特許第6346076号(P6346076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346076
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス固定用ブラケット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20180611BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   H02G3/30
   B60R16/02 620A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-241206(P2014-241206)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-103914(P2016-103914A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】埜嵜 博之
(72)【発明者】
【氏名】本多 正明
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−019865(JP,A)
【文献】 特開2006−143127(JP,A)
【文献】 特開2014−046782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを支持するためのワイヤハーネス固定用ブラケットであって、
ワイヤハーネスを留める留め具を固定する穴が形成された面を有する立ち上り部と、
前記立ち上がり部に対してほぼ直角に曲げられて他の部材に溶接される溶接面を有する固定部とを備え、
前記立ち上り部から前記固定部の前記溶接面の近傍に亘って凸状の補強ビードが形成されており、
前記固定部の両側の側面部は断面が凸状に形成されている
ことを特徴とするワイヤハーネス固定用ブラケット。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤハーネス固定用ブラケットであって、前記固定部の両側の側面部に形成された断面が凸状の領域は、前記固定部の前記補強ビードが形成されている領域から前記溶接面の領域に亘って形成されていることを特徴とするワイヤハーネス固定用ブラケット。
【請求項3】
請求項1記載のワイヤハーネス固定用ブラケットであって、前記固定部の前記溶接面は、スポット溶接により他の部材に固定されることを特徴とするワイヤハーネス固定用ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスを固定するブラケットに関し、特にワイヤハーネスを比較的高い位置で保持するのに適したワイヤハーネス固定用ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車のシートの下部には、電装部品用の配線を束ねたワイヤハーネスが引き回されている。このワイヤハーネスが車体と擦れて外側の被覆部分が摩耗して内部の配線が露出することによりショート不良が発生するのを防止するために、ワイヤハーネスを固定用ブラケットで保持して、ワイヤハーネスを宙に浮かせた状態で配線している。
【0003】
このようなワイヤハーネスを固定するワイヤハーネス固定用ブラケットについては、例えば特開2007−137084号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−137084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイヤハーネスを留め具を用いて金属製のワイヤハーネス固定用ブラケットに装着するときに、作業中に固定用ブラケットに力がかかって固定用ブラケットが変形してしまうのを防止するために、固定用ブラケットには、例えば図4及び図5に示すように、ワイヤハーネス固定用ブラケット40の立ち上がり部41から固定部42にかけて、補強用のビード43が形成されている。
【0006】
一方、ワイヤハーネス固定用ブラケット40は、車体部分45にスポット溶接で固定されて、車体からの振動を繰り返し受けても固定用ブラケットの位置がずれることのないように、しっかり固定されている。
【0007】
ワイヤハーネス固定用ブラケット40を車体部分45にスポット溶接で接合するためには、スポット溶接機の溶接ヘッドである電極をワイヤハーネス固定用ブラケット40の溶接する部分と確実に接触させるために、ワイヤハーネス固定用ブラケット40のスポット溶接する領域は、補強用のビード43が形成されている領域から離れた領域44に限定される。
【0008】
このような条件のもとで、ワイヤハーネスが車体とこすれるのを防ぐために、図6に示すように、ブラケット60の立ち上がり部分61を伸ばして、ワイヤハーネス46を保持する留め具47を通す穴66の高さLを大きく(高く)するというニーズがある。
【0009】
このように、ワイヤハーネス46を保持する留め具47を通す穴66の高さLを大きく(高く)したときに、ワイヤハーネス46を留め具47で穴66に固定してワイヤハーネス固定用ブラケット60に装着する作業中にワイヤハーネス固定用ブラケット60に立ち上がり部61に図6で後ろ側から前方に倒すような大きな力が加わってしまった場合、ワイヤハーネス固定用ブラケット60の固定部62におけるスポット溶接された領域64と補強用のビード63の先端部分とのギャップGの領域に大きなモーメント力が加わってしまう可能性がある。このような大きなモーメント力がギャップGの部分にかかった場合、ブラケット60はギャップGの部分で折れ曲がってしまい、ワイヤハーネスの配線経路が変わってしまい、他の部品と接触してしまうことにより、事故につながってしまう恐れがある。
【0010】
本発明は、このようにワイヤハーネスの支持高さを高くした場合に、ワイヤハーネスのブラケットへの装着作業時にブラケットの車体へのスポット溶接個所の近傍に大きなモーメント力がかかっても、変形しないようなワイヤハーネス固定用ブラケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明では、ワイヤハーネスを支持するためのワイヤハーネス固定用ブラケットを、ワイヤハーネスを留める留め具を固定する穴が形成された面を有する立ち上り部と、立ち上がり部に対してほぼ直角に曲げられて他の部材に溶接される溶接面を有する固定部とを備えて構成し、立ち上り部から固定部の溶接面の近傍に亘って凸状の補強ビードを形成し、固定部の両側の側面部は断面を凸状に形成した。
そして、このワイヤハーネス固定用ブラケットの固定部の両側の側面部に形成された断面が凸状の領域は、固定部の補強ビードが形成されている領域から溶接面の領域に亘って形成されるようにした。
【0012】
更に、このワイヤハーネス固定用ブラケットの固定部の溶接面は、スポット溶接により他の部材に固定されるようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワイヤハーネスの支持高さを高くした場合に、ワイヤハーネスのブラケットへの装着作業時にブラケットの車体へのスポット溶接個所の近傍に大きなモーメント力がかかっても、変形しないようなワイヤハーネス固定用ブラケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例によるワイヤハーネス固定用ブラケットの斜視図である。
図2】本発明の実施例における図1のワイヤハーネス固定用ブラケットのA−A断面斜視図である。
図3】本発明の実施例における図1のワイヤハーネス固定用ブラケットのB−B断面斜視図である。
図4】従来のワイヤハーネス固定用ブラケットの斜視図である。
図5】従来にワイヤハーネス固定用ブラケットを図1の場合と反対の側から見た斜視図である。
図6】従来のワイヤハーネス固定用ブラケットの構造でワイヤハーネスの支持高さを高くした場合のワイヤハーネス固定用ブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ワイヤハーネス固定用ブラケットの固定部におけるスポット溶接された領域と補強用のビードの先端部分とのギャップ領域を含む断面の断面係数を大きくして、ブラケット固定部のスポット溶接された領域の境界部に大きなモーメント力が加わってもワイヤハーネス固定用ブラケットが折れ曲がってしまうのを防止したものである。
【0016】
以下に、本発明の実施例を、図を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1に、本実施例による金属製のワイヤハーネス固定用ブラケット10の外観を示す。
【0018】
本実施例によるワイヤハーネス固定用ブラケット10には、図4及び5を用いて説明した従来のワイヤハーネス固定用ブラケット40に形成していた側面が三角形状の補強用ビード43に代えて、断面が図3に示すような段差形状の補強用ビード13を形成した。
【0019】
また、本実施例によるワイヤハーネス固定用ブラケット10の立ち上がり部11は、図4で説明した従来のワイヤハーネス固定用ブラケット40の立ち上がり部41よりも高い。すなわち、ワイヤハーネス46を留め具47で固定する穴16の固定部12からの高さは、図6で説明した穴66の高さLに相当する。
【0020】
さらに、固定部12には、固定部12の両側面に沿って図2及び図3に示すように、断面が中央部と比べて立ち上がった段差形状部142と143とを成型した。図2図1のA−A断面を示し、図3は、図1のB−B断面を示している。固定部12の断面形状をこのように形成したことにより、図4乃至6に示した段差形状部142と143とが成型されていない断面形状が平坦である場合と比べて断面係数を大きくすることができ、図2及び3において図面に直角な方向に対する曲げ強度を増加させることができる。
【0021】
すなわち、図1に示したハーネス固定用ブラケット10の外観形状において、段差形状の補強用ビード13をハーネス固定用ブラケット10の立ち上がり部11から固定部12にかけて形成するとともに、固定部12の長手方向(固定部12に形成された補強ビード13の長手方向)に沿って両方の端部付近には、長手方向のほぼ全長に沿って段差形状部142と143とを成型した。
【0022】
このような形状のハーネス固定用ブラケット10は、図1で斜線を施した平坦な領域14が乗用車の車体部分45(図4参照)に、スポット溶接により接合され、固定される。この時、スポット溶接される領域14と固定部12における段差部13の先端部分との間にはギャップDが生じるが、固定部12の両側の端部付近に形成された段差部142と143とがスポット溶接される領域14から段差部13の先端部分に渡って形成されているので、スポット溶接される領域14と固定部12における段差部13の先端部分との間のギャップDの部分における断面係数を、図6に示したような段差部142と143とを形成しなかった場合と比べて大きくすることができ、この部分に大きなモーメント力がかかっても変形しにくくなっている。
【0023】
このように断面係数を大きくした固定部12を乗用車の車体部分45(図4参照)にスポット溶接により接合し固定した後に、ワイヤハーネス46を留め具47で立ち上がり部分の穴16に固定する。このワイヤハーネス46を留め具47で立ち上がり部分の穴16に固定する作業時に、ハーネス固定用ブラケット10の立ち上がり部11に大きな力がかけてしまう場合があるが、このような場合であっても、ギャップDの部分における断面係数が大きくなっているので、図6に示したような従来の形状のブラッケット60を用いた場合と比べて変形しにくくなっている。
【0024】
その結果、ワイヤハーネスの支持高さを高くした場合に、大きなモーメント力がスポット溶接される領域14と固定部12における段差部13の先端部分との間のギャップ部分にかかっても、ワイヤハーネス固定用ブラケット10は折れ曲がって変形してしまう可能性が低くなる。その結果、ワイヤハーネス固定用ブラケット10でワイヤハーネスを比較的高い位置で安定して支持することができ、ワイヤハーネスが他の部品と接触し被服部分が摩耗して内部の配線が露出してショート事故につながってしまう恐れが少なくなった。
【符号の説明】
【0025】
10・・・ワイヤハーネス固定用ブラケット 11・・・立ち上り部 12・・・固定部 13・・・補強用ビード 14・・・スポット溶接される領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6