特許第6346195号(P6346195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346195
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】水硬化性混合物用の添加剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/38 20060101AFI20180611BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20180611BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20180611BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   C04B24/38 C
   C04B28/02
   C04B24/16
   C04B24/26 C
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-547484(P2015-547484)
(86)(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公表番号】特表2015-536902(P2015-536902A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】US2013074255
(87)【国際公開番号】WO2014093421
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年11月25日
(31)【優先権主張番号】61/737,171
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウルフギャング・ダンホルン
(72)【発明者】
【氏名】グリット・グローテ
(72)【発明者】
【氏名】レネ・キーゼヴェッター
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・クナール
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−183802(JP,A)
【文献】 特開2011−241393(JP,A)
【文献】 特表2009−510200(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第01484057(GB,A)
【文献】 特開昭63−054490(JP,A)
【文献】 米国特許第03503895(US,A)
【文献】 特開2004−315713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬化性混合物中の改質添加剤として使用するための水硬性結合剤を含まない組成物であって、前記組成物が、
a.水溶性セルロースエーテル、デンプンエーテル、グアーエーテル、細菌性莢膜多糖、キサンタンガム、デキストラン、ウェランガム、ジェランガム、ジウタンガム、プルラン、およびこれらの混合物から選択される1つ以上の水溶性多糖由来保水剤であって、前記水溶性セルロースエーテルが、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシ−アルキルセルロース、カルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース、スルホアルキルセルロース、カルボキシアルキルスルホアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルスルホアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルスルホアルキルセルロース、アルキルセルロース、二元または三元アルキルヒドロキシアルキルセルロース、アルケニルセルロースならびにイオン性および非イオン性アルケニルセルロース混合エーテル、ジアルキルアミノアルキルセルロース、ジアルキルアミノアルキルヒドロキシアルキルセルロース、アリール−、アリールアルキル−、およびアリールヒドロキシアルキルセルロース、ならびに、C〜C15の炭素原子を有するアルキル残基、またはC〜C15の炭素原子を有するアリールアルキル残基を有する、疎水的に改質したグリシジルエーテルとの前記セルロースエーテルの反応生成物から選択される、1つ以上の水溶性多糖由来保水剤と、
b.スルホコハク酸、ジオクチルスルホコハク酸、ジイソブチルスルホコハク酸、ドクセート、ジアミルスルホコハク酸およびジシクロヘキシルスルホコハク酸、それらの金属塩、それらのアンモニウム塩、並びにAerosol(商標)EF−810からなる群から選択される1つ以上の界面活性剤と、を含み
前記保水剤(複数可)と前記界面活性剤(複数可)との重量比が1:1〜199:1である、水硬性結合剤を含まない組成物。
【請求項2】
前記保水剤が前記水溶性セルロースエーテルである、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
石灰、空気連行剤、癒着剤、超可塑剤、レオロジー改質剤、およびこれらの混合物から選択される1つ以上の安定剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が、ジオクチルスルホコハク酸塩またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
水硬化性混合物中の改質添加剤として使用するための水硬性結合剤を含まない組成物を生成するための方法であって、前記方法が、
a.水溶性セルロースエーテル、デンプンエーテル、グアーエーテル、細菌性莢膜多糖、キサンタンガム、デキストラン、ウェランガム、ジェランガム、ジウタンガム、プルラン、およびこれらの混合物から選択される1つ以上の水溶性多糖由来保水剤であって、前記水溶性セルロースエーテルが、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシ−アルキルセルロース、カルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース、スルホアルキルセルロース、カルボキシアルキルスルホアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルスルホアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルスルホアルキルセルロース、アルキルセルロース、二元または三元アルキルヒドロキシアルキルセルロース、アルケニルセルロースならびにイオン性および非イオン性アルケニルセルロース混合エーテル、ジアルキルアミノアルキルセルロース、ジアルキルアミノアルキルヒドロキシアルキルセルロース、アリール−、アリールアルキル−、およびアリールヒドロキシアルキルセルロース、ならびに、C〜C15の炭素原子を有するアルキル残基、またはC〜C15の炭素原子を有するアリールアルキル残基を有する、疎水的に改質したグリシジルエーテルとの前記セルロースエーテルの反応生成物から選択される、1つ以上の水溶性多糖由来保水剤を含む液体または固体組成物を提供することと、
b.スルホコハク酸、ジオクチルスルホコハク酸、ジイソブチルスルホコハク酸、ドクセート、ジアミルスルホコハク酸およびジシクロヘキシルスルホコハク酸、それらの金属塩、それらのアンモニウム塩、並びにAerosol(商標)EF−810からなる群から選択される1つ以上の界面活性剤を含む液体組成物を提供することと、
c.前記保水剤(複数可)と前記界面活性剤(複数可)との重量比が1:1〜199:1になるように、ある量のステップa)の前記組成物をある量のステップb)の前記組成物と合わせることによって、保水剤−界面活性剤混合物を調製することと、
d.前記保水剤−界面活性剤混合物を乾燥させることと、を含む、方法。
【請求項6】
水と合わせられて水硬化性混合物を形成することができる改質乾燥モルタル配合物であって、前記改質乾燥モルタルが、
a.水硬性結合剤を含む標準乾燥モルタル配合物と、
b.前記改質水硬性モルタル配合物の総乾燥重量に基づいて、0.1〜2.5%の請求項1に記載の組成物と、を含み、
前記改質乾燥モルタル配合物が、前記改質乾燥モルタル配合物の総乾燥重量に基づいて、1%以下の界面活性剤を含み、かかる界面活性剤はスルホコハク酸、ジオクチルスルホコハク酸、ジイソブチルスルホコハク酸、ドクセート、ジアミルスルホコハク酸およびジシクロヘキシルスルホコハク酸、それらの金属塩、それらのアンモニウム塩、並びにAerosol(商標)EF−810からなる群から選択される、改質乾燥モルタル配合物。
【請求項7】
外断熱仕上げシステム(EIFS)および/または外断熱複合システム(ETICS)のためのグラウト、セメントベースのタイル接着剤(CBTA)、またはセメント系接着剤もしくはコーティング配合物である、請求項に記載の配合物。
【請求項8】
1つ以上の再分散性ポリマー粉末をさらに含む、請求項に記載の配合物。
【請求項9】
請求項に記載の乾燥モルタル配合物および水を含む、水硬化性混合物。
【請求項10】
乾燥モルタル配合物を改質する方法であって、前記方法が、
a.水硬性結合剤を含む標準乾燥モルタル配合物を提供することと、
b.請求項1に記載の組成物を提供することと、
c.ステップb)の前記組成物をステップa)の前記配合物と合わせて、前記改質水硬性モルタル配合物の総乾燥重量に基づいて、0.1〜2.5%のステップb)の前記組成物を含む改質乾燥配合物を提供することと、を含むが、
但し、結果として生じる改質乾燥モルタル配合物が、前記改質乾燥モルタル配合物の総乾燥重量に基づいて、1%以下の界面活性剤を含み、かかる界面活性剤はスルホコハク酸、ジオクチルスルホコハク酸、ジイソブチルスルホコハク酸、ドクセート、ジアミルスルホコハク酸およびジシクロヘキシルスルホコハク酸、それらの金属塩、それらのアンモニウム塩、並びにAerosol(商標)EF−810からなる群から選択される、方法。
【請求項11】
水硬性結合剤を含有する乾燥モルタル配合物またはかかる乾燥モルタル配合物を含む水硬化性混合物のための、改質添加剤としての請求項1に記載の前記組成物の使用。
【請求項12】
硬化後、水硬性結合剤を含む乾燥モルタル配合物の接着、曲げ、および/または圧縮強度を増加させるための、請求項1に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された機械的特性を有する水硬化性混合物に関する。具体的には、本発明は、水硬化性混合物中に組み込まれると、接着、曲げ、および/または圧縮強度の増加を提供する組成物に関する。かかる組成物を生成するためのプロセス、水硬性結合剤およびかかる組成物を含む乾燥モルタル配合物、かかる乾燥モルタル配合物および水を含む水硬化性混合物、ならびに従来の水硬性結合剤を含有する乾燥モルタル配合物を改質する方法も提供される。さらに、硬化後、水硬性結合剤を含む乾燥モルタル配合物の接着、曲げ、および/または圧縮強度を増加させるための、かかる組成物の使用も提供される。
【背景技術】
【0002】
水硬化性混合物は建設業界において広く使用されている。例えば、硬化プロセスが完了すると2つの表面を合わせて強度に保持する接着剤組成物、具体的にはタイル接着剤組成物として、それらを使用することができる。かかる水硬化性混合物の他の適用例としては、コンクリート(水と合わせられると固化および硬化する、セメント、砂、および石を含む混合物)、外断熱仕上げシステム(EIFS)および/または外断熱複合システム(ETICS)のためのセメント系接着剤もしくは強化コート、グラウト、ならびに自己平滑性下層(SLU)が挙げられる。
【0003】
水硬化性混合物は、一般に、乾燥時に硬化し、かつ固まる前に、水硬性モルタル、即ち、モルタルの総乾燥重量に基づいて、5重量パーセント以上の水硬性結合剤を典型的に含む乾燥混合物を、結果として生じるセメント組成物を表面に塗布することを可能にするのに十分な量の水と合わせることによって、使用時に調製される。
【0004】
従来の水硬性組成物は、多くの場合、水硬性結合剤、例えばセメントと、改善された物理的特徴を有する改質水硬性組成物を提供する、例えば砂、石灰、分散剤、増粘剤、および可塑剤などの1つ以上の添加剤との組み合わせを含む。具体的には、珪砂などの細骨材材料の使用が周知である。さらに、保水剤を利用して、初期水和プロセスと、組成物が乾燥時に硬化し、かつ固まるときのその後の水の除去との両方に大きく依存する、水硬性組成物および/または結果として生じる硬化生成物の物理的特徴に有益な効果を付与することができる。例えば、保水添加剤の組み込みは、開放時間、硬化速度、および乾燥時間の増加をもたらし得る。
【0005】
国際公開第A−2011087262号は、薄膜モルタルのための添加剤組成物を開示しており、該組成物は、セルロースエーテルと、スルホネート、サルフェート、エステル、およびアミノ酸から選択されるイオン性界面活性剤と、を含む。
【0006】
米国特許第7,985,293号は、コテを用いるコーティングにおいて改善された加工性を有する水硬性組成物を開示する。この水硬性組成物は、少なくとも1つの発泡アニオン性界面活性剤と、少なくとも1つの非発泡非イオン性界面活性剤と、水溶性セルロースエーテルと、を含む。
【0007】
韓国特許第A−2010068808号は、セメント組成物中に含まれると改善された加工性および加工時間ならびに白華の低減を提供するセメント添加剤を開示する。このセメント添加剤は、セルロースエーテル、界面活性剤、および遅延剤を含む。この界面活性剤は、アニオン性(例えば、スルホネート、サルフェート、エステル、アミノ酸、およびセッケンなど)ならびに非イオン性(例えば、エトキシ化化合物、アルカノールアミド、ポリヒドロキシ化合物のエステル、アミンオキシド、およびエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックポリマー)の混合物を含む。
【0008】
上述のものなどの従来の水硬化性組成物は、遅延剤の組み込みによって長い開放時間を達成することができる。しかしながら、かかる遅延剤の使用はまた、水硬化動態の著しい遅延を引き起こす。硬化に対するかかる影響は、建設工程の遅延の結果として経済的障害をもたらす。さらに、かかる従来の組成物に関連する他の不利益としては、水硬化性組成物の硬化後の低い接着強度が挙げられる。したがって、水硬化性組成物の接着強度を増加させる要望が依然として残る。
【0009】
驚くべきことに、特定の種類の界面活性剤が、少量で標準乾燥モルタル配合物に添加されると、乾燥モルタル配合物の硬化後に接着、曲げ、および/または圧縮強度の増加をもたらすことが発見された。さらに、かかる少量のこの界面活性剤は、結果として生じる混合物を標準乾燥モルタル配合物と合わせる前に、従来の水溶性多糖由来保水剤と合わせることによって、従来の乾燥モルタル配合物中に効果的に組み込まれ得ることが示されている。
【発明の概要】
【0010】
その種々の態様における本発明は、添付の特許請求の範囲に提示される通りである。
【0011】
第1の態様に従って、本発明は、水硬化性混合物中の改質添加剤として使用するための水硬性結合剤を含まない組成物を提供し、該組成物は、1つ以上の水溶性多糖由来保水剤と、式Iに従う1つ以上の界面活性剤と、を含み、
MSO−R−(−COOR (式I)
式中、Mが、水素、金属、またはアンモニウムカチオンを表し、Rが、1つ以上のヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、および/またはシアノ基で任意に置換される直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和C1−10アルキレン部分を表し、各Rが、独立して、直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和C1−22アルキルラジカル、または水素、金属、もしくはアンモニウムカチオンを表し、nが、1〜10の整数を表し、該保水剤(複数可)と該界面活性剤(複数可)との重量比が1:1〜199:1である。
【0012】
2.該保水剤が、水溶性セルロースエーテル、デンプンエーテル、グアーエーテル、細菌性莢膜多糖、キサンタムガム、デキストラン、ウェランガム、ジェランガム、ジウタンガム、プルランガム、およびこれらの混合物から選択される、本発明の第1の態様に記載の組成物。
【0013】
3.該保水剤が水溶性セルロースエーテルである、請求項2に記載の組成物。
【0014】
4.石灰、空気連行剤、癒着剤、超可塑剤、レオロジー改質剤、およびこれらの混合物から選択される1つ以上の安定剤をさらに含む、上記の第1の態様または請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【0015】
5.該界面活性剤が、ジオクチルスルホコハク酸塩、ジヘキシルスルホコハク酸塩、またはこれらの組み合わせである、上記の第1の態様または請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【0016】
第2の態様に従って、本発明は、本発明の第1の態様の組成物を生成するためのプロセスを提供し、該プロセスは、a)1つ以上の水溶性多糖由来保水剤を含む液体または固体組成物を提供することと、b)式Iに従う1つ以上の界面活性剤を含む液体組成物を提供することであって、
MSO−R−(−COOR (式I)
式中、Mが、水素、金属、またはアンモニウムカチオンを表し、Rが、1つ以上のヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、および/またはシアノ基で任意に置換される直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和C1−10アルキレン部分を表し、各Rが、独立して、直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和C1−22アルキルラジカル、または水素、金属、もしくはアンモニウムカチオンを表し、nが、1〜10の整数を表す、提供することと、c)該保水剤(複数可)と該界面活性剤(複数可)との重量比が1:1〜199:1になるように、ある量のステップa)の該組成物をある量のステップb)の該組成物と合わせることによって、保水剤−界面活性剤混合物を調製することと、d)該保水剤−界面活性剤混合物を乾燥させることと、を含む。
【0017】
第3の態様に従って、本発明は、水と合わせられて水硬化性混合物を形成することができる改質乾燥モルタル配合物を提供し、該改質乾燥モルタルは、a)水硬性結合剤を含む標準乾燥モルタル配合物と、b)改質乾燥モルタル配合物の総乾燥重量に基づいて、0.1〜2.5%の本発明の第1の態様に従う水硬性結合剤を含まない組成物と、を含み、該改質乾燥モルタル配合物は、改質乾燥モルタル配合物の総乾燥重量に基づいて、1%以下の上記に定義した式(I)に従う界面活性剤を含む。
【0018】
8.外断熱仕上げシステム(EIFS)および/または外断熱複合システム(ETICS)のためのグラウト、セメントベースのタイル接着剤(CBTA)、またはセメント系接着剤もしくはコーティング配合物である、本発明の第3の態様に記載の配合物。
【0019】
9.1つ以上の再分散性ポリマー粉末をさらに含む、上記の本発明の第3の態様または請求項8のいずれかに記載の配合物。
【0020】
10.上記の本発明の第3の態様または請求項8および9のいずれかに記載の乾燥モルタル配合物ならびに水を含む、水硬化性混合物。
【0021】
第4の態様に従って、本発明は、本発明の第3の態様に記載の該乾燥モルタル配合物および水を含む、水硬化性混合物を提供する。
【0022】
第5の態様に従って、本発明は、乾燥モルタル配合物を改質するための方法を提供し、該方法は、a)水硬性結合剤を含む標準乾燥モルタル配合物を提供することと、b)本発明の第1の態様に従う組成物を提供することと、c)ステップb)の該組成物をステップa)の該配合物と合わせて、該改質乾燥モルタル配合物の総重量に基づいて、0.1〜2.5%の本発明の第1の態様に従う該組成物を含む改質乾燥モルタルを提供することと、を含むが、但し、結果として生じる改質乾燥モルタル配合物が、該改質乾燥モルタル配合物の総乾燥重量に基づいて、1%以下の上記に定義した式1に従う界面活性剤を含むことを条件とする。
【0023】
第6の態様に従って、本発明は、水硬性結合剤を含有する乾燥モルタル配合物またはかかる乾燥モルタル配合物を含む水硬化性混合物のための改質剤組成物としての、本発明の第1の態様の該組成物の使用を提供する。
【0024】
第7の態様に従って、本発明は、硬化後、水硬性結合剤を含む乾燥モルタル配合物の接着、曲げ、および/または圧縮強度を増加させるための、本発明の第1の態様の該組成物の使用を提供する。
【0025】
12.水硬性結合剤を含有する乾燥モルタル配合物またはかかる乾燥モルタル配合物を含む水硬化性混合物のための改質添加剤としての、上記の本発明の第1の態様または請求項2〜5のいずれかに記載の該組成物の使用。
【0026】
13.硬化後、水硬性結合剤を含む乾燥モルタル配合物の接着、曲げ、および/または圧縮強度を増加させるための、上記の本発明の第1の態様または請求項2〜5のいずれかに記載の該組成物の使用。
【0027】
本発明に従って調製された水硬化性混合物は、乾燥モルタル配合物の硬化後に接着、曲げ、および/または圧縮強度の増加を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書全体にわたり、「パーセント」または「パーセント重量」へのいかなる言及も、別段の記載がない限り、組成物、配合物、または混合物の乾燥重量の観点から表されている。
【0029】
「EN」は欧州規格を表し、試験法番号への接頭語として試験法を指定する。試験法は、本出願の優先日時点で最新の試験法である。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語「水硬化性混合物」は、水硬性結合剤、充填剤(複数可)、保水剤(複数可)、ならびに、任意に、ポリマー分散液および/または再分散性ポリマー粉末などのポリマーを含有する添加剤を含む、建設分野で使用される組成物を意味する。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「水溶性」は、20℃の水中で水溶性である任意の化合物に言及する。
【0032】
本明細書において使用される場合、用語「水硬性結合剤」は、適量の水を添加すると、空気中ならびに水中で水和硬化することができる結合性ペーストまたは泥状物を形成し、顆粒を合わせて結合する、通常は微粉砕された材料の鉱物組成物を意味する。
【0033】
本発明の水硬性結合剤を含まない組成物は、式Iに従う1つ以上の界面活性剤を含み、
MSO−R−(−COOR 式(I)
式中、Mが、水素、金属、またはアンモニウムカチオン、好ましくは金属カチオン、より好ましくはナトリウムを表し、Rが、1つ以上のヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、および/またはシアノ基で任意に置換される直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和C1−10、好ましくはC2−4アルキレン部分を表し、各Rが、独立して、直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和C1−22、好ましくはC2−8アルキルラジカル、または水素、金属、もしくはアンモニウムカチオンを表し、nが、1〜10の整数、好ましくは1〜5の整数を表す。
【0034】
より好ましくは、式Iにおいてnは2を表し、さらにより好ましくは、界面活性剤は式(II)または式(III)に従う化合物である。
【0035】
【化1】
【0036】
さらにより好ましくは、界面活性剤は、ジオクチルスルホコハク酸塩、ジヘキシルスルホコハク酸塩、およびこれらの組み合わせから選択される。さらにより好ましくは、界面活性剤はジオクチルスルホコハク酸塩、最も好ましくはナトリウムジオクチルスルホコハク酸、即ち、ナトリウム1,4−ビス(2−エチルヘクスオキシ)−1,4−ジオキソブタン−2−スルホネートである。
【0037】
本発明の水硬性結合剤を含まない組成物はまた、1つ以上の水溶性多糖由来保水剤を含む。好ましくは、保水剤は、水溶性セルロースエーテル、デンプンエーテル、細菌性莢膜多糖(これはキサンタンガム、デキストラン、ウェランガム、ジェランガム、ジウタンガム、およびプルランを含む)、例えばアルギン酸およびカラゲナンなどの他の自然発生の多糖、ならびにこれらの混合物から選択される。より好ましくは、保水剤は水溶性セルロースエーテルである。
【0038】
好ましくは、本発明における使用に好適なセルロースエーテルは、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、およびヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース(HPHEC))、カルボキシ−アルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC))、カルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(CMHEC)およびカルボキシメチル−ヒドロキシプロピルセルロース(CMHPC))、スルホアルキルセルロース(例えば、スルホエチルセルロース(SEC)およびスルホプロピルセルロース(SPC))、カルボキシアルキルスルホアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルスルホエチルセルロース(CMSEC)およびカルボキシメチルスルホプロピルセルロース(CMSPC))、ヒドロキシアルキルスルホアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルスルホエチルセルロース(HESEC)、ヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(HPSEC)、およびヒドロキシエチルヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(HEHPSEC))、アルキルヒドロキシアルキルスルホアルキルセルロース(例えば、メチルヒドロキシエチルスルホエチルセルロース(MHESEC)、メチルヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(MHPSEC)、およびメチルヒドロキシエチルヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(MHEHPSEC))、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース(MC)およびエチルセルロース(EC))、二元または三元アルキルヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシプロピルセルロース(EHPC)、エチルメチルヒドロキシエチルセルロース(EMHEC)、およびエチルメチルヒドロキシプロピルセルロース(EMHPC))、アルケニルセルロースならびにイオン性および非イオン性アルケニルセルロース混合エーテル(例えば、アリルセルロース、アリルメチルセルロース、アリルエチルセルロース、およびカルボキシ−メチルアリルセルロース))、ジアルキルアミノアルキルセルロース(例えば、N,N−ジメチルアミノエチルセルロースおよびN,N−ジエチルアミノエチルセルロース)、ジアルキルアミノアルキルヒドロキシアルキルセルロース(例えば、N,N−ジメチルアミノエチルヒドロキシエチルセルロースおよびN,N−ジメチルアミノエチルヒドロキシプロピルセルロース)、アリール−、アリールアルキル−、およびアリールヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ベンジルセルロース、メチルベンジルセルロース、およびベンジルヒドロキシエチルセルロース)、およびこれらの塩(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロースエーテル)、ならびに、C〜C15の炭素原子を有するアルキル残渣、またはC〜C15の炭素原子を有するアリールアルキル残渣を有する、疎水的に改質したグリシジルエーテルとの上述のセルロースエーテルの反応生成物から成る群から選択される。より好ましくは、セルロースエーテルは、二元または三元アルキルヒドロキシアルキルセルロースである。さらにより好ましくは、セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)から選択される。
【0039】
本発明の水硬性結合剤を含まない組成物中、該保水剤(複数可)と該界面活性剤(複数可)との重量比は1:1〜199:1である。この範囲内で、最大量の該保水剤(複数可)と該界面活性剤(複数可)とは、好ましくは497:3、より好ましくは993:7、さらにより好ましくは124:1、最も好ましくは991:9である。同時に、最小量の保水剤(複数可)と該界面活性剤(複数可)とは、好ましくは3:2、より好ましくは7:3、さらにより好ましくは4:1、最も好ましくは9:1である。
【0040】
水硬性結合剤を含まない組成物は、追加の成分をさらに含み得る。例えば、水硬性混合物が良好な加工性を有すべきである用途(例えば、タイル接着剤)に対して、水硬性結合剤を含まない組成物は、石灰、空気連行剤(この存在は水硬性混合物中の空気充填空隙をもたらす)、癒着剤、超可塑剤、レオロジー改質剤、およびこれらの混合物から選択される1つ以上の安定剤を好ましくは含む。特に好ましい実施形態では、安定剤は空気連行剤である。好ましくは、空気連行剤は、アルキルポリグルコシド(APG)、脂肪アルコールサルフェート、脂肪アルコールエーテルサルフェート、アルキルポリグリコールエーテル、脂肪アルコールエトキシレート、またはこれらの組み合わせである。より好ましくは、安定剤は、ナトリウムラウリルサルフェート(Loxanol(商標)K 12 PとしてBASF,Germanyから99%の活性含量を有する粉末として商業的に入手可能)などの脂肪アルコールエーテルサルフェートである。水硬性結合剤を含まない組成物がかかる安定剤を含む実施形態では、該保水剤(複数可)と該安定剤(複数可)との重量比が19:1〜999:1、好ましくは9:1〜499:1であることが好ましい。
【0041】
第2の態様に従って、水硬性結合剤を含まない組成物は、該保水剤(複数可)を含む液体または固体組成物が、式1に従う1つ以上の界面活性剤を含む液体組成物と合わせられ、該保水剤(複数可)と該界面活性剤(複数可)との重量比が1:1〜199:1である保水剤−界面活性剤混合物を提供するプロセスによって調製される。好ましくは、最大量の該保水剤(複数可)と該界面活性剤(複数可)とは、497:3、より好ましくは993:7、さらにより好ましくは124:1、最も好ましくは991:9である。同時に、最小量の保水剤(複数可)と該界面活性剤(複数可)とは、好ましくは3:2、より好ましくは7:3、さらにより好ましくは4:1、最も好ましくは9:1である。
【0042】
好ましくは、水硬性結合剤を含まない組成物は、
(1)固形保水剤(複数可)を温水で洗浄し、その後濾過して湿性濾過ケーキを形成することと、
(2)例えば混練機内で濾過ケーキを均質的に混合しながら、式Iに従う界面活性剤を含む水溶液を湿性濾過ケーキ上に噴霧し、顆粒を形成することと、
(3)上記のステップ(2)において得られた顆粒を乾燥および製粉し、粉末を形成することと、を含むプロセスによって調製される。
【0043】
第3の態様に従って、本発明は、水と合わせられて水硬化性混合物を形成することができる改質乾燥モルタル配合物を提供し、該水硬性モルタルは、1つ以上の水硬性結合剤と、該改質乾燥モルタル配合物の総乾燥重量に基づいて、0.1〜2.5%の本発明の第1の態様の水硬性結合剤を含まない組成物と、を含む、標準乾燥モルタル配合物を含む。好ましくは、第1の態様の組成物は、少なくとも0.2%の量、より好ましくは少なくとも少なくとも0.3%の量で存在する。同時に、改質乾燥モルタルが、1.0%以下、より好ましくは0.8%以下の第1の態様の組成物を含むことが好ましい。
【0044】
いかなる従来の水硬性結合剤をかかる乾燥モルタル内に使用してもよいが、水硬性結合剤はセメントであることが好ましい。より好ましくは、水硬性結合剤は、ポルトランドセメント、具体的には、CEM I、II、III、IV、およびV型のもの、および/またはアルミナセメント(アルミネートセメント)、ならびにこれらの組み合わせである。好ましくは、モルタルは10重量パーセント以上、より好ましくは20重量パーセント以上、さらにより好ましくは30重量パーセント以上の量の水硬性結合剤を含む。同時に、モルタルが60重量パーセント以下、より好ましくは50重量パーセント以下、さらにより好ましくは40重量パーセント以下の水硬性結合剤を含むことが好ましい。
【0045】
このレベルを超える濃度では、接着、曲げ、および/または圧縮強度の観察される改善が低減されるか、または失われさえすると考えられるため、改質乾燥モルタル配合物は、配合物の総乾燥重量に基づいて、1%以下、好ましくは0.9%以下、さらにより好ましくは0.8%以下の式Iに従う界面活性剤(複数可)を含む。さらに、このレベルを超える量のかかる界面活性剤の添加は、水と合わせられると、満足のいく基準または許容可能な時間尺度内で最終組成物が硬化しない程度まで、乾燥モルタル配合物の硬化動態に対して著しい有害効果を有し得る。確かに、水硬性組成物の硬化動態に対するいかなる潜在的な有害効果をも低減および/または排除するために、乾燥モルタル配合物が配合物の総乾燥重量に基づいて、0.5%以下、より好ましくは0.1%以下の式Iに従う界面活性剤(複数可)を含むような量で、乾燥モルタル配合物が水硬性結合剤を含まない組成物を含むことが好ましい。同時に、乾燥モルタル配合物が、配合物の総乾燥重量に基づいて、少なくとも0.0001%、より好ましくは少なくとも0.001%の式Iに従う界面活性剤(複数可)を含むことが好ましい。
【0046】
使用される量は意図される用途次第で変動するが、乾燥モルタルの総重量に基づいて、0.1〜1.2%、より好ましくは0.2〜1.0%重量パーセントの水溶性多糖由来保水剤を配合物が含むように十分な量の水硬性結合剤を含まない組成物を乾燥モルタル配合物が含むことが好ましい。かかる保水剤(複数可)の組み込みは、当技術分野において従来のものであり、水硬性組成物の物理的特徴に対して有益な効果を付与することが知られている。例えば、かかる保水添加剤を組み込むことによって、当業者は、結果として生じる水硬性組成物の開放時間、硬化速度、および乾燥時間などの特性を改質することができる。乾燥モルタル配合物中にかかる量の水硬性結合剤を含まない組成物を組み込むことによって、追加の従来の保水添加剤への要求を低減または排除することができる。
【0047】
好ましくは、乾燥モルタルは1つ以上の充填剤をさらに含む。かかる実施形態では、充填剤が1.0mm以下の粒径を有する骨材材料であることが好ましい。好ましくは、骨材材料は、珪砂、白雲石、石灰石、真珠岩、発泡ポリスチレン、中空ガラス球、ゴム粉末、飛散灰、およびこれらの組み合わせから選択される。より好ましくは、骨材材料は珪砂である。1つ以上の充填剤が水硬性モルタル中に含まれる実施形態では、モルタルが、少なくとも1重量パーセント、より好ましくは少なくとも20重量パーセント、さらにより好ましくは少なくとも40重量パーセントのかかる材料を含むことが好ましい。同時に、モルタルが、85重量パーセント以下、より好ましくは70重量パーセント以下、最も好ましくは65重量パーセント以下のかかる材料を含むことが好ましい。
【0048】
好ましくは、水硬性モルタルは、1つ以上の再分散性ポリマー粉末(RDP)結合剤をさらに含む。保護コロイドおよび固化防止剤などの種々の添加剤の存在下でエマルションポリマーを噴霧乾燥することによって作製され得る様々なRDPは、当技術分野において周知であり、商業的供給源から入手可能であり、その全てが本発明における使用に好適であると考えられる。好ましくは、かかるRDPは、スチレン、ブタジエン、ビニルアセテート、ベルサテート、プロピオネート、ラウレート、ビニルクロライド、ビニリデンクロライド、エチレン、およびアクリレートから成る群から選択される1つ以上のモノマーのホモポリマー、コポリマー、またはターポリマー、例えば、エチレン/ビニルアセテートコポリマー(ビニルエステル−エチレンコポリマー)、ビニルアセテート/ビニル−ベルサテートコポリマー、およびスチレン/アクリル酸コポリマーである。より好ましくは、RDPは、例えばDLP 2000(Dow Wolff Cellulosics,Germanyから入手可能)などのビニルアセテート−エチレン系コポリマーである。水と混合されると、RDPは再分散されてエマルションを形成することができ、これは、今度は、蒸発および水硬性結合剤の水和によって水が除去されると水硬化性混合物中に連続的フィルムを形成する。
【0049】
かかるRDP結合剤の使用は義務ではなく任意である。EN12004およびEN12002は、ポリマー結合剤を含有する水硬化性接着剤に関する性能基準を提示する。かかるポリマー結合剤が存在するとき、水硬性モルタルは好ましくは、水硬性モルタルの総乾燥重量に基づいて、少なくとも0.3%重量パーセント、好ましくは少なくとも0.5%重量パーセント、より好ましくは少なくとも1.5重量パーセントのポリマー結合剤を含む。同時に、モルタルが、50重量パーセント以下、より好ましくは10重量パーセント以下、さらにより好ましくは5重量パーセント以下のポリマー結合剤(複数可)を含むことが好ましい。
【0050】
水硬性モルタルは、有機もしくは無機増粘剤および/または二次保水剤、垂れ防止剤、空気連行剤/癒着剤、湿潤剤、消泡剤、超可塑剤、分散剤、カルシウム錯化剤、遅延剤、促進剤、撥水剤、バイオポリマー、ならびに繊維から選択されるさらなる添加剤を任意に含有し、その全てが当技術分野において周知であり、商業的供給源から入手可能である。好ましくは、水硬性モルタル中に組み込まれるとき、かかる添加剤は、水硬性モルタルの総乾燥重量に基づいて、0.001〜5重量パーセントの量で存在する。
【0051】
第4の態様に従って、本発明は、本発明の第3の態様に記載の水硬性モルタルおよび水を含む、水硬化性混合物を提供する。水硬化性混合物は、EN1346およびEN1348のものなどの従来の方法に従って調製され得る。好ましくは、水硬性モルタルおよび本発明の第1の態様の組成物などの乾燥原料は、例えば水、および必要な場合はポリマー分散液などの液体結合剤などのいかなる液体原料が添加される前に、均質的に混合される。
【0052】
ポリマー分散液は、例えば水などの溶媒中に微細分散したポリマー粒子を含む二相系である。ポリマー分散液は、例えばビニルポリマーまたはポリアクリル酸エステルコポリマーなどのポリマー結合剤、ならびに疎水性および親水性部分を含有する界面活性剤として、ポリマー粒子を通常は含む。微細分散したポリマー粒子は、水が蒸発すると癒合してポリマーフィルムを形成する。
【0053】
第5の態様に従って、乾燥モルタル配合物を改質するための方法が提供される。本方法は、水硬性結合剤を含む標準乾燥モルタル配合物を提供することと、本発明の第1の態様に従う組成物を提供することと、本発明の第1の態様の組成物を標準乾燥モルタル配合物と合わせて、該改質水硬性モルタル配合物の総乾燥重量に基づいて、0.1〜2.5%の本発明の第1の態様に記載の組成物を含む改質乾燥モルタル配合物を提供することと、を含むが、但し、結果として生じる改質乾燥モルタル配合物が、該改質乾燥モルタル配合物の総乾燥重量に基づいて、1%以下の上記に定義した式1に従う界面活性剤を含むことを条件とする。好ましくは、乾燥モルタル配合物は、少なくとも0.2%、より好ましくは少なくとも0.3%の第1の態様の組成物を含む。同時に、改質乾燥モルタルが1.0%以下、より好ましくは0.8%以下の本発明の第1の態様の組成物を含むことが好ましい。改質乾燥モルタル配合物が配合物の総乾燥重量に基づいて、0.9%以下、さらにより好ましくは0.8%以下の式に従う界面活性剤(複数可)を含むような量で、本発明の第1の態様の組成物が水硬性結合剤を含む標準乾燥モルタル配合物と合わせられるべきであることも好ましい。さらに、水硬性組成物の硬化動態に対するいかなる潜在的な有害効果をも低減および/または排除するために、乾燥モルタル配合物が配合物の総乾燥重量に基づいて、0.5%以下、より好ましくは0.1%以下の式Iに従う界面活性剤(複数可)を含むような量で、乾燥モルタル配合物が水硬性結合剤を含まない組成物を含むことが好ましい。同時に、乾燥モルタル配合物が、配合物の総乾燥重量に基づいて、少なくとも0.0001%、より好ましくは少なくとも0.001%の式Iに従う界面活性剤(複数可)を含むことが好ましい。
【0054】
それぞれ第6および第7の態様に従って、i)水硬性結合剤を含有する乾燥モルタル配合物またはかかる乾燥モルタル配合物を含む水硬化性混合物のための改質剤組成物として、そしてii)硬化後、水硬性結合剤を含む乾燥モルタル配合物の接着、曲げ、および/または圧縮強度を増加させるために、第1の態様の組成物が使用される。これらの態様のそれぞれにおいて、本発明の第1の態様の組成物は、改質乾燥モルタル配合物が配合物の総乾燥重量に基づいて、1%以下、好ましくは0.9%以下、さらにより好ましくは0.8%以下の式Iに従う界面活性剤(複数可)を含むような量で、水硬性結合剤を含む標準乾燥モルタル配合物と合わせられるべきである。水硬性組成物の硬化動態に対するいかなる潜在的な有害効果をも低減および/または排除するために、乾燥モルタル配合物が配合物の総乾燥重量に基づいて、0.5%以下、より好ましくは0.1%以下、さらにより好ましくは0.05%以下の式Iに従う界面活性剤(複数可)を含むような量で、乾燥モルタル配合物が水硬性結合剤を含まない組成物を含むことが好ましい。同時に、乾燥モルタル配合物が、乾燥配合物の総重量に基づいて、少なくとも0.00001%、より好ましくは少なくとも0.0001%、さらにより好ましくは少なくとも0.001%の式Iに従う界面活性剤(複数可)を含むことが好ましい。
【0055】
本発明の第1の態様の水硬性結合剤を含まない組成物は、水硬性結合剤を含む任意の乾燥モルタル配合物中に有利に組み込まれ得ると考えられる。しかしながら、本発明の第1の好ましい態様に従うと、乾燥モルタル配合物はグラウト配合物である。第2の、等しく好ましい態様では、乾燥モルタル配合物はセメントベースのタイル接着剤配合物である。第3の、等しく好ましい態様では、乾燥モルタル配合物は、外断熱仕上げシステム(EIFS)および/または外断熱複合システム(ETICS)のためのセメント系接着剤またはコーティング配合物である。
【0056】
ここで本発明のいくつかの実施形態を、例示のみを目的としてさらに説明する。全ての比率、部分、および割合は、別段の記載がない限り乾燥重量によって表され、全ての構成要素は、別段の記載がない限り良好な商業的品質のものである。
【実施例】
【0057】
種々の界面活性剤化合物の存在および非存在下で、セメントベースのタイル接着剤(CBTA)、タイルグラウト、およびETICSベースコート接着剤/強化コート配合物を比較することによって、本発明に従うセメント系乾燥混合配合物の性能を研究した。さらに、保水剤、即ち、水溶性セルロースエーテルの一部を、かかる界面活性剤で置換する場合としない場合の乾燥混合配合物の性能を監視することによって、それによって少量の界面活性剤化合物が乾燥混合配合物中に組み込まれ得るビヒクルとしての保水剤の適合性を検査した。
【0058】
セメント組成物の調製
実施例全体にわたり、測定量の均質乾燥モルタルを測定量の水と合わせて手動で混合することによって、必要量の各セメント組成物を調製した。それぞれの場合において、水−固体係数(「W/S」)を以下の通り算出した:
【0059】
【数1】
【0060】
硬化時間の評価
Dettki Messautomatisierung,78736 Epfendorf/Germanyにより供給された自動針入度計(Dettki AVM−14−PNS)を使用して、種々のセメント組成物の総合的な硬化時間を判定した。各試験の開始時において、必要量の水を混合容器内に注ぎ、その後400gの均質乾燥モルタルを徐々に添加し、手動で1分間撹拌することによってセメント組成物を調製した。混合プロセスが完了したら、次にセメント組成物を、93mmの内径および38mmの高さを有するポリスチレンカップ内に、組成物中への空気の封入を回避するように注意しながら移し、充填したカップを次に振動台上に配置して混合物を圧縮する。この混合物を15回の圧縮力に晒したら、のこぎりのような動きでスパチュラを使用して過剰なセメント組成物を削り取ることによって、セメント組成物中の滑らかな水平面を次に調製した。次に深さ5mmのセメント組成物の層を含む境界を、この滑らかな表面の外周に適用して液体密封を提供し、流動パラフィンの層を滑らかなセメント組成物表面の上に配置して表皮形成を抑制し、分析の間にセメント組成物が試験針に粘着するのを防止する。次に自動分析のために針入度計内に試料を配置し、混合が開始された概念的な開始点から硬化時間を算出した。試験手順の間、針貫通が深さ36mmに制限されるときの時間を硬化「開始」時間として記録し、針貫通が深さ2mmに制限されるときの時間を硬化「終了」時間として記録する。記録した開始値を記録した終了値から単純に減じることによって、凝縮持続時間を算出する。
【0061】
実施例1:セルロースエーテル組成物
従来のセルロースエーテル、即ち、Walocel(商標)MTW 8000 PF 10(Dow Wolff Cellulosics,Germany)と、表1に特定した添加剤とを含むセルロースエーテル組成物を調製し、セルロースエーテルと添加剤(活性成分)との重量比は99:1であった。セルロースエーテルを水中で洗浄し、その後濾過して湿性濾過ケーキを形成し、濾過ケーキを混練機内での均質混合に晒しながら所望の添加剤を含む水溶液を噴霧し、顆粒を形成するプロセスによって、実施例1.1〜1.15のそれぞれを調製した。この顆粒を次に従来の様式で乾燥および製粉して、各セルロースエーテル組成物を形成した。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例2:セメントベースのタイル接着剤(CBTA)
実施例1のセルロースエーテル組成物を含む種々の配合物を比較することによって、本発明に従うCBTA組成物の性能を研究した。各試験において、35.0重量%の普通ポルトランドセメントCEM I 52.5 R(Milke,Germany)と、31.05重量%の石英砂F32(Quarzwerke Frechen,Germany)と、31.05重量%の石英砂F36(Quarzwerke Frechen,Germany)、2.5重量%のビニルアセテート−エチレンポリマーRDP、即ち、DLP2000(商標)(Dow Chemical Company)と、0.4重量%の実施例1に従うセルロースエーテル組成物と、を含むCBTA配合物を調製した。
【0064】
以下の表2および2Aに示す通り、実施例1.1〜1.15のセルロースエーテル組成物のそれぞれを含むCBTA組成物について、水−固体係数(W/S)、硬化時間、引張接着強度(EN 1348に従って測定される)、硬化時間、および開放時間(EN 1346に従って測定される)を記録した。
【0065】
【表2】
【0066】
【表2A】
【0067】
この結果は、水溶性多糖由来保水剤、具体的には水溶性セルロースエーテルと、本発明の界面活性剤とを含む組成物を提供することによって、かかる組成物をCBTA配合物中に合わせると接着強度の改善が観察されることを明らかに示す。
【0068】
実施例2:タイルグラウト
上記に定義した式Iに従う界面活性剤を組み込むと観察される利益はCBTA配合物に限定されないことを実証するために、幅広い界面活性剤化合物を含む種々のタイルグラウト配合物の性能を分析した。各試験のために、30.0重量%の普通ポルトランドセメントCEM I 42.5 R(Holcim,Germany)と、2.0重量%の高アルミナセメント(Secar(商標)51、Kerneos,Franceから入手可能)と、15.0重量%の珪砂FH31(Quarzwerke Frechen,Germany)と、2重量%のRDP(DLP2000)と、10.0重量%のカルシウムカーボネート(Jura White(商標)CC902、Omya,Germany)と、0.3重量%の超可塑剤(Melment(商標)F10、BASF,Germanyから入手可能)と、0.1重量%のヒドロキシエチルメチルセルロースエーテル、即ち、Walocel(商標)MTW 2000(Dow Wolff Cellulosicsから入手可能)と、0.05〜0.8重量%の以下の表3に特定した界面活性剤と、を含むタイルグラウトを調製し、配合物の残りはF34珪砂(Quarzwerke Frechen,Germany)を含んだ。
【0069】
【表3】
【0070】
以下の表4に示す通り、実施例5.1〜5.11のタイルグラウト配合物について、水−固体係数(W/S)、曲げ強度および圧縮強度(それぞれEN 12808−3に従って測定される)、ならびに硬化時間(CE 94.1に従って測定される)を記録した。さらに、配合物の加工性を目視検証し、1(優秀)〜5(極めて乏しい)の加工性等級を割り振った。
【0071】
【表4】
【0072】
これらの結果は、上記に定義した式Iに従う界面活性剤、具体的にはナトリウムジオクチルスルホコハク酸(DOSS)を含むモルタル配合物は、モルタル組成物の乾燥重量に基づいて、1重量%以下の量で存在するとき、機械的強度(例えば、曲げ、圧縮、および/または接着強度)の驚くべき増加を提供することを示す。さらに、かかる界面活性剤の添加はモルタル組成物の硬化動態を低減し得るが、界面活性剤濃度を1重量%以下に制限することによって、許容可能な硬化時間を達成することができる。