイントに達するまでの標準時間Tsxと、を予め決めた上で、実際に起床にかかった時間と、所定のチェックポイントに達するまでにかった時間とをX−Y座標上にプロットする。プロットした点がA〜Dのどの領域に属するかにより、運転管理要員の目覚めにくさと出社の遅延の傾向を知ることができる。
【0019】
以上が、本発明の運転管理要員の不調検出の原理である。
尚、予め決めた起床するまでにかかる標準時間Tsy及び起床してから所定のチェックポイントに達するまでの標準時間Tsxは、運転管理要員の起床及び出社時間を経過観察しながら、システム管理者と運転管理要員との間で定期的に更新するものとする。経過観察と定期的な更新により、各運転管理要員に合った標準時間Tsx及びTsyに収束して行く。
【0020】
(実施形態1の構成)
図2に示された本発明の実施形態1の運転管理要員の不調検出支援システムのシステム構成図に基づいて、本発明の運転管理要員の不調検出支援システムの構成の概要について説明する。
【0021】
ここでは、説明の都合上、あるシステムが甲、乙、丙の3人の運転管理要員により運転管理されているものとする。甲、乙、丙は、近隣の各自宅に住んでおり、所定のチェックポイント(例えば、最寄駅、自宅の玄関等、以下、「最寄駅」とする。)まで徒歩で移動し、最寄駅から電車、バス等の公共交通を利用して職場に向かう。3人の運転管理要員を各々個人毎に、要員携帯端末10(=10−1、10−2、10−3)を携帯し、目覚まし設定時刻、起床時刻、所定のチェックポイントに達した時刻を無線により、システム管理室内に設定されている管理装置50へ通知する。
【0022】
管理装置50は、受信した時刻情報を3人の運転管理要員毎に時刻管理テーブル53へそれぞれ記憶する。管理装置50は、時刻管理テーブル53へ記憶された運転管理要員毎の時刻情報を数理的に処理して、甲、乙、丙の3人の運転管理要員の心身の異常を検出する判断材料となる指標値を算出し、この指標値を提示する。システム管理者は、この指標値を手がかりに、甲、乙、丙の3人の運転管理要員の目覚めにくさと出社の遅延の具合を経過観察し、心身の異常の兆しがあると認めたときは、ヒアリング、生活指導、専門医によるカウンセリング等を実施する。
【0023】
図3は、図2中の要員携帯端末10の概略を示す機能ブロック図である。
本発明の要員携帯端末10は、NTP(Network Time Protocol)同期により正確な時刻を提供するタイマ11を有している。要員携帯端末10は、運転管理要員の起床を促す目覚まし手段12を有している。この目覚まし手段12における起床の促し方としては、アラームを鳴動する、バイブレータを振動する方法等が想定される。
【0024】
更に、要員携帯端末10は、入力・操作手段13として、起床時刻入力13a、GPS(Global Positioning System)を用いた位置検出13b、出社時刻入力13cを有している。要員携帯端末10は、表示手段14として、ハッシュ文字生成・表示14aと、最寄駅等の所定のチェックポイントに達したことを表示する所定場所表示14bと、を有している。入力・操作手段13と表示手段14とは、タッチパネル等により一体として構成しても良い。
【0025】
要員携帯端末10は、時刻記憶手段15として、目覚まし設定時刻15aと、目覚めにかかった時間記録15bと、出社にかかった時間記録15cと、を有している。時刻記憶手段15は、メモリ領域上にアクセス可能に形成される。
【0026】
要員携帯端末10は、送信手段としての通信処理16を有している。通信処理16には、図示しないアンテナを含んでいる。
更に、要員携帯端末10は、携帯する運転管理要員を識別するユーザID17及び改ざん防止照合18を有している。
【0027】
改ざん防止照合18について説明する。本発明の運転管理要員の不調検出支援システムの導入に当たって、運転管理要員には、自己の評価を守る心理が働くことがあり、自身の不調を隠す可能性がある。こうした不調の隠蔽工作はマネージメントに大きなリスクとなるため、これを防止する機能が必要となる。
【0028】
改ざん防止照合18としては、以下のようなものが考えられる。即ち、入力の際は位置情報を使い、指定された入力場所でしか入力できないようにする。又、日時を組み合わせたハッシュ値を使い、入力時に指定時刻でのみ有効な文字を発生させ、この文字を入力しなくては操作が成立しないようにする。又、上位管理システムに送信する情報は暗号化し、チェックサムを付与して人が改ざんできないようにする。更に、指紋認証や顔認識等の生体認証技術を利用し、本人の入力しか受付けないようにする。
【0029】
ここで、目覚まし設定時刻15a、目覚めにかかった時間記録15b、出社にかかった時間記録15c、ユーザID17、及び改ざん防止照合18には、暗号処理が施され、通信処理16を介して管理装置50へ送信される。
【0030】
ここまで、要員携帯端末10について、専用端末として説明したが、スマートフォン(登録商標)等の汎用の携帯電話端末へ専用のアプリケーションプログラムをダウンロードすることにより実現しても良い。
【0031】
図4は、図2中の管理装置50の概略を示す機能ブロック図である。
管理装置50は、管理用パーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)等で構成され、時刻情報を受信する図示しないアンテナを含む受信手段51と、時刻情報を記憶する時刻記憶手段52と、運転管理要員毎に受信した時刻情報を記憶すると共に、記憶された時刻情報に数理的処理を加えた数値情報も記憶する時刻管理テーブル53と、記憶された時刻情報に数理的処理を加えて心身の異常を検出する数値を算出する演算手段54と、時刻管理テーブル53又は演算手段54の算出結果に基づいて、心身の異常を検出する判断材料を提示する心身異常提示手段55と、を有している。
【0032】
受信手段51は、暗号処理された時刻情報等を受信する機能を有している。受信した時刻情報等は、復号処理され、目覚まし設定時刻52a、目覚めにかかった時間記録52b、及び出社にかかった時間記録52cが、ユーザID57と共に時刻記憶手段52に記憶される。管理装置50は、時刻管理テーブル53を有している。時刻記憶手段52及び時刻管理テーブル53は、メモリ領域上にアクセス可能に形成される。
【0033】
管理装置50は、演算手段54として、目覚めにくさ値計算54a、出社遅延値計算54b、及び総合指標値計算54cを有しており、時刻管理テーブル53内に保存された時刻情報等に基づいて、各演算が実行され、演算結果を再び時刻管理テーブル53内の所定に領域に記憶する。更に、管理装置50は、後述する心身異常提示手段として表示55を有している。心身異常提示手段55は、例えば、管理PCの表示画面等により構成される。
【0034】
図5は、図4中の時刻管理テーブル53の例を示す図であり、一人の運転管理要員の時刻管理テーブル53の例が示されている。
図5に示された時刻管理テーブル53では、一人の運転管理要員の出勤日に対する時刻情報として、目覚鳴動時刻、目覚め連絡時刻、CP到達連絡時刻(所定のチェックポイントに到達した連絡時刻)が記憶されている。
【0035】
図5中の目覚許容分とは、目覚まし手段12が起動してから運転管理要員が目覚めて目覚め連絡をするまでに要する時間であり、運転管理要員とシステム管理者との間で予め決めて置く時間であり、図5に示された例では、9分である。又、二度寝許容分とは、目覚め連絡をしてから所定のチェックポイントへ到達するまでに要する時間であり、運転管理要員とシステム管理者との間で予め決めて置く時間であり、図5に示された例では、11分である。
【0036】
図5に示された時刻管理テーブル53中の時刻情報(目覚鳴動時刻、目覚め連絡時刻、CP到達連絡時刻)と、目覚許容分及び二度寝許容分に基づいて、後述する演算により、目覚めにくさ値、出社遅延値及び総合指標値が算出される。算出された目覚めにくさ値、出社遅延値及び総合指標値は、時刻管理テーブル53の該当する日付の領域に記憶される。
【0037】
図5に示された時刻管理テーブル53の右端のヒアリングの領域は、システム管理者が、目覚めにくさ値、出社遅延値及び総合指標値に基づいて、運転管理要員にヒアリングを実施した場合にフラグを立てる領域である。
【0038】
(実施形態1の動作)
本発明の運転管理要員の不調検出支援方法は、構成で上述した運転管理要員毎に起床にかかった時間と、起床してから所定のチェックポイントに達するまでにかかった時間とを毎日収集する第1処理と、収集した時間のデータから目覚めにくさ値、出社遅延値を算出する第2処理と、目覚めにくさ値と出社遅延値を、運転管理要員の心身の異常を検出する判断材料として提示する第3処理と、を有している。ここで、目覚めにくさ値は、目覚めの不安程度の指標であり、出社遅延値は、出社の不安程度及び二度寝リスクの指標である。
【0039】
本発明の運転管理要員の不調検出支援システムの動作について、(I)目覚めにくさ値、出社遅延値の算出式と、(II)表示方法と、に分けて説明する。
(I)目覚めにくさ値、出社遅延値の算出式
図1に基づいて、本発明の運転管理要員の不調検出の原理を説明したが、図1のX軸上の数値である「起床してから所定のチェックポイントに達するまでの時間」及びY軸上の数値である「起床にかかった時間」を、それぞれの標準時間Tsx及びTsyで正規化することを考える。
【0040】
目覚まし時計が鳴ってから、床から出るまでの時間である目覚めるまでにかかる時間をdtW、起床してから、所定のチェックポイントに到達するまでの時間をdtAとすると、
目覚めにくさ値rW、出社遅延値rA及び不安定度及び総合リスクの指標である総合指標値rは、次式で与えられる。
【0041】
rW=dtW/Tsy ・・・・(1)
rA=edtA-Tsx ・・・・(2)
r=rW×rA ・・・・(3)
式(1)において、Tsyは、起床にかかる標準時間(個人定数)であり、rWは1以下が正常である。
【0042】
式(2)において、Tsxは、起床後に所定のチェックポイントに到達するまでの標準時間(個人定数)であり、rAは1以下が正常である。式(2)は、指数関数を用いて正規化しているので、式(1)に比べて、標準時間を超えた場合に数値の変化が大きくなっている。これは、最初に目が覚めるまでの時間以上に二度寝のリスクを低減することが重要であるので、二度寝の検出には指数的な指標を用いている。余裕をもって早めに床から出た場合など、出社のために家から出るまでの時間に余裕があるとつい二度寝してしまうリスクを検出するためである。運用の実績から、出勤日の朝の行動は正確な傾向があり、1分単位の精度が必要である。
【0043】
更に、式(3)の総合指数rは、式(1)と式(2)の積であり、1以下が正常である。
上述したように、図1におけるX軸上の数値及びY軸上の数値をそれぞれの標準時間Tsx及びTsyで正規化すると、1以下であれば正常といった簡単な判定が可能になる。
【0044】
但し、正規化に用いる標準時間Tsx及びTsyは、各運転管理要員に固有の時間であるため、運転管理要員とシステム管理者との間で定期的に見直して妥当な値に調整することが望ましい。
【0045】
運転管理要員の性向によっては、出社遅延値rAを式(2)に換えて、
rW=dtA/Tsx ・・・・(4)
により、算出するようにしても良い。
【0046】
更に、運転管理要員の性向によっては、目覚めにくさ値rWを式(1)に換えて、
rW=edtW-Tsy ・・・・(5)
により、算出するようにしても良い。
【0047】
(II)表示方法
図6は、図5の管理装置50における時刻管理テーブル53の一部を表示した表示例である。
【0048】
図6に示された表示例は、図5に示された時刻管理テーブル53のうち、勤務日に対する目覚めにくさ値rW、出社遅延値rA、総合指標値rを抜き出して表示したものである。更に、値が1を超える数値を示している目覚めにくさ値rW、出社遅延値rA、及び総合指標値rの数値は太線で示されている。
【0049】
(実施形態1の効果)
本発明の実施形態1の運転管理要員の不調検出支援システムによれば、各運転管理要員を携帯する要員携帯端末10から収集した時刻情報に、式(1)〜(5)等を用いた数理的処理を施し、図6に示されたような表示を行う。これにより、システム管理者は、図6に示されたような表示を見ることにより、目覚めにくさ値rW、出社遅延値rA、及び総合指標値rの数値から、運転管理要員の心身の異常の芽生えを早期に発見することが可能になる。
【実施形態2】
【0050】
図7は、本発明の実施形態2における運転管理要員の不調検出のための表示例である。
図7(a)〜図7(d)において、X軸は、起床してから所定のチェックポイントへ到達するまでの時間を正規化した出社遅延値rAを示し、Y軸は、目覚めにかかった時間を正規化した目覚めにくさ値rWを示している。各図の1つ1つの点は、1日の値を示している。
【0051】
図7(a)は、一定の範囲にまとまった分布を示す図であり、図7(b)は、寝起きが悪くなっている(前日なかなか眠れなかった等)を示す図であり、図7(c)は、寝起き後に二度寝等が発生している(出社拒否等の前兆かも)を示す図であり、図7(d)は、寝起きが悪く、行動ももたついている様子を示す図である。
【0052】
本発明の実施形態2における運転管理要員の不調検出支援システムでは、心身異常提示手段として、X−Y座標上に、出社遅延値rA(X軸)と、目覚めにくさ値rW(Y軸)と、毎日、プロットする表示方法を採用している。これにより、点の分布が、図7(a)〜図7(d)のいずれの分布かにより、運転管理要員の目覚めや出社の傾向を知ることができ、運転管理要員の心身の異常の芽生えを早期に発見することが可能になる。
【実施形態3】
【0053】
図8は、本発明の実施形態3における運転管理要員の不調検出のための表示例である。
図8(a)〜図8(d)において、左から右への水平方向の軸は、出社遅延値rAに対応し、下から上への垂直方向の軸は、目覚めにくさ値rWに対応しているが、X軸及びY軸の表示は省略されている。各図の1つ1つの点は、1日の値を示している。
【0054】
図8(a)〜図8(d)の表示例では、各丸の中には、現在に近いほど小さな数字が付されている。数字「1」を今日とすると、数字「2」は昨日の指標であり、数字「3」は一昨日の指標を表している。
【0055】
図8(a)は、正常な場合の表示例であり、プロットされた点が一定の範囲に集中しており、出社遅延値rA及び目覚めにくさ値rW共に安定していることを示している。図8(a)に示された表示例は、正常なため、ガイダンス表示はされていない。
【0056】
図8(b)は、異常な場合の表示例1であり、下から上方向へ矢印が伸びている。図8(b)に示された表示例は、目覚めにくさ値rWが増加傾向であり、表示領域の下部に、「生活指導を実施してください」というガイダンスが表示されている。
【0057】
図8(c)は、異常な場合の表示例2であり、左下から右上方向へ矢印が伸びている。図8(c)に示された表示例は、目覚めにくさ値rW及び出社遅延値rAが共に増加傾向であり、表示領域の下部に、「専門医によるカウンセリングを検討してください」というガイダンスが表示されている。
【0058】
図8(d)は、異常な場合の表示例3であり、左から右方向へ矢印が伸びている。図8(d)に示された表示例は、出社遅延値rAが増加傾向であり、表示領域の下部に、「専門医によるカウンセリングを検討してください」というガイダンスが表示されている。
【0059】
図8(b)〜図8(d)に示された例は、過去から現在へ一定に方向に変化する場合の表示例であるが、過去から現在へ向かって行きつ戻りつし、時間的な規則性が認められない場合も想定される。
【0060】
そこで、時間的に規則性がある場合と時間的に規則性がない場合とを区別するために、時間的に規則性がある場合には、太線の矢印で表示し、時間的に規則性がない場合には、細い線の矢印で表示するようにしても良い。
【0061】
本発明の実施形態3における運転管理要員の不調検出支援システムでは、心身異常提示手段として、出社遅延値rAと、目覚めにくさ値rWと、の時間的な推移をベクトル表示するようにしている。これにより、システム管理者は、運転管理要員の目覚めや出社の時間的な推移を知ることができ、運転管理要員の近未来の目覚めや出社の予測が可能になるので、早めの予防措置をとることができる。
【0062】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上に述べた実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成又は実施形態を取ることができる。例えば、以下の(a)、(b)のような変形例がある。
【0063】
(a)本発明の実施形態1の説明では、運転管理要員の心身の異常を検出する判断材料を算出する式として、式(1)〜(5)を示したが、判断材料を算出する式は、式(1)〜(5)に限定されない。他の式により、時刻情報を正規化して、目覚めにくさ値rW及び出社遅延値rAを算出しても良い。
【0064】
(b)本発明の実施形態3では、運転管理要員の目覚めや出社の時間的な推移に合わせたガイダンスの表示例について説明したが、管理装置50と、図示しない専門医のカウンセリング記録を保存する端末とをリンクすることにより、運転管理要員の心身の総合的なケアを図るシステムとしても良い。
【符号の説明】
【0065】
10,10−1,10−2,10−3 要員携帯端末
11 タイマ(NTP同期/時計)
12 目覚まし手段
13 入力・操作手段
14 表示手段
15,52 時刻記憶手段
16 送信(通信処理)手段
17,57 ユーザID
18 改ざん防止照合
50 管理装置
51 受信(通信処理)手段
53 時刻管理テーブル
54 演算手段
55 心身異常提示(表示)手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8