(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記システムは、前記少なくとも1つのナノ粒子のうちの異なるナノ粒子を照射するように、前記透明基板の異なる領域に前記少なくとも1つの単色ビームを方向付けるビームステアリング素子をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
光投影に基づく従来の表示システム(例えば、プレゼンテーションのためにおよび映画館において使用されるプロジェクタ)において、画面は、観察者が画面上の画像を見ることができるように投影された光の散乱を最大にするために不透明である。このような場合には、画面が効率的に光を散乱させるが、透明ではあり得ない。既存の透明2Dおよび3Dレーザ表示技術は、紫外線(UV)または赤外線(IR)光を、電磁スペクトルのUVまたはIR領域ではなく電磁スペクトルの可視部分で透明な画面で可視光に変換する。画面上の蛍光または非線形材料は、UVまたはIR光を観察者に表示される可視光に変換する。蛍光または非線形変換は、画面の透明性を可能にするが、ほとんどの蛍光および非線形材料は、効率よく入射光を変換しない(換言すると、それらは低い周波数変換効率に悩まされる)。その結果、蛍光ディスプレイおよび非線形ディスプレイは典型的には、高電力光源、UV/IR光源を用いる。
【0016】
しかしながら、本明細書で説明されるように、可視波長において実質的に透明であり、かつ可視照射を使用して効率的に画像を表示する、受動的な画面を作ることが可能である。これは矛盾しているように聞こえるが、次のように説明することができる。太陽光と、典型的な屋内/屋外の照明器具(例えば、白熱電球、蛍光灯等)からの光とは、広範囲の波長を含む。しかしながら、3つ以上の指定された波長(例えば、赤色、緑色、青色(RGB))での単色光の混合物は、人間によって知覚されるほぼ全ての色を生成するのに十分である。これは、指定された波長に近い狭帯域領域を除く可視スペクトルにおいて透明である画面(ディスプレイ)を作り出すことを可能にする。
【0017】
例示的な透明散乱ディスプレイは、1つ以上の特定の可視波長で強力に散乱し、他の全ての可視波長で透過するナノ粒子を使用し、ほとんどの人間により容易に知覚することができるカラー画像を生成する。例えば、透明散乱ディスプレイは、1つ以上の所定の狭帯域波長範囲で約30〜70%(例えば、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%)散乱し、それらの波長範囲外の入射可視光の20%以上(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%)を透過し得る。ナノ粒子は、透明基板に被覆されるもしくは埋め込まれる、または一対の透明基板の間に挟まれ、透明散乱画面を形成することができる。指定された波長(複数可)でナノ粒子の散乱効率が十分に高い場合、1つ以上の指定された波長で、レーザからの比較的低電力ビーム、発光ダイオード、または他の分光干渉性の光源によって透明散乱画面を照射することで、画面の前後の観測者に見える画像を生成する。
【0018】
ナノ粒子の散乱波長および光源に応じて、透明散乱ディスプレイは、単色または多色であり得る。例えば、ナノ粒子が約450nmまたはそれに近い波長でのみ強力に散乱する場合、ディスプレイは青色になるであろう。(黒いディスプレイ用の吸収性ナノ粒子もまた可能である。)同様に、複数の波長(例えば、450nmおよび650nm)で強力に散乱するナノ粒子を有する透明散乱ディスプレイを使用して、マルチカラー画像を表示することができる。3つ以上の指定された波長(例えば、450nm、550nm、および650nm)で強力に散乱するナノ粒子を有する透明散乱ディスプレイは、フルカラーディスプレイとして使用することができる。
【0019】
フルカラー透明ディスプレイは、適切な重み付け量の赤色、緑色、青色の光の組み合わせが所望の色をもたらす加法カラースキームに基づき得る。例えば、赤色および青色の追加はマゼンタをもたらし、青色および緑色の追加はシアンをもたらし、緑色および赤色の追加は黄色をもたらす。赤色、緑色、青色の散乱粒子(または別の好適な1組の散乱粒子)をホストする透明画面に色を追加することは、単に、適切に重み付け強度で赤色、緑色、青色の光のビームで画面上の単一のスポットを照射する問題に過ぎない。ビームが、目の統合時間よりも速い速度で画面を横切って走査されるようにビームの強度が変調されている場合、ビームは、画面上でフルカラー画像として観測者に見えるものを生成する。強度変調および/または走査パターンを変更することで動画像を生成する。
【0020】
ナノ粒子が指定された波長に近い狭帯域領域内の光を散乱させるまたは吸収するので、透明散乱ディスプレイは、基板も同様に比較的透明である場合には通常の照明条件下で透明に見えることもある。実際には、散乱波長(複数可)に入射するレーザ光の90%以上を散乱させつつ、例示的な透明散乱ディスプレイは、90%以上の電磁スペクトルの可視部分の透明性を呈し得る。(ナノ粒子の特徴に応じてより高いおよびより低い散乱率である可能性もある。)このような高散乱効率は、比較的低い強度(例えば、約1mW以上の強度)のビームにより画面を照射することを可能にし、これは、比較的低いレベルの電力消費でディスプレイの光源を操作することを可能にする。
【0021】
例示的な透明散乱ディスプレイは、動画(例えば、映像データ)、静止画像等を表示するために使用することができる。それらは、ヘッドアップディスプレイ、眼鏡/スペクタクルディスプレイ(例えば、グーグルグラス)、コンタクトレンズディスプレイ、ゴーグルベースのディスプレイ、大面積ディスプレイ等での使用に好適であり得る。使用可能なディスプレイサイズは、基板サイズおよび光源の走査/照明範囲に依存し、リフレッシュ速度は光源の走査速度に依存する。正確な実装に応じて、透明散乱ディスプレイは、映画、テレビ番組、ビデオゲーム、コンピュータディスプレイ、看板、屋外および屋内の広告ディスプレイ等を表示するために使用することができる。
【0022】
透明散乱ディスプレイはまた、照射目的で使用され得る。画像を表示するために使用される代わりに、画面は、例えば、その散乱波長が可視スペクトルに及ぶ散乱粒子の集合を選択することによって、拡散白色光およびおそらく他の色をも製造するために使用することができる。正確な色は、ナノ粒子の散乱波長(複数可)および光源によって放射されるビームの波長および相対強度に応じてカスタマイズすることができる。透明散乱ディスプレイを使用する照射は、例えば、住宅、オフィス、および他の建物の窓を照射光源にする、天井の電球を交換するまたは補充することによって、大面積照射の可能性に加えて、LED照射のエネルギー効率を提供する。これは、自然光をより良く模倣する照明を生成する。
【0023】
所望であれば、透明散乱ディスプレイは、IRまたはUV光を散乱させる粒子をホストするためにドープするまたは使用することができる。これらのIRまたはUV散乱粒子を照射することで、適切に構成されたカメラを用いて検出することができるIRまたはUV画像を生成する。
【0024】
フロントまたはバックライト照射による透明散乱表示
【0025】
図1Aは、前面または背面のいずれかからの照射を使用してフルカラー画像を表示するのに好適な透明散乱ディスプレイ100の図である。ディスプレイ100は、特定の可視波長の光に対してのみ低吸収損失および強い散乱を有するナノ粒子114をホストする透明な媒体(基板112aおよび112b)で作られた受動的な画面110を含む。広帯域環境光源(例えば、太陽、白熱電球、蛍光灯等)によって照射されたとき、この画面110は、入射光の小さい断片のみが吸収または散乱されるので、実質的に透明である。しかしながら、指定された可視波長のうちの1つ以上に分光干渉性の光源120からの単色照射の下で、画面110は、全ての方向に入射光を強力に散乱させる。したがって、この一見して透明な画面110上に散乱波長(複数可)でカラー画像を効率的に投影することができる。正規のプロジェクタ画面と同様に、この画面110上の画像は、鏡面反射を通じてよりもむしろ散乱を通じて表示され、したがって、視野角が比較的無制限である。さらに、それは非線形プロセスを伴わないので、散乱は非常に効率的であり、したがって、光源120は個人使用向けレーザプロジェクタ等の低電力源であり得る。
【0026】
画面110は、一対の実質的に透明な(例えば、90%、95%、または99%透明な)基板112aおよび112bの間に挟まれた散乱ナノ粒子114の層116で形成される。基板112aおよび112bは、ガラス、プラスチック、アクリル、およびポリマーを含むがこれらに限定されない、任意の好適な材料で形成され得る。基板は、剛性または可撓性であり得る;例えば、それらは板ガラスと同程度に剛性であり得る(例えば、窓ディスプレイに使用されるとき)、またはプラスチックのシートと同程度に可撓性であり得る(例えば、可撓性のディスプレイとして使用されるとき)。例えば、基板112aおよび112bは、1インチ未満の半径を有する筒状に巻くのに十分な可撓性を備えるプラスチックの薄いシートであり得る。同様に、基板は、用途およびナノ粒子の濃度に応じて、厚くても薄くてもよい(例えば、0.1mm、0.25mm、0.5mm、0.75mm、1.0mm、2.5mm、またはさらに厚い)。所望であれば、基板112aおよび112bは、着色される、粗くされる、または別様にパターン化され、不透明または拡散透過の領域等、特定の効果を達成し得る。
【0027】
基板112aおよび112bの間に挟まれた散乱ナノ粒子114の層116は、以下でより詳細に説明するように、基板112aおよび112bの一方または両方上にナノ粒子溶液を被覆する、印刷する、塗装する、噴霧する、または別様に堆積させることによって形成され得る。場合によっては、基板112aおよび112bは、気泡を除去し、ナノ粒子層の厚さおよび表面が比較的均一であることを確実にするために一緒に押圧され得る。ナノ粒子層116は、最大のナノ粒子114の直径と同じくらい薄いものであり得る;ナノ粒子114が凝集するかどうか、ならびにナノ粒子層116が基板112aおよび112bを分離するマトリックス(例えば、ポリマーマトリックス)を含むかどうかに応じて、それはまた、さらにはるかに厚い(例えば、最大のナノ粒子の直径の数倍)ものであり得る。あるいは、またはさらに、スペーサ(図示せず)は、ナノ粒子114を保持するための空洞を形成する基板112aおよび112bを分離することができる。
【0028】
ナノ粒子層116中の散乱ナノ粒子114は、ディスプレイの光軸(すなわち、基板112aおよび112bの表面に垂直な軸)に沿って見たとき、周期的、非周期的、または無作為に分布している可能性がある。場合によっては、ナノ粒子114は、(無作為に行われる場合、)約10
8cm
-2〜約10
11cm
-2(例えば、5×10
8cm
-2、10
9cm
-2、5×10
9cm
-2、10
10cm
-2、または5×10
10cm
-2)の面積密度でナノ粒子層116内に均一に分布している。体積密度は、約10
10cm
-2〜約10
13cm
-2(例えば、5×10
10cm
-2、10
11cm
-2、5×10
11cm
-2、10
12cm
-2、または5×10
12cm
-2)であり得る。他の面積および体積密度である可能性もある。他の場合には、ナノ粒子114は、例えば、画面110上に不透明な領域または透明な領域を形成するために、一定の領域により多いまたはより少ない密度で分布している可能性がある。
【0029】
ナノ粒子の断面(複数可)および濃度を考慮すると、画面110の厚さは、所望の波長λ
0での、ナノ粒子の散乱断面(複数可)、ナノ粒子の密度、および画面の厚さの積である、消光(これは、より高い散乱効率のためにより高いべきである)と、共鳴から離れた消光(これは、より高い透明性のためにより低いべきである)とのつり合いをとるように選択されるべきである。一般的に、画面110は、λ
0で光の半分以上が散乱されるように十分厚く、共鳴から離れた光の半分以上が透過されるように十分薄くされるべきである。
【0030】
散乱ナノ粒子114は、球、楕円、扁平回転楕円体、および扁長回転楕円体を含むがこれらに限定されない任意の好適な形状であり得る。それらは、単一の材料で作られた固体粒子、中空粒子、または外層で被覆された固体粒子であり得る。ナノ粒子はまた、
図12に示されるように、電流ループの形成をサポートする形状を有する金属ナノ粒子1214のように作られ得る。このようなナノ粒子は、固体ナノ粒子よりも狭い帯域幅を有し得る磁気共鳴をサポートすることができる。
【0031】
ナノ粒子114は、シリカ、シリコン、二酸化チタンを含む誘電材料;銀、金、銅を含む金属;ならびに誘電材料および金属の組み合わせを含み得る。それらの外径は、約5nm〜約250nm(例えば、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、または95nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、または225nm)の範囲であり得る。ナノ粒子の正確な形状、サイズ、および組成は、所望の散乱特性に依存し得る。
【0032】
以下でより詳細に説明されるように、ナノ粒子114は、その組成およびサイズに応じて、1つ以上の指定された波長で入射光を散乱させる。所望される場合、ナノ粒子114は、異なるタイプのナノ粒子を含み得る。この各々は、1つ以上の波長(例えば、約460nm、約530nm、および約650nm)辺りでセンタリングされる狭帯域領域においてのみ光を散乱させる。(ナノ粒子114は、可視スペクトル内の他の波長でごくわずかの量の光を散乱させ、吸収する。)例えば、ナノ粒子114は、赤色散乱ナノ粒子114a、緑色散乱ナノ粒子114b、青色散乱ナノ粒子114cを含み得る。これらの赤色散乱ナノ粒子114a、緑色散乱ナノ粒子114b、および青色散乱ナノ粒子114cは、等しい比率で、異なる色に対する人間の目の感度に基づいた重み付け比率で、または任意の他の所望の比率で混合され得る。あるいは、またはさらに、ナノ粒子114のいくらかまたは全ては、複数の波長(例えば、赤色、緑色、青色に対応する波長)で光を散乱させるように構成され得る。散乱ナノ粒子114の他の混合物もあり得る(例えば、単色、二色等)。
【0033】
図1Bは、青色散乱ナノ粒子114bについての波長に対する散乱断面(実線)および吸収断面(破線)のプロットである。青色散乱ナノ粒子114bが約460nmの波長で光を強力に散乱させるが、可視スペクトル内の他の任意の波長でかなりの光を散乱しないことをプロットは示す。また、青色散乱ナノ粒子114bは、可視スペクトル内のいずれの光も吸収しないことが示された。結果として、青色散乱ナノ粒子114bは、約460nmでセンタリングされた狭帯域領域におけるものを除いて、可視スペクトルにおける全ての波長で効果的に透明である。
【0034】
動作中、光源120は、ナノ粒子の散乱波長の1つ以上にナノ粒子114を照射する。実装に応じて、光源120は、ナノ粒子114のうちの1つ以上によって散乱される波長の光を生成するように構成された1つ以上のレーザか、発光ダイオード(LED)か、または他の分光干渉性の光源を含み得る。例えば、光源120は、約460nmの波長で第1のビーム123aを出射する第1のレーザダイオード122a、約530nmの波長で第2のビーム123bを出射する第2のレーザダイオード122b、約650nmの波長で第3のビーム123cを出射する第3のレーザダイオード122cを含み得る(総称して、レーザダイオード122および単色レーザビーム123)。レンズ124a、124b、および124c(総称して、レンズ124)、ならびに他のビーム整形光学(ピンホール、プリズム、および回折素子等)は、発散を防止するために、レーザビーム123を視準するか、または緩く合焦する。ミラー126aならびにダイクロイックビーム組み合わせ器126bおよび126cとして
図1Aに示されるビーム整形光学126は、多色ビーム121を形成するためにレーザビーム123を組み合わせる。追加のビーム整形光学(図示せず)は、ナノ粒子層114の面内のスポットに多色ビーム121を合焦し得る。
【0035】
あるいは、光源120は、広帯域光源(例えば、超高性能(UHP)ランプまたは家庭用プロジェクタ)を含む。1つ以上のダイクロイックフィルタまたはバンドパスフィルタは、所望の波長(複数可)を選択する。広帯域光源が単色ではないので、その散乱効率は、レーザまたは単色光源の散乱効率ほど高くないこともある。しかしながら、広帯域光源は、比較的低コストでレーザダイオードよりも高い電力を供給し得る。
【0036】
画面110上に画像を生成するために、ガルボ走査ミラーまたは音響光学偏向器を含むことができるビームステアリング素子130は、画面上の異なる領域に多色ビーム121を方向付ける。場合によっては、ビームステアリング素子130は、光源120(例えば、マイクロビジョンSHOWW+レーザピコプロジェクタ)と一体化された、微小電気機械システム(MEMS)デバイスであってもよい。例えば、ビームステアリング素子130は、ラスタパターン(または他の好適な走査パターン)に沿って多色ビーム121を走査し得るが、コントローラ140は、画面上に所望の画像を生成するためにレーザダイオード122によって出射される単色レーザビーム123の強度を変調する。プロセッサ、メモリ、通信インタフェース、ユーザインタフェース、および任意の他の好適な構成要素を含み得るコントローラ140は、画面110上の特定の画像または一連の画像を形成するために、ユーザ入力、ビデオもしくは画像データ源からの入力、またはその両方に応答して、ビームステアリング素子130および光源120を制御し得る。
【0037】
図1Cは、多色ビーム121によって示される画面110のセクションのクローズアップである。多色ビーム121は、少なくとも1つの赤色散乱ナノ粒子114aおよび少なくとも1つの青色散乱ナノ粒子114bを含む、いくつかのナノ粒子114を照射するスポット125を形成する。赤色光123aは、散乱赤色光111aを生成するために赤色散乱ナノ粒子114aを散乱させ、青色光123bは、散乱青色光111bを生成するために青色散乱ナノ粒子114bを散乱させる。画面110を見ている観測者1および3は、画面110上で散乱赤色光111aおよび散乱青色光111bを紫色のスポットとして知覚することもある。
【0038】
共に、合焦スポットのサイズおよびナノ粒子の密度は、ディスプレイのピクセルサイズ、または解像度を設定する:合焦スポットが、少なくとも1つのナノ粒子114を包含するのに十分大きい限り、それは、観測者に見える散乱光を生成すべきである。しかしながら、従来のディスプレイとは異なり、透明な散乱ディスプレイ100の画素サイズは、例えば、ズームレンズを使用して、単に合焦スポットのサイズを大きくまたは小さくすることにより、その場で調整することができる。加えて、合焦スポットのサイズは、従来の画素化ディスプレイを用いて達成可能な最も精巧な解像度よりもはるかに精巧な解像度にするために、例えば、ほぼ照射波長で、非常に小さくすることができる。(しかしながら、場合によっては、異なる走査角度/位置の数が、合焦スポットのサイズで割ったディスプレイの面積よりも小さい場合、ビームステアリング素子の走査能力は、ディスプレイ上の解像できるスポットの数を制限し得る。)
【0039】
図1Dは、透過型画面110を使用して、偏光多重化を用いた三次元(3D)表示効果をどのようにして達成することができるかを示す。第1の偏光光源152aは、第1の偏光ビーム153a(例えば、
図1Dに示される右回り円偏光ビーム)を用いて、画面110上に第1の偏光画像151aを投影する。第2の偏光光源152bは、第2の偏光ビーム153b(例えば、
図1Dに示される左回り円偏光ビーム)を用いて、画面110上に第2の偏光画像151bを投影する。観測者5は、フィルタ162aおよび162bにより、一方の目で右回り円偏光および他方の目で左回り円偏光をフィルタする眼鏡160で重なり合う画像を見る。各々の目は、異なる画像を知覚するので、3D効果を達成することができる。散乱光の大部分は多重散乱よりむしろ単一散乱事象に由来し、このため散乱光が入射光の偏光状態を保持するので、これは透明な画面110上で有効である。
【0040】
当業者は、ディスプレイ100は、
図1Aに示したアーキテクチャの代わりに他のアーキテクチャを使用することができることを容易に理解するであろう。例えば、光源120は、レーザダイオードの代わりに赤色、緑色、および青色を出射するLEDを含み得る。赤色、緑色、および青色のビームは、例えば、各ビームのための別個のビームステアリング素子を用いて、独立して操縦され得る。ディスプレイはまた、反復配列(例えば、赤色ビーム121a、次いで緑色ビーム121b、次いで青色ビーム121c)においてパルス化単色ビームを操縦するために、単一のビームステアリング素子を使用することができる。ビーム整形光学124およびビーム結合光学126はまた、所望のスポットサイズ(表示解像度)、動作距離(光源120から画面110までの距離)等に応じて選択することができる。
【0042】
図2は、画面の前方および後方の観測者に見える画像を生成するために、散乱ナノ粒子214を選択的に使用した多層透明散乱ディスプレイ200を示す。
図1Aに示されるディスプレイ100にように、多層透明散乱ディスプレイ200は、画面210および光源222aおよび222b(総称して、光源222)を含む。しかしながら、この場合、画面210は、3つの実質的に透明な基板:第1の基板212a、第2の基板212b、第3の基板212c(総称して、基板212)を含む。これらの基板212は、ガラス、プラスチック、アクリル、または任意の他の好適な材料からなり得る。それらの厚さおよび剛性/可撓性は、上で説明されるように用途に基づいて選択され得る。
【0043】
画面210はまた、2つのナノ粒子層を含む:第1の波長(例えば、460nm)で光を散乱させるナノ粒子214aを含む第1のナノ粒子層216a、および第2の波長(例えば、650nm)で光を散乱させるナノ粒子214bを含む第2のナノ粒子層216b(総称して、ナノ粒子214およびナノ粒子層216)。所与のナノ粒子層216は、(例えば、
図1Aのディスプレイ100におけるように)2つ以上の種類のナノ粒子214を含み得る。所望される場合、ナノ粒子214は、所定のパターンで基板216間に堆積または配置され得る。例えば、ナノ粒子214は、散乱波長(複数可)での光により画面210を照射することによって表示することができるロゴ、文字、数字(例えば、
図2に示されるように数字「1」および「2」)、または他のパターンを形成するように配置され得る。
【0044】
図2はまた、単色光の発散ビーム221aおよび221b(総称して、発散ビーム221)で画面210を照射するように配置された一対の光源222aおよび222bを示す。この実施例では、第1の光源222aは、第1のナノ粒子層216a内のナノ粒子214aによって散乱された波長で第1の発散ビーム221aを出射し、第2の光源222bは、第2のナノ粒子層216b内のナノ粒子214bによって散乱された波長で第2の発散ビーム221bを出射する。発散ビーム221で画面全体210を照射することによって、画像が、ナノ粒子によって形成されるパターンの形状で画面210に表示される。発散ビーム221は、所望される場合、ちらつく、移動する、変色するといったように見える画像を生成するために、オンおよびオフにする(変調する)ことができる。
【0046】
図1Aおよび2で示される透明散乱ディスプレイにおけるナノ粒子は、特定の波長で急激にピークに達し、可視スペクトルの残り全てにわたって実質的にゼロである散乱断面を有する。それらはまた、可視スペクトル全体にわたって実質的にゼロである吸収断面を有する。可視スペクトル全体にわたる基板の実質的な透明性と組み合わせられた、選択的散乱および低い吸収度のこの組み合わせは、ディスプレイ自体が実質的に透明であり得ることを意味する。
【0047】
金属被覆ナノ粒子における表面プラズモン共鳴、共鳴特徴(例えば、空洞)、およびファノ共鳴(共鳴と背景散乱確率との間の干渉のために非対称プロファイルを呈する共鳴)を含めて、ナノ粒子における波長選択狭帯域散乱(共鳴散乱)を達成するいくつかの方法が存在する。高屈折率誘電ナノ粒子等の他の粒子、および高次の共鳴等の他のタイプの共鳴も、好適な波長選択散乱を呈し得る。さらに、ナノ粒子のサイズ、形状、および組成は、特定の散乱波長、帯域幅、および帯域形状を達成するように選択することができる。
【0048】
当業者によって理解されるように、粒子が入射光の波長よりもはるかに小さい(例えば、ナノ粒子である)場合、粒子は、空間において実質的に一定である局所電磁場を受ける。その結果、この小さな粒子の光学的応答は、対応する静電気の問題から決定することができる。これは、準静的近似と呼ばれる(静電近似または双極子近似としても知られる)。
【0049】
準静的近似を用いて、小さな金属粒子の局在表面プラズモン共鳴における散乱断面の鋭さを推定することができる。この導出は一般的であり、球、楕円、扁平回転楕円体、および扁長回転楕円体を含むがこれらに限定されない、任意の粒子形状に適用される。準静的近似では、入射光の角度および偏光において平均化された散乱断面σ
scaは、次のように記述することができる:
【数1】
式中、角括弧が角度および偏光の平均値を表し、k=2π√ε
m/λは、周囲の媒体中における波数であり(その誘電定数ε
mは純粋に実数かつ正である)、α
1、α
2、およびα
3は、3つの直交方向における粒子の静的分極率である。粒子は、均一な材料(例えば、固体球)または複数の材料の複合体(例えば、コアシェル構造)であり得る。
【0050】
波長選択散乱を達成する1つの方法は、金属ナノ粒子における局在表面プラズモン共鳴を使用することである。いかなる特定の理論に縛られることなく、金属ナノ粒子は、その誘電関数がいくつかの波長範囲で負の実数部分を有することになるので、表面プラズモンをサポートすることができることを当業者は理解する。具体的には、金属ナノ粒子は、以下についておおよそλ
0の波長で起こる局在表面プラズモン共鳴をサポートする
【数2】
(球体の場合、この条件は、Re(ε(λ
0))=−2ε
m)に簡略化され得る。共鳴近くにおいて、静的分極率α
jは、平均化された散乱断面に支配的な寄与を提供し、したがって、オン共鳴(λ
0で)散乱断面とオフ共鳴(λ
0+Δλで、目的の小さいΔλ)散乱断面との間の比率は、おおよそ
【数3】
【0051】
この式は、有理関数として分極を書き込み、それらの共鳴値に対して相対的に小さいΔλで誘電率の実数成分および虚数成分を変化させることによって、簡略化することができる。球、被覆された球、楕円体、および被覆された楕円体の分極率の解析式は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるC.F Bohren and D.R.Huffman,Absorption and Scattering of Light by Small Particles(Wiley,New York,1998)に記載されている。これらの解析式は全て、有理関数の形をとることができる。さらなる任意の幾何学的形状において、分極率は多くの場合、共鳴に近い有理関数として局所的に近似することができる。
【0052】
等式(3)にこれらの単純化を適用することにより、誘電関数εによって特徴付けられる小さな粒子(例えば、直径<<波長)について、オン共鳴(λ
0で)散乱断面とオフ共鳴(λ
0+Δλで、目的の小さいΔλについて)との間の比率について以下の式をもたらす:
【数4】
等式(4)を導く導出は、任意の粒子形状に適用され、粒子が波長λ
0よりもはるかに小さいこと、およびΔλが十分に小さいため誘電率があまり変化しないことのみを前提とする。等式(4)は、局在表面プラズモン共鳴に適用され、必ずしも他のタイプの共鳴に適用されない。
【0053】
強い波長選択散乱の場合、オン共鳴散乱断面σ
sca(λ
0)は、オフ共鳴散乱断面σ
sca(λ
0+Δλ)よりもはるかに大きくなければならなく、これは、等式(4)に与えられる比率は、1よりも(はるかに)大きくなければならない。大きな比率(例えば、1よりもはるかに大きい)を達成するために、ナノ粒子材料が、小さな虚数成分Im(ε)、および共鳴波長λ
0近くで急速に変化する実数成分Re(ε)を有する誘電関数によって特徴付けられるべきであることを等式(4)は示唆する。誘電関数が小さな虚数成分、および特定の共鳴波長近くの急速に変化する実数成分を有する材料としては、ごくわずかの損失を伴うドルーデ金属が挙げられる。
【0054】
図3は、異なる金属についての誘電関数η=|Re(dε/dλ)/Im(ε)|
2の虚部に対する波長に関する誘電関数の誘導の実部の比率の二乗のプロットである。換言すると、ηは、散乱ナノ粒子における材料の性能の推定値を提供し、高い値は高い散乱および/またはより低い吸収を示す。
図3は、現実的な金属は、非可逆であり、可視スペクトル内のドルーデモデルから大幅に逸脱する傾向があることを示す。可視スペクトルの大部分のうちで、銀は、一般的な金属のうちで最も高い値η=|Re(dε/dλ)/Im(ε)|
2を有し、したがって、散乱ナノ粒子中での使用に好適である。散乱ナノ粒子を作製するために好適な他の材料は、金および銅を含むが、それらに限定されない。
【0055】
上述のように、透明散乱ディスプレイでの使用に好適なナノ粒子は、可視スペクトルにわたって均一の低い吸収断面σ
abs、および共鳴波長λ
0で高い散乱断面σ
scaかつ可視スペクトルの他の場所で低い散乱断面σ
scaを有していなければならない。これらのパラメータを用いて、以下の性能指数(FOM)を定義することができる。
【数5】
式中、上線および記号max{...}は、それぞれ可視スペクトル(390nm〜750nm)での平均値および最大値を示す。画面の全散乱および吸収は、画面上のナノ粒子の適切な面密度を選ぶことによって設定することができるので、FOMは、粒子の散乱および吸収断面の絶対値に関する代わりに、比率として定義される。数字2は、急激な散乱のための最適化と低い吸収のための最適化との間で良好なつり合いを提供する経験的に決定された重量である。(他の経験的に決定された重量(例えば、1.5〜2.5の範囲の数)も有効なことがある。)そして、最大吸収断面を使用することによって、着色透明画面用の尖った吸収断面の代わりに無色透明画面用の平坦な吸収スペクトルについてのFOMを与える。所望であれば、FOMは、人間の目の分光感度を考慮して散乱および吸収断面上の波長依存重量を含むように調整することができる。
【0056】
所望であれば、等式(5)において定義されるFOMを用いて、所定の散乱波長、散乱断面、および吸収断面のためのナノ粒子のサイズおよび組成を決定することができる。より具体的には、ナノ粒子は、式(5)で与えられるFOM等の適切な性能指数を使用する非線形最適化エンジンと、散乱および吸収断面のミー理論計算を組み合わせることによって、数値的に設計することができる。他の好適な性能指数は、可視スペクトル全体にわたる平均消光断面によって割った指定された狭帯域領域にわたる平均散乱断面として、または散乱断面の半値全幅(FWHM)に可視スペクトル全体にわたる平均消光断面を掛けたものを最小化することによって、定義され得る。性能指数に基づいた非線形の最適化は、任意の材料、任意の形状、および他のタイプの共鳴に適用することができる。このFOMベースの最適化はまた、可視スペクトルにおいて複数の散乱断面および/または異なるスペクトル幅による散乱断面を有するナノ粒子を設計するのに使用できる。
【0057】
図4A〜4Cは、上に記載の非線形最適化プロセスを用いて生成された、銀のシェルおよびシリカで作られたコアを有する球状ナノ粒子についての、波長に対する散乱断面(実線)および吸収断面(破線)のプロットである。
図4A〜4Cの差し込み図に示される粒子は、例えば、ストーバープロセスを用いて合成することができ、屈折率n=1.44(これは、ポリマーマトリックスの典型的なものである)を有する透明な媒体内に埋め込まれていることを前提とする。
図4A〜4Cに示される散乱および吸収断面は、シリカについてn=1.45および銀の波長依存複素誘電率の実験値を使用して、転送行列法を用いて計算された。粒度サイズの分布は、平均値の約10%に等しい標準偏差を有するガウス分布に従うことを前提とする。等式(5)のFOMを使用することによって、例えば、非線形最適化パッケージNLopt(http://ab−initio.mit.edu/wiki/index.php/NLoptで利用可能)内において実装される複数レベルの単一結合アルゴリズムを介して、グローバルな最適化を実施することによって、コア半径およびシェルの厚さを得る。
【0058】
図4Aは、30.8nmの厚さの銀シェルで被覆され、青色のレーザ光(λ
0=458nm)を散乱させる、約1.3nmの半径を有するシリカナノ球体を示す。
図4Bは、15.8nmの厚さの銀シェルで被覆され、緑色のレーザ光(λ
0=532nm)を散乱させる、約22.2nmの半径を有するシリカナノ球体を示す。そして、
図4Cは、11.0nmの厚さの銀シェルで被覆され、赤色レーザ光(λ
0=640nm)を散乱させる、約34.3nmの半径を有するシリカナノ球体を示す。
図4A、4B、および4CにおいてピークのFWHMは、それぞれ約66nm、約62nm、および約69nmであり、FOMは、それぞれ1.01、0.91、および0.81である。これらのFWHMにおいてすら、
図4A〜4Cに示されるナノ粒子のいずれかをホストする透明基板は、共鳴波長(複数可)を除いて実質的に透明である。
【0059】
図5Aおよび5Bはそれぞれ、λ
0=458nmで青色レーザ光を散乱させる二酸化チタンナノシェルと、λ
0=532nmで緑色レーザ光を散乱させるシリコンナノシェルとの計算された散乱および吸収断面のプロットである。この計算は、シェルの厚さにおいて±10%のランダム分布を考慮する。(いかなる特定の理論に束縛されることなく、準静的近似は、ナノシェルが比較的大きいので、これらのナノシェル共鳴を正確に説明していないこともある。)
【0060】
図5Aの二酸化チタンナノシェルは、25.5nmの内半径、70.1nmの外半径、およびFOM=1.76を有する。
図5Bのシリコンナノシェルは、43.8nmの内半径、68.2nmの外半径、およびFOM=1.14を有する。ナノシェルの共鳴は、比較的低い吸収損失を呈するが、屈折率の相違は、共鳴に対して十分な束縛を提供するために十分高くなければならない。
図5Aおよび5Bにおいて、例えば、ナノシェルのコアおよび周囲の媒体は、屈折率n=1を有すると仮定される。実際には、コアおよび周囲の媒体は、最大60mmの透過長を有する透明なエアロゲル等の低屈折率の材料を含み得る。
【0061】
図6は、約115nmの半径を有するシリコンナノ粒子についての散乱断面のプロットである。散乱断面は、青色、緑色、赤色におおよそ対応する波長でピークを有する。シリコンナノ粒子はまた、電磁スペクトルの近赤外部分において光を散乱させるが、人間には赤外光を見ることができないので、赤外線散乱は、ディスプレイの性能に影響を与えそうにない。
【0063】
図7A〜7Cは、例えば、
図1Aおよび2に示されるように、透明散乱ディスプレイで使用するための、散乱ナノ粒子を有する画面を作製するための異なるプロセスを示す。ナノ粒子714は、特定の波長(例えば、赤色、青色、緑色に対応する波長)で散乱を提供するように選択される形状、サイズ、および/または組成を有し得る。ナノ粒子714はまた、湿式化学、物理蒸着、イオン注入、およびファイバ線引きを含むがこれらに限定されない既存の技術で合成することができる。所望であれば、ナノ粒子の外表面は、望ましくない凝集(後述のクラスタリング)、ホスト(基板)材料との化学反応、またはその両方を阻止するために、(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)で)処理することができる。ナノ粒子溶液は、ナノ粒子の濃度を低減する、被覆の堆積特徴を改善する、またはその両方のために希釈され得る。
【0064】
図7Aに示されるプロセス700は、ナノ粒子溶液を形成するために、水に溶解するポリビニルアルコール(PVA)等の適切な溶媒715中でナノ粒子714を溶解することを含む(ステップ702)。所望であれば、ナノ粒子溶液は、ポリマー粉末と混合してポリマー/ナノ粒子溶液を形成することができる。あるいは、ナノ粒子はまた、透明基板712の一方の表面上に堆積され、ゆっくりと乾燥させたポリマー/ナノ粒子溶液を形成するために、液体ポリマーマトリックス中に溶解することができる。
【0065】
ナノ粒子は、基板の表面上にナノ粒子溶液を堆積させることによって、ガラス、プラスチック、アクリル、または他の任意の好適な透明材料からなり得る透明基板712上で被覆され得る(ステップ704)。厚さおよび表面外観の両方において、被覆を均一にすることにより、所望されない散乱を低減または排除することができる。均一の厚さを達成するために、ナノ粒子溶液は、スピン被覆される、塗装される、または別様に基板の表面上に堆積されて被覆を形成することができる。例えば、ナノ粒子溶液は、液体、泡、またはスプレーの形態で基板に塗布することができる。このような塗装は、いかなる特別な設備も必要とせずに透明表面上に噴霧され得るので、ほぼ全ての機会に容易に行うことができる。所望であれば、別の透明基板(図示せず)が、被覆中の気泡を除去する、被覆の表面の粗さを低減する、またはその両方のために、第1の基板712の被覆された表面に置かれるか、または押圧され得る。被覆を、穏やかに蒸発を通して(例えば、真空チャンバ内での乾燥を介して)乾燥させ(ステップ706)、均一な表面を形成する。所望であれば、追加の被覆(例えば、異なるタイプのナノ粒子を含有する)は、乾燥された被覆上にまたは他の基板表面上に堆積され得る。
【0066】
場合によっては、ナノ粒子溶液は、基板表面の上に印刷され、ナノ粒子の均一な層を生成する。好適な印刷技術としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびフレキソ印刷を含むが、これらに限定されない。印刷は、可撓性の基板上にナノ粒子を堆積するために特に有用である。
【0067】
所望であれば、ナノ粒子溶液は、マスクまたは他の適切な技術を使用して、例えば、
図2に示されるもののようなパターンを形成するために、基板表面の所定の部分上に印刷されるか、または別様に堆積され得る。例えば、ナノ粒子溶液が水溶液である場合、基板表面はそれぞれ、ナノ粒子溶液を引き付け、はじく、親水性および/または疎水性の被覆で選択的に被覆され得る。
【0068】
図7Bは、透明ディスプレイに使用するのに好適な画面を作製するための別のプロセス730を示す。このプロセス730では、基板が軟化されて軟化された基板を形成するか、または溶融されて液体基板を形成する(ステップ732)。ナノ粒子は、軟化された基板中に押印されるか、または液体基板中に溶解され(ステップ734)、次いで、硬化されて基板内に埋め込まれたナノ粒子を含む画面にする(ステップ736)。例えば、ナノ粒子は、溶融ガラス、溶融/液体プラスチック、または溶融/液体アクリル中に直接溶解して、ドープされた基板材料を形成することができる。次いで、ドープされた基板材料は、標準的なガラス(またはプラスチック)制作技術を用いて、ナノ粒子でドープされた透明な板を押出成形する、成形する、または別様に形成する。
【0069】
図7Cは、透明ディスプレイでの使用に好適な画面を作製するために、さらに別のプロセス760を示す。このプロセス760では、1つ以上のナノ粒子は、液体ポリマーマトリックス中に懸濁されるか、または乾燥ポリマーおよび溶媒と混合されてナノ粒子懸濁液を形成する(ステップ762)。ステップ764では、ナノ粒子懸濁液を、例えば、毛細管作用を用いて、一対の基板間または単独基板内に形成された空洞内に注入するまたは逃す。空洞は、ステップ766において懸濁液が逃げるのを阻止するために封止され、ナノ粒子懸濁液は、例えば、紫外光を用いて、ナノ粒子が沈降するのを阻止するために、ステップ768で硬化される。
【0071】
場合によっては、溶液中のナノ粒子は、共にクラスタ化して、散乱波長における所望でない移動を生成することができる。いかなる特定の理論に縛られることなく、浸透圧、毛細管力、およびファンデルワールス力は各々、ナノ粒子クラスタリングにおいて役割を果たすことができると思われる。浸透圧は、短距離(指し込み)引力をもたらすが、比較的低いナノ粒子濃度(例えば、約2×10
-5以下の体積分率)の溶媒では適用されないこともある。毛細管力は、例えば、PVPのような極性被覆で粒子を被覆することによって、ナノ粒子表面と溶媒(例えば、PVA)との間の界面エネルギーを低下させることによって、低減または排除することができる。
【0072】
ファンデルワールス力は、浸透圧または毛細管力よりもクラスタリングを引き起こす可能性が高いこともある。半径Rを有する一対の球についてのファンデルワールス力に関連し、距離Dによって分離される電位エネルギーは、
【数6】
式中、Aは定数である。水中の銀ナノ球体について、分離距離D=200nmで、A=4×10
-19は、kTにほぼ等しい引力エネルギーに相当する(ボルツマン定数×温度、または熱励起エネルギー)。ナノ球体密度の減少は、所与の一対のナノ球体が200nm以下で分離される確率を低減し、これは、ファンデルワールス引力がクラスタリングに繋がる確率を低減する:
【表1】
【0073】
図8A〜8Cは、ナノ粒子クラスタリングの効果を示す。
図8Aおよび8Bは、実験的な消光断面(σ
ext=σ
sca+σ
abs;実線)および理論上の消光断面(破線)対PVA中での球状の銀ナノ粒子のための波長を示す。実験曲線の幅は、プラス/マイナス1標準偏差を示す。ナノ粒子の濃度は、
図8Aにおいて5μg/mLおよび
図8Bにおいて10μg/mLであり、これは、(矢印で示されるように)620nmに近いより大きい消光断面を示す。
図8Cは、アライメントの軸に沿った偏光について計算される、(例えば、
図9Aの差し込み図におけるTEM画像に示される)共に粘着する2つの銀ナノ粒子の理論上の消光断面スペクトルのプロットである。それは、クラスタ化されたナノ粒子が620nmで光を強力に散乱させることを示し、これは、
図8Bの余分なピークが、より高いナノ粒子濃度でのナノ粒子クラスタリングに起因することを示唆する
例証
【0074】
以下の実施例は、特許請求の範囲を限定することなく本技術の態様を説明することを意図している。
【0075】
一実施例において、青色の画像を表示することが可能な透明なディスプレイが以下のように作製され、試験された。
図4Aは、青色レーザ光を散乱させるナノ粒子がごくわずかのシリカコアを有するので、透明ディスプレイが、簡略化のために固体球状の銀ナノ粒子(例えば、nanoComposix製)を用いて作製されることを示す。ナノ粒子は、銀ナノ粒子の水溶液(0.01mg/mLのナノ粒子密度)中に、PVA(例えば、Sigma−Aldrich製)を添加することによって、透明なポリマーマトリックス中でホストされた。液体を完全に混合し、25cm四方の測定したガラス片の一方の表面上に注ぎ、真空チャンバ内で乾燥させ、40時間室温で乾燥させた。これは、透明基板上に、内部に気泡がほぼない状態で、0.46mmの厚さであった、ナノ粒子がドープされたPVAのフィルムを有する透明画面をもたらした。
【0076】
図9Aおよび9Bはそれぞれ、ナノ粒子がドープされたPVAのフィルムについての波長に対する透過および消光のプロットである。(
図9Aの差し込み図は、62nm±4nmの直径を有する測定されたナノ粒子の透過電子顕微鏡(TEM)像を示す。)実線は測定値を示し、破線は計算値を示す。実線の幅は、プラス/マイナス1標準偏差を示す。
図9Bはまた、散乱(一点破線)および吸収(二点破線)による消光の理論値を示す。透過率は、共鳴波長で約20%まで低下し、可視スペクトル内の別の場所では100%に近い。両方のプロットは、ナノ粒子の時折のクラスタリングによって説明することができる620nm近い若干の矛盾を伴い、実験と理論との間の非常に良好な一致を示す(
図8Bおよび8Cを参照されたい)。
図9Bはまた、共鳴波長での消光の大部分が、吸収からよりもむしろ散乱から来ることをこの理論が予測していることを示す。
【0077】
図10Aは、3つのカラーコーヒーマグカップの前に位置する、透明散乱ディスプレイとして使用される透明画面のカラー写真を示す。写真は、458nm±2nmの波長で光を出射するGaNレーザダイオードを伴う、低電力レーザプロジェクタ(例えば、MicroVision SHOWWX+、最大出力電力1mW)を使用してこの画面上に投影された青色MITロゴを示す。投影されたロゴは、それが光散乱によって形成されたため、全ての方向から見ることができた。比較として、
図10Bは、
図10Aに示されている同じコーヒーマグカップの前で通常のガラス片に投影された同じロゴを示すカラー写真である。ガラスが投影された青色レーザ光の458nmの波長で透明であるので、
図10Bには画像は表示されない。
図10Aおよび10Bはまた、画面がガラスとほぼ同程度に透明であることを示す:カラーコーヒーマグカップは、画面およびガラスの両方の後ろにきちんと見える。
【0078】
図11Aおよび11Bはそれぞれ、透明画面および1枚の白い紙の上に投影されたMITのロゴのカラー写真である。両方の写真を、同じ照明条件と露出で撮影し、いかなる編集もせずに、原画像ファイルからJPEGファイルに直接変換した。画面上の投影された画像が、紙上の画像よりもわずかにぼやけているが、画面が、それが紙よりも少ない周囲光を散乱させるため、紙よりも良好な画像コントラストを達成することを
図11Aおよび11Bは示す。(紙とは異なり、画面は任意の拡散散乱を生成する。)
図11Aにおける透明画面の背後の黒い背面はまた、コントラスト比を向上させる。
【0080】
様々な発明の実施形態を本明細書で説明および例示してきたが、当業者は、機能を実施するためのならびに/または本明細書に記載の結果および/もしくは1つ以上の利点を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に想像し、そのような変形および/または修正の各々は、本明細書に記載の本発明の実施形態の範囲内であると見なされる。より一般的に、当業者は、本明細書に記載の全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的であることを意味し、かつ実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成が、本発明の教示が用いられている特定の用途(複数可)に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、ほんの日常的な実験を用いて、本明細書に記載の特定の発明の実施形態に対する多数の均等物を認識するか、または確認することができる。したがって、前述の実施形態はほんの一例として提示されており、添付の特許請求およびその均等物の範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に説明されて特許請求される以外の方法で実行することができることを理解されたい。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載の各々の個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。加えて、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾しない場合、本開示の発明の範囲に含まれる。
【0081】
上述の実施形態は、多数の方法のいずれかで実施することができる。例えば、(例えば、透明ディスプレイを設計するおよび/または動作する)実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを用いて実装され得る。ソフトウェアで実装する場合、ソフトウェアコードは、単一のコンピュータに設けられるか、または複数のコンピュータ間で分散されるかに関わらず、任意の好適なプロセッサまたはプロセッサの集合上で実行することができる。
【0082】
さらに、本発明のディスプレイおよびディスプレイを作製して動作する方法は、ラックマウント型コンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、またはタブレットコンピュータ等のいくつかの形態のうちのいずれかで実施され得るコンピュータと共に使用され得ることを理解されたい。例えば、
図1Aに示されるコントローラ140は、コンピュータ、スマートフォン、または他のプロセッサベースのデバイスとして実装され得る。加えて、コンピュータは、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、スマートフォン、または任意の他の適切な携帯もしくは固定電子デバイスを含む、コンピュータと一般的に見なされないが好適な処理能力を有するデバイスに埋め込まれ得る。
【0083】
また、コンピュータは、本明細書に開示の1つ以上のディスプレイを含めて1つ以上の入力デバイスおよび出力デバイスを有し得る。これらのデバイスを使用して、とりわけ、ユーザインタフェースを提示することができる。ユーザインタフェースを提供するために使用できる出力デバイスの例としては、出力の視覚的提示のためのプリンタまたはディスプレイ画面、およびスピーカまたは出力の可聴提示のための他の音響発生装置が挙げられる。ユーザインタフェースに使用することができる入力デバイスの実施例としては、キーボード、およびポインティングデバイス(マウス、タッチパッド、デジタル化タブレット等)が挙げられる。別の例として、コンピュータは、音声認識を介してまたは他の可聴形式で入力情報を受信し得る。
【0084】
このようなコンピュータは、企業ネットワーク等のローカルエリアネットワークまたはワイドエリアネットワーク、およびインテリジェントネットワーク(IN)またはインターネットを含む、任意の好適な形態の1つ以上のネットワークによって相互接続され得る。このようなネットワークは、任意の好適な技術に基づき得、任意の好適なプロトコルに従って動作し得、無線ネットワーク、有線ネットワーク、または光ファイバネットワークを含み得る。
【0085】
本明細書で概説される様々な方法またはプロセスは、様々なオペレーティングシステムまたはプラットフォームのうちのいずれか1つを採用する、1つ以上のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコーディングされ得る。加えて、このようなソフトウェアは、いくつかの好適なプログラミング言語および/またはプログラミングもしくはスクリプトツールのうちのいずれかを使用して記述することができ、また、実行可能な機械言語コードまたはフレームワークもしくは仮想マシン上で実行される中間コードとしてコンパイルすることができる。
【0086】
この点において、様々な発明の概念は、1つ以上のコンピュータまたは他のプロセッサ上で実行されるとき、上で考察される本発明の様々な実施形態を実装する方法を実施する1つ以上のプログラムでエンコードされたコンピュータ可読記憶媒体(または複数のコンピュータ可読記憶媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つ以上のフロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイもしくは他の半導体デバイスの回路構成、または他の非一時的媒体もしくは有形のコンピュータ記憶媒体)として実施される。中に記憶されたプログラム(複数可)が、上述した本発明の様々な態様を実装するために、1つ以上の異なるコンピュータまたは他のプロセッサ上にロードされ得るように、コンピュータ可読媒体(複数可)は可搬型であり得る。
【0087】
「プログラム」または「ソフトウェア」という用語は、上で考察される実施形態の様々な態様を実装するために、コンピュータもしくは他のプロセッサをプログラムするために採用することができる任意のタイプのコンピュータコード、またはコンピュータ実行可能命令の集合を指して一般的な意味で本明細書で使用される。加えて、一態様に従って、実行されると本発明の方法を実施する1つ以上のコンピュータプログラムは、単一のコンピュータまたはプロセッサ上に存在する必要はないが、本発明の様々な態様を実装するいくつかの異なるコンピュータまたはプロセッサ間でモジュール方式で分散され得ることを理解されたい。
【0088】
コンピュータ実行可能命令は、1つ以上のコンピュータまたは他のデバイスによって実行されるプログラムモジュール等の多くの形態であり得る。概して、プログラムモジュールは、特定のタスクを実施するまたは特定の抽象データタイプを実装する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、構成要素、データ構造等を含む。典型的には、プログラムモジュールの機能は、様々な実施形態で所望されるように組み合わせるまたは分散させることができる。
【0089】
また、データ構造は、任意の好適な形態でコンピュータ可読媒体に記憶され得る。説明を簡単にするために、データ構造は、データ構造内の位置を介して関連するフィールドを有することが示され得る。同様に、このような関係は、フィールド間の関係を伝えるコンピュータ可読媒体内の位置でのフィールドに記憶領域を割り当てることによって達成することができる。しかしながら、任意の好適な機構を使用して、ポインタ、タグ、またはデータ要素間の関係を確立する他の機構の使用を含む、データ構造のフィールドにおける情報の間の関係を確立することができる。
【0090】
また、様々な発明の概念は、実施例が提供された1つ以上の方法として実施され得る。方法の一部として実行される動作は、任意の適切な方法で順序つけされ得る。したがって、動作が例示的な実施形態において逐次的な動作として示されても、実施形態は、同時にいくつかの動作を実行することを含むことができる、動作が例示とは異なる順序で実施されるように構成され得る。
【0091】
本明細書中で定義され、使用されるように、全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれた文書における定義、および/または定義された用語の通常の意味を制御するものと理解されるべきである。
【0092】
流れ図は、本明細書中で使用される。流れ図の使用は、実施される動作の順序に関して限定することを意図しない。本明細書に記載された主題は時には、異なる他の構成要素内に含まれる、またそれらと関連付けられる異なる構成要素を示す。このような描写されたアーキテクチャは単なる例に過ぎず、実際には、同じ機能性を達成する多くの他のアーキテクチャを実装することができることが理解されるべきである。概念的な意味において、同じ機能性を達成する構成要素の任意の配置は、所望の機能性が達成されるように、効果的に「関連付け」られる。したがって、特定の機能性を達成するように組み合わせられる、本明細書の任意の2つの構成要素は、アーキテクチャまたは中間構成要素に関係なく所望の機能性が達成されるように、互いに「関連付けられる」と見なされ得る。同様に、そのように関連付けられた任意の2つの構成要素はまた、所望の機能を達成するために互いに「動作可能に接続されている」または「動作可能に結合されている」と見なすことができ、そのように関連付けることができる任意の2つの構成要素はまた、所望の機能を達成するために互いに「動作可能に結合可能」であると見なすことができる。動作可能に結合可能な特定の例としては、物理的に嵌合可能なおよび/もしくは物理的に相互作用する構成要素、ならびに/または無線で相互作用可能なおよび/もしくは無線で相互作用する構成要素、ならびに/または論理的に相互作用するおよび/もしくは論理的に相互作用可能な構成要素を含むが、これらに限定されるものではない。
【0093】
明細書および特許請求の範囲で使用されるとき、不定冠詞「a」および「an」は、反対であることが明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0094】
明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、「および/または」という用語は、「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである(すなわち、場合によっては結合して存在し、他の場合には結合せずに存在する要素)。「および/または」により列挙される複数の要素は、同じ様式(すなわち、そのように結合された要素の「1つ以上」)で解釈されるべきである。他の要素は任意に、具体的に識別される要素に関連するかまたは関連しないかに関わらず、「および/または」節によって具体的に識別されるそれらの要素以外に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」は、「含む(comprising)」等のオープンエンド言語と組み合わせて使用されるとき、一実施形態では、(任意に、B以外の要素を含む)Aのみを指し、別の実施形態では、(任意に、A以外の要素を含む)Bのみを指し、さらに別の実施形態では、(任意に、他の要素を含む)AおよびBの両方、などを指すことができる。
【0095】
明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用されるとき、「または」は、上に定義される「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、一覧中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的であると解釈されるべきであり、すなわち、いくつかのまたは列挙された要素のうち、少なくとも1つを含むが、2つ以上も含み、また、任意に、列挙されない項目をさらに含む。反対に、明確に示される用語、例えば、「の1つのみ」または「の正確に1つ」等、または特許請求の範囲で使用されるときの「からなる」は、いくつかのまたは列挙された要素のうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般的に、本明細書で用いられるとき、「いずれか」、「の1つ」、「の1つのみ」、または「の正確に1つ」等の排他性の用語が先行する場合、「または」という用語は、排他的代替物(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すとして解釈されるべきである。特許請求の範囲で使用されるとき、「から本質的になる」は、特許法の分野で使用されるようにその通常の意味を有するべきである。
【0096】
明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、1つ以上の要素の一覧の参照において、「少なくとも1つの」という句は、要素の一覧の要素のうちの任意の1つ以上から選択された少なくとも1つの要素を意味するが、要素の一覧内に具体的に列挙される各々のおよび全ての要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、要素の一覧における要素の任意の組み合わせを排除しないと理解されるべきである。要素が、具体的に識別されたそれらの要素に関連するかまたは関連しないか関わらず、「少なくとも1つの」という句が指す、要素の一覧内で具体的に識別された要素以外に任意に存在することをこの定義はまた可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または、同等に「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つの、任意に2つ以上のAを含み、Bが不在であること(かつ任意に、B以外の要素を含む)を指し;別の実施形態では、少なくとも1つの、任意に2つ以上のBを含み、Aが不在であること(かつ任意に、A以外の要素を含む)を指し;さらに別の実施形態では、少なくとも1つの、任意に2つ以上のAを含むこと、および少なくとも1つの、任意に2つ以上のBを含むこと(かつ任意に、他の要素を含む)等を指し得る。
【0097】
特許請求の範囲において、ならびに上の明細書において、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「からなる(composed of)」等の全ての移行句は、オープンエンドであると理解されるべきである(すなわち、それらを含むがそれらに限定されないことを意味する)。移行句で、「から成る」および「から本質的になる」はそれぞれ、米国特許庁特許審査手続便覧2111.03に記載されているように、閉鎖または、半閉鎖移行句である。