特許第6346094号(P6346094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6346094減量食事療法後の体重の安定化に使用するためのフィトエクジソン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346094
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】減量食事療法後の体重の安定化に使用するためのフィトエクジソン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/575 20060101AFI20180611BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 5/50 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   A61K31/575
   A61P3/04
   A61P5/50
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-540542(P2014-540542)
(86)(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公表番号】特表2014-533256(P2014-533256A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】FR2012052600
(87)【国際公開番号】WO2013068704
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年10月9日
(31)【優先権主張番号】1160280
(32)【優先日】2011年11月10日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513285907
【氏名又は名称】ビオフィティス・エスアー
(73)【特許権者】
【識別番号】514118550
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ピエール エ マリ キュリー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ラフォン,ルネ
(72)【発明者】
【氏名】クレマン,カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】リズカラ,サルワ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイエ,スタニスラ
(72)【発明者】
【氏名】フーコー,アンヌ−ソフィ
(72)【発明者】
【氏名】ディオ,ワリ
【審査官】 牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−209279(JP,A)
【文献】 特表2011−504921(JP,A)
【文献】 特開2010−202569(JP,A)
【文献】 特表平10−503495(JP,A)
【文献】 J. Agric. Food Chem., 2001, Vol.49, p.2576-2578
【文献】 Food Chemistry, 2011, Vol.125, p.1226-1234
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00− 31/80
A61P 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低カロリー減量食事療法後の哺乳類の体重の再増加を防ぐための、フィトエクジソンを含む薬剤であって、前記フィトエクジソンの少なくとも85%は20‐ヒドロキシエクジソンである、薬剤
【請求項2】
低カロリー減量食事療法後の脂肪細胞の直径を安定させるための、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
低カロリー減量食事療法によって以前に改善されたインスリン感受性を安定させるための、請求項1又は2に記載の薬剤。
【請求項4】
前記フィトエクジソンの残りは、マキステロンA、24‐エピ‐マキステロンA、24(28)‐デヒドロマキステロンA、20,26‐ジヒドロキシエクジソン、及び前記成分のうち2つ以上の組み合わせから選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項5】
前記フィトエクジソンは、キノア由来の植物抽出物の形態で提供される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項6】
前記抽出物は、少なくとも1重量%のフィトエクジソンを含む、請求項5に記載の薬剤。
【請求項7】
前記植物抽出物はキノア由来である、請求項5又は6に記載の薬剤。
【請求項8】
経口投与できる組成物に組み込まれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減量食事療法後の体重の安定化に使用するための、純粋な形態のフィトエクジソン又は抽出物に含有されるフィトエクジソンに関する。
【0002】
より具体的には、本発明により、以前に減量食事療法の経験がある肥満した哺乳類の体重増加を回避できるものである。
【背景技術】
【0003】
今日、体重過多及び肥満は、世界中でますます一般的になっている生理病理学的状態である。欧州及び米国においては、肥満度指数(BMI)が25を超えると体重過多であると見做される。BMIが30を超えると、肥満であると見做される。
【0004】
この生理学的疾患は、多くの合併症のもとであり得る。例えばメタボリック・シンドロームは、殆どの場合体重過多であることと関連する生理学的障害である。上記状態と関連する下記の5つの臨床徴候:内臓又は腹部の肥満、高トリグリセリド血症、アテローム生成脂質異常症、高血圧症、高血糖症のうちの少なくとも3つを有する場合、メタボリック・シンドロームを有していると認められる(非特許文献1)。また、肥満自体も2型糖尿病(又は成人発症の糖尿病)及び心臓血管疾患を発症するリスクを高める(非特許文献2)。
【0005】
肥満した哺乳類の体重及び体脂肪を減少させるための1つの方法は、場合によっては薬及び/又は栄養補助食品並びに規則的な運動と併用して、低カロリー食事療法に従うことである。しかしながら、低カロリー食事療法において減量の初期段階後に体重の再増加が観察されることは一般的である(非特許文献3)。この現象は「リバウンド効果」として知られている。
【0006】
哺乳類の体重過多における減量を促進するために(非特許文献4)、並びに糖尿病(非特許文献5)及び心臓血管疾患の発症を予防するために、多くの栄養補助食品及び機能性食品が開発されてきた。市販の殆どの食事療法用の製品は、腹部の肥満に十分に効果的ではなく、時として有毒であることが分かっている(非特許文献6)。更に、これらの製品は、低カロリー食事療法の一定期間後のリバウンド効果を防ぐ効能はもっていない。
【0007】
従って、非毒性でありかつ体脂肪に長期間有効である成分及び機能性食品を開発するために、哺乳類の食事療法において既に存在している天然の分子を新たに特定する必要がある。
【0008】
フィトエクジソンは、植物由来のエクジステロイドである。フィトエクジソンは、トリテルペン類に属し、植物界では野生植物の5%において確認できる程比較的豊富なものである(非特許文献7)。
【0009】
本出願人による特許文献1に記載されているように、フィトエクジソン、具体的には20‐ヒドロキシエクジソンは、肥満の原因となる高カロリーな食生活を送っている哺乳類における体脂肪の増加を低減することが知られている。
【0010】
更に、上記分子は抗酸化特性を有し(非特許文献8)、非毒性である(非特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】フランス特許第2924346号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Isomaa B,Almgren P,Tuomi T, Forsen B, Lahtii K, Nissen M, Taskinen MR, Groop L. 2001. Cardiovascular morbidity and mortality associated with the metabolic syndrome. Diabetes Care 24(4), 683−689.
【非特許文献2】Rexrode K, Carey V, Hennekens CH, Walters EE, Colditz GA, Stampfer MJ, Willet WC, Manson JE. 1998. Abdominal adiposity and coronary heart disease in women. JAMA 280, 1843−1848.
【非特許文献3】Ulen CG, Huizinga M, Beech B, Elasy TA. 2008. Weight regain prevention. Clinical Diabetes 26(3), 100−113.
【非特許文献4】Saper RB, Eisenberg DM, Phillips RS. 2004. Common dietary supplements for weight loss. American Family Physician 70(9), 1731−1738.
【非特許文献5】McWorther LS. 2001. Biological complementary therapies: a focus on botanical products in diabetes. Diabetes Spectrum 14, 199−208.
【非特許文献6】Pittler MH, Schmidt K, Ernst E. 2005. Adverse events of herbal food supplements for body weight reduction: systematic review. Obesity Review 6, 93−111.
【非特許文献7】Bathori M, Pongracz Z. 2005. Phytoecdysteroids - from isolation to their effects on humans. Current Medicinal Chemistry 12, 153−172.
【非特許文献8】Kuzmenko AI, Niki E, Noguchi N. 2001. New functions of 20−hydroxyecdysone in lipid peroxidation. Journal of Oleo Science 50, 497−506.
【非特許文献9】Ogawa S, Nishimoto N, Matsuda H. 1974. Pharmacology of ecdysones in vertebrates. In: Invertebrate Endocrinology and Hormonal Heterophylly (Burdette, W. J. ed.) Springer, New York.341−344.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明者は、フィトエクジソンを肥満した哺乳類に摂取させることで、低カロリー食事療法による減量の初期段階後の体重の再増加を低減できることを見出した。
【0014】
より具体的には、フィトエクジソンで治療されている個体は、安定段階として知られている段階(この間に対照群の体重は再増加する)を通して、体重が安定しているか、又は体重が減少し続けさえする。
【0015】
更に、この安定段階の間、フィトエクジソンで治療されている個体の脂肪細胞は、対照群のものよりもサイズが小さかった。また、これらの個体は、対照群よりも低い血中インスリン濃度及びより良好なインスリン感受性を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、低カロリー減量食事療法を受けている肥満した哺乳類の体重の再増加を防ぐために、フィトエクジソン、詳細には20‐ヒドロキシエクジソンを適用することを提案するところにある。
【0017】
また、フィトエクジソンを好ましくは、低カロリー減量食事療法後の安定段階中に脂肪細胞の直径を安定させるために、又は減少させ続けるためにも使用する。
【0018】
また、フィトエクジソンを好ましくは、既に行った低カロリー減量食事療法により向上したインスリン感受性を安定させるためにも使用する。従って、フィトエクジソンは、肥満治療における効果に加えて、糖尿病、特に2型糖尿病の治療において有望である。
【0019】
使用するフィトエクジソンは、植物からの抽出により得ることができる。半合成により調製したエクジソンも使用できる。
【0020】
フィトエクジソンは好ましくは、20‐ヒドロキシエクジソン、マキステロンA、24‐エピ‐マキステロンA、24(28)‐デヒドロマキステロンA、20,26‐ジヒドロキシエクジソン、及びこれらの成分のうち2つ以上の組み合わせから選択される。
【0021】
フィトエクジソンは純粋な形態であってもよく、又は幾分富化された植物抽出物に含有されていてもよい。有利には、本発明に従って適用されるフィトエクジソンは、フィトエクジソンで富化された植物抽出物の形態であり、上記抽出物は少なくとも1重量%のフィトエクジソンを含有する。抽出物は好ましくは1〜7重量%のフィトエクジソン、より好ましくは1.5%〜3重量%、更に好ましくは2重量%のフィトエクジソンを含有する。
【0022】
本発明による抽出物を抽出する食用植物は、有利にはアカザ科、特にキノア、ホウレンソウから選択される(Findeisen E. 2004. Ecdysteroids in Human Food (Ecdysteroide in der menschlichenNahrung).PhD thesis, University of Marburg, Germany)。また、フィトエクジソンが豊富に含まれる抽出物を開発するために、薬用植物も使用できる。
【0023】
好ましくは、本発明に従ってフィトエクジソンで富化された植物抽出物はキノア由来である。キノアは、フィトエクジソンを豊富に含む食用の擬似穀物である(Zhu N, Kikusaki H, Vastano BC, Nakatani N, Karwe MV, Rosen RT, Ho CT. 2001. Ecdysteroids of quinoa seeds (Chenopodium quinoaWilld.). Journal of Agricultural and Food Chemistry 49, 2576−2578.;Dini I, Tenore GC, Dini A. 2005. Nutritional and antinutritional composition of Kancolla seeds: An interesting and underexploited andine food plant. Food Chemistry, 92, 125−132)。よって、フィトエクジソンで富化されたキノアの抽出物を、乳製品若しくは飲料等の食品に上記抽出物を導入することによって、又はカプセルの形態等の栄養補助食品として摂取することによって摂取することで、食品を補完できる。
【0024】
キノアは現在のところフィトエクジソンが最も豊富な食用植物として知られている。キノアの種子はフィトエクジソンの混合物を含有する(Zhu N, Kikusaki H, Vastano BC, Nakatani N, Karwe MV, Rosen RT, Ho CT. 2001. Ecdysteroids of quinoa seeds (Chenopodium quinoaWilld.). Journal of Agricultural and Food Chemistry 49, 2576−2578)。上記フィトエクジソンは、特にキノア種子の殻に豊富に含まれている。例えば60グラム(乾燥重量)のキノア種子によって、15〜25ミリグラムの20‐ヒドロキシエクジソンを供給できる。
【0025】
本発明に従って実装したフィトエクジソンは、有利には経口投与できる組成物の形態である。
【0026】
組成物とは、例えば飲料、乳製品等の食品製品を意味する。当然、組成物は、正確に1用量のフィトエクジソンを含有する丸薬の形態で使用されるもの等の医薬組成物であり得る。
【0027】
有利には、フィトエクジソンは、1日に体重1kgあたり0.3〜2.0mg、好ましくは1日に体重1kgあたり0.5mgの割合で経口投与する。
【0028】
本発明の別の目的は、1つ又は複数のフィトエクジソンで富化されたキノア抽出物を調製するための方法であり、上記方法は以下のステップ:
‐キノア種子の水抽出;
‐固体/液体分離及び水性抽出物の遠心分離;
‐タンパク質を沈殿させるための上澄みの加熱;
‐上澄みをフィトエクジソンで富化するためのクロマトグラフィーによる精製
を含む。
【0029】
本発明はまた、上記の方法の結果として得られるキノア抽出物にも関する。上記抽出物は、有利には上述の通り低カロリー減量食事療法を受けている肥満した哺乳類における体重の再増加を回避するために使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A図1Aは、低カロリー食事療法を受けている肥満した個体の体重の変化を表すグラフである。
図1B図1Bは、低カロリー食事療法を受けている肥満した個体の体重の変化を表すグラフである。
図2A図2Aは、低カロリー食事療法を受けている肥満した個体の脂肪細胞の直径の変化を表すグラフである。
図2B図2Bは、低カロリー食事療法を受けている肥満した個体の脂肪細胞の直径の変化を表すグラフである。
図3A図3Aは、低カロリー食事療法を受けている肥満した個体のインスリン濃度の変化を表すグラフである。
図3B図3Bは、低カロリー食事療法を受けている肥満した個体のインスリン濃度の変化を表すグラフである。
図4A図4Aは、低カロリー食事療法を受けている肥満した個体のインスリン感受性の変化を表すグラフである。
図4B図4Bは、低カロリー食事療法を受けている肥満した個体のインスリン感受性の変化を表すグラフである。
図5図5は、本発明の実施形態による組成物に存在するフィトエクジソンの化学式である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明において、低カロリー減量食事療法を受けている肥満した哺乳類の、「リバウンド効果」として公知である体重の再増加を防ぐために、精製された分子の形態で、又はフィトエクジソンで富化された植物抽出物を用いて、1用量のフィトエクジソンを提供することを提案する。
【0032】
本発明によると、例えば個体の日常的な食物に追加される食品に組み込まれた、キノア等の植物の抽出物の形態の、上記1用量のフィトエクジソンを提供できる。最大2%のフィトエクジソンで富化された1グラムのキノアは、20ミリグラムのフィトエクジソンを含有する。キノア種子から同量のフィトエクジソンを得るためには、50グラムの未加工キノア種子を消費することが必要となる(Dini I, Tenore GC, Dini A. 2005. Nutritional and antinutritional composition of Kancolla seeds: An interesting and underexploited andine food plant. Food Chemistry, 92, 125−132;Kumpun S, Maria A, Crouzet C, Evrard−Todeschi N, Girault JP, Lafont R. 2011. Ecdysteroids from Chenopodium quinoaWilld., an ancient Andean crop of high nutritional value, Food Chemistry 125, 1226−1234)。本発明によるキノア抽出物は、原料となるキノア種子よりも最大50倍多いフィトエクジソンを含有している。
【実施例】
【0033】
I フィトエクジソンで富化されたキノア抽出物を調製するための方法の実施例(抽出物A)
まず、キノア種子を挽いて、種子のふすまから粉末を分離する。続いて4000Lの水を400kgのふすまに加えることにより、抽出を行う。水性の抽出物を固体/液体分離及びそれに続いて遠心分離に供する。結果として得られた上澄みを90℃の熱に曝露して、タンパク質を沈殿させる。続いて、この水性の抽出物をフィトエクジソンで富化するために、この水性の抽出物を食品用樹脂のカラムを通過させることにより精製する。続いて、20‐ヒドロキシエクジソン(20E)の2±02重量%の含有量を調整するのに適切な少量のマルトデキストリンを添加した後に、エタノール溶出液をスプレー乾燥を用いて乾かす。
【0034】
このような逐次的な抽出により、抽出物から、キノア種子に豊富であり(Muirら、2002)かつ上記抽出物に苦味を与えるサポニン、及び糖の大部分を取り除くことができる。
【0035】
得られた抽出物はフィトエクジソンの混合物を含有し、この混合物の85〜90%は20‐ヒドロキシエクジソンである。残りは、マキステロンA、24‐エピ‐マキステロンA、24(28)‐デヒドロマキステロンA、20,26‐ジヒドロキシエクジソン等の極めて類似した構造の他のフィトエクジソンからなる(Kumpun S, Maria A, Crouzet C, Evrard−Todeschi N, Girault JP, Lafont R. 2011. Ecdysteroids from Chenopodium quinoaWilld., an ancient Andean crop of high nutritional value, Food Chemistry 125, 1226−1234)。これらの成分の構造を図5に示す。
【0036】
本発明の一部として使用可能な抽出物Aと同様の抽出物は、特に Quinolia(登録商標)の商品名で販売されている。
【0037】
II 6週間の低カロリー食事療法及びそれに続く6週間の安定食事療法を受けている肥満した個体への抽出物Aの効果についての二重盲式臨床試験
プロトコル
抽出物Aの効果を、MBI27〜38の男性18人及び女性42人からなる60人の体重過多及び肥満の協力者への二重盲式臨床試験の一部として調査した。協力者は、女性1200kcal、男性1500kcalの低カロリーの食事を6週間与えられた。低カロリー食事療法の後には、低カロリー食事療法よりも20%カロリーの高い6週間の安定食事療法が続く。インスリン濃度、体重変化、脂肪細胞の直径、筋力等のパラメータを、調査の間、低カロリー及び安定段階の開始時及び終了時において測定した。
【0038】
被験者を2つの群に分けた。第1の群(「抽出物A」群)は、1日3回の用量の中に合計40mgのフィトエクジソンを含有する6つのカプセルの抽出物Aを、試験の期間にわたって受け取った。
【0039】
第2の対照群(「偽薬」群)は、1日3回の用量の6つのカプセルの偽薬を同じ期間受け取った。
【0040】
測定は、治療の開始時(W0)、食事療法の6週目終了時、及び食事療法の12週目終了時(W12)に行った。
【0041】
減量及び安定食事療法の間の体重変化の測定
低カロリー食事療法の間の抽出物Aの効果を、体重変化に基づいて調査した(図1A図1B)。
【0042】
「偽薬」群及び「抽出物A」群はそれぞれ、減量段階と呼ばれる食事療法の第1の段階の間に、4.05kg及び3.86kgの体重の減少を示した。
【0043】
安定段階と呼ばれる食事療法の第2の段階の間に、「抽出物A」群は減量を継続し(−0.483kg)、一方で「偽薬」群は平均増量+0.504kgを記録した。
【0044】
試験対象の個体における相対的な体重変化の調査は、「抽出物A」群では、28%であった「偽薬」群と比較して、10%の個体のみがリバウンド(1日0.05〜0.1kg/日の増加)したことを示している。
【0045】
同じ「抽出物A」群では、0.06〜0.15kg/日減った個体が20%であり、「偽薬」群では10%の個体のみがこのカテゴリに該当する。
【0046】
減量及び安定食事療法の間の脂肪細胞の直径の測定
低カロリー食事療法の間の抽出物Aの効果を、脂肪細胞の直径の変化に基づいて調査した(図2A図2B)。
【0047】
減量段階の間、脂肪細胞の平均直径は、「抽出物A」群(−10.94μm)及び「偽薬」群(−8.80μm)の両方において減少した。
【0048】
安定段階の間、「抽出物A」群(−9.25μm)と「偽薬」群(−5.99μm)との間に有意な差を有して、平均直径は減少し続けた。
【0049】
この結果を、「抽出物A」群における安定段階の間の体脂肪の大幅な減少と組み合わせる。実際、安定段階の間の体脂肪の減少は、「抽出物A」群では−0.74kgであったが、「偽薬」群では−0.33kgに過ぎなかった。
【0050】
減量及び安定食事療法の間のインスリン濃度及びインスリン抵抗性の測定
低カロリー食事療法の間の抽出物Aの効果を、インスリン濃度及びインスリン抵抗性に基づいて調査した(図3A図3B)。HOMA−IR(インスリン抵抗性指数、図4A図4B)指数は、インスリン抵抗性のマーカである。
【0051】
「抽出物A」群(−18.90pmol/L)及び「偽薬」群(−12.60pmol/L)において、減量段階の間、血中インスリン濃度が低下した。「偽薬」群において安定段階の間に再び上昇したが(7.69pmol/L)、「抽出物A」群では安定した。抽出物Aを用いた治療により、安定段階において血中インスリン濃度を安定させることができ、治療の間中、偽薬よりも顕著に血中インスリン濃度を低下させることができる。
【0052】
HOMA−IR指数によって測定したインスリン抵抗性は、減量段階の間、両方の群において低下した。インスリン抵抗性は、安定段階の間「抽出物A」群では一定に保たれたが、「偽薬」群では大幅に戻った。
【0053】
結論
抽出物Aの投与により、低カロリー減量食事療法の安定段階と呼ばれる第2の段階の間に、対象となる被験者の体重の再増加を回避できる。
【0054】
更に、抽出物Aの投与により、安定段階の間の体脂肪及び脂肪細胞の平均直径のより著しい低下が可能となる。
【0055】
最後に、抽出物Aの投与により、インスリン濃度を低下させること及びこの同じ段階の間に低カロリー食事療法によってもたらされた向上したインスリン感受性を維持することが可能となる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5