【実施例】
【0299】
実施例1:方法と材料
炭水化物の測定と分析
Regina et al.,(2006)の方法を使用して、発生中および成熟コムギ穀粒の双方からデンプンを小規模に単離した。大規模デンプン抽出は、Regina et al.,(2004)の方法に従って実施した。Megazyme(Bray,Co Wicklow,Republic of Ireland)によって提供される全デンプン分析キットを使用して、デンプン含有量を測定し、成熟、未製粉穀粒重量の百分率として、重量を基準にして計算した。次にデンプン含有量を対照植物と比較した。全穀粒重量からデンプン重量を差し引いて穀粒の全非デンプン含有量を得て、総重量の低下がデンプン含有量の低下に起因するかどうかを判定した。
【0300】
デンプンサンプルのアミロース含有量は、軽微な修正を加えたMorrison and Laignelet(1983)の比色分析(ヨウ素滴定)法によって、次のように測定した。およそ2mgのデンプンを正確に秤量して(精度0.1mg)、蓋にゴム座金を装着した2mlのネジ蓋管に入れた。脂質を除去するために、デンプンに1mlの85%(v/v)メタノールを混合し、時々ボルテックスしながら、管を65℃水浴中で1時間加熱した。13,000gで5分間の遠心分離後、上清を注意深く除去して、抽出ステップを繰り返した。次にデンプンを65℃で1時間乾燥し、2mgのデンプン(上記のように秤量)あたり1mlのUDMSOを使用して、尿素ジメチルスルホキシド溶液(UDMSO;1体積の6M尿素に対して9体積のジメチルスルホキシド)に溶解した。混合物を即座に激しくボルテックスして、95℃の水浴内で1時間、断続的にボルテックスしてインキュベートし、デンプンを完全に溶解させた。デンプン−UDMSO溶液(50μl)のアリコートを、1mlの水あたり2mgのヨウ素および20mgのヨウ化カリウムを含有する、20lのI
2−KI試薬で処理した。混合物を水で1mlにした。200lをマイクロプレートに移し、Emax Precision Microplate Reader(Molecular Devices,USA)を使用して吸光度を読み取り、620nmにおける混合物の吸光度を測定した。0〜100%のアミロースと100%〜0%のアミロペクチンとを含有する標準サンプルをジャガイモアミロースおよびトウモロコシ(またはジャガイモ)アミロペクチン(Sigma)から作成し、試験サンプルと同様に処理した。標準サンプルの吸光度から得られた回帰方程式を使用して、吸光度値からアミロース含有量(アミロース百分率)を判定した。非脱分枝デンプンのアミロース/アミロペクチン比の解析はまた、Case et al.,(1998)に従って実施してもよく、またはBatey and Curtin,(1996)によって記載される脱分枝デンプン分離のための90%DMSOを使用したHPLC法によって実施してもよい。
【0301】
アミロースデータの統計学的分析は、8
thedition of Genstat for Windows(登録商標)(VSN International Ltd,Herts,UK)を使用して実施した。
【0302】
デンプン中の鎖長分布は、デンプンサンプルの脱分枝後に、Morell et al.,(1998)に従って、キャピラリー電気泳動ユニットを使用して、フルオロフォア支援炭水化物電気泳動(FACE)によって分析した。デンプンサンプルの糊化温度プロファイルは、Pyris 1示差走査熱量計(Perkin Elmer,Norwalk,CT,USA)内で測定した。デンプン溶液の粘度は、例えばBatey et al.,(1997)で報告される条件を使用して、Rapid−Visco−Analyser(RVA,Newport Scientific Pty Ltd,Warriewood,Sydney)上で測定した。パラメータ測定には、ピーク粘度(最大加熱糊化粘度)、保持強度、最終粘度、および糊化開始温度が含まれた。小麦粉またはデンプンの膨潤体積は、Konik−Rose et al.,(2001)の方法に従って測定した。水の取り込みは、規定温度の水に小麦粉またはデンプンサンプルを混合し、続く糊化物質の回収の前後にサンプルを秤量して判定した。
【0303】
デンプン顆粒形態は、顕微鏡検査で分析した。Leica−DMR複合顕微鏡を使用して、普通光および偏光の双方の下で水中の精製デンプン顆粒懸濁液を検査して、デンプン顆粒の形態を判定した。Joel JSM 35C装置を使用して、走査型電子顕微鏡を実施した。精製デンプンを金でスパッタ被覆して、15kVおよび室温で走査した。
【0304】
Megazyme(Bray,Co.Wicklow,Republic of Ireland)から提供されるキットを使用して、β−グルカンレベルを判定した。
【0305】
内胚乳中のタンパク質発現の解析
内胚乳中のSBEI、SBEIIa、およびSBEIIbタンパク質の特異的発現、特にこれらのタンパク質の発現レベルまたは蓄積レベルをウエスタンブロット法によって分析した。内胚乳を全ての母体組織から切り離し、5mMのEDTA、20%グリセロール、5mMのDTTおよび1mMのPefablocを含有する、600μlの50mMリン酸カリウム緩衝液(42mMK
2HPO
4および8mMKH
2PO
4)、pH7.5中で、およそ0.2mgのサンプルを均質化した。粉砕サンプルを13,000gで10分間遠心分離し、上清をアリコートにして使用時まで−80℃で凍結した。総タンパク質量推定のために、0.25mg/mlのBSA標準の0、20、40、60、80、および100μlのアリコートを使用して、BSA標準曲線を作成した。サンプル(3μl)を蒸留水で100μlにして、1mlのCoomassie Plus Protein試薬を各サンプルに添加した。標準曲線からの0 BSAサンプルを空試験として使用して、5分後に595nmで吸光度を読み取り、サンプル中のタンパク質レベルを判定した。0.34MトリスHCl(pH8.8)、アクリルアミド(8.0%)、過硫酸アンモニウム(0.06%)、およびTEMED(0.1%)を含有する8%非変性ポリアクリルアミドゲル上で、各内胚乳からの20μgの総タンパク質量を含有するサンプルを分離した。電気泳動に続いて、Morell et al.,1997に従って、タンパク質をニトロセルロース膜に移し、SBEIIa、SBEIIbまたはSBEI特異的抗体と免疫反応させた。成熟コムギSBEIIaのN末端のアミノ酸配列AASPGKVLVPDGESDDL(配列番号16)を有する合成ペプチドを使用して、コムギSBEIIaタンパク質(抗wBEIIa)に対する抗血清を作成した(Rahman et al.,2001)。AGGPSGEVMI(配列番号17)を使用して、N末端合成ペプチドと類似様式で、コムギSBEIIb(抗wBEIIb)に対する抗血清を作成した(Regina et al.,(2005)。このペプチドは成熟SBEIIbペプチドのN末端配列に相当し、さらにオオムギSBEIIbタンパク質のN末端と同一であると考えられる(Sun et al.,1998)。N末端合成ペプチドVSAPRDYTMATAEDGV(配列番号18)を使用して、類似様式でコムギSBEIに対するポリクローナル抗体を合成した(Morell et al.,1997)。このような抗血清は、合成ペプチドで免疫化したウサギから標準法に従って得られた。
【0306】
SBEのための酵素アッセイ。全ての3つのイソ型、SBEI、SBEIIa、およびSBEIIbの活性を検出する分枝酵素の酵素活性アッセイは、軽微な修正を加えたNishi et al.,2001の方法に基づいた。電気泳動後、10%グリセロールを含有する50mMのHEPES、pH7.0でゲルを2回洗浄し、50mMのHEPES、pH7.4、50mMのグルコース−1−リン酸、2.5mMのAMP、10%グリセロール、50Uのホスホリラーゼ、1mMのDTT、および0.08%マルトトリオースからなる反応混合物中で室温で16時間インキュベートした。0.2%(W/V)I
2および2%KI溶液で、バンドを視覚化した。SBEI、SBEIIa、およびSBEIIbイソ型の比活性は、これらの電気泳動条件下で分離された。これは、抗SBEI、抗SBEIIa、および抗SBEIIb抗体を使用した、免疫ブロット法で確認された。各バンドの強度を測定するTotalLabソフトウェアパッケージ(Nonlinear Dynamics Ltd,Newcastle,UK)を使用した免疫ブロットの濃度測定分析を実施して、各イソ型の酵素活性レベルを判定した。
【0307】
デンプン分枝酵素(SBE)活性は、例えばホスホリラーゼ刺激アッセイなどの酵素アッセイによって測定されてもよい(Boyer and Preiss,1978)。このアッセイは、ホスホリラーゼAによるメタノール不溶性ポリマー(α−D−グルカン)へのグルコース−1−リン酸組み込みの、SBEによる刺激を測定する。SBEの特定イソ型の活性は、Regina et al.,2004に記載されるようにして、個々のイソ型の精製に続いてこのアッセイで測定し得る。全可溶性タンパク質抽出物は、上述の抽出緩衝液で予備平衡化された3mlのβ−シクロデキストリン(β−CD)アフィニティカラムに適用された。カラムは、製造会社の使用説明に従ってβ−CDをエポキシ活性化セファロース6B(Amersham Biosciences,Uppsala,Sweden)にカップリングして調製された。リン酸緩衝液中の1%β−CDを使用して結合タンパク質(SBE含有)を溶出し、次に緩衝液A(20mMのリン酸緩衝液、pH8.0、1mMのEDTA、および1mMのDTT)に対して透析した。緩衝液Aで予備平衡化された1mlのMonoQカラム(Amersham Pharmacia)を使用して、透析サンプルをアニオン交換クロマトグラフィーで分離した。非結合タンパク質の溶出後、緩衝液Aに緩衝液B(500mMのリン酸緩衝液、pH8.0、1mMのEDTA、1mMのDTT)を添加して、30分間の直線濃度勾配を適用して、結合タンパク質を溶出した。
【0308】
SBE活性は、グルカンポリマー分枝から生じるグルカン−ポリヨード複合体の吸光度の低下を測定する、ヨウ素染色アッセイによっても測定し得る。SBE活性はまた、イソアミラーゼ消化に続いて、基質としての還元アミロースからの還元末端の生成を測定する、アッセイ分枝結合によってアッセイし得た(Takeda et al.,1993a)。好ましくは、活性はSBEI活性の不在下で測定される。SBEのイソ型は異なる基質特異性を示し、例えばSBEIがアミロースの分枝においてより高い活性を示すのに対し、SBEIIaおよびSBEIIbはアミロペクチン基質に対してより高い分枝率を示す。イソ型はまた、それが移入されるグルカン鎖の長さに基づいて区別されてもよい。SBEタンパク質はまた、本明細書に記載されるものなどの特異的抗体を使用して測定されてもよい。好ましくは、SBEII活性は、穀粒の成長中に発生中の内胚乳で測定される。SBEIIタンパク質レベルは、好ましくは、ウエスタンブロット分析などの免疫学的方法で、タンパク質がなおも存在する成熟穀粒中で測定される。
【0309】
コムギ植物のDNA分析
形質転換コムギ植物または導入遺伝子の存在について試験される植物のPCR分析は、Stacey and Isaac,(1994)によって記載されるミニプレップ法を使用して、1〜2cm
2の新鮮な葉材料から抽出されたゲノムDNA上で実施した。ヘアピン型RNAコンストラクトの存在を判定するPCRアッセイでは、SBEIIa遺伝子からの断片(462bp)を増幅するようにデザインされた、プライマーSBEIIa−For:5’−CCCGCTGCTTTCGCTCATTTTG−3’(配列番号19)およびSBEIIa−Rev:5’−GACTACCGGAGCTCCCACCTTC−3’(配列番号20)を使用した。反応条件は、次のとおりであった:「ホットスタート」(94℃、3分間)と、それに続く30サイクルの変性(95℃、30秒間)、アニーリング(55℃、30秒間)、延長(73℃、2分間)と、それに続く1サイクルの73℃(5分間)。反応生成物は、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した。
【0310】
凍結乾燥粉砕組織からの大規模(9ml)抽出からのDNA上で、サザンブロット法ハイブリダイゼーション分析を実施した(Stacey and Isaac,1994)。DNAサンプルを0.2mg/mlに調節し、HindIII、EcoRI、およびKpnIなどの制限酵素で消化した。Stacey and Isaac(1994)により記載されるようにして、制限酵素消化、ゲル電気泳動、および真空ブロッティングを実施した。ds−SBEIIコンストラクトのイントロン3領域を含むジゴキシゲニン(Digoxygenin)標識プローブは、McCreery and Helentjaris,(1994)の方法に従って、PCRにより作成された。プローブのサザンブロットへのハイブリダイゼーションおよび化学発光による検出は、McCreery and Helentjaris,(1994)の方法に従って実施した。
【0311】
アグロバクテリウム(Agrobacterium)(Agrobactaerium)によるコムギの形質転換
virプラスミドpAL4404およびpSB1を保有する、武装解除(disarmed)アグロバクテリウム・ツメフアシェンス(Agrobacterium tumefaciens)LBA4404株に、コムギの形質転換のための遺伝子コンストラクトを電気穿孔によって導入し、スペクチノマイシン添加培地上での選択がそれに続いた。形質転換アグロバクテリウム(Agrobacterium)株を固化YEP培地上で27℃で2日間インキュベートした。次に細菌を収集し、コムギ接種のために、400mMのアセトシリンゴンを含有するTSIM1(100mg/lのミオイノシトール、10g/lのグルコース、50mg/lのMES緩衝液を添加したMS培地、pH5.5)中に650nmで2.4の光学濃度で再懸濁した。
【0312】
コムギ植物(変種NB1、Nickerson Seeds Ltd,Rothwell,Lincs.から得られる春コムギ変種)を22/15℃の日中/夜間温度で、1日に16時間の光を与えるよう補い、温室内で栽培した。開花後およそ14日間(およそ1mmの胚長)で、50cmの分蘖柄を含めて分蘖を収穫した。次に分蘖から止め葉以外の全ての葉を除去し、止め葉を清浄にして汚染真菌胞子を除去した。次に各小穂の苞穎、および最初の2個の小花からの外穎を注意深く除去して、未熟種子を露出した。通常、各小穂中のこれらの2個の種子のみを露出した。花序の全長に沿ってこの手順を実施した。次に簡潔な表面滅菌として、穂に70%IMSを噴霧した。
【0313】
10μlのHamiltonシリンジを使用して、全ての露出種子が接種されるように、ほぼ胚盤と内胚乳の境界面の位置で、未熟種子にアグロバクテリウム(Agrobacterium)懸濁液(1μl)を接種した。次に分蘖を水に入れ、半透明なポリ袋で覆って種子の脱水を防ぎ、1日に16時間の光を与えて、23℃、45μEm
−2s
−1PARの照明インキュベーターに3日間入れた。3日間の共培養後、接種未熟種子を取り出して、70%エタノール(30秒間)、次に20%漂白剤(Domestos、20分間)で表面滅菌し、無菌蒸留水中での徹底的洗浄がそれに続いた。未熟胚を無菌的に単離し、追加の150mg/lのTimentin(W3T培地)および胚盤最上部と共に、W3培地(20g/lのスクロースおよび2mg/lの2,4−Dを添加したMS;Sigmaからの6g/lのタイプIアガロースで固化)にのせた(プレートあたり20個の胚)。培養物を25℃で明るい場所に置いた(1日に16時間の光、80μEm
−2s
−1PAR)。単離の約5日後に、胚上の胚軸の成長を評価して、カルス生成の改善のために必要な場合は軸を除去した。単離後2週間で新鮮な培地に移して、胚をW3T中に4週間保ち、胚形成能力を評価した。
【0314】
4週間の成長後、接種胚から誘導されたカルスは、W3T培地に播種された未接種胚から得られた対照カルスと、非常に良く似ていた。細菌の存在は、接種胚から誘導されたカルスの胚形成能力を実質的に低下させなかったようであった。胚形成カルスを2mg/lのAsulamまたは25mg/lのgeneticinおよび150mg/lのTimentin添加W3培地(W32AT培地)に移した。カルスをこの培地上でさらに2週間維持し、次に各カルスを2mmサイズの断片に分割し、W32AT上に再播種した。バイナリーベクターコンストラクトなしのLBA4404の接種から誘導された対照胚は、選択培地上で形質転換カルスを生じなかった。
【0315】
さらに2週間の培養後、胚形成カルスの成長について全ての組織を評価した。選択上で4週間後、継続成長の徴候を示すあらゆるカルスを再生培地(RMT;40g/lのマルトースおよび150mg/lのTimentin添加MS、pH5.8;Sigma type1の6g/lのアガロースで固化)に移した。苗条はこの培地上で4週間以内に再生されて、次に苗条伸長および発根のために、150mg/lのTimentin添加MS30に移された。次に幼若植物を土壌混合物に移し、ミスティングベンチ上に2週間保ち、最後に温室に移した。
【0316】
AGL1株などの代案のアグロバクテリウム(Agrobacterium)株またはハイグロマイシン耐性をコードする遺伝子などの選択可能なマーカーもまた、方法で使用し得る。
【0317】
実施例2:ヘアピン型RNAコンストラクトを使用したコムギ中のSBEIIa遺伝子の阻害
4つのヘアピン型RNA(dsRNA)コンストラクトを作成して、コムギのi)SBEIIa、またはii)SBEIIa、SBEIIb、およびSBEI遺伝子の発現を低下させた。各コンストラクト中で、ヘアピン型RNAをコードするDNAを、ヘアピン型RNAの内胚乳特異的発現を提供するコムギDx5遺伝子から得られる高分子量グルテニン(HMWG)プロモーター配列、およびアグロバクテリウム(Agrobacterium)からのノパリンシンターゼ遺伝子からの転写ターミネーター配列(nos3’)と連結させた。このプロモーターは、ヘアピン型RNAをコードする合成遺伝子の内胚乳特異的発現を提供する。
【0318】
hp5’−SBEIIa
hp5’−SBEIIaと称される第1のコンストラクトの構築および使用については、Regina et al.,(2006)に記載される。hp5’−SBEIIaコンストラクトは、コムギSBEIIa遺伝子からのPCRによって増幅された1536bpのヌクレオチド配列を含有する(GenBank受入番号AF338431)。これは、以下を含んだ。エクソン1および2の全てとエクソン3の一部(ヌクレオチド配列部位1058〜1336、1664〜1761、および2038〜2219(SBEIIaをコードするタルホコムギ(Aegilops tauschii)cDNAのヌクレオチド配列部位1〜578、GenBank受入番号AF338431.1を含む)を含んでなり、各側にEcoRIおよびKpnI制限酵素認識部位を有する、468bpの配列(断片1)、SBEIIa(ヌクレオチド配列部位2220〜2731)のエクソン3および4の一部およびイントロン3の全てからなり、各側にKpnIおよびSacI部位を有する、512bpの配列(断片2)、およびSBEIIa(タルホコムギ(Aegilops tauschii)SBEIIa cDNAヌクレオチド配列部位1〜638、GenBank受入番号AF338431.1を含む、AF338431中のヌクレオチド配列部位1058〜1336、1664〜1761、および2038〜2279)の完全エクソン1、2、および3からなり、各側にBamHIおよびSacI部位を有する、528bpの断片(断片3)。次に断片3の配列が、断片1に対してアンチセンス方向で断片2とライゲートするように、断片1、2、および3をライゲートした。ヘアピン型RNAコンストラクトは、最初に、HMWGプロモーター配列とnos3’ターミネーターを含有するベクターpDVO3000中で生成された。
【0319】
hpc−SBEIIa
hpc−SBEIIaと称されるSBEIIaコンストラクトは、SBEIIacDNA(GenBank受入番号AF338432.1)のヌクレオチド1255〜1547に対応する293塩基対のDNA断片を含んでなり、それはSBEIIa遺伝子のエクソン12の一部、エクソン13および14、およびエクソン15の一部に対応する。SBEIIaのこの領域は、SBEIIb cDNAの対応する領域のヌクレオチド配列と約81%のみの同一性を有し、したがってSBEIIbでなく、SBEIIaのサイレンシングの特異性の可能性を増大させることから選択された。
【0320】
hp3’−SBEIIa
hp3’−SBEIIaと称されるSBEIIaコンストラクトは、SBEIIacDNAのヌクレオチド2305〜2434に対応する130塩基対のDNA断片を含んでなり、SBEIIa遺伝子のエクソン21の一部、エクソン22、および3’非翻訳領域(3’UTR)の一部に対応した。
【0321】
hp−combo
hp−comboと称されるヘアピン型RNAコンストラクトは、SBEIIa遺伝子の一部に加えて、コムギSBEI遺伝子の領域を含んでなり、i)SBEIIacDNAからのヌクレオチド1756〜2172に対応し、エクソン16の一部、エクソン17〜19、およびエクソン20の一部に対応する417塩基対の配列、およびii)SBEIcDNA(GenBank受入番号AF076679)のヌクレオチド267〜623に対応し、SBEI遺伝子のエクソン3の一部、エクソン4、およびエクソン5の一部に対応する357塩基対の配列を含有した。SBEIIa遺伝子断片は、SBEIIb遺伝子の対応する領域と約86%の同一性を有し、SBEIIbのそれらの対応する領域と100%同一性がある23個の連続したヌクレオチドのいくつかの領域を含み、そのためコムギ中のSBEIIbをコードする遺伝子ならびにSBEIIaおよびSBEIをコードする遺伝子の発現を低下させるという期待を持って、組み合わせコンストラクトがデザインされた。
【0322】
上述の各断片の2つのコピーは、イネチューブリン遺伝子イントロンが2つのコピーの間に存在するように、片方はセンス方向、他方はアンチセンス方向で適切なベクターに挿入された。合成遺伝子は、バイナリーベクター中に挿入され、コムギを形質転換するのに使用された。
【0323】
これらのコンストラクトは、実施例1に記載されるコムギを形質転換するのに使用された。それぞれのコンストラクトについてPCR陽性の独立コムギ遺伝子組換え系の数は、次のとおりであった。hp5’−SBEIIa、27;hpc−SBEIIa、10;hp3’−SBEIIa、10;およびhp−combo、63。
【0324】
遺伝子組換え植物の分析:DNA分析
PCR分析を実施して、Stacey and Isaac(1994)によって記載されるミニプレップ法を使用して、1−2cm
2の新鮮葉料から抽出されたゲノムDNAを使用して、再生植物中の導入遺伝子の1つまたは複数を検出した。例えばプライマーSBEIIa−For:5’−CCCGCTGCTTTCGCTCATTTTG−3’(配列番号19)およびSBEIIa−Rev:5’−GACTACCGGAGCTCCCACCTTC−3’(配列番号20)を使用して、hp5’−SBEIIa導入遺伝子で形質転換された植物に対して、PCR反応を実施した。これらのPCR反応は、SBEIIa遺伝子からの約462bpの断片を増幅するようにデザインされた。反応条件は、次のとおりであった:「ホットスタート」(94℃、3分間)と、それに続く30サイクルの変性(95℃、30秒間)、アニーリング(55℃、30秒間)、および延長(73℃、2分間)と、それに続く1サイクルの73℃(5分間)。
【0325】
デンプン顆粒形態
T0形質転換コムギ植物から得られる、成熟T1種子からのデンプン顆粒の形態を光学顕微鏡によって観察した。25のT0hp5’−SBEIIa植物のそれぞれからの10個の個々の穀粒を分析した。各内胚乳を穏やかに粉砕してデンプン顆粒を放出し、それを水中に分散して光学顕微鏡下で視覚化した。分析した25系統の内、12系統が歪んだ顆粒がある穀粒を有したが、目視観測からは、異なる種子中の様々なレベルの歪みが明らかになった。デンプン顆粒の形態学的変化について、hpc−SBEIIa、hp3’−SBEIIa、およびhp−combo導入遺伝子で形質転換された各植物からの9個の種子を同様に分析した。この場合、残りの各半切種子をT1植物に栽培することで各系統を保存できるように、半切種子を分析した。63のhp−combo系統の内55系統は、様々なレベルの歪みがある、顆粒形態が変化した種子を有した。10のhp5’−SBEIIa系統は全て、様々なレベルの歪みがある、デンプン顆粒形態が変化した種子を有した。SBEIIa3’系統のいずれにおいても、有意なデンプン顆粒形態の変化は観察されなかった。歪んだデンプン顆粒は、内胚乳中のデンプン中のアミロースレベル上昇の指標であり、典型的に約50%のアミロースであり、または高度に歪んだデンプン顆粒では約70%のアミロースである。これは、表現型の程度の範囲が、有効なサイレンシングコンストラクトのそれぞれについて観察されたことを示した。
【0326】
発生中内胚乳中における、ウエスタンブロット法によるタンパク質発現
抗SBEIIaおよび抗SBEIIb抗体をそれぞれ使用して、ウエスタンブロット法により、SBEIIaおよびSBEIIbタンパク質のレベルについて、T1遺伝子組換え系からの4〜7個のT2発生中内胚乳を分析した。hp−combo系統の場合、抗SBEI抗体を使用して、SBEI発現もまた分析した。選択された遺伝子組換え系からの全SBEIIタンパク質レベル(SBEIIaおよびSBEIIb)は、野生型(変種NB1)中のレベルの百分率として計算され、表11に示される。実施例1に記載されるヨウ素滴定法を使用して、穀粒中の全デンプンの百分率として計算された、遺伝子組換え系からの成熟穀粒中のアミロースレベルもまた判定された(表11)。これは
図5に図示される。
【0327】
SBEIIaおよびSBEIIbの発現レベル範囲が、独立系統の統遺伝子組換え植物の穀粒中で得られた。このような範囲は、異なる遺伝子組換え事象における導入遺伝子組み込み部位の多様性のために、常態では、あらゆる1個のコンストラクトによって得られた遺伝子組換え系内で予測されて、一般に「位置効果」と称される4個のコンストラクトは、SBEIIaおよびSBEIIb遺伝子の発現低下において等しく効率的でないことが観察されたため、これらの実験で見られた発現レベル範囲は広がった。特に、いくつかの形質転換された系統でhp−comboコンストラクトによって引き起こされるSBEIIbの発現低下の程度は、例えば系統679.5.3および672.2.3.などのSBEIIaの発現低下の程度と相関しなかった。しかし全てのコンストラクトは、大部分の形質転換系統中で対応する遺伝子の発現を低下させた。
【0328】
全SBEIIタンパク質レベルに対してアミロースの百分率をプロットし、データ点から最良適合曲線を作成すると(
図5を参照されたい)、野生型と比較して少なくとも75%の全SBEIIの低下は、内胚乳デンプン中で50%(w/w)以上のアミロース含有量をもたらすことが観察された。野生型と比較して少なくとも40%の全SBEII活性の低下は、少なくとも40%(w/w)のアミロース含有量をもたらした。
【0329】
残留SBEIIaタンパク質レベルに対してアミロース百分率をプロットすると、非常に良く似た曲線が得られ(
図6を参照されたい)、コムギ内胚乳中のSBEIIaのレベルが、デンプン中のアミロースレベルの一次決定要因であり、SBEIIbおよびSBEIのレベルが二次決定要因であるという結論がもたらされた。
【0330】
アミロースモデルは、3組の入力(
図6)に基づいてさらに発展させた。
【0331】
(1)SBEIIaおよびSBEIIbの相対的発現レベルに基づく理論的データ、および遺伝子導入からのアミロースデータ
【0332】
(2)単一および二重ヌルのアミロースデータ、およびSBEIIaおよびSBEIIbの相対的発現レベルに基づく理論的データ
【0333】
(3)測定されたアミロースデータ、および「追加的なコンストラクト」遺伝子導入から測定されたSBEIIaおよびSBEIIbレベル
【0334】
図6では、検出力曲線がこのデータに適合されている。まとめるとこれらの3つのデータセットは、入力タイプ間で高度に一貫したモデルを生じ、予測ルーツとしてのモデルを強化する。モデルは、パンコムギまたは四倍体コムギ中で高アミロース生成するために、SBEII遺伝子中に複数の変異を作り出すことの重要性を予測した。
【0335】
実施例3:コムギからのSBEII遺伝子配列のクローニングおよび比較
タルホコムギ(Aegilops tauschii)ゲノムライブラリからのSBEII遺伝子の単離およびPCRによる、それらの特性評価については、国際公開第99/14314号パンフレットおよび国際公開第200162934−A号パンフレットに記載される。A、B、およびDゲノムのSBEIIa遺伝子のイントロン5領域からのDNA配列は、国際公開第200162934−A号パンフレットに記載される。さらなる研究からは、異なるコムギ遺伝子型からのコムギSBEIIa遺伝子のその他の領域から配列を得て、例えば次のようにして同祖遺伝子をさらに特性評価することが導かれた。プライマーAR2aE12F07(5’−CATTCGTCAAATAATACCCTTGACGG−3’(配列番号21))およびAR2aE14R07(5’−CTTCACCAATGGATACAGCATCAG−3’(配列番号22))を使用して、六倍体コムギ変種CharaからSBEIIaのエクソン12〜14領域を増幅した。これから約656bpのPCR産物が生じ、それは3つの同祖遺伝子のそれぞれからの増幅断片の混合物であると推定された。TOPOベクターへのクローニングに続いて、この産物を配列決定した。エクソン12〜14間の領域をカバーする、3つの多型配列が得られた(
図7)。実施例4で詳述されるように、切断後増幅多型(CAP)マーカーを使用した、Chinese Spring染色体操作系のPCR分析に基づいて、配列F1−1はDゲノムに割り当てられ、配列F1−13はBゲノムにゲノム割り当てられ、配列F1−15はAゲノムに割り当てられた。
【0336】
プライマー対AR2akpnIF(5’−GGTACCGGCAAATATACGAGATTGACCCG−3’(配列番号23))およびAR2aSacIR(5’−GAGCTCCCACCTTCATGTTGGTCAATAGC−3’(配列番号24))を使用して、2個の六倍体コムギ変種、SuncoおよびTasmanから、SBEIIaのイントロン3領域を増幅した。3つの多型配列が、SuncoおよびTasmanのそれぞれから得られた(
図8)。コムギSBEIIaDゲノム配列(GenBank受入番号AF338431.1)と比較して、配列Tasman0257およびSunco0242はDゲノムに割り当てられた。Tasman 0272およびSunco 0241配列は、分離集団における一塩基多型に基づく多型マーカーのマッピングに基づいて、Bゲノムに割り当てられた。Tasman 0264およびSunco 0243の配列は、BおよびDゲノム配列と異なるようであり、それらはAゲノムに由来するはずであると結論付けられた。遺伝子型特異的多形性はまた、3個の各ゲノムにおいて、SuncoおよびTasman間でSBEIIaのこの領域についても観察された。
【0337】
プライマーAR2aexon3F(5’−GATACCTGAAGATATCGAGGAGC−3’(配列番号25))およびAR2aexon3R(5’−CGGTAGTCAAGATGGCTCCG−3’(配列番号26))を使用して、Chinese Spring(CS)からのSBEIIaのエクソン3領域を増幅した。3つの多型配列が得られた(
図9)。コムギSBEIIa遺伝子(GenBank受入番号AF338431.1)の比較からは、配列CSエクソン3aがDゲノムに由来することが明らかにされた。配列CSエクソン3bは、パンコムギ2B染色体に由来すると報告されているGenBank受入番号FM865435との100%同一性に基づいて、Bゲノムに由来することが分かった。第3の配列CSエクソン3dは、GenBank受入番号Y11282.1と99%同一性を示し、それは次にChinese SpringのAゲノム(GenBank受入番号EU670724)に由来すると報告されている、部分的コード配列との高度な同一性(99%)を有した。これは配列CSエクソン3dが、Aゲノムに由来するという予測を導いた。
【0338】
プライマーAR2aexon1F(5’−CACACGTTGCTCCCCCTTCTC−3’(配列番号29))およびAR2aexon1R(5’−GAGAGGAGTCCTTCTTCCTGAGG−3’(配列番号28))を使用して、CSからのSBEIIaのエクソン1領域を増幅した。配列が得られた(
図10)。SBEIIGenBank受入番号との配列比較からは、配列CSエクソン1aのBゲノム(FM865435と100%相同性)への、CSエクソン1bのAゲノム(Y11282.1と99%相同性)への、CSエクソン1cのDゲノム(AF338431.1と100%相同性)への割り当てが導かれた。
【0339】
SBEIIa遺伝子配列はまた、パンコムギの二倍体祖先または類縁、パンコムギのAゲノム祖先と考えられるウラルツコムギ(Triticum urartu)、Bゲノム祖先と考えられるクサビコムギ(Aegilops speltoides)(Triticumspeltoidesとしてもまた知られている)、およびDゲノム祖先と密接な関係があると考えられるタルホコムギ(Aegilops tauschii)からも得られる。遺伝子断片は、次のようにしてこれらの種から得られる。Dゲノム(受入番号AF338432)のSBEIIa遺伝子のヌクレオチド配列またはその補体に基づいて、10個のプライマーをデザインし、その配列全体をカバーしたPCRによって、これらのプライマーセットを使用して、二倍体種SBEIIa遺伝子の断片を増幅した。10個のプライマーを使用して、二倍体種ウラルツコムギ(T.urartu)(AAゲノム)、クサビコムギ(A.speltoides)、(BB)、タルホコムギ(A.tauschii)(DD)、および四倍体種デュラムコムギ(T.durum)(AABBゲノム)からのDNAと共に、16の組み合わせがPCRで使用された。これらの増幅から、それらのヌクレオチド配列決定をする配列決定のために十分な品質であった、全部で35の断片が選択された。Contig Expressを使用して、配列を比較し編集し、二倍体からの祖先SBEIIa遺伝子について決定された配列を組み合わせる。A、B、およびDゲノム上の遺伝子を区別するのに使用し得るSNPまたは挿入/欠失などの多形性が同定され、Amplifierを使用して変異体同定のための特異的プライマーがデザインされる。
【0340】
ウラルツコムギ(T.urartu)からのSBEIIa遺伝子のエクソン11〜22領域のヌクレオチド配列は、配列番号13で示され、エクソン3〜8は配列番号15、およびエクソン1〜3は配列番号14で示される。タルホコムギ(A.tauschii)のSBEIIa遺伝子全体のヌクレオチド配列は、(参照によって本明細書に援用する)国際公開第2005001098号パンフレットで提供される。
【0341】
SBEIIaおよびSBEIIbのマッピング−コムギ中のSBEIIaおよびSBEIIbの遺伝的連鎖
SBEIIaおよびSBEIIb遺伝子は、どちらもコムギ2番染色体の長腕上に位置し(Regina et al.,2005;Rahman et al.,2001)、これらの報告に基づいて連結すると考えられたが、連鎖がどの程度近いのか正確に分かっていなかった。親栽培品種Baxter、Yitpi、Chara、およびWestoniaが関与する、四元交雑から得られる分離集団を使用して、SBEIIaおよびSBEIIb遺伝子の遺伝子マッピングを実施した。遺伝子間の組換えに関する集団分析は、およそ900の子孫から1個の組換えのみを明らかにした。このデータから、SBEIIaとSBEIIb間の遺伝距離はわずか0.5cMと計算された、これは2個の遺伝子間の非常に密な連鎖であった。
【0342】
2個の遺伝子間の物理的距離を判定するために、Moullet et al.,(1999)によって構築されたタルホコムギ(Aegilops tauschii)のBACライブラリーをスクリーニングして、SBEII含有クローンを同定した。SBEIIaおよびSBEIIb遺伝子のそれぞれの5’および3’領域から、
32Pで標識されたハイブリダイゼーションプローブを作成して使用し、BACライブラリーをスクリーニングした。4つのプローブの混合物でスクリーニングすると、陽性ハイブリダイゼーションシグナルのある9個のクローンが同定された。次に各プローブで9個のクローンを別々にスクリーニングして、3個のクローンを選択した。それらの1つ(BAC2)は完全に配列決定され、完全長SBEIIb遺伝子を含有することが示された。その他のクローンでは、BAC1は部分的直接配列決定によってSBEIIa遺伝子を含有することが示され、BAC3はPCRによって示されるように、SBEIIaおよびSBEIIb遺伝子の双方の部分を含有するようであった。これは2個の遺伝子が、どの程度密に物理的に連結するのかを示唆した。BAC1およびBAC3は、完全に配列決定されるであろう。この物理的データから、密接した遺伝的連鎖が確認された。
【0343】
したがって遺伝子の1つに影響を与える放射線などの作用物質によって生じる欠失変異は、恐らく遺伝子の双方に及びまたは全体にわたり、すなわち双方の遺伝子にとってヌルであることが予測された。さらにこれは、このような欠失変異株に生存能力があり、野生型の適応度を有し得る可能性を示唆した。少なくとも、観察された密な連鎖は、生存度または適応度に必要とされるその他の連鎖遺伝子に及ばない、比較的小さな欠失がある変異株を得る可能性を高めた。したがってこのような変異株を実施例5〜7で下述するようにして探し求めた。
【0344】
実施例4:コムギ中のSBEIIaおよびSBEIIb同祖遺伝子の識別
実施例2で得られた配列多形性に基づいて、PCRアッセイをデザインし作成して、パンコムギ中の同祖SBEIIa遺伝子を区別した。コムギSBEIIaのエクソン12〜14領域からの207bp産物を増幅するように、ネステッドプライマー対、AR2aI13ゲノムF2(5’−GTACAATTTTACCTGATGAGATCATGG−3’(配列番号29))およびAR2aI13ゲノムR2(5’−CTTCAGGAATGGATACAGCATCAG−3’(配列番号30))をデザインした。2種の制限酵素Ssp1およびMse1で消化すると、Chinese Spring(CS)からのプライマーを使用して増幅された生成物は、サイズ207bp、147bp、99bp、および108bpの4本の明確なバンドを生じた。CS染色体操作系におけるこのPCRマーカーアッセイの使用からは、207bpの生成物がAゲノムに由来し、147bpの生成物がBゲノムに由来し、99bpおよび108bpの生成物がDゲノムに由来することが明らかになった(
図11)。
【0345】
コムギの二倍体祖先、すなわちゲノムAではウラルツコムギ(Triticum urartu)、ゲノムBではクサビコムギ(Aegilops speltoides)、ゲノムDではタルホコムギ(Aegilops tauschii)からのSBEIIa配列に基づいて、異なるゲノムからのSBEIIa遺伝子の異なる領域からの断片を特異的に増幅してそれらを区別し得るプライマー対をデザインした(表4〜8)。表6〜8は、ヌクレオチド多形性のいくつか(SNPと標識された列)と、指定されたプライマー対を使用した際に得られる増幅断片のサイズとを列挙する。これらの同一プライマーの組み合わせを使用して、デュラムコムギからのAおよびBゲノム同祖SBEIIa遺伝子を区別し得る。
【0346】
パンコムギのA、B、およびDゲノムからの同祖SBEIIb遺伝子を識別するいくつかのPCRプライマーセットの開発、および六倍体コムギ中のこれらの各ゲノム中のSBEIIbの同定については、国際公開第200162934−A号パンフレットに記載される。コムギの二倍体祖先、すなわちゲノムAではウラルツコムギ(Triticum urartu)、ゲノムBではクサビコムギ(Aegilops speltoides)、ゲノムDではタルホコムギ(Aegilops tauschii)からのSBEIIb配列に基づいて、SBEIIbの異なる領域からの3個のゲノムのそれぞれを特異的に増幅し得るプライマー対をデザインした(表9〜10)。これらの同一プライマーの組み合わせを使用して、デュラムコムギからのAおよびBゲノム同祖SBEIIb遺伝子を区別し得る。
【0347】
実施例5:SBEII欠失変異株の作成および同定
重イオン衝撃によるコムギの変異誘発コムギ種子の重イオン衝撃(HIB)
一般に使用される市販品種であるコムギ品種Charaにおいて、変異誘発コムギ集団を作成した。日本国埼玉県和光市の理化学研究所で行われた変異誘発では、2種類の重イオン、すなわち炭素およびネオンの供給源が使用された。変異誘発された種子を温室内に播種して、M1植物を得た。これらを自家受粉させて、M2世代を作成した。SBEIIa(ARIIaF2/ARIIaR2)およびSBEIIbのゲノム特異的PCRプライマー(ARA19F/ARA23R)(診断PCR)を使用して、およそ15,000のM2植物のそれぞれから単離されたDNAサンプルをSBEIIaおよびSBEIIb遺伝子のそれぞれの変異について個々にスクリーニングした。野生型DNAサンプルに対する各PCR反応が、A、B、およびDゲノム上のSBEIIaまたはSBEIIb遺伝子の増幅領域に対応する、3個の異なる増幅産物を生じた一方で、変異誘発M2サンプルからのPCR中の1個の断片の不在は、1個のゲノム中の対応領域の不在を示唆し、すなわちその中で遺伝子の少なくとも一部が欠失した変異対立遺伝子の存在を示唆した。このような変異対立遺伝子は、ほぼ確実にヌル対立遺伝子である。
【0348】
ゲノム特異的プライマー対を使用したM2系統のスクリーニングによって、SBEIIaおよび/またはSBEIIb遺伝子の変異体である合計34の変異株が同定された。SBEIIaの変異株をSBEIIb遺伝子の存在および不在についてスクリーニングした。その結果、同定された変異株は3群に分類された。SBEIIaおよびSBEIIb遺伝子の双方が変異体である、すなわち1個のゲノム中で双方の野生型遺伝子を欠く「タイプ1」、SBEIIa遺伝子のみが変異体である一方、SBEIIb遺伝子は野生型である「タイプ2」、および特定ゲノム中でSBEIIb遺伝子のみが変異体でありSBEIIa遺伝子が野生型である「タイプ3」。A、B、およびDゲノム上のSBEIIa遺伝子は、診断PCR反応によって区別されたので、同様に、いずれの増幅産物が不在であるのかによって、SBEIIb遺伝子、変異対立遺伝子が、ゲノムの1つに割り当てられ得た。本明細書の用法では、名称「A1」は、ゲノム上のSBEIIaおよびSBEIIb遺伝子の双方が変異体である遺伝子型を指し、「A2」は、Aゲノム上のSBEIIa遺伝子が変異体でありSBEIIb遺伝子が野生型である遺伝子型を指し、「A3」は、Aゲノム上のSBEIIa遺伝子が野生型であり、SBEIIb遺伝子が変異体である遺伝子型を指す。名称「B1」、「B2」、「B3」、「D1」、「D2」、および「D3」は、BおよびDゲノムと類似した意味を有する。これらの可能な9タイプの各変異株は、収集された34の変異株内で同定された。
【0349】
34の各変異株の中の染色体欠失の程度は、マイクロサテライトマッピングによって判定された。以前、染色体2A、2B、および2Dの長腕に位置づけられたマイクロサテライトマーカー(表12)をこれらの変異株上で試験して、各変異体中の各マーカーの存在または不在を判定した。反応における適切な増幅産物の生成に基づいて、その中で特定染色体マイクロサテライトマーカーの全てまたは大部分のいずれかが保持されている変異植物は、比較的小さな欠失変異株であると推測された。変異がその他の重要な遺伝子に影響する可能性があまりないことを考慮すると、このような変異株が好ましい。同定された変異株、およびマイクロサテライトマッピングからの結果を表13に要約する。
【0350】
変異株の交雑
複数ゲノム上に変異SBEII対立遺伝子を有する子孫植物および穀粒を作成する交雑のために、マイクロサテライトマーカー分析による判定で、より小さな欠失について同型接合である変異植物を選択した。交雑種からのF1子孫植物を自家受粉させ、得られたF2種子をそれらのSBEII遺伝子型について分析した。このような12のF2集団のスクリーニングは、11種類の異なる変異対立遺伝子組み合わせ(「二重ヌル」)の同定をもたらした(表14)。その特定の交雑の1200を超えるF2子孫をスクリーニングしたにもかかわらず、12回目の交雑において、B1D1遺伝子型の二重ヌル組み合わせは得られなかった。この1つの可能な説明は、SBEII遺伝子座近傍の重要遺伝子がBおよびDゲノムには存在するがAゲノムにはないことであり、したがってB1およびD1二重ヌル変異の組み合わせが、種子を生育不能にしたかもしれない。27種類の二重ヌル変異株の組み合わせが理論的には可能であり、より多くのF2集団をスクリーニングして、その他の組み合わせが同定されるであろう。
【0351】
実施例6:コムギの単一および二重ヌルSBEII変異株のアミロース含有量
実施例1に記載されるヨウ素滴定法を使用して、実施例5に記載される単一および二重ヌル植物の穀粒デンプンのアミロース百分率を測定した。変異系統数(X軸)に対してアミロース含有量(Y軸)をプロットする散布図を
図4に示す。変異株穀粒中のアミロース含有量は、27.3〜38.7%の範囲であった。野生型(未変異)Charaサンプルのアミロース含有量は、27.4%〜29.5%の範囲であった。26系統が、34%を上回るアミロース含有量を記録した。これらの26系統の内、20系統は二重ヌルであり、そのいくつかは、タイプ1またはタイプ2の組み合わせのいずれかの同一交雑からの複製であることが観察された。換言すれば、単一ヌル穀粒のアミロース含有量と比較して、タイプ1およびタイプ2二重ヌル組み合わせにおいて、アミロース含有量が顕著に増大する傾向があった。
【0352】
重要なことには、そして意外にもこの研究以前には、アミロースが40%を超えるデンプンを有する二重ヌル変異株穀粒はなかった。これには、それぞれ4個のSBEIIaおよび4個のSBEIIbヌル対立遺伝子を含有し、2個の野生型SBEIIaおよび2個の野生型SBEIIb対立遺伝子を保持する、A1B1、A1D1、およびB1D1遺伝子型が含まれた。しかしこの観察は、実施例2のデータから立てられた予測と一貫していた。そのため変異を組み合わせることで、アミロースが40%を超えるコムギ穀粒を獲得するには、穀粒が、4個を超えるSBEIIaの変異対立遺伝子を有する必要があり、または代案としては、4個のSBEIIaの変異対立遺伝子のみが存在する場合は、4個のSBEIIa対立遺伝子と組み合わせて4個を超える変異SBEIIb対立遺伝子が必要であり、好ましくは6個のSBEIIb遺伝子が全て変異体であると結論付けられた。データから、A、BおよびDゲノムのそれぞれの上のSBEIIa遺伝子は、相互比較で同様のレベルで発現され、すなわちパンコムギ中では、いずれの1個のゲノムもSBEIIaを優勢に発現しないこともまた示唆された。
【0353】
「A3」および「A3D3」遺伝子型が、実施例2のデータと一致する低アミロース含有量を有したことは興味深く、コムギ中のアミロース含有量を定める上で、SBEIIbの役割がSBEIIaと比較してより小さいことが確認された。
【0354】
実施例7:三重ヌル欠失変異株を作り出す試みにおける交雑種
4個を超えるSBEIIa変異対立遺伝子がある変異株系統を前の実施例で単離した欠失変異株を用いて作成するために、単一ヌルおよび二重ヌル系統のいくつかを交雑し、診断PCRアッセイを使用して、これらの交雑種のF2子孫を分析した。アッセイは、3個のSBEIIaおよび3個のSBEIIb遺伝子の存在を試験し、したがってA、B、およびDゲノムのそれぞれの中のSBEIIaおよび/またはSBEIIb遺伝子にヌル(欠失)変異を有した植物(SBEIIaおよび/またはSBEIIbに関して三重ヌル系統)を同定する試みにおいて使用された。第1の実験で実施された交雑、および親系統と可能な三重ヌル F2子孫の遺伝子型を表15に列挙する。
【0355】
これらの交雑から選択された見かけが正常なF2種子および皺が寄った/萎縮F2種子を顕微鏡検査して、デンプン顆粒形態を分析した。D2単一ヌル親植物とA1B2二重ヌル親植物の間の交雑からそれぞれ得られた、08/dd交雑から5個の、および08/bb交雑から1個の、6個の皺が寄った/萎縮種子を選択した。6個の各種子は、デンプン顆粒の重度の歪みを示し、種子中の顆粒の大部分で異常な歪んだ形状を示し、それはアミロースレベルが増大した遺伝子組換え種子で観察された顆粒と類似していた(実施例2)。その他の交雑種からの皺が寄った/萎縮種子および選択された外見が奇妙ないくつかの種子の検査は、デンプ顆粒形態が無変化であったことを明らかにし、08/ddおよび08/bb種子中で観察された表現型が、遺伝子型に特異的であって、種子発生中の発育障害のためではないことが示唆された。
【0356】
歪んだデンプン顆粒を有する6個の種子から単離されたデンプンをプールして、実施例1に記載されるヨウ素滴定法を使用して、アミロース含有量を試験した。プールされたサンプルのアミロース含有量は、67%と測定された(表16)。栽培品種CadouxおよびCharaの野生型種子(対照)中のアミロースレベルは、およそ35%であった。
【0357】
デンプン顆粒形態が変化した種子の遺伝子型分析。
08/ddおよび08/bb交雑からのデンプン顆粒形態が変化した種子を播種して、結果として生じた植物を温室栽培した。実施例3に記載されるSBEIIaおよびSBEIIbのゲノム特異的プライマーを使用して、植物から抽出されたDNAを分析した。PCRアッセイからの結果は、これらの各種子が、遺伝子型A1B2、B2D2またはA1D2のホモ接合二重ヌル変異株である一方、第3の(野生型)遺伝子は、同型接合または異型接合状態のいずれかで存在することを示唆した。植物中の3個のSBEIIa遺伝子の存在または不在、および同型接合性または異型接合性をアッセイする、ゲノム特異的個別プライマー対を使用した、定量的PCR(リアルタイムPCR、Rotorgene 6000)を使用して、これらの植物からのDNAをさらに試験した。SBEIIaのために使用されたプライマー対は、Snp6for/Arev5(配列番号51/配列番号61)(Aゲノム、205bpの増幅産物)、Bsnp4/Arev5(配列番号55/配列番号61)(Bゲノム、494bpの増幅産物)、およびDSnp7for/Drev1(配列番号58/配列番号62)(Dゲノム、278bpの増幅産物)であった。SBEIIa増幅反応を正規化するために、全ての植物で等しく発現されると予測される細胞壁生合成遺伝子でありコムギの7番染色体に位置するCslF6遺伝子から、190bpの産物を増幅するプライマー対(SJ156/SJ242)を使用して、増幅を制御した。野生型植物からのDNA、2B2と称される変異誘発集団からのDNA、および野生型栽培変種Chinese Spring(CS)からのDNAを対照テンプレートとして使用した。SBEIIaプライマーとの反応で生成された相対濃度の値は、各テンプレートDNA調製品のためのCslf6プライマーの値で正規化した。可能な三重ヌル植物およびCSの値を2B2系統と比較して計算した。
【0358】
これらの3個のプライマー対の内、Dゲノムプライマーが、S14と称される1つの植物について明白な単一バンドを生じ、定量化を可能にした。S14のAおよびBゲノム上のSBEIIa遺伝子ではバンドが得られず、これらのゲノム上の変異対立遺伝子について、それが同型接合であったこと(欠失)が示唆された。定量化は、S14が、2B2と比較しておよそ30〜50%のD対立遺伝子補体を有した一方、CSはDゲノムSBEIIa遺伝子について、2B2のおよそ95%の値を与えたことを示唆した。これは、約67%のアミロースレベルの種子を与えたS14が、Aゲノム中のSBEIIbヌル変異について同型接合であったことに加えて、2個のゲノム(AおよびB)のSBEIIaヌル変異について同型接合であり、第3のゲノム(D)について異型接合体であったことを示した。すなわち、S14は、A1(同型接合)、B2(同型接合)、D2/+(異型接合体)遺伝子型を有した。同様に、定量的PCRは、S24と称される植物がB2(同型接合)、D2(同型接合)およびA1(異型接合体)遺伝子型を有したことを示した。PCR分析は、残りの5植物が以下の遺伝子型を有したことを示した。08dd9−B4はA1B2遺伝子型について同型接合であり、すなわちAゲノム上のSBEIIaおよびSBEIIbについて同型接合変異体であり、Bゲノム上のSBEIIaおよび野生型SBEIIbについて同型接合変異体であり、Dゲノム上の双方の遺伝子について同型接合野生型である一方、08bb11−D9はB2D2遺伝子型について同型接合であり、S28およびS22はA1D2遺伝子型について同型接合であった。
【0359】
F3種子の分析
S28、S22、S14、およびS24系統の種子を温室内に播種して、結果として生じた植物を自家受粉させ、各植物から種子(F3世代)を得た。植物の稔性が影響を被り、ヘッドあたりの種子数および稔性の花穂の百分率は、同時に同一条件下で栽培された、野性型、単一ヌル、およびその他の二重ヌル変異株と比較して顕著に低下したが、消滅しなかったことが観察された(表17)。
【0360】
デンプン顆粒形態は、S28、S14、およびS22の各系統からの100〜200個の種子上で、光学顕微鏡によって判定された。S22系統からの試験された200個の種子の内、102個のF3種子に歪んだデンプン顆粒があると同定された。データは、予想よりも正常な表現型の数が多い、予想される1:2:1(同型接合変異体:異型接合体:野生型)からの分離比の歪みを明らかにした。高アミロース表現型を持つ同型接合植物が同定されるかどうかを見るために、歪んだ顆粒がある102個の種子を発芽に適する条件においた。102個の種子の内、61個が発芽した。これらの61個の植物からのDNAはSBEIIaゲノム特異的PCRによって分析され、全ての61個の植物はA1D2遺伝子型の二重ヌルのようであり、同型接合三重ヌルは同定されなかった。Bゲノム上の野生型SBEIIa遺伝子は異型接合体であることが示され、すなわちBゲノムに対して野生型および変異対立遺伝子の双方が存在した。
【0361】
歪んだデンプン顆粒を有したが発芽しなかった41個の種子は、それらのSBEIIa遺伝子型について分析された。これらの多くは三重ヌル(SBEIIa遺伝子の欠失)であることが観察され、すなわちSBEIIa遺伝子のあらゆる増幅産物の不在を示し、したがってSBEIIaに対して6個のヌル対立遺伝子を有した。これから、三重ヌル種子が生じ得るが、これらの種子は発芽に影響を及ぼす欠陥を有したことが確認された。これらの種子いくつかから胚を摘出し、胚の発芽を促進する条件下で、組織培養液を使用して培養した。いくつかの胚は成功裏に発芽して、緑色小植物がもたらされた。しかしこれらの小植物を土壌に移すと、それらは発育不良であり、稔性コムギ植物を生じなかった。
【0362】
これらのデータから、HIB生成欠失変異に基づく同型接合三重ヌル変異体種子、およびこれらの種子から誘導され、6個のヌルSBEIIa対立遺伝子を有して完全にSBEIIaを欠く小植物は、これらの交雑種から回収可能であったが、発芽および成長が影響を被ったと結論付けられ、これらの過程におけるいくつかのSBEIIaの重要な役割、または種子の発芽、正常な生育および植物の繁殖能力に必要な密接にリンクした遺伝子が存在し、交雑に用いられたHIB変異株の各々で遺伝子が欠失したことが示唆された。対照的に、第3のヌル対立遺伝子について異型接合体であり、したがって5個のヌルSBEIIa対立遺伝子を有するSBEIIaの二重ヌル変異株は、回収されて正常に成長し、稔性は低下したものの稔性であった。
【0363】
S28系統のタンパク質発現解析
SBEIIa特異的抗体を使用して、ウエスタンブロット法により、S28植物からの1本の花穂全体から得られる発生中の内胚乳中のBEIIaタンパク質表現を分析した。花穂中の15個の内胚乳の全ては、SBEIIaのAおよびDゲノムイソ型の双方を欠くパターン(AD二重ヌル)を示し、Bゲノムから発現される1つのSBEIIaバンドのみが存在した。15個の内胚乳の内7個は、他よりも、そして対照系統NB1よりも大幅に低い、BゲノムSBEIIa発現レベルを有した。バンド強度に基づいて、各内胚乳中のSBEIIa発現を定量化した。
【0364】
内胚乳からの残りのデンプン顆粒を、90%Percollを使用して精製した。200μlの水中の再懸濁に続いて、顆粒を顕微鏡的に検査した。野生型の約36%未満のSBEIIa発現レベルを有する全ての内胚乳は、高アミロース表現型に典型的な、歪んだ形態のデンプン顆粒を有したことが観察された。S24植物からの1本の花穂からの発生中の穀粒中で観察された一連のSBEIIaタンパク質発現レベルは、野生型の5%未満に低下した。SBEIIaのレベルがより低い内胚乳はまた、デンプン顆粒形態の変化も示し;したがってこの実験において表現型は、完全に相関性がある。これらの全ての内胚乳中のSBEIIb発現レベルはまた、SBEIIb特異的抗体を使用して分析された。結果は、SBEIIa発現の低下に対応して、SBEIIbの発現に同時の低下があったことを明らかに示した。
【0365】
考察
4個の変異SBEIIa対立遺伝子を有するA1B2変異遺伝子型がある植物(表18に要約される)からの種子の分析は、その遺伝子型について、アミロース含有量がわずかにのみ上昇し、40%未満のアミロースレベルがもたらされたことを示した。比較すると、S14、S22、S24、およびS28種子からのデータは、第5のSBEIIa変異(欠失)対立遺伝子の追加が、アミロースレベルを約67%に上昇させることを実証した。したがって4個のSBEIIaヌル対立遺伝子から最低限の5個の変異SBEIIa対立遺伝子への増加は、アミロースレベルを50%(w/w)を超えて、実際に60%(w/w)を超えて増大させる上で重要であった。この結論は、実施例2のデータから立てられた予測と一致した。対立遺伝子組成とアミロース含有量との観察された関係性は、植物中のSBEIIa変異対立遺伝子の総数が、アミロース含有量を定める上で重要であったことを示唆した(表18)。SBEIIb変異対立遺伝子の数が役割を果たすこともまた結論付けられたが、SBEIIa変異対立遺伝子の数よりも重要性に劣った。
【0366】
第3のヌル対立遺伝子について異型接合体であり、したがって5個のヌルSBEIIa対立遺伝子を有するSBEIIaの二重ヌル変異株は、回収されて正常に成長し、稔性であった。対照的に、6個のヌルSBEIIa対立遺伝子を有し、完全にSBEIIaを欠く同型接合三重ヌル変異株種子および小植物は、交雑に用いたHIB誘発欠失を含む一重ヌル変異株から作成することができたが、これらは発芽および生長が影響を受け、これらの過程におけるいくつかのSBEIIaの本質的役割、またはHIB誘発変異株でSBEIIaとともに欠失し、種子の発芽、正常な生育および植物の繁殖能力に必要な、SBEIIaと密接にリンクした遺伝子の存在を示唆する。実施例11に示すデータから、これらの説明のうち2番目が正しい説明であると考えられる。
【0367】
実施例8:完全にSBEIIaまたはSBEIIbを欠く三重ヌル欠失変異株を生成するさらなる試み
HIB誘発欠失変異株から完全にSBEIIaを欠く三重ヌル変異株が作成できないという、上の実施例の観察は、交雑の親として使用される特定の変異体植物に依存したかもしれない。これを試験するために、これもまたHIB変異誘発から得られた追加的な親欠失変異株を使用して交雑の第2の組を実施した。38の交雑種からのF2種子を収穫してDNA抽出した。その内の12はA1B2D2遺伝子型(三重ヌル変異体)の生成を目的する交雑種からであるが、実施例7に記載されるのとは異なる親系統を使用している、25の交雑種それぞれからの少なくとも96個のDNAサンプルをPCRによってスクリーニングし、分離傾向を判定した。これらの交雑種のいずれからも、生存能力がある三重ヌルは同定されなかった。二重ヌルの回収もまた交雑に応じて変動したが、ほとんどの場合、予測された遺伝子型が得られた。6個のA1B2D2交雑種からのF2種子もまた顕微鏡的にスクリーニングして、高アミロース表現型有する種子を同定した。このような種子は、中程度の頻度で同定された。
【0368】
A2B2D2交雑からの種子のスクリーニング、08/mm−1。12の交雑種はA2遺伝子型親とB2D2遺伝子型親の間の交雑種であり、すなわちA2B2D2遺伝子型を有する三重ヌルSBEIIa変異株を作り出す目的で、双方の親は3つ全てのSBEIIb遺伝子について野生型であった。08/mm−1交雑から得られるおよそ672個のF2種子からのDNA調製品をPCRによってスクリーニングした。分離比は、予測されるメンデル比から歪んで、予測されたよりも顕著により少ない二重ヌルが同定された。それでもなお、生育し得る種子中で、二重ヌル変異の全ての可能な組み合わせが同定された。メンデル型分離では、約10個が予測されたにもかかわらず、672個の種子中にA2B2D2遺伝子型の三重ヌルは同定されなかった。
【0369】
並行して、08/mm−1交雑のF2種子を顕微鏡検査でスクリーニングして、高アミロース/歪んだデンプン顆粒(HA)表現型を持つあらゆる種子を同定した。スクリーニングされた576個のF2種子の内、HA表現型を持つと同定された種子はなかった。この種子集団は、2個のゲノムにおいて同型接合変異体であり、第3のゲノムにおいてSBEIIaの異型接合変異体/野生型を有する、5個の変異SBEIIa対立遺伝子を有する、低頻度の種子を含むべきであった。A2B2D2交雑における、HA表現型がある種子の観察された欠如は、あらゆるSBEIIb変異対立遺伝子の不在下では、5個の変異SBEIIa対立遺伝子が、高アミロース(>50%アミロース)表現型を提供するには不十分なようであったことを示唆した。すなわち、5個の変異SBEIIa対立遺伝子と1個の野生型SBEIIa対立遺伝子の文脈で、SBEIIaレベルの大幅低下に加えて、野生型と比較したBEIIbレベルの低下により、または1つまたは複数のSBEIIa遺伝子に部分的機能喪失変異を有する内胚乳での同等のSBEIIa活性レベルにより、50%を超えるアミロースが提供できる。
【0370】
その他の2個のゲノム上の単一SBEIIa変異体親(野生型SBEIIb)と二重SBEIIa変異体親の間の11の追加的な交雑種からのF2種子のスクリーニングもまた、いかなる生存能力のあるA2B2D2遺伝子型の三重ヌル変異体種子も同定しなかった。
【0371】
タイプ3変異を伴う交雑
4個の変異SBEIIa対立遺伝子と組み合わされた、2、4または6個の変異SBEIIb対立遺伝子の同型接合を有する変異株を発見する目的でタイプ3変異を伴う交雑を実施し、結果として生じる植物およびその穀粒の表現型を測定した。全てが野性型デンプン顆粒形態を示し、SBEIIbの6個のヌル対立遺伝子とともにSBEIIaのゼロまたは4個のヌル対立遺伝子を有する、A3B3D3およびA3B2D2交雑種からの三重ヌルSBEIIbが同定された。
【0372】
実施例9:高アミロース変異株のさらなるスクリーニング
同定された単一欠失変異株からの三重ヌルSBEIIa変異株を生成するさらなる試みにおいて、改変ストラテジーを採用した。このストラテジーでは、単一変異株の同定後に、単一SBEIIa変異を有するM2植物から未連鎖で無関係の変異を除去するために、単一変異株のいくつかの初期戻し交雑ステップを追加した。これは、変異が組み合わさると有害効果を及ぼし得る、所望のSBEIIa変異と無関係の追加的な変異を植物中に生じ得る、使用された高レベル変異誘発処理に起因する変異背景の影響を低下させるために含めた。これらの初期戻し交雑は、M2変異株と、冬コムギ栽培品種Apacheまたは春コムギ栽培品種Charaコムギのいずれかの植物との交雑によって実施された。
【0373】
最初に、13回の交雑を実施して、全ての3ゲノム上の変異を組み合わせ、21,400F2の半切種子からのDNAについて分子解析を実施して、各半切種子の残りは系統維持のために保持した。変異を検出する予備スクリーニングでは、SBEIIaまたはSBEIIbに対する特異的ゲノムである、優勢SSRマーカーを使用した。これから、ゲノム特異的増幅産物の不在によって、21個の種子が推定上の三重ヌル変異株として、793個の種子が推定上の二重変異株として同定された。
【0374】
コムギ種子遺伝子型のQ−PCR TaqManベースのアッセイ
上述の優勢マーカーを使用した1回目のスクリーニングは、あらゆる1個のSBEIIa遺伝子について、異型接合または同型接合野生型の種子を区別できなかった。そのためTaqManベースのPCRアッセイを開発して、第3のゲノム上のSBEIIa遺伝子について、異型接合体および同型接合体を区別して、最初のスクリーニングからの遺伝子型を同定した。TaqMan分析は、半切種子に対して実施され、コムギ内胚乳は各ゲノムについて三倍体(3n)であるので、第3のゲノム上の野生型SBEIIa対立遺伝子に関する異型接合体内胚乳について、以下の2種類のプロファイルのいずれかが可能であった。野生型対立遺伝子が母親によって提供される2n、または野生型対立遺伝子が花粉を通じて父親によって提供される1n。Q−PCR TaqManベースのアッセイは、Applied Biosystems 7900HT Fast Real Time PCR System(ABI,Foster City,CA)を使用して、推定上の二重変異体コムギ種子の第3のゲノム上のSBEIIa遺伝子のコピー数を検出した。アッセイは、磁気ビーズ法(Nucleomag、カタログ番号744 400.24)によって、半切種子から抽出されるゲノムDNAを使用した。DNAを384ウェルプレートに装入し、二本鎖Q−PCR反応を各プレートについて二連で実施した。PCR反応は、プライマーSBE2aQPCRABDF4(順方向プライマー):5’−ACGATGCACTCTTTGGTGGAT−3’(配列番号31)およびSBE2aQPCRABDR4(逆方向プライマー):5’−ACTTACGGTTGTGAAGTAGTCGACAT(配列番号32)を使用して、SBEIIa遺伝子のエクソン21からの65bp断片を増幅するようにデザインされた。Q−PCR反応中に蛍光シグナルを送達するのに使用されたプローブは、SBE2aQPCRABDS4(TaqMan(登録商標)プローブMGB、FA)M5’−CAGCAGGCTTGATCAT−3’(配列番号33)であった。プライマーGamyB1F(順方向プライマー):5’−GATCCGAATAGCTGGCTCAAGTAT−3’(配列番号34)およびGamyB2R(逆方向プライマー):5’−GGAGACTGCAGGTAGGGATCAAC−3’(配列番号35)を使用して、内在性遺伝子からの配列GamyBを内部対照として使用して各サンプルのシグナル値を正規化した。反応条件は、次のとおりであった:「ホットスタート」(95℃、10分間)とそれに続く40サイクルの変性(95℃、15秒間)、アニーリング(58℃、60秒間)。7900HT Fast Real Time PCR Systemに組み込まれたRelative Quantificationマネジャーソフトウェアを使用して、反応生成物を分析した。
【0375】
このTaqManアッセイを使用して、全ての21の推定上の三重ヌル変異株は二重ヌルであって、三重ヌルではないことが確認された。最初のスクリーニングにおける不正確な同定は、恐らくテンプレートDNAの低品質によって引き起こされた偽陰性に起因すると考えられた。光学顕微鏡によってデンプン顆粒形態について14個の種子を検査すると、観察された14個は全て野生型顆粒表現型を有し、これは二重ヌル変異株であって三重ヌル変異株でない種子と一致した。アッセイはまた、交雑種M76、M77、M82、M83、およびM86から、第3のゲノム上の2n異型接合体である、数個の推定上の二重変異体種子を同定した。
【0376】
実施例10:NIRによる変異株コムギ種子のスクリーニング
迅速非破壊的ハイスループット方法を開発して、高アミロース含有量と関連付けられている表現型について、単一種子をスクリーニングした。実施例4〜6に記載されるPCRベースのスクリーニング法は、15,000個の種子集団中の変異株を検出するのに成功したが、手動で各種子を切断した後に、各半切種子からのDNA調製が必要であるため時間と手間がかかった。近赤外線分光法(NIRS)を使用して、高アミロースと標準的アミロース表現型を区別し得ると判断した。近赤外線分光法(NIRS)は、コムギ種子の特性を判定するのに使用されている非破壊技術である(McClure,2003)。ワキシーデンプン表現型(低アミロース)コムギ単一種子NIRS分析は、Delwiche et al.(2006)によってデュラムコムギ上で開発された。Dowell et al(2009)は、ワキシー、部分的ワキシー、および標準的デュラムおよび六倍体コムギを分離する自動単一種子NIR仕分け装置を開発した。我々の知る限りでは、この方法は、これまで六倍体コムギ中の高アミロース種子を区別するために、使用されていない。
【0377】
粉砕種子材料中の見かけのアミロース含有量を測定する小規模生化学的参照法の開発および検証
個々の種子中の見かけのアミロース含有量に従ってNIRS測定を較正するために、この場合は単一種子である同一サンプル上で、NIRSスペクトルデータと見かけのアミロース含有量を測定する生化学的方法とを相関させるための、数理モデルを確立してなくてはならなかった。例えば実施例1に記載される方法などの標準ヨウ素滴定法では、一定量の種子が慣例的に使用され、それはデンプン可溶化前に合わせられて、バルク(合わせた)デンプンを提供し、それは常態では、ヨウ素結合に基づいたアミロース含有量の比色分析測定に先だって脱脂される。NIRS較正目的での使用に適切にするために、この方法を修正、簡易化、縮小して、単一種子中の見かけのアミロース含有量を測定できるようにし、それによって種子間のアミロース含有量の変動を考慮に入れた。修正法は、粉砕穀粒からのデンプンを精製せず、デンプン中のアミロースと相互作用する脂質を除去せず、結果は種子からの単離デンプンの百分率でなく新鮮種子重量の百分率として表されるので、「見かけのアミロース含有量」という用語がこの文脈で使用される。これらの理由から、「見かけのアミロース含有量」について得られる値は、実施例1に記載される標準法を使用して得られる値よりもはるかに低い。
【0378】
第1段階として、この方法はデンプン精製なしに粉砕コムギ穀粒を使用して、比色分析応答とアミロース含有量の間の直線性を評価することで開発された。このために使用した高アミロース材料は、hp5’−SBEIIaコンストラクトで形質転換されてSBEIIaが低下しているコムギ穀粒(WM、系統85.2c、実施例2を参照されたい)、および同時に同一条件下で栽培された野生型コムギ(WMC)である標準的アミロースレベルのコムギであった。粉砕WM穀粒が、実施例1の標準法による測定で約80%のアミロースを含有したのに対し、粉砕WMC穀粒は約25%のアミロース含有量を有した。異なる比率のWMとWMCのサンプルを粉砕種子材料から調製したが、さらなる精製はしなかった。およそ17mgのサンプルをアッセイで使用した。WMおよびWMC混合物を正確に秤量して、1.5ml微量遠心管に入れた。サンプル中のデンプンを可溶化するために、17mgのサンプルあたり1mlのDMSOを添加して、次に時々ボルテックスして、混合物を95℃の水浴内で90分間加熱した。各混合物からの10μlのアリコートを1.98mlの水に添加して、10μlの0.01N NaOH溶液中の0.3%I
2+3%KIで処理した。各混合物の吸光度を605nmで測定し、標準曲線を使用して吸光度値をアミロース百分率に変換した。アミロース比0%〜100%のトウモロコシアミロペクチン(Sigma、カタログ番号A7780)およびジャガイモアミロース(Sigma、A0512)を使用し、粉砕コムギサンプルと同様に処理して標準曲線を作成した。
【0379】
結果は、WM組み込みレベルと見かけのアミロース含有量の間の直線関係を示し、NIRS較正のために簡易化ヨウ素滴定法を使用し得て、この目的でデンプン精製が必要でなかったことが示された。
【0380】
半切種子中の見かけのアミロース含有量を測定するための生化学的参照法の試験
この試験では、ArizonaおよびWashingtonで行われた野外実験から得られたWMおよびWMC(対照)系統からの種子を使用した。全部で47個の胚除去半切種子を1.5ml微量遠心管に個々に入れて、それぞれに0.6mlのDMSOを添加する前に正確に秤量した。管を95℃の水浴内で20分間インキュベートし、その後、ガラス棒を使用して、サンプルを管の中で粉砕した。各混合物の体積を17mgのサンプルあたり1mlにDMSOで正確に調節し、その後、時々ボルテックスして、管を水浴内で95℃でさらに70分間インキュベートした。前述同様に、各混合物の10μlのアリコートを取り出して、それらを10μlの0.01N NaOH溶液中の0.3%I
2+3%KIで処理し、H
2Oで2mlに希釈して、見かけのアミロースを測定した。上述したように、各サンプルの吸光度を605nmで測定し、標準曲線を使用して、吸光度値を「見かけのアミロース」百分率に変換した。
【0381】
この方法を使用して、WM種子の見かけのアミロース含有量が20%〜41%(平均27%)の範囲であったのに対し、WMC種子の見かけのアミロース含有量は、7.5%〜17%(平均11.4%)の範囲であった。これらの値が、実施例1の方法によって測定されたアミロース含有量よりもはるかに低い理由については上述した。したがってこの簡易法は、高アミロースがある種子を野生型アミロース含有量の種子から区別できるようにした。
【0382】
NIRS較正
WMおよびWMC種子上の単一種子NIRSスキャンは、Multi Purpose Analyser(MPA)NIRS分光計(Bruker Optics,F−77420Champs Sur Marnes,France)を使用して得られた。各種子をアルミニウムホイルで覆ったガラス管の底に入れ、2回スキャンした。ファイバープローブを装着したBruker MPA Multi−Purpose−Analyser spectrometer(Bruker Optics)を使用して、スペクトルを記録した。16cm
−1の分解能で4000〜12,500cm
−1の範囲にわたる、32個の参照スキャンおよび16個のサンプルスキャンを使用してスペクトルを記録し、1100個のデータ点がもたらされた。使用された光ファイバープローブは、固体用IN 261プローブであった。
【0383】
見かけのアミロースレベルとNIR読み取り間の相関を判定するために、6〜44%の範囲にわたる見かけのアミロース含有量がある、226の個々のWMまたはWMC種子を分析した。最初に、各種子について二連でNIRSスペクトルを得て、その後上述の方法に従って、各種子について、見かけのアミロース含有量を生物化学的に測定した。全データセットのスペクトルと比較して、スペクトル外れ値(6サンプル)を異常なスペクトルとして同定し、除外した残りのスペクトルをNormalisation Min−max pre−treatmentで分析した。完全(ワンアウト)交雑検証があるPartial Least Squareソフトウェアを使用して、モデルを作成した。モデル開発のために使用されたスペクトルウインドウは、9827〜7150cm
−1および6271〜4481cm
−1であった。較正を開発するのに使用されたPLS要素数は、14であった。較正モデルの正確度は、交雑検証(SECV)の標準誤差および決定係数(R
2)で表された。キャリブレーションの効率は、セットの参照データの標準偏差に対する予測の標準誤差の比率(ration)(RMSECV)であるRPDによって示された。
【0384】
生化学的データとNIRスペクトルデータの間に正相関(R
2=0.702)が得られた(
図15)。モデルは、高アミロースコムギ種子を標準的アミロースコムギ種子から区別するのに十分頑強でありながら、なおもあらゆる1個の種子中でアミロース含有量を正確に測定するのに十分正確であると結論付けられた。したがって方法は、高アミロース表現型がある穀粒を濃縮するために、非常に多数の種子集団をスクリーニングできる。これは次のように検証された。
【0385】
NIRS検証
高アミロース穀粒と対照穀粒の識別におけるNIR法を検証するために、さらに60個のWM種子と34個のWMC種子をNIRで2回スキャンして、計算される見かけのアミロース含有量を予測した。このように測定された見かけのアミロース値がWMおよびWMC集団の分布形状を獲得するようにプロットされると、2つの群がわずかな重なりを持ってほとんどは分離されることが分かる(
図16)。これらの結果によれば、NIRSによる判定で30%以上の予測された見かけのアミロース表現型を有する種子は、高アミロース種子の良好な候補と見なし得た。
【0386】
コムギ交雑からのF2種子のNIRSスクリーニング
NIRSスクリーニングを実施して、高アミロース含有量を有する変異体種子を検出した。スクリーニングでは、21.142(B2)/Type I−20257(A1)[08/h−111]//Type I−19.832(D1)/CHARAおよび5.706(D2)/21.668(B2)//20.257(A1)/CHARAである、M80およびM85の2つの異なる交雑種からの2,700個のF2種子を使用した。したがってスクリーニングは、それぞれA1B2D1またはA1B2D2遺伝子型がある種子を同定することを目的とした。上述したように、種子あたり2回のNIRSスペクトルを記録した。
【0387】
二連のスクリーニングの少なくとも1つにおいて、34%を超える予測された見かけのアミロース値を与えた種子をさらなる分析のために最初に選択した。2,700個の種子から27個の種子が選択され、次に光学顕微鏡によって評価されて、デンプン顆粒形態が判定された。各種子を注意深く掻き取って胚を保存しながら、なおも十分な内胚乳検査材料を獲得した。27個の内4個の種子が、歪んだデンプン顆粒形態を有することが観察された。これらの4個の種子は、NIRスクリーニングから、期せずして最大の予測された見かけのアミロース含有量を有し、これらの種子だけにおいて、予測されたアミロース値と見かけのアミロース値の双方が30%を超えた。他の23個の種子は、標準的(野生型)顆粒形態を示した。
【0388】
NIRSスクリーニングによって選択された種子上の分子データ
4個の種子上でPCR分析を実施して、それぞれのSBEIIa遺伝子型を判定した。最初のアッセイは、3個のゲノム上で各SBEIIa遺伝子の存在または不在を示す、優勢PCRマーカーを使用した。種子の3個は二重ヌル変異株であることが示された一方で、4個目の種子は推定上の三重ヌル変異株であった。しかし共優勢PCRマーカー(下記参照)でさらに試験すると、4個の種子は全て、SBEIIaの二重ヌル変異株(すなわち2個のゲノム中にSBEIIaを欠く)であり、第3のゲノム上の変異SBEIIa遺伝子について異型接合体であることが示された。したがってこれらの種子は、5個の変異SBEIIa対立遺伝子、および少なくとも2個の変異SBEIIb対立遺伝子を含有した。
【0389】
各種子からの胚を発芽条件下に置くと、恐らくそれらは非常に損傷を受けており、または変異の組み合わせが非常に有害であったために、それらの中で成功裏に発芽したものはなかった。
【0390】
より多くの候補の同定を試みるために、あまり厳しくない候補種子選択により、M80およびM85交雑種からのさらに多数のF2子孫種子上で、さらなるNIRSスクリーニングを実施した。第2のスクリーニングのための選択基準は、予測された見かけのアミロース値の1つが30%を超えて、第2の値が少なくとも23%でなくてはならないことであった。光学顕微鏡によるデンプン顆粒評価のために、22個の種子の新しいセットを選択した。これらの22の候補の内、1個の種子BD85;9F08(P279−F08−834)は、歪んだデンプン顆粒表現型を示した。この変異株はPCRによってさらに分析され、AおよびBゲノム上の二重ヌルSBEIIa変異体であり、Dゲノム上の変異SBEIIa遺伝子について異型接合であることが示された。これは増殖のために成功裏に発芽した。
【0391】
実施例11:点変異を有するデンプン分枝酵素の対立遺伝子の検出
化学的変異原アジ化ナトリウムまたはEMSを用いた処理によって生成された、変異誘発コムギ穀粒の集団をスクリーニングして、SBEIIa遺伝子に点変異を有する変異株を同定した。このスクリーニングは、野生型コムギと比較してSBEIIa−A、−Bまたは−D活性、またはSBEIIb−A、−Bまたは−D活性が減少したが消失していない変異株(部分的変異株)と並び、対応する遺伝子中の変異によりSBEIIa−A、−Bまたは−D活性、またはSBEIIb−A、−Bまたは−D活性の1つを完全に欠く変異株を検出すると期待された。変株異のスクリーニング法は、SBEIIaまたはSBEIIbに対して特異的な抗体と共にウエスタンブロット法を使用して(実施例2を参照されたい)、または次のような親和性ベースの技術によって、SBEIIaまたはSBEIIbタンパク質量を測定することに基づいた。
【0392】
グリコーゲン、アミロペクチン、アミロースまたはβ−限界デキストリンを含有するポリアクリルアミドマトリックスを通過する、デンプン分枝酵素を含む穀粒からのタンパク質抽出物の親和性(非変性)ゲル電気泳動は、デンプン結合能力が変化したSBEIIaまたはSBEIIbをコードするSBEIIaまたはSBEIIbの対立遺伝子、またはSBEIIaまたはSBEIIbアイソフォームの1つを失ったものを同定する方法を提供した。デンプン分枝酵素の活性部位がデンプン結合部位を含有したことを考えると、結合効率が変化したSBEIIポリペプチドは、触媒の速度および/または親和性が恐らく変化した。特に、結合効率が低下したポリペプチドは、SBEII活性が低下するまたはSBEII活性を失うと予測される。
【0393】
いくらかの修正を加えて、Morell et al.,(1997);およびKosar−Hashemi et al.,(2006)に基づいて、以下の方法を使用した。
【0394】
タンパク質の調製
5mMのEDTA、5mMのDTT、0.4%プロテアーゼ阻害剤カクテル、および20%グリセロールを含有する、50mMのリン酸緩衝液、pH7.5中で、発生中の種子(開花後約15日)からの単離内胚乳を均質化し、可溶性タンパク質を抽出した。14,000gで10分間の遠心分離後、上清をゲル電気泳動のために使用した。抽出物中のタンパク質濃度をCoomassie Plus Protein Assay Reagentを使用して推定した。
【0395】
親和性電気泳動
SBEIIaタンパク質イソ型分離のための二次元(2D)親和性電気泳動技術において、Hoefer SE600垂直16cmスラブゲルユニット中に流し込まれた非変性ポリアクリルアミドゲルである第1次元のゲルに、タンパク質抽出物のアリコート(40または100μg)を装入した。第2次元ゲルの分離用成分は、ゲル構造内に固定化された、適量の多糖類標的(アミロペクチン、β−限界デキストリンまたはグリコーゲン)が添加された10%グリセロールを含有する、6%非変性ゲル(14×16cmまたは16×16cm、1.5mm厚さ)であった。濃縮用ゲル(多糖類を含まない)をガラスプレートフォーミングの上部から1cmに注ぎ込んで、コームを使用してウェルを形成した。ゲルを一晩4℃、定常電圧(グリコーゲンおよびβ−限界デキストリンでは100V、アミロペクチン含有ゲルでは135V)で泳動した。
【0396】
代案としては、一次元形を使用して、タンパク質抽出物(20μg)を非変性ポリアクリルアミドゲルに装入して、SBEIIaタンパク質を分離した。ゲルの分離用成分が、ゲル構造内に固定化された、0.15%のβ限界デキストリンを添加した10%グリセロールを含有する、6%非変性ゲルであった一方、濃縮用ゲルは多糖類を含まなかった。ゲルを4℃で、ゲルあたり20mAの定電流、および最大電圧200Vで泳動した。
【0397】
SBEIIbタンパク質は、ビス−トリス4〜12%勾配ゲル(Invitrogen)上で分離できる。ゲルを4℃で、ゲルあたり20mAの定電流、および最大電圧200Vで泳動する。
【0398】
免疫学的検出
電気泳動に続くSBEIIタンパク質の免疫化学的検出のために、TE 70 PWR半乾燥移動ユニット(Amersham Biosciences)を使用して、タンパク質をゲルからニトロセルロース膜に移した。転写バッファーは、39mMグリシン、48mMトリス、0.0375%SDS、および20%メタノールを含有した。移動は、0.8mA/cm
2の定電流で1〜1.5時間実施した。コムギSBEIIaに対して特異的な一次ウサギポリクローナル抗体を使用するウエスタンブロット法に先だって、膜を5%脱脂乳でブロックした。
【0399】
一次元親和性ゲル電気泳動方法によって分析すると、コムギA、B、およびDゲノムからの同祖対立遺伝子によってコードされるSBEIIイソ型の移動パターンは、異なるコムギ変種間で相違を示した。いくつかの変種では、A、B、およびD同祖形態の明確な分離が可能であり、これらの変種からの変異誘発集団における多形性の単純なスコア付けを可能にした。例えば野生型コムギ変種SunstateおよびNB1の内胚乳からのタンパク質抽出物の親和性ゲル電気泳動は、SBEIIa−A、−Bおよび−Dイソ型の明確な分離を示した。デンプン親和性が低下している分枝酵素ポリペプチドは、それぞれの固有の同祖対立遺伝子によりコードされたポリペプチドよりも、多糖類含有ポリアクリルアミドゲル内でより長距離移動した。同型接合状態にあるバンドの存在/不在によって、および異型接合体系統中のバンド強度を測定する濃度測定を通じて、特定の同祖対立遺伝子の発現が低下し、または発現が不在の対立遺伝子を含有する系統を同定した。この方法を検証するために、親和性ゲル電気泳動によって、遺伝子型分析によって同定されたSBEIIa−およびSBEIIb−変異体植物(実施例6)が、それらの遺伝子型に一致して、特異的SBEIIaまたはSBEIIbタンパク質を欠くことを確認した。これらの実験は、SBEIIイソ型の量または活性が低下した変異株の検出について、このタンパク質分析法を検証した。
【0400】
Zwar and Chandler(1995)に記載されるようにアジ化ナトリウムで処理された、コムギSunstate変種の2100の変異誘発系統の集団が、β−限界デキストリン親和性ゲル電気泳動を使用してスクリーニングされ、親和性ゲル上におけるSBEIIaタンパク質の1つの変化した運動性(親和性変異株)、または、遺伝子によってコードされる検出可能なタンパク質が無いことを踏まえると、SBEIIaタンパク質の1つが失われていて、したがって遺伝子の1つに関してヌル変異株であるもののいずれかを有する、18の変異株が同定された。親和性変異株の1つにおける各SBEIIaイソ型のデンプン−酵素相互作用の解離定数(Kd)は、Kosar−Hashemi et al.,2006で記載されるように、1−D親和性ゲル内のβ−限界デキストリン濃度の関数として、酵素運動性の変化を測定して計算された。7−25と名付けられた親和性変異株は、SBEIIa−A、SBEIIa−B、およびSBEIIa−Dイソ型のそれぞれに対して、Kd値が0.53g/l、0.52g/l、および1.69g/lであるSBEIIaタンパク質を有した(
図13)。Dイソ型で観察された、AおよびBイソ型と比較してより高いKd値は、デンプン結合に対するこのイソ型のより低い親和性を示し、この系統がSBEIIa−D遺伝子の親和性変異体であることを示唆した。この系統のDゲノムイソ型(SBEIIa−D)は、その他の2つのイソ型と比較して酵素活性がより低いが、活性は完全には喪失しないことが予測される。この予測は、SBEIIa−AおよびSBEIIa−Bのヌル対立遺伝子存在下のSBEII活性アッセイによって確認される。
【0401】
変異株植物はさらに、植物の生育中種子からのいくつかの内胚乳を分析することで確認した。これらM3内胚乳はM2植物から単離し、SBEIIaタンパク質をゲル電気泳動およびウエスタンブロット法で調べた(
図19)。植物中の変異株SBEIIa遺伝子のヌクレオチド配列および推定したアミノ酸配列を、ゲノム特異的プライマーを用いてcDNA配列を増幅し、コード領域をシーケンスすることで決定した。現在までに、18変異株のうち9個に特異的点変異を見出し、表19に要約した通り、このうち2個がAゲノム変異株、3個がBゲノム変異株、4個がDゲノム変異株である。残りの植物の各々の変異遺伝子は、免疫ブロット中の特定のポリペプチドバンドが無いことで判断した。いくつかの系統において、ポリペプチドの帰属を、さらに非変性親和性ゲルを第2の次元ゲルとして2次元ゲルを流すことで確認した。これら変異株を、2つの群、すなわち、(a)内胚乳が免疫ブロット中でSBEIIaバンドを2個のみ示し、消失したバンドが変異したゲノムA,BまたはDを表すヌル変異株(表19でヌルを意味する「n」と表記)および(b)免疫ブロット中で3個のバンドを示し、デンプンへの親和性が変化したことによりポリペプチドの1つが異なって野生型へ移動する親和性変異株(partialを意味するpと表記)に分類した。
【0402】
共優性PCRに基づく遺伝子マーカーを、変異株系統のうち6−60,7−25,15−3Dおよび16−9Cと名付けた4個について開発した。系統6−60中のエクソン6/7スプライスジャンクションでのGからA点変異により、Fok1制限部位が消失した。この違いを利用して、プライマーペアAR2aBI6F2(5’−CATTTTTTGGTAGAACCTTTG−3’;配列番号152)およびAR2aBI7R(5’−ATCCATCCGTATCTAGAAAAT−3’;配列番号153)を用いたエクソン6−7領域のPCR増幅をともなう、共優性切断可能多型配列(CAPs)マーカーを作製し、産物を制限酵素Fok1により消化した。これにより、ゲル電気泳動で見られた通り、系統6−60から約245bp、野生型(Sunstate)から約138bpのDNA断片を得た。野生型および系統7−25からのSBEIIa−Dのエクソン21/22領域のヌクレオチド配列から、制限酵素地図を作成した。この違いを利用して、7−25についてCAPSマーカーを作製した。エクソン21/22領域のPCR増幅を、プライマーペアAR2aDex21_22F(5’−CTGTTGTAGCCATAGGAAGG−3’;配列番号154)およびAR2aex21_22R(5’−GAGCGCTCACCAACAAGCTACC−3’;配列番号155)を用いて行った。PCR産物を制限酵素Mly1で消化した結果、変異株系統7−25からおよそ229bpの断片、および野生型から141bp断片となった。野生型および系統15−3DからのSBEIIa−D遺伝子のエクソン15領域のヌクレオチド配列から制限酵素地図を作成したところ、15−3D中のGからA多型によるHpyl88IIIの制限部位の欠失が明らかになった。エクソン15領域のPCR増幅を、プライマーAR2aE15F07(5’−GTCAGTGGAATGCCTACATTTTGC−3’;配列番号156)およびAR2aE15R07(5’−GTCAGTGGAATGCCTACATTTTGC−3’;配列番号157)を用いて行った。PCR産物を制限酵素Hpyl88IIIで消化した結果、変異株15−3Dからおよそ105bpの断片、および野生型から63bp断片となった。野生型および系統16−9CからのSBEIIa−Dのエクソン17から20領域のヌクレオチド配列から制限酵素地図を作成したところ、16−9C中のCからT多型によるBseR1の制限部位の欠失が明らかになった。エクソン17から20領域のPCR増幅を,プライマーAR2aDex17_20F(5’−GGAGATATGCTTAGTAACAG−3’;配列番号158)およびAR2aDex17_20R(5’ GCTGTTAAGAACAACCTTCC−3’;配列番号159)を用いて行った。PCR産物を制限酵素BseR1で消化した結果、変異株系統16−9Cからおよそ1529bpの断片、および野生型からサイズが約1159bpおよび370bpの2つのバンドとなった。
【0403】
次に、アジ化ナトリウムで変異導入したSunstate群から同定したSBEIIa一重変異株を、2つのゲノムからのSBEIIa活性および3番目のゲノムからの活性を全体的にまたは部分的に欠く三重変異株を単離するために、以前に同定したHIB二重ヌル変異株と交雑した。3つの群の交雑を行った。1番目の群では、A1B2D2遺伝子型の変異株を単離するために4回の交雑、A2B2D2およびA2B2D1遺伝子型を単離するためにそれぞれ2回の交雑、A1B2D1遺伝子型を単離するために1回の交雑を行った。2番目の群では、A2B2D2遺伝子型の三重ヌル変異株作製のために2回の交雑、A1B2D2,A1B1D2およびA2B1D2遺伝子型の作製のためにそれぞれ1回の交雑を行った。3番目の群では、A2B1D2,A2B2D1およびA1B1D2遺伝子型の生産のためにそれぞれ4回の交雑、A2B2D2遺伝子型のために10回の交雑、A1B2D2遺伝子型のために6回の交雑、A1B2D1遺伝子型のために2回の交雑を行った。得られたF1植物を自家交雑してF2内胚乳を生産した。
【0404】
F2内胚乳からのデンプン顆粒を、顆粒形態の変化を見るために光学顕微鏡で調べた。高アミロース(少なくとも70%アミロースのレベル)を有する穀粒で見られる種子と同様に、ひどく歪んだデンプン顆粒を呈するF2種子を同定した。第1群における個々の交雑の結果は、以下に示す通りである。
【0405】
交雑7−25(D2)X 08/h−92(A1B2)、CS3と命名。F2種子192個のスクリーニングから、デンプン顆粒の形態がさまざまな程度に変化した種子19個を同定した。これらの種子は発芽し、できた植物の葉サンプルからDNAを抽出した。選択した植物19個からのDNAについてPCRを行って、(1)親7−25(上記)由来のDゲノム中の点変異を検出するために、Mly1により消化した、CAPS共優性マーカーAR2aDex21_22FおよびAR2aex21_22Rを検出し、および(2)08/−H−92親系統由来のAおよびBゲノム中のSBEIIa欠失を検出するために、AR2aI13ゲノムF2およびAR2aI13ゲノムR2プライマーを検出した。試した19系統のうち、C3,C10,A2およびF9と名付けた4つの植物が、7−25親由来のSBEIIa−D中の点変異について同型接合であり、SBEIIa−AおよびSBEIIa−B由来の断片を明らかに失っているので欠失同型遺伝子について同型接合である。このことは、これらの植物が三重ヌル遺伝子型であることを示す。C3,C10,A2およびF9植物の各々からの4個の生育中種子のSBEIIaタンパク質の発現をゲル電気泳動およびウエスタンブロット法により分析した。結果から、これらの植物全てがSBEIIa遺伝子について同型接合三重ヌル変異株であると確認した。
【0406】
交雑6−60(B2)X 08/i−G3(A1D2)、CS2と命名。全部で288個のF2種子をスクリーニングして、この交雑から、F11,D8,E6およびE11と名付けられた4個の三重ヌル種子を同定した。これらの種子から生産した植物のうち、F11およびD8が三重ヌル遺伝子型であることを確認した。F11およびE6種子から生産した植物は正常な生長および生育を示し、植物E11は幼植物の段階で死滅し、植物D8には開花時期が遅れる表現型があった。植物F11およびE6は、4個の内胚乳のそれぞれがSBEIIa発現を欠くことから、SBEIIaの同型接合三重ヌル変異株であると確認した。この交雑CS2−C6からの異型接合系統からのF3種子10個を分析した結果、SBEIIa発現の欠損について同型接合であると確認した,1個の三重ヌル種子CS2−C6.4を同定した。
【0407】
交雑08/b−18(A1D1)X 6−60(B2)、CS1と命名。F2種子192個を顕微鏡で、288個をPCRでスクリーニングした結果、同型接合の三重ヌルは同定できなかった。しかし、異型接合系統と確認できた1個であるA1B2hetD1−G12は、SBEIIa−Aおよび−B遺伝子について同型接合二重ヌルであり、SBEIIa−D変異対立遺伝子について異型接合であり、生長することができた。F3生長中種子から胚を単離し、栽培して植物およびSBEIIaポリペプチドの型が既知の対応する内胚乳を生産した。分析した種子29個のうち、ゲル電気泳動およびウエスタンブロット法により、5個が三重ヌル遺伝子型を有することを見出した。これら5個のCS1三重ヌル系統のうち、4個だけが結実まで生き延びた。これら4個のうち、1個の系統CS1−G12/15のみが他のCS1系統と比較して結実が良好であると見受けられた。これら親世代変異株系統から作られたA1D1B2三重ヌル同型接合植物は、繁殖性が低下したと見受けられ、これはおそらく2番目の変異にともなうリンケージドラッグによると考えられる。非遺伝子組み換え系統と戻し交雑。
【0408】
第2群のなかで、CS10と名付けた08/mm−M7−E11(A2D2) X 6−60(B2)交雑からのF2種子288個のスクリーニングから、CS10−C12と名付けたA2B2D2遺伝子型の三重同型接合ヌル種子を1個を同定した。すなわち、この遺伝子型は3個のSBEIIa遺伝子についてヌルであり、3個のSBEIIb遺伝子について野生型である。光学顕微鏡による分析から、CS10−C12種子中に歪んだデンプン顆粒が存在し、これはアミロースレベルが相当高くなっていることを示す。この種子を播き、ガラスハウス内で植物を生産した。植物DNAから、この植物が三重ヌルSBEIIaおよび野生型SBEIIb遺伝子型であることを確認した。F3種子のデンプン中のアミロース含有量を測定した。
【0409】
他の交雑からのF2種子も同じ要領で調べられた。
【0410】
2つの三重ヌル系統、CS3−A2(08/h−92(A1B2)X7−25(D2))およびCS2−F11(08/i−G3(A1D2)X6−60(B2))の穀粒デンプン中のアミロース含有量を最初はヨウ素定量法で分析した。結果を表20に掲げ、陽性コントロールとしてのSBEIIa抑制RNAi系統、野生型としてのSunstateおよびNB1と比較した。CS3−A2系統の穀粒デンプンのアミロース含有量は69.5%であり、CS2―F11は85.3%であった。比較すると、野生型穀粒のアミロースレベルが約32.9%で、RNAi SBEIIa系統85.2cは72.2%から75.1%の範囲となった。CS1,CS2およびCS3の特性を比較するために、アミロース含有量をさらにヨウ素定量法で分析し、データを表21に掲げた。CS1およびCS2系統の両方が80%よりも高いアミロース含有量を示して80−86%の範囲にあるのに対し、CS3系統はアミロース含有量が約67%から70%となった。A2B2D2三重ヌル系統CS10−C12を含む3回目のアミロース分析を行い、その結果を表22に示す。CS1およびCS2三重ヌル系統が74%から84%の範囲にあったのに対し、CS10−C12はアミロース含有量67.4%を示し、CS3系統で見られた範囲に及ばなかった。A1単一ヌル系統の値が39.5%であったのに対し、A1B2二重系統はこのアッセイで50.4%から53.6%の範囲にあった。
【0411】
これらの種子から生産した植物の生長および発生を観察した。三重ヌルSBEIIa植物の予備的農学的特性を表23に要約した。三重ヌル系統から得た個々の種子の平均重量は34.2から46.5gの範囲にあった。植物あたりの種子の全個数は15から254の範囲にあった。CS2およびC3の三重ヌル系統は、コントロール植物と比較して繁殖性の有意な損失を呈しなかった。4つのCS1三重ヌル系統のうち3つで相当の不稔性が見られた。これらの植物の種子形態の検査により、種子は明確には縮んでいないことが明らかになった。CS3−A2系統からの三重ヌル植物の種子は、CS3,CS2およびCS1系統からの他の三重ヌル系統の種子と比較して、白っぽい外見を有していた。
【0412】
CS2_F9およびCS3−A2三重ヌル系統の穀粒から単離したデンプンについて、イソアミラーゼ分岐除去デンプンの鎖長分布をキャピラリー電気泳動により調べた。野生型(Sunstate)について得た値から変異株のものを差し引いてある差プロットから、三重ヌル系統のプロフィールがRNAi SBEIIa系統85.2cのものと非常に似ており、DP9から15の長さを有する鎖の比率が有意に減少し、DP17−19およびDP>26である長鎖の比率が増大した。CS2−F11系統では、DP9−15である短鎖の比率の差がCS3−A2および85.2cよりも目立っていた。CS2−F11でも、DP6−7である超短鎖で有意な増加があった。
【0413】
また親和性単一変異株間で8回の交雑を実施して、SBEIIaの親和性二重変異株を生成した。これはA2B2、A2D2、およびB2D2二重親和性変異株を単離する目的で生成された交雑種を含んだ。F2子孫を上述の方法によって分析し、二重同型接合親和性変異株を同定した。
【0414】
実施例12:高アミロースコムギ穀粒からのデンプン顆粒およびデンプンの特性
デンプン顆粒の形態および複屈折の変化
実施例2に記載される遺伝子組換え高アミロースコムギ中で、デンプンおよびデンプン顆粒の特性を調べた。走査型電子顕微鏡を使用して、デンプン顆粒サイズおよび構造の全体的変化を同定した。SBEIIa発現が低下している内胚乳からのデンプン顆粒は、非形質転対照と比較して著しい形態学的変化を示した。それらは形が高度に不規則であり、A顆粒(>10μm径)の多くは鎌形のようであった。対照的に、SBEIIb発現が低下しSBEIIa発現が無変化の内胚乳からのAおよびB(<10μm径)デンプン顆粒は、どちらも表面が滑らかで形状が球状または楕円体であり、野生型コムギデンプン顆粒と識別不能であった。
【0415】
偏光下で顕微鏡的に観察すると、野生型デンプン顆粒は、典型的に強力な複屈折パターンを示す。しかし、高アミロースデンプン含有顆粒では、複屈折は大幅に低下した。SBEIIa発現が低下してアミロース含有量が70%〜80%の系統からのデンプン顆粒を偏光下で視覚化すると、10%未満が複屈折性であった。SBEIIb発現が本質的にないが野生型SBEIIa発現のある系統では、非形質転換対照と比較して、複屈折の変化は観察されなかった。野生型およびSBEIIb抑制系統のどちらも、デンプン顆粒のおよそ94%が完全な複屈折を示した。データを表24に記載する。したがって複屈折喪失は、高アミロース含有量と密な相関性がある。
【0416】
遺伝子組換えコムギ穀粒のアミロース含有量
2つの独立した方法、すなわちヨウ素滴定法およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法によって、遺伝子組換えコムギ穀粒のアミロース含有量をアッセイした。アミロース含有量のヨウ素滴定測定は、実施例1記載されるように、既知の濃度精製ジャガイモアミロースおよびアミロペクチンを使用して作成される標準曲線に関連して、ヨウ素がα−1,4グルカンの直鎖領域に結合する際に誘発される色変化の測定に基づいていた。サイズ排除クロマトグラフィー法は、脱分枝されていないアミロースおよびアミロペクチンのカラムクロマトグラフィーによる分離と、それに続くカラムから溶出した画分中のデンプン濃度の測定に基づいていた。穀粒の3つの遺伝子型を分析した。1つ目は、hp−SBEIIaコンストラクトで形質転換されて、SBEIIa発現レベルが非常に低い植物;2つ目は、hp−SBEIIbコンストラクトを含有して、検出可能なSBEIIb発現がないがSBEIIaについて野生型である植物;3つ目は、非形質転換野生型対照(NB1)。SBEIIb発現を欠く植物(008)からの穀粒は、アミロース含有量が、ヨウ素滴定法による測定で27.3%であり、SEC法では32%であった。これは非形質転換対照系統NB1穀粒のアミロース含有量(ヨウ素滴定で31.8%、SECで25.5%)と顕著に異ならない。しかしSBEIIa発現が低下している穀粒(087系統)では、アミロース含有量は顕著に上昇した(ヨウ素滴定で88.5%、SECで74.4%)。087系統に関するこれらの2つの数値の差は、アミロースと良く似てヨウ素に結合し、ヨウ素滴定アッセイ中でアミロースとして測定されるが、カラムクロマトグラフィーではより大きいアミロペクチンと共に分離される、いくつかの「中間体物質」の存在であると考えられた。
【0417】
FACEによるデンプンの鎖長分布
イソアミラーゼ脱分枝デンプンの鎖長分布は、フルオロフォア支援炭水化物電気泳動(FACE)によって判定した。この技術は、DP1〜50の範囲内で、鎖長分布の高分解能分析を提供する。非形質転換対照の正規化鎖長分布が遺伝子組換え系の正規化分布から差し引かれるモル差プロット(molar difference plot)から、SBEIIa発現が低下した穀粒からのデンプンにおいて、DP6−12の鎖長の比率の著しい低下と、DP12を上回る対応する鎖長増大があったことが観察された。野生型と比較して、hp−SBEIIb系統からのデンプンの鎖長分布に、統計的に有意な変化は観察されなかった。
【0418】
アミロペクチンおよびアミロースの分子量
デンプンの分子量分布をサイズ排除−HPLC(SE−HPLC)によって測定した。HPLCシステムは、Auto Sampler(GBC、LC1610)および蒸発光散乱検出器(ELSD)(ALLTech、Deerfield,USA)を装着した、GBCポンプ(LC 1150、GBC Instruments,Vic,Australia)から構成された。Ultrahydrogel1000カラム、Ultrahydrogel250カラム、およびガードカラム(7.8mm×300mm、Waters,Japan)を使用して、HPLC操作中35℃を保った。´酢酸アンモニウム緩衝液(0.05M;pH5.2)を流速0.8mLmin
−1で移動相として使用した。
【0419】
SBEIIa低減穀粒デンプン中のアミロペクチンの分子量は、NB1(野生型、非遺伝子組換え)およびSBEIIb低下穀粒デンプン中のアミロペクチンよりも、はるかにより低いようであった(ピーク位置が45523、43646kDaと対比して7166kDa)。対照的に、SBEIIb低下穀粒からのアミロースの分子量は、非形質転換変種NB1からの野生型穀粒と比較して、顕著に異ならなかった。データは表25にある。
【0420】
SBEIIa発現が低下したコムギ内胚乳中の全デンプン含有量
穀粒重量の百分率としての穀粒中の全デンプン含有量の解析は、対照の52%およびhp−SBEIIb系統の50.3%と比較して、hp−SBEIIa系統(43.4%)中の内胚乳デンプン含有量のわずかな低下を明らかにした(表24)。これは阻害性コンストラクトによってSBEIIa発現が低下すると、全デンプン合成にいくらかの低下があったことを示唆した。
【0421】
デンプン膨潤力(SSP)
デンプンの糊化中の水取り込みを測定するKonik−Rose et al.,(2001)の小規模検査に従って、糊化デンプンのデンプン膨潤力を測定した。SSP推定値は、対照(9.31)およびSBEIIb低下穀粒(10.74)からのデンプンと比較して、SBEIIa低下系統からのデンプンで数値3.51と顕著により低かった(表24)。
【0422】
デンプン糊化特性
本質的にRegina et al.,(2004)に記載されるRapid Visco Analyzer(RVA)を使用して、デンプン糊化粘度パラメータを測定した。RVAの温度プロファイルは、以下の段階を含んでなる。60℃で2分間保持、6分間で95℃に加熱、95℃で4分間保持、4分間で50℃に冷却、および50℃で4分間保持。結果(表26)は、対照コムギデンプンと比較して、SBEIIa低下穀粒からのデンプン中で、ピークおよび最終粘度が顕著により低かったことを示した。
【0423】
デンプンゼラチン化特性
Regina et al.,(2004)に記載される示差走査熱量測定(DSC)を使用して、デンプンゼラチン化特性を研究した。Perkin Elmer Pyris 1示差走査熱量計上でDSCを実施した。1:2の比率でデンプンおよび水を予備混合し、およそ50mgをDSCパン内に量り入れて密封し、一晩平衡化させた。1分あたり10℃の加熱速度を使用して、試験および参照サンプルを30〜130℃に加熱した。装置付属のソフトウェアを使用して、データを分析した。結果(表27)は、対照(66.6℃)と比較して、SBEIIa低下穀粒からのデンプンのゼラチン化温度終了遅延(72.6℃)を明らかに示した。対照デンプン(61.16℃)と比較して、SBEIIa低下デンプン(63.51℃)は、ピークゼラチン化温度もまたより高かった。
【0424】
実施例13:加工中の高アミロースコムギ小麦粉の分析
加圧加工に関するCSIROFood and Nutritional Sciences,Werribeeとの共同研究
小角X線散乱(SAXS)を使用して、天然デンプンと比較した高アミロースコムギデンプンの構造特性評価を実施した。研究は、a)生小麦粉の特性評価、およびb)100℃を超える温度における小麦粉またはデンプンサンプルの加圧料理中の糊化処理のリアルタイム分析、およびc)0〜10日間にわたる冷却時の構造変化と老化を含めるようにデザインされた。研究では、約25%(野生型)〜約75%の範囲にわたる、約10%刻みで増大する様々なアミロース含有量の小麦粉サンプルを使用した。
【0425】
3組の小麦粉サンプルを実験に含めた。1つ目は、SBEIIa低下系統からの高アミロースコムギのプールなしの純粋系統であり、hp−comboコンストラクトで形質転換された約50%のアミロースを有する中程度のレベルのアミロースコムギ系統AC45.1(実施例2)および対照コムギ(NB1)。2つ目は、実施例2に記載される形質転換系統からのプールされたコムギ材料、プールサンプルは、アミロース含有量が約10%刻みで増大される。3つ目は、コムギ(高アミロース、野生型、およびSSIIaを欠くコムギ)、オオムギ(野生型、SBEIIaおよびSBEIIb低下による高アミロース、およびSSII低下による高アミロース)、およびアミローストウモロコシをはじめとする、異なる種からの比較穀粉。一連のアミロース含有量のプールされたコムギ物質に対する難消化性デンプン分析の結果は、難消化性デンプンのアミロース含有量?40%からの直線的増大を明らかにした。
【0426】
実施例14:パンおよびその他食品生産
高アミロースコムギなどの穀粒を食餌中に送達する最も効果的な様式の1つは、パンを経由する。高アミロースコムギが、パンに容易に組み込み得ることを示し、製パン品質の維持を可能にする要素を調べるために、小麦粉サンプルを製造し、分析して、ベーキングで使用した。以下の方法を用いた。
【0427】
方法
コムギ穀粒を16.5%の水分含量に一晩調湿して、BRI Ltd,AustraliaのBuhler実験室規模製粉機で、またはQuadromat Junior製粉機を使用して製粉し、それに続いて篩掛けして、最終粒度150μmを得た。AACC法39−11(1999)に従った赤外線反射率(NIR)によって、またはDumas法およびAACC法44−15A(AACC
51999)に従った空気乾燥器によって、サンプルのタンパク質および水分含有量を測定した。
【0428】
マイクロZ−arm混合
マイクロZ−armミキサーによって、混合あたり4gの試験小麦粉を使用して小麦粉の最適吸水値を判定した(Gras et al.,(2001);Bekes et al.,(2002)。全ての混合において、それぞれ96および64rpmの迅速および緩慢ブレードの軸速度で、一定の角速度を使用した。混合は、三連で各20分間実施した。水を小麦粉に添加する前に、固形成分の混合のみによって、ベースラインを自動的に記録した(30秒間)。自動送水ポンプを使用して、水を一度に添加した。以下のパラメータは、個々の混合実験から平均を取って判定された。WA%:吸水量は500ブラベンダー単位(BU)生地粘稠度で判定された;生地形成時間(DDT):ピーク抵抗までの期間(秒)。
【0429】
ミキソグラム
改変小麦粉に関する最適生地混合パラメータを判定するために、全生地質量を一定に保ちながら、10gのCSIROプロトタイプミキソグラフ中で、マイクロZ−armミキサーで測定される吸水量に相当する変動する吸水量のサンプルを混合した。各小麦粉サンプルで、以下のパラメータを記録した。MT−混合時間(秒);PR−ミキソグラフピーク抵抗(任意の単位、AU);BWPR−ピーク抵抗での帯域幅(任意の単位、AU);RBD−抵抗崩壊(%);BWBD−帯域幅崩壊(%);TMBW−最大帯域幅までの期間(秒);およびMBW−最大帯域幅(任意の単位、A.U.)。
【0430】
マイクロ伸張試験
生地伸展性パラメータは、次のように測定した:生地を10gのプロトタイプミキソグラフ中のピーク生地形成まで混合した。修正ジオメトリKieffer生地およびグルテン伸展性装置を用いて、TA.XT2iテクスチャー分析器上で、1cm/sでの伸張試験を実施した(Mann et al.,2003)。伸張試験のための生地サンプル(約1.0g/試験)をKieffer成型機で成型して、伸張試験前に30℃および90%RHで45分間休ませた。Exceed Expertソフトウェアを用いて、データからR_MaxおよびExt_Rmaxを判定した(Smewing,Themeasurement of dough and gluten extensibility usingtheSMS/Kieffer rig and theTA.TX2 texture analyzer handbook,SMS Ltd:Surrey,UK,1995;Mann,(2002)。
【0431】
14gの小麦粉を100%とした例証的レシピは、次のとおりであった。小麦粉100%、塩2%、乾燥酵母1.5%、植物油2%、および改良剤(アスコルビン酸100ppm、真菌アミロース15ppm、キシラナーゼ40ppm、大豆粉0.3%;Goodman Fielder Pty Ltd,Australiaから得られる)1.5%。加水レベルは、完全配合のために調節されたマイクロZ−arm吸水値に基づいた。小麦粉(14g)およびその他の成分を35gのミキソグラフ中のピーク生地形成時間まで混合した。成型および型詰めを40℃で85%RHの二段階プルーフィングで実施した。ベーキングはRotelオーブン内で、190℃で15分間実施した。ローフ体積(カノーラ種子置換法によって測定される)および重量は、ラック上で2時間の冷却後に測定した。ローフを経時的に秤量して、正味水損失を測定した。
【0432】
小麦粉または全粒小麦は、非改変コムギからの小麦粉または全粒小麦、またはオオムギなどのその他の穀類と混合して、所望の生地および製パンまたは栄養価を提供してもよい。例えば栽培品種CharaまたはGlenleaからの小麦粉は、生地強度が高いのに対し、栽培品種Janzの生地強度は中程度である。特に小麦粉中の高および低分子量グルテニンサブユニットのレベルは、生地強度と正の相関があり、さらに存在する対立遺伝子の性質によって影響を受ける。
【0433】
SBEIIaが低下した遺伝子組換えコムギ系統からの小麦粉が、100%、60%、および30%の添加レベルで使用された。例えば全ての小麦粉が様々なコムギ系統に由来するか、またはベーキング対照(B.追加)小麦粉に60%または30%が添加された。百分率は、パン配合中の全小麦粉である。4つの遺伝子組換えコムギ系統が、次のように使用された:072(SBEIIa低下)、212(SBEIIa低下×SBEI三重ヌルコムギの交雑に由来するコムギ系統)、H7(SBEIIa低下×SSIIa三重ヌルコムギの交雑に由来するコムギ系統)、および008(SBEIIb低下)が、非形質転換対照コムギ(NB1)と共に試験された。全てのコムギは、Brabender Quadramat Juniorミル内で製粉した。全ての混合物は、上述したように、4gのZ−armミキサーで測定された吸水量と、10gのミキソグラフで測定された最適混合時間を有した。これらの条件を使用して、10gの試験ベーキングローフを調製した。
【0434】
混合特性
対照系統(ベーキング対照、NB1および008)を除いて、全てのその他のコムギ系統は大幅に上昇した吸水値を与えた(
図17(a))。系統212および072は、添加レベルの増大と共に、100%の212小麦粉の添加で最高95%の吸水値をはじめとする、吸水値の増大を与えた。これらの系統からの小麦粉の組み込みレベルの増大はまた、最適ミキソグラフ混合時間の短縮をもたらした(
図17(b))。吸水データと同様に、非対照系統は、添加レベルの増大と共に、比膨化体積(ローフ体積/ローフ重量)に大幅な低下を示した。影響は212系統で特に強力であった。
【0435】
これらの研究は、許容されるクラム構造、歯触り、および外観をはじめとする、商業的可能性のあるパンが、対照小麦粉サンプルと会合された高アミロースコムギ小麦粉を使用して得られ得ることを示す。さらに、高アミロースコムギは、好ましい遺伝的背景特性(例えば好ましい高および低分子量グルテニン)、グルテン、アスコルビン酸塩または乳化剤などの改良剤の添加、または異なる製パン様式の使用(例えば中種製パン、サワードウ、マルチグレイン、または全粒小麦)と組み合わせて使用されて、腸および代謝健康の改善に対して特定の効用および栄養効能がある一連の製品を提供する。
【0436】
その他の食品:
標準BRI Research Noodle Manufacturing Method(AFL029)を使用して、Hobartミキサー内で、黄色アルカリ麺(YAN)(100%小麦粉、32%水、1%Na
2CO
3)を調製した。Otake製麺機のステンレス鋼ローラー内で麺シートを形成した。休止(30分間)後、麺シートを切り分けて細断した。麺の寸法は1.5×1.5mmであった。
【0437】
標準BRI Research Noodle Manufacturing method(AFL028)に従って、Hobartミキサー内で、即席麺(100%小麦粉、32%水、1%NaCl、および0.2%Na2CO3)を調製した。Otake製麺機のステンレス鋼ローラー内で麺シートを形成した。休止(5分間)後、麺シートを切り分けて細断した。麺の寸法は1.0×1.5×25mmであった。麺を3.5分間蒸煮して、次に150℃、45秒間で油で揚げた。
【0438】
中種(S&D)パン
BRI Research中種ベーキングは、二段法を伴った。最初の段階では、全小麦粉の一部を水、酵母、およびイーストフードと混合してスポンジを作成した。スポンジを4時間発酵させた。第2の段階では、スポンジに残りの小麦粉、水、およびその他の成分を合わせて、生地を作成した。工程のスポンジ段階は200gの小麦粉で作成し、4時間発酵させた。発酵したスポンジに残りの100gの小麦粉およびその他の成分を混合して、生地を調製した。
【0439】
パスタ−スパゲティ
パスタ製造に使用した方法は、Sissons et al.,(2007)に記載される。高アミロースコムギ(SBEIIa低下)および対照コムギ(NB1)からの試験サンプル小麦粉をManildraセモリナと様々な百分率で混合し(試験サンプル:0、20、40、60、80、100%)、小規模パスタ調製用の小麦粉ミックスを得た。サンプルを30%水分に調節した。所望量の水をサンプルに添加して短時間混合し、50gファリノグラフボールに移し入れてさらに2分間混合した。コーヒー豆サイズの小片に似た得られた生地をステンレス鋼チャンバーに移し入れて、7000kPaの圧力下で9分間、50℃で休ませた。次にパスタを定速で押出し、およそ48cmの長さに切断した。各サンプルで2バッチのパスタを製造した。Thermoline Temperature and Humidity Cabinet(TEC 2604)(Thermoline Scientific Equipment,Smithfield,Australia)を使用してパスタを乾燥した。乾燥サイクルは、25℃の保持温度とそれに続く65℃への増大を45分間、次に50℃で約13時間とそれに続く25℃への冷却からなった。サイクル中、湿度を制御した。引き続く試験のために乾燥パスタを7cmの長さに切断した。
【0440】
実施例15:食物サンプルの血糖指数(GI)および難消化性デンプン(RS)の生体外測定
本明細書に記載されるように製造されたパンをはじめとする食物サンプルの血糖指数(GI)を生体外で次のように測定した:食物サンプルを家庭用フードプロセッサ内で均質化した。およそ50mgの炭水化物に相当するサンプル量を120mlのプラスチックサンプル容器内に量り入れ、α−アミラーゼなしで100μlの炭酸塩緩衝液を添加した。炭酸塩緩衝液添加のおよそ15〜20秒後に、5mlのペプシン溶液(65mlのHCl0.02Mに溶解した65mgのペプシン(Sigma)、pH2.0、使用日に作成)を添加し、混合物を70rpmの往復流水浴内で37℃で30分間インキュベートした。培養に続いてサンプルを5mlのNaOH(0.02M)で中和して、25mlの酢酸緩衝液0.2M、pH6を添加した。次にNa酢酸緩衝液(酢酸ナトリウム緩衝液、0.2M、pH6.0、0.20M塩化カルシウムおよび0.49mM塩化マグネシウム含有)に溶解した、2mg/mLパンクレアチン(α−アミラーゼ、Sigma)とアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)からの28U/mLアミログルコシダーゼ(AMG、Sigma)を含有する5ml酵素混合物を添加して、混合物を2〜5分間インキュベートした。1mlの溶液を各フラスコから1.5ml管に移し入れ、3000rpmで10分間遠心分離した。上清を新しい管に移し、冷凍庫内で保存した。残りの各サンプルをアルミニウムホイルで覆い、容器を水浴内で37℃で5時間インキュベートした。次にさらに1mlの溶液を各フラスコから収集し、先に実施したように、遠心分離して上清を移した。これもまた、吸光度の読み取りまで、冷凍庫内に保存した。
【0441】
全てのサンプルは室温で解凍し、3000rpmで10分間遠心分離した。サンプルを必要に応じて希釈し(通常1:10希釈で十分である)、各サンプルから10μlの上清を96ウェルマイクロタイタープレートに二連または三連で移し入れた。グルコース(0mg、0.0625mg、0.125mg、0.25mg、0.5mg、および1.0mg)を使用して、各マイクロタイタープレートの標準曲線を作成した。各ウェルに200ulのGlucose Trinder試薬(Microgenetics Diagnostics Pty Ltd,Lidcombe,NSW)を添加して、プレートを室温でおよそ20分間インキュベートした。プレートリーダーを使用して、各サンプルの吸光度を505nmで測定し、標準曲線を参照してグルコースの量を計算した。
【0442】
本明細書に記載されるように製造されたパンをはじめとする食物サンプル中の難消化性デンプン(RS)のレベルは、生体外で次のように測定した。この方法は、試料調製と、普通に摂食されたものとしての食物中のデンプンの生体外消化について記述する。方法は2つの部分を含む:第1に、食物中のデンプンを疑似生理学的条件下で加水分解した;第2に、洗浄を通じて副産物を除去し、サンプルの均質化および乾燥後に残留デンプンを測定した。消化処理の終わりに定量化されたデンプンは、食物の難消化性デンプン含有量に相当する。
【0443】
1日目に、例えば家庭用フードプロセッサで噛みくだきによって達成される粘稠度に均質化することで、摂取を模倣する様式で食物サンプルを処理した。均質化後、最高500mgの炭水化物に相当する量の食物を125mLエルレンマイアーフラスコ内に量り入れた。121mgのNaHCO
3および157mgのKClをおよそ90mLの精製水に溶解し、159μLの1M CaCl
2・6H
2O溶液および41μLの0.49M MgCl
2・6H
2Oを添加して、0.32MのHClでpH7〜7.1に調節し、体積を100mLに調節して炭酸塩緩衝液を調製した。この緩衝液を4℃で最高5日間まで保存した。1mLの炭酸塩緩衝液あたり250単位ofα−アミラーゼ(Sigma A−3176;ブタ膵臓からのタイプVI−B)を含有する人工唾液溶液を調製した。およそ食物重量に等しい人工唾液溶液の量をフラスコに添加した。唾液添加の約15〜20秒後、5mLのHCl中のペプシン溶液(0.02MのHCl、pH2.0中の1mg/mLペプシン(Sigma)、使用日に作成)を各フラスコに添加した。アミラーゼ、次にペプシンの混合は、ヒトが食物を飲む混む前の噛みくだきを模倣した。混合物を85rpmで振盪しながら、37℃で30分間インキュベートした。次に混合物を5mLの0.02M NaOHで中和した。フラスコあたり、25mLの酢酸緩衝液(0.2M、pH6)と、酢酸緩衝液、pH6中に2mg/mLのパンクレアチン(Sigma、ブタ膵臓4×USP活性)およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)からの28Uのアミログルコシダーゼ(AMG、Sigma)を含有する5mLのパンクレアチン酵素混合物とを添加した。各フラスコにアルミニウムホイルで蓋をして、85rpmに設定した往復流水浴内で、37℃で16時間インキュベートした。
【0444】
2日目に、各フラスコの内容物を50mLポリプロピレン管に定量的に移し、室温で2000×gで10分間遠心分離した。上清を廃棄して、各ペレットを20mLの水で3回洗浄し、各洗浄毎に管を穏やかにボルテックスしてペレットを砕き、続いて遠心分離した。最後の50μlの洗浄水をGlucose Trinder試薬で、遊離グルコースの不在について試験した。次に各ペレットをおよそ6mLの精製水に再懸濁し、S25N−8G分散ツール付きUltra Turrax TP18/10を使用して、10秒間にわたり3回均質した。内容物を25mLメスフラスコに定量的に移して、一定体積にした。内容物を完全に混合して、ポリプロピレン管に戻した。各懸濁液の5mLのサンプルを25mLの培養管に移して、即座に液体窒素内でシェル凍結して凍結乾燥した。
【0445】
3日目に、Megazyme Total Starch Procedureキットで提供される試薬を使用して、各サンプル中の全デンプンを測定した。デンプン標準物質(Regular Maize Starch、SigmaS−5296)およびアッセイ試薬空試験を調製した。サンプル、対照、および試薬空試験を0.4mLの80%エタノールで湿らせて分散を助け、ボルテックスがそれに続いた。即座に2mLのDMSOを添加して、ボルテックスにより溶液を混合した。管を沸騰する水浴5分間に入れて、MOPS緩衝液(pH7、5mMのCaCl
2および0.02%アジ化ナトリウム含有)中の3mLの熱安定性アミラーゼ(100U/ml)を即座に添加した。a溶液を3分間隔でボルテックス混合しながら、沸騰水浴内でさらに12分間インキュベートした。次に管を50℃水浴に入れて、4mLの酢酸ナトリウム緩衝液(200mM、pH4.5、0.02%アジ化ナトリウム含有)と0.1mLの300U/mlアミログルコシダーゼを添加した。混合物を10分間隔で穏やかに混合しながら、50℃で30分間インキュベートした。体積をメスフラスコ内で25mLにして良く混合した。アリコートを2000×gで10分間遠心分離した。50μLの上清中のグルコースの量を1.0mLのGlucose Trinder試薬によって測定し、管を最低18分間最大45分間暗所で室温インキュベーションした後に、吸光度を505nmで測定した。
【0446】
4種の遺伝子組換えコムギ系統、すなわち072(低下SBEIIa)、212(SBEIIa低下×SBEI三重ヌルコムギの交雑に由来するコムギ系統)、H7(SBEIIa低下×SSIIa三重ヌルコムギの交雑に由来するコムギ系統)、および008(SBEIIb低下)からの小麦粉から焼かれた食パンを非形質転換対照コムギ(NB1)と共に、100%、60%および30%の小麦粉、残りの40%または70%の小麦粉が野生型穀粒由来である組み込みレベルで、RSおよびGIについて試験した。212、072、およびH7小麦粉の組み込みの増大は、RSの有意な増大(
図18(a))と、予測GIの低下(
図18(b))をもたらした。変化の規模は、系統212からの小麦粉を使用した場合に最大であった。例えばこの高アミロース小麦粉の100%添加から作られたパンはRS含有量が約10%であり、これは30%レベルの含有の150%増大に相当し、NB1対照と比較して9倍の増大に相当した。008系統からの小麦粉の組み込み程度の増大は、結果として生じるローフのRSおよびGIに影響を及ぼし、結果はベーキング対照小麦粉と同等であった。
【0447】
系統F9およびF11穀粒から生産した小麦粉を、難消化性デンプン含有量につきインビトロ法で試験した。thw野生型栽培品種SunstateおよびNB1由来のコントロール小麦粉の0.2−0.4g/小麦粉100gと比較して、F11小麦粉のRS含有量が約6.5g/小麦粉100gであるのに対し、F9小麦粉はRS含有量が約3g/小麦粉100g(範囲2.3−3.4g/小麦粉100g)であった。これは、野生型小麦粉のRSレベルに対し、約8倍または少なくとも10倍の増加である。
【0448】
実施例16:高アミロースコムギの加工および結果として生じるRSレベル
小規模研究を行って、圧延または圧扁された高アミロースコムギからの加工穀粒の難消化性デンプン(RS)含有量を判定した。技術は、水分レベル25%への1時間の穀粒の馴化を伴い、穀粒の蒸煮がそれに続いた。蒸煮に続いて、小規模ローラーを使用して、穀粒を圧扁した。次にフレークをオーブン内で120℃で35分間ローストした。SBEIIa低下高アミロースコムギ(HAW、系統85.2c)および野生型対照コムギ(栽培変種Hartog)からのおよそ200gのサンプル上で、2種類のローラー幅と3種類の蒸煮時間を使用した。試験されたローラー幅は、0.05mmおよび0.15mmであった。試験された蒸煮時間は60’、45’、および35’であった。
【0449】
この研究は、対照と比較して、加工高アミロースコムギ中のRS量の明白なかなりの増大を示した(表28、
図18)。またRSレベルに対して、加工条件のいくらかの効果もあった。例えば高アミロース穀粒では、より長い蒸煮時間は、RSレベルにわずかな低下をもたらしたが、これは蒸煮中のデンプン糊化の増大に起因する見込みが高い(表28)。より幅広いローラー間隙は、最長蒸煮時間以外では、より高いRSレベルを生じた。これは、より狭い間隙で穀粒を圧延した際に、デンプン顆粒の剪断損傷が増大して、RSレベルをわずかに低下させたことに起因し得た。より狭いローラー間隙はまた、Hartog対照でより高いRSレベルをもたらしたが、全体的RSレベルははるかにより低かった。高アミロースの結果とは対照的に、蒸煮時間の増大はより高いRSレベルをもたらしたが、これは恐らくより長い蒸煮時間でのデンプン糊化の増大が、引き続く加工および冷却中のデンプン老化増大に寄与したためである。
【0450】
様々な製品からのRSに関する統合データ。実施例10に記載されるようにして調製された麺、中種パンおよびスパゲティなどの様々な製品から得られたRSデータを表29に提示する。全ての製品について全ての組み込みレベルが試験されたわけではないが、分析した製品の大部分で、20%、40%、および60%の組み込みレベルを使用した。結果は、RS含有量と高アミロース小麦粉組み込みレベルとの間の直線関係を示した。
【0451】
実施例17:SBEIIAに点変異を有するさらなる植物の単離
標準EMS処理条件を使用して、コムギ栽培品種ArcheまたはApache種子をEMS変異誘発した後に、変異植物系統集団を開発した。変異誘発種子から、約5000のApacheおよび900のArcheの個々のM1植物を栽培して自家受粉させ、各植物からの種子と引き続く子孫をそれぞれ個々のM1植物に由来する潜在的変異系統として維持した。次世代Solexa配列決定(Illumina)により、系統を3つの同祖SBEIIa遺伝子中の変異についてスクリーニングした。これを行うためには、Arche集団からの約130のM1ファミリーおよびApache集団からの96のM1ファミリーからDNAをそれぞれプールして、7個のDNAプールを調製した。プールされたDNA上で、遺伝子のスプライス部位をはじめとするエクソン領域を標的にして、同祖遺伝子あたり3または4領域についてPCRを実施した。ゲノム特異的プライマーを表30に記載する。
【0452】
PCR産物の正規化後に、同一DNAプールからの10個の単位複製配列(増幅産物)をマージさせ、1個のDNAプールあたり1個のフローセルで配列決定を行った。配列データを分析し、全ての多形性から、観察された多形性頻度に基づいて、配列決定の誤りでなく変異に起因する見込みが高いものを選択した。Arche集団からの64の推定上の変異体およびApache集団からの48の推定上の変異体が、エクソン領域およびスプライス部位をカバーする第1の配列分析から観察された。kaspar技術に基づいて、各多形性毎にSNPアッセイをデザインし、特定の多形性について陽性の各プール中の130ファミリー上で遺伝子型同定を実施した。したがって各変異遺伝子を含有する個々の変異体系統が同定されて、変異SBEIIa配列が確認された。
【0453】
この方法により、それぞれSBEIIa変異を有し、それぞれM2 kernelを保持する、Apache集団からの31の変異体系統と、Arche集団からの9の変異体系統が同定された。入手可能性に応じて、各変異体系統からの約10個のM2種子を半切し、胚がない半分をDNA抽出と分析で使用して、胚がある残りの半分を播種のために保存した。Arche集団からの半切種子上で合計5の変異株が確認され、Apache集団からは28が確認された。対応する種子を播種して子孫植物を産生し、M2植物葉材料上で分析を繰り返し、変異がメンデル様式で遺伝することを確認し、より良いDNA品質を提供した。これらの分析は、Arche集団からの4株とApache集団からの15株である19の同型接合変異株を確認し(表31)、それらのDNAと変異株によってコードされる推定タンパク質の配列に応じて、それらの格付けを可能にした。
【0454】
得られた変異株を3つの群に分類した。第1群は、BまたはDゲノム上のSBEIIa遺伝子のタンパク質コード領域中にストップコドンのある変異SBEIIa遺伝子を有する変異株からなり、SBEIIaタンパク質翻訳の未成熟停止を引き起こす。第2群は、SBEIIa−BまたはSBEIIa−D遺伝子中にスプライス部位変異を含む系統からなる。このような変異はヌル変異であると期待できる。第3群は、SBEIIa−A,SBEIIa−BおよびSBEIIa−D遺伝子中に点変異を含む変異株からなり、コードするポリペプチド中にアミノ酸置換をもたらす。コードしたタンパク質構造への置換変異の効果はBlosum62およびPam250マトリックスを用いて予測し;各々の事例で効果が強いと予測した。これらの同型接合植物を親として用い、これらの間の、または二重ヌル(欠失)SBEIIa変異株との間の交雑を行った。変異株植物はまた、デュラムコムギ(栽培品種Soldur)とも交雑して四倍体コムギに変異を導入した。
【0455】
実施例18:高アミロースコムギを生産するための、二重ヌル欠失変異および点変異を組み合わせたSBEIIa三重ヌルコムギの生産と同定
三重ヌルの生産のための交雑に用いるため、ApacheおよびArche変異群において同定した8個の変異株系統と、Sunstate群からの2個の変異株系統を選択した。親の1つとして点変異について同型接合である植物(表32)および2番目の親として二重ヌルSBEIIa変異株(HIB欠失変異株)を用い、全部で66回の交雑を行った。2番目の親植物は、三重ヌルを生産するため、A1D2,A2D2,A1B2およびB2D2遺伝子型の変異株を含んだ。交雑34回分のF1種子(表33)を維持し、単一種子系統によってF2種子50000個を生産するために用いた。これらを、HAW表現型について、単一種子NIRS技術を用いてスクリーニングした。全部でHAW種子2300個を同定した。全ての交雑のうち1つがHAW種子を生産した。選択した種子をグリーンハウスで播き、得られたF3植物415個のうち、分子マーカーで91個をSBEIIa遺伝子について三重ヌルであると同定した。植物85個から種子が得られ、うち67個の三重ヌル植物を、NIRS測定により高アミロースコムギ植物であると同定した。24個の植物が、GM85.2c参照穀粒よりもアミロースレベルが高い種子を生産した。アミロース含有量をヨウ素定量法により測定したところ、SBEIIa三重ヌル穀粒のいくつかがコントロール穀粒よりもアミロースレベルが高く、158%まであった。この同じ実験では、HAW GM参照穀粒は、コントロール系統よりもアミロースレベルが58%高かった(表35)。千粒重測定により、高アミロースコムギ穀粒は穀粒重量が有意に減少していないことが分かった。
【0456】
種子は、穀粒中デンプンの特性をさらに試験するため、播いて増やした。
【0457】
【0458】
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