(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定部と、変位可能な可動部と、前記固定部及び前記可動部の上部同士を連結する上ビーム部と、前記固定部及び前記可動部の下部同士を連結する下ビーム部とを一体に有する金属材料からなる起歪体を備え、
前記固定部側から、前記下ビーム部及び前記可動部の下側へ、または、前記上ビーム部及び前記可動部の上側へ延出して、前記可動部の変位を規制するストッパを有し、
前記ストッパは、前記起歪体を、該起歪体の厚み方向に貫通する貫通溝によって、前記下ビーム部または前記上ビーム部から分離されると共に、前記可動部から分離されて形成され、
前記可動部及び前記ストッパは、前記貫通溝を挟んで上下方向に互いに対向する対向面を有し、前記両対向面間に、前記可動部の下向への変位及び上方への変位をそれぞれ規制するストッパ用隙間が形成される、
ことを特徴とするロードセル。
前記可動部及び前記ストッパは、前記貫通溝を挟んで互いに対向する対向面が、矩形状にそれぞれ形成され、前記矩形状の上辺を形成する対向面及び下辺を形成する対向面が、前記ストッパ用隙間を形成する、
請求項1ないし3のいずれかに記載のロードセル。
【背景技術】
【0002】
かかる過負荷防止機構を備える平行四辺形型のロードセルとして、例えば、特許文献1には、円柱状のストッパ部材の一端を、平行四辺形型のロードセルの固定部側に固定する一方、他端を、可動部側に形成された円形孔に、該円形孔の内周面との間に隙間が生じるように挿入し、ストッパ部材の外周面と前記円形孔の内周面との当接によって変位を規制して過剰な負荷がかからないようにしたものが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、平行四辺形型ロードセルの固定部位に、円柱状部分を有するストッパピンを固定し、可動部位へ延びる前記円柱状部分を、可動部位に形成した円形孔に、前記ストッパピンの円柱状部分と前記円形孔の内周面との間に隙間が生じるようにストッパピンを挿入し、ストッパピンの外周面と前記円形孔の内周面との当接によって変位を規制して過剰な負荷がかからないようにしたものが記載されている。
【0004】
特許文献1,2では、ストッパ部材やストッパピンは、平行四辺形型ロードセルの固定部と、可動部と、固定部及び可動部の上部同士を連結する上ビーム部と、固定部及び可動部の下部同士を連結する下ビーム部によって囲まれた内部空間に配置されている。
【0005】
ところで、ロードセルには、例えば、特許文献3に示すように、平行四辺形型ロードセルの固定部と、可動部と、上下のビーム部とによって囲まれた内部空間に、別の起歪部や防水シールを設けるもの、あるいは、特許文献4の
図4に示すように、前記内部空間に、上下のビーム部を連結する部分が存在するものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1,2では、次のような課題がある。すなわち、上記円柱状のストッパ部材等の外周面と円形孔の内周面との間の隙間を精確に実現するためには、円柱状のストッパ部材等の外形寸法の精度、長手方向の精度、円形孔の精度、隙間が均等になるような相対位置関係の精度など多くの箇所の寸法精度を所定範囲内に仕上げねばならないが、機械加工の誤差などによって所定範囲内の組み付け精度の実現が容易でなく、したがって、前記隙間、言い換えればストッパとしての耐荷重特性にばらつきが生じることになる。
【0008】
更に、ストッパ部材等を、上記のように、平行四辺形型ロードセルの固定部と、可動部と、上下のビーム部とによって囲まれた内部空間に配置するために、上記特許文献3,4等のように、前記内部空間内に、別の起歪部や連結部等が存在するロードセルでは、ストッパ部材等を設けることができないという課題がある。
【0009】
本発明は、上記のような実情に着目してなされたものであって、固定部、可動部、上下のビーム部によって囲まれた内部空間を利用することなく、過負荷を防止できると共に、耐荷重特性のばらつきを低減したロードセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0011】
(1)本発明のロードセルは、固定部と、変位可能な可動部と、前記固定部及び前記可動部の上部同士を連結する上ビーム部と、前記固定部及び前記可動部の下部同士を連結する下ビーム部とを一体に有する金属材料からなる起歪体を備え、
前記固定部側から、前記下ビーム部及び前記可動部の下側へ、または、前記上ビーム部及び前記可動部の上側へ延出して、前記可動部の変位を規制するストッパを有し、
前記ストッパは、前記起歪体を、該起歪体の厚み方向に貫通する貫通溝によって、前記下ビーム部または前記上ビーム部から分離されると共に、前記可動部から分離されて形成され、
前記可動部及び前記ストッパは、前記貫通溝を挟んで上下方向に互いに対向する対向面を有し、前記両対向面間に、前記可動部の下方への変位及び上方への変位をそれぞれ規制するストッパ用隙間が形成される。
【0012】
本発明のロードセルによると、可動部及びストッパの両対向面間に、ストッパ用間隙が形成されるので、過大な負荷荷重が印加されたときに、ストッパがが、可動部の下方及び上方への変位を規制してロードセルの起歪部の破損を防止することができる。更に、ストッパは、固定部側から、下ビーム部及び可動部の下側へ、または、上ビーム部及び可動部の上側へ延出する、すなわち、ストッパを、固定部、可動部、上ビーム部、及び、下ビーム部で囲まれた内部空間に配置しないので、前記内部空間をストッパ以外に有効に利用することができる。
【0013】
しかも、固定部側から可動部側へ延出するストッパは、起歪体の厚み方向に貫通する貫通溝によって、下ビーム部または上ビーム部から分離されると共に、可動部から分離されて形成される、すなわち、ストッパは、起歪体に貫通溝を形成して該起歪体と一体に形成されるので、平行四辺形型ロードセルの円形孔に、円柱状のストッパ部材等を組付けてストッパを構成する従来例のように、ストッパ部材の外形の加工精度、円形孔内面の加工精度、組み付け精度などの多くばらつき要因を有する構成に比べて、ストッパとしての耐荷重特性のばらつきを低減することができる。
【0014】
(2)本発明のロードセルの好ましい実施態様では、前記上ビーム部及び前記下ビーム部には、前記固定部寄りの起歪部及び前記可動部寄りの起歪部がそれぞれ形成され、前記ストッパ用隙間が、前記可動部寄りの前記起歪部よりも更に前記可動部寄りに形成される。
【0015】
この実施態様によると、ストッパ用隙間は、上下のビーム部の可動部寄りの起歪部よりも更に可動部寄りに形成されているので、可動部に負荷荷重が印加されたときに、負荷荷重の着力点を通る作用線と、変位を規制するストッパ用隙間との間の距離を短くしてストッパ用隙間に作用する曲げモーメントを抑制することができる。
【0016】
(3)本発明のロードセルの別の実施態様では、前記貫通溝は、前記固定部側の始端から前記可動部側の端面に至る開放端まで形成され、前記可動部及び前記ストッパは、前記貫通溝を挟んで互いに対向する対向面間の隙間の幅が、前記始端から前記開放端に至る前記貫通溝の全区間の内、前記ストッパ用隙間が形成された区間以外の残余の区間では、前記ストッパ用隙間の幅以上である。
【0017】
この実施態様によると、貫通溝は、ストッパ用隙間が形成された区間以外の残余の区間では、その隙間の幅が、ストッパ用隙間の幅以上であるので、残余の区間では、ストッパ用隙間を形成する場合のように高精度の加工方法を使用する必要がなく、安価に形成することができ、加工コストを削減することができる。
【0018】
(4)本発明のロードセルの他の実施態様では、前記可動部及び前記ストッパは、前記貫通溝を挟んで互いに対向する対向面が、矩形状にそれぞれ形成され、前記矩形状の上辺を形成する対向面及び下辺を形成する対向面が、前記ストッパ用隙間を形成する。
【0019】
この実施態様によると、可動部とストッパは、矩形状の上辺同士または下辺同士が当接して、可動部の下方変位及び上方変位が規制される。
【0020】
(5)本発明のロードセルの更に他の実施態様では、前記上ビーム部と前記下ビーム部との間であって、かつ前記固定部と前記可動部との間に、前記起歪体の厚み方向に貫通する貫通孔が形成される。
【0021】
この実施態様によると、貫通孔の内周面に歪センサを装着し、その内周面を覆うように、金属製のカバー等を溶接して歪センサを密封し、外部環境から保護するといったことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明のロードセルによれば、過負荷を防止するストッパを、平行四辺形型のロードセルを構成する起歪体に、貫通溝を形成して該起歪体と一体に、かつ、前記ロードセルの外側に形成するので、固定部、可動部、上ビーム部、及び、下ビーム部で囲まれた内部空間をストッパ以外に有効に利用することができる。
【0023】
しかも、平行四辺形型ロードセルの円形孔に、円柱状のストッパ部材等を組付けてストッパを構成し、ストッパ部材の外形の加工精度、円形孔内面の加工精度、組み付け精度などの多くばらつき要因を有する従来例に比べて、ストッパの耐荷重特性のばらつきを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面によって本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態のロードセルの取付け状態を示す図であり、
図2は、
図1のロードセルの正面図であり、
図3は、その平面図である。
【0027】
この実施形態のロードセル1は、アルミニウムや鉄、ステンレス合金などの直方体状の金属弾性体から成る起歪体30を備えている。このロードセル1は、水平方向である左右方向(
図1〜
図3の左右方向)の一端側の固定部2と、他端側の可動部3と、前記両部2,3の間に、起歪体30の厚み方向である前後方向(
図1,2の紙面に垂直方向、
図3の上下方向)に貫通する大径の円形貫通孔4と、円形貫通孔4の周囲に同心に形成された略円形の浅い円形凹部5と、円形貫通孔4の上下に近接して前後方向に貫通すると共に、その外周の一部が外部に連なるように切欠かれた略円形の各一対の上部貫通切欠き6,7及び下部貫通切欠き8,9と、固定部2側に形成されて、後述のように配線を接続収納する配線接続室10と、その開口部を密封する蓋体22と、円形貫通孔4及び可動部3の下側で、前後方向に貫通する細い貫通溝11によって分離されて、過負荷によるロードセル1の破損を防ぐためのストッパ12等を備えている。
【0028】
この実施形態のロードセル1は、防水仕様であり、円形貫通孔4の内周面の4箇所に貼着された歪センサとしての歪ゲージ13a〜13dを密封するために、後述の
図4にも示すように、円筒形の金属製の円筒シール部材14を、円形貫通孔4の内周面に嵌め込み、溶接して密封している。
【0029】
図2に示すように、固定部2の下面側には、当該ロードセル1を、計量装置の基台15等のベースに固定するためのねじ孔16a,16bが形成されており、可動部3の左側の端面には、被計量物が載置される計量台17を支持する計量台用金具17aを装着するためのねじ孔18a,18bが形成されている。この例では、計量台17を可動部3の左側の端面で支持しているが、可動部3の上側の端面で支持するようにしてもよい。
【0030】
一対の上部貫通切欠き6,7は、円形貫通孔4と起歪体30の上側端面との間に、上側端面の一部を切欠くように略円形に貫通形成され、一対の下部貫通切欠き8,9は、円形貫通孔4と貫通溝11との間に、貫通溝11に一部が連なるように略円形に貫通形成される。略円形の各貫通切欠き6〜9の内径は、互いに等しく、円形貫通孔4より小さい。各貫通切欠き6〜9は、円形貫通孔4にそれぞれ平行に貫通形成されている。
【0031】
可動部3と固定部2とは、円形貫通孔4の上側の一対の上部貫通切欠き6,7の間の上ビーム部19、及び、円形貫通孔4の下側の一対の下部貫通切欠き8,9の間の下ビーム部20を介してそれぞれ連結されている。
【0032】
上部貫通切欠き6,7によって、上ビーム部19には、薄肉の起歪部21a,21bが形成される一方、下部貫通切欠き8,9によって、下ビーム部20には、薄肉の起歪部21c,21dが形成される。円形貫通孔4から上部及び下部の各貫通切欠き6,7;8,9までの距離d1は、いずれも等しく、各起歪部21a〜21dの肉厚となる。負荷荷重に応じた歪を発生させる起歪部21a〜21dに対応して円形貫通孔4の内周面には、上記のように歪ゲージ13a〜13dが貼着されている。円形貫通孔4の内径は、歪ゲージ13a〜13dを貼着し、配線作業をするのに必要な大きさとなっている。
【0033】
計量台17から可動部3に負荷荷重が加えられたとき、4個の貫通切欠き6〜9と円形貫通孔4との間に形成された4箇所の薄肉部を起歪部21a〜21dとし、上側の上部貫通切欠き6,7間の連結部を上ビーム部19、下側の下部貫通切欠き8,9の間の連結部を下ビーム部20とする平行四辺形型のロードセルとして機能する。
【0034】
すなわち、ロードセル1に、計量台17を介して負荷荷重が可動部3に加えられると、円形貫通孔4の外周の起歪部21a〜21dが撓み、円形貫通孔4の内周面の歪ゲージ13a〜13dによって伸縮歪応力を検出し、負荷荷重が荷重信号に変換され、この荷重信号を演算処理して計量台17に印加された負荷荷重が算出される。
【0035】
この実施形態では、計量台17は、負荷荷重の着力点を通る作用線LFが、起歪部21a,21cよりも可動部3寄りにあるように装着される。
【0036】
固定部2には、上記のように配線接続室10が形成されており、この配線接続室10には、円形貫通孔4の内周面に貼着された歪ゲージ13a〜13dと外部とを配線接続するための基板等を収納することができる。この配線接続室10の円形の開口部は、金属製の蓋体22によって密閉されている。
【0037】
また、固定部2の内部には、円形貫通孔4の内周面と配線接続室10とを繋ぐ配線孔23が形成される一方、固定部2の端部には、配線接続室10と外部とを接続するための接続孔24が形成されている。円形貫通孔4の内周面の歪ゲージ13a〜13dと外部とは、配線孔23、配線接続室10及び接続孔24を介して配線接続される。
【0038】
図4は、
図2の矢視A−Aの拡大断面図である。
【0039】
この実施形態のロードセル1は、上記のように防水仕様である。このため、円形貫通孔4の内周面に貼着された歪ゲージ13a〜13d部分に、完全な防水シールを施すために、両端部がやや大径のフランジ部14aを有する円筒形の金属製の円筒シール部材14を、円形貫通孔4の内周面に嵌め込み、この円筒シール部材14の両端のフランジ部14aと円形貫通孔4の内周面とをティグ(TIG)溶接やレーザー溶接によって接合している。
【0040】
この溶接では、円形貫通孔4と円筒シール部材14の接合部を溶融させて接合するが、接合される部分の熱伝達特性及び熱容量を略等しくするために、円形貫通孔4の周囲には、上記円形凹部5が幅Wに亘って形成され、これによって、円形貫通孔4の周縁には、溶接用エッジ26が、円筒シール部材14のフランジ部14aと略均等になるように形成される。
【0041】
すなわち、円形貫通孔4の周縁の溶接用エッジ26と、円筒シール部材14のフランジ部14aとの形状を略等しい形状としたので、接合される部分の熱伝達特性及び熱容量を略等しくすることができ、溶接の際の熱が、溶接用エッジ26とフランジ部14aとに略均等に伝達され、溶接用エッジ26とフランジ部14aとを均等に溶融させて接合することができる。
【0042】
円筒シール部材14は、円形貫通孔4の周縁の溶接用エッジ26、すなわち、起歪体30と同一種類の金属材料からなるのが好ましい。
【0043】
円形貫通孔4の周縁の溶接用エッジ26と、円筒シール部材14のフランジ部14aとの溶接によって、円形貫通孔4の内周面と円筒シール部材14との間には気密室27が形成される。
【0044】
上記のように円形貫通孔4の内周面の4箇所の起歪部21a〜21dに貼付された歪ゲージ13a〜13dは気密室27内に存在するため防水性能を有することになる。また、荷重信号検出用の配線も防水性能を持たせるため、上記のように、歪ゲージ13a〜13dが貼付される気密室27から引き出される導線の配線用の配線孔23が設けられ、固定部2に設けられた配線接続室10において、ロードセル1の外部から防水コネクタ25を介して導入された配線と接続される。配線接続室10も防水性能を有するようにするために、円形の開口部には、外周部にフランジの付いた薄い金属製の蓋体22を設けて覆い、開口部の周縁と蓋体22のフランジとをティグ(TIG)溶接等によって接合し、完全密閉され防水性能の高い配線接続室10となっている。
【0045】
この実施形態では、
図2に示すように、ロードセル1の固定部2側における始端P1より可動部3側の端面に向けて、上記のように前後方向に貫通する細い貫通溝11が形成されている。上記始端P1は、起歪部21b,21dよりも固定部2寄りの位置であって、当該ロードセル1が固定される基台15よりも可動部3側の位置にある。
【0046】
この貫通溝11は、始端P1から可動部3側へ水平方向に延びて、下部貫通切欠き8,9の下部に連なり、斜め下方に延び、更に、上下方向、左右方向に繰り返し延びて矩形状の矩形部12aを形成し、可動部3の端面の開放端P3まで至り、ストッパ12を、下ビーム部20及び可動部3から分離する。
【0047】
すなわち、貫通溝11によって平行四辺形型ロードセルの下側端面と分離されて形成された、固定部2側から可動部3側に向かって延出するストッパ12は、後述のように可動部3が計量台17から過大な荷重を受けて下方または上方へ変位するのを制限するストッパとして機能する。このストッパ12は、ロードセル1の可動部3に所定の過大荷重が負荷されてもストッパ12の撓み量が極めて小さくなるように、つまり定格容量の負荷時における起歪部21a〜21dの撓み量に比べて十分小さい撓み量となるように起歪部21a〜21dに比べて十分大きい剛性を持つ構成とされる。
【0048】
貫通溝11の始端P1から可動部3側の端面の開放端P3へ至る全区間中で、
図2に示される矩形部12aの上辺に相当する区間Z1、及び、矩形部12aの下辺に相当する区間Z2,Z3は、溝幅を規定するため、所定の線径のワイヤを使用したワイヤ放電加工によって形成され、所定の隙間であるストッパ用隙間Gとして、例えば、150μm程度の隙間を持つ細い貫通溝11が形成される。このストッパ用隙間Gは、例えば、計測可能な最大荷重、すなわち定格荷重の1.5倍の荷重が加わった時の可動部3の変位量を超える所定の変位量に相当する大きさに設定されている。ワイヤ放電加工は、微小な間隔の隙間を容易に形成することができる精密加工であるので、可動部3と矩形部12aとの間のストッパ用隙間Gを高い精度で形成することができる。
【0049】
前記区間Z1では、ストッパ12の矩形部12aの上面と、可動部3の下面とが、上下方向(鉛直方向)に対向し、両対向面間にストッパ用隙間Gが形成され、可動部3の下方への変位を規制する。また、前記区間Z2,Z3では、ストッパ12の矩形部12aの下面と、可動部3の上面とが、上下方向にそれぞれ対向し、両対向面間にストッパ用隙間Gが形成され、可動部3の上方への変位を規制する。
【0050】
貫通溝11の全区間における区間Z1,Z2,Z3以外の残余の区間は、区間Z1,Z2,Z3の隙間、すなわち、ストッパ用隙間Gの幅と同じか広くてもよく、隙間の幅の精度は、区間Z1,Z2,Z3のストッパ用隙間Gほど高くなくてもよい。
【0051】
この実施形態では、貫通溝11のストッパ用隙間Gが形成される区間Z1,Z2,Z3以外の残余の区間は、ストッパ用隙間Gよりも隙間の幅を広くしている。この残余の区間の貫通溝11は、ミーリング加工などによって形成しており、ワイヤ放電加工で形成するのに比べて加工コストを削減している。
【0052】
貫通溝11によって、固定部2の始端P1から可動部3の端面の開放端P3まで分離されたストッパ12は、ロードセル1の最大の下方変位量、及び、上方変位量を規定する。すなわち、計量台17に、例えば、定格荷重の1.5倍を越えるような過大な荷重が印加されたときは、ロードセル1の可動部3の下方変位は、区間Z1のストッパ部12aの一部に当接することによって制限され、計量台17に上向きに過大な荷重が印加されたときは、ロードセル1の可動部3の上方変位は、区間Z2,Z3のストッパ部12aの一部に当接することによって制限される。これによって、起歪部21a〜21dが弾性域を超えて永久変形したり破損するのを防止することができる。
【0053】
図2に示すように、計量台17の印加荷重F0が、着力点を通る作用線LF上でロードセル1の可動部3に作用すると、可動部3は下方へ変位するが、可動部3は厳密には鉛直方向に下方変位せず、下向きに曲げ応力が加わるので、上側に凸の曲げ形状をなしながら下方へ変位する。そして、可動部3が、前記作用線LFから距離L1にあるストッパ12の矩形部12aの左上の角部P2で当接すると、作用線LFに作用する荷重F0と、作用線LFから角部P2までの距離L1によるモーメントカF0×L1と、角部P2から距離L2にある起歪部21a,21cに作用する力FiによるモーメントカFi×L2とが、角部P2の回りで、Fi×L2=F0×L1と釣り合うように作用する。
【0054】
Fi=(L1/L2)・F0の関係にあるので、L1がL2に比べて短いほど、すなわち、可動部3とストッパ12とが当接する角部P2と負荷荷重の作用する作用線LFとの距離L1が、角部P2と起歪部21a,21cを結ぶ線との距離L2より短いほど起歪部21a,21cに作用する力Fiは小さくなるので、ストッパとしての耐荷重性能は高くなる。
【0055】
本実施形態では、区間Z1,Z2,Z3のストッパ用隙間Gが、起歪部21a,21cよりも可動部3寄りに形成されるので、ストッパとしての耐荷重性能は高い。
【0056】
ここで、もしストッパ12と可動部3との当接点P2が、可動部3寄りの起歪部21a,21cの位置より固定部2側に寄った構成にすると、L1が長くなり、L2は短くなるので、起歪部21a,21cに作用する力Fiが大きくなり、ストッパとしての耐荷重性能が低下する。
【0057】
本実施形態では、可動部3、固定部2、上下のビーム部19,20で囲まれる内部空間には、円筒シール部材14が存在するために、上記特許文献1,2のように前記内部空間にストッパを設けることができないので、下ビーム部20及び可動部3の下側に貫通溝11を隔ててストッパ12を設けている。
【0058】
このようにストッパ12を平行四辺形ロードセルの上ビーム部19及び可動部3の上側、或いは、下ビーム部20及び可動部3の下側に設けると、内部空間に、円筒シール部材14等の防水手段が施される場合以外の、例えば、前記内部空間に起歪部を有する上下のビーム部以外の連結部が設けられたり、デジタルロードセルとしてアナログ荷重信号をデジタル化する回路ユニットが設けられたりしている場合でも、過負荷防止用のストッパを設けることが可能である。
【0059】
また、隙間の幅は、上記特許文献1が、円柱状のストッパ部材の両端部の外形の加工精度、及び固定部におけるストッパ部材装着用の円形孔内面の加工精度、可動部においてストッパ部材の非接触挿入用の円形孔内面の加工精度、組み付け精度など、ストッパとしての機能を持つ隙間の幅の形成について種々の多くのばらつき要因を持つのに対して、この実施形態のロードセル1では、ストッパ12と可動部3との間において、ワイヤ放電加工による隙間を形成する場合の隙間の幅の精度に依存するのみであり、ばらつきの小さい隙間を容易に形成できる。
【0060】
したがって、耐荷重の大きさが精確で、耐荷重特性にばらつきの少ないストッパが構成される。
【0061】
また、この実施形態のストッパ12は、平行四辺形型ロードセルの奥行き寸法と同じ幅に構成されるので、内部空間に設けられる丸棒型に比べより剛性の高いストッパとなり、上記特許文献1に比較して、より大きい耐荷重性能を有する。
【0062】
上記のように、L1が短いほど、すなわち、可動部3とストッパ12とが当接する角部P2が、負荷荷重の作用する作用線LFに近いほど起歪部21a,21cに作用する力Fiは小さくなってストッパとしての耐荷重性能は高くなるので、他の実施形態として、
図5に示すように、前記作用線LFに角部P2を更に近づけるのが好ましい。
【0063】
すなわち、
図5の実施形態では、可動部3の端面の上部を切欠いて、計量台17の計量台用金具17aを装着し、ストッパ12の矩形部12aの角部P2が、負荷荷重F0が作用する作用線LFと等しい位置となるようにしている。
その他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0064】
図6は、本発明の他の実施形態のロードセルの正面図であり、
図2に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0065】
この実施形態では、上記貫通切欠き6,7及び下部貫通切欠き8,9に換えて円形の上部貫通孔36,37及び下部貫通孔38,39をそれぞれ形成すると共に、上部貫通孔36,37同士及び下部貫通孔38,39同士を、前後方向に貫通した上部連結溝40及び下部連結溝41でそれぞれ連結している。
【0066】
したがって、円形貫通孔4と、上部貫通孔36,37及び上部連結溝40との間に存在するビーム部を第1上ビーム部42aとすると、更に、上部貫通孔36,37及び上部連結溝40の上側に第2上ビーム部42bを有する。
【0067】
同様に、円形貫通孔4と、下部貫通孔38,39及び下部連結溝41との間に存在するビーム部を第1下ビーム部43aとすると、更に、下部貫通孔38,39及び下部連結溝41の下側に第2下ビーム部43bを有する。
【0068】
すなわち、固定部2と可動部3とを、上下2本ずつの第1,第2上ビーム部42a,42b、第1,第2下ビーム部43a,43bでそれぞれ連結した平行四辺形型のロードセルとなっている。
【0069】
円形貫通孔4の外周は、左右方向に延びる第1,第2連続部44,45を除いた上下に、
図6の矢視B−B断面図である
図7に示されるように、深く掘り下げた第1上側凹部46a及び第1下側凹部47aが形成され、更に、上部連結溝40の上側に第2上側凹部46bが形成され、下部連結溝41の下側に第2下側凹部47bが形成される。
【0070】
円形貫通孔4内には、上記実施形態と同様に歪ゲージ13a〜13dが貼着され、円筒シール部材14によって密封される。
【0071】
ストッパ12は、上記実施形態と同様に、第2下ビーム部43bおよび可動部3の下側に、貫通溝11によって分離されて各起歪部に比べて十分大きい剛性を持つように形成される。
【0072】
その他の構成は、上記実施形態と同様である。