【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を満足する本発明の主題は、独立項1,14,15,32,37の特徴により特徴付けられる。
【0014】
従属項は、本発明の特に効果的な実施例に関する。
【0015】
本発明は、それ故に、往復動ピストンエンジンの構成要素の磨耗状態を監視する監視装置及び方法に関し、往復動ピストンエンジンは、シリンダカバー、及び、シリンダのシリンダ壁に設けられる走行表面を備えるシリンダを含み、シリンダにおいて、ピストンは、ピストン、シリンダカバー及びシリンダ壁がシリンダ内に混合気の燃焼用の燃焼スペースを形成するように、上死点と下死点の間で走行表面に沿って軸方向前後に移動可能に配置され、油収集デバイスがシリンダからの潤滑油の収集用に設けられて、所定の測定された量の潤滑油がシリンダから測定装置に供給可能である。本発明によれば、測定された量の潤滑油は、シリンダの走行表面から及び/又は燃焼スペースから及び/又はピストンのピストンリングパッケージから油収集デバイスに直接供給可能である。
【0016】
潤滑油の測定量が、受けスペース内に溜まって収集された潤滑油を含んでおらず、シリンダスペースから直接的に現に由来する潤滑油のみが測定に使用され、それ故に、異種材料と混ざっていないという、事実は、本発明による収集された潤滑油が、実質的に、ピストン、ピストンリング、シリンダ走行表面、ガス交換バルブ等のような、シリンダ構成要素の現在の磨耗状態を反映する情報のみを含むことを意味する。
【0017】
このため、初めて、測定時点に相関しない異物やシリンダライナから直接由来しない異物のような、異物の影響無しに、エンジン構成要素の現在の磨耗状態を監視することができる。
【0018】
できるだけリアルタイムの測定を実行するために、請求項に開示するような迅速な測定方法を使用することが好ましい。本発明による最も迅速な測定方法は、それ故に、エンジンの測定を実行するのに適し、特に、測定は、過渡的な動作状態に現にあるエンジンに関して実行されることができ、この場合、過渡的な動作状態は、測定中に変化するエンジンの回転数や、測定中に変化するエンジン負荷、若しくは、測定中に変化するエンジンの回転数及びエンジン負荷の組み合わせに関する。
【0019】
コスト効率が良く、装置の観点から簡易であり、特に、測定用に非常に少量の潤滑油しか必要としない、迅速な測定方法の特に効果的な実施例は、実質的には、測定キャパシタを使用し、測定キャパシタは、単一若しくは少なくとも非常に少ない数のエンジンサイクル中に収集された量の潤滑油が、測定可能な量の潤滑油でキャパシタを満たすのに十分であるように、幾何的に設定される。
【0020】
例えば、小さいプレートの離間距離を有するキャパシタは、例えばプレートキャパシタを使用することができる。
【0021】
円筒形プレートキャパシタも非常に効果的に使用することができ、円筒形プレートキャパシタは、互いにできるだけ近くに配置され互いに対して巻かれる2つのらせん状金属表面を含む。
【0022】
収集された潤滑油は、次いで、測定用の円筒形プレートキャパシタ内に吹き入れられることができ、測定を実行することができる。測定の結論に続いて、円筒形キャパシタは、例えば加圧エアにより、洗浄されることができ、従って、次のサイクルでは、新たに収集された潤滑油は、更なる測定のために円筒形プレートキャパシタ内に吹き入れられることができる。
【0023】
例えばとりわけ知られている測定ブリッジを用いて、好ましくは依然として周波数及び/又は温度に依存性があり、及び/又は、印加された電圧、温度若しくは他のパラメータの変動に依存性がある、複素インダクタンスを測定することができる。結論は、適切な数学的関数の評価により若しくは校正測定による比較によって、水、鉄、クロム、バナジウムのような金属のような異物に関して測定値から直接的に導くことができる。結論は、また、化学的異物、特に、酸化物や塩基等のような、汚染物質や成分を形成する鉄に関して導くことができ、従って、化学的組成の変化はアクセス可能であり、例えば硫黄、燐若しくは他の化学要素若しくは成分の要素濃度を判断することができる。
【0024】
キャパシタは、例えば、とりわけ知られた態様で電気回路内で使用されることができ、この電気回路は、また、所定の電導性のコイルを含み、それ故に、測定精度を増加させるため、従って、究極的には、潤滑油の必要な測定量を低減するため、他の電気要素とは関係なく所定の共振周波数の発信回路を形成する。
【0025】
かかる構成は、共振周波数の変化により非常に感度良くキャパシタの比誘電率若しくはコイルのインダクタンスの誘導率に反応する。これにより、非常に感度の高い測定装置が利用可能であり、これにより、非常に高い測定精度は、異なる物質に関して、かかる構成を持つ本発明により非常に少ないサンプル容積で、達成でき、この場合、異なる共振周波数の複数の振動回路が結合されることができる。
【0026】
この点、潤滑油は、異物に応じて誘導率の変化をもたらす適切に構成されたコイル内に充填されることができることは、本質的に理解されるべきである。本質的には、対応して用意されるキャパシタ若しくはコイルは、測定回路で結合されることができる。
【0027】
更に、またの他の次元、例えば測定周波数や測定振幅は、測定精度を高めるため、若しくは、例えば共振出現のような、ある現象を利用するために、適切に使用されることができる。従って、例えば、電気的若しくは異なる態様で動作される加熱は、測定本体、即ち例えば油が充填されたキャパシタに設けられることができ、従って、測定は、所定の温度で実行されることができ、この場合、例えば、ある緩和過程は特に良好に測定されることができる。更に、操作の対応する方法は、当業者に知られており、その使用により、関心のある次元は、特に良好に判断されることができる。
【0028】
測定精度を高めるために、例えば、他の次元は、とりわけ一般的に知られている適切なセンサにより判断されることができることは、本質的に理解されるべきである。従って、例えば、測定中の温度を監視するセンサ、若しくは、現在の測定のために利用可能な潤滑油の量を自動的に監視するセンサは、設けられることができ、従って、直接的な測定値の大きさは、対応して、必要に応じて補正されることができる。
【0029】
潤滑油は、好ましくは、シリンダ壁の適切な開口を通って収集され、従って、サンプルは、位置及び/又は時間に応じて取られることができる。これは、例えば起こることができ、これにより、潤滑油は、シリンダ壁の開口を通って収集システムに及び/又はシリンダ内及び/又はリングパッケージ内に存在する、環境に対する正圧に起因して測定システムに供給される。リングパッケージ内に存在する、環境に対する正圧は、2ストローク構成タイプ及び4ストローク構成タイプによる往復動ピストンエンジンに対して起こり、従って、本発明による測定原理は、2ストローク往復動ピストンエンジン及び4ストローク往復動ピストンエンジンの双方に対して使用することができる。
【0030】
しかし、また、掃気スリットを介した潤滑油の抽出は、効果的に可能である。ピストンが、下死点に向けた方向の移動時に受けスペースに開口する掃気スリットを通過するとき、ある量の潤滑油が常に保存されるピストンリング溝及び/又はピストンリングパッケージからの潤滑油は、ピストンリングパッケージ内の正圧により、潤滑油雲状物の形態で受けスペースに吹き入れられ、潤滑油は、次いで、適切な収集デバイスにより潤滑油雲状物から受けスペース内に収集される。
【0031】
当業者には知られているように、ガス圧は、ラビリンスシールにおいてのようにピストンリングを通過し、ピストンリングパッケージ内に存在する潤滑油と共にそこで保存され、次いで、ピストンリングパッケージがシリンダ壁の走行表面にシールした態様で存在する限り、実際に漏れ出ることができない。ピストンが、次いで、下死点UTに向けた方向のその圧縮移動時に掃気スリットを通過する場合、ピストンリングパッケージ内に貯められた潤滑油と共にピストンリングパッケージに貯められたガスが潤滑油雲状物の形態で掃気スリットを介して受けスペース内に急峻に漏れることができ、これにより、受けスペースは、本質的には、潤滑油で相当に汚染される。
【0032】
この一般的に負の側面の効果は、本発明により積極的に利用される。
【0033】
しかし、2ストロークタイプ及び4ストロークタイプによる非ターボチャージ型往復動エンジンに対する燃焼に続く膨張ストロークの終了時には、ピストンリングパッケージ内のガス圧が、環境圧より実質的に高くなくなる条件が生じ、従って、本発明により十分な大量の油が油収集デバイスにおいて生じないだろう。この環境は、負圧は、外部から印加されることができることで対処されることができ、例えば、使用される油/空気セパレータの出口空気側のブロアによりもたらされることができる。これから、十分な大きな圧力差は、再び、ピストンリングパッケージと、使用される油/空気セパレータの出口空気側との間で生まれ、これにより、油収集システム及び測定システムの機能も非ターボチャージ型往復動エンジンに対して保証される。
【0034】
本発明による監視装置の好ましい実施例では、油収集デバイスは、ピストンの下死点とシリンダカバーの間のシリンダ壁に設けられる油収集開口を含む。この点、油収集デバイスは、特に、制御デバイスにより作動可能な油収集バルブを含む。
【0035】
この点、往復動ピストンエンジンは、掃気スリットを有する長手方向に掃気されるエンジンであって、特に低速に稼動する2ストローク大型ディーゼルエンジンであることができ、油収集開口は、好ましくは、掃気スリットを介して出る潤滑油が油収集開口へと収集されるように、掃気スリットの領域に配置される。この点、往復動ピストンエンジンは、4ストローク原理で動作するエンジンであることもできることは、本質的に理解されるべきである。
【0036】
往復動エンジンが4ストローク往復動ピストンエンジンであるとき、油収集開口は、好ましくは、潤滑油が油収集開口を通ってシリンダから収集可能であるように、上死点でのピストンのクラウンの位置と下死点でのピストンの底側の位置との間でシリンダに配置される。特に好ましくは、シリンダでの油収集デバイスの適切な油開口は、上死点でのピストンクラウンの位置と下死点でのピストンのピストンリングパッケージの最も下側のリングとの間にある。潤滑油は、本質的には、シリンダ壁の油収集デバイスの開口のかかる構成によって、油収集デバイスを介して比較的ウエット化された4ストロークエンジンのピストンリングの全体の走行表面から収集可能である。
【0037】
油収集デバイスは、特に好ましくは、シリンダ壁と一体部分である、油収集スペースを含み、油収集スペース内に収集された潤滑油は、油収集開口を介して測定装置に供給可能である。
【0038】
しばしば、少なくとも2つの油収集開口は、周方向及び/又は軸方向に互いに離間してシリンダに配置され、特定の実施例では、油収集開口は、潤滑油の流量が設定可能となるように設計される。
【0039】
この点、効果的には、測定システムは、電磁測定ユニットを含み、特に、振幅依存、及び/又は、周波数依存、及び/又は、周波数から独立の、収集された測定された量の潤滑油の複素抵抗、複素電導率、AC電導率、電導率、透磁率及び/又は静電容量の判断のための測定ユニットを含み、監視装置は、好ましくは、小型化されてシリンダ壁内に直接設けられる。
【0040】
本発明の異なる実施例では、測定装置は、X線測定ユニットを含み、特に、収集された測定された量の潤滑油の蛍光特性、反射特性、吸収特性及び/又は透過特性の判断のためのX線測定ユニットを含む。
【0041】
更なる実施例では、測定システムは、収集された測定された量の潤滑油の光学的蛍光特性、光学的反射特性、光学的吸収特性及び/又は光学的透過特性の判断のための光学的測定ユニットを含み、光学的測定ユニットは、好ましくは、赤外線測定ユニット及び/又は紫外線測定ユニットである。
【0042】
実際には、測定システムは、特に、収集された測定された量の潤滑油の化学成分の判断のための化学的測定ユニットであることができ、この場合、測定システムは、収集された測定された量の潤滑油の硫黄、燐の含有率の判断のため、及び/又は、水、及び/又は、金属、特にバナジウム、クロム、及び/又は鉄の含有率の判断のための測定装置を含む。
【0043】
本発明は、更に、本発明による監視装置を有する往復動ピストンエンジン、特に2ストローク大型ディーゼルエンジン若しくは4ストロークエンジンに関し、また、往復動ピストンエンジンの構成要素の磨耗状態を監視する監視方法に関する。
【0044】
本発明による監視方法は、往復動ピストンエンジンを監視する監視方法に関し、往復動ピストンエンジンは、シリンダカバー、及び、シリンダのシリンダ壁に設けられる走行表面を備えるシリンダを含み、シリンダにおいて、ピストンは、ピストン、シリンダカバー及びシリンダ壁がシリンダ内に混合気の燃焼用の燃焼スペースを形成するように、上死点と下死点の間で走行表面に沿って軸方向前後に移動可能に配置される。この点、油収集デバイスがシリンダからの潤滑油の収集用に設けられ、作動状態において、所定の測定された量の潤滑油がシリンダから測定装置に供給される。本発明によれば、測定された量の潤滑油は、シリンダの走行表面から及び/又は燃焼スペースから及び/又はピストンのピストンリングパッケージから油収集デバイスに直接供給される。
【0045】
本発明による監視方法を実行するために、油収集デバイスは、好ましくは、ピストンの下死点とシリンダカバーの間のシリンダ壁に設けられる油収集開口を含む。
【0046】
油収集デバイスは、特に、制御デバイスにより作動可能な油収集バルブを含み、作動状態において、所定の量の潤滑油がシリンダから出て離れるように導かれることができる。
【0047】
この点、往復動ピストンエンジンは、例えば、掃気スリットを有する長手方向に掃気されるエンジンであって、特に低速に稼動する2ストローク大型ディーゼルエンジンであり、油収集開口は、動作状態において掃気スリットを介して出る潤滑油が油収集開口を通って収集されるように、掃気スリットの領域に配置される。本発明による監視方法は、本質的に、4ストローク原理で動作するエンジンに対しても満足のいく態様で使用されることができることは、本質的に理解されるべきである。
【0048】
油収集デバイスは、特に好ましくは、本発明による監視方法を実行するために油収集スペースを含み、油収集スペースは、好ましくはシリンダ壁と一体部分であり、油収集スペース内に収集された潤滑油は、測定装置に供給可能であり、特に油収集開口を介して供給されることもできる。
【0049】
実際に、一般的に少なくとも2つの油収集開口は、シリンダの異なる位置から潤滑油のサンプルを取ることができるように、周方向及び/又は軸方向に互いに離間してシリンダに配置され、従って、サンプルの潤滑油は、シリンダ内の異なる位置から取ることができ、この場合、油収集開口は、潤滑油の流量が設定されることができるように、好ましくは、潤滑油の流量が自動的に設定されることができるように、設計される。
【0050】
本発明による監視方法を実行するために、測定システムは、特に好ましくは、電磁測定ユニットを含み、特に、振幅依存、及び/又は、周波数依存、及び/又は、周波数から独立の、収集された測定された量の潤滑油の複素抵抗、複素電導率、AC電導率、DC電導率、透磁率及び/又は静電容量の判断が実行される。
【0051】
更なる実施例では、測定システムは、X線測定ユニットを含み、特に、収集された測定された量の潤滑油の蛍光特性、反射特性、吸収特性及び/又は透過特性の判断が実行される。
【0052】
更なる特別な実施例では、測定システムは、光学的測定ユニットを含み、特に、収集された測定された量の潤滑油の光学的蛍光特性、光学的反射特性、光学的吸収特性及び/又は光学的透過特性の判断が実行され、赤外線測定ユニット及び/又は紫外線測定ユニットが好ましくは光学的測定ユニットとして使用される。
【0053】
実際には、測定システムは、しばしば、化学的測定ユニットを含み、収集された測定された量の潤滑油の化学成分の判断が実行され、この場合、収集された測定された量の潤滑油の硫黄、燐の含有率、及び/又は、水、及び/又は、金属、特にバナジウム、クロム、及び/又は鉄の含有率が、特に好ましくは測定ユニットにより判断される。
【0054】
測定装置で記録されたデータは、評価され、特に、ルックアップテーブル、及び/又は、所定の数学関数、及び/又は、校正により評価され、特に、往復動エンジンの構成要素の磨耗状態が判断され、特に、ピストン、ピストンリング、シリンダ壁の走行表面、ガス交換バルブ、及び/又は異なるエンジン構成要素の磨耗状態が判断される。
【0055】
収集された測定された量の潤滑油の測定の評価は、特に好ましくは、エンジンサイクル毎に実行され、所定の測定された量の潤滑油は、特に好ましくは、所定数のエンジンサイクル中に収集され、測定は、所定の測定された量の潤滑油に基づいて、実行され、評価される。
【0056】
完全な測定データの評価を通して、例えば所定のエンジン構成要素の整備のための整備時点は、好ましくは、自動的に判断される。
【0057】
往復動ピストンエンジンは、本質的には、収集された測定された量の潤滑油の測定結果に基づいて制御及び/又は調整されることができる。
【0058】
実際に特に関連する本発明の特別な実施例は、“自己調整潤滑システム”であり、即ち、実際に全ての動作条件下で、シリンダライナの周方向及び軸方向の双方において、油膜の非常に均一で効率的な特性を保証すると共に、油膜への負荷を減らし油膜の劣化を防ぐ実質的に電子制御された潤滑シリンダである。
【0059】
本発明は、対応する潤滑膜特性が所定のパラメータ境界に一致し若しくはそれより下方又は上方に越えた場合に、例えば潤滑油供給速度、潤滑油の鉛直及び/又は水平方向の分布、噴射周期等のような、潤滑シリンダの動作パラメータの一定の新しい調整に着目する。更に、潤滑及び潤滑油膜の品質及び/又は性能は、例えば負荷、掃気される空気の湿度、燃料内の硫黄の含有率、燃料の品質、潤滑油の品質等のような、エンジンが動作する動作条件に依存する。
【0060】
例えば、2つ以上の油収集開口が、周方向及び/又は軸方向に互いに離間してシリンダに配置される、例えば、シリンダの異なる位置でシリンダライナの走行表面から若しくはピストンメインパッケージから直接的に潤滑油を収集し、そこから潤滑油を解析し、本発明による測定装置によりシリンダの全体の走行表面に亘って潤滑油膜の特性の分布の“マップ”の類を生成することができる。この際、潤滑油膜の均一な性能及び品質がシリンダの全体の走行表面に亘って永久的且つ自動的に保証されるように、シリンダの走行表面への潤滑油の供給は、適切な制御及び/又は調整を介して得られた測定データから時間及び/又は位置に応じて制御及び/又は調整されることができる。
【0061】
図1に概略的に示すように、潤滑油9は、好ましくは、第1油収集開口81にて上側領域OBからと、シリンダ3の第2油収集開口82にて下側領域UBから別々に収集され、このようにして収集された潤滑油9の特性、例えばアルカリ度(BN値)、鉄含有率、水含有率等は、2つの測定装置M1,M2で別々に解析され、データ取得ユニットを備えるデータ処理設備DVに供給される。本例では、下側の第2油収集開口81は、掃気スリット11の領域にあり、従って、潤滑油9は、下側の第2油収集開口81を介してピストンリングパッケージから収集される一方、上側の第1油収集開口は、シリンダ3の走行表面から直接的に潤滑油を収集する。
【0062】
この点、シリンダ3は、明瞭化のために
図1では図示されないが、とりわけ知られた態様で設けられる複数の潤滑油ノズルを有し、これにより、新鮮な潤滑油は、所定の方式でシリンダ3の走行表面51に付与されることができる。この点、複数の潤滑油ノズルは、シリンダ3にて互いに離間して周方向及び鉛直方向の双方に設けられる。
【0063】
データ処理設備DVは、例えば潤滑油の量、シリンダ内への潤滑油の供給頻度等のような、潤滑油に対する新しい供給パラメータZPを、シリンダライナ3の位置に応じてシリンダライナ3におけるピストン3のピストンリングパッケージの潤滑油9の別々に測定された特性から決定し、これにより、所定の正規値パラメータからの潤滑油膜の偏差が再び補償され、従って、潤滑油膜は、本発明により各時点及びシリンダ3の走行表面51上の各位置で最適化されることができる。新たに決定された新しい供給パラメータZPは、更に、潤滑油コントローラSKに供給され、潤滑油コントローラSKは、複数の潤滑ノズルを介した潤滑油9の更なる供給を設定し、従って、潤滑油膜は、上述のようにシリンダ3の全体の走行表面51に亘って最適化される。
【0064】
図1による特別な実施例において、重要なことは、潤滑油9は、シリンダ3の上側領域OBとシリンダ3の下側領域UBとから別々に収集され、解析されることである。シリンダ3の上側領域OBで収集される潤滑油9は、例えば、走行表面51から直接的に由来する。それにより、シリンダ3の上側領域OBにおける油収集開口81は、ピストン6が油収集開口81を通過しないときに潤滑油9のサンプルを取ることが保証される。これに対して、掃気スリット11での下側の油収集開口81は、次いで、ピストン6が掃気スリット11を通過するときに潤滑油9のサンプルを正確に収集する。それにより、シリンダ3の下側領域UBに収集された潤滑油9のサンプルは、ピストン6のピストンリングパッケージから直接由来する。これは、ピストンリングパッケージ内の正圧は、掃気スリット11を介して排出され、これに伴い、ピストンリングパッケージ内に収集された潤滑油9は、ピストンリングパッケージ外に噴き出され、従って、潤滑油9のサンプルは、下側領域UBの油収集開口81を通ってピストンリングパッケージ外へと噴出される潤滑油9から取ることができるためである。
【0065】
例えば、シリンダ内の潤滑油のBN値が最適化されるべきである場合、これは、次の態様で達成されることができる。潤滑油のBN値は、当業者に知られるように、潤滑油のアルカリ挙動の指標、即ちアルカリ度の指標である。この点、潤滑油は、あるアルカリ度を有さなければならない。これは、非常に攻撃性のある酸は、例えば、燃焼プロセスに起因して、シリンダ内に発生し、この酸は、できるだけ中和される必要があり、従って、この酸が、ピストン、走行表面、ピストンリング、出口バルブ等のような、シリンダ内の個々の構成要素をできるだけ攻撃しないようにするためである。
【0066】
このため、特別なエンジン、動作条件及び他の動作パラメータに依存することができるシリンダ内の潤滑油の最小のBN値が必要とされる。
【0067】
この点、本発明による監視方法の特別な実施例では、例えばピストンリングパッケージ内に収集された潤滑油に対する、BN値は、例えば所定の正規値BN=5を有することができる所定の最小BN値へと初期調整される。この所定の正規値BN=5は、本質的には、異なる動作条件に対して若しくは異なるエンジンにおいて、BN=5以外の非常に異なる値を有することができる。
【0068】
この点、例えばBN=5の、所定の正規値は、可能な場合は、超えられるべきでない。これは、正規値は、供給される潤滑油の量に対する指標であり、コスト単独の理由で、同時に最適化及び/又は最小化されるべきであるためである。ピストンリングに存在する潤滑油は、膨張ストローク時に走行表面からシリンダライナの全体の高さに亘って収集されるので、BN値は、ピストンリングパッケージから由来する潤滑油の軸方向の走行表面の高さに亘るBN値の分布の特定の平均値を表す。
【0069】
このため、BN値は、実質的に、シリンダ軸に沿った鉛直方向でシリンダライナの高さに亘って均一に設定されることができ、この場合、掃気スリットの領域のピストンリングパッケージから噴き出される潤滑油のBN値にできるだけ等しくなるように、シリンダの上側領域から由来する潤滑油のBN値を設定するように試みられる。理想的には、シリンダの上側領域からの潤滑油のBN値は、掃気スリットの領域で測定されるとき、ピストンリングパッケージからの潤滑油のBN値と等しい。この場合、シリンダ軸に沿ったBN値は、実質的に等しくなければならない。
【0070】
この点、BN値の調整は、供給パラメータの設定を介して、即ち、好ましくは個々に作動可能であり若しくはそれぞれの特別な集合で別々に作動可能である潤滑油ノズルを介した潤滑油の供給の調整を介して、生じる。
【0071】
複数の油収集開口は、シリンダライナの周方向に設けられるので、BN値は、周方向に均一に設定されることもできることは、必然的に理解されるべきである。
【0072】
従って、潤滑油のBN値は、初めて、本発明により周方向と鉛直方向の双方で、シリンダの全体の走行表面上で実質的に同一の値を均一に設定することができ、この場合、所定の最適なBN値、例えばBN=5に同時に調整されるので、潤滑油消費の最小化及び最適化が追加的に達成される。
【0073】
また、潤滑油の他のパラメータは、本発明により、走行表面に亘って均一に、同様の態様で所定値に同様に完全に最適化されることができることは、必然的に理解されるべきである。
【0074】
更に、当業者には本質的に直ぐに明確であるが、最適化方法の上述のステップは、単なる例であり、特に、各ステップは異なる順序で発生してもよく、若しくは、追加のステップが導入されてもよく、若しくは、他の簡易な場合は、特別な最適化ステップは省略されてもよい。
【0075】
本発明は、更に、流体、特に油、具体的には往復動ピストンエンジン用の燃料若しくは潤滑油の成分を判断する測定装置に関する。この点、本発明による測定装置は、電磁測定ユニットを含み、特に、振幅依存、及び/又は、周波数依存、及び/又は、周波数から独立の、所定の測定された量の流体の複素抵抗、複素電導率、AC電導率、DC電導率、透磁率及び/又は静電容量の判断のための測定ユニットを含む。
【0076】
異なる実施例では、測定装置は、X線測定ユニットを含み、特に、測定された量の流体の蛍光特性、反射特性、吸収特性及び/又は透過特性の判断のためのX線測定ユニットを含む。
【0077】
更なる実施例では、測定装置は、測定された量の流体の光学的蛍光特性、光学的反射特性、光学的吸収特性及び/又は光学的透過特性の判断のための光学的測定ユニットを含み、光学的測定ユニットは、好ましくは、赤外線測定ユニット及び/又は紫外線測定ユニットである。
【0078】
実際には、測定装置は、しばしば、収集された測定された量の流体の化学成分の判断のための化学的測定ユニットを含み、この場合、特別な実施例では、測定システムは、収集された測定された量の流体の硫黄、燐の含有率の判断のための測定装置、及び/又は、水、及び/又は、金属、特にバナジウム、クロム、及び/又は鉄の含有率の判断のための測定装置である。
【0079】
本発明は、更に、流体、特に油、具体的には往復動ピストンエンジン用の燃料若しくは潤滑油の成分を判断する測定方法に関する。この点、本発明によれば、測定装置が使用され、測定装置は、電磁測定ユニットを含み、特に、振幅依存、及び/又は、周波数依存、及び/又は、周波数から独立の、収集された測定された量の潤滑油の複素抵抗、複素電導率、AC電導率、DC電導率、透磁率及び/又は静電容量の判断が実行されることができる。
【0080】
本発明による測定方法の異なる実施例では、測定装置は、X線測定ユニットを含み、特に、測定された量の流体の蛍光特性、反射特性、吸収特性及び/又は透過特性の判断が実行されることができる。
【0081】
更なる実施例では、測定装置は、電磁測定ユニットとして光学的測定ユニットを含み、特に、収集された測定された量の流体の光学的蛍光特性、光学的反射特性、光学的吸収特性及び/又は光学的透過特性の判断が実行されることができ、赤外線測定ユニット及び/又は紫外線測定ユニットが好ましくは光学的測定ユニットとして使用される。
【0082】
実際に特に関連する実施例では、測定装置は、化学的測定ユニットを含み、収集された測定された量の流体の化学成分の判断が実行されることができ、収集された測定された量の流体の硫黄、燐の含有率、及び/又は、水、及び/又は、金属、特にバナジウム、クロム、及び/又は鉄の含有率が特に好ましくは測定装置により判断される。
【0083】
具体的には、測定装置で記録されたデータは、評価され、特に、ルックアップテーブル、及び/又は、所定の数学関数、及び/又は、校正により評価され、結果として、往復動エンジンの構成要素の磨耗状態がそれから判断され、特に、特に、ピストン、ピストンリング、シリンダ壁の走行表面、ガス交換バルブ、及び/又は異なるエンジン構成要素の磨耗状態が判断される。
【0084】
好ましい実施例では、収集された測定された量の流体の測定の評価は、エンジンサイクル毎に実行されるが、若しくは、所定の測定された量の流体は、所定数のエンジンサイクル中に収集され、測定は、所定の測定された量の潤滑油に基づいて、実行され、評価される。
【0085】
本発明の測定方法の使用時、例えば、所定のエンジン構成要素の整備のための整備時点は、好ましくは、自動的に判断されることができ、若しくは、往復動ピストンエンジンは、また、収集された測定された量の潤滑油の測定結果に基づいて制御及び/又は調整されることができる。