特許第6346020号(P6346020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6346020消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346020
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20180611BHJP
   C08F 220/58 20060101ALI20180611BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   A61L9/01 H
   C08F220/58
   C08F2/44 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-151953(P2014-151953)
(22)【出願日】2014年7月25日
(65)【公開番号】特開2016-29954(P2016-29954A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】向井 剛
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−289775(JP,A)
【文献】 特開平11−240916(JP,A)
【文献】 特開平11−047247(JP,A)
【文献】 特開2004−292649(JP,A)
【文献】 特開2005−320436(JP,A)
【文献】 特開2010−248470(JP,A)
【文献】 特開平06−261931(JP,A)
【文献】 特開平06−047085(JP,A)
【文献】 特開平06−327969(JP,A)
【文献】 特開平02−308884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00− 9/22
C08C 19/00− 19/44
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
C08F 2/00− 2/60
B01D 53/02− 53/12
B01J 20/00− 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)スルホン酸基を有する重合性単量体、(B)2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、及び(C)光重合開始剤を含有し、水を含まない溶液に紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
(A)スルホン酸基を有する重合性単量体、(B)2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、(C)光重合開始剤、及び(D)下記D成分を含有し、水を含まない溶液に紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の製造方法。
[D成分]
水酸基及び/又はポリアルキレングリコール鎖と、1つ以上のエチレン性不飽和結合を併せ持つ重合性単量体(但し、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)を除く。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭機能を有する紫外線硬化型樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消臭性樹脂組成物は、臭気物質を化学的な中和や物理的な吸着によって捕捉することにより消臭効果を発揮することができ、トイレ、玄関、浴室、下駄箱、ゴミ箱、空調の排気ダクト、ペット用トイレ、靴、衣類、介護用品、サニタリー用品、オムツなどの消臭剤として利用されている。
【0003】
上記の消臭性樹脂組成物としては、消臭剤を樹脂に練り込んだ消臭性樹脂組成物、消臭性を有する重合性単量体を樹脂に結合した消臭性樹脂組成物、消臭性を有する単量体と他の単量体とを重合して得られる消臭性樹脂組成物などが用いられている。
【0004】
消臭性を有する重合性単量体と他の重合性単量体とを重合して得られる消臭性樹脂組成物に関する従来技術としては、スルホン酸基、硫酸エステル基又はリン酸エステル基を有するアニオン性ビニル単量体(a1)並びにカチオン性ビニル単量体(a2)を必須構成単量体とする両性高分子(A)を含有してなる消臭剤(特許文献1)、カルボキシル基、スルホン酸基、又はそれらの金属塩を持つ不飽和化合物の少なくとも1種以上からなる重合物であり、水に不溶である程度に架橋されているゲルであり、金属塩の消臭性金属として鉄、銅、コバルト、ニッケルの中、少なくとも1種の金属を含有している消臭ゲル(特許文献2)などが開示されている。しかし、上記従来技術の消臭性樹脂組成物は、消臭性を有する単量体を水溶液中で重合開始剤を用いてラジカル重合しているため、重合物と水を含むゲル状の樹脂組成物である。従って、該樹脂組成物は、初期消臭能力(即効性)及び強い臭気に対する高い消臭能力に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−289775号公報
【特許文献2】特開平8−299421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、初期消臭能力(即効性)及び強い臭気に対する高い消臭能力を有する消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、スルホン酸基を有する重合性単量体、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)及び光重合開始剤を含む溶液に紫外線を照射して硬化することにより得た紫外線硬化型樹脂組成物が上記課題を解決することを見出した。本発明者は、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1](A)スルホン酸基を有する重合性単量体、(B)2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、及び(C)光重合開始剤を含有し、水を含まない溶液に紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の製造方法、
[2](A)スルホン酸基を有する重合性単量体、(B)2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、(C)光重合開始剤、及び(D)下記D成分を含有し、水を含まない溶液に紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の製造方法、
[D成分]
水酸基及び/又はポリアルキレングリコール鎖と、1つ以上のエチレン性不飽和結合を併せ持つ重合性単量体(但し、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)を除く。)。
からなっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって製造された消臭性紫外線硬化型樹脂組成物及びこれを含む消臭剤は、アルカリ性を有する臭気物質に対する初期消臭能力(即効性)及び強い臭気に対する高い消臭能力を有する。また、本発明の消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の製造方法は、製造工程中に水を用いないため、水を除去する乾燥工程を経る必要が無く製造工程が簡便である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いられる(A)スルホン酸基を有する重合性単量体(以下、「A成分」ともいう。)は、スルホン酸基と、エチレン性不飽和結合を併せ持つ化合物である。
A成分中のスルホン酸基は、アルカリ性を有する臭気物質、例えばアンモニア、アルキルアミン類(トリエチルアミン、トリメチルアミン等)、アルキロールアミン類(トリエタノールアミン等)等を捕捉する官能基である。
A成分中のエチレン性不飽和結合は、好ましくはアクリロイル基、メタクリル基である。
【0010】
A成分としては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2−アクリルアミド−n−ブタンスルホン酸、ビニルスルホン酸等が挙げられ、好ましくは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である。
上記A成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
本発明で用いられる(B)2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)(以下、「B成分」ともいう。)は、水酸基とアクリル基を併せ持つ化合物である。
B成分中の水酸基は、A成分中のスルホン酸基への臭気物質を捕捉する機能を補助する官能基である。
B成分は、水を用いることなくA成分を溶解して混合溶液とすることができる。
以下に化学式を示す。
【0012】
【化1】
【0013】
本発明で用いられる光重合開始剤(以下、「C成分」ともいう。)は、紫外線でラジカルを発生する重合性の開始剤であり、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイド等が挙げられる。上記C成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
本発明では、上記A成分、B成分以外の重合性単量体を用いることも可能である。特に、水酸基及び/又はポリアルキレングリコール鎖と、1つ以上のエチレン性不飽和結合(好ましくは、アクリロイル基、メタクリル基。)を併せ持つ重合性単量体(但し、2-ヒ
ドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)を除く。以下、「D成分」ともいう。)は、D成分中に含まれる水酸基及び/又はポリアルキレングリコール鎖が、A成分中のスルホン酸基への臭気物質を捕捉する機能を補助し、本発明の消臭性能をアップする場合があるので好ましい。
【0015】
D成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、アルコキシポリオキシエチレンモノアクリレート、アルコキシポリオキシエチレンモノメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチレンモノアクリレート、ポリオキシエチレンモノメタクリレート等が挙げられる。
【0016】
本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記A成分、B成分、D成分以外の重合性単量体(以下、「E成分」ともいう。)も用いることができる。E成分としては、例えば、スルホン酸基、水酸基、ポリアルキレングリコール鎖を含まない重合性単量体であって、1分子中にアクリロイル基又はメタクリロイル基を1個以上有する重合性単量体、1分子中に重合性ビニル基を1個以上含有する重合性単量体、1分子中にアクリルアミド基又はメタクリルアミド基を1個以上含有する重合性単量体等が挙げられる。
【0017】
E成分のとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールポロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0018】
本発明の消臭性紫外線硬化型樹脂組成物は、A成分、B成分及びC成分を含有し水を含まない溶液又はA成分、B成分、C成分とD成分及び/又はE成分を含有し水を含まない溶液に紫外線を照射して得られる。
【0019】
上記溶液中のA成分の配合量としては、A成分及びB成分の重合性単量体又はA成分、B成分とD成分及び/又はE成分の重合性単量体の総量100質量部中に、好ましくは5〜20質量部、より好ましくは10〜20質量部である。A成分が5質量部未満であると本発明の消臭性能が低下する場合があり、20質量部を超えるとA成分がB成分に溶解できなくなる場合がある。
【0020】
B成分の配合量としては、A成分がB成分に溶解する濃度であれば特に制限はなく、例えば、A成分1質量部に対して好ましくはB成分が4〜10質量部である。
上記範囲外であるとA成分がB成分に溶解せず溶液状とすることができない場合がある。
【0021】
C成分の配合量は、A成分及びB成分の重合性単量体又はA成分、B成分とD成分及び/又はE成分の重合性単量体の総量100質量部に対し、1〜10質量部が好ましく、より好ましくは2〜5質量部である。上記範囲外であると、A成分、B成分及びC成分を含有し水を含まない溶液、又はA成分、B成分、C成分とD成分及び/又はE成分を含有し水を含まない溶液に紫外線を照射することにより硬化して消臭性紫外線硬化型樹脂組成物を得ることができなくなる場合がある。
【0022】
本発明の消臭性紫外線硬化型樹脂組成物は、以下の方法で得ることができる。
A成分、B成分及びC成分を含有し水を含まない溶液又はA成分、B成分、C成分とD成分及び/又はE成分を含有し水を含まない溶液に、紫外線を照射してラジカル重合反応することにより硬化して消臭性紫外線硬化型樹脂組成物が得られる。該組成物は、水を含まない重合性単量体のみを含む溶液を硬化させることによって、重合物が100質量%の消臭性紫外線硬化型樹脂組成物とすることもできる。また、本発明の消臭性紫外線硬化型樹脂組成物には実質的に水を含まないため、水を除去する乾燥工程を経る必要が無く簡便な製造工程とすることができる。
【0023】
上記紫外線を照射する際の紫外線照射量は、A成分、B成分及びC成分を含有し水を含まない溶液又はA成分、B成分、C成分とD成分及び/又はE成分を含有し水を含まない溶液が硬化できる量であれば特に制限はないが、好ましくは積算光量約200〜1000mJ/cmである。なお、紫外線照射機としては、公知、公用のものを特別の制限なく使用できる。
【0024】
本発明の消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の形態及び加工は、従来公知の加工方法によって任意に作製できる。例えば、被塗布物へ消臭性紫外線硬化型樹脂組成物をコーティング加工方法、具体的には、A成分、B成分及びC成分を含有し水を含まない溶液又はA成分、B成分、C成分とD成分及び/又はE成分を含有し水を含まない溶液を各種コーター(例えば、ダイコーター、グラビアコーター等)を用いて被塗布物に塗布した後に紫外線を照射して前記溶液を硬化させることにより作製することができ、被塗布物に本発明の消臭性能を付与することができる。
【0025】
また、例えば、フィルム、シート状の消臭性紫外線硬化型樹脂組成物に加工する方法、具体的には、剥離性のよい基材(例えばポリオレフィン、ポリエステル、テフロン(登録商標)、メラミン、ステンレス等)にA成分、B成分及びC成分を含有し水を含まない溶液又はA成分、B成分、C成分とD成分及び/又はE成分を含有し水を含まない溶液を塗布した後に紫外線を照射して、硬化した消臭性紫外線硬化型樹脂組成物を剥離することにより作製することができ、そのまま又は公知、公用の方法で加工することによって消臭剤とすることができる。
【0026】
さらに、例えば、ビーズ、ペレット状の消臭性紫外線硬化型樹脂組成物に加工する方法、具体的には、ロートフォーマー等を用いてA成分、B成分及びC成分を含有し水を含まない溶液又はA成分、B成分、C成分とD成分及び/又はE成分を含有し水を含まない溶液を滴下した後に紫外線を照射して、硬化することで作製することができ、消臭剤として用いることができる。
【0027】
かくして得られた本発明の消臭性紫外線硬化型樹脂組成物は、該組成物中に含まれるA成分中のスルホン酸基によってアンモニア、アルキルアミン類(トリエチルアミン、トリメチルアミン等)、アルキロールアミン類(トリエタノールアミン等)等の臭気成分を捕捉することができる。
【0028】
本発明によって製造された消臭性紫外線硬化型樹脂組成物は、消臭が必要となる生活の各種場面、例えば、トイレ、玄関、浴室、下駄箱、ゴミ箱、空調の排気ダクト、ペット用トイレ、靴、衣類、介護用品、サニタリー用品、オムツなどに用いる消臭剤として有用である。なお、上記消臭剤は、公知、公用の消臭剤と併用することも可能である。
【0029】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0030】
<消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の作製>
(1)原材料
[A成分]
A:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)(和光純薬工業社製)
[B成分]
B:2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)(商品名:HEAA;興人社製)[C成分]
C1:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184;チバスペシャルティケミカルズ社製)
C2:2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(商品名:ダロキュア1173;チバスペシャルティケミカルズ社製)
[D成分]
D1:2−ヒドロキシエチルアクリレート(商品名:HEA;大阪有機化学工業社製)
D2:ポリエチレングリコール600ジアクリレート(商品名:NKエステルA−600;新中村化学工業社製)
[E成分]
E:ペンタエリスリトールトリアクリレート(商品名:アロニックスM−305;東亜合成社製)
【0031】
(2)配合
上記原材料を用いた消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の配合(質量部)を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
(3)フィルム状消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の作製
[実施例品1〜5の作製]
表1に記載の等倍量のAとBを遮光容器にとり、マグネチックスターラー(型式:SR−350;アドバンテック東洋社製)と3cmの撹拌子を用いて、約300rpmで60℃・20分間撹拌した後、更に表1に記載の等倍量の残りの原材料を加え50℃・10分間撹拌して混合溶液とした。該混合溶液をアプリケーターを用いて、PETフィルム(厚さ188μm)表面に厚さが400μmとなるように塗布した後、紫外線照射機(型式:F300;フュージョンUVシステムジャパン社製)を用いて、積算光量200mJ/cmの紫外線を照射して光重合を行い、塗布した混合溶液を硬化した。硬化物をPETフィルムから剥離して重合物100質量%のフィルム状消臭性紫外線硬化型樹脂組成物(実施例品1〜5)を得た。
【0034】
[比較例品1、2の作製]
表1に記載の等倍量の原材料を遮光容器にとり、マグネチックスターラー(型式:SR−350;アドバンテック東洋社製)と3cmの撹拌子を用いて、約300rpmで50℃・10分間撹拌して混合溶液とした。該混合溶液をアプリケーターを用いて、PETフィルム(厚さ188μm)表面に厚さが400μmとなるように塗布した後、紫外線照射機(型式:F300;フュージョンUVシステムジャパン社製)を用いて、積算光量200mJ/cmの紫外線を照射して光重合を行い、塗布した混合溶液を硬化した。硬化物をPETフィルムから剥離して重合物100質量%のフィルム状消臭性紫外線硬化型樹脂組成物(比較例品1、2)を得た。
【0035】
[比較例品3の作製]
表1に記載の等倍量のAとD成分を遮光容器にとり、マグネチックスターラー(型式:SR−350;アドバンテック東洋社製)と3cmの撹拌子を用いて、約300rpmで60℃・20分間撹拌したが、D成分中にAを溶解することができず、混合溶液を得ることができなかった。従って、フィルム状消臭性紫外線硬化型組成物(比較例品3)を作製することができなかった。
【0036】
<消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の評価>
得られたフィルム状消臭性紫外線硬化型樹脂組成物(実施例品1〜5、比較例品1、2のいずれか)0.4gを容量250mLのガラス製容器に入れ、該樹脂組成物に触れないように1.4質量%トリエチルアミン水溶液を50mg、100mg、150mgのいずれかを加え密封した。密封してから1分後、2分後、5分後のいずれかに開封して、トリエチルアミンの臭気を10名のパネラーで表2の評価基準で官能評価した。また、官能評価結果の平均値を下記基準で記号化し、その結果を表3に示した。
1.4質量%トリエチルアミン水溶液を50mg加え、密封時間が1分間の試験区で「○」又は「◎」の評価の場合、初期消臭能力(即効性)があり、有意性があるといえる。また、1.4質量%トリエチルアミン水溶液を150mg加え、密閉時間が5分間の試験区で「○」又は「◎」の評価の場合、強い臭気に対する高い消臭能力があり、有意性があるといえる。
[記号化]
◎:評価点の平均値が3.5以上
〇:評価点の平均値が2.5以上、3.5未満
△:評価点の平均値が1.5以上、2.5未満
:評価点の平均値が1.5未満
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
結果より、A成分、B成分及びC成分と、所望によりD成分を用いて得られた実施例品1〜5は、初期消臭能力(即効性)及び強い臭気に対する高い消臭能力を有していた。一方、A成分を含まない比較例品1、2は、初期消臭能力(即効性)及び強い臭気に対する高い消臭能力を有していなかった。また、B成分を用いなかった比較例品3では、A成分を溶解することができず、フィルム状に加工することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の消臭性紫外線硬化型樹脂組成物及びこれを含む消臭剤は、初期消臭能力(即効性)及び強い臭気に対する高い消臭能力を有している。また、本発明の消臭性紫外線硬化型樹脂組成物は、紫外線硬化型の樹脂組成物であるために、シート状、フィルム状、ビーズ状等の任意の状態への加工や含浸硬化等の加工が可能なため、幅広い利用方法が期待できる。更に、本発明の消臭性紫外線硬化型樹脂組成物の製造方法は、製造工程中に水を用いないため、水を除去する乾燥工程を経る必要が無く製造工程が簡便である。