(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346166
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】圧電振動発生デバイス
(51)【国際特許分類】
B06B 1/06 20060101AFI20180611BHJP
【FI】
B06B1/06 Z
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-505493(P2015-505493)
(86)(22)【出願日】2014年3月11日
(86)【国際出願番号】JP2014056356
(87)【国際公開番号】WO2014142129
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-48260(P2013-48260)
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000242633
【氏名又は名称】北陸電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100186819
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 俊尚
(72)【発明者】
【氏名】田村 雅英
(72)【発明者】
【氏名】横江 哲司
(72)【発明者】
【氏名】有沢 清
(72)【発明者】
【氏名】林 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】川崎 修
【審査官】
服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−213997(JP,A)
【文献】
特開平10−337533(JP,A)
【文献】
実開昭63−167762(JP,U)
【文献】
特開2006−165318(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/104772(WO,A1)
【文献】
特開2011−245437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部が台座に固定された金属製の振動板と、
前記振動板の厚み方向の一方の面側に位置して前記振動板に固定された錘と、
前記振動板の厚み方向の他方の面上に固定された圧電振動素子とからなる圧電振動デバイスであって、
前記台座が金属からなり、
前記振動板の前記両端部が前記台座に溶接されており、
前記振動板は、前記台座に溶接された前記両端部と前記圧電振動素子との間に、前記溶接により発生した応力を吸収するように変形する変形部をそれぞれ一体に備えており、
前記錘は金属から形成されており、
前記圧電振動素子の前記長手方向の寸法は、前記錘の前記振動板に対して固定する部分の前記長手方向の寸法よりも長く、
前記振動板の中央部には、前記幅方向に対向する一対の縁部に前記厚み方向の一方側に延びる一対の挟持部が一体に形成されており、
前記一対の挟持部が前記錘に溶接されていることを特徴とする圧電振動発生デバイス。
【請求項2】
前記変形部は、溶接により発生した応力を吸収するように前記厚み方向の一方側に凸となり且つ前記厚み方向の他方側に凹となる形状を有している請求項1に記載の圧電振動発生デバイス。
【請求項3】
前記変形部を前記厚み方向に切断したときの断面形状が円弧状またはU字状を呈している請求項2に記載の圧電振動発生デバイス。
【請求項4】
前記変形部を前記厚み方向に切断したときの断面形状がV字状を呈している請求項2に記載の圧電振動発生デバイス。
【請求項5】
前記変形部は、前記振動板の長手方向及び前記厚み方向と直交する幅方向の両側に開口する形状を有している請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧電振動発生デバイス。
【請求項6】
前記錘が、前記振動板の前記一方の面と接触していない請求項1に記載の圧電振動発生デバイス。
【請求項7】
前記振動板の前記一方の面と前記錘との間に前記金属及び前記振動板よりも軟質の緩衝材が配置されている請求項1に記載の圧電振動発生デバイス。
【請求項8】
前記緩衝材がシリコーン系接着剤である請求項7に記載の圧電振動発生デバイス。
【請求項9】
前記緩衝材がシリコーンゴムである請求項7に記載の圧電振動発生デバイス。
【請求項10】
前記圧電振動素子は、エポキシ系の接着剤により前記振動板に接合されている請求項1に記載の圧電振動発生デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動発生デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2011−245437号(特許文献1)には、スマートフォンや携帯電話等の携帯端末やタブレット端末等に用いられて、表示画面を触ったときに表示画面を振動させるための圧電振動発生デバイスの一例が開示されている。この圧電振動発生デバイスは、一端が台座に接着剤により固定された金属製の一対の振動板と、一対の振動板の間に固定された錘と、一対の振動板に固定された一対の圧電振動素子とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−245437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の圧電振動発生デバイスでは、一対の振動板の間に錘が固定されているために、圧電振動素子の面積が小さくなり、デバイスを小型化すると、発生する振動を大きくすることに限界があった。また一対の振動板を台座に接着剤を用いて接合しているため、長期間使用すると、振動板と台座との接合部に亀裂が入って振動周波数が変わってしまう問題が発生する。
【0005】
本発明の目的は、小型化しても大きな振動を発生することができ、しかも長寿命の圧電振動発生デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、両端部が台座に固定された金属製の振動板と、振動板の厚み方向の一方の面側に配置されて振動板に対して固定された錘と、振動板の厚み方向の他方の面上に固定された圧電振動素子とからなる圧電振動デバイスを改良の対象とする。台座は金属から形成されており、振動板の両端部が台座に溶接されている。そして振動板は、台座に溶接された両端部と圧電振動素子との間に、溶接により発生した応力を吸収するように変形する変形部をそれぞれ一体に備えている。具体的な変形部は、溶接により発生した応力を吸収するように振動板の厚み方向の一方側に凸となり且つ厚み方向の他方側に凹となる形状を有している。振動板を台座に溶接により固定すると、振動板と台座との接合部で破壊が発生することを防止できるので、デバイスの長寿命化が可能になる。溶接により振動板の両端部と台座とを接合すると、溶接時の熱で振動板に発生する応力で、振動板が反り、振動周波数がばらつく問題が発生する。本発明においては、振動板に設けた変形部(具体的には厚み方向の一方側に凸となり且つ厚み方向の他方側に凹となる変形部)が、溶接により発生した応力を吸収するように変形するため、振動板が反ることがなく、振動周波数のバラツキの発生を防止できる利点が得られる。
【0007】
具体的な変形部は、厚み方向に切断したときの断面形状が円弧状またはU字状を呈していてもよく、また厚み方向に切断したときの断面形状がV字状を呈していてもよい。
【0008】
振動板の長手方向に測った変形部の長さが長くなりすぎると、振動周波数が低くなり過ぎる問題が発生する。この問題を解決するためには、変形部を振動板の長手方向及び厚み方向と直交する幅方向の両側に開口する形状にする。このように構成すると、振動板の長手方向に測った変形部の長さが長くなりすぎることがないので、振動周波数を低下させることなく、溶接により発生した応力を吸収することができる。
【0009】
なお錘は金属から形成することができる。この場合、圧電振動素子の長手方向の寸法は、錘を振動板に対して固定する部分の長手方向の寸法よりも長くする。そして振動板の中央部には、幅方向に対向する一対の縁部に厚み方向の一方側に延びる一対の挟持部を一体に形成し、一対の挟持部を錘に溶接するのが好ましい。このようにすると錘の脱落を確実に防止することができる。また一対の挟持部で支持した状態にして、錘を振動板の一方の面と接触しないようにしてもよい。このようにすると錘を振動板の一方の面に直接固定する場合より、振動板の振動を滑らかなものとすることができ、しかも圧電振動素子にクラックが入ることを防止できる。
【0010】
なお錘を振動板の一方の面に固定する場合には、振動板の一方の面と錘との間に錘の金属及び振動板よりも軟質の緩衝材を配置するのが好ましい。このようにすると錘の振動板側の角部から振動板を介して圧電振動素子に力が加わることを防止して、圧電振動素子にクラックが入ることを有効に防止することができ、デバイスの長寿命化を図ることができる。なお緩衝材としては、シリコーン系接着剤やシリコーンゴムを用いることができる。また圧電振動素子を、エポキシ系の接着剤により振動板に接合するのが好ましい。このような材料を用いると、圧電振動素子と振動板との間の剥離を防止することができ、しかも圧電振動素子にクラックが入ることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】圧電振動発生デバイスの一例の正面図である。
【
図2】
図1の圧電振動発生デバイスの分解斜視図である。
【
図3】錘を振動板の一方の面に固定する場合を示す図である。
【
図4】本発明の他の実施の形態の圧電振動発生デバイスの錘を振動板の一方の面に固定する場合を示す図である。
【
図5】本発明の他の実施の形態の圧電振動発生デバイスの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して本発明の圧電振動発生デバイスの実施の形態について説明をする。
図1は、本発明の圧電振動発生デバイス1の一例の正面図である。なお
図1において、ケース3は断面にして示してある。
図2は、
図1の圧電振動発生デバイス1の分解斜視図である。本実施の形態の圧電振動発生デバイス1では、細長い矩形状のベース5の両端に一対の台座7が設けられている。本実施の形態では、ベース5及び台座7をステンレス鋼により一体的に形成している。なお、ベース5及び台座7は、ステンレス鋼以外の鉄系合金から構成してもよい。そして一対の台座7には、細長い矩形状の振動板9の両端部がスポット溶接または抵抗溶接により溶接されている。本実施の形態では、振動板9を42アロイにより形成している。振動板9の厚み方向の一方の面側には、タングステンまたはタングステン合金製の錘11が配置されている。錘11は、細長い直方体形状を有している。振動板9の中央部には、振動板9の長手方向及び厚み方向と直交する幅方向に対向する一対の縁部に、厚み方向の一方側(錘11側)に延びる一対の挟持部13を一体に備えている。一対の挟持部13は、二本の脚部13Aと本体13Bを備えており、二本の脚部13Aの中心が振動板9の中心と一致している。一対の挟持部13の本体13Bは、錘11に溶接されている。符号15で示した部分は、溶接部である。このように溶接により錘11を一対の挟持部13に固定すると、錘11の脱落を確実に防止することができる。振動板9の厚み方向の他方の面上には、圧電振動素子17が固定されている。圧電振動素子17は、公知のバイモルフ型圧電振動素子またはユニモルフ型圧電振動素子である。圧電振動素子17の長手方向の寸法は、錘11を振動板9に対して固定する部分の長手方向の寸法よりも長い。
【0013】
本実施の形態では、振動板9が、台座7に溶接された両端部と圧電振動素子17との間に、溶接により発生した応力を吸収するように厚み方向の一方側に凸となり且つ厚み方向の他方側に凹となる変形部19をそれぞれ一体に備えている。変形部19は、厚み方向に切断したときの断面形状が円弧状またはU字状を呈している。なお変形部19は、厚み方向に切断したときの断面形状がV字状を呈していてもよい。振動板の長手方向に測った変形部19の長さが長くなりすぎると、デバイスの振動周波数が低くなり過ぎる問題が発生する。この問題を解決するために、変形部19は振動板9の長手方向及び厚み方向と直交する幅方向の両側に開口する形状を有している。このように構成すると、振動板の長手方向に測った変形部の長さが長くなりすぎることがないので、振動周波数を低下させることなく、振動板9と台座7との溶接により発生した応力を変形部19が変形することにより吸収することができる。
【0014】
本実施の形態では、一対の挟持部13で支持した状態にしているので、錘11が振動板9の一方の面と錘11との間に空間が形成されており、錘11が振動板9に接触していない。このようにすると錘11を振動板9の一方の面に直接固定する場合より、振動板9の振動を滑らかなものとすることができ、しかも圧電振動素子17にクラックが入ることを防止できる。
【0015】
なお本発明の他の実施の形態では、
図3に示すように、錘11を振動板9の一方の面に固定することができる。この場合には、振動板9の一方の面と錘11との間に錘11の金属及び振動板9よりも軟質の緩衝材21を配置する。このようにすると錘11の振動板9側の角部11Aから振動板9を介して圧電振動素子17に力が加わることを防止して、圧電振動素子17にクラックが入ることを有効に防止することができ、デバイスの長寿命化を図ることができる。なお緩衝材21として、錘11と振動板9とを接合する接着剤としての例えばシリコーン系接着剤を用いることができる。
【0016】
また圧電振動素子17は、エポキシ系の接着剤により振動板9に接合するのが好ましい。このような材料を用いると、圧電振動素子17と振動板9との間の剥離を防止することができ、しかも圧電振動素子17にクラックが入ることを防止することができる。
【0017】
図4は、本発明の他の実施の形態において、圧電振動発生デバイス1の錘11を振動板9の一方の面に固定する場合を示す図である。この実施の形態でも、錘11を振動板9の一方の面に固定する場合には、振動板9の一方の面と錘11との間に錘11の金属及び振動板9よりも軟質の緩衝材21´を配置している。
図3に示した前述の実施の形態とは異なり、緩衝材21´として、シリコーンゴムのような厚みのある軟質材料を用いている。なおこの緩衝材21´は、シリコーン系接着剤により、錘11と振動板9とにそれぞれ接着されている。
【0018】
図5は、本発明のさらに他の実施の形態の圧電振動発生デバイスの分解斜視図である。
【0019】
本実施の形態では、
図1及び2に示した実施の形態を構成する部材と同様の部材には、
図1に付した符号と同じ符号を付して説明を省略する。本実施の形態では、一対の挟持部13は、一本の脚部13A´と本体13Bを備えている。また、一本の脚部13A´の中心が振動板9の中心と一致している点は、前述の実施の形態と同様である。本実施の形態のように、1本の脚部13A´を採用すると、一対の挟持部の強度が強くなるので、錘11の重量の増加に対応することができる。
【0020】
上記実施の形態では、変形部19が厚み方向の一方側に凸となり且つ厚み方向の他方側に凹となる形状を有しているが、変形部19の形状は、溶接により発生した応力を吸収するように変形するものであればどのような形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、振動板を台座に溶接により固定したので、振動板と台座との接合部で破壊が発生することを防止でき、デバイスの長寿命化が可能になる。また本発明においては、変形部が溶接により発生した応力を吸収するように変形するため、振動板が反ることがなく、振動周波数のバラツキの発生を防止できる利点が得られる。
【符号の説明】
【0022】
1 圧電振動発生装置
3 ケース
5 ベース
7 台座
9 振動板
11 錘
13 挟持部
15 溶接部
17 圧電振動素子
19 変形部
21 緩衝材