特許第6346042号(P6346042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346042
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】運転記録装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20180611BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20180611BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20180611BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   G08G1/00 D
   G08G1/16 C
   G07C5/00 Z
   B60R21/00 624F
   B60R21/00 626C
   B60R21/00 624C
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-187699(P2014-187699)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-62157(P2016-62157A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】舩木 幹雄
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−22975(JP,A)
【文献】 特開平9−270098(JP,A)
【文献】 特開2011−227761(JP,A)
【文献】 特開2014−44692(JP,A)
【文献】 特開2010−191893(JP,A)
【文献】 特開平5−178115(JP,A)
【文献】 特開2002−42288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
B60R 21/00
G07C 5/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向前方を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記車両の走行路面の画像データに基づいて、前記車両の車線からの逸脱、及び、前記車両の車線への復帰を検出する検出部と、
前記検出部によって前記車両の車線からの逸脱が検出された場合に第1警報を発する警報部と、
前記警報部によって前記第1警報が発せられてから前記検出部によって前記車両の車線への復帰が検出されるまでの時間を計測する計測部と、
前記計測部によって計測された、前記警報部によって前記第1警報が発せられてから前記検出部によって前記車両の車線への復帰が検出されるまでの時間を、前記第1警報に対する運転者の反応時間として記録する記録部とを備えることを特徴とする、
運転記録装置。
【請求項2】
前記記録部は、前記車両の運転者を識別する運転者識別情報と共に前記反応時間を記録する、
請求項1に記載の運転記録装置。
【請求項3】
前記警報部は、前記計測部によって計測された、前記警報部によって前記第1警報が発せられてからの経過時間が、予め設定された第1所定時間を超えた場合に前記第1警報とは異なる第2警報を発し、
前記記録部は、前記計測部によって計測された、前記警報部によって前記第1警報が発せられてからの経過時間が、予め設定された第2所定時間を超えた場合に、当該経過時間を記録すると共に、前記車両が車線から逸脱する車線逸脱イベントが発生した旨を記録する、
請求項1又は請求項2に記載の運転記録装置。
【請求項4】
前記記録部に記録された前記反応時間に関する情報を、前記車両の外部に設けられる外部機器に送信する通信部を備える、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の運転記録装置。
【請求項5】
前記通信部は、前記外部機器から、当該外部機器に送信した前記反応時間に関する情報に基づいた指令情報を受信し、
前記警報部は、前記通信部によって受信された前記指令情報に基づいて前記第1警報とは異なる第3警報を発する、
請求項4に記載の運転記録装置。
【請求項6】
前記計測部は、前記警報部によって前記第1警報が発せられてから前記検出部によって前記車両の車線への復帰が検出されるまでの間に運転者の操作に応じた解除条件が成立した場合、前記警報部によって前記第1警報が発せられてから当該解除条件が成立するまでの時間を計測し、
前記記録部は、前記計測部によって計測された、前記警報部によって前記第1警報が発せられてから前記解除条件が成立するまでの時間を、前記反応時間として記録する、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の運転記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される従来の運転記録装置として、例えば、特許文献1には、特定の挙動を検知した場合に、揮発性メモリに記憶されている画像のうち車両逸脱を判定したとき以降の画像を不揮発性メモリへ記録するドライブレコーダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−22610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載のドライブレコーダは、上記構成により事後的に特定の挙動の発生原因を特定しやすくしているが、例えば、より詳細な運転評価を行うべく、記録する項目に更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、より詳細な運転評価を実現することができる運転記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る運転記録装置は、車両の進行方向前方を撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された前記車両の走行路面の画像データに基づいて、前記車両の車線からの逸脱、及び、前記車両の車線への復帰を検出する検出部と、前記検出部によって前記車両の車線からの逸脱が検出された場合に第1警報を発する警報部と、前記警報部によって前記第1警報が発せられてから前記検出部によって前記車両の車線への復帰が検出されるまでの時間を計測する計測部と、前記計測部によって計測された、前記警報部によって前記第1警報が発せられてから前記検出部によって前記車両の車線への復帰が検出されるまでの時間を、前記第1警報に対する運転者の反応時間として記録する記録部とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記運転記録装置では、前記記録部は、前記車両の運転者を識別する運転者識別情報と共に前記反応時間を記録するものとすることができる。
【0008】
また、上記運転記録装置では、前記警報部は、前記計測部によって計測された、前記警報部によって前記第1警報が発せられてからの経過時間が、予め設定された第1所定時間を超えた場合に前記第1警報とは異なる第2警報を発し、前記記録部は、前記計測部によって計測された、前記警報部によって前記第1警報が発せられてからの経過時間が、予め設定された第2所定時間を超えた場合に、当該経過時間を記録すると共に、前記車両が車線から逸脱する車線逸脱イベントが発生した旨を記録する。
【0009】
また、上記運転記録装置では、前記記録部に記録された前記反応時間に関する情報を、前記車両の外部に設けられる外部機器に送信する通信部を備えるものとすることができる。
【0010】
また、上記運転記録装置では、前記通信部は、前記外部機器から、当該外部機器に送信した前記反応時間に関する情報に基づいた指令情報を受信し、前記警報部は、前記通信部によって受信された前記指令情報に基づいて前記第1警報とは異なる第3警報を発するものとすることができる。
【0011】
また、上記運転記録装置では、前記計測部は、前記警報部によって前記第1警報が発せられてから前記検出部によって前記車両の車線への復帰が検出されるまでの間に運転者の操作に応じた解除条件が成立した場合、前記警報部によって前記第1警報が発せられてから当該解除条件が成立するまでの時間を計測し、前記記録部は、前記計測部によって計測された、前記警報部によって前記第1警報が発せられてから前記解除条件が成立するまでの時間を、前記反応時間として記録するものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る運転記録装置は、車両の車線逸脱が検出され警報が発せられてから当該車両の車線復帰が検出されるまでの時間を計測し、反応時間として記録する。この結果、運転記録装置は、運転評価に供する新規の記録項目として、車線逸脱し警報が発せられてから車線復帰するまでの反応時間を記録することができるので、当該反応時間を用いてより詳細な運転評価を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る運転記録装置を表す概略構成図である。
図2図2は、実施形態に係る運転記録装置による制御フローの一例を表すフローチャートである。
図3図3は、実施形態に係る運転記録装置によって記録された情報の出力の一例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る運転記録装置を表す概略構成図である。図2は、実施形態に係る運転記録装置による制御フローの一例を表すフローチャートである。図3は、実施形態に係る運転記録装置によって記録された情報の出力の一例を表す模式図である。
【0016】
図1に示す本実施形態に係る運転記録装置1は、車両2に搭載され、当該車両2の走行中に、当該車両2の運転に関わる種々の情報を記録するドライブレコーダである。本実施形態の運転記録装置1は、後工程で行われる運転評価等に供する新規の記録項目として、車両2の走行中に撮像される画像(映像)等に加えて、さらに、車両2の車線逸脱時に発せられる警報に対する運転者の反応時間を計測し記録する。これにより、運転記録装置1は、例えば、当該運転記録装置1によって記録された項目を用いてより詳細な運転評価を可能とするものである。本実施形態の運転記録装置1は、図1に示す構成要素を含む車載機器として構成される。当該運転記録装置1は、車両2に後付けで搭載可能なものであってもよいし、車両2の製造時に当該車両2に組み込まれるものであってもよい。なおここで、運転評価とは、車両2の運転者による運転操作に関する評価だけでなく、車両2の運行管理に関する評価等を広く含む概念である。
【0017】
具体的には、運転記録装置1は、図1に示すように、撮像部としてのカメラ3と、通信部としての通信モジュール4と、GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)受信機5と、車両状態検出装置6と、RAM(Random Access Memory)7と、ROM(Read Only Memory)8と、警報部としてのスピーカ9と、マイク10と、記録部としてのメモリ11と、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)12とを備える。
【0018】
カメラ3は、当該運転記録装置1が搭載される車両2の進行方向前方を撮像し、車両2の走行路面を撮像するものである。カメラ3は、車両2の走行路面を連続的に撮像できるように、例えば、ルームミラーの近傍に所定の俯角をもって固定されている。カメラ3は、車両2の走行方向前方側を撮像するものであり、車両2から前方に所定距離だけ遠方の位置まで撮像することができる。カメラ3の画角は、例えば、当該カメラ3が撮像した画像において、車両2のボンネットの端部が映り、かつ、車両2の進行方向前方側の走行路面の車線が所定の領域に映るように設定される。カメラ3は、単眼カメラであってもよいし、ステレオカメラであってもよい。また、カメラ3が撮像する画像は、モノクロであってもよいしカラーであってもよい。カメラ3は、CPU12と電気的に接続されており、撮像した画像の画像データをCPU12に出力する。
【0019】
ここで、走行路面の車線とは、走行路面に描かれた白線等の車線境界線によって区画された領域であり、車両2が走行する走行レーンである。
【0020】
通信モジュール4は、車両2の外部に設けられる外部機器、ここでは、後方システム100との間で情報を送受信するものである。通信モジュール4は、種々の方式の無線通信によって後方システム100が備える通信モジュール101との間で相互に情報を授受する。通信モジュール4は、CPU12と電気的に接続されており、当該CPU12との間で通信に係る種々の情報を入出力する。
【0021】
ここで、後方システム100は、運転記録装置1が記録した車両2の運転に関わる種々の情報を用いて、様々な後工程を行うためのシステムである。後方システム100は、例えば、一般乗用旅客自動車運送事業、特定旅客自動車運送事業、貨物自動車事業等の種々の事業者の事務所等に配置される。運転記録装置1は、典型的には、当該事業者が管理するタクシー、バス、輸送トラック等に搭載される。そして、後方システム100は、運転記録装置1が記録した車両2の運転に関わる種々の情報が入力され、当該運転に関わる種々の情報に基づいて事業者の管理者等の操作にしたがって車両2の運行管理を含む種々の運転評価を行う。
【0022】
GPS受信機5は、車両2の位置情報として、車両2のGPS情報(緯度経度座標)を受信するものである。GPS受信機5は、GPS衛星が配信する車両2のGPS情報を表すGPS信号を受信する。GPS受信機5は、CPU12と電気的に接続されており、受信したGPS信号に応じたGPS情報をCPU12に出力する。
【0023】
車両状態検出装置6は、当該運転記録装置1が搭載される車両2の状態を検出するものである。車両状態検出装置6は、例えば、車両2の車速を検出する車速センサ、車両2に作用する加速度を検出する加速度センサ、車両2の操舵角を検出する操舵角センサ、運転者によるアクセルペダルの操作量(アクセル踏み込み量)に相当するアクセル開度を検出するアクセルセンサ、運転者によるブレーキペダルの操作量(ブレーキ踏み込み量)を検出するブレーキセンサ、運転者による車両2の方向指示器(ウインカ)の操作の有無、及び、指示方向を検出するウインカスイッチ等を含んで構成される。車両状態検出装置6は、CPU12と電気的に接続されており、車両2の車両情報として、車両2の車速、加速度、操舵角、アクセル踏み込み量、ブレーキ踏み込み量、方向指示器の動作状態等をCPU12に出力する。なお、車両状態検出装置6は、車両2の全体を統括的に制御するECU(Electronic Control Unit)と電気的に接続され、当該ECUと連携して種々の車両情報を検出するようにしてもよい。
【0024】
RAM7は、CPU12と電気的に接続されており、例えば、CPU12の演算結果を一時記憶する。
【0025】
ROM8は、CPU12と電気的に接続されており、例えば、CPU12で実行される所定の制御プログラム等を予め記憶している。
【0026】
スピーカ9は、車両2の乗員に対して種々の警報を発する出力装置である。スピーカ9は、聴覚情報(音声情報、音情報)を出力する聴覚情報(音声)出力装置であり、当該聴覚情報を出力することで種々の警報を発する。スピーカ9は、例えば、車両2の車室内に設けられたナビゲーションシステムのスピーカ等が流用されてもよい。スピーカ9は、CPU12と電気的に接続されており、当該CPU12によってその駆動が制御される。
【0027】
マイク10は、音声情報、音情報を入力する入力装置である。マイク10は、CPU12と電気的に接続されており、外部から入力された音声情報、音情報をCPU12に出力する。
【0028】
メモリ11は、当該運転記録装置1で取得される情報を記録する記録媒体である。メモリ11は、種々のインターフェースを介して当該運転記録装置1に脱着可能な記録媒体(リムーバブルメディア)である。メモリ11は、例えば、様々な形式のメモリカードを用いることができる。また、メモリ11は、種々のインターフェースによって構成される後方システム100のI/O部102に対しても脱着可能に構成される。メモリ11は、機能概念的に、基本情報記録部11a、運転者識別情報記録部11b、車両識別情報記録部11c、画像データ記録部11d、反応時間記録部11e、イベント記録部11f等を含んで構成される。
【0029】
基本情報記録部11aは、基本情報として、種々の情報を記録する際の記録日時、車両情報、車両2の位置情報等を記録する部分である。
【0030】
運転者識別情報記録部11bは、車両2を運転する運転者を識別するための運転者識別情報を記録する部分である。ここで、運転者識別情報は、例えば、車両2の運転者となる者に対して個別に付与され、当該各運転者を個別に特定するための情報である。運転者識別情報は、例えば、車両2の運転者となる者に対して個別に付与される各メモリ11に個別に割り当てられ、予め運転者識別情報記録部11bに記録されている。
【0031】
車両識別情報記録部11cは、運転記録装置1が搭載されている車両2を識別するための車両識別情報を記録する部分である。ここで、車両識別情報は、例えば、運転記録装置1が適用される各車両2に対して個別に付与され、当該各車両2を個別に特定するための情報である。車両識別情報は、例えば、各車両2に対して個別に搭載される各運転記録装置1に個別に割り当てられ、予めROM8に記憶されている。そして、ROM8に記憶されている各車両識別情報は、メモリ11が運転記録装置1に接続された際に、車両識別情報記録部11cに格納され記録される。
【0032】
画像データ記録部11dは、カメラ3によって撮像された画像データを記録する部分である。
【0033】
反応時間記録部11eは、車両2の車線逸脱時に発せられる警報に対する運転者の反応時間を記録する部分である。当該反応時間の計測については、後で詳細に説明する。
【0034】
イベント記録部11fは、運転記録装置1が搭載された車両2において発生した種々のイベントを記録する部分である。当該イベントについては、後で詳細に説明する。
【0035】
CPU12は、運転記録装置1の各部を統括的に制御する中央演算処理装置である。CPU12は、周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。CPU12は、上述のようにカメラ3、通信モジュール4、GPS受信機5、車両状態検出装置6、RAM7、スピーカ9、マイク10、メモリ11等が種々のインターフェースを介して電気的に接続され、これらとの間で種々の電気信号の入出力を行う。また、CPU12は、ROM8に記憶されている所定のプログラムを実行し、運転記録装置1の機能を実現するために必要な様々な処理を行う。CPU12は、例えば、車両2が備えるイグニションスイッチから出力されるIGNオン信号を停止状態において受け付けると、起動して運転記録装置1を起動状態にする一方、イグニションスイッチから出力されるIGNオフ信号を起動状態において受け付けると、動作を停止して運転記録装置1を停止状態にする。CPU12は、機能概念的に、画像データ取得部12a、通信制御部12b、GPS情報(位置情報)取得部12c、車両情報取得部12d、記録処理部12e、検出部としての車線逸脱/車線復帰検出部12f、警報制御部12g、計測部としての時間計測部12h、イベント判定部12i等を含んで構成される。
【0036】
画像データ取得部12aは、カメラ3が撮像した走行路面の画像データを所定のサンプリング周期で連続的に取得する部分である。
【0037】
通信制御部12bは、通信モジュール4を介して種々の情報の送受信を制御する部分である。
【0038】
GPS情報取得部12cは、車両2の位置を表す位置情報として、GPS受信機5が受信した車両2のGPS情報を取得する部分である。GPS情報取得部12cは、例えば、取得したGPS情報と、データベース(不図示)に記憶された道路情報等の地図情報とに基づいて、車両2の走行地点(現在位置)や走行方向を演算できる。
【0039】
車両情報取得部12dは、車両状態検出装置6が検出した車両2の車両情報(車速、加速度、操舵角、アクセル踏み込み量、ブレーキ踏み込み量、方向指示器の動作状態等)を取得する部分である。
【0040】
記録処理部12eは、メモリ11の各部に種々の情報を格納し記録させる処理を行う部分である。記録処理部12eは、例えば、各種情報を所定のサンプリング周期で関連付けてメモリ11の各部に格納し記録させる。記録処理部12eは、記録日時、車両情報取得部12dが取得した車両2の車両情報(車速、加速度、操舵角、アクセル踏み込み量、ブレーキ踏み込み量、方向指示器の動作状態等)、GPS情報取得部12cが取得した車両2の位置情報(GPS情報)を基本情報記録部11aに格納し記録させる。記録処理部12eは、ROM8に記憶されている車両識別情報を車両識別情報記録部11cに格納し記録させる。記録処理部12eは、画像データ取得部12aが取得した画像データを画像データ記録部11dに格納し記録させる。さらに、本実施形態の記録処理部12eは、後述するように時間計測部12hが計測した時間を、車両2の車線逸脱時に発せられる第1警報に対する運転者の反応時間(以下、単に「反応時間」という場合がある。)として反応時間記録部11eに格納し記録させる。また、記録処理部12eは、後述するようにイベント判定部12iが判定したイベントに関する情報をイベント記録部11fに格納し記録させる。
【0041】
車線逸脱/車線復帰検出部12fは、カメラ3によって撮像された走行路面の画像データに基づいて、車両2の車線からの逸脱(以下、単に「車線逸脱」という場合がある。)、及び、車両2の車線への復帰(以下、単に「車線復帰」という場合がある。)を検出する部分である。車線逸脱/車線復帰検出部12fは、種々の手法を用いて、車両2の車線逸脱、及び、車線復帰を検出すればよい。車線逸脱/車線復帰検出部12fは、例えば、画像データ取得部12aが取得した画像データに対して周知のエッジ処理やパターンマッチングを行うことで車線の白線を認識する。車線逸脱/車線復帰検出部12fは、認識した白線に対する車両2の相対位置を演算し、当該車両2が走行中の車線に対する当該車両2の相対位置を演算する。そして、車線逸脱/車線復帰検出部12fは、当該車両2が走行中の車線に対する当該車両2の相対位置に基づいて、車両2の車線逸脱を検出する。ここでいう車両2の車線逸脱とは、車両2が現在走行中の車線を逸脱する現象である。ここでは、車線逸脱/車線復帰検出部12fは、例えば、車両2の一部が現在走行中の車線の外側の領域に出た場合に車両2の車線逸脱を検出するものとして説明するが、これに限らない。車線逸脱/車線復帰検出部12fは、例えば、車両2の所定割合部分(例えば半分以上)が車線の外側の領域に出た場合に車両2の車線逸脱を検出してもよいし、車両2の全体が車線の外側の領域に出た場合に車両2の車線逸脱を検出してもよい。
【0042】
同様に、車線逸脱/車線復帰検出部12fは、上記のように演算される当該車両2が走行中であって車線に対する当該車両2の相対位置に基づいて、車両2の車線復帰を検出する。ここでいう車両2の車線復帰とは、車両2が走行していた車線に復帰する現象である。ここでは、車線逸脱/車線復帰検出部12fは、例えば、車両2の全体が当該車線の内側の領域に入った場合に車両2の車線復帰を検出するものとして説明するが、これに限らない。車線逸脱/車線復帰検出部12fは、例えば、車両2の所定割合部分(例えば半分以上)が車線の内側の領域に入った場合に車両2の車線復帰を検出してもよいし、車両2の一部が車線の内側の領域に入った場合に車両2の車線復帰を検出してもよい。
【0043】
ここで、車線逸脱/車線復帰検出部12fは、さらに、車両2が搭載する方向指示器に関する情報に基づいて、車両2の車線からの逸脱を、車両2の車線の変更と区別して検出することで、車両2の車線逸脱をより精度よく行うことができる。この場合、車線逸脱/車線復帰検出部12fは、車両情報取得部12dによって取得された車両2の車両情報に基づいて、方向指示器の動作状態を判定する。車線逸脱/車線復帰検出部12fは、車両2の逸脱方向と方向指示器の指示方向とが一致する場合には、車両2の車線逸脱とは切り分けて車両2の車線変更と判定し、車線逸脱としては検出しない。
【0044】
警報制御部12gは、スピーカ9を制御して種々の警報を出力させる部分である。警報制御部12gは、車線逸脱/車線復帰検出部12fによって車両2の車線逸脱が検出された場合にスピーカ9を制御して第1警報を出力させる。これにより、スピーカ9は、車線逸脱/車線復帰検出部12fによって車両2の車線逸脱が検出された場合に第1警報を発する。ここで、第1警報は、典型的には、車両2の運転者に対して当該車両2が車線から逸脱していることを報知する警報である。スピーカ9は、車両2の車線逸脱が検出された場合に、第1警報として、車両2が車線から逸脱している旨の聴覚情報(例えば、「車線逸脱しております。」等の音声メッセージ)を出力する。
【0045】
時間計測部12hは、スピーカ9によって第1警報が発せられてから車線逸脱/車線復帰検出部12fによって車両2の車線復帰が検出されるまでの時間を計測する部分である。時間計測部12hは、スピーカ9によって第1警報が発せられた時点をCPU12の計測タイマのカウント開始時点とし、車線逸脱/車線復帰検出部12fによって車両2の車線復帰が検出された時点をカウント終了時点として、第1警報が発せられてから車線復帰が検出されるまでの時間を計測する。
【0046】
そして、記録処理部12eは、時間計測部12hが計測した第1警報が発せられてから車線復帰が検出されるまでの時間を、車両2の車線逸脱時に発せられる第1警報に対する運転者の反応時間として反応時間記録部11eに格納し記録させる。これにより、メモリ11は、時間計測部12hによって計測された、スピーカ9によって第1警報が発せられてから車線逸脱/車線復帰検出部12fによって車両2の車線復帰が検出されるまでの時間を、第1警報に対する運転者の反応時間として記録する。メモリ11は、記録日時、車両2の車両情報、位置情報、運転者識別情報、車両識別情報、カメラ3によって撮像された走行路面の画像データ等と共に、これらと関連付けて反応時間を記録する。
【0047】
なお、時間計測部12hは、スピーカ9によって第1警報が発せられてから車線逸脱/車線復帰検出部12fによって車両2の車線復帰が検出されるまでの間に運転者の操作に応じた解除条件が成立した場合、第1警報が発せられてから当該解除条件が成立するまでの時間を計測するようにしてもよい。つまり、時間計測部12hは、車線復帰が検出されるまでの間に運転者の操作に応じた解除条件が成立した場合には、スピーカ9によって第1警報が発せられた時点を計測タイマのカウント開始時点とし、当該解除条件が成立した時点をカウント終了時点として、第1警報が発せられてから解除条件が成立するまでの時間を計測する。運転者の操作に応じた解除条件は、カメラ3によって撮像された走行路面の画像データに基づいた車線復帰検出とは異なる条件として任意に設定されればよい。運転者の操作に応じた解除条件としては、例えば、運転者による操舵操作に応じた車両2の操舵角の変化に基づいた条件、運転者による制動操作に応じた車両2のブレーキ踏み込み量及び車両2の車速に基づいた条件等が挙げられる。時間計測部12hは、車両情報取得部12dによって取得された車両2の車両情報に基づいて解除条件が成立したか否かを判定し、解除条件が成立した場合には当該解除条件が成立した時点をカウント終了時点とする。そしてこの場合、記録処理部12eは、時間計測部12hが計測した第1警報が発せられてから解除条件が成立するまでの時間を反応時間として反応時間記録部11eに格納し記録させる。これにより、メモリ11は、時間計測部12hによって計測された、スピーカ9によって第1警報が発せられてから解除条件が成立するまでの時間を、反応時間として記録する。
【0048】
時間計測部12hは、一例として、車両2の車両情報に基づいた車両2の操舵角の変化量が車線復帰分の変化量に相当する場合に運転者の操作に応じた解除条件が成立したものと判定し、当該解除条件が成立した時点をカウント終了時点とする。これにより、時間計測部12hは、例えば、カメラ3によって撮像された走行路面の画像データに基づいた車線復帰検出では車線復帰を検出できなかったようなイレギュラーな場合であっても操舵角の変化量に基づいて車線復帰を推定し反応時間を計測しメモリ11に記録させることができる。また、時間計測部12hは、他の例として、車両2の車両情報に基づいたブレーキ踏み込み量が所定量以上となりかつ車速が0となった場合等に運転者の操作に応じた解除条件が成立したものと判定し、当該解除条件が成立した時点をカウント終了時点とする。これにより、時間計測部12hは、例えば、車両2の車線逸脱時に発せられる警報に対する運転者の反応として、運転者がブレーキ操作を行い、車両2を停止させる操作を行った場合であっても当該警報に対する運転者の反応時間を計測しメモリ11に記録させることができる。
【0049】
また、本実施形態の警報制御部12gは、時間計測部12hによって計測された第1警報が発せられてからの経過時間が予め設定された第1所定時間を超えた場合にスピーカ9を制御して第1警報とは異なる第2警報を出力させる。これにより、スピーカ9は、時間計測部12hによって計測された、スピーカ9によって第1警報が発せられてからの経過時間が、第1所定時間を超えた場合に第1警報とは異なる第2警報を発する。ここで、第2警報は、典型的には、第1警報よりも強い警報であり、車両2の運転者に対して当該車両2を走行していた車線に復帰させるように促すと共に休息を促す警報である。スピーカ9は、第1警報が発せられてからの経過時間が第1所定時間を超えた場合に、第2警報として、車線復帰、及び、休息を促す旨の聴覚情報(例えば、「車線復帰させた後、休息を取ってください。」等の音声メッセージ)を出力する。なお、第1所定時間は、例えば、実車評価等に応じて予め任意に設定されればよい。
【0050】
イベント判定部12iは、時間計測部12hによって計測された時間に基づいて、車両2が車線から逸脱する車線逸脱イベントが発生したことを判定する部分である。イベント判定部12iは、時間計測部12hによって計測された、スピーカ9によって第1警報が発せられてからの経過時間が、予め設定された第2所定時間を超えた場合に、車線逸脱イベントが発生したと判定する。
【0051】
そして、記録処理部12eは、イベント判定部12iによって車線逸脱イベントが発生したと判定された場合、第1警報が発せられてからの経過時間を反応時間記録部11eに格納し記録させると共に、車線逸脱イベントが発生した旨の情報をイベント記録部11fに格納し記録させる。これにより、メモリ11は、時間計測部12hによって計測された、スピーカ9によって第1警報が発せられてからの経過時間が、予め設定された第2所定時間を超えた場合に、当該経過時間を記録すると共に、車両2が車線から逸脱する車線逸脱イベントが発生した旨を記録する。なお、第2所定時間は、例えば、実車評価等に応じて予め任意に設定されればよく、典型的には、第1所定時間より長い時間として予め設定されるが、これに限らず、同等であってもよいし、第1所定時間より短くてもよい。
【0052】
また、本実施形態の通信制御部12bは、通信モジュール4を制御してメモリ11に記録された情報を後方システム100に送信する。ここでは、通信モジュール4は、少なくともメモリ11に記録された反応時間に関する情報を後方システム100に送信する。通信モジュール4は、さらに、運転者識別情報、車両2の車両情報、位置情報、車両2において発生したイベントに関する情報、画像データ等を後方システム100に送信するようにしてもよい。
【0053】
さらに、通信モジュール4は、通信制御部12bの制御に応じて、後方システム100から、当該後方システム100に送信した反応時間に関する情報に基づいた指令情報を受信してもよい。当該指令情報は、後方システム100に送信した反応時間に関する情報に応じて後方システム100から自動送信させるものであってもよいし、当該反応時間に関する情報に応じて管理者等の操作にしたがって送信されるものであってもよい。そして、警報制御部12gは、通信モジュール4によって受信された指令情報に基づいてスピーカ9を制御して第1警報とは異なる第3警報を出力させてもよい。これにより、スピーカ9は、通信モジュール4によって受信された指令情報に基づいて第1警報とは異なる第3警報を発する。ここで、第3警報は、典型的には、第1警報、第2警報よりも強い警報であり、例えば、車両2の運転者に対して車両2を停止させ休息を促す警報である。スピーカ9は、通信モジュール4によって受信された指令情報を受信した場合に、第3警報として、車両2を停止させ休息を促す旨の聴覚情報(例えば、「車両を止めて、休息を取ってください。」等の音声メッセージ)を出力する。なお、当該第3警報の内容は、後方システム100における管理者等の操作に応じて適宜変更されてもよい。
【0054】
次に、図2のフローチャートを参照して運転記録装置1における制御フローの一例を説明する。なお、ここでは、反応時間の記録に関する処理を中心に説明する。
【0055】
まず、CPU12の車線逸脱/車線復帰検出部12fは、車両2の車線逸脱が発生したか否かを判定する(ステップST1)。車線逸脱/車線復帰検出部12fは、カメラ3によって撮像され画像データ取得部12aによって取得された画像データに基づいて車両2の車線逸脱を検出し、当該車線逸脱の発生を判定する。車線逸脱/車線復帰検出部12fは、車両2の車線逸脱が発生していないと判定した場合(ステップST1:NO)、車両2の車線逸脱が発生したと判定されるまで当該ステップST1の判定を繰り返し実行する。
【0056】
CPU12の警報制御部12gは、車線逸脱/車線復帰検出部12fによって車両2の車線逸脱が発生したと判定された場合(ステップST1:YES)、警報処理として、スピーカ9を制御して車両2が車線から逸脱している旨の第1警報を出力させる(ステップST2)。
【0057】
次に、CPU12の時間計測部12hは、計測タイマのカウントを開始する(ステップST3)。
【0058】
次に、車線逸脱/車線復帰検出部12f、時間計測部12hは、車両2の車線復帰が発生した、又は、解除条件が成立したか否かを判定する(ステップST4)。車線逸脱/車線復帰検出部12fは、カメラ3によって撮像され画像データ取得部12aによって取得された画像データに基づいて車両2の車線復帰を検出し、当該車線復帰の発生を判定する。時間計測部12hは、車両状態検出装置6によって検出され車両情報取得部12dによって取得された車両2の車両情報に基づいて解除条件が成立したか否かを判定する。
【0059】
時間計測部12hは、車線逸脱/車線復帰検出部12fによって車両2の車線復帰が発生したと判定された場合、あるいは、解除条件が成立したと判定した場合(ステップST4:Yes)、計測タイマのカウントを終了する。そして、記録処理部12eは、当該計測タイマのタイマ値、言い換えれば、第1警報が発せられてから車線復帰が検出されるまでの時間、あるいは、第1警報が発せられてから解除条件が成立するまでの時間を、反応時間としてメモリ11の反応時間記録部11eに格納し記録させる(ステップST5)。
【0060】
次に、CPU12の通信制御部12bは、メモリ11の反応時間記録部11eに反応時間として記録されたタイマ値に関する情報を含む情報を後方システム100にデータ送信し(ステップST6)、本制御フローを終了する。
【0061】
時間計測部12hは、車線逸脱/車線復帰検出部12fによって車両2の車線復帰が発生していないと判定され、かつ、解除条件が成立していないと判定した場合(ステップST4:No)、計測タイマのタイマ値、言い換えれば、第1警報が発せられてからの経過時間が第1所定時間を超過したか否かを判定する(ステップST7)。CPU12は、時間計測部12hによって計測タイマのタイマ値、言い換えれば、第1警報が発せられてからの経過時間が第1所定時間を超過していないと判定された場合(ステップST7:NO)、上述のステップST4の処理に移行し、以降の処理を繰り返し実行する。
【0062】
警報制御部12gは、時間計測部12hによって計測タイマのタイマ値、言い換えれば、第1警報が発せられてからの経過時間が第1所定時間を超過したと判定された場合(ステップST7:YES)、これから行う第2警報の発報が1回目であるか否かを判定する(ステップST8)。
【0063】
警報制御部12gは、これから行う第2警報の発報が1回目であると判定した場合(ステップST8:YES)、スピーカ9を制御して車線復帰、及び、休息を促す旨のメッセージを含む第2警報を出力させる(ステップST9)。警報制御部12gは、これから行う第2警報の発報が1回目ではないと判定した場合(ステップST8:NO)、当該ステップST9の処理をとばして次のステップST10の処理に移行する。
【0064】
次に、時間計測部12hは、計測タイマのタイマ値、言い換えれば、第1警報が発せられてからの経過時間が第2所定時間を超過したか否かを判定する(ステップST10)。CPU12は、時間計測部12hによって計測タイマのタイマ値、言い換えれば、第1警報が発せられてからの経過時間が第2所定時間を超過していないと判定された場合(ステップST10:NO)、上述のステップST4の処理に移行し、以降の処理を繰り返し実行する。
【0065】
時間計測部12hは、計測タイマのタイマ値、言い換えれば、第1警報が発せられてからの経過時間が第2所定時間を超過したと判定した場合(ステップST10:YES)、タイマ値超過として計測タイマのカウントを終了すると共に、CPU12のイベント判定部12iは、車線逸脱イベントが発生したと判定する。そして、記録処理部12eは、当該計測タイマのタイマ値(第2所定時間を超過したタイマ値)をメモリ11の反応時間記録部11eに格納すると共に車線逸脱イベントが発生した旨をイベント記録部11fに格納し記録させる。そして、通信制御部12bは、メモリ11の反応時間記録部11eに記録されたタイマ値に関する情報、及び、イベント記録部11fに記録された車線逸脱イベントが発生した旨の情報を含む情報を後方システム100にデータ送信する(ステップST11)。
【0066】
次に、警報制御部12gは、通信モジュール4等を介して後方システム100から休息指令を含む指令情報を受信したか否かを判定する(ステップST12)。CPU12は、警報制御部12gによって休息指令を含む指令情報を受信していないと判定された場合(ステップST12:NO)、本制御フローを終了する。
【0067】
警報制御部12gは、休息指令を含む指令情報を受信したと判定された場合(ステップST12:YES)、スピーカ9を制御して車両2を停止させ休息を促す旨のメッセージを含む第3警報を出力させ(ステップST13)、本制御フローを終了する。
【0068】
上記のように構成された運転記録装置1によって記録された情報は、例えば、メモリ11を介して後方システム100等で読み出されて、車両2の運転者による運転操作に関する評価、車両2の運行管理に関する評価等の運転評価に用いることができる。図3は、後方システム100の表示部等に表示される記録情報の出力の一例である。後方システム100の表示部は、運転記録装置1によって記録された情報として、記録日時、車両2の車両情報、位置情報、運転者識別情報、車両識別情報、カメラ3によって撮像された走行路面の画像データ等と共にこれらと関連付けて反応時間を表示する。図3に例示する表示画面では、記録日時、車両識別情報(図3に示す「01−23」等の文字情報)、運転者識別情報(図3に示す「A氏」等の文字情報)と共に、これらと関連付けて反応時間(図3に示す「500」、「900」、「300」等の文字情報)が表示されている。また、図3に例示する表示画面では、車線逸脱イベントが発生した記録日時、車両、運転者、反応時間の欄にはハッチがかけられており、車線逸脱イベントが発生した状況を簡単に視認できるように表示されている。
【0069】
以上で説明した運転記録装置1によれば、車両2の進行方向前方を撮像するカメラ3と、カメラ3によって撮像された車両2の走行路面の画像データに基づいて、車両2の車線からの逸脱、及び、車両2の車線への復帰を検出する車線逸脱/車線復帰検出部12fと、車線逸脱/車線復帰検出部12fによって車両2の車線からの逸脱が検出された場合に第1警報を発するスピーカ9と、スピーカ9によって第1警報が発せられてから車線逸脱/車線復帰検出部12fによって車両2の車線への復帰が検出されるまでの時間を計測する時間計測部12hと、時間計測部12hによって計測された、スピーカ9によって第1警報が発せられてから車線逸脱/車線復帰検出部12fによって車両2の車線への復帰が検出されるまでの時間を、第1警報に対する運転者の反応時間として記録するメモリ11とを備える。
【0070】
したがって、運転記録装置1は、車両2の車線逸脱が検出され警報が発せられてから当該車両2の車線復帰が検出されるまでの時間を計測し、これを反応時間として記録する。さらに言えば、運転記録装置1は、警報が発せられてから車線復帰が検出されるまでの時間を、車線逸脱時に発せられる警報に対して運転者が反応し実際に車両2をもとの車線に戻す車線復帰操作を行うまでの反応時間として記録する。この結果、運転記録装置1は、運転評価に供する新規の記録項目として、車線逸脱し警報が発せられてから車線復帰するまでの反応時間を記録することができるので、当該反応時間を用いてより詳細な運転評価を実現することができる。
【0071】
例えば、運転記録装置1によって記録された情報を後方システム100等で読み出して評価する際には、反応時間を、運転者の疲労度を表す指標としてみることができ、当該反応時間から運転者の疲労度を推定し、当該疲労度に基づいて、様々な運転評価を行うことができる。典型的には、反応時間が相対的に長くなるほど運転者の疲労度が相対的に蓄積されてきたものと推定することができる。そして、事業者の管理者等は、反応時間から推定される運転者の疲労度を踏まえて様々な運転評価を行うことができ、例えば、疲労度等に応じて適切に休息を確保するように促したり計画を立てたりすることができる。また、事業者の管理者等は、例えば、各車両、各運転者に対応する反応時間や当該反応時間から推定される運転者の疲労度を集計することで、運転者の運転傾向等を統計的に把握、解析することができると共に、運転操作に関する評価、車両2の運行管理に関する評価等に留まらず、これらの情報を運行管理や人員配置の作成等にも活用することができる。
【0072】
ここでは、以上で説明した運転記録装置1によれば、メモリ11は、車両2の運転者を識別する運転者識別情報と共に反応時間を記録する。したがって、運転記録装置1は、各運転者の反応時間、疲労度等を個別に評価することができ、例えば、健康状態や加齢による衰え等の個人差を踏まえて個別に運転評価をし、個別に安全運転指導等に活用することができる。
【0073】
さらに、以上で説明した運転記録装置1によれば、スピーカ9は、時間計測部12hによって計測された、スピーカ9によって第1警報が発せられてからの経過時間が、予め設定された第1所定時間を超えた場合に第1警報とは異なる第2警報を発する。したがって、運転記録装置1は、第1警報が発せられてからの経過時間が第1所定時間を超え、運転者の疲労度が蓄積されてきたものと推定できるような場合に、例えば、第2警報によって運転者に対して休息を促すことができる。
【0074】
さらに、以上で説明した運転記録装置1によれば、メモリ11は、時間計測部12hによって計測された、スピーカ9によって第1警報が発せられてからの経過時間が、予め設定された第2所定時間を超えた場合に、当該経過時間を記録すると共に、車両2が車線から逸脱する車線逸脱イベントが発生した旨を記録する。したがって、運転記録装置1は、第1警報が発せられてからの経過時間が第2所定時間を超えた際に車線逸脱イベントが発生したことを記録することで、当該車線逸脱イベントが発生した事実をその後の運転評価に用いることができるので、この点でもより詳細な運転評価を実現することができる。
【0075】
さらに、以上で説明した運転記録装置1によれば、メモリ11に記録された反応時間に関する情報を、車両2の外部に設けられる後方システム100に送信する通信モジュール4を備える。したがって、運転記録装置1は、メモリ11に記録された反応時間を、車外に設けられた後方システム100を介してリアルタイムに監視させ、運転管理させることができる。
【0076】
さらに、以上で説明した運転記録装置1によれば、通信モジュール4は、後方システム100から、当該後方システム100に送信した反応時間に関する情報に基づいた指令情報を受信し、スピーカ9は、通信モジュール4によって受信された指令情報に基づいて第1警報とは異なる第3警報を発する。これにより、運転記録装置1は、後方システム100からの指示にしたがって、例えば、第3警報によって運転者に対してリアルタイムに休息を促すことができる。
【0077】
さらに、以上で説明した運転記録装置1によれば、時間計測部12hは、スピーカ9によって第1警報が発せられてから車線逸脱/車線復帰検出部12fによって車両2の車線への復帰が検出されるまでの間に運転者の操作に応じた解除条件が成立した場合、スピーカ9によって第1警報が発せられてから当該解除条件が成立するまでの時間を計測し、メモリ11は、時間計測部12hによって計測された、スピーカ9によって第1警報が発せられてから解除条件が成立するまでの時間を、反応時間として記録する。したがって、運転記録装置1は、例えば、カメラ3によって撮像された走行路面の画像データによっては車線復帰を検出することができないような場合の反応時間や、車線逸脱に対応して車両2を停止させたような場合の反応時間も計測し記録することができるので、この点でもより詳細な運転評価を実現することができる。
【0078】
さらに、以上で説明した運転記録装置1によれば、車線逸脱/車線復帰検出部12fは、車両2が搭載する方向指示器に関する情報に基づいて、車両2の車線からの逸脱を、車両2の車線の変更と区別して検出する。したがって、運転記録装置1は、車線逸脱と車線変更との区別を精度よく行うことができ、反応時間をより精度よく計測し記録することができるので、この点でもより詳細な運転評価を実現することができる。
【0079】
なお、上述した本発明の実施形態に係る運転記録装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0080】
以上の説明では、運転記録装置1で記録した情報は、一般乗用旅客自動車運送事業、特定旅客自動車運送事業、貨物自動車事業等の種々の事業者の事務所等に配置された後方システム100で用いられるものとして説明したがこれに限らず、事業者等にかかわらず、個人所有するPCに所定のアプリケーションをインストールして用いることもできる。
【0081】
以上の説明では、警報部は、スピーカ9であるものとして説明したがこれに限られない。警報部は、視覚情報(図形情報、文字情報)を出力することで種々の警報を発する視覚情報表示装置であってもよい。視覚情報表示装置としては、車両2の車室内に設けられたディスプレイ、例えば、ナビゲーションシステムのディスプレイやメータの表示装置が流用されてもよい。この他、警報部は、例えば、車両2のハンドル振動、座席振動、ペダル反力などの触覚情報等を出力することで種々の警報を発する触覚情報出力装置等であってもよい。
【0082】
以上で説明した検出部は、車線逸脱を検出する車線逸脱検出部と、車線復帰を検出する車線復帰検出部とが別個に構成されてもよい。
【0083】
以上の説明では、CPU12は、車両2のECUと電気的に接続され、当該ECUと連携するものとして説明したが、当該車両2側のECUと一体で構成されてもよく、すなわち、運転記録装置の制御部は、車両2側のECUによって兼用されてもよい。
【0084】
以上の説明では、警報部は、所定の条件下で第2警報、第3警報を発するものとして説明したがこれに限らない。また、記録部は、反応時間等に加えて車線逸脱イベントが発生した旨も記録するものとして説明したがこれに限らない。また、以上で説明した記録部は、メモリ11にかえて、運転記録装置の筐体内部に内蔵されるハードディスク等であってもよい。また、以上で説明した第1所定時間、第2所定時間は、例えば、反応時間から推定される疲労度の評価等に応じて適宜変更、調整されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 運転記録装置
2 車両
3 カメラ(撮像部)
4 通信モジュール(通信部)
9 スピーカ(警報部)
11 メモリ(記録部)
12f 車線逸脱/車線復帰検出部(検出部)
12h 時間計測部(計測部)
100 後方システム(外部機器)
図1
図2
図3