特許第6346033号(P6346033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346033
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】カードコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/72 20110101AFI20180611BHJP
【FI】
   H01R12/72
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-172342(P2014-172342)
(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公開番号】特開2016-48598(P2016-48598A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(74)【代理人】
【識別番号】100109689
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 結
(72)【発明者】
【氏名】辻 淳也
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−123494(JP,A)
【文献】 特開2006−059659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/72
H01R 43/24
G06K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形後の切断により複数のコンタクトに分断されたリードフレームと、該リードフレームをインサート成形してなる、平面視で略矩形のハウジングとを有し、カードが取出し自在に挿入されるカードコネクタであって、
前記リードフレームが、折曲げにより立ち上がった1つ以上の立設部を有し、
前記ハウジングが、前記立設部の、立ち上がりの先端面および折れ曲がった根元部分を含む全体が埋め込まれた、1つ以上の立壁部を有し、
前記リードフレームが、切断後において前記複数のコンタクトのうちの第1のコンタクトとして機能する部分に、該リードフレームの折曲げ前の状態において成形後の前記ハウジングよりも外に突出した途中経路を有し該ハウジング内に再び入り込んで該ハウジングから突出した位置にある半田付け部まで延びるリード部を有し、該途中経路の折曲げにより、前記立設部の1つが形成されていることを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記リードフレームが、切断後において前記複数のコンタクトのうちの第2のコンタクトとして機能する部分に、挿入されたカードに接するビーム状の接触部と、該リードフレームの折曲げ前の状態において前記リード部が前記半田付け部に向かって直線的に延びている場合に該リード部と干渉する位置まで延び、折曲げにより前記接触部の自由端が摺接する位置に配置された摺接部とを有し、
前記途中経路が、成形後の前記ハウジングよりも外に突出して折曲げ前の前記摺接部との干渉を避け、折曲げにより前記立設部の1つを形成してなることを特徴とする請求項1記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングが、カードの挿入の向きの前方および後方の左右両側それぞれに、前記立壁部を有することを特徴とする請求項1または2記載のカードコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリカード等のカードが取出し自在に挿入されるカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリカード等が益々小型化されてきている。これに伴い、そのメモリカード等のカードが挿入されるカードコネクタも、益々小型化している。そして、カードコネクタの小型化に伴い、そのカードコネクタのハウジングが益々薄肉化の傾向にある。薄肉化されたハウジングの強度や剛性を如何にして確保するかが課題の1つである。一方、低コスト化の要請も強い。このため、薄肉化されたハウジングの強度や剛性の向上のためのパーツの追加を避ける必要がある。
【0003】
引用文献1には、リードフレームを折り曲げてメモリカードのガイドとし、かつ剛性を高めたメモリカード用アダプタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−217487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上掲の特許文献1の構造の場合、メモリカードがリードフレームに直に接触する。このため、メモリカードに傷が付くおそれがある。また、メモリカードの接点等の位置によっては電気的なショートを招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、パーツの追加なしで強度や剛性を高めた、カードにとっても安全なカードコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のカードコネクタは、成形後の切断により複数のコンタクトに分断されたリードフレームと、そのリードフレームをインサート成形してなる、平面視で略矩形のハウジングとを有し、カードが取出し自在に挿入されるカードコネクタであって、
リードフレームが、折曲げにより立ち上がった1つ以上の立設部を有し、
ハウジングが、上記立設部の、立ち上がりの先端面および折れ曲がった根元部分を含む全体が埋め込まれた、1つ以上の立壁部を有する。
【0008】
本発明のカードコネクタによれば、必ず必要となるリードフレームを使ってハウジングの強度や剛性が高められている。したがって、低コスト化に合致している。また、本発明のカードコネクタによれば、リードフレームの立設部全体がハウジングに埋め込まれている。このため、挿入されるカードを傷つけるおそれはない。また、カードとの接触によるショートのおそれもない。
【0009】
ここで、本発明のカードコネクタ、上記リードフレームが、切断後において複数のコンタクトのうちの第1のコンタクトとして機能する部分に、リードフレームの折曲げ前の状態において成形後のハウジングよりも外に突出した途中経路を有しハウジング内に再び入り込んでハウジングから突出した位置にある半田付け部まで延びるリード部を有し、その途中経路の折曲げにより、前記立設部の1つが形成されていることを特徴とする
【0010】
こうすることにより、補強のためだけの立設部をなくし、あるいは減らすことができる。
【0011】
また、この場合に、上記リードフレームが、切断後において複数のコンタクトのうちの第2のコンタクトとして機能する部分に、挿入されたカードに接するビーム状の接触部と、リードフレームの折曲げ前の状態においてリード部が半田付け部に向かって直線的に延びている場合にそのリード部と干渉する位置まで延び、折曲げにより接触部の自由端が摺接する位置に配置された摺接部とを有し、
上記途中経路が、成形後のハウジングよりも外に突出して折曲げ前の摺接部との干渉を避け、折曲げにより立設部の1つを形成してなることが好ましい。
【0012】
こうすることにより、補強のためだけの立設部をなくし、あるいは減らしつつ、更なる小型化が可能となる。
【0013】
また、本発明のカードコネクタにおいて、上記ハウジングが、カードの挿入の向きの前方および後方の左右両側それぞれに、立壁部を有することが好ましい。
【0014】
このように、ハウジングの4隅に立設部を設けると、ハウジング全体の強度や剛性が高められる。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明によれば、パーツの追加なしで、強度や剛性が高められ、かつ、カードにとっても安全な、小型化に適したカードコネクタが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態としてのカードコネクタの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態としてのカードコネクタの斜視図である。
図3図2に示すカードコネクタからシェルを取り外した状態の、ハウジングの斜視図である。
図4】複数のコンタクトの集合からなるリードフレームの斜視図である。
図5】ハウジングにインサート成形されたリードフレーム(切断後)の透視斜視図である。
図6図4に示すリードフレームの、矢印Aで示す部分の拡大図である。
図7図5に示す矢印Aの部分(リードフレームに着目すると、図6と同一の部分)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1,図2は、本発明の一実施形態としてのカードコネクタの斜視図である。
【0019】
ここで、図1には、メモリカードが挿入された状態のカードコネクタが示されている。また、図2には、メモリカードが抜き取られた状態のカードコネクタが示されている。
【0020】
このカードコネクタ10は、ハウジング11とシェル12とを有する。それらの間には、メモリカード20(図1参照)を収容するカード収容部13(図2参照)が形成されている。
【0021】
メモリカード20は、カードコネクタ10のカード収容部13に、図1に矢印Iで示す挿入の向きに押し込まれる。ハウジング11は平面視で略長方形状を成している。シェル12は、挿入の向き(矢印Iで示す向き)の前方と後方が大きく抉られた形状を有する。このため、カード収容部13に挿入されたメモリカード20の挿入の向きの前端部21と後端部22は、シェル12から露出している。メモリカード20を抜取るときは、メモリカード20の後端部22を爪を引掛けたり、治具で挟んで、メモリカード20を、図1に矢印Eで示す抜取りの向きに引き抜く。あるいは、メモリカード20の前端部21を抜取りの向きに押して、後端部22をカードコネクタ10から大きく食み出させてから引き抜く。
【0022】
図3は、図2に示すカードコネクタからシェルを取り外した状態の、ハウジングの斜視図である。
【0023】
このハウジング11には、複数のコンタクト14がインサート成形されている。これらのコンタクト14は、成形前においては、1つに繋がったリードフレームである。ハウジング11には、複数の穴111が設けられている。成形後に、それらの穴111の部分でリードフレームが切断されて、複数のコンタクト14に分断される。
【0024】
これらのコンタクト14は、メモリカード20の裏面(図1に示す面に対する裏側の面)に形成されているパッド(不図示)に接触して電気的に接続される。また、各コンタクト14は、挿入の向き(図1に示す矢印Iの向き)の先端部分に、ハウジング11から突出した半田付け部14aを有する。これらの半田付け部14aは、このカードコネクタ10が搭載される回路基板(不図示)に半田接続される。これにより、このカードコネクタ10は、メモリカード20と基板との間の信号伝達を中継する。
【0025】
図4は、複数のコンタクトの集合からなるリードフレームの斜視図である。ただし、この図4には、成形後の切断により複数のコンタクトに分断された後の形状が示されている。
【0026】
ここには、第1のコンタクト141および第2のコンタクト142を含む、複数のコンタクト14が示されている。
【0027】
ここで、先ず、これら複数のコンタクト14についての共通の構造について説明する。
【0028】
これら複数のコンタクト14は、それぞれ、半田付け部14aのほか、接触部14bと、リード部14cと、摺接部14dとを有する。半田付け部14aは、上述の通り、回路基板(不図示)上に半田付けされる部分である。また、接触部14bは、挿入されたメモリカード20への接触を担っている。この接触部14bは、側面視で山形のビーム状に形成される。この接触部14bは、上方に膨らむ向きに湾曲している。そして、この接触部14bは、メモリカード20が挿入されると上から押され、その自由端14fがスライドする。
【0029】
また、リード部14cは、接触部14bと半田付け部14aとの間に延び、それらを繋ぐ役割を担っている。さらに、摺接部14dは、メモリカード20の挿抜時に接触部14bの自由端14fが摺接する。この摺接部14dは、折曲げにより形成されている。すなわち、この摺接部14dは、その折曲げにより、接触部14bの自由端14fが摺接する位置に配置されている。
【0030】
次に、上記の構造の複数のコンタクト14のうちの、メモリカード20の挿入の向きの手前側且つ右端に位置する第1のコンタクト141に着目する。この第1のコンタクト141も、他のコンタクト14と同様、半田付け部141a、接触部141b、リード部141c、および摺接部141dを有する。
【0031】
ここで、この第1のコンタクト141に特有な点として、そのリード部141cには、外向きに大きく迂回した途中経路141eが形成されている。この迂回の理由については後述する。そして、その迂回した途中経路141eが上方へ折り曲げられている。そして、この折曲げにより、立設部151のうちの1つの立設部151aが形成されている。この立設部151aは、このハウジング11に形成された合計4つの立設部151のうちの1つである。すなわち、本実施形態では、立設部151は、挿入の向き(図1に示す矢印Iの向き)の前方および後方の左右両側それぞれに形成されている。これらの立設部151は、いずれも、リードフレーム15の一部の折り曲げにより立ち上がった部分である。
【0032】
図5は、ハウジングにインサート成形されたリードフレーム(切断後)の透視斜視図である。
【0033】
リードフレーム15の、前後左右の合計4箇所に形成されている各立設部151は、ハウジング11の各立壁部112にそれぞれ埋め込まれている。ここで、各立設部151は、その全体が立壁部112に埋め込まれている。すなわち、立壁部112には、立設部115の、図4に示す立ち上がりの先端面151bも埋め込まれている。また、立壁部112には、立設部115の、図4に示す、折れ曲がった根元部分151cも埋め込まれている。これにより、ハウジング11の立壁部112の強度や剛性が向上している。また、本実施形態では、立設部151が埋め込まれた立壁部112が、ハウジング11の前後左右の4隅に設けられている。これにより、このカードコネクタ10の全体について、その強度や剛性が向上している。さらに、これら4箇所の立壁部112のうちの挿入の向き前方の左側の立壁部112を除き、メモリカード20の挿入時のガイドの役割を担っている。上記の通り、リードフレーム15の立設部151は、その全体がハウジングの立壁部112に埋め込まれている。このため、メモリカード20がリードフレーム15の立設部151に接触することはなく、安全である。また、この立設部151は、リードフレーム15の上方への折曲げにより形成したものである。したがって、強度や剛性の向上のための別パーツは不要であり、低コスト化に寄与している。
【0034】
図6は、図4に示すリードフレームの、矢印Aで示す部分の拡大図である。
【0035】
また、図7は、図5に示す矢印Aの部分(リードフレームに着目すると、図6と同一の部分)の拡大図である。
【0036】
図6には、第1のコンタクト141について、リード部141c、途中経路141eの折曲げにより形成された立設部151e、および半田付け部141aが示されている。また、この図6には、第2のコンタクト142(図4参照)について、半田付け部142a、接触部142b、リード部142c、および摺接部142dが示されている。さらに、この図6には、一点鎖線で、第1のコンタクト141の折曲げ前の途中経路141eと、第2のコンタクト142の折曲げ前の摺接部142dが示されている。さらに、この図6には、リード部141cが半田付け部141aに向かって直線的に延びていると仮定した場合の、リード部141cの経路141xが一点鎖線で示されている。
【0037】
第2のコンタクト142の摺接部142dは、他のコンタクト14の摺接部14dと同様、折曲げにより形成されている。ただし、この摺接部142dは、折曲げ前の状態においては、リード部141cの仮定した経路141xと干渉する位置まで延びている。このため、リード部141cは、大きく迂回することで、折曲げ前の摺接部142dとの干渉を避けている。
【0038】
本実施形態では、図7に示すように、その途中経路141eを、成形後のハウジング11よりも外に突出する位置まで迂回させている。そして、このリード部141cは、迂回の後、再びハウジング11の内側に入り込んでいる。このリード部141cはさらに、ハウジング11から突出した位置にある半田付け部141aに繋がっている。そして、折曲げ前においてハウジング11から突出した位置にある途中経路141eを折り曲げることにより、立設部151aを形成している。この立設部151aを除く残りの3箇所の立設部151は、リード部14cとは無関係である。すなわち、それら残りの3箇所の立設部151は、リードフレーム15の、立設部151を形成するために専用に延ばした部分に形成されている。そして、立設部151aを含む4箇所の立設部151は、前述の通り、各立設部151の全体がハウジング11の立壁部112に埋め込まれている。
【0039】
本実施形態のカードコネクタ10は、上記の構造を備えている。これにより、このカードコネクタ10は、新たなパーツを増やすことなく、ハウジング11の強度や剛性を向上させている。しかも、このカードコネクタ10は、挿入されるメモリカード20に対しても安全なカードコネクタとなっている。
【0040】
なお、この実施形態では、立設部151を埋め込んだ立壁部112が、ハウジング11の4隅それぞれに設けられている。ただし、立壁部112を設けるのは必ずしも4隅の全てである必要はなく、強度や剛性を上げる必要のある部分に設ければよい。
【符号の説明】
【0041】
10 カードコネクタ
11 ハウジング
12 シェル
13 カード収容部
14 コンタクト
14a,141a,142a 半田付け部
14b,141b,142b 接触部
14c、141c,142c リード部
14d,142d 摺接部
14f 自由端
15 リードフレーム
20 メモリカード
21 前端部
22 後端部
111 穴
112 立壁部
141 第1のコンタクト
141e 途中経路
141x 経路
142 第2のコンタクト
151,151a 立設部
151b 先端面
151c 根元部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7