特許第6346209号(P6346209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346209
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】一時接合
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20180611BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20180611BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180611BHJP
   C09J 201/02 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   H01L21/02 C
   H01L21/304 622J
   C09J11/06
   C09J201/02
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-29418(P2016-29418)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-174145(P2016-174145A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】14/636,981
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エス・オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ジィフェン・バイ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ケイ・ギャルハー
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−150239(JP,A)
【文献】 特開平7−118619(JP,A)
【文献】 特開2008−174727(JP,A)
【文献】 米国特許第6722950(US,B1)
【文献】 特開2015−122483(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/018083(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/02
H01L21/304
C09J7/00−7/50
C09J11/00−11/08
C09J201/00−201/10
B24B1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板をキャリア基板に剥離可能に取り付ける方法であって、
(a)表側及び裏側を有する半導体基板を提供することであって、前記表側が銅表面を有する、提供することと、
(b)取り付け面を有するキャリア基板を提供することと、
(c)硬化性接着材料、剥離添加剤、及び銅不動態化剤を含む仮接合組成物を、前記半導体基板の前記表側と前記キャリア基板の前記取り付け面との間に配置することと、
(d)前記接着材料を硬化して、前記半導体基板の前記表側と前記キャリア基板の前記取り付け面との間に配置される仮接合層を提供することと、を含み、前記キャリア基板の前記取り付け面に隣接する前記仮接合層が、前記半導体基板の前記表側に隣接する前記仮接合層に含まれる前記剥離添加剤の量に比べ、より少量の前記剥離添加剤を含む、前記方法。
【請求項2】
前記硬化性接着材料が、ポリアリーレンオリゴマー、環状オレフィンオリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマー、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の前記方法。
【請求項3】
前記剥離添加剤が、ポリエーテル化合物、ポリエーテルアミン化合物、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の前記方法。
【請求項4】
前記剥離添加剤が、ポリアルキレンオキシドホモポリマー、ポリアルキレンオキシドコポリマー、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の前記方法。
【請求項5】
前記銅不動態化剤が窒素含有ヘテロ芳香族環部分を含有する、請求項1に記載の前記方法。
【請求項6】
前記銅不動態化剤が、C1−10アルキル、C6−10アリール、C7−20アラルキル、C2−10アルケニル、C1−10アルコキシ、カルボキシ、C1−10アルコキシカルボニル、カルボ−C1−10−アルコキシ、スルホキシ、ヒドロキシ、チオール、C1−10アルキルメルカプタン、C6−10アリールメルカプタン、アミノ、C1−10アルキルアミノ、ジ−C1−10−アルキルアミノ、C6−10アリールアミノ、ジ−C6−10−アリールアミノ、C1−10アミド、C2−50アルキルアミド、C3−50ジアルキルアミド、及びハロゲンから選択される1つ以上の置換基と置き換えられる、芳香族環上の1つ以上の水素を有する窒素含有ヘテロ芳香族化合物である、請求項5に記載の前記方法。
【請求項7】
前記キャリア基板の前記取り付け面を、前記仮接合組成物と接触させる前に、接着促進剤で処理するステップをさらに含む、請求項1に記載の前記方法。
【請求項8】
(e)前記半導体基板の前記裏側である作業を行うステップと、(f)前記半導体基板の前記表側を前記仮接合層から分離するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の前記方法。
【請求項9】
硬化性接着材料、剥離添加剤、及び銅不動態化剤を含前記剥離添加剤が、硬化性接着材料から形成された硬化接着材料より親水性であり、かつポリエーテル化合物、ポリエーテルアミン化合物、及びこれらの混合物から選択される、仮接合組成物。
【請求項10】
表側及び裏側を有する半導体基板であって、前記表側が銅表面を有する、半導体基板と、取り付け面を有するキャリア基板と、前記半導体基板の前記表側と前記キャリア基板の前記取り付け面との間に配置された仮接合層と、を備える構造であって、前記仮接合層が、硬化接着材料、銅不動態化剤、及び剥離添加剤を含み、前記キャリア基板の前記取り付け面に隣接する前記仮接合層が、前記半導体基板の前記表側に隣接する前記仮接合層に含まれる前記剥離添加剤の量に比べ、より少量の前記剥離添加剤を含む、前記構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造の分野に関し、より具体的には、半導体ウエハの基板への仮接合に関する。
【0002】
多くの製造分野では、作業(処理)されるべき部品は、別のワークピースまたは支持体に、仮に取り付けられなければならない。例えば、半導体デバイスの製造では、多くの場合、様々な製造ステップのために、半導体ウエハの支持を必要とする。より薄いダイパッケージの要件は、半導体製造業者を薄い半導体ウエハへ向かわせた。かかる薄化は、典型的に、ウエハの裏側の研磨を可能にするために、アクティブデバイスを含む半導体ウエハの表側をキャリア(支持体)に仮接着することによって達成される。さらに、薄化ウエハは、金属化、洗浄、エッチング等のさらなる処理作業の対象となり得る。かかる処理後、薄化ウエハは、キャリアから取り外され(脱接合(debond)され)なければならない。仮接着剤がウエハにあまりにも強力に接合する場合、ウエハは、キャリアからの分離中に、破損等の損傷または接合形体の変形を被り得る。あるいは、仮接着剤は、十分な体積強度に欠け得、分離後にウエハのアクティブ面上及び基板上の両方に残り、追加の洗浄またはエッチングステップを必要とし得る。
【0003】
半導体デバイスの製造において使用される従来の仮接合接着剤は、熱可塑性接着剤または架橋接着剤である。熱可塑性接着剤は、残留接着剤が溶媒洗浄によって容易に除去され得るという利点を有する。熱可塑性接着剤の主な問題は、加熱されると柔らかくなることであり、これはある特定の用途におけるそれらの使用を制限する。架橋接着剤は、溶媒洗浄によって容易に除去されず、典型的に、脱接合操作の間または後に剥脱することによって除去される。この剥脱ステップは、架橋接着剤が室温である程度の柔らかさを有することを必要とする。残念ながら、この室温の柔らかさは、研磨作業後に均一なウエハ厚さを達成する際に困難を提供するため、問題である。
【0004】
米国特許出願公開第2014/0117504号は、上記の問題のうちの多くに対処する。この特許出願は、硬化性接着材料及び剥離添加剤を含む仮接合組成物の層を、半導体ウエハのアクティブ(デバイス)側とキャリア基板の取り付け面との間に配置し、その後、接着材料を硬化して半導体ウエハのアクティブ側とキャリア基板の取り付け面との間に配置される仮接合層を提供するためのプロセスを開示し、キャリア基板の取り付け面に隣接する仮接合層が、比較的より少量の剥離添加剤を含み、半導体ウエハのアクティブ側に隣接する仮接合層が、比較的より多量の剥離添加剤を含む。接着材料の硬化の際に、剥離添加剤は半導体ウエハのアクティブ面に向かって相分離し、室温での低力機械的脱接合を可能にする。このプロセスは半導体ウエハで見出される全ての表面上で作用するが、銅表面は仮接合組成物と接触する前に最初にプラズマ処理されなければならず、その後、仮接合組成物は、銅表面からの所望の低力機械的脱接合を提供するために、250℃を超える温度で硬化されなければならない。
【0005】
銅が半導体基板上の最も一般的な表面の1つであるため、銅表面を最初にプラズマ処理する必要なく、銅表面を有する半導体基板からの低力機械的脱接合、特に銅相互接続構造を提供する仮接合組成物及びプロセスが必要とされている。
【0006】
本発明は、硬化性接着材料、剥離添加剤、及び銅不動態化剤を含む仮接合組成物を提供する。この仮接合組成物は、溶液、乳剤、分散体、または乾燥フィルムであってもよく、好ましくは、この組成物は、溶液または乾燥フィルムであり、より好ましくは溶液である。剥離添加剤は、接着材料を効果するのに用いられる条件下では非硬化性である。剥離添加剤は、それが未硬化接着材料中で可用性または分散性であるが、相が接着材料の硬化中に分離するように選択される。銅不動態化剤は、接着材料を硬化するのに用いられる条件下で非硬化性である。
【0007】
本発明は、半導体基板をキャリア基板に剥離可能に取り付ける方法であって、(a)表側及び裏側を有する半導体基板を提供することであって、表側が銅表面を有する、提供することと、(b)取り付け面を有するキャリア基板を提供することと、(c)硬化性接着材料、剥離添加剤、及び銅不動態化剤を含む仮接合組成物を、半導体基板の表側とキャリア基板の取り付け面との間に配置することと、(d)接着材料を硬化して、半導体基板の表側とキャリア基板の取り付け面との間に配置される仮接合層を提供することと、を含み、キャリア基板の取り付け面に隣接する仮接合層が、比較的より少量の剥離添加剤を含み、半導体基板の表側に隣接する仮接合層が、比較的より多量の剥離添加剤を含む、方法をさらに提供する。
【0008】
本発明によってさらに提供されるのは、表側及び裏側を有する半導体基板であって、表側が銅表面を有する、半導体基板と、取り付け面を有するキャリア基板と、半導体基板の表側とキャリア基板の取り付け面との間に配置された仮接合層と、を備える構造であって、仮接合層が、硬化接着材料、銅不動態化剤、及び剥離添加剤を含み、キャリア基板の取り付け面に隣接する仮接合層が、比較的より少量の剥離添加剤を含み、半導体基板の表側に隣接する仮接合層が、比較的より多量の剥離添加剤を含む、構造である。
【0009】
驚くべきことに、本発明は、半導体産業において使用される従来の仮接合の取り組みにおける欠陥の1つ以上に対処することがわかっている。本発明は、ある特定の処理ステップ中に半導体基板をキャリアに仮接合する際に有効である。半導体基板は、その後、キャリアから脱接合され、従来の仮接合剤と比較して、形体の変形が低減し、好ましくは形体の変形がなく、かつウエハのアクティブ側上に残る残留接着剤が低減し、好ましくはウエハのアクティブ側上に残留接着剤が残らない。本発明は、銅表面を有する半導体基板の処理における使用、または銅表面への仮接合が必要とされる任意の他の用途における使用に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、本発明のプロセスを図示する概略図である。
図1B図1Bは、本発明のプロセスを図示する概略図である。
図1C図1Cは、本発明のプロセスを図示する概略図である。
図2A図2Aは、本発明のプロセスを図示する概略図である。
図2B図2Bは、本発明のプロセスを図示する概略図である。
図2C図2Cは、本発明のプロセスを図示する概略図である。
図2D図2Dは、本発明のプロセスを図示する概略図である。
図2E図2Eは、本発明のプロセスを図示する概略図である。
図2F図2Fは、本発明のプロセスを図示する概略図である。
【0011】
図面において、同様の数字は同様の要素を指す。ある要素が別の要素に「隣接」していると称される場合、それは該別の要素に直接隣接し得、または介在要素がその間に存在してもよいことが理解されるであろう。ある要素が別の要素に「直接隣接」していると称される場合、介在要素はない。
【0012】
第1の、第2の、第3の等の用語は、様々な要素、構成要素、領域、層、及び/またはセクションを説明するために使用され得るが、これらの要素、構成要素、領域、層、及び/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、層、またはセクションを、別の要素、構成要素、領域、層、またはセクションから区別するためにのみ使用される。よって、下記で取り上げられる第1の要素、構成要素、領域、層、またはセクションは、本発明から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、またはセクションという用語で表され得る。
【0013】
この明細書を通して使用される場合、以下の省略語は、文脈が別途明確に示さない限り、以下の意味を有する。℃=摂氏度、g=グラム、mg=ミリグラム、L=リットル、ppm=百万分率、μm=ミクロン=マイクロメートル、nm=ナノメートル、mm=ミリメートル、mL=ミリリットル、kPa=キロパスカル、GPa=ギガパスカル、及びM=Da中の数平均分子量。別途述べられない限り、全ての量は重量%であり、全ての比はモル比である。全ての数的範囲は、かかる数的範囲がやむを得ず合計100%になることが明らかである場合を除き、包括的かつ任意の順序で組み合わせ可能である。「重量%」は、別途述べられない限り、指される組成物の合計重量に基づく、重量パーセントを指す。
【0014】
本明細書を通して使用される場合、「形体」とは、基板上、特に半導体ウエハ上の形状を指す。「アルキル」という用語は、直鎖、分岐、及び環状アルキルを含む。同様に「アルケニル」は、直鎖、分岐、及び環状アルケニルを指す。「アリール」は芳香炭素環及び芳香ヘテロ環を指す。「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を指す。「硬化」という用語によって、材料または組成物の分子量を増加させる、重合または凝縮等の任意のプロセスを意味する。「硬化性」は、ある特定の条件下で硬化される(重合される等)ことが可能な任意の材料を指す。「オリゴマー」という用語は、さらなる硬化が可能である、二量体、三量体、四量体、及び他の比較的低分子量材料を指す。冠詞「a」、「an」、及び「the」は単数形及び複数形を指す。「及び/または」という用語は、関連付けられる記載項目のうちの任意の1つまたはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0015】
硬化性接着材料、剥離添加剤、及び銅不動態化剤を含む接着組成物は、一時(または仮)接合層を形成するのに使用され得ることがわかっている。使用において、本接着組成物は、最初にキャリア基板表面と銅表面を有する構成要素の表面との間に配置され、組成物は硬化され、様々な操作が構成要素上で実施され得、その後、構成要素はキャリアから分離される。
【0016】
特に、本発明は、半導体基板をキャリア基板に剥離可能に取り付ける方法であって、(a)表側及び裏側を有する半導体基板を提供することであって、表側が銅表面を有する、提供することと、(b)取り付け面を有するキャリア基板を提供することと、(c)硬化性接着材料、剥離添加剤、及び銅不動態化剤を含む仮接合組成物を、半導体基板の表側とキャリア基板の取り付け面との間に配置することと、(d)接着材料を硬化して、半導体基板の表側とキャリア基板の取り付け面との間に配置される仮接合層を提供することと、を含み、キャリア基板の取り付け面に隣接する仮接合層が、比較的より少量の剥離添加剤を含み、半導体基板の表側に隣接する仮接合層が、比較的より多量の剥離添加剤を含む、方法を提供する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「半導体基板」という用語は、単独のまたは他の材料を備えるアセンブリ内の半導体ウエハ、及び単独のまたは他の材料を備えるアセンブリ内の半導体材料層等の、バルク半導体材料を含むがこれらに限定されない、半導体材料を含む任意の構築物を意味する。半導体デバイスは、少なくとも1つのアクティブまたは動作可能な半導体デバイスが、製作された、されている、またはこれからされる、半導体基板を指す。幅広い様々な半導体基板が、本発明において用いられ得る。半導体基板は、「電子デバイス基板」、「半導体デバイス」、及び様々なレベルの相互接続用の様々なパッケージを包含し、ウエハまたはパネルの形態であり得る。半導体基板は、単一チップウエハ、複数チップウエハ、様々なレベル用のパッケージ、発光ダイオード用の基板、またははんだ接続を必要とする他のアセンブリを含む。特に好適な半導体基板は、ガラス、サファイア、ケイ酸材料、窒化ケイ素材料、炭化ケイ素材料、ならびにパターン化ケイ素ウエハ、パターン化ガリウムヒ素ウエハ、及びエポキシ成形化合物ウエハ等のパターン化ウエハから形成される。かかるウエハは、200mm〜300mmの直径を有するもの等の、任意の好適な大きさであり得るが、より小さいまたはより大きい寸法を有するウエハが使用されてもよい。
【0018】
半導体基板の表(またはデバイス)側は、典型的にアクティブデバイスを含む。「アクティブ」デバイスは、例えばトランジスタ等の、電子流を電気的に制御する能力を有する任意の種類の回路構成要素である。本発明において有用な半導体基板の表側は、銅合金表面を含む、1つ以上の銅表面を有する。好適な銅合金には、銅−スズ、銅−スズ−銀、銅−ベリリウム、銅−ニッケル等が挙げられる。かかる銅表面は、ニッケル下層またはニッケルキャップ層を有する銅層等の、金属スタックの一部でもあり得る。かかる銅表面は、典型的に相互接続構造の形態であり、銅接合パッド、銅柱、銅はんだボール等の任意の好適な形態を有し得る。半導体基板の表側は、単一の種類の銅相互接続構造等の1種類のみの銅表面、または銅相互接続形体の任意の組み合わせ等の2種類以上の銅表面を有することが、当業者によって理解されるであろう。半導体ウエハ等の半導体基板の表側は、銅表面でない、金属接合パッド、はんだバンプ(またははんだボール)、金属柱等の、他の相互接続特徴も含んでよい。さらに、好適な半導体基板の表側は、典型的に金属酸化物、金属窒化物、ポリイミド等のポリマー等の、ある特定の不動態化層を有する。金属接合パッドは、典型的に、銅、スズ、金、銀、アルミニウム、及びそれらの合金から選択される1つ以上の金属を含むが、他の金属が使用されてもよい。例示的なはんだバンプは、典型的に、スズ、銅、銀、金、鉛、インジウム、及びビスマス、好ましくは、スズ、銅、銀、金、及び鉛、より好ましくは、スズ、銅、銀、金、スズ−鉛、スズ−銀、スズ−亜鉛、スズ−ビスマス、及びスズ−銀−銅のうちの1つを含む。金属柱は、典型的に、多くの場合、銀、スズ−銀、スズ−ビスマス、スズ−インジウム、インジウム、またはニッケル等の、1つ以上の他の金属でキャップされた、銅を含む。好ましくは、半導体基板のアクティブ面は、キャリア基板の取り付け面と比較して、比較的親水性である。アクティブ表面の親水性は、付随的な炭素等の表面不純物を除去するためのウエハ表面の液体またはプラズマ処理によって上昇され得る。
【0019】
任意の好適なキャリアがキャリア基板として使用されてもよい。例示的なキャリア基板には、ウエハ、ホウケイ酸塩等のガラス、石英、シリカ、及び熱安定性ポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。キャリアとして使用されるウエハは、ケイ素、炭化ケイ素、シリコンゲルマニウム、窒化ケイ素、ガリウムヒ素、サファイア等で構成され得る。熱安定性ポリマーには、ポリイミド(例えば、デラウェア州ウィルミントン、DuPontから入手可能な、Kapton(商標)ポリイミド)等の、接着材料を硬化するのに使用される温度に安定性の任意のポリマーを含むが、これらに限定されない。好ましくは、キャリア基板の取り付け面は、半導体ウエハのアクティブ表面と比較して、比較的疎水性である。キャリア基板の取り付け面が不十分に疎水性である場合、所望の疎水性は、取り付け面を好適な接着促進剤と接触させることによって、または取り付け面を蒸気処理することによって等、当業者に既知の任意の数の方法によって与えられ得る。取り付け面は、回転コーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング、ロールコーティング、蒸着等の任意の好適な方法を使用して、好ましくは回転コーティングによって、接着促進剤と接触させられ得る。プラズマ処理等の様々な蒸気処理が、取り付け面の疎水性を上昇させるために使用され得る。好ましくは、接着促進剤は、所望の疎水性を与えるために取り付け面を処理するために使用される。任意の好適な接着促進剤が使用されてもよく、かかる接着促進剤の選択は、当業者の能力の十分に範囲内である。好ましい接着促進剤はシラン含有材料であり、より好ましくはトリアルコキシシラン含有材料である。例示的な接着促進剤には、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン等のビス(トリアルコキシシリルアルキル)ベンゼン;アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及びフェニルアミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシラン;ならびに他のシランカップリング剤、ひいては前述のものの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特に好適な接着促進剤には、Dow Electronic Materials(マサチューセッツ州マールボロ)から入手可能な、AP3000、AP8000、及びAP9000Sが挙げられる。
【0020】
本仮接合組成物は、硬化性接着材料、剥離添加剤、銅不動態化剤、及び1つ以上の任意の構成要素を含む。典型的に、硬化性接着材料は、硬化されると>1GPaの弾性率を有する。例示的な硬化性接着材料には、ポリアリーレンオリゴマー、環状オレフィンオリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマー、及びそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。硬化性接着材料は、追加の疎水性を提供するために、部分が硬化接着材料の機械的特性に悪影響を及ぼさない限り、フッ素含有基等の任意の好適な部分で置換され得る。好ましくは、硬化性接着材料は、1つ以上のアリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマー、またはそれらの混合物から選択される。異なる硬化性接着材料の混合物が本発明において使用される場合、かかる材料は、硬化ステップ中に互いと共に硬化するように選択される。異なる硬化性材料の混合物が使用される場合、かかる硬化性材料は、99:1〜1:99、好ましくは95:5〜5:95、より好ましくは90:10〜10:90、なおもより好ましくは75:25〜25:75の重量比で使用される。
【0021】
幅広い様々なポリアリーレンオリゴマーが、本発明において使用され得る。本明細書で使用される場合、「ポリアリーレン」という用語は、ポリアリーレンエーテルを含む。好適なポリアリーレンオリゴマーは、次の式のエチニル芳香族化合物等の前駆体から合成され得る。
【0022】
【化1】
【0023】
式中、各Arは芳香族基または不活性置換芳香族基であり、各Rは独立して、水素、アルキル、アリール、または不活性置換アルキルもしくはアリール基であり、Lは、共有結合またはあるArを少なくとも1つの他のArに連結する基であり、n及びmは少なくとも2の整数であり、qは少なくとも1の整数である。したがって、エチニル芳香族化合物は、典型的に4つ以上のエチニル基(例えば、テトラエチニル芳香族化合物)を有する。
【0024】
仮接合組成物において使用される好適なポリアリーレンオリゴマーは、重合単位として次の式を含むポリマーを含み得る。
【0025】
【化2】
【0026】
式中、Ar′は、(C≡C)−ArまたはAr−(C≡C)部分の生成物の反応の残留物であり、R、L、n、及びmは、上記で定義される通りである。本発明において有用なポリアリーレンコポリマーは、重合単位として次の式を有するモノマーを含む。
【0027】
【化3】
【0028】
式中、Ar′及びRは、上記で定義される通りである。
【0029】
例示的なポリアリーレンには、Ar−L−Arが、ビフェニル;2,2−ジフェニルプロパン;9,9′−ジフェニルフルオレン;2,2−ジフェニルヘキサフルオロプロパン;ジフェニルスルフィド;オキシジフェニレン;ジフェニルエーテル;ビス(フェニレン)ジフェニルシラン;ビス(フェニレン)ホスフィンオキシド;ビス(フェニレン)ベンゼン;ビス(フェニレン)ナフタレン;ビス(フェニレン)アントラセン;チオジフェニレン;1,1,1−トリフェニレンエタン;1,3,5−トリフェニレンベンゼン;1,3,5−(2−フェニレン−2−プロピル)ベンゼン;1,1,1−トリフェニレンメタン;1,1,2,2−テトラフェニレン−1,2−ジフェニルエタン;ビス(1,1−ジフェニレンエチル)ベンゼン;2,2′−ジフェニレン−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン;1,1−ジフェニレン−1−フェニルエタン;ナフタレン;アントラセン;またはビス(フェニレン)ナプタセン(napthacene);より好ましくは、ビフェニレン;ナフチレン;p,p′−(2,2−ジフェニレンプロパン)(もしくは−C−C(CH−C−);p,p′−(2,2−ジフェニレン−1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロプロペン)、及び(−C−C(CF−C−)であるものが挙げられるが、これらに限定されない。有用なビス−フェニル誘導体には、2,2−ジフェニルプロパン、9,9′−ジフェニルフルオレン、2,2−ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルスルフィド、ジフェニルエーテル、ビス(フェニレン)ジフェニルシラン、ビス(フェニレン)ホスフィンオキシド、ビス(フェニレン)ベンゼン、ビス(フェニレン)ナフタレン、ビス(フェニレン)アントラセン、またはビス(フェニレン)ナプタセン(napthacene)が挙げられる。本発明における使用に特に好適なポリアリーレンには、SiLK(商標)Semiconductor Dielectric(マサチューセッツ州マールボロ、Dow Electronic Materialsから入手可能)として販売されるものが挙げられる。
【0030】
ポリアリーレン前駆体モノマーは、国際特許出願第WO97/10193号(Babb)に記載されるもの等の、当業者に既知の様々な方法によって調製され得る。式(1)のエチニル芳香族モノマーは、式(2)または(3)のポリマーを調製するのに有用である。エチニル芳香族モノマーの重合は、当業者の能力の十分に範囲内である。重合の具体的な条件は、重合されている具体的なエチニル芳香族モノマー(複数可)及び生じるポリマーの所望の特性を含む、様々な要因に依存するが、重合の一般的な条件は、国際特許出願第WO97/10193号で詳細に述べられる。
【0031】
好適な環状オレフィン材料は、熱可塑性であり得るポリ(環状オレフィン)であり、好ましくは2000〜200,000、より好ましくは5000〜100,000、さらにより好ましくは2000〜50,000Daの重量平均分子量(M)を有する。好ましいポリ(環状オレフィン)は、少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも140℃の軟化温度(3,000PaSでの溶融粘度)を有する。好適なポリ(環状オレフィン)は、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは60〜200℃、最も好ましくは75〜160℃のガラス転移温度(T)もまた有する。
【0032】
好ましいポリ(環状オレフィン)は、環状オレフィン及び非環状オレフィンの繰り返しモノマー、または環状オレフィンに基づく開環ポリマーから成る。本発明における使用に好適な環状オレフィンは、ノルボルネン系オレフィン、テトラシクロドデセン系オレフィン、ジシクロペンタジエン系オレフィン、及びそれらの誘導体から選択される。誘導体には、アルキル(好ましくはC1−20 アルキル、より好ましくはC1−10アルキル)、アルキリデン(好ましくはC1−20アルキリデン、より好ましくはC1−10アルキリデン)、アラルキル(好ましくはC6−30アラルキル、より好ましくはC6−18アラルキル)、シクロアルキル(好ましくはC3−30シクロアルキル、より好ましくはC3−18シクロアルキル)、エーテル、アセチル、芳香族、エステル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、及びシリル置換誘導体が挙げられる。本発明における使用に特に好ましい環状オレフィンには、
【0033】
【化4】
【0034】
及び前述のものの組み合わせから選択されるものが挙げられ、式中、各R及びRは独立して、H及びアルキル基(好ましくはC1−20アルキル)から選択され、各Rは独立して、H、置換及び非置換アリール基(好ましくはC6−18アリール)、アルキル基(好ましくはC1−20アルキル)、シクロアルキル基(好ましくはC3−30シクロアルキル基)、アラルキル基(好ましくは、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル等のC6−30アラルキル)、エステル基、エーテル基、アセチル基、アルコール(好ましくはC1−10アルコール)、アルデヒド基、ケトン、ニトリル、ならびにそれらの組み合わせから選択される。
【0035】
好ましい非環状オレフィンは、分岐及び非分岐C2−20アルケン(好ましくはC2−10アルケン)から選択される。より好ましくは、非環状オレフィンは、構造(RC=C(Rを有し、式中、各Rは独立して、H及びアルキル基(好ましくはC1−20アルキル)から選択される。本発明における使用に特に好ましい非環状オレフィンには、エテン、プロペン、及びブテンから選択されるものが挙げられる。
【0036】
環状オレフィンコポリマーは当業者において周知である。例えば、環状オレフィンコポリマーは、米国特許第6,008,298号に開示されるように、環状モノマーと非環状モノマーとの鎖重合によって生成され得る。環状オレフィンコポリマーは、米国特許第5,191,026号に開示されるように、様々な環状モノマーの開環複分解重合後の水素化によってもまた生成され得る。好適な環状オレフィンコポリマーには、TOPAS(商標)(Topas Advanced Polymers製)、APEL(商標)(Mitsui Chemicals製)、ZEONOR(商標)(Zeon Chemicals製)、及びARTON(商標)(JSR Corporation製)という商標下で入手可能なものが挙げられる。
【0037】
本硬化性接着剤料として有用なアリールシクロブテンオリゴマーは、当業者に周知である。好適なアリールシクロブテンオリゴマーには、次の式を有するものが挙げられるが、これに限定されない。
【0038】
【化5】
【0039】
式中、Bはn価の連結基であり、Arは多価アリール基であり、シクロブテン環の炭素原子はArの同じ芳香族環上の隣接する炭素原子に結合され、mは1以上の整数であり、nは1以上の整数であり、Rは一価の基である。好ましくは、多価アリール基、Arは1〜3つの芳香炭素環またはヘテロ芳香族環で構成され得る。アリール基が単一の芳香族環を含むのが好ましく、より好ましくはフェニル環を含む。アリール基は、C1−6アルキル、トリ−C1−6−アルキルシリル、C1−6アルコキシ、及びハロから選択される1〜3つの基で、任意に置換され、好ましくは、C1−6アルキル、トリ−C1−3−アルキルシリル、C1−3アルコキシ、及びクロロのうちの1つ以上で、より好ましくは、C1−3アルキル、トリ−C1−3−アルキルシリル、及びC1−3アルコキシのうちの1つ以上で置換される。アリール基が非置換であることが好ましい。n=1または2であることが好ましく、より好ましくはn=1である。m=1〜4であることが好ましく、より好ましくはm=2〜4であり、さらにより好ましくはm=2である。好ましくは、Rは、H及びC1−6アルキルから、より好ましくはH及びC1−3アルキルから選択される。好ましくは、Bは1つ以上の炭素−炭素二重結合(エチレン性不飽和)を含む。好適な単一価のB基は、好ましくは式−[C(R10)=CR11Zを有し、式中、R10及びR11は独立して、水素、C1−6アルキル、及びアリールから選択され、Zは、水素、C1−6アルキル、アリール、シロキサニル、−CO12から選択され、各R12は独立して、H、C1−6アルキル、アリール、アラルキル、及びアルカリルから選択され、x=1または2である。好ましくは、R10及びR11は独立して、H、C1−3アルキル、及びアリール、より好ましくはH及びC1−3アルキルから選択される。R12は、C1−3アルキル、アリール、及びアラルキルであるのが好ましい。Zは、好ましくはシロキシルである。好ましいシロキシル基は、−[Si(R13−O]−Si(R13−を有し、式中、各R13は独立して、H、C1−6アルキル、アリール、アラルキル、及びアルカリルから選択され、pは1以上の整数である。R13は、C1−3アルキル、アリール、及びアラルキルから選択されるのが好ましい。好適なアラルキル基は、ベンジル、フェネチル、及びフェニルプロピルを含む。
【0040】
好ましくは、アリールシクロブテンオリゴマーは、次の式の1つ以上のオリゴマーを含み、
【0041】
【化6】
【0042】
式中、各Rは独立して、H及びC1−6アルキルから、好ましくはH及びC1−3アルキルから選択され、各Rは独立して、C1−6アルキル、トリ−C1−6−アルキルシリル、C1−6アルコキシ、及びハロから選択され、各Rは独立して、二価のエチレン性不飽和有機基であり、各Rは独立して、H、C1−6アルキル、アラルキル、及びフェニルから選択され、pは1以上の整数であり、qは0〜3の整数である。各Rは、好ましくは、独立して、H及びC1−3アルキルから選択され、より好ましくは、各RはHである。各Rは独立して、C1−6アルキル、トリ−C1−3−アルキルシリル、C1−3アルコキシ、及びクロロから選択されるのが好ましく、より好ましくはC1−3アルキル、トリ−C1−3−アルキルシリル、及びC1−3アルコキシから選択される。好ましくは、各Rは独立して、C2−6アルケニルから選択され、より好ましくは、各Rは−CH=CH−である。各Rは、好ましくはC1−3アルキルから選択され、より好ましくは各Rは、メチルである。好ましくはp=1〜5であり、より好ましくはp=1〜3であり、さらにより好ましくはp=1である。q=0であるのが好ましい。特に好ましいアリールシクロブテンオリゴマーである、1,3−ビス(2−ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−3−イルエテニル)−1,1,3,3テトラメチルジシロキサン(「DVS−ビスBCB」)は、次の式を有する。
【0043】
【化7】
【0044】
アリールシクロブテンオリゴマーは、米国特許第4,812,588号、同第5,136,069号、同第5,138,081号、及び国際特許出願第WO94/25903号において記載されるもの等の、任意の好適な手段によって調製され得る。好適なアリールシクロブテンオリゴマーは、Dow Electronic Materialsから入手可能なCyclotene(商標)という商標下で、商用的にもまた入手可能である。
【0045】
硬化されることが可能な任意のビニル芳香族オリゴマーが、本発明における硬化性接着剤料として使用されてもよい。かかるビニル芳香族オリゴマーは、典型的に、1つ以上の反応性エチレン性不飽和コモノマーを有するビニル芳香族モノマーのオリゴマーである。好ましくは、ビニル芳香族モノマーは、1つのビニル基を含有する。好適なビニル芳香族モノマーは、1つ以上の水素が、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ、及びアミノの群から選択される置換基と置き換えられる、非置換ビニル芳香族モノマー及び置換ビニル芳香族モノマーである。例示的なビニル芳香族モノマーには、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルアニソール、ビニルジメトキシベンゼン、ビニルアニリン、フルオロスチレン等のハロスチレン、α−メチルスチレン、β−メトキシスチレン、エチルビニルベンゼン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルピロール、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルアニソール、エチルビニルベンゼン、及びそれらの混合物である。好ましい反応性コモノマーは、ビニル芳香族オリゴマーを形成するために使用されるオレフィン性(またはエチレン性不飽和部分)に加えて、反応性部分、つまりアリル部分またはビニル基等の、ビニル芳香族オリゴマーの形成後にさらなる重合(または架橋)が可能な部分を含むものである。より好ましくは、反応性コモノマーは、ビニル芳香族オリゴマーを形成するために使用されるエチレン性不飽和に加えて、アリル部分を含み、さらにより好ましくは、エチレン性不飽和に加えて、アリルエステル部分を含む。ビニル芳香族オリゴマーを形成する際に有用な例示的な反応性コモノマーには、ジアリルマレアート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルシンナマート、ジアリルフマレート、アリルチグレート、ジビニルベンゼン、及びそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。好ましい反応性コモノマーは、ジアリルマレアート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、及びそれらの混合物、より好ましくは、ジアリルマレアート、アリルメタクリレート、及びそれらの混合物である。1つ以上の二次コモノマーもまた、ビニル芳香族オリゴマーを形成するために使用され得ることが、当業者によって理解されるであろう。かかる二次コモノマーは、エチレン性不飽和であるが、反応性部分を含有しない。例示的な二次コモノマーには、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、C1−10アルキル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、置換エチレンモノマー、及びポリ(アルキレンオキシド)モノマーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0046】
かかるビニル芳香族オリゴマー中のビニル芳香族モノマー対コモノマーのモル比は、好ましくは99:1〜1:99、より好ましくは95:5〜5:95、なおもより好ましくは90:10〜10:90である。かかるビニル芳香族オリゴマーは、当業者に既知のもののうちのいずれか等の、任意の好適な方法によって調製され得る。典型的に、ビニル芳香族オリゴマーは、ビニル芳香族モノマー及びコモノマーのフリーラジカル重合によって調製される。好ましいビニル芳香族オリゴマーは、かかるオリゴマーをさらに硬化させる、未反応アリル部分を含む。
【0047】
材料が保存及び使用の条件下で接着材料と反応せず、接着材料を硬化するのに使用される条件下で非硬化性である限り、幅広い様々な材料が仮接合組成物中の剥離添加剤として使用されてもよい。加えて、剥離添加剤は仮接合組成物に適合すべきである、つまり、剥離添加剤は、接着材料及び仮接合組成物中で使用される有機溶媒等の他の構成要素に、分散性、混和性、または別途実質的に適合性でなくてはならない。本剥離添加剤は、それらが使用の条件下で実質的に蒸発しない、つまりそれらが回転コーティング等の任意の堆積ステップ、またはいかなる有機溶媒も除去するためにもしくは接着材料を硬化するために使用される任意の後続の加熱ステップ中に、実質的に蒸発しないように、十分に非揮発性である。例えば回転コーティングよって、仮接合組成物のフィルムまたは層が投入されると、溶媒のほとんど(または全て)が蒸発する。剥離添加剤は、使用される任意の有機溶媒中で可溶性であるが、硬化性接着材料中では完全に可溶性でないのが好ましい。剥離添加剤は、優先的には、硬化接着材料よりも親水性である。理論によって束縛されず、接着材料の硬化の際に、剥離添加剤相が分離して、半導体基板のアクティブ表面(キャリア表面と比較してより親水性の表面)に向かって優先的に移動すると考えられる。剥離添加剤中の適切な親水性部分の使用は、仮接合組成物中の剥離添加剤の完全な分散または好ましくは溶解、及びより親水性の表面に向かう剥離添加剤の移動を伴う接着材料の硬化中の剥離添加剤の相分離を可能にする。硬化中に接着材料から相分離しないいかなる材料も、本発明に従う剥離添加剤として機能しない。混合物または剥離添加剤が使用されてもよい。
【0048】
概して、剥離添加剤は、1つ以上の比較的親水性の部分、例えば、酸素、窒素、リン、及び硫黄のうちの1つ以上を含有する部分を含有する。好適な剥離添加剤には、エーテル、エステル、カルボキシレート、アルコール、チオエーテル、チオール、アミン、イミン、アミド、及びそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、剥離添加剤は、酸素、窒素、及び硫黄のうちの1つ、好ましくは酸素を含有する、1つ以上の極性末端基を含有する。例示的な極性末端基には、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、カルボキシレート、アルコキシカルボニル、メルカプト、アルキルチオ、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンが挙げられ、好ましくは、末端基は、C1−6アルコキシ、C6−10アリールオキシ、ヒドロキシ、カルボキシレート、C1−6アルコキシカルボニル、メルカプト、C1−6アルキルチオ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、及びジ−C1−6−アルキルアミノから、より好ましくは、C1−6アルコキシ、C6−10アリールオキシ、ヒドロキシ、カルボキシレート、及びC1−6アルコキシカルボニルから、さらにより好ましくは、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシレート、及びC1−6アルコキシカルボニルから選択され得る。特に好ましい極性末端基は、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、及びアセトキシから選択される。好ましくは、剥離添加剤はケイ素を含まない。
【0049】
好適な剥離添加剤は、≦10,000Da、好ましくは≦7500、より好ましくは≦7000の数平均分子量(M)を有する。剥離添加剤は、使用の条件中に剥離添加剤を実質的に非揮発性にする、つまり、使用中に剥離添加剤のうちの<5%、好ましくは<3%、より好ましくは≦1%が揮発するのに十分な最小Mを有する。好ましくは、剥離添加剤は≧500のMを有する。Mの好ましい範囲は、500〜10,000、より好ましくは500〜7,500、さらにより好ましくは500〜7000Daである。剥離添加剤は、線状ポリマー、樹枝状ポリマー、星形ポリマー等の分岐ポリマー、ポリマー粒子等であってもよいが、剥離添加剤は、線状ポリマーまたはポリマー粒子であるのが好ましく、より好ましくは線状ポリマーである。理論によって束縛されないが、線状ポリマーは、分岐ポリマーと比較して、硬化接着材料相を通って親水性の半導体表面に向かって移動することがより可能であると考えられる。
【0050】
ポリエーテル及びポリエーテルアミンは好ましい剥離添加剤であり、より好ましくはポリエーテルとポリエーテルアミンとの混合物が使用される。ポリエーテル化合物には、アルキレンオキシドホモポリマー、アルキレンオキシドコポリマー、及びそれらの混合物が挙げられる。ポリアルキレンオキシドコポリマーは、ランダムまたはブロックであり得る。ポリアルキレンオキシド剥離添加剤は様々な極性末端基を有し得、好ましくは、かかる極性末端基は、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、及びアミノ、より好ましくはヒドロキシ、C1−3アルコキシ、及びアセトキシである。好ましいポリエーテル化合物は、単一アルキレンオキシド反復単位または2つ以上の異なるアルキレンオキシド反復単位を含み得る、ポリC1−4アルキレンオキシド化合物等の、ポリグリコール(またはポリアルキレンオキシド)である。好ましいポリエーテル及びポリエーテルアミン化合物には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(1,3−プロパンジオール)、ポリ(テトラヒドロフラン)、エチレンオキシド(EO)−プロピレンオキシド(PO)コポリマー、EO−ブチレンオキシド(BO)コポリマー、アミン末端ポリプロピレンオキシド、及びそれらの混合物が挙げられる。他の好適な剥離添加剤には、EO/PO四官能化エチレンジアミン等のポリアルキレンオキシド官能化ポリアミンが挙げられる。好ましくは、剥離添加剤が反復単位としてブチレンオキシドを含む場合、それは1つ以上の異なるアルキレンオキシド反復単位を有するコポリマーである。剥離添加剤の混合物が本仮接合組成物中で使用されてもよいことが、当業者によって理解されるであろう。好適な剥離添加剤には、Pluronic、Tetronic、及びPolyTHFという製品名(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン、BASFから入手可能)、Fortegraという製品名(ミシガン州ミッドランド、The Dow Chemical Companyから入手可能)、Terathaneという製品名(カンザス州ウィチタ、Invistaから入手可能)、ならびにJeffamineポリエーテルアミン(Huntsman Corp.から入手可能)の下で販売されるポリエーテルが挙げられ、これらの全てはさらなる純化を伴わずに使用されてもよい。
【0051】
この明細書を通して使用される場合、「銅不動態化剤」という句は、銅表面を保護または不動態化するために銅層の表面をコーティングすることが可能な、任意の材料を指す。理論によって拘束されることは望まれないが、銅不動態化剤は、銅表面に、複雑化、吸着、化学吸着、調和、キレート化、結合、または別途十分に接着して、銅表面と硬化接着材料との間の相互作用を低減すると考えられる。本明細書で使用される場合、銅表面上の銅不動態化剤の「コーティング」は、複雑化、吸着、化学吸着、調和、キレート化、結合、または別途接着のうちの1つ以上を包含する。本仮接合組成物は、非不動態化銅表面と比較して、かかる不動態化銅表面からより容易に剥離する。本発明において有用な銅不動態化剤は、仮接合組成物中で可溶性または混和性である。これらの銅不動態化剤は、保存及び使用の条件下で接着材料と反応せず、接着材料を硬化するのに用いられる条件下で硬化しない。本銅不動態化剤は、それらが使用の条件下で実質的に蒸発しない、つまりそれらが回転コーティング等の任意の堆積ステップ、またはいかなる有機溶媒も除去するためにもしくは接着材料を硬化するために使用される任意の後続の加熱ステップ中に、実質的に蒸発しないように、十分に非揮発性である。つまり、銅不動態化剤の≦10%、好ましくは≦5%、より好ましくは≦2%が使用の条件下で蒸発する。銅不動態化剤は、あらゆる溶媒の除去後、接着材料中に溶解または分散して残ってもよい。理論によって拘束されることは望まれないが、使用の条件下で、銅不動態化剤は半導体ウエハまたは他の基板の銅表面をコーティングすると考えられる。銅表面上の銅不動態化剤のかかるコーティングは、接着材料の硬化の前及び/またはその間に生じる。
【0052】
銅不動態化剤が仮接合組成物中で可溶性または混和性であり、銅表面からの仮接合層の剥離を提供する限り、任意の銅不動態化剤が本発明において好適に使用されてもよい。好適な銅不動態化剤には、銅腐食抑制剤、プリフラックス等が挙げられる。銅不動態化剤は、好ましくは窒素含有ヒドロカルビル化合物であり、酸素、硫黄、及びハロゲンから選択される1つ以上の原子を任意に含有し得る。好ましい銅不動態化剤は、窒素含有芳香族化合物、より好ましくは窒素含有ヘテロ芳香族化合物、さらにより好ましくは窒素含有縮合芳香族化合物、例えば窒素含有ヘテロ環に縮合されたフェニル環を有する芳香族化合物である。特に好ましい銅不動態化剤は、C1−10アルキル、C6−10アリール、C7−20アラルキル、C2−10アルケニル、C1−10アルコキシ、カルボキシ、C1−10アルコキシカルボニル、カルボ−C1−10−アルコキシ、スルホキシ、ヒドロキシ、チオール、C1−10アルキルメルカプタン、C6−10アリールメルカプタン、アミノ、C1−10アルキルアミノ、ジ−C1−10−アルキルアミノ、C6−10アリールアミノ、ジ−C6−10−アリールアミノ、C1−10アミド、C2−50アルキルアミド、C3−50ジアルキルアミド、及びハロゲンから選択される1つ以上の置換基と置き換えられる、芳香族環上の1つ以上の水素を有する置換窒素含有ヘテロ芳香族化合物である。より好ましくは、銅不動態化剤は、置換ピラゾール、置換イミダゾール、置換トリアゾール、置換テトラゾール、置換ピラジン、置換ベンズイミダゾール、置換ベンゾトリアゾール、置換ベンゾテトラゾール、及び置換ピラジンイミダゾール、さらにより好ましくは、置換イミダゾール、置換トリアゾール、置換テトラゾール、置換ベンズイミダゾール、置換ベンゾトリアゾール、及び置換ベンゾテトラゾールから、一層より好ましくは、置換トリアゾール、置換テトラゾール、置換ベンズイミダゾール、置換ベンゾトリアゾール、及び置換ベンゾテトラゾールから、なおもより好ましくは、置換ベンズイミダゾール及び置換ベンゾトリアゾールからである。銅不動態化剤が、C1−10アルキル、C6−10アリール、C7−20アラルキル、C1−10アルコキシ、カルボキシ、C1−10アルコキシカルボニル、カルボ−C1−10−アルコキシ、ヒドロキシ、チオール、C1−10アルキルメルカプタン、アミノ、C1−10アルキルアミノ、ジ−C1−10−アルキルアミノ、C6−10アリールアミノ、ジ−C6−10−アリールアミノ、C1−10アミド、C2−50アルキルアミド、C3−50ジアルキルアミド、及びハロゲンのうちの1つ以上で置換されるのが好ましい。好ましい銅不動態化剤は、C1−10アルキルベンズイミダゾール、アミノベンズイミダゾール、C1−10アルキルアミノベンズイミダゾール、ジ−C1−10−アルキルベンズイミダゾール、C6−10アリールベンズイミダゾール、カルボキシベンズイミダゾール、C1−10アルコキシカルボニルベンズイミダゾール、ハロベンズイミダゾール、C1−10アルキルベンゾトリアゾール、アミノベンゾトリアゾール、C1−10アルキルアミノベンゾトリアゾール、ジ−C1−10−アルキルベンゾトリアゾール、C6−10アリールベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、C1−10アルコキシカルボニルベンゾトリアゾール、C1−10アミドベンゾトリアゾール、C2−50アルキルアミドベンゾトリアゾール、C3−50ジアルキルアミドベンゾトリアゾール、及びハロベンゾトリアゾール、より好ましくはC1〜10アルキルベンズイミダゾール、アミノベンズイミダゾール、C1−10アルキルアミノベンズイミダゾール、ジ−C1−10−アルキルベンズイミダゾール、C6−10アリールベンズイミダゾール、カルボキシベンズイミダゾール、C1−10アルコキシカルボニルベンズイミダゾール、ハロベンズイミダゾール、C1−10アルキルベンゾトリアゾール、アミノベンゾトリアゾール、C1−10アルキルアミノベンゾトリアゾール、ジ−C1−10−アルキルベンゾトリアゾール、C6−10アリールベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、C1−10アルコキシカルボニルベンゾトリアゾール、及びハロベンゾトリアゾール、さらにより好ましくはC1−10アルキルベンゾトリアゾール、アミノベンゾトリアゾール、C1−10アルキルアミノベンゾトリアゾール、ジ−C1−10−アルキルベンゾトリアゾール、C6−10アリールベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、C1−10アルコキシカルボニルベンゾトリアゾール、及びハロベンゾトリアゾールである。本発明において銅不動態化剤の混合物が用いられてもよい。2つの銅不動態化剤の混合物が使用される場合、それらは、99:1〜1:99の重量比で使用され得る。カルボキシ等の比較的反応性の基を有する銅不動態化剤は、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト等の比較的反応性の極性末端基を有する剥離添加剤と反応し得ることが、当業者によって理解されるであろう。好適な銅不動態化剤は、当業者において周知であり、PMC Specialties Group(オハイオ州シンシナティ)、Shikoku Chemicals Corp.(日本、東京)、及びSigma−Aldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー)等から容易に商用的に入手可能であり、または、文献において既知の任意の好適な方法によって調製されてもよい。
【0053】
仮接合組成物中に1つ以上の有機溶媒が使用されるのが好ましい。硬化性接着材料、剥離添加剤、及び不動態化剤を溶解または分散する、好ましくは溶解する、任意の溶媒または溶媒の混合物が、仮接合組成物中で好適に使用されてもよい。例示的な有機溶媒には、トルエン、キシレン、及びメシチレン等の芳香族炭化水素;2−メチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、及びメチルイソブチルカルビノール等のアルコール;乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、及びメチル2−ヒドロキシイソブチレート等のエステル;ガンマ−ブチロラクトン等のラクトン;N−メチルピロリジノン等のラクタム;プロピレングリコールメチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテル異性体(The Dow Chemical CompanyからProglyde(商標)DMMとして商用的に入手可能)等のエーテル;シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等のケトン;ならびにそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0054】
本仮接合組成物は、相容化剤、硬化剤、抗酸化剤、増粘剤等の、1つ以上の追加の構成要素を任意に含んでよい。かかる追加の構成要素及び使用される量の選択は、当業者の能力の十分に範囲内である。「相容化剤」という用語は、相容化剤が保存及び使用の条件下で接着材料と反応しない、接着材料を硬化するために用いられる条件下で硬化しない、相容化剤が使用されない場合と比較して接着材料中で溶解または分散されることができる剥離添加剤の量を増加する限り、接着材料中で混和性(溶解する)または分散する任意の材料を指す。好適な相容化剤は、2013年10月31日に出願された、米国特許出願第14/069,348号に開示される。好ましい相容化剤は、ブチレンオキシド単位を含むポリエーテルであり、より好ましくは、ポリブチレンオキシドホモポリマーまたはポリ(ブチレンオキシド−プロピレンオキシド)コポリマーである。相容化剤は、任意にエンドキャップされ得、好ましくは相容化剤は、1つのエンドキャップを有し、より好ましくは2つのエンドキャップを有する。相容化剤は300〜7500、より好ましくは500〜6000、一層より好ましくは500〜5000Daの数平均分子量を有するのがさらに好ましい。好適な硬化剤は接着材料の硬化を助け得、熱または光によって活性化され得る。例示的な硬化剤は、熱生成開始剤、光開始剤、アジド、ナイトレン、ならびにポリアミン及びポリチオール等の架橋剤が挙げられるがこれらに限定されない。増粘剤は、例えば接着材料が完全に硬化する前の、キャリアとアクティブデバイスとの間からの組成物の流出を低減するために、仮接合組成物の粘度を増加させる任意の材料を含む。増粘剤は、使用中の仮接合組成物の粘度を増加するために、素早く促進(重合)され得る低分子材料もまた含む。
【0055】
仮接合組成物は、50〜99重量%の量で1つ以上の硬化性接着材料と、1〜50重量%の量で1つ以上の剥離添加剤と、0.01〜10重量%の量で1つ以上の銅不動態化剤と、任意に有機溶媒と、任意に1つ以上の追加の構成要素と、を含む。硬化性接着材料は、好ましくは50〜95重量%の量で存在する。剥離添加剤が2〜50、より好ましくは5〜45、さらにより好ましくは5〜40重量%の量で存在するのが好ましい。好ましくは、銅不動態化剤は0.01〜5重量%、より好ましくは0.01〜2.5重量%、さらにより好ましくは0.01〜2重量%の量で存在する。≦0.05重量%等のより少量の銅不動態化剤が使用される場合、ポリエーテルアミンが剥離添加剤として使用されるのが好ましく、より好ましくは、ポリエーテルとポリエーテルアミンとの組み合わせが剥離添加剤として使用される。存在する場合、有機溶媒の量は、好ましくは、硬化性接着材料、剥離添加剤、銅不動態化剤、及びあらゆる任意の追加の構成要素を溶解または分散する、好ましくは溶解するのに十分である。有機溶媒の量は典型的に0〜50重量%である。好ましくは、有機溶媒が使用される。任意に、1つ以上の相容化剤が、組成物の合計重量に基づき0〜40重量%の量で、好ましくは1〜40重量%の量で使用されてもよい。他の追加の構成要素は、各々0〜15重量%の量で存在してもよい。本仮接合組成物は、硬化性接着材料と、剥離添加剤と、銅不動態化剤と、あらゆる追加の構成要素とを、任意の順序で組み合わせることによって調製され得る。
【0056】
使用において、本仮接合組成物は、キャリア基板の取り付け面、銅表面を有する半導体基板の表側、または両方の表面上に、任意の好適な方法によって配置されてもよい。仮接合組成物を配置するための好適な方法には、他の方法の中でも、回転コーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、浸漬コーティング、蒸着、及び真空積層等の積層が挙げられるが、これらに限定されない。半導体製造産業では、回転コーティングは、既存の器具及びプロセスを利用するために好ましい方法である。回転コーティングでは、組成物の固体分は、適用される表面上の組成物の所望の厚さを達成するために、回転速度と共に調整され得る。典型的に、本組成物は、400〜4000rpmの回転速度で回転コーティングされる。半導体基板またはキャリア基板上に分配される仮接合組成物の量は、組成物中の合計固体分、結果として生じる仮接合層の所望の厚さ、及び当業者に周知の他の要因に依存する。仮接合組成物のフィルムまたは層が回転コーティング等によって投入されると、溶媒のほとんど(または全て)がフィルムの堆積中に蒸発する。好ましくは、表面上に配置された後、仮接合組成物は残りのいかなる溶媒をも除去するために加熱(ベーク)される。典型的なベーク温度は90〜160℃であるが、他の温度が好適に使用されてもよい。残留溶媒を除去するためのかかるベークは、典型的に約2分間行われるが、より長いまたはより短い時間が好適に使用されてもよい。
【0057】
代替の好ましい方法では、仮接合組成物は乾燥フィルムとして形成され、キャリア基板の取り付け面、銅表面を有する半導体基板の表側、または両方の表面上に、積層によって配置される。真空積層技術を含む様々な好適な積層技術が使用されてもよく、当業者に周知である。乾燥フィルムを形成することにおいて、仮接合組成物は、最初に、ポリエステルシート、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)シート、またはKapton(商標)ポリイミド等のポリイミドシートのような、好適なフィルム支持シートの前面に、スロットダイコーティング、グラビア印刷、または別の適切な方法を使用して配置される。その後、組成物は、好適な温度、例えば90〜140℃で、適切な時間、例えば1〜30分間ソフトベークされ、いかなる溶媒をも除去する。その後、ポリエチレン等のポリマーフィルム被覆シートが、保存及び操作中に組成物を保護するために、室温で乾燥仮接合組成物上にロール積層される。キャリア及び/または半導体基板上に乾燥仮接合組成物を配置するために、最初に被覆シートが除去される。その後、支持シート上の乾燥仮接合組成物は、ロール積層または真空積層を使用して、適切な表面上に積層される。積層温度は、20〜120℃の範囲であり得る。その後、支持シートが除去(剥離)され、その表面に乾燥仮接合組成物を残す。この方法を使用して、図1A、1B、及び1Cに図示される構造が全て実現され得る。
【0058】
図1Aは、仮接合組成物3が、例えば回転コーティング等によって、キャリア基板の取り付け面1上の任意の接着促進剤層2上に配置される、本発明の第1の実施形態を図示する。図1Bは、仮接合組成物3が、銅柱4aの形態の銅含有相互接続形体を有し、任意に同じく同表面を有し得るはんだバンプ4b等の他の相互接続形体を有し得る、半導体基板(ウエハとして図示される)5の前面上に配置される、本発明の代替の実施形態を図示する。半導体ウエハは、銅柱等の1種類のみの銅含有形体、または様々な銅含有形体を有し得ることが、当業者によって理解されるであろう。図1Bにおける仮接合組成物3は、銅柱4a及び任意のはんだバンプ4bの周囲を充填するために、十分に流動性である。図1Bでは、キャリア基板1の取り付け面は任意の接着促進剤層2を有する。図1Cは、仮接合組成物3が、半導体ウエハ5の表側上及び接着促進剤層2を有するキャリア基板の取り付け面1上の両方に配置される、本発明の第3の実施形態を図示する。図1Cの仮接合組成物3は、銅柱4a及び任意のはんだバンプ4bの周囲を充填するために、十分に流動性である。図1Cにおいて、半導体ウエハ上に配置される仮接合組成物は、キャリア基板の取り付け面上に配置される仮接着と同じでも異なってもよい。仮接合組成物の複数の層が、所望の厚さを達成するために適用され得ることが、当業者によって理解されるであろう。
【0059】
仮接合組成物が銅表面を有する半導体ウエハの表側またはキャリア基板の取り付け面上に配置された後、キャリアウエハの取り付け面または銅表面を有する半導体ウエハの前面を、図1A及び1Bにおける矢印によって図示されるように、それぞれ仮接合組成物と接触させることによって、構造が形成される。仮接合組成物が、銅表面を有する半導体ウエハの表側及びキャリア基板の取り付け面の両方上に配置された後、2つの仮接合組成物層を、図1Cにおける矢印によって図示されるように接触させることによって、構造が形成される。圧力及び熱が適用される熱圧接着等の任意の好適な方法が、キャリア基板と、半導体ウエハと、仮接合組成物とを接触させるために使用されてもよい。例示的な方法は、米国特許第7,713,835号、ならびに米国特許出願公開第2010/0263794号及び同第2011/0272092号に記載される。典型的に、熱圧接着は、空隙形成を低減するために真空下で実行される。キャリア基板及び半導体ウエハの両方を真空チャンバ内に配置し、その後、キャリア基板及びウエハのうちの少なくとも一方上に配置された仮接合組成物を、所望の温度まで、例えばアリールシクロブテン接着材料の場合50〜200℃まで1〜10分間加熱し、次にチャンバを空にし、キャリア基板及び半導体ウエハを仮接合組成物と接触させ、その後、チャンバを1〜100kPa等に任意に加圧するのが好ましい。次に、接合されたペアをチャンバから除去して硬化し得、または任意にチャンバ内で硬化してもよい。仮接合組成物の硬化は、アリールシクロブテン接着材料の場合、典型的に組成物を180〜250℃の温度に1〜600分間加熱することによって達成される。
【0060】
図2Aは、図1A〜1Cの各々において図示される構成要素を接触させた後に形成される構造を図示する。図2Aでは、半導体ウエハ5は、銅柱4a及び同表面を有しても有さなくてもよいはんだバンプ4bとして示される相互接続形体を有し、仮接合組成物3は半導体ウエハ5に直接隣接し、かつ形体4a及び4bの周囲に配置され、仮接合組成物は、キャリア基板1に直接隣接する任意の接着促進剤層2にも直接隣接する。図2Aの構造が形成された時点で、仮接合組成物を、接着材料を硬化するのに十分な条件に供する。かかる条件は、加熱、化学線(光)への曝露、またはそれらの組み合わせを含む。好ましくは、加熱が、単独でまたは光への曝露との組み合わせで使用され、より好ましくは、接着材料は加熱によって硬化される。加熱の速度は、接着材料が瞬時に硬化せず、より制御された様式で硬化するように選択される。つまり、重合の速度は剥離添加剤の相分離の速度よりも遅くなくてはならない。接着材料を硬化するステップの前及び/またはその間に、銅不動態化剤は銅表面をコーティングする。
【0061】
理論に束縛されることなく、硬化中に、剥離添加剤相は硬化している接着材料から分離し(つまり、重合誘発相分離が生じる)、概して半導体ウエハの比較的より親水性の表面(表側)に向かって移動すると考えられる。不動態化剤は、接着材料を硬化するステップの前及び/または間に銅表面をコーティングする。硬化後、仮接合層は、図2Bに図示されるように、半導体ウエハとキャリア基板の取り付け面との間に形成され、硬化仮接合組成物(ここでは仮接合層)3は、比較的より少量の剥離添加剤を含む、キャリアウエハに隣接する第1の領域3a及び半導体ウエハに隣接し比較的より多(より大きい)量の剥離添加剤を含む、第2の領域3bで構成される。領域3bは、領域3aと比較して比較的より小さい。図2Bは、例示のみの目的で、画定された領域3a及び3bを示す。理論に束縛されることなく、領域3a及び3bは、仮接合層中の剥離添加剤の濃度の連続体(3aでより低く3bでより高い)を表し得、またはそれらは、領域3bが大部分の量の剥離添加剤を含み得る、剥離添加剤の異なる濃度を含む別個の領域を表し得ると考えられる。領域3a及び3bが別個の領域を表そうが連続体を表そうが、領域3bは剥離添加剤を優勢に含む。硬化接着材料(仮接合層)がアリールシクロブテン接着材料で構成される場合、かかる硬化材料は、典型的に>1GPaの弾性率及び破断点で<20%の伸びを有する。
【0062】
仮接合層が形成されると、半導体ウエハ5の裏側が研磨(薄化)され平坦面5aが形成されている図2Cに図示されるように、ウエハの裏側の研磨(薄化)等の、1つ以上の好適な作業が半導体ウエハ上で実施され得る。パターン化、ビア孔の形成、及び半導体ウエハの裏側上の導電接点の形成等の、さらなる作業が実施され得る。図2Dは、任意の接着促進剤層2を有するキャリア基板1、半導体ウエハ5をキャリア基板1に結合する仮接合層3を有する構造を図示し、仮接合層が、半導体ウエハの表側上の銅柱及び/または銅表面を有するはんだバンプ等の相互接続特徴を取り囲み、ウエハ5の裏側は研磨され、その上に金属接点6が形成されている。
【0063】
キャリア基板に隣接する仮接合層中の剥離添加剤の濃度と比べて、半導体基板の表側に隣接する、好ましくは直接隣接する剥離添加剤のより高い濃度は、キャリア基板と仮接合層との間の接着エネルギーと比較して、半導体基板と仮接合層との間のより低い接着エネルギーを有する構造を提供する。好ましくは、半導体基板−仮接合層インターフェースとキャリア基板−仮接合層インターフェースとの接着エネルギーの差は、>20J/m、より好ましくは>25J/mである。仮接合層と相互接続構造を有しない半導体基板の表側との間の接着エネルギーは、≦5J/m、好ましくは<5J/m、より好ましくは<3J/m、最も好ましくは≦2J/mである。仮接合層とキャリア基板の取り付け面との間の接着エネルギーは、好ましくは>30J/m、より好ましくは>35J/m、一層より好ましくは≧40J/mである。接着エネルギーのかかる差は、キャリア基板と比較して仮接合層からの半導体ウエハのより容易な剥離を可能にする。
【0064】
半導体基板上で実施されるべき作業の完了後、半導体基板はキャリア基板及び仮接合層から分離される。半導体基板を仮接合層から分離するための任意の好適な方法、例えば米国特許出願公開第2010/0263794号、同第2011/0308739号、及び同第2012/0028438号、ならびに国際特許出願第WO2011/079170号に開示されるものが使用されてもよい。構造は、半導体ウエハの分離を容易にするために任意に加熱されてもよいが、かかる加熱は必要とされない。本発明の1つの利点は、仮接合層と半導体基板との間のそのように低い接着エネルギーを伴って、分離は、構造を強制的に開けるまたはこじ開けるために、半導体基板とキャリア基板との間のくさび形を強制することによって容易に達成されることである。分離が開始すると、半導体基板は仮接合層から容易に分離される。図2Eは、任意の接着促進剤層2を有するキャリア基板1から分離する、表側上に銅柱4a及びはんだバンプ4bとして示される相互接続形体、ならびに裏側上に導電接続詞6を有する、処理された半導体基板(ウエハとして図示される)5と、仮接合層の領域3a及び3bの両方とを示す、本発明の一態様を図示する。その後、処理された半導体ウエハ5を適切な溶媒または溶媒混合物で洗浄し、あらゆる残留物をも除去し、その後、乾燥させる。好適な洗浄剤には、イソプロパノール、アセトン、メシチレン、アンモニア/水、水/界面活性剤等が挙げられるがこれらに限定されない。図2Fは、領域3bが分離後に半導体ウエハの表側上に残る代替の態様を図示し、これは、半導体ウエハ5を溶媒または溶媒混合物と接触させ、その後、乾燥させることによって容易に除去される。図2E及び2Fに図示されるように、本仮接合層は、半導体基板の表面から、さらに金属柱及びはんだバンプ等の地形的な形体を有する区域から、接着材料残留物をほとんどから全く残さずに、除去されることが可能である。
【0065】
はんだバンプ及び柱等のある特定の相互接続形体は、特徴のそれらの大きさ及び形状、ならびに所与の区域におけるかかる特徴の相対的な密度により、いかなる仮接合層をも除去することにおいて困難を提示する。これは表面積の増加、及びC4バンプの場合、半導体基板表面付近の凹型輪郭をもたらす。凹型輪郭または突出部は、接着剤の低エネルギー脱接合の困難をかなり上昇させる。したがって、これらの相互接続形体を有する半導体基板の良好な剥離を確実にするために、より多量の剥離添加剤が本仮接合組成物中に必要とされ得る。より多量の剥離添加剤は、半導体基板の表側に隣接する、剥離添加剤を優勢に含むより大きい領域(図2Bの3b)をもたらし、これはかかる地形的形体を有する区域におけるウエハの分離を容易にする。本発明の不動態化剤は、半導体基板の表側上の銅表面をコーティングする。仮接合層を、かかる不動態化銅表面、特に不動態化銅柱等の不動態化銅含有相互接続構造から分離するのは、不動態化されていない銅表面から分離するよりも容易である。
【0066】
半導体ウエハコーティング:半導体ウエハは、一体化ホットプレート及びウエハ移送システムを有するSite Service Tractrix回転コーティングシステム上でコーティングされた。ある量(6〜8g)の試料を、動的分配及び1000〜2000rpmの回転速度を最大45秒間使用して、未処理シリコンウエハ上に配置し、その後、ホットプレート上にて120℃で90秒間ソフトベークした。最終コーティング厚さは回転速度に反比例し、典型的に25〜100μmの範囲であった。
【0067】
キャリア基板コーティング:別途指定されない限り、キャリアウエハは、硬化後の仮接合層の接着を強化するために、ウエハ表面をポリ(アルコキシシラン)接着促進剤(Dow Electronic Materialsから入手可能なAP−9000S(商標)Adhesion Promoter)で処理することによって、接合試験のために調製した。接着促進剤を、静的分配を有する回転コーティング機を使用して適用し、その後、2000rpmで45秒間回転させ、100℃で2分間ホットプレートベークステップをした。
【0068】
半導体ウエハとキャリア基板との接合:一方の上に仮接合組成物の層が配置された、1片の半導体ウエハ及び1片のキャリアウエハを、直接接触させてホットプレート上で加熱し、その後、部品が滑って離れるのを防止するためにクランプを取り付けることによって接合した。あるいは、ウエハの片を真空積層装置内で接合した。その後、試料を高速熱アニールチャンバまたは窒素炉内にて210℃で1時間硬化した。
【0069】
実施例1:対照。受け取られたまま使用される100mmのシリコンウエハを、6700のMを有する8固体重量%のエチレンオキシド−ブチレンオキシド−エチレンオキシドトリブロックポリマーを有するDVS−ビスBCBオリゴマーを含有する接着剤(The Dow Chemical Companyから入手可能なFortegra(商標)100)を剥離添加剤として、及び1800のMを有する16固体重量%のポリブチレンオキシドモノドデシルフェニルエーテルを相容化剤として含む、仮接合組成物で回転コーティングした。コーティングされたウエハを、210℃で1分間硬化した、200nmの純DVS−ビスBCBポリマーでコーティングされた、100mmのシリコンキャリアウエハに接合した。接合されたウエハペアを210℃で1時間硬化した後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによってウエハを容易に分離することができた。
【0070】
実施例2:比較1。シリコンウエハを、スパッタ銅表面を有する100mmのシリコンウエハと置き換え、仮接合組成物を銅表面に適用したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。接合されたウエハペアの硬化後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによってウエハを分離することができなかった。
【0071】
実施例3:比較2。シリコンウエハの銅表面を、Arプラズマを使用して、これらの条件:電力=250W、圧力=300mトール、Ar流=170sccm、プラズマ時間=90秒間で洗浄したことを除いて、実施例2の手順を繰り返した。仮接合組成物をプラズマ洗浄銅表面に適用した。コーティングされたウエハを、210℃で1分間硬化した、200nmの純DVS−ビスBCBポリマーでコーティングされた、100mmのシリコンキャリアウエハに接合した。その後、接合されたウエハペアを210℃で1時間硬化した。硬化後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによってウエハを分離することができなかった。次に、硬化接合ウエハペアを260℃で5分間さらに硬化し、その後、室温まで冷却させた。このさらなる高温硬化ステップ後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによってウエハを分離することができた。
【0072】
実施例4:比較3。受け取られたまま使用される、スパッタ銅でコーティングされた表面を有する100mmのシリコンウエハを、75重量%のDVS−ビスBCBオリゴマーを接着材料として、6700のMを有する8固体重量%のエチレンオキシド−ブチレンオキシド−エチレンオキシドトリブロックポリマーを剥離添加剤として、1800のMを有する16固体重量%のポリブチレンオキシドモノドデシルフェニルエーテルを相容化剤として、及び1固体重量%のフェノール抗酸化剤(Irganox1010)を含み、Proglyde(商標)DMM溶媒(The Dow Chemical Company)中で68.4重量%の合計固体分を有する、仮接合組成物の層で回転コーティングした。その後、仮接合組成物の層を120℃で2分間乾燥させた。このコーティングしたウエハを、AP−9000S接着促進剤(The Dow Chemical Company)の薄い層でコーティングした100mmのシリコンキャリアウエハに接合し、100℃で2分間乾燥した。接合されたウエハペアを窒素雰囲気下にて210℃で1時間硬化した後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによってウエハを分離することができなかった。
【0073】
実施例5:比較4。仮接合組成物を、79重量%のDVS−ビスBCBオリゴマーを接着材料として、2900の分子量を有する13固体重量%のポリ(テトラメチレングリコール)(BASFからPolyTHF2900として入手可能)を剥離添加剤として、6固体重量%のBAC−45(3000の分子量を有するジアクリレート末端ブタジエンゴム)、1固体重量%の過酸化ジクミル、及び0.7固体重量%のフェノール抗酸化剤(Irganox(商標)1010)を含み、Proglyde(商標)DMM溶媒中で68.7重量%の合計固体分を有する、仮接合組成物と置き換えたことを除いて、実施例4の手順を繰り返した。接合されたウエハペアを窒素雰囲気下にて210℃で1時間硬化した後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによってウエハを分離することができなかった。
【0074】
実施例6:比較5。仮接合組成物が0.8固体重量%のベンゾトリアゾールをさらに含むことを除いて、実施例4の手順を繰り返した。接合されたウエハペアを窒素雰囲気下にて210℃で1時間硬化した後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによってウエハを分離することができなかった。
【0075】
実施例7。受け取られたまま使用される、スパッタ銅でコーティングされた表面を有する100mmのシリコンウエハを、75重量%のDVS−ビスBCBオリゴマーを接着材料として、6700のMを有する8固体重量%のエチレンオキシド−ブチレンオキシド−エチレンオキシドトリブロックポリマーを剥離添加剤として、1800のMを有する16固体重量%のポリブチレンオキシドモノドデシルフェニルエーテルを相容化剤として、1固体重量%のフェノール抗酸化剤(Irganox1010)、及び0.8固体重量%の5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールを銅不動態化剤として含み、Proglyde(商標)DMM溶媒(The Dow Chemical Company)中で合計68.4固体重量%を有する仮接合組成物層で回転コーティングした。その後、仮接合組成物の層を120℃で2分間乾燥させた。このコーティングしたウエハを、AP−9000S接着促進剤(The Dow Chemical Company)の薄い層でコーティングした100mmのシリコンキャリアウエハに接合し、100℃で2分間乾燥した。接合されたウエハペアを窒素雰囲気下にて210℃で1時間硬化した後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによってウエハを分離することができた。
【0076】
実施例8。5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールを、銅不動態化剤として0.05固体重量%の5−アミノ−1H−ベンゾトリアゾールと置き換えたことを除いて、実施例7の手順を繰り返した。硬化後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによってウエハを分離することができた。
【0077】
実施例9。受け取られたまま使用される、スパッタ銅でコーティングされた表面を有する100mmのシリコンウエハを、79重量%のDVS−ビスBCBオリゴマーを接着材料として、2900の分子量を有する13固体重量%のポリ(テトラメチレングリコール)(BASFからPolyTHF2900として入手可能)を剥離添加剤として、6固体重量%のBAC−45(3000の分子量を有するジアクリレート末端ブタジエンゴム)、1固体重量%の過酸化ジクミル、及び0.7固体重量%のフェノール抗酸化剤(Irganox(商標)1010)、及び銅不動態化剤として0.8固体重量%の5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールを含み、Proglyde(商標)DMM溶媒(The Dow Chemical Company)中で68.4%の合計固体分を有する、仮接合組成物の層で回転コーティングした。その後、仮接合組成物の層を120℃で2分間乾燥させた。このコーティングしたウエハを、AP−9000S接着促進剤(The Dow Chemical Company)の薄い層でコーティングした100mmのシリコンキャリアウエハに接合し、100℃で2分間乾燥した。接合されたウエハペアを窒素雰囲気下にて210℃で1時間硬化した後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによってウエハを分離することができた。
【0078】
実施例10。5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールを、銅不動態化剤として0.05固体重量%の5−アミノ−1H−ベンゾトリアゾールと置き換えたことを除いて、実施例9の手順を繰り返した。硬化後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによってウエハを分離することができず、より多量の銅不動態化剤がこの配合物に必要とされ得ることを示した。
【0079】
実施例11〜12。5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールを、銅不動態化剤として0.05固体重量%のベンゾトリアゾール−5−カルボン酸(実施例11)または0.01固体重量%のベンゾトリアゾール−5−カルボン酸(実施例12)と置き換えたことを除いて、実施例7の手順を繰り返した。硬化後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによって実施例11及び12の両方のウエハを分離することができた。
【0080】
実施例13。5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールを0.01固体重量%のベンゾトリアゾール−5−カルボン酸と置き換えたことを除いて、実施例9の手順を繰り返した。硬化後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによってウエハを分離することができず、より多量の銅不動態化剤がこの組成物に必要とされ得ることを示した。
【0081】
実施例14〜20。5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールを、表1に示される量で、銅不動態化剤として、メチル1,2,3−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートと置き換えたことを除いて、実施例7の手順を何度も繰り返した。硬化後、接合されたウエハペアを、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによる剥離について評価した。実施例14〜19の各々のウエハペアは、容易に分離することができた。実施例20のウエハペアは、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによって分離することができず、固体の>0.001重量%である、ある量の銅不動態化剤が必要とされ得ることを示した。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例21〜22。5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールを、銅不動態化剤として0.8固体重量%のメチル1,2,3−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート(実施例21)または0.05固体重量%のメチル1,2,3−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート(実施例22)と置き換えたことを除いて、実施例9の手順を繰り返した。硬化後、実施例21及び22両方のウエハペアを、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによって容易に分離することができた。
【0084】
実施例23〜26。5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールを、表2に示される量で、銅不動態化剤として、5−クロロベンゾトリアゾールと置き換えたことを除いて、実施例7の手順を何度も繰り返した。硬化後、接合されたウエハペアを、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによる剥離について評価した。実施例23〜26の各々のウエハペアは、表2に示されるように、容易に分離することができた。
【0085】
【表2】
【0086】
実施例27。5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールを、銅不動態化剤として0.8固体重量%の5−クロロベンゾトリアゾールと置き換えたことを除いて、実施例9の手順を繰り返した。硬化後、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによってウエハを容易に分離することができた。
【0087】
実施例28〜31。5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールの量を表3に示されるように変化させたことを除いて、実施例9の手順を何度も繰り返した。硬化後、接合されたウエハペアを、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによる剥離について評価した。実施例28〜30の各々のウエハペアは、容易に分離することができた。実施例31のウエハペアは、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによって分離することができず、>0.05重量%である、ある量の銅不動態化剤がこの配合物において必要とされ得ることを示した。
【0088】
【表3】
【0089】
実施例32。25μmの銅柱アレイを有する、4つの100mmシリコンウエハ試験ビヒクルの各々を、仮接合組成物の1つの層で回転コーティングした。仮接合組成物Aは、75重量%のDVS−ビスBCBオリゴマーを接着材料として、6700のMを有する8重量%の固体のエチレンオキシド−ブチレンオキシド−エチレンオキシドトリブロックポリマーを剥離添加剤として、1800のMを有する16重量%の固体のポリブチレンオキシドモノドデシルフェニルエーテルを相容化剤として、及び1重量%の固体のフェノール抗酸化剤(Irganox1010)を含有し、Proglyde(商標)DMM溶媒中で68.4重量%の合計固体分を有した。仮接合組成物BはAと同じであるが、2000の平均分子量を有する、2.5重量%の固体のアミン末端ポリプロピレンオキシドポリマー(JeffamineD−2000)を補助的な剥離添加剤としてさらに含んだ。仮接合組成物CはAと同じであるが、0.025重量%の固体のベンゾトリアゾール−5−カルボン酸を銅不動態化剤としてさらに含んだ。仮接合組成物DはAと同じであるが、2000の平均分子量を有する、2.5重量%の固体のアミン末端ポリプロピレンオキシドポリマー(JeffamineD−2000)を補助的な剥離添加剤として、及び0.025重量%の固体のベンゾトリアゾール−5−カルボン酸を銅不動態化剤としてさらに含んだ。各コーティングされたウエハを、AP−9000S接着促進剤の薄い層でコーティングされた100mmのシリコンキャリアウエハに接合し、120℃で2分間乾燥させた。接合されたウエハペアを窒素雰囲気下にて210℃で1時間硬化した後、接合されたウエハペアを、ウエハ間にカミソリ刃を挿入することによる剥離について評価した。試料A〜Cから形成されたウエハペアは、脱接合しなかった。試料Dから形成されたウエハペアのみが、容易に脱接合された。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F