(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0001】
近視又は近眼は、目の遠点が目からの無限遠よりも小さい状態である。このため、近眼は有限距離内にある物体しか明瞭に見ることができず、その遠距離の限界は近視の度合いが強くなるほど目に近くなる。進行した近視は、目の強膜の球が細長くなって(軸性近視)、目の後部内壁に位置する網膜が、目の距離の像焦点より後方に移動した結果である。この状態を矯正する際に、光発散又は「マイナス」レンズを使用して、網膜前方から網膜面まで後方へ収束光を移動させなければならない。マイナス・レンズは、眼鏡レンズ、コンタクト・レンズ、又は他の光発散眼科用器具のいずれでも、近眼が無限遠にある物体の明瞭さを取り戻すことを可能にする。
【0002】
正視化は、誕生から成人になるまで目が発達し成長し続けるプロセスであり、成人になるとこのプロセスは終了する。目が大きくなるにつれて、正視化により、光学要素の大きさとその屈折形状の両方が調整される。調整は通常、目の内部の化学的プロセスにより連係されて、目が正視として知られるバランスのとれた状態に収束し、あらゆる距離を明瞭に見るために補助器具を必要としない。完全には理解されていない理由で、正視化は必ずしもあるべき状態で進行せず、近眼(通常、進行性の近眼)又は、頻度は低いが遠視が残る。
【0003】
目の屈折状態は、目の形状、網膜の光のパターン、及び受ける視覚刺激の性質を含む多くの相互作用する影響によって進行すると仮定されている。加えて、化学的成長シグナルを開始するように統合された目の形状及びその周辺屈折状態の個体差がすべて、正視化の方向を決定する。このため、ある臨床的に観察可能な要因を評価することができる。
【0004】
近距離での作業及び読書(若年の健康な目による)の場合、水晶体及び毛様体筋の機構が水晶体の度数を高めて、無限よりも近くの物体に焦点を合わせる。より焦点の合った像を網膜に形成する目の内部光学のこのような作用を示すために、「調節」という用語が使用される。調節は、眼球自体に対するストレスをさらに強める内部毛様体筋及び外眼筋の使用を伴う。したがって、調節自体の局面は、近視の進行の危険性を高めると考えられる。調節ラグは、近視の被験者に通常見られる眼球異常であり、目が活字等の注視物の短焦点にラグを生じる。調節ラグは、近視を誘発する危険要因として示されている。
【0005】
近視は一般に、ある識別可能だがしばしば漠然とした、「近視の前駆症状」又は「学校近視」と呼ばれることのある徴候から始まる。前頭部頭痛、一過性の近く及び遠くの視覚のぼやけ、及び識字困難が、幼い学童の調節ストレス及び初期の近視の徴候である。近見作業により誘発される一過性の近視(NITM)は、通常、より年長の学生や成人に見られ、同様に表れる。これら2つの類似しているが別個の状態を総合的に表す用語は、仮性近視である。仮性近視は、目の屈折が断続的、一時的に近視に移行することであり、網膜前方の光の収束が、毛様体又は毛様体筋群の一過性の痙攣によって生じる。これにより、目の屈折度が一時的に増加する。ユーザが知覚する結果としては、遠見視力の低下がある。大部分の眼科医により、NITMは、近見作業に関連する徴候を永久的な近視の発症と関連付ける別の主な危険要因であると考えられている。
【0006】
本来、近視の制御は比較的若年の目に関与するものであり、コンタクト・レンズ又は眼鏡等の光学器具の設計又は処方の際に、近視をうまく妨害しようとするのであれば、若年者の特定の問題及び必要に対処しなければならない。矯正レンズの若年ユーザは、どのような形の光学的散乱にも非常に敏感であることがわかっている。これは、多くの度数バリエーションのある累進度数眼鏡レンズの使用を維持することが困難であることによって示される。また、従来の2焦点レンズにあるような光学的不連続による回折等の光学的欠点が、特定の不快感の原因となり、多くの若年ユーザによる長期使用を妨げる。さらに、多くの学齢期の若年者が行う長時間の近見作業のため、調節及び調節ストレスが、若年者による矯正レンズの使用を時には制限することになり得る不快感の原因となる。
【0007】
近視又は近視の進行を治療するための多くの光学的方法及び装置が先行技術で提案されているが、いずれにも、若年者による長期使用を妨げる面がある。治療方法及び装置が若年者により快適且つ確実に使用されなければ、近視の制御は実用的ではない。結果として、近視に対処するために使用可能な実際の解決法がない。調節ストレス、NITM、及び関連する仮性近視を含む近視の進行に関連する危険要因に対抗し、同時に若年者の特定の必要に対処して、有効な結果を得ることのできる光学レンズ及び治療方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、調節及び調節ラグストレスが近視に与える影響を減少させ、又はなくして、目の軸方向長さの成長に対抗する、近視の進行又は近視傾向に対処する方法を提供する。これらの効果は、連続した長期にわたる治療を可能にする方法で、ユーザに受け入れられる形で決定的に提供される。
【0009】
本発明は、網膜の中心窩部位に明瞭な遠見視力を可能にするように光学系が設けられる、近視の進行を遅らせ、又は停止させる方法を提供する。焦点深度を増加させて、調節及び調節ラグによるによるストレスを軽減させて近視の進行を遅らせ、ユーザによる連続した長期にわたる治療を可能にする。
【0010】
本発明による光学装置は、明瞭な視力の小さい中心ゾーンを含み、ここでは屈折度が中心度数から明瞭な視力の限界までゆっくりとではあるが連続して上昇する。この中心ゾーンは、有効な焦点深度を付随して増加させる、知覚可能なぼやけをユーザに対して発生する、より急速に増加する度数分布によって囲まれる。焦点深度を増加させることにより、目の調節がより緩和され、近視の進行に対するあらゆる影響とともに調節ストレスが減少する。同時に、目の焦点調節機構内の筋収縮を必要とせずに、物体を目の近くに位置決め可能にする、被写界深度の増加が生じる。本発明により提供される増加した焦点深度及び被写界深度によって、明瞭で快適な視力が得られるだけでなく、目を近視にする力も弱まる。
【0011】
本装置は物理的なピンホールではなく、ピンホールに似たものでもないが、同様に高い焦点深度効果をユーザに対して生じさせる。しかし、本発明には、物理的なピンホールに特有の光の消失や回折の増加という欠点がない。本装置は、好ましい度数分布を使用して入射「光線束」の大きさを減少させることにより、像面又は網膜に到達する光を遮断することなく、被写界深度及び焦点深度を増加させる。加えて、大部分の前駆近視の場合に見られる調節ラグが、本発明によって、より大きな焦点深度及び被写界深度に基づいて矯正される。潜在的ユーザの調節ラグは、通常0.25〜2.00ジオプタであることがわかっており、これは本発明の能力に十分に含まれる。
【0012】
増加した焦点深度の原因、すなわち焦点度数の平滑で連続した大きな上昇が、レンズ着用者の視覚野によって見つけられないことが、本発明の有効性にとって重要である。急激な表面又は度数の変化があると、着用者にとってレンズへの適応が困難になる。
【0013】
ここで提供される方法及び設計は、コンタクト・レンズ、眼球内レンズ、及び眼鏡レンズを含む、ヒトの視力を治療するために使用されるすべての従来のレンズに適用可能である。
【0014】
本発明のさらなる新規の態様及び利点は、以下の特定の実施例の説明及び添付図面から理解できよう。本発明の範囲は、前述した概要や以下の実例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されたものと同一の発明の態様を含む構成及び実施例を含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によるレンズ等の光学器具は、複数の連携した機能を提供する、連続した軸対称の度数分布を含む。レンズの中心部は、好ましくはユーザの遠見視力を矯正するために選択された度数分布を有する。距離矯正度数の周囲で、度数分布は、短い半径方向寸法にわたって急速に度数が増加して、ユーザの視力にぼやけ効果を生じさせる。この急速に上昇する度数の半径方向領域を、ここでは便宜上「ぼやけ」ゾーンと呼ぶ。本発明では、明瞭なゾーンを取り囲むぼやけゾーン内のぼやけの大きさを選択して、目がその距離における選択された詳細度を解像できないようにしている。この小さい孔を模倣したものにより、一部には抑制のぼやけに対するユーザの皮質反応のために焦点深度が増加し、これは、「同時ぼやけコントラスト」として知られる現象による、あるレベルの視力向上と考えられる。目の開口が、関連する焦点深度の増加とともに効果的に小さくなる。遠見視力度数を特定のユーザに適切に指定することにより、レンズの関連する焦点深度の増加が、ユーザが近見を試みたときに生じる調節ラグを少なくとも部分的に補償する。この補償又は「疑似」調節によって、より明瞭な視力を提供し、近視の進行に関連すると考えられる調節ストレス及び調節ラグストレスを減少させる。
【0017】
図1は、観察者から無限よりも小さい距離にある物体面P1で物体に焦点を合わせようとしている観察者の目10に関する、注視光学面P2と物体面P1(意図した又は所望の注視面)との関係を示す。観察者は、両目の焦点を物体に合わせようとする。このようにするために、それぞれの目がその光学(神経筋)機構を変化させ、調節して、目の光学を適切に変化させなければならない。しかし、目が完全に調節できないと、目は(実際の)注視光学面P2に焦点を合わせる結果となる。意図した物体面P1と、より遠くの注視光学面P2との差である寸法LAは、調節ラグとして知られる。この差を、2つの面の物体の焦点を網膜上に合わせるために必要な光学度数の差に関して表すこともできる。明確にするために観察者の両目が図示されているが、調節ラグはそれぞれの目に独立して存在する。
【0018】
調節ラグが存在する限り、観察者は、調節するための継続的努力や、網膜で知覚された焦点の合わない像から発生する皮質信号により生じる様々な形のストレスを受けることになる。
【0019】
図2は、「被写界深度」及び「焦点深度」の概念を示し、本発明の概念の適用を明確にするためにここに示される。焦点深度D1及び被写界深度D2は、目12及びその網膜14の光学系に関して示される。焦点深度D1は、焦点の合った像が知覚される寸法である。すなわち、焦点深度D1内では、知覚される像の明瞭さが効果的に同一となる。光学系からより近い又は遠い距離(焦点深度の外側)では、いかなる像の焦点も効果的に合うことはない。被写界深度D2は、見られる物体に関して、物体が焦点深度の領域内で像を形成し、これにより物体の焦点が合う寸法を指す。任意の光学系についての焦点深度D1及び被写界深度D2は、様々な光学系の特徴に依存する。
【0020】
このことから、遠位の物体の焦点を目の網膜14に合わせることのできる目12の特定の状態について、物体が観察者に対して等しく焦点の合う、目からの他の距離の範囲(被写界深度D2により定義される)があることが理解できる。
【0021】
物体20の焦点が網膜14に合った後に物体20が目12の方へ移動する状況で、物体20が被写界深度D2にとどまっている限り、目の調節機構は弛緩したままとなる。ひとたび物体が被写界深度から離れて、網膜14上の像22がぼやけていると知覚され始めると、調節系が反応し、目の毛様体がその平滑筋群を屈曲させて、レンズを目の中で屈曲させる。被写界深度D2(及び焦点深度D1)を増加させることができる場合、調節機構が弛緩したままである距離範囲も大きくなる。この現象は、目が焦点の合った像を維持するために呈する必要のない物体距離の変化に対する調節を表すため、自由調節又は「疑似調節」と考えられる。
【0022】
図3及び
図5は、本発明のぼやけゾーン及び度数分布の光学的効果を示す。
図3は、本発明によるレンズによって生じる細長の焦線を示す。代表的な光線30が、レンズ40を通過し網膜14に衝突するものとして示される。レンズ度数分布の影響により、中心窩における網膜14の中心で高密度の中心焦点が生じる。ぼやけ度数及びレンズ周辺度数分布の結果として、焦線の高密度中心の外側にまばらな光線34が生じる。これは、網膜14に対して中心網膜から周辺に衝突する。この焦点の合っていない光は、ユーザの視覚野により知覚又は認識されず、結果として、中心窩が受ける像の明瞭さが高まる。この抑制の局面により、さらに効果的に焦点深度が増加する結果となる。
【0023】
図5は、
図3の焦線に関する一連のスポット・ダイヤグラムである。
図4は、比較のために提示する、従来の球面単一度数レンズの焦線に関する一連のスポット・ダイヤグラムである。それぞれの連続では、左から右へ、レンズから網膜へ向かって距離が増加している。
図5の本発明のレンズについての増加した焦点深度が、本発明のレンズについてのすべてのダイヤグラムの中心で比較的高密度で示される。
図4の球面レンズについて、網膜の中心焦点を囲む、薄く離間したスポットの外側領域は、不完全なレンズ構成による球面収差のためである。
【0024】
焦点深度の増加及び周辺の扇形の光線の結果が、
図6及び
図7に見られる「E」チャートに部分的に示される。チャートは、周知のZemax(登録商標)光学系コンピュータ・プログラムを使用した分析により作成されたものである。
図6は、様々な瞳孔サイズを有する目についての、目からの物体距離範囲、すなわち25センチメートル(左)から無限(右)における、本発明によるレンズの分析を表す。
図7は、
図6の結果を生じさせるレンズと同一の頂点度数を有し、同一の瞳孔サイズ及び距離を有する球面レンズの同様の分析結果を示す。検査により、本発明のレンズが広い範囲の距離(被写界深度)を通して識別可能な像を提供することが示される。比較して、
図7の結果を生じさせるために使用される球面レンズは、無限遠及び比較的遠い距離(連続の最も右側)を除いて識別可能な像を提供しない。結果として、球面レンズに対する他の距離では、ユーザの視覚系による解像について、像の詳細が不十分となる。解像可能な像が、本発明のレンズにより、球面単一度数レンズよりも大きな距離範囲で得られる。このため、適切な距離矯正度数を有する本発明のレンズは、近くの物体に効果的に焦点を合わせるために、ユーザの目による調節をあまり必要としない。1つ又は複数のレンズの相対的な性能又は有効性を、関連する「E」チャート、又は光学装置により生成される像の同様の表現の実験的比較によってこのように評価することができる。代替として、特定の焦点深度データを、ここでの比較及び評価の目的で、他の公知の分析方法及び装置により、1つ又は複数の被験レンズについて得ることができる。
【0025】
前記の効果は光学的開口により生じるものと類似しているが、曖昧な境界を有する物理的な開口は本発明に含まれていない。
【0026】
図8は、本発明によるレンズの頂点からの半径方向寸法(x)を関数とした光学度数上昇の分布50を表すグラフである。度数上昇は、距離矯正度数(頂点度数)よりも高い度数である。中心に位置する遠見視力領域60は、遠見視力矯正のための頂点度数で有効な度数範囲内で変化する度数分布を有する。距離矯正度数は、ユーザから無限に離れた物体を見たときに明瞭な視力を提供する度数である。必要な距離矯正度数は、ユーザの特定の必要によって変化し得る。分布度数上昇は、最初は連続して、しかし半径の増加とともにゆっくりと生じ、必要な距離度数に有効な領域を提供する。これは、頂点から約0.5〜1.5ミリメートルの範囲の半径方向寸法にある設計点DPまで継続する。大部分のユーザに対して、完全な低光状態で十分に明瞭な遠見視力を提供するために、半径方向位置を最小値で又は最小値を越えて維持することが好ましい。必要な焦点深度増加のために、半径方向寸法を範囲の上端に、又は上端より下に制限する必要がある。設計点での度数上昇は、好ましくは+0.5〜+0.75ジオプタの範囲であるが、一部の設計について+1ジオプタまで高くしてもよい。これよりも高い度数では、大部分のユーザが遠見視力にぼやけを知覚する可能性があるとともに、低光状態で遠見視力が不十分なコントラストを有するおそれがある。
【0027】
設計点DPを越えると、度数がより急速に、最大度数値62に到達するまで連続して上昇する。設計点DPとピーク度数62との間のレンズ及び度数分布50の部分が、ぼやけゾーン64を画定し生成する。ぼやけゾーン64において急速に上昇する度数は、ユーザに、前述した網膜に対して周辺に衝突する焦点の合っていない光を発生する。設計点DPのすぐ外側で、度数分布が十分に急速に上昇して、遠見中のユーザに誘発されるぼやけ視力の結果を共に確実に生じさせ、瞳孔寸法の制限内に所望の必要な最大値が確実に到達することが重要である。最大値は、度数分布関係自体により定義されるか、又は度数分布がレンズの構成によって終了した結果となる。たとえば、ピーク度数の半径方向寸法を越えて、コンタクト・レンズを、従来レンズのキャリア部において一定の度数に調和させることができる。
図8では、度数分布50がピーク度数を越えて連続し、度数分布50が連続した度数関係の一部として定義され得ることが示される。この図及び以下の式において、説明する光学度数は特に接線度数であり、レンズの任意の点におけるサジタル度数又は平均度数とは幾分異なったものであり得る。この関係について理解し、ここで定義される接線度数を完全に使用して、特定のレンズ設計に取り組むことができる。同時に、レンズの検査は、サジタル度数の測定又は接線度数及びサジタル度数の平均を伴うことができる。光学系が、たとえばコンタクト・レンズの後面(目の上又は空中又は他の媒体中)等の他の光学的に有効な要素を備える場合、本明細書中の式によって前面を定義するために、これらの要素の光学度数を使用して所望の度数を調整し、表面度数分布を取得しなければならない。
【0028】
図6に関して説明したように、発生したぼやけは、ユーザの光学皮質系によって実際には抑制又は阻止され、ぼやけがユーザにより認識されることはない。しかし、これは、前述したように、いかなる散乱する回折局面も光学系にないことに依存する。
【0029】
設計点よりも高い度数上昇は、所望の焦点深度の増加を生じさせるために、頂点度数よりも実質的に大きくなければならない。好ましくは、ピーク度数上昇62が、コンタクト・レンズの場合+1〜+10ジオプタの範囲にある。しかし、一部のユーザについては、焦点深度の有効な増加をより低いピーク度数によってもたらすことができる。長期使用におけるユーザのぼやけ効果に対する主観的な許容度により、範囲の上限を実際に制御する。適切なピーク度数値は、ユーザの詳細、たとえばユーザの年齢及び必要な距離矯正並びに他の要因によって決めることができる。前記パラメータを使用するコンタクト・レンズでは、増加した焦点深度からの調節ラグの減少が、+0.25〜+2ジオプタの範囲で可能である。他の形状の屈折レンズについての適切なピーク度数は、それらの性質に応じてより大きく又は小さくすることができる。一部の適用では、ピーク度数が100以上であってもよい。
【0030】
平均的なヒトの目は、約+0.5ジオプタ以下の焦点深度を有する。一般に、+0.25の焦点深度の増加は、典型的なユーザの調節ラグに対抗するのに有効となる。+0.25〜+1.0ジオプタの焦点深度の増加は、予想される調節ラグを矯正し、且つ継続中の近視の進行を治療し、又は近視の発症を予防若しくは遅らせるのに十分なさらなる「疑似」調節を提供するのに有効であると示唆される。
【0031】
有効な前面度数分布は、回転対称レンズ系の度数上昇についての以下の度数例示式によって発生させることができる(球面、非球面、又はトーリック・ベース・カーブを全度数に加算しなければならない)。
【0032】
【数1】
ここで、Power(x)は頂点度数よりも高い度数上昇、xは中心からの半径方向距離、nは光学装置材料の屈折率、rは頂点(中心)の曲率半径、R(x)は以下の式2に示す関数xとしての曲率半径である。
【0033】
【数2】
ここで、z’(x)及びz”(x)は、それぞれ、度数の関数の形で以下の式3に示す関数z(x)の第1及び第2の導関数である。
【0034】
【数3】
ここで、Zは1〜100の範囲の値を有する形状係数である。
【0035】
数式3は、コンタクト・レンズの前面等の光学面のサジタル深さ寸法であるz(x)を定義する。z(x)により定義される形状が、頂点周りの回転面として適用されて、関連する所望の度数分布を提供する。頂点の曲率半径(r)を、特定の対象ユーザの目の形状、レンズ材料特性、及び必要な遠見視力矯正により、従来の方法で定義してもよい。
【0036】
形状係数Zは、度数分布の形状と最大度数ピークとを調整して、特定の要件を満たす手段を提供する。所望の度数形状及びピーク度数を生じさせるために最も適切なZ値を選択することは、試行錯誤の繰り返しによって達成され得、その経験は、所望の結果へ急速に収束することを示す。多くの例において1〜100の範囲の値が好ましいが、Zは任意の正数値を有することができる。
【0037】
前述したように、特定の光学系の焦点深度を、「E」チャート像形式の光学分析出力等のグラフ表現により表すことができる。「E」チャート等の各度数分布についての焦点深度の表現を検査した後に適切な選択をすることにより、異なる度数分布の反復及び/又は比較分析によって、焦点深度の増加を達成することができる。このような分析は、好ましくは、ユーザの目及び任意の装着レンズを含む光学系全体を通る光路に基づいて行われる。
【0038】
コンタクト・レンズでは、度数分布(及び表面形状)をどのような必要半径方向範囲に適用してもよく、その後、周辺矯正領域又は周囲のキャリアにスムーズに調和させることができる。前記数式を、数値的方法を使用して適用してもよく、デジタル形式に変えても表にしてもよい。他の数学的形式及び関係及び式があり、本明細書で明記された必要な特徴を有する同様の度数分布を提供するように考慮される。前記数式1〜3は、1つのこのような代替例のみを提供するものであり、限定的なものではない。たとえば、有効光学面の代替形状を、普遍光学式として知られるものの変形により提供することができる。
【0039】
前述した数式1〜3は、1つのこのような代替例のみを提供するものであり、限定的なものではない。たとえば、有効光学面の代替形状を、普遍光学式として知られるものの変形により提供することができる。別の形の普遍光学式を式4に表すことができる。
【0040】
【数4】
ここで、Sは形状係数であり、rは頂点半径であり、係数a、b、c等は、前述した通り、所望の本発明の機能を実行するレンズ形状及び対応する度数分布を提供するように実験的に決定することができる。数式4を前記数式1及び数式2に適用して、瞬間度数プロファイルを得ることができる。
【0041】
(実験的試験)
近視及び近視の進行の治療における本方法及び装置の有効性を、ヒヨコの被験体を使用して実験により試験した。様々な公知の理由で、過去に、光学器具及び方法を試験し研究するために、ヒヨコの研究が他者により使用されており、その結果がヒトの結果の予測に関連するものとして受け入れられている。
【0042】
マイナス度数レンズを装着した、孵化したばかりのヒヨコが、レンズ度数にほぼ等しい近視化を示すことが、証拠から示された。ヒヨコの研究を終了して、中心マイナス度数を本発明の増加した焦点深度度数分布と組み合わせた本発明の設計のレンズによって、ヒヨコにレンズが誘発する近視を抑制することができるか否かを判定した。
【0043】
方法:15羽のヒヨコを試験で使用した。PMMA製の、ベルクロ(登録商標)により取り付けられたレンズを、それぞれのヒヨコの目に近接させて一方的に装着した。15羽中8羽のヒヨコに、中心度数−10.00Dの本発明による試験レンズを装着した。比較的高い度数レベルが、ヒヨコの目の光学サイズに合わせたスケーリングの結果として使用され、これは、ヒトについて使用されるより低い度数に実質的に比例する。残りの7羽のヒヨコ(対照群)には、試験レンズと全く同一の物理パラメータの、中心度数−10.00Dの従来の球面レンズを装着した。それぞれのヒヨコについて、レンズを装着した目が治療した目であると考える。
【0044】
ヒヨコに適宜餌と水を与えて、14/10時間の明暗サイクルで生育した。装着したレンズは、測定及びレンズ洗浄のための短期間のみ取り外された。レンズ装着前(0日目)と3日目及び7日目(装着後)に、各ヒヨコの両目の屈折異常が検影法により測定された。治療した目と治療しない目との屈折異常の平均差(MDiff)が算出された。
【0045】
結果:治療した目と治療しない目との屈折異常の差は、0日目では両群ともわずか(p=1.00)であった。試験群のMDiffは−0.06D(±0.50)であり、異常絶対値の範囲は+1.00〜−0.50Dであった。対照群については、MDiffが+0.29D±0.76、値の範囲は+1.00〜−1.00Dであった。
【0046】
研究の7日目までに、試験レンズで治療したヒヨコは、治療した目が治療しない目に対してわずかに遠視になり、MDiffは+2.17D±2.71(p=0.32)、範囲は+6.00〜−1.00Dであった。この時点で、従来の球面制御レンズで治療したヒヨコは、治療した目が治療しない目に対して大幅により近視になった(p<0.0007、チューキー)(MDiffは−8.10D±3.07、範囲は−5.00〜−12.00D)。試験群及び対照群のMDiffは、7日目には大幅に異なっていた(p=0.0002、チューキー)。
【0047】
この短期間の研究の結果は、ヒヨコにレンズが誘発する近視が、本発明のレンズ設計及び現行の治療方法により影響され得ることを示している。試験レンズの中心領域が対照レンズと同一の度数(単一の均一な度数)を有し、中心領域の周辺の度数の分布のみが異なることに注目することが重要である。結果として、試験レンズを装着している試験ヒヨコの目は、対照ヒヨコが着用しているレンズの中心部から受けるものと同一の光学的刺激を受けたと言うことができる。目の成長反応の差につながる差は、中心度数の周辺のレンズ形状によるものであると言うことができる。
【0048】
特定の対象における若年者が連続使用するいかなるレンズも、特に、ユーザが回折光学効果に晒されることがなく、好ましくは極端な度数変化を含まないことが重要である。これは、若年者がこのような光学的局面に非常に敏感であることが確認されているためである。見る時に治療レンズを連続使用することは、近視及び近視の進行に対処する際の有効性にとって重要である。結果として、このレンズは、光学的に平滑な表面と度数分布とを提供しなければならない。
【0049】
前述した例示的な実施例はコンタクト・レンズに関するものであるが、同一の概念及び方法を、IOL等の他の屈折光学装置、外科的方法等のヒトの光学組織を変化させる方法、並びに同一の目的の他の同様の装置及び方法に適用することができる。他のレンズ形状では、設計点位置及び度数とピーク度数の大きさとの両方が、ここで示した例とは異なる。しかし、同一の結果が、度数分布の同一の形状及び特徴から提示され得る。目の前方で装着され本発明を使用して設計される眼鏡及びレンズの直径は、約20〜100mmの適切な直径寸法に拡大されなければならず、目の前方で外側へ10〜20ミリメートルの頂点度数変化に合わせて調整されなければならない。
【0050】
本発明のレンズを式の形で定義する場合、平滑な分布の要件を満たすために、度数分布の第1及び第2の導関数を連続させるべきである。デジタル化した表面輪郭によるもの等の他の手段でレンズを定義してもよく、結果として得られるレンズ度数を連続した第1及び第2の導関数を有する1つ又は複数の度数分布関係により記述することができる場合、又はさもなければ度数分布が同一の機能的結果をもたらす場合に、レンズは平滑さの要件を満たすことができる。
【0051】
前述した説明は例としてのみ提示される。特許請求の範囲に記載された本発明の概念の他の変形形態が、当業者に自明であろう。現在及び将来における公知の代替装置及び材料の適応及び組込みも考えられる。本発明の意図した範囲が、以下の特許請求の範囲により定義される。