(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蓋体側の前記第1保持部の前記開口端の前記基準中心軸線からのずれ量Dは、前記注射針の前記針保持部材の外径をdとしたときに(0.1〜0.4)dである(0.1d≦D≦0.4d)ことを特徴とする請求項1に記載の注射針廃棄用容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した注射針廃棄用容器では、次の通りの解決すべき問題がある。移動部材が保持位置に保持された状態では、蓋体側の第1保持部と移動部材側の第2保持部とは注射針保持部を構成するが、従来の注射針廃棄用容器では、蓋体側の第1保持部の開口端、即ち針保持部の分割軸線は、この注射針保持部の中心を通る軸線であって、移動部材のスライド方向に対して垂直な方向に延びる軸線と一致している。さらに、注射針保持部が全周にわたり形成されている。それ故に、移動部材を後退位置に向けて移動させたときに、針保持部材(即ち、注射針)が所定の保持部から離脱せず、この針保持部材が所定保持部に残留しやすい。
【0007】
本発明の目的は、注射針を注射器本体から取り外して容器本体内に落下収容させやすい注射針廃棄用容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の注射針廃棄用容器は、注射器本体の先端部に着脱自在に螺着される針保持部材及び前記針保持部材に保持された針本体を有する注射針を廃棄するための注射針廃棄用容器であって、廃棄物を収容するための容器本体と、前記容器本体の開口部を覆う蓋体と、前記蓋体に設けられた装着部にスライド機構を介して
一方側と他方側にスライド移動自在に装着された移動部材と、を備え、
前記装着部には第1保持部が設けられ、前記移動部材には第2保持部が設けられ、前記移動部材を前記一方側又は前記他方側にスライドさせることで、前記第1保持部と前記第2保持部との間に前記注射針を保持又は落下させるための開口が形成され、
前記移動部材を
前記一方側に移動させて保持位置
に位置させると、前記第1保持部
と前記第2保持部とは、相互に協働して前記注射針を保持するための注射針保持部を構成し、
前記注射針保持部に前記注射針が保持されると、前記注射針の片側は前記第1保持部に形成された第1保持領域により保持され、前記注射針の他側は前記第2保持部に形成された第2保持領域により保持され、前記移動部材
を前記保持位置から前記他方側に移動させると、前記注射針保持部が開放され
て前記注射針の落下が許容されるように構成されており、
前記移動部材が前記保持位置に位置づけられて、前記注射針が前記第1保持領域及び前記第2保持領域により保持されている状態において、前記第1保持部の開口端
及び前記第2保持部の開口端は何れも基準中心軸線よりも前記一方側に位置し、前記基準中心軸線は、前記注射針の中心を通り
、前記移動部材のスライド移動方向に対して実質上垂直
に延びる線であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の注射針廃棄用容器では、前記蓋体側の前記第1保持部の前記開口端の前記基準中心軸線からのずれ量Dは、前記注射針の前記針保持部材の外径をdとしたときに(0.1〜0.4)dである(0.1d≦D≦0.4d)ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載の注射針廃棄用容器では、
前記第2保持部には非保持領域が設けられ、前記第2保持領域には前記針保持部材に設けられた係合凹部と係合する係合突部が設けられ、前記非保持領域には前記係合凹部と係合するための係合突部は設けられてなく、前記移動部材が前記保持位置に位置づけられた状態において、前記第2保持領域は、前記基準中心線よりも前記他方側に位置し、前記非保持領域は、前記第2保持領域から前記基準中心線を超えて前記一方側に延びていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載の注射針廃棄用容器では、前記非保持領域は
、前記一方側に向かうに従い径方向外方に拡がるように或いは前記一方側に向けて直線状に延びることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に記載の注射針廃棄用容器では
、前記係合突部は、前記注射針の外周面に形成された縦リブと係合する高さを備え、且つ、前記移動部材のスライド時に前記注射針の外周面の前記縦リブに対してスライド方向の力が加わらないように形状付けられている。
【0013】
また、本発明の請求項6に記載の注射針廃棄用容器は、注射器本体の先端部に着脱自在に螺着される針保持部材及び前記針保持部材に保持された針本体を有する注射針を廃棄するための注射針廃棄用容器であって、
廃棄物を収容するための容器本体と、前記容器本体の開口部を覆う蓋体とを備え、
前記蓋体
は、第1保持部と、
前記第1保持部に対して一方側と他方側にスライド移動させることで前記第1保持部との間に前記注射針を保持又は落下させるための開口が形成される第2保持部と
、を有し、
前記第2保持部を
前記一方側の端部に位置する保持位置まで移動させると
、前記第1保持部と前記第2保持部とは、相互に協働して前記注射針を保持するための注射針保持部を構成し、
前記注射針保持部に前記注射針が保持されると、前記注射針の片側は前記第1保持部に形成された第1の保持領域により保持され、前記注射針の他側は前記第2保持部に形成された第2の保持領域により保持され、前記第2保持部
を前記保持位置から前記他方側に移動させると、前記注射針保持部が開放され
て前記注射針の落下が許容されるように構成されており、
前記注射針保持部は、前記一方側に位置する前記第1の保持領域と、前記他方側に位置する前記第2の保持領域と、前記第1の保持領域と前記第2の保持領域との間に位置する非保持領域を備え、
前記第1の保持領域及び前記第2の保持領域は各々に前記注射針を保持するための複数の係合突部を有する一方、前記非保持領域は前記注射針を保持するための係合突部を有しておらず、
前記注射針が前記注射針保持部により保持されている状態において、前記第1の保持領域及び前記第2の保持領域は前記注射針と係合する一方、前記非保持領域は前記注射針と係合しないことを特徴とする。
また、本発明の請求項7に記載の注射針廃棄用容器では
、前記係合突部は、前記注射針の外周面に形成された縦リブと係合する高さを備え、且つ、前記移動部材のスライド時に前記注射針の外周面の前記縦リブに対してスライド方向の力が加わらないように形状付けられていることを特徴とする。
更に、本発明の請求項8に記載の注射針廃棄用容器は、注射器本体の先端部に着脱自在に螺着される針保持部材及び前記針保持部材に保持された針本体を有する注射針を廃棄するための注射針廃棄用容器であって、
廃棄物を収容するための容器本体と、前記容器本体の開口部を覆う蓋体とを備え、
前記蓋体
は、第1保持部と、
前記第1保持部に対して一方側と他方側にスライド移動させることで前記第1保持部との間に前記注射針を保持又は落下させるための開口が形成される第2保持部と
、を有し、
前記第2保持部を
前記一方側に移動させて保持位置
に位置させると、前記第1保持部と前記第2保持部とは、相互に協働して前記注射針を保持するための注射針保持部を構成し、
前記注射針保持部に前記注射針が保持されると、前記注射針の片側は前記第1保持部に形成された第1保持領域により保持され、前記注射針の他側は前記第2保持部に形成された第2保持領域により保持され、前記第2保持部
を前記保持位置から前記他方側に移動させると、前記注射針保持部が開放され
て前記注射針の落下が許容されるように構成されており、
前記第2保持部が前記保持位置に位置づけられて、前記注射針が前記第1保持領域及び前記第2保持領域により保持されている状態において、前記第1保持部の開口端
及び前記第2保持部の開口端は何れも基準中心軸線よりも前記一方側に位置し、
前記基準中心軸線は、前記注射
針の中心を通り
、前記第2保持部のスライド移動方向に対して実質上垂直
に延びる線であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、注射針を注射器本体から取り外して容器本体内に落下収容させやすい注射針廃棄用容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う注射針廃棄用容器の一実施形態について説明する。
図1において、図示の注射針廃棄用容器2は、例えば使用済みの注射針や脱脂綿などの医療廃棄物を収容するための容器本体4を備えている。容器本体4は上面が開放された箱状であり、この容器本体4の上面開口6はプレート状の蓋体8によって覆われている。また、蓋体8の後側部には、蓋体8の上面を覆うためのカバー体10がヒンジ12を介して開閉自在に取り付けられている。カバー体10の先端部にはフック14が設けられ、また蓋体8には、このフック14に対応して受け凹部16が設けられ、このフック14が受け凹部16に着脱自在に受け入れられる。この蓋体8には、矩形状の投入用開口18が設けられており、例えば使用済みの脱脂綿などがこの投入用開口18を通して容器本体4内に投入される。
【0017】
この注射針廃棄用容器2では、ねじ式タイプの注射器24(例えば、インシュリン用注射器)において注射針26を廃棄することができるように、次の通りに構成されている。
図1とともに
図2〜
図11を参照して、このねじ式タイプの注射器24は、注射器本体28を備え、この注射器本体28の先端部に注射針26が螺着されている(
図1及び
図10参照)。注射器本体28の先端部には小径突部30が設けられ、この小径突部30の先端部に針取付部32が設けられ、この針取付部32の外周面に雄ねじ部34が設けられている。注射針26は、円筒状の針保持部材36(所謂、ハブ)と、この針保持部材36に保持された針本体38とを有し、針保持部材36の端壁(図示せず)を貫通して針本体38が保持されている。この針保持部材36の内周面には、注射器本体28側の雄ねじ部34に対応して雌ねじ部(図示せず)が設けられている。このように構成されているので、注射針26の雌ねじ部を注射器本体28の雄ねじ部34に螺着することにより、注射器本体28に注射針26を取り付けて注射器24として使用することができ、またこの状態で注射針26を離脱方向に回動させることにより、注射器本体28から注射針26を取り外すことができる。
【0018】
この実施形態では、注射針26の針保持部材36の外周面には、周方向に実質上等間隔をおいて複数(この形態では、
図10に示すように16個)の係合凹部40が設けられ、これら複数の係合凹部40は、針保持部材36の軸線方向(
図10及び
図11において上下方向)に直線状に延びており、このように係合凹部40を設けることにより、隣接する係合凹部40間に縦リブが形成され、これら縦リブは針保持部材36の外周面に周方向に設けられる。
【0019】
容器本体4側の蓋体8には装着部44が設けられ、この装着部44には矩形状の装着用凹部46が設けられている(
図2参照)。装着用凹部46は蓋体8の上面に形成されており、この装着用凹部46にはプレート状の移動部材48が移動自在に配設され、この装着用凹部46に沿ってスライド移動自在に装着されている。移動部材48はプレート状であり、その両側部には、移動部材48のスライド移動方向(
図3〜
図6、
図10及び
図11において左右方向、
図7において紙面に対して垂直方向)に延びる一対の装着用爪部50が設けられている。また、装着用凹部46の両側部には、一対の装着用爪部50に対応して一対の装着用開口52が設けられ、これら装着用開口52が上記スライド移動方向に延びている。移動部材48側の一対の装着用爪部50が一対の装着用開口部52を通してそれらの縁部にスライド移動自在に係合されている(
図7参照)。これら一対の装着用爪部50及び一対の装着用開口部52はスライド機構53(
図7参照)を構成し、このスライド機構53を介して移動部材48が保持位置(
図3、
図5、
図8及び
図10に示す位置であって、後述する如く注射針26を保持する位置)と、この保持位置から後退する後退位置(
図4、
図6、及び
図11に示す位置であって、注射針26の保持状態を解除する位置)との間を所定方向にスライド移動される。
【0020】
この実施形態では、蓋体8の装着部44の一端部、具体的には装着用凹部46の一端部に、略半円筒状の第1保持部54が設けられ、この第1保持部54は、容器本体4内に向けて下方に延びている。第1保持部54の内周面(即ち、略半円弧状の凹状内面)における上端部には、第1保持凹部56が設けられ、この第1保持凹部56は、注射器本体28の小径突部30の先端部の外周形状に対応した形状を有し、後述する如く注射針26を挿入すると、注射器本体28の小径突部30の先端面がこの第1保持凹部56の底面58に当接する(
図10参照)。
【0021】
この第1保持部54の内周面の大部分には、周方向に間隔をおいて複数の係合突部60
が設けられ、これら複数の係合突部60は、注射針26の針保持部材36の複数の係合凹部40の形状に対応した形状を有し(
図8、
図10及び
図11参照)、第1保持部54の径方向内方に突出し、第1保持部54の上部から下端まで下方に延びている。これら複数の係合突部60が設けられた領域が保持領域として機能する。また、蓋体8の装着部44に関連して、装着用凹部46の一端側(この形態では、第1保持部54側)に落下開口62が設けられ、この落下開口62は、装着用凹部46の一端部からその中央部付近まで放物線状に延びている。
【0022】
また、移動部材48の一端部(即ち、第1保持部54側の端部)には略半円筒状の第2保持部64が設けられ、この第2保持部64は、落下開口62を通して容器本体4内に向けて下方に延びている。この第2保持部64の内周面(即ち、略半円弧状の凹状内面)の上側部には第2保持凹部66が設けられ、この第2保持凹部66は、注射器本体28の小径突部30の外周面の形状に対応した形状を有し、後述する如く注射針26を挿入すると、注射器本体28の小径突部30の先端面がこの第2保持凹部66の底面68に当接する(
図10参照)。
【0023】
この第2保持部64の内周面の大部分には、周方向に間隔をおいて複数の係合突部70が設けられ、この複数の係合突部70は、注射針26の針保持部材36の複数の係合凹部40の形状に対応した形状を有し(
図8、
図10及び
図11参照)、第2保持部64の径方向内方に突出し、第2保持部64の上部から下端まで下方に延びている。これら複数の係合突部70が設けられた領域が保持領域として機能し、第1保持部54の複数の係合突部60と第2保持部64の複数の係合突部70との間の領域が係合突部が存在しない非保持領域となる。
【0024】
この注射針廃棄用容器2では、移動部材48を保持位置に位置付けると、移動部材48の一端部が装着用凹部46の一端部に接触乃至近接し、蓋体8側の第1保持部54と移動部材48側の第2保持部64とは、相互に協働して円筒状の注射針保持部72を構成し、複数の係合突部60,70は、かかる注射針保持部72の内周面に間隔をおいて配置される係合突部を構成する(
図3、
図5、
図8及び
図10参照)。また、第1保持部54の第1保持凹部56と第2保持部64の第2保持凹部66とは、相互に協働して注射器本体28の小径突部30の先端部を着脱自在に受け入れる
保持凹部を構成する。
【0025】
また、この移動部材48を後退位置に位置付けると、移動部材48の他端部が装着用凹部46の他端部に接触乃至近接し、第2保持部64が第1保持部54から離隔して注射針保持部72が開放される(
図4、
図6、
図9及び
図11参照)。尚、第1及び第2保持部54,64については、後に詳述する。
【0026】
この実施形態では、移動部材48に関連して、この移動部材48を保持位置にロック保持するためのロック機構76が設けられている。このロック機構76は、移動部材48の下方において装着用凹部46の中央部に傾動自在に設けられた傾動部材78と、移動部材48の下面に設けられたロック用突部80とから構成されている。傾動部材78の先端部には、ロック用爪部82が上方に幾分突出して設けられ、このロック用爪部82の先端部には第1テーパ部86が形成されている。また、ロック用突部80の先端部には、ロック用爪部82の第1テーパ部
86に対応して第2テーパ部84が形成されている。
【0027】
また、傾動部材78の上面の一部には、その基端部側から先端部側に向けて上り傾斜となる傾斜面88が設けられている(
図10及び
図11参照)。また、移動部材48には楕円形状の操作用開口90が設けられ、この操作用開口90を通して傾動部材78の上面(傾斜面88)が外部に露出されている。操作用開口90の縁部には、リング状の操作用突部92が上方に幾分突出して設けられており、このように操作用突部92を設けることにより、操作用開口90をとおしての傾動部材78の傾斜面88の押圧操作が容易となる。
【0028】
この傾動部材78は、ロック用爪部82がロック用突部80に係合するロック位置(
図10において実線で示す)と、ロック用爪部82がロック用突部80から離脱するロック解除位置(
図10において一点鎖線で示す)との間を上下方向に傾動自在である。この傾動部材78は、上記ロック位置と上記ロック解除位置との間を弾性変形可能であり、通常ロック位置に保持される。
【0029】
この実施形態では、装着用凹部46に移動用開口94が設けられ、この移動用開口94は、ロック用突部80の移動経路に沿って延びている。移動部材48の他端部(第2保持部64とは反対側の端部)には目隠し部96が設けられ、この目隠し部96は、下方にL字状に延びている。移動部材48が上記保持位置に位置付けられた際に、この目隠し部96は、装着用凹部46の移動用開口94の一部を下方より覆う。また、移動部材48の下面において、操作用開口90と移動部材48側の第2保持部64との間にはぬすみ部98が設けられている。このぬすみ部98は、移動部材48が上記後退位置に位置付けられた際に、後退位置に移動した移動部材
48が傾動部材78の上面に干渉するのを防止する(
図11参照)。
【0030】
次に、主として
図8及び
図9を参照して、蓋体8側の第1保持部54及び移動部材48側の第2保持部64について説明する。この実施形態では、第1保持部54の開口端は、移動部材48が上記保持位置に位置するときに構成される注射針保持部72の中心P(
図8参照)を通り且つ矢印100で示すスライド移動方向に対して実質上垂直な基準中心軸線Lを基準にして、蓋体8側の第1保持部54側にずれて位置しており、この開口端の基準中心軸線Lからのずれ量D(
図8参照)は、注射針26の針保持部材36の外径をdとしたときに(0.1〜0.4)dである(0.1d≦D≦0.4d)のが好ましく、(0.15〜0.3)dであるのが更に望ましい。第1保持部54の開口端をこのように基準中心軸線Lに対して第1保持部54側にずらすことにより、移動部材48が上記後退位置に向けて移動したときに、蓋体8側の第1保持部54に保持された注射針26の半分を超える部分がこの第1保持部54から露出する。
【0031】
一般的に、注射針26は中心を通る任意の径方向の軸線に対して対称に形成され、その重心は、注射針保持部72に挿入保持された状態ではこの注射針保持部72の中心Pに位置しており、従って、
図8から理解されるように、移動部材48を上記後退位置に移動させたときに、注射針26の自重が蓋体8側の第1保持部54から離脱落下させる力として作用し、その自重を利用して注射針26を容器本体4内に落下収容させることができる。
【0032】
第1保持部54のずれ量Dが過小であると、移動部材48を上記後退位置に移動させたときの第1保持部54からの注射針26の露出量が少なく、注射針26の自重による離脱落下力が小さくなり、注射針
26の自重を利用した落下収容ができなくなるおそれがあり、またこのずれ量Dが過大であると、蓋体8側の第1保持部54の複数の係合突部60と注射針26の針保持部材36の複数の係合凹部40との係合状態が充分でなくなり、後述する注射器本体28の注射針26からの離脱ができなくなるおそれがある。
【0033】
第1保持部54の開口端が基準中心軸線Lから第1保持部54側にずれていることに関連して、更に、次の通りに構成されている。即ち、移動部材48側の開口端部102、104は、基準中心軸線Lから第1保持部54側に延び、それらの内面は第1保持部54側に向けて幾分径方向外方に拡がるように構成され、かかる開口端部102,104の内面には、注射針26側の針保持部材36の複数の係合凹部40に係合する係合突部が設けられておらず、かかる開口端部102,104の内面が非保持領域となっている。このように第2保持部64の開口端部102、104を径方向に拡がるように構成するとともに、かかる開口端部102,104の内面を平面状にする(換言すると、係合突部が存在しない非保持領域とする)ことにより、かかる開口端部102,104が第1保持部54に保持された注射針26の針保持部材36に作用することがなく、移動部材48の上記保持位置への移動及び上記後退位置への移動をスムースに行うことができる。尚、この第2保持部64の開口端部102,104の内面は、開口端に向けて径方向外方に拡がるようにしているが、このような構成に代えて、この開口端に向けて接線方向に直線状に、或いは凹部を設けて開口端に向けて直線状に延びるようにしてもよい(後述する
図12及び
図13参照)。
【0034】
次に、上述した注射針廃棄用容器2を用いて、ねじ式タイプの注射器24の注射針26を廃棄する方法について説明する。まず、移動部材48を上記保持位置に位置付ける。かくすると、
図10に示すように、傾動部材78のロック用爪部82が蓋体8側のロック用突部80に係合してロック機構76がロック状態となり、この移動部材48が上記保持位置にロック保持され、蓋体8側の第1保持部54と移動部材48側の第2保持部64とが注射針保持部72を構成する。
【0035】
次いで、この状態において、使用済みの注射針26の針保持部材36を注射針保持部72内に挿入する(
図10参照)。かく挿入すると、注射器本体28の小径突部30の先端部が注射針保持部72の保持凹部(第1保持部54の第1保持凹部56及び第2保持部64の第2保持凹部66)に当接し、注射針26が注射針保持部72に保持される。この保持状態においては、第1及び第2保持部54,64の複数の係合突部60,70が
針保持部材36の外周面の複数の係合凹部40に係合した状態に保持される。
【0036】
次に、注射針26を容器本体4側の注射針保持部72に挿入した状態で、注射器本体28を注射針26に対して
図10に矢印Rで示す離脱方向に回動する。かく回動すると、針保持部材36の雌ねじ部(図示せず)と注射器本体28の針取付部32の雄ねじ部34との螺合状態が解除され、注射器本体28が
注射針26の針保持部材36から取り外される。このとき、移動部材48がロック機構76によって上記保持位置にロック保持されているので、注射器本体28を注射針26に対して相対的に回転させる際に、この移動部材48が上記後退位置にスライド移動することがない。
【0037】
その後、指先を操作用開口90に挿入して傾動部材78の上面を下方に押圧し、傾動部材78を下方に傾動させてロック用爪部82と蓋体8側のロック用突部80との係合を解除し(即ち、ロック機構76のロック状態を解除する)、かくロック解除した状態でもって指先を操作用突部92に引っ掛けるなどして、移動部材48を上記保持位置から上記後退位置にスライド移動させる。かくスライド移動させると、
図11に示すように、移動部材48側の第2保持部64が、蓋体8側の第1保持部54に保持された注射針26(即ち、針保持部材36)から離れ、この注射針26がその自重でもって移動部材48側に傾き、その針保持部材36が第1保持部54から離脱し、かく離脱した注射針26が落下開口62を通して容器本体4内に落下収容される。このように注射針26の自重を利用し、移動部材48を後退位置に移動させるという簡単な操作でもって、注射器本体28から外した注射針26を容器本体4内に収容することができる。
【0038】
注射針26を容器本体4内に回収した後には、次の回収準備として、移動部材48を上記後退位置から上記保持位置にスライド移動させる。このとき、ロック用爪部82の第1テーパ部
86がロック用突部80の第2テーパ部
84上をスライド移動し、これによって、傾動部材78が下方に傾動されてロック用爪部82がロック用突部80に係合し、このようにしてロック機構76がロック状態となり、移動部材48が上記保持位置にロック保持される。
【0039】
上述した実施形態では、移動部材48側の第2保持部64において、その底部から基準中心軸線Lまでの領域、即ち180度の角度範囲にわたって複数の係合突部70が設けられているが、これら係合突部70が径方向内方に突出しているために、それらの突出量が大きくなると、移動部材48を上記後退位置に向けて移動させた際に移動部材48に保持された状態で注射針26(針保持部材36)が後退位置に移動するおそれが生じる。従って、このような問題を解消するためには、
図12及び
図13に示すように構成するのが望ましい。尚、この変形形態において、
図1〜
図11に示す実施形態と実質上同一の部材には同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0040】
図12及び
図13において、この変形形態では、移動部材48Aの第2保持部64Aの底部から一端側の開口端部102A側に第1所定角度α1までの第1底部領域S1及びこの底部から他端側の開口端部104A側に第2所定角度α2までの第2底部領域S2の内面には、これら底部領域S1,S2にわたって複数の係合突部70が設けられて保持領域となり、これら複数の係合突部70が針保持部材36の他端側においてその係合凹部40に係合する。また、この第1所定角度α1からその一端側の開口端部102Aの開口端までの第1開口部領域K1及び第2所定角度α2からその他端側の開口端部104Aの開口端までの第2開口部領域K2の内面は平面状に形成されて非保持領域となり、これらの開口部領域K1,K2には、針保持部材36の係合凹部40に係合する係合突部が存在しない。
【0041】
第1底部領域S1と第1開口部領域K1(非保持領域)との第1境界Q1となる第1所定角度α1は、30〜70度であるのが好ましく、35〜50度であるのがより好ましく、また第2底部領域S2と第2開口部領域K2(非保持領域)との第2境界Q2となる第2所定角度α2も、30〜70度であるのが好ましく、35〜50度であるのがより好ましい。
【0042】
例えば、上述したように、外周面に周方向に等間隔をおいて16個の係合凹部40を有する針保持部材36を備えた注射針に適用する場合、移動部材48A側の第2保持部64Aにおける第1底部領域S1に二つの係合突部70(保持領域)が存在し、また第2底部領域S2に二つの係合突部70(保持領域)が存在するように構成することができる。
【0043】
第1及び第2底部領域S1,S2を規定する第1及び第2所定角度α1,α2が過小になると、針保持部材36の係合凹部40に係合する係合突部70の個数が少なくなり、針保持部材36側の複数の係合凹部40と第2保持部64A側の係合突部70との係合状態が充分でなくなるおそれがあり、また第1及び第2所定角度α1,α2が過大になると、第
2保持部64Aの係合突部70(特に、開口端部側に位置する係合突部70)が針保持部材36の係合凹部40から離脱し難くなり、移動部材48Aを上記後退位置に向けて移動させた際に、この移動部材48Aとともに針保持部材36が後退位置に向けて移動するおそれがある。
【0044】
この変形形態のその他の構成(例えば、蓋体8側の第1保持部54などの構成)は、上述した構成と実質上同一でよい。このような変形形態では、移動部材48Aの第2保持部64Aの第1及び第2開口部領域K1,K2が係合突部が存在しない非保持領域となっているので、第2保持部64Aの第1及び第2開口部領域K1,K2の内面が注射針保持部72Aに保持された針保持部材36に作用することがなく、これによって、移動部材48Aを
図12に示す保持位置から
図13に示す後退位置に移動させても、この移動部材48Aとともに針保持部材36(即ち、注射針)が移動することがなく、その結果、上述したように、蓋体8側に残る注射針(針保持部材36)をその自重を利用して容器本体内に確実に落下収容することができる。
【0045】
例えば、上述した実施形態では、第1所定角度α1と第2所定角度α2とを同一の角度に設定しているが、必ずしも同一の角度に設定する必要はなく、第1所定角度α1を第2所定角度α2よりも大きく(又は小さく)設定するようにしてもよい。
【0046】
以上、本発明に従う注射針廃棄用容器の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0047】
例えば、上述した実施形態では、注射針26の針保持部材36の外周面に複数の係合凹部40を設けるとともに、蓋体8側の第1保持部54及び移動部材48側の第2保持部64の内周面に複数の係合突部60,70を設けているが、このような構成とは反対に、注射針26の針保持部材36側に複数の係合突部を設けるとともに、第1及び第2保持部54,64側に複数の係合凹部を設けるようにしてもよい。
【0048】
上述した注射針廃棄用容器の効果は、下記の通りである。この注射針廃棄用容器では、移動部材はスライド機構を介して保持位置と後退位置の間をスライド自在に装着され、この移動部材を保持位置に位置付けると、蓋体側の第1保持部と移動部材側の第2保持部とが、注射針の針保持部材を保持するための注射針保持部を構成する。注射器の注射針を廃棄する際には、移動部材が保持位置に位置付けられ、注射針の針保持部材が,第1及び第2保持部により構成される注射針保持部に挿入保持され、蓋体側の第1保持部が注射針の片側を、移動部材側の第2保持部がこの注射針の他側を保持する。この挿入保持状態において、注射器本体を離脱方向に回転させると、容器本体側の注射針保持部に保持された針保持部材から注射器本体が取り外される。その後、移動部材を後退位置に位置付けると、移動部材の第2保持部が注射針の針保持部材から離れて保持状態が解除され、これにより、注射針が落下開口を通して容器本体内に落下収容される。
【0049】
また、蓋体側の第1保持部の開口端は、保持位置状態の注射針保持部の基準中心軸線を基準にして、第1保持部側にずれて位置しているので、移動部材を後退位置まで移動させると、蓋体側の第1保持部から注射針の針保持部材の半分を超える部分が外部に露出され、注射針の重心は蓋体側の第1保持部の外側に位置するようになる。従って、蓋体側の第1保持部に保持された針保持部材の自重が離脱落下させる力として作用しやすく、これによって、注射器本体から外れた注射針を容器本体内に落下収容することができる。
【0050】
また、蓋体側の第1保持部の開口端の基準中心軸線からのずれ量Dは、注射針の針保持部材の外径をdとしたときに(0.1〜0.4)dであるので、移動部材を後退位置まで移動させると、この第1保持部に保持された注射針の重心は、この第1保持部の開口端より外側に(0.1〜0.4)dの距離だけ離れた位置となり、従って、かかる距離に起因して第1保持部に保持された針保持部材の自重が離脱落下させる力として作用し、これによって、注射器本体から外れた注射針を容器本体内に落下収容することができる。
【0051】
また、注射針の針保持部材の外周面には、周方向に間隔をおいて複数の係合凹部(又は係合突部)が設けられ、蓋体側の第1保持部及び移動部材側の第2保持部の内周面には、周方向に間隔おいて複数の係合突部(又は係合凹部)が設けられているので、針保持部材側の複数の係合凹部(又は係合突部)を容器本体側の第1及び第2保持部の複数の係合突部(又は係合凹部)に係止保持することができる。
【0052】
また、注射針の針保持部材の外周面には複数の係合凹部が設けられ、蓋体側の第1保持部及び移動部材側の第2保持部の内周面には複数の係合突部が設けられているので、このような形態の注射針の廃棄に好適な廃棄用容器として提供することができる。また、移動部材側の第2保持部における基準中心軸線から第1保持部側に突出する開口端部は、蓋体側の第1保持部側に向けて直線状に(又は径方向外方に拡がるように)延び、この第2保持部の開口端部の内面には係合突部が存在していないので、この第2保持部の開口端部が注射針の針保持部材の外周面に作用することがなく、移動部材を後退位置に移動させた際に、注射器本体から外れた注射針が容器本体内にスムースに落下収容される。
【0053】
また、移動部材側の第2保持部においては、この第2保持部の第1底部領域及び第2底部領域にわたって複数の係合突部が設けられ、その第1開口部領域及び第2開口部領域には係合突部が存在しないので、保持位置に保持された状態においては、第1及び第2底部領域の複数の係合突部が注射針の針保持部材の複数の係合凹部に係合して確実に保持し、また後退位置に移動させたときには、第2保持部側の複数の係合突部が蓋体側の第1保持部に保持された注射針の針保持部材の外周面に作用することがなく、移動部材を後退位置に移動させた際に第2保持部に保持されて注射針が後退位置に移動するのを防止することができる。
【0054】
また、第1底部領域と第1開口部領域との第1境界となる第1所定角度は30〜70度であり、また第2底部領域と第2開口部領域との第2境界となる第2所定角度は30〜70度であるので、移動部材を後退位置に移動させたときには、第2保持部側の複数の係合突部が蓋体側の第1保持部に保持された注射針の針保持部材の外周面に作用することがなく、移動部材を後退位置に移動させた際に第2保持部に保持されて注射針が後退位置に移動されるのを確実に防止することができる。
【0055】
また、ロック機構が蓋体側の傾動部材と移動部材側のロック用突部とから構成され、傾動部材の先端部にロック用爪部が設けられているので、傾動部材のロック用爪部が移動部材のロック用突部に係合することによって、移動部材を保持位置にロック保持することができる。また、操作用開口部を通して傾動部材の上面が外部に露出されているので、指先などを操作用開口部に挿入し、この指先などで傾動部材の上面を押圧してこのロック状態を解除することができ、加えて、このロック解除位置に傾動させる操作と、指先などを操作用開口部に引っ掛けて移動部材を後退位置にスライド移動させる操作とを一動作で行うことができる。
【0056】
また、前記移動部材側の前記第2保持部の内周面には注射針と係合する保持領域と注射針と係合しない非保持領域が設けられている。このため、移動部材の後退位置へのスライド後、注射針が第2保持部に残留してしまう可能性を低減させることができる。
【0057】
また、非保持領域は前記移動部材側の前記第2保持部における前記基準中心軸線から前記第1保持部側に突出する部分に設けられている。すなわち、非保持領域が第2保持部における開口側に設けられている。このため、移動部材の後退位置へのスライド後、注射針が第2保持部から離れやすく、廃棄容器内に落下収容させやすい。
【0058】
また、前記保持領域は注射針と係合する係合突部であり、前記係合突部は、注射針外周面に形成された縦リブと係合する高さを備え、且つ、前記移動部材のスライド時に注射針外周面の縦リブに対してスライド方向の力が加わらないように形状付けられている。このため、移動部材のスライド時に、注射針が移動部材側に保持されたままスライドする事態がなく、確実に注射針を廃棄容器本体内に落下収容させることができる。
【0059】
本発明の応用変形例としては、前記移動部材の第2保持部及び蓋体側の第1保持部は、注射針と係合する保持領域を有し、前記移動部材の第2保持部及び/又は蓋体側の第1保持部は、注射針と係合しない非保持領域とを有し、非保持領域は保持部における開口端部側に設けられており、前記保持領域は注射針と係合する係合突部であり、前記係合突部は、注射針外周面に形成された縦リブと係合する高さを備え、且つ、前記移動部材のスライド時に注射針外周面の縦リブに対してスライド方向の力が加わらないように形状付けられている形態が考えられる。この場合、前記蓋体側の第1保持部及び前記移動部材側の第2保持部における保持領域は、前記移動部材のスライド移動時に注射針に対してスライド移動方向に力が加わらない。つまり、前記移動部材のスライド移動時において、保持部は注射針を保持不可能に形成されている。よって、前記移動部材のスライド移動時に伴い、自然に注射針は廃棄容器内に落下収容される。なお、本形態においては、前記蓋体側の前記第1保持部の開口端は、前記保持位置状態の前記注射針保持部の中心を通り且つ前記移動部材のスライド移動方向に対して実質上垂直な基準中心軸線に対して、前記第1保持部側にずれて位置していなくともよい。
【0060】
この変形形態では、移動部材の上記後退位置に向けての移動の際に注射針の縦リブにスライド方向の力が作用しないように、例えば、
図14に示すように構成される。即ち、第2保持部64Bの非保持領域K1,K2の開口側部74,76は、開口端に向けて内径が漸増するように構成され、これによって第2保持部64Bの開口側部74,76は、開口端側に向けて半円形状よりも幾分拡がるように形成されている。このように構成することによって、移動部材48Bが上記後退位置に向けて移動する際に、この第2保持部
64Bの内周面が注射針
26の縦リブに作用することがなく、この縦リブに移動部材48Bからの力が作用するのを回避することができる。
【0061】
加えて、第2保持部64Bに設けられた各係合突部70Bは、その両側面80,82が先端(即ち、径方向内方)に向けて内側に傾斜し、各係合突部70Bの横断面形状が台形状に形成されている。このように構成することによって、移動部材48Bが上記後退位置に向けて移動する際に、第2保持部64Bの複数の係合突部70Bが注射針
26の縦リブに作用することがなく、係合突部70Bを介した移動部材48Bからの力が注射針
26の縦リブに作用するのを回避することができる。このため、移動部材48Bを上記後退位置に向けて移動した際に、注射針
26の針保持部材36が移動部材48Bに持ってかれることがない。尚、各係合突部70Bの側面80,82のこのような傾斜は、その両側面に設ける必要はなく、その片側(即ち、開口端部102A,104A側とは逆の側面82)に設けることによって所望の効果を達成することができる。
【0062】
このように、非保持領域を第1保持部及び/或いは第2保持部に設けることにより、所定保持部に注射針が残留しないようにすることができ、このため、注射針を注射器本体から取り外して容器本体内に落下収容させやすい注射針廃棄用容器を実現することができる。
【0063】
以上が図を基にした実施形態であるが、本発明は当該実施形態のみに限られることはない。例えば、実施形態では、装着部の一端に第1保持部が形成されるとともに、移動部材の一端に第2保持部が形成されているが、装着部にスライド自在な二つの移動部材を有し、当該二つの移動部材のそれぞれに第1保持部と第2保持部を形成してもよく、つまりは、複数の移動部材により注射針保持部が形成されていてもよい。