【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、スライド上に戴置された1つ以上の組織サンプルを処理するための自動スライド処理装置用の流体輸送システムが提供される。該装置は、スライドの1つ1つを受け入れるように構成された複数のスライド処理モジュールを含む。該流体輸送システムは、
前記1つ以上の組織サンプルをそれぞれ処理するために、複数の試薬を、スライド処理モジュールに受け入れられたスライドの前記1つ1つに注入するように、コントローラによって構成された、少なくとも1つの流体注入ロボットを含み、
該流体注入ロボットは、複数の対応する試薬容器から、注入すべき試薬をポンプ送給するように、コントローラによって構成されたポンプ手段と、
ポンプ手段によってポンプ送給された1つ以上の試薬を保存するように構成された本体を有し、注入すべき前記1つ以上の試薬を充填するようにしたプローブと、
プローブの本体上に設置され、注入すべき1つ以上の充填試薬の体積を増加させるために、前記1つ以上の試薬をさらに保存するように構成されたウエル(well)とを含み、
プローブは、注入すべき前記1つ以上の充填試薬を、スライド処理モジュールに受け入れられたスライドの前記1つ1つに注入するように構成される。
【0010】
一実施形態において、流体注入ロボットは、流体移送プローブ(FTP)ロボットを含む。FTPロボットは、プローブを用いて、複数の高価値(high value)試薬をスライド処理モジュール内のスライドに注入して、その上に戴置されたサンプルを処理するように、コントローラによって構成される。システムは、1つより多いFTPロボットを含むことができることは、当業者によって理解されよう。また、流体注入ロボットは、充填されたバルク試薬をスライドに注入して、その上に戴置されたサンプルを処理するように、コントローラによって構成できることも理解されよう。
【0011】
一実施形態において、ポンプ手段はさらに、連続した試薬の間にある空隙を用いて、試薬容器の異なる1つ1つから、1つより多い試薬を連続的にポンプ送給及び/又は吸引して、プローブを複数の異なる試薬で充填するように、コントローラによって構成される。即ち、プローブおよびウエルは、異なる試薬で充填可能であり、注入間で異なる試薬を吸引するのに要する時間を節約できる。例えば、ポンプ手段は、プローブが容器内に挿入された場合、連続した試薬の間にある空隙を用いて、異なる容器から異なる試薬をプローブ内に吸引するように構成されたシリンジポンプである。そして、シリンジポンプは、流体注入ロボットの運動によって、充填された異なる試薬を、同じまたは異なるスライドに注入できる。代替として、試薬は、スライドに注入するために、プローブ内に吸引し混合できる。
【0012】
自動スライド処理装置はまた、スライド輸送ロボットを含み、これは、スライド輸送ロボットが、充填された試薬を注入することによる処理のために、スライドの1つをスライド処理モジュールへ移動するようにコントローラによって構成された場合、スライド処理モジュールのうちの1つの閉鎖本体を移動して、通常は閉止位置に付勢されている閉止本体を開放位置へ移動するように構成されたスライド操作(handling)ヘッドを含む。スライド輸送ロボットは、共に係属中の米国仮特許出願第61/721269号(名称「Slide Transport System」、出願日:2012年11月1日、その内容は参照によりここに組み込まれる)に説明している。
【0013】
一実施形態において、スライド輸送ロボットおよび流体輸送ロボットは、ガントリー型(gantry)ロボットに組み合わされ、これは、x軸、y軸、z軸に移動して、指定されたスライド処理モジュールに、スライドを移動し、プローブを移動し、そこに設置されたスライドを処理するように構成される。
【0014】
一実施形態において、ウエルは、コイル状のチューブを含む。また、好ましくは、プローブの本体は、細長いチューブを含み、ウエルのコイル状チューブは、プローブの本体の細長いチューブとほぼ同様な直径である。この実施形態において、コイル状チューブウエルは、プローブのノズルとは反対のプローブ端部に設けられる。しかしながら、ウエルは、コイル状チューブではなく、プローブの体積を延長するタンクまたは容器とすることができ、それはプローブの本体に沿った任意のポイントに設置できることは、理解されよう。
【0015】
さらに、一実施形態において、コイル状チューブおよびプローブの本体は、再封止可能コネクタにおいて、ポンプ手段と接続された試薬ラインに対して着脱自在に装着される。コイル状チューブおよびプローブの本体は、好ましくは、再封止可能コネクタにおいて流体注入ロボットから電気的に絶縁される。また、プローブの本体は、流体注入ロボットに対して1つ以上のプローブ首輪(collar)において着脱自在に装着される。プローブ首輪は、電気絶縁材料、例えば、ゴムまたはプラスチックなどで製作でき、そのためチューブおよびプローブの本体は、1つ以上のプローブ首輪において流体注入ロボットから電気的に絶縁される。こうしてプローブは、例えば、プローブのクリーニングまたは交換のために、流体注入ロボットから容易に取り外し可能である。
【0016】
好ましくは、流体注入ロボットはさらに、プローブから注入された試薬の量を検知するための液面センサを含む。一例では、液面センサは、スライドに注入された流体の量を検出する容量式液面センサである。この場合、容量式液面センサは、上述の電気絶縁されたプローブの上に設置され、試薬で充填されている場合と試薬を注入した後とでプローブの実効キャパシタンスを比較する。
【0017】
追加または代替として、流体注入ロボットは、ウエルとポンプ手段との間に設けられ、プローブから注入された試薬の量を検知するための圧力センサを含む。流体注入ロボットが、スライドに注入された流体の量を検出するために、圧力センサおよび液面センサの両方を採用した場合、圧力センサは、液面センサの結果を確認するために使用され、逆もまた同様である。さらに、液面センサは、注入用にプローブを充填するために、プローブに吸引された流体の量を検出できる。
【0018】
一実施形態において、流体注入ロボットは、プローブの端部に設けられ、注入すべき前記1つ以上の充填された試薬を注入するように構成されたノズルを含む。好ましくは、プローブのノズルは、スライド処理モジュールのうちの1つにおいてカバー部材と結合し、前記カバー部材の入口ポートとほぼ密閉するように結合しながら、前記1つ以上の試薬が注入されるように構成される。カバー部材は、一実施形態において、スライドとともに反応チャンバを形成し、ノズルは、反応チャンバと密閉するように結合し、試薬を注入して、スライド上の組織サンプルを処理する。カバー部材は、共に係属中の米国仮特許出願第61/721280号(名称「Slide Staining Assembly and Cover Member」、出願日:2012年11月1日)に記載されており、その内容は参照によりここに組み込まれる。
【0019】
他の実施形態において、流体注入ロボットはさらに、プローブのノズルをスライド処理モジュールのうちの前記1つの入口ポートに向けて付勢するドライバ手段を含み、1つ以上の試薬を注入しながら、入口ポートとの密閉を維持する。
【0020】
一実施形態において、プローブの全てまたは一部が、テフロン(登録商標)またはセラミックなど、摩擦を低減する材料でコートしてもよい。この材料は、塗布してもよく、あるいはプローブは、電解研磨などの手法によって用意してもよい。
【0021】
一実施形態において、流体輸送システムはさらに、プローブをその洗浄ドラム(wash drum)の中に挿入した場合、プローブを洗浄するための洗浄ステーションを含む。好ましくは、洗浄ドラムは、流体輸送システムの洗浄ポンプと接続された洗浄流体注入ポートを含み、洗浄ポンプは、洗浄液を1つ以上の洗浄液容器から洗浄ドラムの中にポンプ送給するように、コントローラによって構成される。
【0022】
一実施形態において、洗浄ステーションは、流体注入ロボットに近接しまたは一体化した任意の場所に位置決めしてもよい。
【0023】
一実施形態において、洗浄ドラムは、洗浄ドラム内に挿入した場合、プローブの上に前記洗浄液の乱流を生成する凹凸表面を有する。好ましくは、凹凸表面は、洗浄ドラム内にスパイラル波形(corrugations)を含み、挿入されたプローブの上に洗浄液の乱流を生成して、プローブを洗浄する。乱流を生成するために、システムは洗浄ドラム内に他の波形、例えば、間隙を介した同心円状リングなどを採用できることは理解されよう。いずれにしても洗浄ドラムは、洗浄液を洗浄ドラムから回収し除去するために、回収チャンバおよび排出ポートを含んでもよい。
【0024】
他の実施形態において、洗浄ドラムは、入口ポートと出口ポートとを含み、ガスが、入口ポートを通ってプローブ周囲の洗浄液と混合し、ガスは出口ポートから排出される。例えば、真空手段が、真空力を出口ポートに印加し、ガスを入口ポートを通って出口ポートから引き出すように構成される。この例では、ガスは、大気から入口ポートを通って洗浄ドラムの中にエア吸引される。
【0025】
他の例では、洗浄液は、プローブを介して供給され、洗浄ポンプの必要性を低減している。
【0026】
本発明の他の態様によれば、スライド上に戴置された1つ以上の組織サンプルの処理のための流体を輸送する方法が提供され、スライドの1つ1つが、複数のスライド処理モジュールに受け入れられ、複数の試薬が、少なくとも1つの流体注入ロボットによって、スライド処理モジュールに受け入れられたスライドの前記1つ1つに注入されて、前記1つ以上の組織サンプルをそれぞれ処理する。該方法は、
複数の対応する試薬容器から、注入すべき試薬をポンプ送給するステップと、
対応する試薬容器からポンプ送給された1つ以上の試薬をプローブの本体に保存して、注入すべき前記1つ以上の試薬をプローブに充填するステップと、
前記1つ以上の試薬を、プローブの本体上に設置されたウエル(well)にさらに保存して、注入すべき1つ以上の充填試薬の体積を増加させるステップと、
注入すべき前記1つ以上の充填試薬を、スライド処理モジュールに受け入れられたスライドの前記1つ1つに注入するステップと、を含む。
【0027】
本発明の他の態様によれば、コントローラによって実行した場合、上述した方法を実施するコンピュータプログラムコードを提供する。
【0028】
本発明の他の態様によれば、上述したコンピュータプログラムコードを含む、有形のコンピュータ媒体を提供する。
【0029】
本発明のさらに他の態様によれば、上述したプログラムコードを含むデータファイルを提供する。