(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電気ヒータは2つの加熱要素を備え、それぞれの加熱要素の端部は共通点に接続され、前記ユニバーサル電源は、並列または直列構成の間で切換え可能な構成にて、前記加熱要素をライン電圧に接続する1又は複数の電気スイッチを備え、前記ユニバーサル電源は、前記電気ヒータを通る電流を測定するための回路、および前記電気スイッチを制御して、前記加熱要素を測定された電流に基づいて構成するように配置された電源コントローラを備える、請求項1に記載の加熱システム。
前記1又は複数の電気スイッチはヒータ選択リレーを備え、該ヒータ選択リレーは前記電源コントローラが前記ヒータ選択リレーを通電状態とするための制御をするときに前記加熱要素を並列に接続する、請求項2に記載の加熱システム。
前記ヒータコントローラはパルス幅変調を介した前記電気ヒータへの電力供給を制御するために前記電気ヒータに接続された固体リレーを制御する、請求項1に記載の加熱システム。
前記ヒータコントローラは2つの固体リレーを制御し、それぞれの前記固体リレーは異なる前記加熱要素に接続されて前記加熱要素への電力供給をパルス幅変調によって制御する、請求項2に記載の加熱システム。
2つの前記固体リレーのうちの一方はACライン電圧源のアクティブラインに接続され、他方は前記ACライン電圧源のニュートラルラインに接続される、請求項6に記載の加熱システム。
前記電源コントローラは、直列構成にて前記電気ヒータを通る電流を測定し、1又は複数の電気スイッチを制御して、測定された電流が所定の値未満である場合、前記加熱要素の構成を変化させるように配置される、請求項2に記載の加熱システム。
前記測定された電流の前記所定の値は、直列している前記電気ヒータに印加された200〜240ボルトのACライン電圧から生じる電流に対応する、請求項12に記載の加熱システム。
前記測定した電流が所定の値未満である場合には、前記ヒータコントローラは固体リレーに100%デューティ・サイクルまで命令し、前記1つ以上の電気スイッチは前記加熱要素を直列に配置し、前記電源コントローラは前記電気ヒータを通る電流を測定し、及び前記1つ以上の電気スイッチに前記加熱要素を並列に配置するように命令する、請求項6に記載の加熱システム。
【発明を実施するための形態】
【0093】
本発明の態様は、腹膜透析システムに関して記述されるが、本発明の或る態様は、静脈内点滴システムまたは体外血流システムなどの導入システム、胃、腸管、膀胱、胸膜腔、または他の身体もしくは臓器腔用の洗浄および/または流体交換システムを含む他の医療用途で使用されることができる。このように、本発明の態様は、特に腹膜透析または一般に透析での使用に限定されるものではない。
[APDシステム]
図1は、本発明の一又は複数の態様を組み込むことが可能な自動腹膜透析(APD)システム10を示している。
図1に示されるように、例えば、この例示の実施形態におけるシステム10は、透析液供給セット12(或る実施形態では、使い捨て式であることができる)と、透析液容器20(例えば、バッグ)によって供給される液体を圧送するために供給セット12と相互作用するサイクラ14と、APD処置を行うための処理を管理する制御システム16(例えば、プログラムされたコンピュータまたは他のデータプロセッサ、コンピュータ・メモリ、ユーザまたは他の装置に情報を提供し、ユーザまたは他の装置から入力を受信するインタフェース、一又は複数のセンサ、アクチュエータ、リレー、空気圧ポンプ、タンク、電源、および/または他の適切な構成要素であり、ユーザ制御入力
を受けるための幾つかのボタンだけが
図1に示されているが、制御システムの構成要素に関するさらなる詳細が以下に提供される)とを備える。この例示の実施形態では、サイクラ14および制御システム16は、共通のハウジング82に付随されているが、2つ以上のハウジングに関連づけられることが可能である、および/または、互いから分離されることが可能である。サイクラ14は、テーブル面または家庭で通常見受けられる他の比較的小さな面での操作に適した、コンパクトな設置面積を有することが可能である。サイクラ14は、例えば、ハウジング82の対向面のハンドルを介して手によって担持される、軽量かつポータブルであることが可能である。
【0094】
この実施形態におけるセット12は、一回使用の使い捨て式のアイテムであるように意図されるが、これに代えて、一又は複数の再使用可能な構成要素を有することが可能であるか、または、その全体が再使用可能であることがある。ユーザは、各APD治療セッションを開始する前に、例えば、サイクラ14の前方ドア141内にカセット24を取り付けることによって、セット12の様々なライン中の流体の流れを圧送および制御するためにカセット24と相互作用するサイクラ14にセット12を関連づける。例えば、透析液は、APDを達成するために患者との間で圧送されることが可能である。治療後に、ユーザは、サイクラ14からセット12の構成要素のすべてまたは一部を取り外すことが可能である。
【0095】
本技術分野では公知なように、使用に先立ち、ユーザは、接続部36でその人の留置腹膜カテーテル(図示せず)にセット12の患者ライン34を接続することが可能である。一実施形態では、サイクラ14は、様々なサイズの患者ライン34を有するもののような、一又は複数の様々な種類のカセット24と共に動作するように構成されることが可能である。例えば、サイクラ14は、成人患者での使用のためのサイズとされた患者ライン34を備えた第1種類のカセットと、幼児または小児の使用のためのサイズとされた患者ライン34を備えた第2種類のカセットと共に動作するように配置されることが可能である。小児患者ライン34は、より短く、ラインの容積を最小限にするように成人ラインよりも小さな内径を有することが可能であり、透析液のより制御された供給を可能にし、セット12が連続する導出および導入サイクルに使用されるときに、小児患者に比較的大きな体積の使用済み透析液を戻さないように補助する。ライン26によってカセット24に接続されるヒータバッグ22は、サイクラ14のヒータ容器受容部分(この場合、トレイ)142上に配置されることが可能である。サイクラ14は、ヒータバッグ22に新しい透析液を(カセット24を介して)圧送することが可能であり、その結果、透析液は、ヒータ・トレイ142によって、例えば、約37℃の温度にトレイ142に関連づけられた電気抵抗加熱要素によって加熱される。加熱された透析液は、カセット24および患者ライン34を介してヒータバッグ22から患者に提供されることが可能である。代替の実施形態では、透析液は、カセット24を出入りする際に、ヒータ・トレイ142に接触するチューブまたは直列流体ヒータ(カセット24内に設けられることが可能である)を透析液が通過することによって、患者への通り道で加熱されることができる。使用済み透析液は、患者ライン34を介して患者からカセット24に、そして、導出ライン28に圧送されることが可能であり、それは、導出ライン28の一又は複数の枝別れ部を通じた流れを調整する一又は複数のクランプを備えることが可能である。この例示の実施形態では、導出ライン28は、専用の導出レセプタクルに導出ライン28を接続するコネクタ39と、試験または他の解析のために使用済み透析液のサンプルを取る導出サンプル・ポート282とを備えることが可能である。ユーザは、ドア141内の一又は複数の容器20のライン30をさらに取り付けることが可能である。ライン30は、連続またはリアルタイムの透析液準備システムに接続されることも可能である(ライン26,28,30,34は、可撓性チューブおよび/または適切なコネクタおよび望まれるように他の構成要素(ピンチバルブなど)を備えることが可能である)。容器20は、導入用の減菌腹膜透析液または他の材料(例えば、水と混合するかまたは様々な種類の透析液を混合することによって透
析液を作製するためにサイクラ14によって使用される材料)を収容することが可能である。ライン30は、カセット24のスパイク160に接続されることが可能であり、それは取外し可能なキャップによって覆われて
図1に示されている。より詳細に下に記述される本発明の一態様では、サイクラ14は、カセット24の一又は複数のスパイク160からキャップを自動的に取り外し、それぞれのスパイク160に透析液容器20のライン30を接続することが可能である。この特徴部は、スパイク160との非減菌アイテムの接触の機会を減らすことによって、感染または汚染の可能性を減少することを補助することが可能である。
【0096】
別の態様では、透析液供給セット12aは、カセット・スパイク160を有さないことがある。これに代えて、
図1Aに示されるように、一又は複数の透析液ライン30は、カセット24の入口ポートに恒久的に取り付けられることが可能である。この場合、透析液ライン30はそれぞれ、透析液容器または透析液バッグ20への手動接続用の(キャップ付きの)スパイク・コネクタ35を有することが可能である。
【0097】
様々な接続がなされた状態で、制御システム16は、APD処置に典型的な一連の導入、滞留、および/または、導出サイクルを通じてサイクラ14を調整することが可能である。例えば、導入段階中に、サイクラ14は、加熱のために一又は複数の容器20(または他の透析液供給源)からヒータバッグ22に透析液を(カセット24によって)圧送することが可能である。その後、サイクラ14は、カセット24を通じてヒータバッグ22から、患者ライン34を介して患者の腹膜腔に加熱した透析液を導入することが可能である。滞留段階に続いて、サイクラ14は、サイクラ14がライン34を介して(再びカセット24によって)患者から使用済み透析液を圧送し、導出ライン28を介して近傍のドレイン(図示せず)に使用済み透析液を排出する、導出段階を始めることが可能である。
【0098】
サイクラ14は、例えば、サイクラ14が必ずしも重力流システムではないので、必ずしも透析液容器20および/またはヒータバッグ22をサイクラ14の上方の規定された頭高に配置されることを必要としない。これに代えて、サイクラ14は、患者がサイクラ14よりも上方または下方にいる場合、透析液源容器20がサイクラ14よりも上方、下方、または同じ高さであっても、透析液の重力流を真似ることが可能であるか、または、重力流を適切に制御することが可能である。例えば、サイクラ14は、与えられた処置中に固定された頭高を真似ることができるか、または、サイクラ14は、有効頭高を変更して、処置中に透析液に加えられる圧力を増加または減少させることができる。サイクラ14は、透析液の流量を調整することも可能である。本発明の一態様では、サイクラ14は、患者に供給されるかまたは患者から引き出されるときに、導入または導出動作についての患者の感覚を減少するように、透析液の圧力および/または流量を調整することが可能である。そのような調整は、単一の導入および/または導出サイクル中に生じることがあるか、または、異なる導入および/または導出サイクルに亘って調整されることがある。一実施形態では、サイクラ14は、導出動作の終了間近に患者から使用済み透析液を引き出すために使用される圧力を徐々に低下させることが可能である。サイクラ14が人為的な頭高を確立することが可能であるので、それは特定の生理学と相互作用し、その生理学に嵌合する可撓性を有するか、または、患者の相対的な高さを変更させることが可能である。
[カセット]
本発明の一態様では、カセット24は、透析液供給ラインに対して別々に閉塞することができる患者および導出ラインを備えることが可能である。つまり、患者ラインとの間の安全な臨界流れは、一又は複数の透析液供給ラインを通じた流れを閉塞する必要なしに、例えば、流れを止めるためにラインを挟むことによって制御されることが可能である。この特徴部は、閉塞が、患者の安全性に殆ど効果がないかまたはまったく効果がない他のラインの閉塞とは反対に、2本のラインだけに対して行われることが可能であるので、単純
化された閉塞装置を可能にすることがある。例えば、患者または導出ラインの接続部が非接続の場合には、患者および導出ラインを閉塞することが可能ある。しかし、透析液供給源および/またはヒータバッグ・ラインは、流れに対して開いたままであることが可能であり、それによって、サイクラ14に次の透析サイクルの準備をさせる。例えば、患者および導出ラインの個別の閉塞は、一又は複数の容器20からヒータバッグ22または他の透析液容器20にサイクラ14が透析液を圧送し続けることを許容しつつ、患者の安全性を確実にするのを補助することが可能である。
【0099】
本発明の別の態様では、カセットは、カセット一側または一部分に患者、導出、およびヒータバッグ・ラインを、カセットの別の側または部分に(例えば、カセットの反対側に)一又は複数の透析液供給ラインを有することが可能である。そのような構成は、上で議論したような透析液ラインに対する患者、導出、またはヒータバッグ・ラインの個別の閉塞を可能にすることがある。種類または機能によってカセットに取り付けられたラインを物理的に分離することは、或る種類または機能のラインとの相互作用のより効率的な制御を可能にする。例えば、そのような構成は、カセットに先行するまたはカセットから遠ざかるすべてのラインよりも、これらのラインのうちの1本、2本、または3本を閉塞するのに、より少ない力が必要とされるので、単純化された閉塞部設計を可能にすることがある。これに代えて、この構成は、より詳細に下で議論されるように、カセットへの透析液供給ラインのより効果的な自動接続を可能にすることがある。つまり、透析液供給ラインおよびそれぞれの接続部が患者、導出、またはヒータバッグ・ラインから離れて配置される場合、自動化されたキャップ取外しおよび接続装置は、カセット上のスパイクからキャップを取り外し、透析液供給ライン上のキャップを取り外し、患者、導出、またはヒータバッグ・ラインによる干渉なしに、それぞれのスパイクにラインを接続することが可能である。
【0100】
図2は、上述した本発明の態様を組み込むカセット24の例示の実施形態を示している。この実施形態では、カセット24は、概して平面の本体を有し、ヒータバッグ・ライン26、導出ライン28、および患者ライン34は、カセット本体の左端のそれぞれのポートに接続され、カセット本体の右端は、透析液供給ライン30が接続されることがある5つのスパイク160を備えることが可能である。
図2に示される構成では、スパイク160のそれぞれは、スパイク・キャップ63によって覆われ、それは、取り外されて、それぞれのスパイクを露出させ、それぞれのライン30への接続を可能にすることが可能である。上述したように、ライン30は、例えば、透析での使用および/または透析液の製剤のために、一又は複数の透析液容器または他の材料源に取り付けられるか、または、サンプリング目的または腹膜平衡試験(PET試験)のために一又は複数の収集バッグに接続されることが可能である。
【0101】
図3および
図4は、この例示の実施形態におけるカセット24の分解図(それぞれ斜視図および平面図)を示している。カセット24は、概して平面の形状を有した比較的薄く平坦部材として形成され、例えば、適切なプラスチックから成型されるか、押し出されるか、または形成された構成要素を備えることが可能である。この実施形態では、カセット24は、カセット24用のフレームまたは構造部材として機能し、少なくとも部分的に、様々なフロー・チャネル、ポート、バルブ部分などを形成するベース部材18を備えている。ベース部材18は、適切なプラスチック、またはポリメチル・メタクリレート樹脂(PMMA)アクリルまたは環状オレフィン共重合体/超低密度ポリエチレン(COC/ULDPE)などの他の材料から成型または構成されることが可能であり、比較的剛性があることが可能である。一実施形態では、COC/ULDPEの比は、約85%/15%であることができる。さらに、
図3は、ベース部材18に形成された、ヒータバッグ(ポート150)、導出(ポート152)および患者(ポート154)用のポートを示している。これらのポートのそれぞれは、例えば、外側リングまたはスカート158から延びた中
央チューブ156または単独の中央チューブなどに、任意の適切な方法で配置されることが可能である。ヒータバッグ、導出および患者ライン26,28,34のそれぞれに対する可撓性チューブは、中央チューブ156に接続され、外側リング158(存在すれば)によって係合されることが可能である。
【0102】
ベース部材18の両側は、少なくとも部分的に、成型、押出し成形、または形成された膜15,16(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)から作られる可撓性のある重合体フィルム)によって、覆われることが可能である。これに代えて、シートは、例えば、共押出用接着樹脂(CXA)によって共に保持されるポリシクロヘキシレンジメチレンシクロヘキサンジカルボキシレート(PCCE)および/または低密度ポリエチレン(ULDPE)の2層以上の積層体として形成されることが可能である。幾つかの実施形態では、膜厚は、約0.002〜0.020インチの厚さの範囲にあることが可能である。好ましい実施形態では、PVCベースの膜の厚さは、約0.012〜0.016インチの厚さの範囲にあることが可能であり、より好ましくは約0.014の厚さである。例えば、積層シートなどについての別の好ましい一実施形態では、積層体の厚さは、約0.006〜0.010インチの厚さの範囲にあることが可能であり、より好ましくは約0.008インチの厚さである。
【0103】
両方の膜15および16は、カセット24の流体経路の一部を閉じるかまたはこの一部を形成するように機能するだけでなく、動作または操作されて、バルブ・ポートを開/閉する、および/または、カセット24内の流体を移動させるポンプ隔膜、隔壁、または壁の一部として機能することが可能である。例えば、膜15および16は、ベース部材18上に配置され、流体がカセット24から漏れるのを防止するためにベース部材18の周囲のリムを密閉することが可能である(例えば、熱、接着剤、超音波溶接、または他の手段によって)。膜15は、例えば、様々なチャネルを形成する、他の、ベース部材18の内壁に接合されることが可能あるか、または、カセット24がサイクラ14内に適切に取り付けられる際に、壁およびベース部材18の他の特徴部と密着するように押し付けられることが可能である。このように、膜15および16の両方は、ベース部材18の周辺リムを密閉することが可能であり、例えば、使用後にサイクラ14から取り外される際に、カセット24からの流体の漏れ防止を補助するが、ベース部材18の他の部分には、接触せずに位置するように配置されることが可能である。一旦サイクラ14に配置されると、カセット24は、対向するガスケットまたは他の部材間で絞られることが可能であり、その結果、膜15および16は、その周囲の内側の領域でベース部材18との密着するように押し付けられ、それによってチャネル、バルブ・ポートなどを互いから適切に密閉する。
【0104】
膜15および16に対する他の構成も可能である。例えば、膜16は、本体18に接合されるかまたは一体に作られた材料からなる剛性があるシートによって形成されることが可能である。このように、膜16は、必ずしも可撓性部材である必要がないか、または、必ずしも可撓性部材を備える必要はない。同様に、膜15は、その表面全体に亘って可撓である必要はないが、これに代えて、一又は複数の可撓性のある部分を備えて圧送および/またはバルブ動作を許容し、一又は複数の剛性のがある部分を備えて、例えば、カセット24の流体経路を閉じることが可能である。カセット24は、膜16または膜15を備えず、例えば、サイクラ14が、適切な部材を備えてカセット、制御バルブ、およびポンプ機能などの経路を密閉することも可能である。
【0105】
本発明の別の態様によれば、膜15は、ベース18の対応するポンプ室181の凹部の形状に緊密に倣う形状を有するように形成されたポンプ室部分151(ポンプ膜)を備えることが可能である。例えば、膜15は、ベース部材18のポンプ室凹部に倣う、熱成形された(または形成された)ドーム状の形状151を持った平坦部材として概して形成されることが可能である。予め形成されたポンプ室部分151のドーム状の形状は、例えば
、
図5に示される種類の真空成形型に亘って膜を加熱および形成することによって構築されることが可能である。
図5に示されるように、真空は、金型の壁に沿った多数の孔を通じて適用されることが可能である。これに代えて、金型の壁は、多孔性の気体浸透材料から構築されることができ、それは成型された膜のより均一に滑らかな表面をもたらすことが可能である。1例では、成型された膜シート15は、真空形態金型に取り付けられたままばり取りされる。次に、真空形態金型は、カセット本体18に対してばり取りされた膜シート15を押し付けて、それらを一緒に結合させる。1実施態様において、膜シート15、16はカセット本体18に熱溶着される。このように、膜15がポンプ室181に最大限に移動され、(潜在的に)スペーサ要素50と接触するように移動されるとき(例えば、ポンプ室181から流体を圧送する場合を
図4において実線で示すように)、および、膜15がポンプ室181から最大に引き戻されるとき(例えば、ポンプ室181に流体を引き込む場合を
図4における破線で示すように)の両方の場合に、膜15の伸張を必要とせずに(または膜15の少なくとも最小限の伸張)、膜15は、ポンプ作用を達成すべくポンプ室181に対して移動することが可能である。膜15の伸張の回避は、圧力サージ、またはシートの伸張による流体供給圧力の他の変化を防止するのを補助する、および/または、ポンプ動作中の圧力変動を最小限にしようとする際のポンプの制御を単純化するのを補助することが可能である。より詳細に下に記述されるように、膜15の故障の可能性の減少(例えば、伸張中の膜15に付与される応力がもたらす膜15の裂けによる)、および/または、ポンプ供給量測定値の正確さの改善、を含む他の利点も見受けられる。一実施形態では、ポンプ室部分151は、ポンプ室181の約85〜110%であるサイズを有するように形成される(例えば、容積を規定する)ことが可能であり、例えば、ポンプ室部分151がポンプ室容積の約100%である容積を規定する場合、ポンプ室部分151は、ポンプ室181内に位置し、停止して応力のないまま、スペーサ50に接することが可能である。
【0106】
ポンプ室との間での液体の充填および供給行程を生じさせるために使用される圧力のより優れた制御の提供は、幾つかの利点を有することがある。例えば、導出サイクル中にポンプ室が患者の腹膜腔から流体を取り出すときには、可能な限り最小の負圧を加えることが望ましい場合がある。患者は、充填行程中にポンプによって加えられる負圧のために、部分的に治療の導出サイクル中に不快感を受けることがある。予め形成された膜が充填行程中に加えられる負圧に提供することができる付加的な制御は、患者の不快感を軽減するのを補助することが可能である。
【0107】
多数の他の利点が、カセット・ポンプ室の輪郭に予め形成されたポンプ膜の使用によって実現されることが可能である。例えば、ポンプ室を通じた液体の流量は、一定の圧力または真空を圧送行程の全体に亘って加えることができるので、より均一になることができ、それは、ひいては液体の加熱を制限する処理を単純化することが可能である。さらに、カセット・ポンプ内の温度変化は、膜の変位の動力学、および、ポンプ室内の測定圧の正確さに対して、より小さな影響を与えることがある。加えて、流体ライン内の圧力スパイクを最小限にすることができ、膜の制御(例えば、空気圧)側の圧力変換器によって測定された圧力を、膜のポンプ室側の液体の実際の圧力と相関させることが、より単純になる場合がある。これは、ひいては、治療に先立って患者および流体源バッグのより正確な頭高測定を可能にし、ポンプ室内の空気を検出する感度を改善し、容積測定の正確さを改善することが可能である。さらに、膜を伸張させる必要性の排除は、より大きな容積を有したポンプ室の構築および使用を可能にすることがある。
【0108】
この実施形態では、カセット24は、ベース部材18に形成される一対のポンプ室181を備えている(1つのポンプ室または2つを超えるポンプ室も可能である)。本発明の態様によれば、ポンプ室181の内壁は、互いから離隔され、ポンプ室18の内壁から延びたスペーサ要素50を備えており、膜15の部分がポンプ室181の内壁と接触するの
を防止するのを補助する(
図4において右側ポンプ室181に示されるように、内壁は、側部181aおよび底部181bによって規定される。スペーサ50は、この実施形態では底部181bから上方に延びるが、側部181aから延びることができるかまたは他の方法で形成されることができる)。ポンプ室の内壁との膜15の接触を防止することによって、スペーサ要素50は、デッドスペース(またはトラップ容積)を提供することが可能であり、それは、ポンプ室181内の空気または他の気体をトラップして、幾つかの状況でポンプ室181から気体が圧送されるのを禁じるのを補助することが可能である。他の場合では、スペーサ50は、ポンプ室181の出口への気体の移動を補助することが可能であり、その結果、気体は、例えば準備中に、ポンプ室181から除去される。また、スペーサ50は、膜15がスペーサ要素50と接触するように押し付けられても、膜15がポンプ室内壁に付着するのを防止する、および/または、流れがポンプ室181を通じて継続することを可能にするのを補助することがある。加えて、もしシートが非均一にポンプ室内壁に接触した場合には、スペーサ50は、ポンプ室の出口ポート(開口187および/または191)の早期遮蔽を防止するのを補助する。スペーサ50の構成および/または機能に関するさらなる詳細は、米国特許第6,302,653号明細書および第6,382,923号明細書において提供されており、それらの両方は参照によってここに援用される。
【0109】
この実施形態では、スペーサ要素50は、或る種の「競技場座席」配置で配置され、その結果、スペーサ要素50は、同心楕円形パターンで配置され、スペーサ要素50の端部は、ポンプ室181内心から距離が離れるほど内壁の底部181bからの高さを増加させ、それによって、半楕円のドーム形状領域を形成する(
図4において破線によって示される)。膜15のポンプ室部分151によってスイープされるように意図したドーム状領域を規定する半楕円形領域をスペーサ要素50の端部が形成するようにスペーサ要素50を配置することは、ポンプ室181の意図した行程容積の如何なる減少も最小限にする所望の容積のデッドスペースを可能にすることがある。
図3(および
図6)で見ることができるように、スペーサ要素50が配置される「競技場座席」配置は、楕円パターンの「通路」または破断部50aを備えることが可能である。破断部(または通路)50aは、流体がポンプ室181から送られる際に、スペーサ要素50間の列(空隙またはデッドスペース)50bの全体に亘って等しい気体レベルを維持するように補助する。例えば、スペーサ要素50が、破断部(または通路)50a、または、液体および空気がスペーサ要素50間を流れることを可能にする他の手段なしに、
図6に示される競技場座席配置で配置された場合、膜15は、ポンプ室181の最も外側の周囲に位置したスペーサ要素50上で底に達することが可能であり、この最も外側のスペーサ要素50とポンプ室壁の側部181aとの間の空隙に存在する気体または液体をすべてトラップする。同様に、膜15が任意の2つの隣接したスペーサ要素50上で底に達した場合、要素50間の空隙の如何なる気体および液体もトラップされるようになることが可能である。そのような構成では、圧送行程の終端で、ポンプ室181内心にある空気または他の気体を送ることができる一方で、液体は、外側の列に残る。スペーサ要素50間の空隙の間に流体連通の破断部(または通路)50aまたは他の手段を提供することは、圧送行程中に空隙全体に亘る等しい気体レベルを維持するのを補助し、その結果、空気または他の気体は、液体の体積が実質的に伝えられていなければ、ポンプ室181から出ることを禁じられることが可能である。
【0110】
或る実施形態では、スペーサ要素50および/または膜15は、膜15がスペーサ50に接触するように押し付けられたときに、一般には個々のスペーサ50を包まないかまたはその周囲で変形しないか、または、スペーサ50間の空隙に著しく延びるように配置されることが可能である。そのような構成は、一又は複数の個々のスペーサ要素50を包むかまたはその周囲で変形することによって生じる膜15の如何なる伸張または損傷も減少させることが可能である。例えば、この実施形態では、スペーサ50間の空隙のサイズをその幅がスペーサ50の幅と略等しく作ることが有利であることも分かった。この特徴部
は、膜15がポンプ動作中にスペーサ50と接触するように押し付けられる際に、膜15の変形(例えば、スペーサ50間の空隙への膜のたるみ)を防止するのを補助するように示されている。
【0111】
本発明の別の態様によれば、ポンプ室181の内壁は、膜15のポンプ室部分151によってスイープされるように意図された空間(例えば、半楕円形またはドーム状の空間)よりも大きい凹部を規定することが可能である。そのような実例では、一又は複数のスペーサ要素50は、ドーム状領域に延びるのではなく、膜部分151によってスイープされるように意図したそのドーム状領域よりも下に配置されることが可能である。ある実例では、スペーサ要素50の端部は、膜15によってスイープされるように意図したドーム状領域の周囲を規定することが可能である。膜部分151によってスイープされるように意図されたドーム状領域の周囲の外側にまたはこの周囲に隣接してスペーサ要素50を配置することは、多数の利点を有することがある。例えば、一又は複数のスペーサ要素50を、可撓膜によってスイープされるように意図されたドーム状領域の外側にまたは隣接してスペーサ要素があるように配置することは、上述したように、スペーサと膜との間のデッドスペースを提供しつつ、ポンプ室181の意図した行程容積の如何なる減少も最小限にする。
【0112】
ポンプ室内のスペーサ要素50(もしあれば)は、例えば
図7に示される任意の他の適切な方法で配置されることが可能であると理解されるべきである。
図7における左側ポンプ室181は、
図6のものと同様に配置されたスペーサ50を備えているが、ポンプ室181の略中心を垂直に走る破断部または通路50aは1つだけである。スペーサ50は、
図6のもの(つまり、スペーサ50の上部が、
図3および
図4に示される半楕円形を形成することがある)と同様である凹状形状を規定するように配置されることが可能であるか、または、球形、箱状形状などを形成するように他の適切な方法で配置されることが可能である。
図7における右側ポンプ室181は、スペーサ50が空隙50bを伴って垂直に配置され、空隙がスペーサ50間で垂直に配置された実施形態を示している。左側ポンプ室では、右側ポンプ室181のスペーサ50は、半楕円形、球形、箱形、または任意の他の適切に形成された凹部を規定することが可能である。しかし、スペーサ要素50が、固定の高さ、示されるようなものとは異なる空間パターンなどを有することが可能であると理解されるべきである。
【0113】
また、膜15はそれ自体、スペーサ要素、または、スペーサ要素50の代わりにもしくはこれに加えて、リブ、突起、タブ、溝、チャネルなどのような他の特徴を有することが可能である。膜15上のそのような特徴部は、膜15などの付着を防止する、および/または、ポンプ作用中に移動する際に、シートがどのように畳まれるかもしくは変形するかを制御するのを補助するなど、他の特徴を提供するのを補助することが可能である。例えば、膜15上の突起または他の特徴部は、シートが一貫して変形するのを補助して、繰り返されるサイクル中に同じ領域で折り重ならないようにすることが可能である。繰り返されるサイクルで膜15の同じ領域を折り重ねることは、膜15がその折り目領域で早期に故障することを招くことがあり、従って、膜15上の特徴部は、折り目が生じる方法および場所を調整するのを補助することが可能である。
【0114】
この例示の実施形態では、カセット24のベース部材18は、複数の制御可能なバルブ特徴部、流体経路、およびカセット24内の流体の移動を案内する他の構造を規定する。
図6は、ベース部材18のポンプ室側の平面図を示しており、それは
図3における斜視図でも見られる。
図8は、ベース部材18の後ろ側の斜視図を示しており、
図9は、ベース部材18の後ろ側の平面図を示している。ポート150,152,および154のそれぞれに対するチューブ156は、ベース部材18に形成されるそれぞれのバルブ・ウェル183と流体連通する。バルブ・ウェル183は、各バルブ・ウェル183を包囲する壁に
よって、および、ウェル183の周囲の壁との膜15の密閉係合によって、互いから流体的に分離されている。上述したように、膜15は、例えば、サイクラ14に搭載される際に、壁と接触するように押し付けられることによって、各バルブ・ウェル183の周囲の壁(およびベース部材18の他の壁)に密閉係合することが可能である。膜15がバルブ・ポート184と密閉係合するように押し付けられない場合には、バルブ・ウェル183中の流体は、それぞれのバルブ・ポート184に流入することが可能である。このように、各バルブ・ポート184は、バルブ・ポート184に関連づけられた膜15の部分を選択的に動作させることによって開閉されることができるバルブ(例えば、「ボルケーノバルブ」)を規定する。より詳細に下に記述されるように、サイクラ14は、膜15の部分の位置を選択的に制御することが可能であり、その結果、バルブ・ポート(ポート184など)は、様々な流体チャネルおよびカセット24内の他の経路を通じて流れを制御するように開閉されることが可能である。バルブ・ポート184を通じた流れは、ベース部材18の後ろ側に導かれる。ヒータバッグおよび導出(ポート150および152)に関連づけられたバルブ・ポート184については、バルブ・ポート184は、ベース部材18の後ろ側に形成された共通チャネル200に導く。バルブ・ウェル183におけるように、チャネル200は、シート16によって他のチャネルおよびカセット24の経路から分離され、チャネル200を形成するベース部材18の壁と密着する。患者ライン・ポート154に関連づけられたバルブ・ポート184については、ポート184を通じた流れは、ベース部材18の後ろ側の共通チャネル202に導かれる。
【0115】
図6に戻って、スパイク160のそれぞれは(
図6ではキャップを外して示されている)、それぞれのバルブ・ウェル185と流体連通し、それらは、壁と、ウェル185を形成する壁との膜15の密閉係合とによって互いから分離される。膜15がポート186との密閉係合にない場合には、バルブ・ウェル185中の流体は、それぞれのバルブ・ポート186に流入することが可能である(繰り返しになるが、各バルブ・ポート186上の膜15の部分の位置は、バルブ・ポート186を開閉するサイクラ14によって制御されることができる)。バルブ・ポート186を通じた流れは、ベース部材18の後ろ側に、そして共通チャネル202に導かれる。このように、本発明の一態様によれば、カセットは、共通のマニホールドまたはカセットのチャネルに接続される複数の透析液供給ライン(または透析液を提供するための材料を供給する他のライン)を有することが可能であり、各ラインは、共通のマニホールドまたはチャネルに対するラインとの間の流れを制御するための対応するバルブを有することが可能である。チャネル202中の流体は、下側ポンプバルブ・ウェル189(
図6を参照)に導く開口188を通じてポンプ室181の下側開口187に流入することが可能である。膜15のそれぞれの部分がポート190と密閉係合するように押し付けられない場合には、下側ポンプバルブ・ウェル189からの流れは、それぞれの下側ポンプバルブ・ポート190を通過することが可能である。
図9で見ることができるように、下側ポンプバルブ・ポート190は、ポンプ室181の下側開口187と連通するチャネルに導く。ポンプ室181から出る流れは、上側開口191を通過し、上側バルブ・ポート192と連通するチャネルに入ることが可能である。上側バルブ・ポート192からの流れは(膜15がポート192との密閉係合にない場合)、それぞれの上側バルブ・ウェル194に入り、そしてベース部材18の後ろ側の共通チャネル200と連通する開口193に入る。
【0116】
当然のことながら、カセット24は、ポンプ室181がポート150,152,および154のうちの何れかとの間、および/または、スパイク160のうちの何れかとの間で、流体を圧送することができるように制御されることが可能である。例えば、スパイク160のうちの1つにライン30によって接続される容器20のうちの1つによって供給される新しい透析液は、適切なスパイク160用の適切なバルブ・ポート186を開くことによって(および他のスパイク用の他のバルブ・ポート186を場合によって閉じることによって)、共通チャネル202に引き込まれることが可能である。また、下側ポンプバ
ルブ・ポート190が開き、上側ポンプバルブ・ポート192が閉じられることが可能である。次に、ポンプ室181に関連づけられた膜15の部分(つまり、ポンプ膜151)を移動することが可能であり(例えば、ベース部材18およびポンプ室内壁から遠ざける)、その結果、ポンプ室181の圧力を低下させ、それによって、流体を、選択されたスパイク160を通じて、対応するバルブ・ポート186を通じて共通チャネル202に、開口188を通じて下側ポンプバルブ・ウェル189に、(開いた)下側ポンプバルブ・ポート190を通じて、下側開口187を通じてポンプ室181に引き込む。バルブ・ポート186は、独立して動作可能であり、任意の所望のシーケンスでまたは同時に、随意に、スパイク160および関連づけられた透析液源容器20のうちの何れか1つまたはそれらの組合せを通じて流体を引き込むことを可能にする(勿論、1つのポンプ室181だけがそれ自体に流体を引き込むように動作可能である必要がある。他のポンプ室は、動作不可能とされ、適切な下側ポンプバルブ・ポート190を閉じることによって流れに対して遮蔽したままとされることが可能である)。
【0117】
ポンプ室181の流体では、下側ポンプバルブ・ポート190は閉じられ、上側ポンプバルブバルブ・ポート192は開かれることが可能である。膜15がベース部材18に向かって移動される際に、ポンプ室181の圧力が上昇することがあり、それによって、ポンプ室181内の流体を、上側開口191を通り、(開いた)上側ポンプバルブ・ポート192を通じて上側ポンプバルブ・ウェル194に、開口193を通じて共通チャネル200に送る。チャネル200中の流体は、適切なバルブ・ポート184を開くことによって、ヒータバッグ・ポート150および/または導出ポート152(および対応するヒータバッグ・ラインまたは導出ライン)に送られることが可能である。このように、例えば、容器20のうちの一又は複数における流体は、カセット24に引き込まれ、ヒータバッグ22および/またはドレインに吐出されることが可能である。
【0118】
ヒータバッグ22中の流体は(例えば、患者への導入用にヒータ・トレイ上で適切に加熱された後で)、ヒータバッグ・ポート150用のバルブ・ポート184を開き、下側ポンプバルブ・ポート190を閉じ、上側ポンプバルブ・ポート192を開くことによって、カセット24に引き込まれることが可能である。ポンプ室181に関連づけられた膜15の部分をベース部材18から遠ざけるように移動させることによって、ポンプ室181の圧力は低下し、それによって流体をヒータバッグ22からポンプ室181に流入させることが可能である。ヒータバッグ22からの加熱流体でポンプ室181を充填した状態では、上側ポンプバルブ・ポート192は閉じ、下側ポンプバルブ・ポート190は開かれることが可能である。加熱した透析液を患者に送るために、患者ポート154用のバルブ・ポート184は開かれ、スパイク160用のバルブ・ポート186は閉じられることが可能である。ポンプ室181内の膜15のベース部材18に向かう移動は、ポンプ室181の圧力を上昇させることが可能であり、流体を、下側ポンプバルブ・ポート190を通じて、開口188を通じて共通チャネル202に、患者ポート154用の(開いた)バルブ・ポート184にかつ該ポートに流す。この動作は、所望の体積の加熱した透析液を患者に送るために適切な回数繰り返されることが可能である。
【0119】
患者から導出する際には、患者ポート154用のバルブ・ポート184は開かれ、上側ポンプバルブ・ポート192は閉じられ、下側ポンプバルブ・ポート190は開かれることが可能である(スパイクバルブ・ポート186は閉じられる)。膜15は、患者ポート154からポンプ室181に流体を引き込むために動作することが可能である。次に、下側ポンプバルブ・ポート190は閉じられ、上側バルブ・ポート192は開かれ、導出ポート152用のバルブ・ポート184は開かれることが可能である。次に、ポンプ室181からの流体は、処分のために、または、導出または回収容器へのサンプリングのために導出ラインに圧送されることが可能である(これに代えて、流体は、サンプリングまたは導出の目的で一又は複数のスパイク160/ライン30にも送られることがある)。この
動作は、十分な透析液が患者から取り除かれてドレインに圧送されるまで繰り返されることが可能である。
【0120】
ヒータバッグ22は、混合容器としても作用することが可能である。個々の患者に対する特定の治療要求に依存して、透析液または異なる組成を有した他の溶液は、適切な透析液ライン30およびスパイク160を介してカセット24に接続されることが可能である。計測された量の各透析液が、カセット24を使用してヒータバッグ22に加えられ、また、マイクロプロセッサ・メモリに格納され、制御システム16によってアクセス可能な一又は複数の所定の組成に応じて混合される。これに代えて、特定の治療パラメータは、ユーザ・インタフェース144を介してユーザによって入力されることができる。制御システム16は、透析液またはスパイク160に接続された透析液容器の種類に基づいて適切な混合要求を演算するようにプログラムされることができ、次に、混合および患者への規定された混合物の供給を制御することができる。
【0121】
本発明の態様によれば、患者に導入されるかまたは患者から取り除かれる透析液にポンプによって加えられた圧力は、導出および導入動作中の圧力変動がもたらす「引っ張る」または「引く」という患者の感覚が最小限にされることが可能であるように制御される。例えば、透析液を導出する際に、吸引圧(または真空/負圧)は、導出処理の終端近傍で低下されることが可能であり、それによって透析液除去の患者感覚を最小限にする。導入動作の終端に近づく際にも同様のアプローチを使用することが可能であり、つまり、供給圧力(または正圧)が、導入の終端近傍で低下されることが可能である。患者が治療の様々なサイクル中の流体移動に多かれ少なかれ敏感なことが見つかった場合には、様々な圧力プロファイルを様々な導入および/または導出サイクルに対して使用することが可能である。例えば、患者が目覚めているときと比較して、患者が眠っているときには、比較的高い(または低い)圧力を導入および/または導出サイクル中に使用することが可能である。サイクラ14は、例えば、赤外線動作探知機を使用して患者の睡眠/覚醒状態を検出することが可能であり、患者の動作が減少した場合には眠っていると推論するか、または、血圧、脳波、または睡眠を示す他のパラメータなどの検出した変化を使用する。これに代えて、サイクラ14は、単純に患者に「眠っているか?」と「尋ねる」ことが可能であり、患者の応答(または応答なし)に基づいてシステム動作を制御することが可能である。
[患者ライン状態検出装置]
一態様では、患者ライン状態検出器は、患者への流体ライン(患者ライン34など)が患者に接続される前にいつ適切に流体を準備されたかを検出する(患者ライン状態検出器は患者ラインに関して記述されているが、本発明の態様が任意の適切なチューブ区画もしくは他の導管の存在、および/または、チューブ区画もしくは他の導管の充填状態の検出を含むと理解されるべきである。このように、本発明の態様は、チューブ状態検出器が任意の適切な導管と共に使用されることが可能であるので、患者ラインとの使用に限定されるものではない)。幾つかの実施形態では、患者ライン状態検出器は、流体ラインの患者接続端部のチューブ区画の適切な準備を検出するために使用されることができる。患者ライン34は、患者の血管、体腔、皮下、または別の器官中の留置カテーテルに接続されることが可能である。一実施形態では、患者ライン34は、腹膜透析システム10の構成要素であることが可能であり、患者の腹膜腔に透析液を送り、腹膜腔から流体を受け取る。ラインの先端部近傍のチューブ区画は、検出器のセンサ素子が位置する受け台に直立姿勢で配置されることが可能である。
図9−1Aは、患者ライン状態検出器1000の典型的な構成の前方斜視図であり、それはハウジング82の左側外部(例えば、前方ドア141の左側)に取り付けられるかまたは露出されることが可能である。患者ライン34は、好ましくは、患者に接続される前に準備されるべきである。なぜならば、そうでなければ患者に空気が送られ、合併症の危険性を高めるからである。幾つかの設定条件では、患者の腹膜透析カテーテルに接続される前に患者ライン34に1mLまでの空気が存在すること
を許容可能である。下に述べられる患者ライン状態検出器1000の典型的な構成は、一般にはこの基準を満たすかまたは超過する。なぜならば、それらの検出器が、ライン34の適切に位置したチューブ区画中の液位を検出することができ、その結果、最大でも約0.2mLの空気が準備後にライン34の先端に残存することができるからである。
【0122】
一態様では、第1構成の患者ライン状態検出器1000は、ベース部材1002を備えることが可能である。ベース部材1002に貼付けられた(または一体成型された)患者ライン状態検出器ハウジング1006もあり、その結果、検出器ハウジング1006は、ベース部材1002から外方に延びることが可能である。検出器ハウジング1006は、患者ライン34の先端部近傍のチューブ区画34aまたはそれに付随するコネクタ36が配置されることが可能であるチューブまたはコネクタ保持チャネル1012を規定する。ベース部材1002に臨む検出器ハウジング1006の部分は、実質的に空洞であり、その結果、開放キャビティ1008(
図9−3に示される)を検出器ハウジング1006の後方に生成することが可能である。開放キャビティ1008は、チューブ区画34aが配置されることが可能であるチャネル1012の隣へのセンサ素子(
図9−3に示される1026,1028,1030,および1032)の配置および位置決めを提供することが可能である。他の実施形態では、随意に、ベース部材1002から外方に延びる安定化タブ1010が存在することが可能である。安定化タブ1010は、凹状の外側形状を有することが可能であり、その結果、それは、患者ライン34が患者ライン状態検出器ハウジング1006に配置される際に、患者ライン・コネクタ36の曲率に実質的に一致することが可能である。安定化タブ1010は、コネクタ36が患者ライン34の準備中に移動するのを防止することを補助することが可能であり、それによって、準備処理の正確さおよび効率を向上させる。検出器ハウジング1006は、チューブまたはコネクタ保持チャネル1012を規定するのを一般に補助する形状を有することが可能であり、それは、同様に、チューブ区画34aからチューブ・コネクタ36への移行を許容するように変化する寸法を有することも可能である。
【0123】
この例示の実施形態では、チャネル1012は、患者ライン・コネクタ36の形状に実質的に倣うことが可能である。その結果、チャネル1012は、それがチャネル1012中に配置されるときに、コネクタ36の一部を包含するように「U字形」であることが可能である。チャネル1012は、2つの個別の特徴部から構成されることが可能である(チューブ部分1014および受け台1016)。別の態様では、チューブ部分1014は、受け台1016よりも下に配置されることが可能である。加えて、受け台1016は、一対の側壁1018および後壁1020によって形成されることが可能である。側壁1018は両方とも、形状が僅かに凸状であることが可能であるが、後壁1020は、概して水平であるか、または、コネクタ36の隣接部分の形状と概して一致する輪郭を有することが可能である。側壁1018の概して凸状の形状は、受け台1016に位置したときに患者ライン・コネクタ36を所定位置にロックするのを補助する。
【0124】
患者ライン状態検出器1000の第1構成に対する例示の実施形態では、患者ライン・コネクタ36の領域36aは、チャネル1012の対向する後壁1020に対して固定して配置することができる概して平面の表面を有することが可能である。加えて、コネクタ36のこの領域36aは、反対側の凹部37を有することが可能であり、それは、コネクタ36が検出器ハウジング1006内に配置されるときに、チャネル1012の対向する側壁1018に隣接して配置されることができる。凹部37は、コネクタ36の側面に位置する隆起要素37aによって規定されることができる。これらの凹部37の一方が、
図9−1において部分的に見える。2つの側壁1018は、凹部37に係合するような概して噛み合う形状(例えば、凸状の形状など)を有することが可能であり、受け台1016内の所定位置にコネクタ36をロックするのを補助する。これは、患者ライン34の準備中に検出器ハウジング1006からコネクタ36およびチューブ区画34aが不注意に取
り外されるのを防止するのを補助する。コネクタ36の隆起要素37aが十分に可撓性のある材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、または他の同様の高分子ベースの材料など)で作られていれば、コネクタ36に対する引張力の閾値は、コネクタ36およびチューブ区画34aを検出器ハウジング1006から係合解除することができるであろう。
【0125】
別の態様では、キャビティ1012のチューブ部分1014は、チューブ区画34aがコネクタ36に取り付けられる直前の時点でチューブ区画34aの大部分を包囲することが可能である。チューブ部分1014は、3つの構造(2つの側壁1018および後壁1020)を使用して、チューブ区画34aの大部分を収容することが可能である。一実施形態では、2つの側壁1018および後壁1020は、透明または十分な半透明(例えば、プレキシガラスから構築される)であることが可能あり、それによって、複数のLED(例えば、
図9−3におけるLED1028,1030,および1032など)からの光が著しく遮蔽または拡散されずに壁を通じて導かれることを可能にする。また、光学センサ1026(
図9−2に示される)は、壁1018のうちの1つに沿って配置されることが可能であり、LEDによって放射される光を検出することができる。例示の実施形態では、透明または半透明のプラスチック製インサート1019は、LEDがハウジング内に配置された領域で主検出器ハウジング1006内にパチン止めされるように構築されることが可能である。
【0126】
図9−2は、患者ライン状態検出器プリント基板1022に表面実装されたLED1028,1030,および1032、ならびに光学センサ1026を備えたレイアウト斜視図を示している。
図9−3は、検出器回路基板1022に取り付けられたLED1028,1030,および1032、ならびに光学センサ1026の平面図を示し、検出器回路基板1022は、検出器ハウジング1006の後壁1020および側壁1018に隣接して配置されることができる。
図9−4は、検出アセンブリ1000の分解斜視図であり、ハウジング1006に対するプリント基板1022および半透明または透明プラスチック製インサート1019の相対位置を示している。
【0127】
さらに
図9−1Bの例示の実施形態を参照して、検出器回路基板1022は、支持構造1004および内側開放キャビティ1008に配置されることが可能であり、それは、ベース部材1002から外方に延びる検出器ハウジング1006から形成される。ベース部材1002および支持構造1004は、互いに取り付けられることが可能であるか、または、一体成型されることが可能であり、その結果、ベース部材1002は、支持構造1004に概して垂直である。この配向は、一般に、チャネル1012内に固定されたときに、検出器回路基板1022の平面がチューブ区画34aの長軸に概して垂直となることを許容する。検出器回路基板1022は、開放キャビティ1008の断面形状に概して倣うことが可能であり、それは、後壁1020および側壁1018(
図9−1A)によって形成されたチャネル1012の断面形状に概して一致する切出し部1024(
図9−2および
図9−3)を備えることも可能である。次に、検出器回路基板1022は、開放キャビティ1008内に配置されることが可能であり、切出し部1024は、検出器回路基板1022のチューブ区画34aまたはコネクタ36との適切な位置決めを確実にするために、検出器ハウジング1006の後壁1020および側壁1018に略隣接している。
【0128】
検出器回路基板1022は、該回路基板1022に取り付けられることが可能である複数のLEDおよび少なくとも1つの光学センサを備えることが可能であり、一実施形態では、LEDおよび光学センサは、回路基板1022に表面実装されることが可能である。一態様では、検出器回路基板1022は、第1LED1028、第2LED1030、第3LED1032、および光学センサ1026を備えることが可能である。第1LED1028および第2LED1030は、チャネル1012の同じ側壁1018aを通じて光
を導くように配置されることが可能である。第1LED1028および第2LED1030によって放射された光は、概して平行方向に、それらの光が最も近い側壁1018aに概して垂直に導かれることが可能である。光学センサ1026は、チャネル1012の反対の側壁1018bに沿って配置されることが可能である。さらに、第3LED1032は、チャネル1012の後壁1020に沿って配置されることが可能である。この例示の実施形態では、LEDおよび光学センサ1026のそのような構成は、患者ライン34の準備中に、患者ライン状態検出器1000が3つの異なる状態を検出することを可能にする(チューブ区画34aまたはコネクタ36が略完全に流体で充填されている(準備済み状態)、チューブ区画34aまたはコネクタ36が不完全に充填されている(未準備状態)、またはチューブ区画34aおよび/またはコネクタ36がチャネル1012から不在である(ライン不在状態))。
【0129】
例えば腹膜透析システム10などの腹膜透析システムで使用される際には、この方法で検出器回路基板1022を構成することは、適切な制御信号がPDサイクラ・コントローラ・システム16に送られることを可能にする。次に、コントローラ・システム16は、ユーザ・インタフェース144を介して、腹膜透析カテーテルに接続する前に、患者ライン状態検出器1000中のライン34の先端を配置するようにユーザに報知することが可能である。次に、コントローラは、患者ライン状態検出器1000内のチューブ区画34aの配置を監視することが可能である。次に、コントローラは、ライン34の準備を指図し、一旦ライン34が準備されると、準備の終了を指図し、次に、ユーザに、患者ライン状態検出器1000からライン34の先端を係合解除させ、それをユーザの腹膜透析カテーテルに接続するように指示することに進むことが可能である。
【0130】
LED1028,1030,および1032ならびに光学センサ1026を回路基板1022に表面実装することは、本装置の製造工程を単純化することができ、患者ライン状態検出器1000および回路基板1022が比較的小さい空間を占有することを可能にすることができ、LEDまたは光学センサの互いに対するまたはチャネル1012に対する移動から生じることがある誤差を排除するのを補助することができる。センサ構成要素の表面実装なしでは、構成要素の位置ずれが、本装置の組立中またはその使用中に生じることがある。
【0131】
一態様では、LED1032の光軸(または中央光軸)は、光学センサ1026の光軸に対する斜角を形成することが可能である。例示の実施形態では、第1LED1028、第2LED1030、および光学センサ1026の光軸はそれぞれ、互いにおよびチャネル1012の後壁1020に概して平行である。このように、LEDから光学センサ1026に向かって導かれた光の量は、(a)チャネル1012内の半透明または透明の導管の存在または不在、および/または、(b)導管(例えば、チューブ区画34aであることが可能である)内の液体の存在に依存して変化することがある。好ましくは、LED1032は、チャネル1012内の半透明または透明のチューブ区画34aの存在によって屈折されるLED1032によって放射された光のうちの幾つかのために光学センサ1026から最も遠い側壁(例えば、1018a)の近傍に配置されることが可能である。光学センサ1026から離れるまたはこのセンサに向かう屈折の程度は、チューブ区画34aにおける流体の存在または不在に依存することがある。
【0132】
様々な実施形態では、光学センサ1026に対するLED1032の斜角は、チャネル1012に半透明または透明の導管を備えた、液体の存在または不在を判断するのためのよりロバストなシステムを生成する。LED1032は、その光軸が光学センサ1026の光軸に対して91°〜179°の範囲の任意の角度を形成することができるように配置されることが可能である。好ましくは、その角度は、光学センサの光軸に対して約95°〜約135°の範囲内に設定されることが可能である。より好ましくは、LED1032
は、光学センサ1026の光軸に対して約115°±5°の光軸を有するように設定されることが可能である。
図9−3に示される例示の実施形態では、光学センサ1026の光軸に対するLED1032の光軸の角度θは、約115°±5°に設定された(この特定の実施形態における光学センサ1026の光軸は、後壁1020に概ね平行であり、側壁1018bに概ね垂直である)。光学センサ1026の光軸に対してLED1032の角度付けをすることの利点は、約115°の角度に配向されたLED1032と、これに対する、光学センサ1026の光軸に垂直または平行に向けられた光軸を持ったLEDとを使用して、流体充填チューブ区画(ウェット・チューブ)を空気充填チューブ区画(ドライ・チューブ)から識別する際の光学センサ1026の性能を比較する一連の試験で確認された。その結果は、角度付きLEDベースのシステムがチューブ区画34a中の液体の存在または不在を特定際によりロバストであったことを示した。角度付きLED1032を使用して光学センサの信号強度閾値を選択することが可能であり、この閾値よりも上で、空のチューブ区画34aが安定して検出されることが可能である。また、それよりも下で、液体で充填されたチューブ区画34aを安定して検出することが可能である、光学センサ信号強度閾値を選択することも可能である。
【0133】
図9−12は、液体が充填されたチューブ区画34a(準備済み状態)および空のチューブ区画34a(未準備状態)を特定する患者ライン状態検出器1000の能力を実証する試験結果のグラフを示している。その結果は、光学センサ1026の光軸に対して約115°の角度で配向されたLED1032(第3LED)と、光学センサ1026の光軸に概ね平行に配向されたLED1030(第2LED)とに対して記録された。
図9〜
図12でプロットされた結果は、患者ライン状態検出器1000が準備済み状態と未準備状態とを安定して区別することができることを実証している。LED1030から受けた光に関連づけられた相対信号強度が約0.4以上であった場合には、LED1032から受けた光信号だけを使用して、準備済み状態対未準備状態に対して上側信号検出閾値1027および下側信号検出閾値1029を決定することが可能である。上側閾値1027は、未準備状態を特定するために使用されることができ、下側閾値1029は、準備済み状態を特定するために使用されることができる。上側閾値1027より上に位置したデータ点は、空のチューブ区画34a(未準備状態)に関連づけられ、下側閾値1029より下に位置したデータ点は、液体で充填されたチューブ区画34a(準備済み状態)に関連づけられている。これら2つの閾値間の比較的狭い領域1031は、チューブ区画34aの準備状態の評価が不確定であることがある、LED1032から受けた光に関連づけられた相対信号強度の範囲を規定する。コントローラ(例えば、制御システム16など)は、LED1032から受けた光に関連づけられた信号強度がこの不確定範囲内にある場合は常にユーザに適切なメッセージを送るようにプログラムされることが可能である。例えば、ユーザは、チューブ区画34aおよび/またはコネクタ36が患者ライン状態検出器1000に適切に取り付けられているか否かを評価するように指示されることが可能である。腹膜透析システムとの関連では、光学センサ1026が空のチューブ区画34aに対応した信号を生成する場合、コントローラは、透析液で患者ライン34を準備し続けるようにサイクラに命令することができる。液体で充填されたチューブ区画34aに対応した信号は、コントローラによって使用され、さらなる準備を止めさせ、流体ライン34が透析カテーテルに接続される準備ができていることをユーザに指示することができる。
【0134】
或る実施形態では、サイクラ・コントローラは、準備処理の開始時にLEDのうちの1つから受容した信号を連続的に監視することが可能である。受容した信号の変化の検出に際して、コントローラは、さらなる流体圧送を停止して、LEDのすべてを用いて十分な測定を行うことが可能である。受容した信号が、十分に、湿潤チューブを示す範囲内にある場合、さらなる準備は停止させることが可能である。しかし、受容された信号が不定領域1031内、または「ドライ状態」領域内にある場合、サイクラは、圧送カセットによる患者ラインへの流体の一連の小さな増加するパルスを命令することが可能であり、流体
のそれぞれのパルス後にLED信号強度は反復して読み取られる。次に、センサのレベルにおいて流体導入ラインを示す読み取りが達成されるや否や、準備を停止されることが可能である。流体の増加するパルスは、蓄圧器をポンプ作動または制御室に接続するバルブの短時間パルスを命令することによって達成されることが可能である。これに代えて、コントローラは、連続的圧力をポンプ作動または制御室にかけることを命令することが可能であり、ポンプの出口バルブが短時間、かつ一連の流体パルスを生成する近くで開くように命令することが可能である。
【0135】
図9−13は、その光軸が光学センサ1026の光軸に略垂直なLED(LEDd)と比較したときの、角度付きLED1032(LEDc)の優位性を実証する試験結果のグラフを示している。この場合、LEDcからの光に呼応して光学センサ1026によって生成された相対信号強度が、LEDdからの光に関連づけられた信号強度に対してプロットされた。液体で充填された(準備済み)および空の(未準備)チューブ区画34a間の或る分離は、約0.015のLEDdの相対信号強度で明白であったが、この閾値に基づいた「準備済み」データ点から特定することができない「未準備」データ点1035が実質的な個数残った。一方、0.028〜0.03のLEDcからの光に関連づけられた相対信号強度1033は、「準備済み」チューブ区画34a(準備済み状態)および「未準備」チューブ区画34a(未準備状態)を有効に特定することができる。このように、角度付きLED(1032)は、直角に配向されたLEDよりも信頼できるデータを生成することができる。
【0136】
別の実施形態では、患者ライン状態検出器1000は、チューブ区画34aがチャネル1012中にあるか否かをさらに判断することができる。一態様では、第1LED1028および第2LED1030は、互いの隣に配置されることが可能である。1つのLED(例えば、LED1028)は、その光軸がチャネル1012中の適切に位置した半透明または透明の導管またはチューブ区画34aの略中心を通過するように配置されることが可能である。第2LED(例えば、LED1030)は、その光軸がチャネル1012中の導管またはチューブ区画34aに対して僅かに中心から外れるように配置されることが可能である。チャネル1012の一側の中心の/中心から逸れたそのようなLED対は、光学センサ1026がチャネル1012の反対側にある状態で、液体導管またはチューブ区画34aがチャネル1012内に存在するかまたは不在であるか否かを判断する信頼性を増加させることが示されている。チューブ区画34aが交互に不在、存在するが不適切に位置した、または、存在してチャネル1012内に適切に位置した一連の試験では、信号測定値は、第1LEDおよび第2LED1030から光学センサ1026によって得られた。各LEDから受けた信号は、互いに対してプロットされ、その結果が
図9−14に示されている。
【0137】
図9−14に示されるように、チューブ区画34aがチャネル1012(領域1039)に不在であった大部分の場合で、LEDaに起因する光学センサ1026によって受信した信号強度(LEDa受信強度)は、LEDaがチャネル1012中の任意のチューブが既知の不在状態で点灯された較正ステップ中にLEDaから受信した信号強度とは著しく異ならないと分かった。同様に、LEDbに関連づけられた信号強度(LEDb受信強度)は、LEDbがチャネル1012中の任意のチューブが既知の不在状態で点灯された較正ステップ中のLEDbとは著しく異ならないと分かった。患者ライン状態検出器1000は、LEDaのその較正値に対する比率およびLEDbのその較正値に対する比率がそれぞれ約1±20%である場合、チャネル1012中にチューブが存在しないことを安定して判断することができる。好ましい実施形態では、閾値比率は、1±15%に設定されることができる。患者ライン状態検出器1000が腹膜透析サイクラと共に使用される実施形態では、
図9−14の領域1039内のLEDaおよびLEDbの値は、例えば、チャネル1012からのチューブ区画34aの不在を示すために使用されることができる
。サイクラ・コントローラは、さらなるポンプ作用を休止し、患者ライン状態検出器1000内の患者ライン34の先端を適切に位置決めする必要性についてユーザ・インタフェース144を介してユーザに報知するようにプログラムされることができる。
【0138】
上述した3つのLEDおよび光学センサ1026の構成および位置決めは、広範囲の半透明性を有した半透明または透明の流体導管(例えば、チューブ区画34a)を使用して必要なデータを生成することができる。補足試験では、患者ライン状態検出器1000は、著しく異なる半透明性の程度を有したチューブのサンプルを使用して、流体導管中の空気から液体を区別し、流体導管の存在または不在を区別するための信頼できるデータを提供することができることが分かった。それは、使用されるPVCチューブが未滅菌または減菌済み(例えば、EtOx(エチレンオキサイド)で減菌された)か否かに拘わらず信頼できるデータを提供することもできた。
【0139】
LEDから光学センサ1026によって得られた測定値は、チューブ区画34aの状態を検出するために患者ライン状態検出器アルゴリズムへの入力として使用されることができる。充填された、空の、または不在のチューブ区画34aの検出以外に、アルゴリズムの結果は不確定であり、患者ライン状態検出器1000内のチューブ区画34aの移動または不適切な位置決め、または、場合によって患者ライン状態検出器1000のチャネル1012中の異物の存在を場合によっては示すことがある。変化物の製造は、LEDからの出力および光学センサ1026の感度を様々なアセンブリで変化させることがある。従って、患者ライン状態検出器1000の初期較正を行うことが有利な場合がある。例えば、次の手順は、LEDおよびセンサの較正値を得るために使用されることが可能である。
【0140】
(1)チューブ区画34aが患者ライン状態検出器1000に装填されていないことを確認する。
(2)光学センサ1026の4つの異なる状態について問い合わせる。
【0141】
(a)点灯されたLEDがない
(b)第1LED1028(LEDa)が点灯されている
(c)第2LED1030(LEDb)が点灯されている
(d)第3LED1032(LEDc)が点灯されている
(3)「点灯されたLEDがない」信号値を他の信号値のそれぞれから減算して、それらの環境補正値を判断し、「チューブなし」較正値としてこれらの3つの測定値を格納する。
【0142】
一旦LEDおよびセンサに対する較正値が得られると、チューブ区画34aの状態を検出することが可能である。この例示の実施形態では、患者ライン状態検出器アルゴリズムは、以下のように試験での状態検出を行う。
【0143】
(1)光学センサ1026の4つの異なる状態について問い合わせる。
(a)点灯されたLEDがない
(b)第1LED1028(LEDa)が点灯されている
(c)第2LED1030(LEDb)が点灯されている
(d)第3LED1032(LEDc)が点灯されている
(2)「点灯されたLEDがない」値を他の値のそれぞれから減算して、それらの環境補正値を判断する。
【0144】
(3)各LEDに関連づけられた試験値をそれらの対応する較正(チューブなし)値で除算することによって相対LED値を演算する。
[結果]
環境補正LEDa値が0.10未満である場合、検出器に異物がある場合があるか、または、不確定であるとの結果がユーザに報告されることがある。
【0145】
環境補正LEDaおよびLEDb値がそれらのそれぞれの格納された較正(チューブなし)値の±15%の範囲内にある場合、チューブ区画が検出器内にないとユーザに報告する。
【0146】
環境補正LEDb値がその格納された較正(チューブなし)値の約40%以上である場合には、
(a)LEDcに関連づけられた信号を確認し、
(i)LEDcに関連づけられた環境補正信号がその較正(チューブなし)値の約150%以上である場合、チューブ区画が空であるとユーザに報告する。
【0147】
(ii)LEDcに関連づけられた環境補正信号がその較正(チューブなし)値の約125%以下である場合、チューブ区画が液体で充填されているとユーザに報告する。
(iii)そうでなければ、結果は不確定であり、その測定(例えば、チューブ区画が移動中であるか、凹凸があるか、または不明瞭である場合がある)を繰り返すか、または、チューブ区画が検出器に適切に挿入されることを確実にするために確認されるべきであるとユーザに報告する。
【0148】
環境補正LEDb値がその格納された較正(チューブなし)値の約40%以下である場合、ドライ・チューブの存在を判断するためのLEDc閾値は、より大きくなることがある。一実施形態では、例えば、LEDcの空のチューブ閾値は、次の関係に従うことが経験的に見つかった([LEDcの空のチューブ閾値]=−3.75×[LEDb値]+3)。
【0149】
一旦チューブ区画34aが患者ライン状態検出器1000に搭載されたと判断されると、患者ライン状態検出器アルゴリズムは、次のことを行うことができる。
a)光学センサ1026が点灯されたLEDを持たないかを問い合わせ、これをLEDなし値として格納する。
【0150】
b)LEDcを点灯する。
c)光学センサ1026について問い合わせ、LEDなし値をLEDc値から減算し、これを初期値として格納する。
【0151】
d)圧送を開始する
e)光学センサ1026について問い合わせ、LEDなし値を次のLEDc値から減算する。
【0152】
f)この値が初期値の75%未満である場合、チューブ区画34aが液体で充填されると断定し、圧送を止め、上記の手順を使用して検出器状態を確認し、示された際にユーザに準備が完全したことを報告する。そうでなければ、問合せ、演算、および比較を繰り返し続ける。一実施形態では、システム・コントローラは、例えば0.005〜0.01秒毎などの望まれるような頻繁で問合せ・プロトコルを行うようにプログラムされることができる。一実施形態では、問合せ・サイクル全体は、都合良く0.5秒毎に行うことができる。
【0153】
図9−12Aは、6つのサイクラに対する試料較正処理の結果を示している。乾燥チューブを湿潤チューブから区別する信号強度範囲(「湿潤/乾燥閾値」範囲)は、様々なサイクラの間で変動することを注記する。(これらの範囲の変動は、様々な構成要素の製造
、組立ておよび位置決めの僅かな変動によるものであることがある)。それにより、較正では、それぞれのサイクラには、湿潤チューブで発生したデータポイントから乾燥チューブで発生したデータポイントを最適に分離する湿潤/乾燥閾値信号強度範囲が割り当てられることが可能である。
【0154】
図9−5は、患者ライン状態検出器1000の第2構成の斜視図を示している。2つ以上の異なる患者ライン状態検出器構成が、様々な種類の患者ライン・コネクタを提供するのに必要なことがある。この例示の実施形態では、第2構成の患者ライン状態検出器1000は、第1構成の患者ライン状態検出器1000と殆ど同じ構成要素を備えることが可能である。しかし、異なる種類のコネクタを提供するために、第2構成は、第1構成の患者ライン状態検出器1000で見受けられる安定化タブ1010ではなく、ハウジング1006の上方に隆起要素1036を備えることが可能である。隆起要素1036は、一般に、標準的な患者ライン・コネクタ・キャップまたはコネクタ・フランジの形状に倣うことが可能である。
【0155】
本発明の態様によれば、検出器ハウジング1006は、チューブ部分1014を備えないことがある。従って、開放キャビティ1008は、LEDおよび光学センサがチューブの区画ではなく半透明または透明の患者ライン・コネクタ36の隣に配置されるような検出器回路基板1022の配置を可能にするように、配置されることが可能である。従って、チャネル1012は、コネクタ36を通じたLED光の透過を提供するために異なった形状とされることが可能である。
[透析液ラインオーガナイザ]
図9−6、
図9−7、および
図9−8は、それぞれ、未搭載のオーガナイザ1038の前方斜視図、未搭載のオーガナイザ1038の後方斜視図、および搭載済みのオーガナイザ1038の斜視図を示している。この実施形態では、オーガナイザ1038は、適度に可撓性のある材料(例えばPAXON AL55−003 HDPE樹脂など)から実質的に形成されることが可能である。オーガナイザ1038をこの材料または別の比較的可撓性のある高分子材料から形成することは、透析液ラインまたは透析液ライン・コネクタを着脱する際のオーガナイザの1038の耐久性を向上させる。
【0156】
オーガナイザ1038は、サイクラ・ハウジング82の外壁に都合良く設置されるかまたは取り付けられることが可能である。オーガナイザ1038は、チューブ・ホルダ区画1040、ベース1042、およびタブ1044を備えることが可能である。チューブ・ホルダ区画1040、ベース1042、およびタブ1044はすべて、可撓性をもって接続されることが可能であり、同じHDPEベースの材料から実質的に形成されることが可能である。チューブ・ホルダ区画1040は、概して長方形の形状を有することが可能であり、概して水平な上縁部と、外方に僅かに湾曲されることがある下縁部とを備えることが可能である。チューブ・ホルダ区画1040は、チューブ・ホルダ区画1040の下縁部に沿って水平に延びた一連の凹状区画1046を備えることが可能である。凹状区画1046のそれぞれは、一連の支持柱1048によって分離されることが可能であり、それは区画1046の形状およびサイズを規定することもある。チューブ・ホルダ区画1040は、チューブ・ホルダ区画1040の上縁部に沿って水平に延びた隆起領域をさらに備えることが可能である。隆起領域は、複数のスロット1050を備えることが可能である。スロット1050は、垂直配向に規定されることがあり、チューブ・ホルダ区画1040の上縁部から凹状区画1046の上部に延びることが可能である。スロット1050は、導出ライン28、透析液ライン30、または患者ライン34の形状に倣うように、概して筒状の形状を有することが可能である。スロット1050の深さは、スロット1050の開口がスロット1050の内部領域よりも狭くなるようになっている。従って、一旦ラインがスロット1050に入れられると、それは所定位置にロックまたはスナップ嵌合される。次に、ラインは、スロット1050から取り外されるように所定の最小力を必要と
することがある。これは、ラインがオーガナイザ1050から不注意に取り外されないことを保証する。
【0157】
一態様では、タブ1044は、チューブ・ホルダ区画1040の上縁部に可撓性をもって接続されることが可能である。タブ1044は、概して長方形の形状を有することが可能である。別の実施形態では、タブ1044は、2つの僅かに大きい半径のコーナ部をさらに備えることが可能である。タブ1044は、2つの垂直に延びた支持柱1048をさらに備えることが可能である。支持柱1048は、チューブ・ホルダ区画1040の上縁部に接続されることが可能であり、タブ1044内に上方に延びることが可能である。代替の実施形態では、支持柱1048の長さおよび個数は、タブ1044の所望の可撓性の程度に依存して変化することがある。別の態様では、タブ1044は、リブ付き領域1052を備えることが可能である。タブ1044およびリブ付き領域1052の目的は、ユーザがオーガナイザ1038を容易に理解することを可能にすることであり、その結果、ユーザは、容易に透析液ライン30を設置するか、輸送するか、オーガナイザ1038から取り外すことができる。また、タブ1044は、ラインを取外し、オーガナイザ1038に装填する際の付加的な支持領域を提供する。
【0158】
別の態様では、ベース1042は、チューブ・ホルダ区画1040の下縁部に可撓性をもって接続されることが可能である。ベース1042は、概して長方形の形状を有することが可能である。別の実施形態では、ベース1042は、2つの僅かに大きい半径のコーナ部をさらに備えることが可能である。ベース1042は、細長い凹状区画1046を備えることが可能であり、それは、凹状区画1046を包囲する支持リング1054によって規定されることが可能である。支持柱1050、支持リング1054、および隆起領域はすべて、オーガナイザ1038の後部に沿った一連の空隙1056を生成することが可能である(例えば、
図9−7に示されている)。
【0159】
図9−9および
図9−10は、それぞれ、オーガナイザ・クリップ1058の斜視図およびオーガナイザ・クリップ・レシーバ1060の斜視図を示す。これらの例示の実施形態では、クリップ1058は、例えば、80ショアAデュロメータのウレタンなどの比較的高いデュロメータのポリウレタン・エラストマから作られることが可能である。代替の実施形態では、クリップ1058は、クリップ1058内に配置されたときにオーガナイザ1038がベース1042に沿って屈曲して回転することを可能にする、任意の種類の可撓で耐久性がある材料から作られることが可能である。クリップ1058は「U字形」であることが可能であり、前部よりも僅かに高く延びた後方部分を備えることが可能である。加えて、クリップ1058の前部分の上縁部に沿って延びたリップ部1062が存在することが可能である。リップ部1062は、クリップ1058のキャビティ内に僅かに延びている。クリップ1058の後方部分は、クリップ1058の後方部分に接続され(または後方部分から形成され)、後方部分から遠ざかるように延びた複数のエラストマ製ペグ1064をさらに備えることが可能である。ペグ1064は、筒状部1066および円錐部1068の両方を備えることが可能である。筒状部1066は、クリップ1058の後方部分に接続することがあり、円錐部1068は、筒状部1066の開放端に取り付けられることが可能である。ペグ1064は、クリップ1058がオーガナイザ・クリップ・レシーバ1060に恒久的に接続されることを、オーガナイザ・クリップ・レシーバ1060の複数の孔1070にペグ1064を係合させることによって可能にする。
【0160】
オーガナイザ・クリップ・レシーバ1060は、複数の面取りされたタブ1072を備えることが可能である。面取りされたタブ1072は、ペグ1064がオーガナイザ・クリップ・レシーバ1060に係合する際に、クリップ1058の後方部分の対応するスロットと噛み合うことが可能である。一旦面取りされたタブ1072がスロットに係合すると、それらはクリップ1058の後方部分を通じて延び、クリップ1058に配置された
ときにオーガナイザ1038を所定位置に保持するためにロック機構として作用することができる。オーガナイザ1038がクリップ1058内に配置されるときに、面取り部1072は、隆起支持リング1054によって生成された、ベース1042の後部の空隙1056に嵌合する。
図9−7を再び参照して、また、本発明の別の態様によれば、複数のランプ1074が、オーガナイザ1038の後部から外方に延びること可能である。ランプ1074は、斜面として概して形成されることが可能である。これは、クリップ1058に入れられる際にオーガナイザ1038がサイクラ14から遠ざかるような角度となることを可能にし、それは、以前の設計に対する多数の利点を提供する。例えば、この例示の実施形態では、オーガナイザ1038の角度は、タブ1044も、オーガナイザ1038に接続されたライン(またはライン・キャップ)のうちの何れも、蓋143が開閉される際にヒータ蓋143と干渉しないことを保証する。加えて、オーガナイザ1038の可撓性と結び付けて、サイクラ14に対するオーガナイザ1038の角度は、両方とも、ユーザに、透析液ラインのコネクタ端部30aからに代えて、その底部から透析液ライン30を取り外させる。好ましくは、ユーザは、コネクタ端部30aを把持することによって透析液ライン30を取り外すべきでなく、なぜならば、そうする際に、ユーザが一又は複数のキャップ31を不注意に取り外すことがあり、汚染および流出を生じさせることがあるからである。オーガナイザ1038の別の利点は、色分けされたライン30を分離するのを補助することによって、ユーザが色分けされた透析液ライン30を正しい容器20に接続するのを補助することである。
[ドアラッチ・センサ]
図9−11は、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076の斜視図を示している。この例示の実施形態では、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、ドアラッチ1080に取り付けられるかまたは接続された磁石1078を備えることが可能であり、それが噛合するベースユニット・キャッチ1082を備えたラッチ位置を行き来するように枢動する際に、ドアラッチ1080と共に枢動することができる。センサ(
図9−11には示されていない)は、ベースユニット・キャッチ1082近傍の、サイクラ14の前面パネル1084の後方に配置されることが可能であり、それによって、ドアラッチ1080がベースユニット・キャッチ1082に係合する際に、磁石1078の存在を検出する。一実施形態では、センサは、アナログのホール効果センサであることが可能である。ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076の目的は、ドア141が閉じられることと、ドアラッチ1080がキャッチ1082と十分に係合して構造上正常な接続を確実にすることとの両方を確認することである。
図9−11aは、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076の断面図を示している。センサ1079は、前面パネル1084の後ろの回路基板1077上に配置される。センサ1079は、磁石1078の動線から好ましくは軸をオフセットして配向される。なぜならば、この配向では、センサ1079が、ドア141が閉じられる際に前面パネル1084に近づくほど、磁石1078の様々な位置をより良好に判断することが可能だからである。
【0161】
1例では、ドア141は、ドアラッチ1080がキャッチ1082と少なくとも50%係合している場合に、十分に係合していると考えられることが可能である。一実施形態では、ドアラッチ1080は、公称で約0.120インチ程度係合することが可能である。加えて、センサ1079は、ドアラッチ1080がキャッチ1082と十分に係合した場合にのみ、ドア141の閉鎖を検出することが可能である。従って、センサ1082は、ドアラッチ1080が約0.060インチ程度係合した場合にのみ、ドア141の閉鎖を検出することが可能である。ドアラッチ1080用のこれらの係合閾値は、ドアラッチ1080とキャッチ1082との間の容認可能な係合に対する略中間範囲に設定されることが可能である。これは、時間、温度、および他の変動によってセンサのドリフトを考慮することによってロバストな設計を保証するのを補助することができる。
【0162】
室温(約24℃)および異常に寒い温度(約−2℃〜9℃)の両方で多数の測定値を収
集することによって、センサ1082のロバスト性を判断すべく、試験が行われた。室温測定値は、低温測定値よりも繰り返し高かったが、0インチ〜0.060インチの範囲の数パーセントの違いだけであった。
【0163】
一態様では、センサ1079の出力は、供給される電圧に出力特性が比例することがある。従って、供給電圧およびセンサ1079の出力の両方を測定することが可能である(供給電圧およびセンサ1079の出力がそれぞれDoor_LatchおよびMonitor_5V0で表される下記の式を参照)。次に、センサ1079の出力および供給電圧の両方は、1/4抵抗分割回路を通過することが可能である。センサ1079の出力および供給電圧の分割は、安定した出力の生成を可能にすることがある。この手順は、供給電圧が変動しても出力が安定したままでいることを確実にすることが可能である。
【0164】
別の態様では、センサ1079は、正および負の磁界に応答することが可能である。従って、磁界がない場合には、センサ1079は、供給電圧の半分を出力することが可能である。加えて、正の磁界は、センサ1079の出力を増加させる一方で、負の磁界は、センサ1079の出力を減少させることがある。センサ1079から出力の正確な測定値を得るために、磁石の極性を無視することができ、同時に供給電圧を補償することができる。次式は、ラッチ・センサ比を演算するために使用されることが可能である。
【0165】
ラッチ・センサ比=絶対値(VDoor_Latch/VMonitor_5V0)−noFieldRatio) …(1)
noFieldRatio(シムなし比)は、ドア141が完全に開いた状態で(VDoor_Latch/VMonitor_5V0)によって演算される。
【0166】
この式を使用して、
比=0.0は、磁界がないことを示し、
比>0.0は、幾らかの磁界を示しており、方向は特定しない。
【0167】
ドアラッチ・アセンブリ1076の係合の様々な位置と共にセンサ1079によって検出される磁界強度を較正するために、様々な厚さのシムが、ドア141の内側と前面パネル1084との間で使用されることが可能であり、それによって、ラッチ1080とキャッチ1082との間の係合の程度を変更する。一実施形態では、このデータは、シムありおよびシムなしで磁界強度比を明らかにするために使用されることができ、他の実施形態では、様々な厚さの幾つかのシムで使用されることができる。1例では、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、次のことを行うことによって、ドアラッチ1080がキャッチ1082に十分に係合しているか否かを判断する手順を完了させることが可能である。
【0168】
nearRatioおよびfarRatioを演算する。
nearRatio=noShimRatio−(0.025/0.060)×(noShimRatio−withShimRatio) …(2)
farRatio=noShimRatio−(0.035/0.060)×(noShimRatio−withShimRatio) …(3)
一実施形態では、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、較正ファイルにnoFieldRatio、nearRatio、およびfarRatioを保存することが可能である。次に、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、較正ファイルからnoFieldRatio、nearRatio、およびfarRatioをロードすることが可能であり、次に、センサ・アセンブリ1076は、センサ1079用のヒステリシス範囲としてnearRatioおよびfarRatioを使用することが可能である。次に、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、ドア141が開いている初期条件から開
始し、次に、ラッチ・センサ比を繰り返し演算することが可能である。ラッチ・センサ比がnearRatio以上である場合には、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、ラッチ状態を閉に変更し、ラッチ・センサ比がfarRatio以下である場合には、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、ラッチ状態を開に変更する。ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076に対する他の実施形態では、middleRatioが、noShimRatioおよびwithShimRatioの平均を取ることによって較正データから演算されることができる。この場合には、middleRatio以上の測定値は、ドアラッチ1080が係合していることを示し、middleRatio以下の測定値は、ドアラッチ1080が係合していないことを示している。
[設定ローディングおよび動作]
図10は、
図1のAPDシステム10の斜視図を示しており、サイクラ14のドア141が開位置まで下げられ、カセット24用の取付位置145および透析液ライン30のキャリッジ146を露出している(この実施形態では、ドア141は、ドア141の下部でヒンジによってサイクラ・ハウジング82に取り付けられている)。セット12をロードする際に、カセット24は、膜15およびカセット24のポンプ室側が上方に臨んだ状態で取付位置145に配置され、ポンプ室とバルブ・ポートに関連づけられた膜15の部分は、ドア141が閉じられたときに、サイクラ14の制御面148と相互作用する。取付位置145は、ベース部材18の形状と一致するように形成されることが可能であり、それによって、カセット24の取付位置145における適切な配向を確実にする。この例示の実施形態では、カセット24および取付位置145は、カセット24を取付位置145に適切な配向で配置することをユーザに要求するか、または、ドア141が閉じないように、大きい半径の単一のコーナを持った概して長方形の形状有している。しかし、カセット24および/または取付位置145に対する他の形状または配向の特徴も可能であると理解されるべきである。
【0169】
本発明の態様によれば、カセット24が取付位置145に配置される際に、患者、導出、およびヒータバッグ・ライン34,28,および26は、
図10に示されるようにドア141のチャネル40を通じて左方に通される。ガイド41または他の特徴部を備えることが可能であるチャネル40は、患者、導出、およびヒータバッグ・ライン34,28,および26を保持することが可能であり、その結果、閉塞部147は、流れのためにラインを選択的に開閉する。ドア141の閉鎖に際して、閉塞部147は、患者、導出、およびヒータバッグ・ライン34,28,および26のうちの一又は複数を閉塞部ストッパ29に対して押し付けることができる。一般に、サイクラ14が動作している(かつ適切に動作している)ときには、閉塞部147は、ライン34,28,および26を通じた流れを許容することが可能であるが、サイクラ14の電源が落とされた(および/または適切に動作していない)ときには、ラインを閉塞する(ラインの閉塞は、ラインを圧迫するか、または、ライン中の流体経路を閉じるべくラインを挟むことによって、行われることが可能である)。好ましくは、閉塞部147は、少なくとも患者および導出ラインの34および28を選択的に閉塞することがある。
【0170】
カセット24が取り付けられ、ドア141が閉じられたときに、カセット24のポンプ室側および膜15は、例えば、空気袋、バネ、または取付位置145と制御面148との間でカセット24を圧迫する、取付位置145の後ろのドア141の他の適切な構成によって、制御面148と接触するように押し付けられることが可能である。カセット24のこの封じ込めは、膜15および16を壁およびベース部材18の他の特徴部と接触するように押し付けることが可能であり、それによって、望まれるようにチャネルおよびカセット24の他の流体経路を分離する。制御面148は、可撓性のあるガスケット(例えば、1枚のシリコンゴムまたは他の材料)を備えることが可能であり、それは、膜15に関連づけられ、膜15の部分を選択的に移動させて、ポンプ室181のポンプ作用とカセット24のバルブ・ポートの開閉をもたらすことができる。制御面148は、膜15の様々な
部分に関連づけられることが可能であり、例えば、互いと密着されることが可能であり、その結果、膜15の部分は、制御面148の対応する部分の動作に応じて移動する。例えば、膜15および制御面148は、互いに接近して配置されることが可能であり、適切な真空(または周囲よりも低い圧力)は、制御面148に適切に配置された真空ポートを通じて導入され、膜15と制御面148との間で維持されることが可能であり、その結果、膜15および制御面148は、バルブ・ポートを開閉させる、および/または、ポンプ作用をもたらすための動作を必要とする少なくとも膜15の領域において、本質的に互いに貼り付く。別の実施形態では、膜15および制御面148は、互いに付着するか、または、適切に関連づけられることが可能である。
【0171】
幾つかの実施形態では、ポンプ室および/またはバルブの上に存在する対応するカセット膜に面する制御面148の面またはガスケット面には一定の質感を与え、または粗面化する。テクスチャリングは、ガスケットが対応するカセット膜の面に対して引っ張られるときに、ガスケットの面に沿って複数の小さな通路を水平方向または接線方向に作り出す。これは、質感付与配置において、ガスケット面とカセット膜面との間の空気の排出を改良することが可能である。それは、ガスケットと膜との間の空気のトラップされたポケットを最小限とすることによって、(例えば、他の箇所に記述されたFMS処理におけるような)圧力体積関係を用いてポンプ室容積の判断の精度を改良することも可能である。それは、ガスケットとカセット膜との間の潜在的空間に漏れ出すことがある何れの液体の検出も改良することが可能である。或る実施形態では、テクスチャリングは、ポンプ膜およびバルブ膜の位置に対応するガスケットの一部を形成しないガスケット金型の一部をマスクすることによって達成されることが可能である。次に、Mold−Tech(登録商標)テクスチャリングおよび食刻処理などの食刻処理がガスケット金型のマスクされていない部分に適用されることが可能である。テクスチャリングは、電気的放電機械加工を用い、例えば、サンド・ブラスチング、レーザ・エッチング、または金型製造処理の利用のような多数の他の処理のうちの何れによって達成されることも可能である。
【0172】
カセット24が搭載された状態でドア141を閉じる前に、一又は複数の透析液ライン30が、キャリッジ146に搭載されることがある。各透析液ライン30の端部は、キャップ31と、ラベルを付けるかまたはインジケータまたは識別子を取り付ける領域33とを備えることが可能である。例えば、インジケータは、インジケータ領域33でチューブにパチン止めする特定タグであることができる。本発明の態様によれば、また、より詳細に下で議論されるように、キャリッジ146およびサイクラ14の他の構成要素は、ライン30からキャップ31を取り外し、各ライン30用のインジケータ(ラインに関連づけられた透析液の種類、透析液の量などに関する表示を提供することが可能である)を認識し、ライン30をカセット24のそれぞれのスパイク160に流体係合させるように操作されることが可能である。この処理は、自動で行われることが可能である(例えば、ドア141が閉じられた後で、キャップ31およびスパイク160が、人間による接触から保護された空間で囲まれ、それによって、ライン30および/またはスパイク160の汚染の危険を、それら2つを互いに接続する際に、潜在的に減少する。例えば、ドア141の閉鎖に際して、インジケータ領域33は、何の透析液がどのライン30に関連づけられるかを特定するために(例えば、適切な画像化装置およびソフトウェア・ベースの画像認識によって視覚的に、RFID技術などによって)評価されることがある。インジケータ領域33のインジケータによってライン30の特徴を検出する能力に関する本発明の態様は、ユーザがシステム動作に影響することなくキャリッジ146の任意の位置にライン30を配置することを可能にするような利点を提供することが可能である。つまり、サイクラ14が透析液ラインの特徴を自動的に検出することができるので、システムが適切に機能するためにキャリッジ146の特定の位置に特定のラインを配置することを保証する必要はない。これに代えて、サイクラ14は、どのライン30がどこにあるかを特定し、カセット24および他のシステム特徴部を適切に制御する。例えば、或るライン30および接
続された容器は、例えば、後の試験のために、使用済み透析液を受けるように意図されることがある。サイクラ14がサンプル供給ライン30の存在を特定することができるので、サイクラ14は、適切なスパイク160およびライン30に使用済み透析液を送ることができる。上で議論したように、カセット24のスパイク160がすべて共通チャネルに供給するので、任意の特定のスパイク160からの入力は、バルブおよび他のカセット特徴部を制御することによって、任意の望ましい方法でカセット24に送られることができる。
【0173】
ライン30が取り付けられた状態で、キャリッジ146は、
図10に示されるように左方に移動されることが可能であり(再び、ドア141が閉じられたまま)、カセット24のスパイク160上のそれぞれのスパイク・キャップ63上に、かつ、キャップ・ストリッパ149に隣接して、キャップ31を配置する。キャップ・ストリッパ149は、キャップ31に係合するために外方に(サイクラ14のハウジング内の凹部の内部からドア141に向かって)延びることが可能である(例えば、キャップ・ストリッパ149は、キャップ31の対応する溝に係合する5つのフォーク形状要素を備えることが可能であり、それによって、キャップ・ストリッパ149がキャップ・ストリッパ149に対するキャップ31の左右移動に抗することを可能にする)。キャップ31をキャップ・ストリッパ149に係合させることによって、キャップ31は、対応するスパイク・キャップ63を把持することも可能である。その後、キャップ31が対応するスパイク・キャップ63に係合した状態で、キャリッジ146およびキャップ・ストリッパ149は、右方に移動することが可能であり、それによって、スパイク・キャップ63を、対応するキャップ31に係合するスパイク160から取り外す(この構成の1つの考え得る利点は、透析液ライン30が装填されない位置ではスパイク・キャップ63が取り外されないことである。なぜならば、透析液ライン30からのキャップ31の係合がスパイク・キャップ63を取り外すことを要求されるからである。従って、透析液ラインがスパイク160に接続されない場合には、スパイク160上のキャップは、所定位置に残される)。次に、キャップ・ストリッパ149は、キャリッジ146が右方への移動を継続する間、右方への移動を停止することが可能である(例えば、ストッパと接触することによって)。その結果、キャリッジ146は、キャップ・ストリッパ149に取り付けられたままのライン30の端子端部をキャップ31から引っ張ることが可能である。キャップ31をライン30から取り外した状態で(かつ、スパイク・キャップ63が依然としてキャップ31に取り付けられている)、キャップ・ストリッパ149は、再びサイクラ14のハウジングの凹部にキャップ31と共に後退することが可能であり、それによって、キャリッジ146の移動経路およびスパイク160に向かうライン30のキャップが外された端部を何もない状態にする。次に、キャリッジ146、再び左方に移動し、ライン30の端子端部をカセット24のそれぞれのスパイク160に取り付ける。この接続は、スパイク160によって、ライン30の端部を貫通して(そうでなければ端部は閉じている)なされることが可能であり、それぞれの容器20からカセット24への流体の流れを可能にする(例えば、スパイクは、端子端部の閉じた隔壁または壁を貫通することがある)。一実施形態では、壁または隔壁は、例えば、PVC、ポリプロピレン、またはシリコンゴムなどの可撓性および/または自己シール性のある材料から構築されることが可能である。
【0174】
本発明の態様によれば、ヒータバッグ22は、ヒータバッグ受容部(例えば、トレイ)142に配置されることが可能であり、それは、蓋143を持ち上げることによって露出される(この実施形態では、下で議論されるように、サイクラ14は、ハウジング82に枢動可能に取り付けられたユーザまたはオペレータ・インタフェース144を備えている。ヒータバッグ22がトレイ142内に配置されることを可能にするために、インタフェース144は、トレイ142から上方に枢動して出されることが可能である)。本技術分野では公知なように、ヒータ・トレイ142は、ヒータバッグ22内の透析液を適温(例えば、患者への導入に適切な温度)に加熱することが可能である。本発明の態様によれば
、蓋143は、例えば、トレイ142内のヒータバッグ22を配置した後で閉じられることが可能であり、それによって、熱をトラップして加熱処理を促進するのを補助する、および/または、その加熱面などのヒータ・トレイ142の比較的暖かい部分を触ることまたは他の接触を防止するのを補助する。一実施形態では、蓋143は、閉位置にロックされることが可能であり、それによって、例えば、トレイ142の部分が皮膚の火傷をもたらすことがある温度に加熱される状況で、トレイ142の加熱部分に触れることを防止する。蓋143の開放は、例えばロックによって、蓋143の下側の温度が適切に低い温度になるまで防止されることが可能である。
【0175】
本発明の別の態様によれば、サイクラ14は、サイクラ14のハウジングに枢動可能に取り付けられ、ヒータ・トレイ142に下方に折り畳まれることが可能である、ユーザまたはオペレータ・インタフェース144を備えている。インタフェース144を下方に折り畳んだ状態で、蓋143が閉じられ、それによって、インタフェース144を隠す、および/または、インタフェース144との接触を防止することが可能である。インタフェース144は、ユーザに例えばグラフィカルな形態で情報を表示し、ユーザから例えばタッチスクリーンおよびGUIを使用することによって入力を受け付けるように構成されることが可能である。インタフェース144は、ボタン、ダイヤル、ノブ、ポインティング・デバイス装置などのような他の入力装置を備えることが可能である。セット12が接続された状態で、容器20が適切に配置され、ユーザは、インタフェース144と相互作用して、サイクラ14に処置を開始させる、および/または、他の機能を行わせることが可能である。
【0176】
しかし、透析サイクルを開始する前に、セット12が予め準備済みの状態(例えば、製造設備でのまたはサイクラ14で使用される前の)で提供されない限り、サイクラ14は、カセット24、患者ライン34、ヒータバッグ22などを少なくとも準備されなければならない。準備は、カセット24(つまり、ポンプおよびバルブ)を制御するなどの様々な方法で行われることが可能であり、それによって、ライン30を介して一又は複数の透析液容器20から液体を引き出し、カセット24の様々な経路を通じて液体を圧送し、その結果、カセット24から空気を取り除く。透析液は、ヒータバッグ22に圧送されることが可能である(例えば、患者への供給に先立って加熱するために)。一旦カセット24およびヒータバッグ・ライン26が準備されると、次に、サイクラ14は、患者ライン34を準備することが可能である。一実施形態では、患者ライン34は、ライン34を適切なポートまたはサイクラ14上の他の接続箇所に接続し(例えば、コネクタ36によって)、カセット24が液体を患者ライン34に圧送するようにさせることによって、準備されることが可能である。サイクラ14上のポートまたは接続箇所は、患者ラインの端部への液体の到達を検出するように構成され(例えば、光学的に、伝導性センサによって、または他のものによって)、それによって、患者ラインが準備されたことを検出することが可能である。上で議論したように、様々な種類のセット12が、異なるサイズの患者ライン34(例えば、成人または小児サイズ)を有することが可能である。本発明の態様によれば、サイクラ14は、カセット24の種類(または少なくとも患者ライン34の種類)を検出し、それによってサイクラ14およびカセット24を制御することが可能である。例えば、サイクラ14は、患者ライン34を準備するために必要とされる、カセット内のポンプによって供給される液体の体積を判断し、この体積に基づいて患者ライン34のサイズを判断することが可能である。患者ラインの種類を示す、カセット24、患者ライン34、または他の構成要素上のバーコードまたは他のインジケータを認識するなどの、他の技術を使用することも可能である。
【0177】
図11は、サイクラ14のハウジング82から接続解除されたドア141の内側の斜視図を示している。この図は、ドア141およびキャリッジ146の対応する溝内にライン30がどのように受容されるかをより明白に示し、その結果、インジケータ領域33は、
キャリッジ146の特定のスロットに捕らえられる。チューブがキャリッジ146に取り付けられたときにインジケータ領域33のインジケータが適切に配置された状態で、リーダまたは他の装置は、インジケータの印(例えば、ライン30に接続された容器20中の透析液の種類、透析液の量、製作年月日、メーカの固有性などを表す)を特定することができる。キャリッジ146は、キャリッジ146の上端部および下端部で一対のガイド130に取り付けられる(下側ガイド130だけが
図11に示されている)。このように、キャリッジ146は、ガイド130に沿ってドア141上を左から右へと移動することができる。カセット取付位置145に向かって移動する際(
図11における右方)、キャリッジ146は、ストッパ131と接触するまで移動することができる。
【0178】
図11−1および
図11−2は、キャリッジ146の斜視図およびキャリッジ146に搭載された透析液ライン30の拡大斜視図を示している。これらの例示の実施形態では、キャリッジ146は、ガイド130に沿ってドア141上を移動する能力を有することがある。キャリッジ146は、5つのスロット1086を備えることが可能であり、従って、5つまでの透析液ライン30を支持する能力を有することが可能である。各スロット1086は、3つの異なる部分を備えることが可能である(透析液ライン部1088、ID部1090、およびクリップ部1092)。透析液ライン部1088は、透析液ライン30がキャリッジ146に搭載されたときに整理されて絡まらないままであることを可能にする、概して筒状の形状のキャビティを有することが可能である。クリップ部1092は、透析液ライン部1088に対して、スロット1086のそれぞれの反対の端部に配置されることが可能である。クリップ部1092の目的は、透析液ライン30のコネクタ端部30aに配置された膜ポート1094用の安全なハウジングを提供し、透析液ライン30が処置中に移動することを防止することにある。
【0179】
本発明の一実施形態では、クリップ部1092は、半円形の形状を有することが可能であり、2つの周囲縁部領域よりも僅かに深く延びた中間領域を備えることが可能である。より深い中間領域を備える目的は、膜ポート・フランジ1096を収容することにある。フランジ1096は、膜ポートの残りの部分よりも実質的に大きい半径を有することが可能である。従って、より深い中間領域は、より広いフランジ1096に嵌合するように設計され、2つの縁領域は、膜ポート1094が動かないように支持を提供する。加えて、深い中間領域は、半円形の反対側に配置された2つの切出し部1098を有することが可能である。切出し部1098は、概して長方形の形状を有することが可能であり、その結果、フランジ1096の小さい部分が、クリップ部1092に配置されたときに、切出し部1098のそれぞれに延びることを可能にする。切出し部1098は、各切出し部1098の上縁部間の距離がフランジ1096の半径よりも僅かに小さくなるように形成されることが可能である。従って、十分な大きさの力が、フランジ1096をクリップ部1092にスナップ止めするのに必要である。また、2つの切出し部1098の上縁部間の距離がフランジ1096の半径よりも小さくなることを可能にすることは、処理中に透析液ライン30が不注意に取り外されないように補助する。
【0180】
この例示の実施形態では、キャリッジ146は、膜ポート1094の如何なる変形に対抗するその能力のために、以前の設計に対してより優れた性能を提供することが可能である。キャリッジ146は、フランジ1096の前部とスリーブの後部との間で膜ポート1094を延設するように設計されている。膜ポート1094が処置中に任意の箇所にさらに延ばされる場合には、キャリッジ146の壁は、フランジ1096を支持することが可能である。
【0181】
本発明の別の態様によれば、ID部1090は、透析液ライン部1088とクリップ部1092との間に配置されることが可能である。ID部1090は、概して長方形の形状を有することが可能であり、従って、インジケータ領域33で透析液ライン30上にスナ
ップ止めされることが可能である特定タグ1100を収容する能力を有している。インジケータ領域33は、キャリッジ146に取り付けられるときに、ID部1090内に嵌合するような大きさとされ、構成された環状の形状を有することが可能である。特定タグ1100は、各ライン30に関連づけられた透析液の種類、透析液の量、製作年月日、およびメーカの固有性に関する表示を提供することが可能である。
図11−1に示されるように、ID部1090は、2次元(2−D)バーコード1102を備えることが可能であり、それはID部1090の底に印刷されることが可能である。バーコード1102は、1辺当たり10個のブロックを持ったデータ行列シンボルであることが可能であり、「空」のデータ行列コードを含むことがある。バーコード1102は、透析液ライン30がキャリッジ146に搭載されたときに特定タグ1100の真下にあるキャリッジ146に配置されることが可能である。しかし、代替の実施形態では、バーコード1102は、ステッカまたはレーザ彫刻によってキャリッジ146のID部1090に付与されることが可能である。また、別の実施形態では、バーコード1102は、長さおよび幅の寸法が変化し、1辺当たりのブロックの個数が変化するデータ行列を含むことが可能である。
【0182】
しかし、この例示の実施形態では、1辺当たりの特定の個数のブロックと、各バーコード1102の特定の長さおよび幅とが、様々な条件下での最もロバストな設計を提供すべく特に選択された。1辺当たり10個のブロックだけを使用することは、より大きいブロックを有したバーコード1102をもたらすことがあり、従って、それは、サイクラ・ハウジング82の内部に存在する暗い条件下であっても、バーコード1102を容易に判読可能であることを保証する。
【0183】
図11−3および
図11−4は、それぞれ、折り畳まれた特定タグ1100の斜視図、および、自動IDカメラ基板1106に取り付けた自動IDカメラ1104を備えるキャリッジ駆動部アセンブリ132の斜視図を示している。本発明の態様によれば、特定タグ1100は、射出成形型から形成されることが可能であり、それは次にインジケータ領域33の近傍でスナップ止めするために折り畳まれることが可能である。特定タグ1100は、丸められた縁部を備えることが可能であり、それは輸送中の透析液容器20への損傷を防止することが可能である。特定タグ1100は、1辺当たり18個のブロックと静穏帯(ステッカによって付与されることが可能である)とを持った、8x8mmの2次元(2−D)データ行列シンボル1103をさらに備えることが可能である。これらのデータ行列シンボル1103に含まれる情報は、カメラ1104から制御システム16に提供されることが可能であり、次に、画像解析などによって様々な処理を通じて印を取得することが可能である。従って、自動IDカメラ1104は、正確に設置された透析液ライン30、不正確に設置されたライン30、または不在のライン30を含む、スロット1086を検出する能力を有するであろう。正確に設置された透析液ライン30は、カメラ1104が特定タグ1100に配置されたデータ行列シンボル1103を検出することを可能にし、透析液ライン30の不在は、カメラ1104が膜ポート1094の真下にあるキャリッジ146に配置された「空」のデータ行列バーコード1102を検出することを可能にし、そして、不正確に搭載された透析液ライン30は、「空」のデータ行列バーコード1102を閉塞して、そのスロットに対する、カメラ1104によって符号化されるデータ行列はないことになる。このように、カメラ1104は、キャリッジ146上のすべてのスロット1086におけるデータ行列を常に符号化すべきであり、不正確に搭載された透析液ライン30を露にする。
【0184】
この例示の実施形態では、インジケータ領域33に配置された特定タグ1100によって透析液ライン30の特徴を検出する能力は、ユーザがシステム動作上の影響を有さずにキャリッジ146の任意の位置にライン30を配置することを可能にするような利点を提供することが可能である。加えて、サイクラ14が透析液ラインの特徴を自動的に検出することができるので、システムが適切に機能するためにキャリッジ146上の特定の位置
に特定のライン30が配置されることを確実にする必要はない。これに代えて、サイクラ14は、どのライン30がどこにあるかを特定し、カセット24および他のシステムの特徴を適切に制御することが可能である。
【0185】
本発明の別の態様によれば、特定タグ1100は、カメラ1104によって符号化されるためにキャリッジ駆動部アセンブリ132に臨んでいなければならない。これを確実にするために、キャリッジ146および特定タグ1100は、補足的な位置決めの特徴を有することがある。さらに、特定タグ1100を持った透析液ライン30は、クリーンフラッシュ透析機にも適合すべきであり、従って、特定タグ1100を持った透析液ライン30は、直径0.53インチのシリンダ内に嵌合するように構築されることが可能である。一実施形態では、位置決め特徴部は、特定タグ1100上の単純に平坦な底のビル(bill)と、キャリッジ146のマッチングリブ(matching rib)であることが可能である。本発明の一実施形態では、ビルおよびリブは、僅かに干渉して、特定タグ1100の後部を上方に押すことが可能である。この配置は、少量の位置ずれを生じさせることがあるが、別の軸の位置ずれを減少させる。最後に、特定タグ1100が適切に据え付けられることを確実にするために、キャリッジ駆動部アセンブリ132の前部は、現在の状態のキャリッジ146および特定タグ1100の位置決めに対して約0.02インチのみのクリアランスで設計されることができる。
【0186】
本発明の別の態様によれば、自動IDカメラ基板1106は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の後部に取り付けられることが可能である。加えて、自動IDカメラ1104は、カメラ基板1106に取り付けられることが可能である。カメラ基板1106は、特定タグ1100から約4.19インチの箇所に配置されることが可能である。しかし、他の実施形態では、カメラ基板1106は、如何なる重大な結果もなしに、後方に移動されることがある。プラスチック窓1108は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の前部に取り付けられることも可能であり、それは、流体および指の進入も防止しつつ、特定タグ1100が画像化されることを可能にする。自動IDカメラ1104は、セキュリティ用途に使用されるような任意の種類のレンズであることが可能であるカメラ・レンズ、または、IRフィルタを取り外したカメラ付き電話機用に意図されたレンズを備えることが可能である。本発明の態様によれば、カメラ・レンズは、小型、軽量、低価格、および高画像品質を備えることが可能である。
【0187】
加えて、単一のSMD赤外線LED1110は、カメラ基板1106に取り付けられることが可能である。次に、LED1110は、カメラ1104がデータ行列を容易に符号化するように特定タグ1100を照らすことが可能である。サイクラ・ハウジング82の内部環境は殆ど光が不在であるので、特定タグ1100が照らされることは重要である。従って、LED1110が特定タグ1100を照らすことなしには、カメラ1104は、データ行列を符号化することができないであろう。さらに、特定タグ1100の前に閃光を生成しないようにするために、LED1110は、カメラ1104から0.75インチ離れるように取り付けられることがある。FPGAがカメラ基板1106に取り付けられることも可能であり、OV3640画像センサとVoyagerのUIプロセッサとの間の中継として作用することが可能である。プロセッサの仕事をより簡単にすることに加えて、このアーキテクチャは、任意の他のVoyagerハードウェアまたはソフトウェアへの変更なしに、異なる画像センサを使用することを可能にすることがある。最後に、画像符号化は、オープンソース・パッケージのlibdmtxによって扱われ、それは多数のプログラミング言語からアドレス可能であり、試験用の命令ラインから実行することができる。
【0188】
図12は、第一実施形態におけるキャリッジ駆動部アセンブリ132の斜視図を示しており、それは、キャリッジ146を移動させて、カセット上のスパイク160からキャッ
プを取り外し、透析液ライン30上のキャップ31を取り外し、スパイク160にライン30を接続するように機能する。駆動要素133は、ロッド134に沿って左から右に移動するように構成される。この例示の実施形態では、空気袋は、ロッド134に沿って駆動要素133の動作に動力を供給するが、任意の適切な駆動機構が、モータ、油圧系などを含み、使用されることが可能である。駆動要素133は、キャリッジ146上の対応するスロット146aに係合する前方に延びたタブ135を有している(キャリッジ146上の上部スロット146aを示す
図11を参照)。スロット146aとのタブ135の係合は、駆動要素133がガイド130に沿ってキャリッジ146を移動することを可能にする。駆動要素133は、窓136をさらに備えており、それを通じて、CCDまたはCMOSイメージャなどの画像化装置が、キャリッジ146に取り付けたライン30上のインジケータ領域33のインジケータの画像情報をキャプチャすることが可能である。インジケータ領域33のインジケータに関する画像情報は、例えば画像解析によって、画像化装置から、印を取得することが可能である制御システム16に提供されることが可能である。駆動要素133は、ロッド134に沿って左右の両方にキャップ・ストリッパ149を選択的に移動させることができる。キャップ・ストリッパ149は、空気圧式の空気袋などの別個の駆動機構を使用して前後に延びている。
【0189】
図13は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の左側斜視図を示しており、それは、キャップ・ストリッパ149のストリッパ要素が、キャップ・ストリッパ149のハウジング内の溝149aに沿って出入りする(ロッド134に概して垂直な方向)ように、どのように配置されるかをより明白に示している。ストリッパ要素の半円形の切出し部のそれぞれは、キャップ31が駆動要素133およびキャリッジ146によってストリッパ149の前に適切に配置される際に、前方に延びることによって、ライン30上のキャップ31の対応する溝に係合することが可能である。ストリッパ要素がキャップ31に係合した状態で、キャップ・ストリッパ149は、駆動要素133が移動する際にキャリッジ146と共に移動することが可能である。
図14は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の部分的な背面図を示している。この実施形態では、駆動要素133は、第1空気袋137によってカセット24の取付位置145に向かって移動され、第1空気袋137は、駆動要素133を
図14における右方に移動させるべく拡張する。駆動要素は、第2空気袋138によって左に移動することができる。これに代えて、駆動要素133は、例えば、ボールねじアセンブリ(キャリッジ駆動部アセンブリがボール・ナットに取り付けられている)またはラック・ピニオン・アセンブリなどの直線駆動機構のギヤ・アセンブリに結合された一又は複数のモータによって前後に移動されることができる。キャップ・ストリッパ149のストリッパ要素1491は、第3空気袋によって、または、これに代えて、先に記述したように、直線駆動機構アセンブリに結合されたモータによって、キャップ・ストリッパ・ハウジングを出入りすることができる。
【0190】
図15〜
図18は、キャリッジ駆動部アセンブリ132およびキャップ・ストリッパ149の別の実施形態を示している。
図15におけるキャリッジ駆動部アセンブリ132の背面図で見ることができるように、この実施形態では、駆動要素133は、ネジ駆動部機構1321によって左右に移動される。
図16におけるキャリッジ駆動部アセンブリ132の右後方斜視図で見ることができるように、ストリッパ要素は、空気袋139によって外方および内方に移動されるが、上述したように他の構成も可能である。
【0191】
図17および
図18は、キャップ・ストリッパ149のストリッパ要素1491に対する別の実施形態の左および右からの前方斜視図を示している。
図13に示される実施形態におけるストリッパ要素1491は、透析液ライン30のキャップ31に係合するように構成されたフォーク形状要素のみを備えていた。
図17および
図18の実施形態では、ストリッパ要素1491は、フォーク形状要素60だけではなく、ストリッパ要素1491に枢動可能に取り付けられたロッカ・アーム61も備えている。より詳細に下に説明され
るように、ロッカ・アーム61は、カセット24からのスパイク・キャップ63の取外しを支持する。ロッカ・アーム61のそれぞれは、透析液ライン・キャップ係合部分61aおよびスパイク・キャップ係合部分61bを備えている。ロッカ・アーム61は、通常は動作するように付勢されており、その結果、スパイク・キャップ係合部分61bは、
図18におけるロッカ・アーム61に示されるように、ストリッパ要素1491の近傍に配置される。しかし、キャップ31が対応するフォーク形状要素60によって受けられるときに、透析液ライン・キャップ係合部分61aは、キャップ31と接触し、それはロッカ・アーム61を枢動させ、その結果、スパイク・キャップ係合部分61bは、
図17に示されるようにストリッパ要素1491から離れるように移動する。この位置によって、スパイク・キャップ係合部分61bは、スパイク・キャップ63(特に、スパイク・キャップ63上のフランジ)に接触することができる。
【0192】
図19は、ストリッパ要素1491の正面図と、
図20〜
図22に示される幾つかの断面図の位置とを示している。
図20は、ストリッパ要素1491の近傍に配置されたスパイク・キャップ63または透析液ライン・キャップ31がない状態のロッカ・アーム61を示している。ロッカ・アーム61は、スパイク・キャップ係合部分61bと透析液キャップ係合部分61aとの間の略中間の箇所で、ストリッパ要素1491に枢動可能に取り付けられる。上述したように、ロッカ・アーム61は、通常、
図20に示されるように反クロック回りに回転するように付勢され、その結果、スパイク・キャップ係合部分61bは、ストリッパ要素1491の近傍に配置される。
図21は、ストリッパ要素1491が、フォーク形状要素60に係合する透析液ライン・キャップ31がない状態で、スパイク・キャップ63に向かって前進した場合であっても、ロッカ・アーム61がこの位置を維持することを示している(つまり、スパイク・キャップ係合部分61bがストリッパ要素1491の近傍にある状態)。その結果、ロッカ・アーム61は、透析液ライン・キャップ31が存在しない限り、クロック回りに回転しないかまたはスパイク・キャップ63に係合しない。このように、透析液ライン・キャップ31に係合しないスパイク・キャップ63は、カセット24から取り外されない。
【0193】
図22は、透析液ライン・キャップ31がフォーク形状要素60に係合し、ロッカ・アーム61の透析液ライン・キャップ係合部分61aと接触する例を示している。これは、ロッカ・アーム61をクロック回り方向に(図に示されるように)回転させ、スパイク・キャップ係合部分61bをスパイク・キャップ63に係合させる。この実施形態では、部分61bの係合は、スパイク・キャップ63上の第2フランジ63aに隣接して部分61bを配置することを含み、その結果、ストリッパ要素1491が右(
図22に示されるように)に移動されるときに、スパイク・キャップ係合部分61bは、第2フランジ63aと接触し、対応するスパイク160からスパイク・キャップ63を引っ張るのを補助する。なお、透析液ライン・キャップ31は、シリコンゴムなどの可撓性材料で作られており、それによって、スパイク・キャップ63の返し部63cがキャップ31(
図23を参照)の孔31bを拡張し、キャップ31内の周囲内部溝または凹部によって捕らえられることを可能にする。スパイク・キャップ63上の第1フランジ63bは、透析液ライン・キャップ31の端部のストッパとして作用する。キャップ31の孔31bにおける溝または凹部を規定する壁は、対称であるか、または、好ましくは非対称的に構成されて返し部63cの形状に倣うことが可能である(キャップ31および溝または凹部の断面図については
図33を参照)。スパイク・キャップ63上の第2フランジ63aは、ロッカ・アーム61のスパイク・キャップ係合部分61bが、必要ならば、スパイク160からスパイク・キャップ63を係合解除すべく付加的な引っ張り力を提供するために係合する、歯として作用する。
【0194】
図11−5および
図11−6は、キャップ・ストリッパ149のストリッパ要素1491に対する別の実施形態の2つの異なる斜視図を示している。
図13に示される実施形態
におけるストリッパ要素1491は、透析液ライン30のキャップ31に係合するように構成されたフォーク形状要素60を使用する。
図11−5に示される実施形態では、ストリッパ要素1491は、フォーク形状要素60を備えるだけでなく、複数の検出要素1112および複数のロッカ・アーム1114をさらに備えることが可能である。検出要素1112およびロッカ・アーム1114は、ストリッパ要素1491に沿って垂直に走る2本の平行列に配置されることが可能である。一実施形態では、各縦列は、5つの個々の検出要素1112およびロッカ・アーム1114を備えることが可能であり、それらのそれぞれが、フォーク形状要素60のそれぞれに対応した列に概して整列されるように配置される。各検出要素1112は、対応するロッカ・アーム1114のうちの1つに機械的に接続またはリンクされることが可能である。加えて、各検出要素1112およびロッカ・アーム1114を備えたアセンブリは、非係合位置に向かって各ロッカ・アーム1114を付勢し続ける付勢バネ(図示せず)と、フォーク形状要素60における透析液ライン・キャップ31の存在によって接触および移動される位置にある検出要素1112とを備えることが可能である。各検出要素1112は、フォーク形状要素60の対応する透析液ライン・キャップ31との接触によってストリッパ要素1491の後部に向かって変位および傾斜されることができる。検出要素1112とロッカ・アーム1114との間の機械的な接続を通じて、ロッカ・アーム1114は、透析液ライン・キャップ31と検出要素1112との間の接触に際してスパイク・キャップ63に向かって横方向に枢動または傾動することができる。ロッカ・アーム1114がスパイク・キャップ63に向かって回転または傾斜すると、それは、スパイク・キャップ63上の第2フランジ63aに係合することができ、ストリッパ・アセンブリがその対応するスパイクからスパイク・キャップ63を取り外すことを可能にする。
【0195】
図11−7a〜
図11−7cは、検出要素1112と透析液ライン・キャップ31との間およびロッカ・アーム1114とスパイク・キャップ63との間の関係を図示している。
図11−7cは、スパイク・キャップ63および透析液ライン・キャップ31がない状態での、検出要素1112およびロッカ・アーム1114を示している。
図11−7bに示されるように、透析液ライン・キャップ31の外側フランジ31cは、検出要素1112と接触すべく十分に大きな直径を有している。
図11−7aに示されるように、透析液ライン・キャップ31がない状態で、スパイク・キャップ63は、検出要素1112に、それを変位させ、スパイク・キャップ63から遠ざかるように回転させるほど十分には、キャップ63の単独の存在だけでは、接触しない。
図11−7bに示されるように、検出要素1112の変位は、スパイク・キャップ63に向かってロッカ・アーム1114を回転または傾斜させ、最終的には、スパイク・キャップ63のフランジ63aに隣接して位置する箇所まで回転または傾斜させる。
図11−7aに示されるように、ロッカ・アーム1114が非展開位置にあるときには、それは、スパイク・キャップ63の第2フランジ63aの外側周囲を所定量(例えば、0.040インチ)だけ何もない状態にすることができる。ロッカ・アーム1114の展開位置への移動に際して、その移動範囲は、確実な係合を保証すべくその対応するスパイク・キャップ63に対した僅かな圧縮力を与えるように構成されることが可能である。
【0196】
一旦ロッカ・アーム1114がスパイク・キャップ63のフランジ63aに隣接して位置すると、右方へのストリッパ要素1491の移動は、フランジ63aを介してスパイク・キャップ63に係合し、スパイク・キャップ63をその対応するスパイク160から引っ張るのを補助する。透析液ラインおよびそれに付随した透析液ライン・キャップ31がない状態では、ストリッパ要素1491は、対応するスパイク・キャップ63を取り外さず、その関連するスパイク160を密閉したままにする。このように、カセット・スパイク161は、使用する必要がある透析液ラインの最大数よりも少ないときに、その最大数よりも少ない個数のカセット・スパイク161にアクセスすることが可能である。
【0197】
図23は、キャップ31を取り外した状態の、透析液ライン30のコネクタ端部30aの拡大分解図を示している(
図23では、キャップ31は、明瞭さのための
図24に示されるような指引きリングなしに示されている。引きリングは、サイクラ14を伴うキャップ31の操作には存在する必要がない。しかし、それは、必要ならば、オペレータが透析液ライン30の端子端部からキャップ31を手動で取り外すことを可能にする際に有用である場合がある)。この例示の実施形態では、インジケータ領域33のインジケータは、
図10および
図11に示されるように取り付けられたときにキャリッジ146の対応するスロット内に嵌合するような大きさとされ構成された環状形状を有している。勿論、インジケータは、任意の適切な形態であることが可能である。キャップ31は、コネクタ端部30aの最先端に嵌合するように構成され、それは、内部孔、シール、または、カセット24上のスパイク160との漏れのない接続を可能にする他の特徴を有する。コネクタ端部30aは、キャップ31が取り外されても、コネクタ端部30aからのライン30中の透析液の漏れを防止する貫通可能な壁または隔壁(図示せず。
図33のアイテム30bを参照)を備えることが可能である。壁または隔壁は、コネクタ端部30aがカセット24に取り付けられたときに、スパイク160によって貫通されることが可能であり、ライン30からカセット24への流れを可能にする。上で議論したように、キャップ31は、キャップ・ストリッパ149のフォーク形状要素60によって係合される溝31aを備えることが可能である。キャップ31は、スパイク・キャップ63を受容するように構成された孔31bをさらに備えることが可能である。孔31bおよびキャップ31は、キャップ・ストリッパ149が溝31aに係合し、スパイク160のスパイク・キャップ63が孔31bに受容された状態で、キャップ31がスパイク・キャップ63を適切に把持することが可能であるように構成されることが可能であり、その結果、キャリッジ146/キャップ・ストリッパ149がカセット24からキャップ31を引き離すときに、スパイク・キャップ63が、スパイク160から取り外され、キャップ31によって担持される。この取外しは、上述したように、第2フランジ63aに係合する、または、スパイク・キャップ63上の他の特徴部に係合する、ロッカ・アーム61によって補助されることが可能である。その後、キャップ31およびスパイク・キャップ63は、キャリッジ146によってスパイク160に取り付けられたコネクタ端部30aおよびライン30から取り外されることが可能である。
[透析液コネクタ・ヒータ]
一実施形態では、コネクタ・ヒータは、透析液ライン30のインジケータ領域33近傍に設けられることが可能である。コネクタ・ヒータはコネクタ端部30a、特に、突き刺し壁または中隔30bの温度を制御して、カセット24上のスパイク160に透析液ラインを取り付けるのに必要なキャリッジ力を制限することが可能である。透析液ラインのコネクタ端部30aの突き刺し壁または中隔30bの硬度に影響するのに十分な雰囲気温度(室温)の変動が存在する場合があり、これは、今度は、スパイク160を透析液ライン30のコネクタ端部30aに接合するにおいてキャリッジ146の性能に影響することがある。例えば、より低い雰囲気温度では、突き刺し壁または中隔30bの増大した硬度は、それを貫通するのにスパイク160に対するより大きな力を要することがある。一方、より高い雰囲気温度では、突き刺し壁または中隔は柔軟過ぎて、スパイク160と接触すると分離するよりはむしろ変形することがある。
【0198】
コネクタ端部30aの温度は、加熱要素を適当な位置(例えば、ドア141上の位置2807またはその近傍)に置くこと、温度センサを据え付けて、コネクタ端部30aの温度を監視すること、コントローラを用いて温度データを受容すること、および加熱要素の動作を変調させることを含むことが可能な、多数の方法で制御されることが可能である。温度は、ストリッパ要素1491上に、またはキャリッジ146上に設置された温度センサ要素によって測定されることが可能である。それに代えて、コネクタ端部30aの温度は、コネクタ端部30aの表面温度を測定するように調整された赤外(IR)センサを用いて判断されることが可能である。
【0199】
コントローラは、自動化コンピュータ300におけるソフトウェア処理であることが可能である。これに代えて、コントローラはハードウェア・インタフェース310において実行されることが可能である。コントローラは、例えば、多数の方法のうちの1つにおいて、抵抗ヒータに送られた電力を変調することが可能である。例えば、コントローラは、抵抗ヒータへの電力の流れを変調することが可能であるMOSFETにPWM信号を送ることが可能である。コントローラは、多数のアルゴリズムを介して、測定された温度を所望の温度に制御することが可能である。1つの典型的なアルゴリズムは、ヒータ電力を設定するための測定された温度についての比例積分(PI)フィードバック・ループを備えている。これに代えて、測定された雰囲気温度に基づいてヒータ電力を設定するオープン・ループ・アルゴリズムでヒータ電力は変調されることが可能である。
【0200】
別の実施形態では、コネクタ端部30aの温度は、放射ヒータを位置2807において、例えばコネクタ端部を目掛けて、ドア141に取り付けることによって制御されることが可能である。これに代えて、コネクタ端部の温度は、位置2807における熱電要素を、例えば、ドア141上に取り付けることによって制御されることが可能である。熱電要素は、キャリッジ146に取り付けられると、コネクタ端部を囲う領域に加熱または冷却何れかを提供することが可能である。放射放熱器または熱電要素はコントローラによって変調されて、温度を与えられた範囲内に維持することが可能である。コントローラ端部30aについての好ましい温度範囲は、突き刺し壁または中隔を備えた材料に依存し、経験的に判断されることが可能である。一実施形態では、突き刺し壁はPVCであり、好ましい温度範囲は約10℃〜30℃、より好ましくは約20℃〜30℃の温度範囲に設定される。
【0201】
或る実施形態では、インジケータ領域33近傍のコネクタ・ヒータは、ドアが閉じられた後、透析液ライン30がカセット24に取り付けられる前に用いられることが可能である。コネクタ30a近傍の測定された温度が好ましい範囲外である場合、自動化コンピュータ300またはコントローラはコネクタ・ヒータを使用可能にする。自動化コンピュータ300またはコントローラは、測定された温度が好ましい範囲内となるまで自動接続処理を遅延させることが可能である。自動接続処理が完了した後は、コネクタ・ヒータは使用不能とされることが可能である。
【0202】
一旦処置が完了すると、あるいは、ライン30および/またはカセット24がサイクラ14から取り外す準備ができると、ドア141が開かれることを許容され、カセット24およびライン30がサイクラ14から取り外される前に、キャップ31および取り付けられたスパイク・キャップ63は、スパイク160およびライン30に再び取り付けられることが可能である。これに代えて、カセット24とライン30を備えた透析液容器とは、キャップ31および取り付けられたスパイク・キャップ63を再び取り付けることなく、サイクラ14から一括して取り外されことができる。このアプローチの利点は、単純化された取外し処理と、不適切にキャップを再取付けするかまたは不適切にキャップを密閉することによる、サイクラ上へのまたは周辺領域への如何なる流体の漏れの可能性を回避することとを含んでいる。
【0203】
図24〜
図32は、ライン取付けおよび自動接続動作中のキャリッジ146、キャップ・ストリッパ149、およびカセット24の斜視図を示している。ドア141および他のサイクラ構成要素は、明瞭さのために示されていない。
図24では、キャリッジ146は、あたかもドア141が
図8に示された位置で開いているかのように、下方に折り畳まれた位置で示されている。ライン30およびカセット24は、ドア141上に下げられるように配置される。
図25では、ライン30は、キャリッジ146に搭載され、カセット24は、取付位置145に搭載される。この時点では、ドア141は、サイクラの動作準備
をするために閉じることができる。
図26では、ドア141は閉じられている。ライン30上のインジケータ領域33にある識別子またはインジケータは、様々なライン特性を特定するために読み取られることが可能であり、その結果、サイクラ14は、どの透析液がどのくらい搭載されるかなどを判断することができる。
図27では、キャリッジ146は、左方に移動し、カセット24上の対応するスパイク・キャップ63と共にライン30上のキャップ31に係合している。動作中に、駆動要素133は、キャップ・トリッパ149に係合し、同様にキャップ・ストリッパ149を左方に移動させる。しかし、キャップ・ストリッパ149は、後退位置に残る。
図28では、キャップ・ストリッパ149は、前方に移動して、フォーク形状要素60をキャップ31に係合させ、それによって、スパイク・キャップ63に結合されているキャップ31に係合する。もしあれば、ロッカ・アーム61は、スパイク・キャップ63に対する係合位置に移動することが可能である。次に、
図29に示されるように、キャリッジ146およびキャップ・ストリッパ149は、カセット24から離れるように右方に移動し、その結果、カセット24上の対応するスパイク160からキャップ31およびスパイク・キャップ63を引っ張る。それは、この動作中に、ロッカ・アーム61(もしあれば)は、カセット24からスパイク・キャップ63を引っ張るのを支援することが可能である。
図30では、キャップ・ストリッパ149は、右方へのその移動を止め、キャリッジ146は、カセット24から離れるように移動し続ける。これは、ライン30のコネクタ端部30aをキャップ31から引かせ、フォーク形状要素60によってキャップ・ストリッパ149上にキャップ31およびスパイク・キャップ63を取り付けたままにする。
図31では、キャップ・ストリッパ149は、後退し、再びカセット24に向かって移動するためにキャリッジ146用の経路に何もない状態にする。
図32では、キャリッジ146は、カセット24に向かって移動し、ライン30のコネクタ端部30aをカセット24の対応するスパイク160に係合させる。キャリッジ146は、サイクラ動作中にこの位置に残ることがある。一旦処置が完了すると、
図24〜
図32に示される動作は、逆にされ、スパイク160および透析液ライン30に再びキャップを嵌め、サイクラ14からカセット24および/またはライン30を取り外すことが可能である。
【0204】
キャップ31およびスパイク・キャップ63の取外しをさらに図示するために、
図33は、ライン30の接続部の5つの異なる段階でのカセット24の断面図を示している。上部スパイク160では、
図26におけるように、スパイク・キャップ63はスパイク160上の所定位置に依然としてあり、透析液ライン30は、カセット24から離れて位置している。第2スパイク160では、上から下まで、
図27および
図28におけるように、透析液ライン30およびキャップ31は、スパイク・キャップ63に亘って係合する。この時点では、キャップ・ストリッパ149は、キャップ31およびスパイク・キャップ63に係合することが可能である。第3スパイク160では、上から、透析液ライン30、キャップ31、およびスパイク・キャップ63は、
図29におけるように、カセット24から離れるように移動している。この時点では、キャップ・ストリッパ149は、右方への移動を止めることが可能である。第4スパイク160では、上から、透析液ライン30は、
図30におけるように、右方への移動を継続し、ライン30からキャップ31を取り外す。一旦キャップ31および63が後退されると、透析液ライン30は、
図32におけるように、左方に移動し、ライン30のコネクタ端部30aをスパイク160に流体接続する。
【0205】
様々なセンサは、キャリッジ146およびキャップ・ストリッパ149がそれらの期待される位置に完全に移動することを確認するのを補助するために使用されることができる。一実施形態では、キャリッジ駆動部アセンブリ132は、6つのホール効果センサ(図示せず)を装備することができる(そのうちの4つはキャリッジ146用であり、2つはキャップ・ストリッパ149用である)。第1キャップ・ストリッパ・センサは、キャップ・ストリッパ149が完全に後退されたときを検出するように配置されることが可能で
ある。第2キャップ・ストリッパ・センサは、キャップ・ストリッパ149が完全に拡張されたときを検出するように配置されることが可能である。第1キャリッジ・センサは、キャリッジ146が「ホーム」位置にあるとき、つまり、カセット24およびライン30を搭載することを可能にする位置にあるときを検出するように配置されることがある。第2キャリッジ・センサは、キャリッジ146がスパイク・キャップ63に係合する位置にあるときを検出するように配置されることが可能である。第3キャリッジ・センサは、ライン30からキャップ31を取り外す位置にキャリッジ146が到達したときを検出するように配置されることが可能である。第4キャリッジ・センサは、ライン30のコネクタ端部30aをカセット24の対応するスパイク160に係合する位置にキャリッジ146が移動したときを検出するように配置されることが可能である。他の実施形態では、単一のセンサが、上述したキャリッジ位置の2つ以上を検出するために使用されることができる。キャップ・ストリッパおよびキャリッジ・センサは、電子制御基板(自動接続基板)に入力信号を供給することができ、それは、ひいてはユーザ・インタフェース144を介してユーザに特定の確認またはエラー・コードを伝えることができる。
【0206】
図11−6は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の他の実施形態の斜視図を示している。
図12に示される実施形態におけるキャリッジ駆動部アセンブリ132は、駆動要素133、ロッド134、タブ135、および窓136だけを備えていた。
図11−6の実施形態では、キャリッジ駆動部アセンブリ132は、駆動要素133、ロッド134、タブ135、および窓136を備えるだけでなく、縦列の自動IDビュー・ボックス1116をさらに備えることが可能である。ビュー・ボックス1116は、窓136に隣接して直接的に配置されることが可能である。また、ビュー・ボックス1116は、キャリッジ146がガイド130に沿って右方または左方の何れかに移動するときに、キャリッジ146上に配置された5つのスロット1086のそれぞれの水平軸が、対応するビュー・ボックス1116の中心を通るように配置および形成されることが可能である。ビュー・ボックス1116は、カメラ基板1106に取り付けられた自動IDカメラ1104に、透析液ラインがスパイク・キャップ63に係合する前に、透析液ライン・キャップ31がライン30上に配置されているか否かを検出させることを可能にすることがある。これは、ユーザがキャップ31を早期に取り外していないという確認を可能にすることがある。一旦キャップ31の存在または不在が判断されると、カメラ1104は、電子制御基板(本明細書中では自動接続基板と称される)に、対応する入力信号を提供することができ、それは、ひいては、ユーザ・インタフェース144を介してユーザに、ライン30上のキャップ31の存在に関する特定の確認またはエラー・コードを通信することができる。
【0207】
本発明の別の態様によれば、キャリッジ駆動部アセンブリ132は、自動接続基板1118を備えることが可能である。自動接続基板1118は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の上部に取り付けられることが可能であり、アセンブリ132の全長を延長させることが可能である。この例示の実施形態では、LED1120が自動接続基板1118にさらに取り付けられることが可能である。LED1120は、フォーク形状要素60の直上の固定位置に配置されることが可能である。また、LED1120は、LED1120から放射される光がストリッパ要素1491に亘って下方に移動するように向けられることが可能である。本発明の別の態様によれば、キャリッジ駆動部アセンブリ132は、流体基板1122をさらに備えることが可能である。流体基板1122は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の底部に取り付けられることが可能であり、アセンブリ132の長さを延長することも可能である。この例示の実施形態では、レシーバ1124(図示せず)がLED1120の直下の位置で流体基板1122に取り付けられることが可能であり、それは、自動接続基板1118に取り付けられる。従って、LED1120は、フォーク形状要素60に亘って光を放射することができ、光がレシーバ1124によって検出された場合、ストリッパ要素1491には透析液ライン・キャップ31は残されていないが、光がレシーバ1124に向かう途中で遮蔽された場合、ストリッパ要素1491にはキャ
ップ31が残されていることがある。このLED1120およびレシーバ1124の組合せは、ユーザまたはサイクラ14によってストリッパ要素1491に不注意に残されることがあるキャップ31の検出を可能にする。本発明の態様によれば、流体基板1122は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の内部に存在することがあり、サイクラ14を潜在的に故障させることがある、湿度、水分、または他の液体を検出する能力をさらに有することが可能である。
【0208】
キャリッジ146がスパイク・キャップ63に係合する力を、幾つのライン30が設置されているかに応じて調整する際に、利点がある場合がある。カセット24への接続を完了するのに必要な力は、スパイク・キャップ63に結合されなければならないキャップ31の個数に応じて増大する。インジケータ領域33でライン・インジケータからの情報を検出し読み取る検出装置は、駆動要素133に加えられる力を調整するのに必要なデータを提供するために使用されることもできる。力は、例えば、第1空気袋137、またはモータ/ボールねじなどの線形アクチュエータを含む、多数の装置によって生成されることができる。電子制御基板(例えば、自動接続基板など)は、ライン検出センサから入力を受信し、適切な制御信号を、線形アクチュエータのモータ、または空気袋137の膨張を制御する空気圧バルブの何れかに送るようにプログラムされることができる。コントローラ16は、駆動要素133の移動の程度または速度を、例えば、線形アクチュエータのモータに印加される電圧を調整することによって、または、空気袋137の膨張を制御する空気圧バルブを調整することによって制御することができる。
【0209】
本発明の態様によれば、キャリッジ駆動部アセンブリ132が、膜ポートをスパイク160に係合させるために、キャリッジ146上に少なくとも550N(124lbf)の力を生じさせることができることが必要な場合がある。この力は、キャリッジ方向の、カセット24上への膜ポートの打撃(spiking)について測定されるものである。スパイク160上に滅菌PVC膜ポートを打ち付けるのに必要な最大力は、110Nであることがある。加えて、スパイク160上に滅菌JPOC膜ポートを打ち付けるのに必要な最大力は、110Nであることがある。これらの力要求は、キャリッジ駆動部アセンブリ132が5つのJPOCポートを打ち付けることができることを確実にする。他の実施形態では、PVCポートの力要求は、さらに現在の挿入力に基づいて減少されることが可能である。
【0210】
ライン30上のキャップ31がカセット24のスパイク160上のキャップ63と共に取り外される本発明の態様は、動作の単純さに加えて、他の利点を持つことがある。例えば、スパイク・キャップ63がライン30上のキャップ31とのそれらの係合によって取り外されるので、キャリッジ146上に特定のスロットに取り付けられたライン30がない場合には、その位置ではスパイク・キャップ63は取り外されない。例えば、カセット24は5つのスパイク160および対応するスパイク・キャップ63を備えているが、サイクラ14は、該サイクラ14に関連づけられた4本以下のライン30(0本でも可)で動作することができる。ライン30が存在しないキャリッジ146上のそれらのスロットには、キャップ31がなく、従って、その位置でスパイク・キャップ63が取り外すことができる機構もない。このように、特定のスパイク160に接続されるライン30がない場合には、そのスパイク160上のキャップ63は、カセット24の使用中に所定位置に残ることが可能である。これは、スパイク160での漏れおよび/またはスパイク160での汚染を防止するのを補助することが可能である。
【0211】
図33におけるカセット24は、例えば、
図3、
図4、および
図6に示される実施形態に示されたものとは異なる少数の特徴部を備えている。
図3、
図4、および
図6の実施形態では、ヒータバッグ・ポート150、導出ライン・ポート152、および患者ライン・ポート154は、中央チューブ156およびスカート158を有するように構成される。
しかし、上述され、
図33に示されるように、ポート150,152,154は、中央チューブ156だけを備え、スカート158は備えないことが可能である。これも
図34に示されている。
図34に図示された実施形態は、左側ポンプ室181の外面に形成された隆起リブを備えている。隆起リブは、右側ポンプ室181にも設けられ、カセット取付位置145でのドア141内の機構を、ポンプ室181の外壁の追加接触箇所に提供することが可能であり、この機構は、ドア141が閉じられたときに、制御面148に対してカセットを押し付ける。隆起リブは必要ではなく、これに代えて、ポンプ室181は、
図34の右側ポンプ室181に対して示されるように、リブまたは他の特徴部を持たないことがある。同様に、
図3、
図4、および
図6の実施形態におけるスパイク160は、スパイク160のベース部にスカートまたは同様の特徴部を備えないが、
図33における実施形態は、スカート160aを備えている。これも
図34に示されている。スカート160aは、スカート160aとスパイク160との間の凹部のスパイク・キャップ63の端部を受容するように配置されることが可能であり、スパイク160とスパイク・キャップ63との間のシールを形成するのを補助する。
【0212】
図33に示される別の発明にかかる特徴部は、スパイク160を通じたスパイク163の遠位先端部と管腔159との配置に関する。この態様では、スパイク160の遠位先端部は、スパイク160の幾何学的な中心に概して沿って通るスパイク160の長手方向軸にまたはその近傍に配置される。長手方向軸にまたはその近傍にスパイク160の遠位先端部を配置することは、スパイク160を対応する透析液ライン30に係合するときの位置決め許容差を緩和することを補助することが可能であり、ライン30のコネクタ端部30aにおける隔壁または膜30bをスパイク160が刺すのを助ける。その結果、スパイク160の管腔159は、例えば、
図33に示され、
図35のスパイク160の端面図に示されるような、スパイク160の底部近傍で、スパイク160の長手方向軸から概してオフセットして配置される。また、スパイク160の先端は、スパイク160のより近い部分と比較して、幾らか減少した直径を有している(この実施形態では、スパイク160は、本体18からスパイク160の長さの約2/3だけ実際には直径の段階的変化を有している)。先端でのスパイク160の減少した直径は、スパイク160とライン30の内壁との間のクリアランスを提供することが可能であり、従って、隔壁30bに対して、スパイク160によって貫通されるときに、折り返されて、スパイク160とライン30との間に位置するための空間を与える。スパイク160(例えば、
図35Aに示される)上の段付き特徴部160bは、隔壁30bがライン30の内壁に接続され、それによって、ライン30とスパイク160との間に形成されるシールを向上させる位置に、ライン30に係合するように配置されることも可能である。
【0213】
別の一実施形態では、
図35Aに示されるように、スパイク160のベース部160cの長さは、短くされることが可能であり、それによって、スパイク160からスパイク・キャップ63を取り外すのに必要な力を減少するか、または、透析液ライン30のコネクタ端部30aに打ち付けるのに必要な力を減少させる。ベース部160cを短くすることは、スパイク160とそのキャップ63との間またはスパイク160とコネクタ端部30aの内周面との間の摩擦接触の面積を減少させる。加えて、スパイク160のベース部でのスカート160aは、個々のポスト160dと交換されることが可能である。ポスト160dは、スパイク160上にスパイク・キャップ63が適切に着座することを可能にすると共に、透析液供給セット12のパッケージングの前後の滅菌処理中にスパイク160の周囲の滅菌流体または気体のより完全な循環を可能にする。
【0214】
図35Aに示される実施形態をより完全に利用するために、
図35Bに示されるようなスパイク・キャップ64を使用することが可能である。スパイク・キャップ64のベース部上のスカート65は、
図35Aに示されるスパイク160のベース部のポスト160dに亘ってぴったりと嵌合するように構築される。加えて、スパイク160のベース部の内
部周囲の間欠リブ66および67は、スパイク・キャップ64とスパイク160のベース部160cとの間の滑り嵌めを提供することが可能であると共に、減菌気体または流体がキャップ付きのスパイク160のベース部に亘ってより遠くに浸透することを許容する。
図35Cに示されるように、スパイク・キャップ64の断面図では、3個1セットの内側リブ66,67,68は、スパイク・キャップ64とスパイク160のベース部160cとの間の滑り嵌めを提供するように使用されることが可能である。一実施形態では、リブ66およびリブ67は、それらの周面に沿って中断または間隙66aおよび67aを有し、スパイク160のベース部160cに亘って、カセットの外部の気体または流体が流れることを許容する。第3リブ68は、スパイク・キャップ64とスパイク160のベース部160cとの間の密閉係合をなすために周囲に不完全な箇所がなく、スパイク160の外表面の残りの部分からベース部160c密閉する。他の実施形態では、スパイク・キャップ64内のリブは、周方向にではなく縦方向に配向されるか、または、スパイク・キャップ64とスパイク160との間の滑り嵌めを提供する他の配向とされることが可能であると共に、外部気体または流体がスパイク160のベース部160cの外側に接触することを許容する。示された実施形態では、例えば、カセット、スパイク・キャップ、およびスパイク160のベース部160cの殆どの外面が、カセットの外部をエチレン・オキサイド・ガスに露出させることによって減菌することができる。段付き特徴部160bの直径およびスパイク160の先端は、スパイク・キャップ64の重複部分の内径より小さいので、カセットの内部からスパイク管腔に入る如何なる気体または流体も、スパイク160の外面に密閉リブ68まで達することができる。このように、カセットの流体通路に入るエチレンオキシドなどの如何なる減菌気体も、スパイク160の外表面の残りの部分に到達することが可能である。一実施形態では、気体は、例えば、患者ライン34または導出ライン28の端部の通気キャップを通じてカセットに入ることが可能である。
【0215】
スパイク・キャップ34は、スパイク160の端部に接触する3つ以上のセンタリング・リブ64Dを備えることが可能である。リブ64Dはスパイク・キャップ34の主たるアクセス部に沿った向きとされ、スパイク・キャップ34の閉じた端部近傍に配置される。好ましくは、キャップ/スパイクの向きを過剰に拘束せずに、キャップの閉じた端部をスパイク上に中央に置くための少なくとも3つのリブ63Dがある。スパイク・キャップ64は、スパイク・キャップ34の透析液キャップ31の穴31bへの貫通を容易とするための平滑な先端を備えたテーパー付きの端部を備えている。テーパー付きの端部は、それが穴31bと誤って整列した場合、スパイク・キャップ34をガイドするであろう。平滑な先端は、穴31bの内側縁部を捉え、かつ透析液キャップ材料に突き込まれるかもしれない鋭い先端とは異なり、透析液キャップ31のスナッギングを回避する。対照的に、平滑な先端は穴31bの縁部を通って滑ることが可能である。
【0216】
一旦カセット24およびライン30がサイクラ14に搭載されると、サイクラ14は、流体を透析液ライン30からヒータバッグ22および患者に移動させるようにカセット24の動作を制御しなければならない。
図36は、カセット24内の流体圧送および流体経路を制御すべくカセット24のポンプ室側(例えば、
図6に示される)と相互作用するサイクラ14の制御面148の平面図を示している。停止しているときには、一種のガスケットとして記述されることがあり、1枚のシリコンゴム製シートを備えることがある制御面148は、概して平坦であることが可能である。バルブ制御領域1481は、例えば、シート表面のまたは表面上のスコーリング(scoring)、溝、リブ、または他の特徴部によって制御面148に定義される(または定義されない)ことがあり、シートの平面に概して交わる方向に移動可能なように配置されることが可能である。内方/外方に移動することによって、バルブ制御領域1481は、カセット24上の膜15の関連する部分を移動させることができ、その結果、カセット24のそれぞれのバルブ・ポート184,186,190,および192を開閉し、従って、カセット24内の流れを制御する。2つのより大きな領域(ポンプ制御領域1482)は、同様に移動可能であり、その結果
、ポンプ室181と協働する膜15の関連する形状部分151を移動させる。膜15の形状部分151のように、ポンプ制御領域1482は、制御領域1482がポンプ室181内に拡張される際にポンプ室181の形状に対応するように形成されることが可能である。このように、ポンプ制御領域1482での制御シート148の部分は、ポンプ動作中に必ずしも伸ばされる必要がないかまたは弾性変形される必要がない。
【0217】
領域1481および1482のそれぞれは、例えば、カセット24がサイクラ14に搭載され、ドア141が閉じられた後で、カセット24の膜15とサイクラ14の制御面148との間に存在することがある如何なる空気または他の流体のすべてまたは実質的にすべてをも取り除くために使用されることがある関連する真空または導出ポート1483を有することが可能である。これは、制御領域1481および1482との膜15の緊密な接触を確実にするのを補助し、ポンプ動作および/または様々なバルブ・ポートの開/閉止状態によって所望の体積の供給を制御するのを補助することが可能である。なお、真空ポート1482は、制御面148がカセット24の壁または他の比較的剛性のある特徴部と接触するように押し付けられない位置に形成される。例えば、本発明の一態様によれば、カセットのポンプ室の一方または両方は、ポンプ室に隣接して形成された真空通気クリアランス領域を備えることが可能である。
図3および
図6に示されるようなこの例示の実施形態では、ベース部材18は、ポンプ室181を形成する楕円形状の凹部に隣接しかつその外側の真空通気ポート・クリアランスまたは拡張特徴部182(例えば、ポンプ室に流体接続された凹状領域)を備えることが可能であり、それによって、ポンプ制御領域1482用の真空通気ポート1483が、干渉なしに、膜15と制御面148との間から(例えば、膜15の断裂によって)如何なる空気または流体も取り除くことを可能する。拡張特徴部は、ポンプ室181の境界内に配置されることも可能である。しかし、ポンプ室181の周囲の外側に通気ポート特徴部182を配置することは、液体を圧送するためのより大きなポンプ室容積を確保することが可能であり、例えば、ポンプ室181の最大設置面積が、透析液を圧送するために使用されることを可能にする。好ましくは、拡張特徴部182は、ポンプ室181に対して垂直方向により低い位置に配置され、その結果、膜15と制御面148との間で漏れる如何なる液体も、可及的に早い段階で真空ポート1483を通じて引き出される。同様に、バルブ1481に関連づけられた真空ポート1483は、好ましくは、バルブ1481に対して垂直方向に低い位置に配置される。
【0218】
図36Aは、制御面148のベース要素1480とそのバルブおよびポンプ制御領域1481,1482との間の丸められた移行部分を有するように制御面148が構築または成型されることがあることを示している。接合部1491および1492は、それぞれ、ベース要素1480からバルブ制御領域1481およびポンプ制御領域1482に移行するように小さな半径に成型されることが可能である。丸められたまたは滑らかな移行部分は、制御面148を含む材料の早期の疲労および破損を防止するのを補助し、その寿命を延長させることが可能である。この実施形態では、真空ポート1483からポンプ制御領域1482およびバルブ制御領域1481に導くチャネル1484は、移行部分特徴部を収容するために幾らか長くされる必要がある場合がある。
【0219】
制御領域1481および1482は、カセット24の反対の制御面148の側(例えば、制御面148を形成するゴム製シートの後ろ側)の空気圧および/または体積を制御することによって移動されることがある。例えば、
図37に示されるように、制御面148は、制御領域1481,1482のそれぞれに関連づけて配置された制御室171を有し、互いから離隔された(または、もし望まれれば、少なくとも互いから独立して制御されることができる)嵌め合いブロック170が背面に接することが可能である。嵌め合いブロック170の表面は、カセット24が押し付けられて嵌め合いブロック170が背面に接した制御面148に関連して動作する際の、カセット24とのインタフェースを形成する。従って、嵌め合いブロック170の制御室は、カセット24の補足的なバルブまたは
ポンプ室に結合され、嵌め合いブロック170に隣接した制御面148の制御領域1481および1482、ならびにカセット24に隣接した膜15の関連する領域(形状部分151など)を間に挟む。空気または他の制御流体は、領域1481,1482用の嵌め合いブロック170の制御室171を出入りすることが可能であり、それによって、望まれるように制御領域1481および1482を移動させて、カセット24のバルブ・ポートを開閉する、および/または、ポンプ室181でのポンプ作用を達成する。
図37に示される1つの例示の実施形態では、制御室171は、バルブ制御領域1481のそれぞれの背面に接する筒状形状領域、および、ポンプ制御領域1482の背面に接する一対の楕円状空隙として配置されることが可能である。流体制御ポートは、各制御室171に設けられることが可能であり、その結果、サイクラ14は、制御室のそれぞれにおける流体の体積および/または流体の圧力を制御することができる。例えば、嵌め合いブロック170は、様々なポート、チャネル、開口、空隙、および/または制御室171と連通し、適切な空気圧/真空が制御室171に与えられることを可能にする他の特徴部を含む、マニホールド172に嵌ることが可能である。示されないが、空気圧/真空の制御は、制御可能なバルブ、ポンプ、圧力センサ、アキュムレータなどの使用を通じて、任意の適切な方法で行われることが可能である。勿論、制御領域1481,1482は、重力系、流体圧系、および/または機械系によって(リニアモータなどによって)、あるいは、空気圧系、流体圧系、重力系、および機械系を含む系の組合せによって、他の方法で移動されることがあると理解されるべきである。
【0220】
図37Aは、圧送カセットを操作するための流体流れ制御装置で用いるための、かつ圧力分配マニホールド172およびサイクラ14の接合ブロック170として用いるのに適した、一体型圧力分配モジュールまたはアセンブリ2700の分解図を示している。
図37Bは、空気圧式マニホールドまたはブロック、供給圧力用のポート、空気圧式制御バルブ、圧力センサ、圧力供給または接合ブロック、およびポンプを作動させるための可撓膜、および圧送カセット上のバルブを含む領域を備えた制御面またはアクチュエータを備えた一体型モジュール2700の図を示している。一体型モジュール2700は、圧送カセットの圧送室に存在する流体の体積を判断するためのFMS体積測定処理用の空気圧式マニホールド内に参照室を備えることも可能である。一体型モジュールは、真空ポート、およびアクチュエータと可撓性があるポンプとの間の界面からの経路またはチャネル、および流体トラップおよび液体検出システムに対する圧送カセットのバルブ膜のセットを備えることも可能である。幾つかの実施形態では、空気圧式マニホールドは単一のブロックとして形成されることが可能である。他の実施形態では、空気圧式マニホールドは、マニホールド・ブロック間に配置されたガスケットと一緒に接合された2つ以上のマニホールド・ブロックから形成されることが可能である。一体型モジュール2700は流体流れ制御装置中に比較的小さな空間を占有し、マニホールド・ポートを、圧送カセットに接合された圧力供給モジュールまたはブロックの対応するポートと連結させるチューブまたは可撓性がある導管の使用を排除する。可能な利点の中でも、一体型モジュール2700は腹膜透析サイクラの空気圧式の作動アセンブリのサイズおよび組立てコストを低減し、その結果、より小さくかつより安価なサイクラをもたらすことが可能である。加えて、圧力分配マニホールド・ブロック上の圧力または真空分配ポートと接合圧力供給ブロック上の対応する圧力または真空供給ポートとの間の短い距離は、ポートを接続させる導管の剛性と一緒になって、取り付けられた圧送カセットの応答性およびカセット・ポンプ容量積測定処理の精度を改良することが可能である。腹膜透析サイクラ14で用いるとき、或る実施形態では、金属圧力供給ブロックに直接に接合された金属圧力分配マニホールドを備えた一体型モジュールは、制御体積171Bとサイクラ14の参照室174との間の何れの温度差も低減させることも可能であり、これは、ポンプ容量測定処理の精度を改良することが可能である。
【0221】
一体型モジュール2700の分解図が
図37Aに示されている。接合ブロックまたは圧
力供給ブロック上に取り付けられたアクチュエータ面は、前後に動いて流体を圧送し、および/またはポンプ・カセット24の膜15上で押し、もしくは引っ張ることによってバルブを開閉するように配置された可撓性がある領域を備えた、ガスケットまたは制御面148に似ているか、またはそれと同等である。サイクラ14に対しては、制御面148は、制御領域1481、1482の背後の制御体積171A、171Bに供給された空気圧式の正圧および負力によって作動される。制御面148は、接合ブロック170の前方面上の隆起した面2744上でリップ2742としっかりと嵌合させることによって、圧力供給ブロックまたは接合ブロック170に取り付けられる。接合ブロック170は、1又は複数の対応するポンプ制御面1482の卵型の曲面形状と整列し、かつそれを支持するための1又は複数の表面凹所2746を備えることが可能であり、それはポンプ制御室を形成する。表面凹所がある、またはそれがない同様な構成が、圧送カセットの1又は複数のバルブを制御するための対応する制御面1481と整列させるためにバルブ制御領域171Aを形成するにおいて備えられていることが可能である。接合ブロック170は、さらに、制御流体または気体のポート173Cからポンプ制御面1482の全裏面への流れを容易とするための、ポンプ制御面1482の背後に接合ブロック170の凹所2746の表面に溝2748を備えることが可能である。それに代えて、溝2748を有するよりはむしろ、凹所2746は、粗面化された面または接線方向に多孔性の面で形成されることが可能である。
【0222】
接合ブロック170は圧力分配マニホールド172を制御面148に接続し、圧力または真空を制御面148上の様々な制御領域に供給する。接合ブロック170は、それが、圧力および真空をバルブ制御領域1481およびポンプ制御領域1482に供給し、真空を真空ポート1483に供給し、かつ接続部をポンプ制御体積171Bから圧力センサに供給するための空気圧式導管を提供する点で、圧力供給ブロックと称されることも可能である。ポート173Aはバルブ制御体積171Aを圧力分配マニホールド172に接続する。ポート173Cはポンプ制御体積171Bを圧力分配マニホールド172に接続する。真空ポート1483はポート173Bを介して圧力分配マニホールド172に接続される。一実施形態では、ポート173Bは圧力供給ブロック170の表面上方に延びて、制御面148を通過して、制御面148をポート173B上へ引っ張らずに、かつ流れをブロックせずに、ポート1483において真空を提供する。
【0223】
圧力供給ブロック170は、圧力分配マニホールド172の前面に取り付けられる。ポート173A、173B、173Cは、バルブ・ポート2714に接続される圧力分配マニフホールド172上の空気圧式回路と並んでいる。1例では、圧力供給ブロック170は、それらの間に固定された前方平坦ガスケット2703と共に圧力分配マニホールド172に接合される。ブロック170およびマニホールド172は機械的に一緒に保持され、これは、或る実施形態では、ボルト2736または他の種類のファスナの使用を介するものである。別の例では、平坦なガスケット2703よりはむしろ、規格に対応する要素が、圧力供給ブロック170または圧力分配マニホールド172の何れかに置かれ、または何れかに成型される。これに代えて、圧力供給ブロック170は、接着剤、両面テープ、摩擦溶着、レーザ溶着、または他の結合方法によって圧力分配マニホールド172に結合させることが可能である。ブロック170およびマニホールド172は金属またはプラスチックで形成されることが可能であり、結合方法は材料に依存して変化するであろう。
【0224】
圧力分配マニホールド172は空気圧式バルブ2710、参照室174、流体トラップ1722および空気圧式回路のためのポートを含み、あるいは一体型モジュール2700のうち、接続部は蓄圧器、バルブの間の空気圧接続を提供し、多数のカートリッジ・バルブ2710を受容するポート2714を含む。カートリッジ・バルブ2710は、限定されるものではないが、バルブ制御体積171Aへの流れを制御するバイナリ・バルブ2660、ポンプ制御体積171Bへの流れを制御するバイナリ・バルブX1A、X1B、X
2、X3、および空気袋2630、2640、2650および蓄圧器2610、2620への流れを制御するバイナリ・バルブ2661〜2667を含む。カートリッジ・バルブ2710はバルブ・ポート2714に押され、回路基板2712を介してハードウェア・インタフェース310に電気的に接続される。
【0225】
圧力分配マニホールド172における空気圧回路は、前面および裏面の溝またはスロット1721、および1つの面の溝1721をバルブ・ポート2714、流体トラップ1722、および反対面の溝およびポートに接続する略垂直な穴の組合せで形成されることが可能である。幾つかの溝1721は参照室174に直接的に接続されることが可能である。単一の垂直な穴は、溝1721を、密に間隔が設けられ、かつ千鳥状とされた多数のバルブ・ポート174に接続されることが可能である。1例では、
図37Aに示されるように、前方平坦ガスケット2703によって溝1721が相互から分離される時、密封された空気圧式導管が形成される。
【0226】
流体トラップ1722中での液体の存在は、導電率プローブ2732の対によって検出されるのが可能である。導電率プローブ2732は、圧力分配マニホールド172中の流体トラップ1722に入る前に、裏側ガスケット2704、裏側プレート2730および穴2750を通って滑る。
【0227】
裏側プレート2730は参照体積174、圧力分配マニホールド172の裏面の溝1721を密封し、圧力センサ2740のためのポートおよび圧力および真空ライン2734のためのポート、および大気2732への通気口を提供する。1例では、圧力センサは、単一の基板2740に半田付けされ、かつ裏側プレート2730上の裏側ガスケット2704に対して群としてプレスされたICチップであることが可能である。1例では、ボルト2736は、裏側プレート2730、圧力分配マニホールド172および圧力供給ブロック170を、それらの間のガスケット2703、2702と一緒に固定する。別の例では、裏側プレート2730は、前述の圧力供給マニホールド172に結合されることが可能である。組み立てられた一体型モジュール2700は
図37Cに示されている。
【0228】
図37Cは一体型マニホールド2700中の空気圧回路および該マニホールドの外側の空気圧要素の模式図を示す。ポンプ2600は真空および圧力を生じさせる。ポンプ2600は、三方バルブ2664および2665を介して、通気口2680、ならびに負圧または真空溜め2610および正圧溜め2620に接続される。正圧および負圧溜め2620、2610における圧力は、それぞれ、圧力センサ2678、2676によって測定される。ハードウェア・インタフェース310は、ポンプ2600のスピードおよび三方バルブ2664、2665、2666の位置を制御して、それぞれの溜めにおける圧力を制御する。自動接続ストリッパ要素空気袋2630は三方バルブ2661を介して、正圧ライン2622または負圧または真空ライン2612の何れか接続されている。自動化コンピュータ300は、バルブ2661の位置がストリッパ要素1461の位置を制御するように命令する。閉塞部空気袋2640およびピストン空気袋2650は三方バルブ2662および2663を介して圧力ライン2622または通気口2680の何れかに接続されている。自動化コンピュータ300はバルブ2663に命令して、ドア141が閉じられて、カセット24を制御面148に対してしっかりと係合させた後に、ピストン空気袋を圧力ライン2622に接続させる。閉塞部空気袋2640はバルブ2662および制限部2682を介して圧力ライン2622に接続さる。閉塞部空気袋2640はバルブ2662を介して通気口2680に接続される。オリフィス2682は、有利には、閉塞部147を後退させて、圧力ライン2622における圧力を維持する閉塞部空気袋2640の充填を示す。圧力ライン2622における高圧は様々なバルブ制御面171Aおよびピストン空気袋をカセット24に対して作動するように保ち、これは、閉塞部147が開くにつれて、患者との間で流れを妨げる。逆に、閉塞部空気袋2640から通気口2680への
接続は制限されておらず、その結果、閉塞部147は迅速に閉じることが可能である。
【0229】
バルブ制御面1481は、今度は三方バルブ2660の位置によって制御されるバルブ制御体積171Aにおける圧力によって制御される。バルブ2660は、ハードウェア・インタフェース310まで通過した自動化コンピュータ300からの命令を介して個々に制御されることが可能である。ポンプ制御体積171Bにおける圧送圧力を制御するバルブは二方バルブX1A、X1Bで制御される。バルブX1A、X1Bは、1例では、ハードウェア・インタフェース310によって制御されて、自動化コンピュータ300によって命令された圧力を達成することが可能である。それぞれのポンプ制御室171Bにおける圧力はセンサ2672によって測定される。参照室における圧力はセンサ2670によって測定される。二方バルブX2、X3は、それぞれ、参照室174をポンプ制御室171Bおよび通気口2680に接続する。
【0230】
流体トラップ2622は、本出願において他の箇所で説明されるように、操作中に真空ライン2612に対するものである。流体トラップは数個のラインによって圧力供給ブロック170中のポート173Bに接続される。流体トラップにおける圧力は、裏側プレート2730上に取り付けられた圧力センサ2674によって監視される。
【0231】
真空ポート1483を使用して、ドアを開く前に、または開いている間に、治療の最後に膜15を制御面148から分離することが可能である。真空ポート1483に対して負圧ソースによって提供された真空は、治療中に、膜15を制御面148に密着係合させる。幾つかの例において、真空の適用を中断するときでさえ、カセット膜15から制御面を分離し、ドア141が開位置まで自由に回転するのを妨げるのに、実質的な量の力が必要であることがある。それにより、或る実施形態では、圧力分配モジュール2700は、正圧ソースと真空ポート1483との間にバルブ付きのチャネルを提供するように構成される。真空ポートにおける正圧の供給は、膜15を制御面148から分離するのを助け、それにより、カセット24が制御面148からより容易に分離されるのを可能とし、ドア141が自由に開くのを可能とする。サイクラ中の空気圧式バルブは自動化コンピュータ300によって制御されて、正圧を真空ポート1483に提供するのが可能である。マニホールド172は、この目的で専用の別々にバルブ付きのチャネルを備えているのが可能であり、あるいはこれに代えて、それは特別なシーケンスで操作される現存のチャネル構成およびバルブを採用することが可能である。
【0232】
一例では、真空ポート1483には、真空ポート1483を正圧溜め2620に一時的に接続させることによって正圧を供給することが可能である。治療中に、真空ポート1483は、通常、マニホールド172中の共通流体収集室または流体トラップ1722を介して真空溜め2610に接続される。1例では、コントローラまたは自動化コンピュータは正圧溜めと体積制御室171Bとの間のバルブX1B、および負圧溜めと同一の体積制御室171Bとの間のバルブX1Aを同時に開くことが可能であり、これは、流体トラップ1722および真空ポート1483中の空気を加圧するであろう。加圧された空気は真空ポート1483を通って、膜15と制御面148との間を流れ、膜と制御面との間の何れの真空結合も破壊する。しかし、示されたマニホールドにおいては、キャップ・ストリッパ149のストリッパ要素1491は、正圧が共通流体収集室1722の流体に供給されつつ延びることが可能である。なぜならば、ストリッパ空気袋2630は真空供給ライン2612に接続されているからである。この例では、引き続いてのステップにおいて、流体トラップ1722は今や加圧された真空ラインからバルブで出され、正圧および真空溜めを体積制御室171Bに接続する2つのバルブX1A、X1Bが閉じられるのが可能である。次に、真空ポンプ2600を操作して、真空溜め2610および真空供給ライン2612における圧力を低下させ、これは、今度は、ストリッパ要素1491が引き戻されるのを可能とする。次に、カセット24を制御面148から脱着させ、ストリッパ要素
1491を後退させた後に、ドア141が開けられるのが可能である。
【0233】
本発明の態様によれば、真空ポート1483は、膜15における漏れを検出するために使用されることが可能であり、例えば、真空ポート1483に接続された導管または室の液体センサは、膜15に穴が開くか、または、液体が膜15と制御面148との間に導入される場合に、液体を検出することが可能である。例えば、真空ポート1483は、嵌め合いブロック170の補足的な真空ポート173に位置決めされ、密閉的に関連づけられ、嵌め合いブロック170は、同様に、マニホールド172の共通の流体収集室1722に導く流体通路1721に密閉的に関連づけられることが可能である。流体収集室1722は、入口を備えることが可能であり、それを通じて、真空が制御面148のすべての真空ポート1483に加えられ、分配されることができる。流体収集室1722に真空を与えることによって、流体は、真空ポート173および1483のそれぞれから引き出されることが可能であり、従って、様々な制御領域で膜15と制御面148との間の如何なる空間からも流体を取り除く。しかし、領域の一又は複数に液体が存在する場合、関連づけられた真空ポート1483は、真空ポート173に、および流体収集室1722に導くライン1721に液体を引き込むことが可能である。如何なるそのような液体も、流体収集室1722に収集されることが可能であり、一又は複数の適切なセンサ(例えば、液体の存在を示す、室1722内の導電率の変化を検出する一対の導電率センサ)によって検出されることが可能である。この実施形態では、センサは、流体収集室1722の底側に配置されることが可能であり、真空源は、室1722の上端で室1722に接続する。従って、液体が流体収集室1722に引き込まれる場合、その液体は、液位が真空源に達する前に検出されることが可能である。随意に、疎水性フィルタ、バルブ、または他の構成要素が、室1722への真空源接続箇所に配置されることが可能であり、真空源への流体の進入にさらに抵抗するのを補助する。このように、液体の漏れは、真空源バルブが液体によって汚染される危険に晒される前に、コントローラ16によって検出および作用されることが可能である(例えば、警告を発する、液体入口バルブを閉じる、およびポンプ動作を止める)。
【0234】
一実施形態では、制御室171の内壁は、例えば、ポンプ制御領域1482に関連づけられた制御室171に対して
図37に示されるように、ポンプ室のスペーサ要素50と幾らか類似した隆起要素を備えることができる。これらの隆起要素は、プラトー(高台)形状の特徴部、リブ、または完全に後退された制御領域1482から離れるように制御ポートを凹ませておく他の突起の形態であることができる。この構成は、制御室171の圧力または真空のより均一な分布を可能にし、制御面148による任意の制御ポートの早期閉鎖を防止することが可能である。予め形成された制御面148(少なくともポンプ制御領域中の)は、供給行程中のカセット24のポンプ室の内壁または充填行程中の制御室171の内壁の何れかに対して完全に拡張されたときも顕著な伸張力に晒されないことが可能である。従って、制御領域1482が制御室171内に非対称的に延びて、制御領域1482が制御室の一又は複数のポートを、その室が完全に空にされる前に、早期に閉じさせることが可能である。制御領域1482と制御ポートとの間の接触を防止する制御室171の内面に特徴部を有することは、制御領域1482が充填行程中に制御室内壁との均一な接触をなすことができることを確実にするのを補助することが可能である。
【0235】
上記に示唆されるように、サイクラ14は、システムの様々なバルブ、圧力センサ、モータなどと電気連通するデータプロセッサを持った制御システム16を備えることが可能であり、好ましくは、所望の動作シーケンスまたはプロトコルに応じてそのような構成要素を制御するように構成される。制御システム16は、適切な回路類、プログラム、コンピュータ・メモリ、電気接続部、および/または指定されたタスクを行う他の構成要素を備えることが可能である。システムは、ポンプ、タンク、マニホールド、バルブ、または所望の空気圧または他の流体圧(大気圧または他の或る参照圧よりも高い正圧、あるいは
、大気圧または他の或る参照圧よりも低い負圧または真空)を生じさせる他の構成要素を備えることが可能であり、それによって、制御面148の領域および他の空気圧動作構成要素の動作を制御する。制御システム16(または少なくともその部分)に関するさらなる詳細が下に提供される。
【0236】
1つの例示の実施形態では、ポンプ制御室171の圧力は、バイナリ・バルブによって制御されることが可能であり、例えば、それは、開いて制御室171を適切な圧力/真空に露出し、閉じて圧力/真空源を遮断する。バイナリ・バルブは、鋸歯形状の制御信号を使用して制御されることが可能であり、それはポンプ制御室171の制御圧力に変調されることが可能である。例えば、ポンプ供給行程中(つまり、正圧がポンプ制御室171に導入され、膜15/制御面148を移動させ、ポンプ室181から液体を押し出す)、バイナリ・バルブは、鋸歯信号によって比較的速い速度で開閉するように駆動され、制御室171内の適切な圧力を確立する(例えば、約70〜90mmHgの圧力)。制御室171の圧力が約90mmHg以上に上昇される場合、鋸歯信号は、より長い時間バイナリ・バルブを閉じるように調整されることが可能である。制御室171の圧力が約70mmHg以下に低下した場合、鋸歯制御信号は、制御室171の圧力を上昇させるために再びバイナリ・バルブに適用されることが可能である。このように、典型的なポンプ動作中に、バイナリ・バルブは、複数回開閉され、一又は複数の長い期間の間、閉じられることが可能であり、その結果、液体がポンプ室181から押し出される圧力は、所望のレベルまたは範囲(例えば、約70〜90mmHg)に維持される。
【0237】
幾つかの実施形態では、また、本発明の態様によれば、例えば、膜15がポンプ室181内のスペーサ50と接触するか、または、ポンプ制御領域1482がポンプ制御室171の壁と接触するときに、膜15/ポンプ制御領域1482の「行程の終端」を検出することは有用である場合がある。例えば、ポンプ動作中に、「行程の終端」の検出は、新しいポンプ・サイクル(ポンプ室181を満たすか、または、ポンプ室181から流体を駆動すること)を開始するために、膜15/ポンプ制御領域1482移動が逆にされるべきであることを示すことがある。ポンプ用の制御室171の圧力が鋸歯制御信号によって駆動されるバイナリ・バルブによって制御される1つの例示の実施形態では、ポンプ室181の圧力は、比較的高い周波数で変動する(例えば、バイナリ・バルブが開閉される周波数またはその近傍の周波数)。制御室171内の圧力センサは、この変動を検出することが可能であり、それは、膜15/ポンプ制御領域1482がポンプ室181の内壁またはポンプ制御室171の壁に接触していないときに、一般により高い振幅を有する。しかし、一旦膜15/ポンプ制御領域1482がポンプ室181の内壁またはポンプ制御室171の壁に接触すると(つまり、「行程の終端」)、圧力変動は、一般に減衰されるか、または、ポンプ制御室171内の圧力センサによって検出可能な方法で変化する。この圧力変動の変化は、行程の終端を特定するために使用されることができ、これに応じて、ポンプならびにカセット24および/またはサイクラ14の他の構成要素を制御することが可能である。
【0238】
一実施形態では、制御室171Bにかけられた空気圧は、制御室171Bに接続された圧力変換器2672(
図37C)からの信号を受容するプロセッサ、および蓄圧器2620、2610と制御室171Bとの間の速作用性バイナリ・バルブX1A、X1Bによって能動的に制御される。プロセッサは、バルブ・デューティ・サイクルを変化させて、制御体積171Bにおいて所望の圧力を達成する閉じたループ比例または比例インテグレータ・フィードバック制御を含む様々な制御アルゴリズムで圧力を制御することが可能である。一実施形態では、プロセッサは、しばしばバングバング型コントローラと称されるオン−オフ・コントローラで制御室における圧力を制御する。オン−オフ・コントローラは供給ストローク中に制御体積171Bにおける圧力を監視し、圧力が第1の下限未満であるときに(制御体積171Bを正圧溜め2620に接続する)バイナリ・バルブX1Bを
開き、圧力が第2の上限を上回るときにバイナリ・バルブX1Bを閉じる。導入ストロークの間に、オン−オフ・コントローラは圧力が第3の限度を上回るときに(制御体積171Bを負圧溜め2610に接続する)バイナリ・バルブX1Aを開き、圧力が第4の限度未満であるときにバイナリ・バルブ1Aを閉じ、ここに、第4の限度は第3の限度未満であって、第3および第4の両限度は第1の限度未満である。供給ストロークおよび続いてのFMS測定中の経時的な圧力のプロットが
図66に示される。膜15が制御室171Bに亘って移動するにつれて、制御室圧力2300は第1の下限2312と第2の上限2310との間を振動する。圧力は、膜15が移動を停止するときに、限度の間の振動を停止させる。膜15は、典型的には、それがカセットのスタジアム・ステップ50の何れかと接触するか、またはそれが制御室表面171Bと接触するときに、移動を停止する。膜15は、出口流体ラインが閉塞される場合に、移動を停止することも可能である。
【0239】
自動化コンピュータ300は、圧力信号を評価することによってストロークの終わりを検出する。ストロークの最後(EOS:end−of−stroke)を示す圧力振動の最後を検出するための多くの可能なアルゴリズムがある。米国特許第6,520,747号における「流体流量の変化を測定するシステムおよび方法の詳細な記載(Detailed Description of the System and Method of Measuring Change Fluid Flow Rate)」なる表題のセクションおよび米国特許第8,292,594号におけるストロークの終わりを検出するためのろ過を記述するセクションにおけるEOSを検出するためのアルゴリズムおよび方法をここに援用する。
【0240】
EOSを検出するためのアルゴリズムの1例では、AC300は供給ストローク中の第1および第2の限界および導入ストローク中の第3および第4の限界を横切る圧力の間の時間を評価する。オン−オフ・コントローラは、制御室体積が導入または供給ストローク中に変化するにつれ、2つの限界の間を振動する圧力に呼応してバルブX1A、X1Bを開閉する。膜15がストロークの終わりに移動を停止すると、圧力変化は有意に減少し、その結果、圧力はもはや一方または両方の限界を超えない。AC300は、圧力が交互の限界を超える間の時間を測定することによってEOSを検出することが可能である。最後の限界を横切る圧力以来の時間が所定の閾値を超える場合、AC300はEOSを宣言することが可能である。アルゴリズムは、さらに、その間にAC300が限界交差の間の時間を測定しない初期の期間を備えることが可能である。
【0241】
別の例のアルゴリズムでは、AC300は圧力信号の時間での微分を評価する。該微分が最小の時間の間の最小の閾値未満のままである場合、AC300はEOSを宣言することが可能である。さらなる例では、最小閾値は、ストローク中の平均圧力微分の絶対値の平均である。アルゴリズムはデータポイントのセットに対する曲線近似の傾斜(時間での微分)を演算し、ここに、データポイントは移動するウィンドウから取られる。次に、それぞれの傾斜の絶対値をストロークに亘って平均して、平均圧力微分の絶対値を演算する。EOSアルゴリズムの別の例では、AC300は、初期の遅延後まで圧力データを備えないことがある。AC300は初期圧力データを無視して、ストロークの初期部分中に場合により起こる不規則な圧力トレースによる誤EOC検出を回避する。別の例では、AC300は、ストロークの後期部分における圧力の第2の微分が最小時間の間に閾値以下のままであり、かつ待ち時間が過ぎた後だけEOSを宣言する。
【0242】
EOSを宣言する基準は異なる圧送条件について最適化されることが可能である。最適化されたEOS検出条件は第2の圧力微分閾値、第2の微分閾値未満のままである最小時間、初期の遅延の持続時間および待ち時間の長さを備えている。これらのEOS検出の基準、例えば、バッグ20、22からの導入ストローク、患者への供給ストローク、患者からの導入ストローク、およびバッグ20、22への供給ストロークは異なって最適化され
ることが可能である。これに代えて、それぞれのEOS検出基準は、制御室171Bにおける圧送圧力の関数であることが可能である。
[閉塞部]
本発明の一態様では、一又は複数の可撓性のあるラインを開閉する閉塞部は、一対の対向する閉塞部材を備えることが可能であり、それらは、バネ鋼から作られた平板(例えば、板バネ)などの可撓性要素として形成されることが可能であり、閉塞部を動作させるべく閉塞部材の一方または両方に力を加えるように構成された力アクチュエータを有する。或る実施形態では、力アクチュエータは、可撓性要素間に配置された拡張可能または拡大可能な部材を備えることが可能である。拡張可能部材のサイズを減少させた状態で、可撓性要素は、平坦または略平坦な状態であり、ピンチヘッドを付勢して、ラインを閉じるべく挟むように一又は複数のラインに係合する。しかし、拡張可能部材が可撓性要素を離すように付勢するときには、可撓性要素は、ピンチヘッドを曲げて引き戻し、ラインを解放して、ラインを通じた流れを可能にする。他の実施形態では、閉塞部材は、力アクチュエータによって加えられる力のレベルに対して本質的に剛性があることができる。或る実施形態では、力アクチュエータは、一方または両方の対向する閉塞部材に力を加えることが可能であり、それによって、閉塞部材間の距離を、それらが対向する領域の少なくとも一部で増加させ、可撓性チューブの開閉を達成する。
【0243】
図38は、分解図を示し、
図39は、患者ライン34および導出ライン28、ならびに/または、サイクラ14もしくはセット12の他のライン(例えば、ヒータバッグ・ライン26など)を閉じるかまたは閉塞するために使用されることが可能である閉塞部147の例示の実施形態についての部分的な組立図を示している。閉塞部147は、随意のピンチヘッド161(例えば、ドア141に対して押し付けるようにチューブと接触し、チューブを閉じるように挟む概して平坦な刃状要素を備えている。他の実施形態では、ピンチヘッドの機能は、閉塞部材165の一方または両方の延びた縁部と交換することができる。ピンチヘッド161は、Oリングまたは他の部材などのガスケット162を備え、それは、ピンチヘッド161と協働して、例えば、閉塞されたラインのうちの1つに漏れがある場合に、サイクラ14ハウジングへの流体(例えば、空気または液体)の進入に抵抗するのを補助する。蛇腹形ガスケット162は、サイクラ・ハウジングの前面パネルに取り付けられたピンチヘッド・ガイド163に取り付けられ、ピンチヘッド161がピンチヘッド・ガイド163を通過する(つまり、パネルは、ドア141を開けることによって露出する)。ピンチヘッド・ガイド163は、ピンチヘッド161の摺動に対する拘束および/または実質的な抵抗なしに、ピンチヘッド161がピンチヘッド・ガイド163を出入りすることを可能にする。枢動軸164は、それぞれフック形の枢動軸軸受(例えば、標準的なドア・ヒンジで見受けられるような)を具備した例示の実施形態の板バネ165を備える一対の対向した閉塞部材をピンチヘッド161に取り付ける。つまり、ピンチヘッド161上の軸ガイドの開口と板バネ165上のフック形軸受によって形成された開口とは、互いに整列され、枢動軸164は、開口に挿入され、その結果、ピンチヘッド161および板バネ165は、互いに枢動可能に接続される。板バネ165は、鋼などの任意の適切な材料から作られることが可能であり、無負荷のときに概して水平となるように配置されることが可能である。板バネ165の反対の端部は、同様のフック形軸受を備えており、それは、第2枢動軸164によって線形調整器167に枢動可能に接続される。この実施形態では、力アクチュエータは、板バネ165間に配置された空気袋166を備え、その結果、流体(例えば、圧力下の空気)が空気袋に導入されたときに、空気袋は、枢動軸164間の領域で拡張して板バネ165を互いから離すように押すことが可能ある。線形調整器167は、サイクラ・ハウジング82に固定されている一方で、ピンチヘッド161は、浮遊可能とされるが、その移動は、ピンチヘッド・ガイド163によって案内される。線形調整器167は、その下端にスロット孔を備え、アセンブリ全体が所定位置に調整されることを可能にし、従って、閉塞部147がサイクラ14に設置されたときに、ピンチヘッドを適切に配置することを可能にする。ターンバックル168または他の構
成が、ハウジング82に対する線形調整器167の位置を調整するのを補助するために使用されることが可能である。つまり、ピンチヘッド161は、一般に適切に配置される必要があり、その結果、板バネ165が互いの近傍に配置され、空気袋166が実質的に空にされるかまたは大気圧にされた状態で、ピンチヘッド161は、患者および導出ラインを適切に圧迫して、チューブの切断、撚れ、または破損なしに、チューブの流れを閉じるように挟む。線形調整器167のスロット開口は、この閉塞部147の所定位置への高精度な位置決めおよび固定を可能にする。解放刃169によって提供されるようなオーバーライド解放装置は、随意に板バネ165間に配置され、より詳細に下で議論されるように、板バネ165を押し離すように回転されることが可能であり、それによって、ピンチヘッド161をピンチヘッド・ガイド163内に後退させる。解放刃169は、手動で動作されることが可能であり、例えば、電源喪失、空気袋166の故障、または他の状況の場合に、閉塞部147を無効化する。
【0244】
閉塞部の或る実施形態の構築において有益なことがある或る構成要素の付加的な構成および記述が、米国特許第6,302,653号明細書に提供されている。板バネ165は、曲げ力に弾性的に抗し、所望の本数の押し出しチューブを閉塞すべく、曲げ変位に応じて、十分な復元力を提供するのに十分な長手方向剛性(曲げに対する抵抗)を有する、任意の材料から構築されることが可能である。例示の実施形態では、各板バネは、無負荷であり、シートまたはプレートの形状であるときに、本質的に平坦である。一又は複数の可撓性閉塞部材(バネ部材)を利用した代替の実施形態では、曲げ力に弾性的に抗し、所望の本数の押し出しチューブを閉塞すべく、曲げ変位に応じて、十分な復元力を提供するのに十分な長手方向剛性(曲げに対する抵抗)を有する、任意の閉塞部材が利用されることが可能である。潜在的に適切なバネ部材は、当業者に明白なように、筒状、プリズム形、台形、正方形、または長方形の棒またはビーム、I形ビーム、楕円形ビーム、椀状面などの、多種多様な形状を有することができるが、これらに限定されるものではない。当業者は、本教示および特定の用途の要件に基づいて板バネ165の適切な材料および寸法を容易に選択することができる。
【0245】
図40は、閉塞部147の平面図を示しており、空気袋166からは空気が抜かれ、板バネ165は、互いに近傍に配置され、平坦または略平坦な状態である。この位置では、ピンチヘッド161は、ピンチヘッド・ガイドとサイクラ14の前面パネル(つまり、ドア141内部のパネル)から完全に拡張され、患者および導出ラインを閉塞することを可能にする。一方、
図41は、膨張した状態の空気袋166を示しており、板バネ165は、互いから離れるように押され、それによって、ピンチヘッド161をピンチヘッド・ガイド163内に後退させる(なお、線形調整器167は、サイクラ・ハウジング82に対する所定位置に固定され、従って、ハウジング82の前面パネルに対して固定される。板バネ165は、互いから押し離されるように移動され、ピンチヘッド161がピンチヘッド・ガイド163を自由に出入りして移動するように配置されるので、ピンチヘッド161は、前面パネルに対して後方に移動する)。この条件は、ピンチヘッド161が患者および導出ラインを閉塞するのを防止し、閉塞部147がサイクラ14の通常動作中のままの状態であるという条件である。つまり、上で議論したように、サイクラ14の様々な構成要素は、空気圧/真空を使用して動作することが可能であり、例えば、制御面148は、適切な空気圧/真空駆動下で動作することがあり、カセット24に対する流体圧送およびバルブ動作をもたらす。このように、サイクラ14が通常動作しているときには、サイクラ14は、十分な空気圧を生じさせることが可能であり、システム動作を制御するだけでなく、空気袋166を膨張させて、ピンチヘッド161を後退させ、患者および導出ラインの閉塞を防止する。しかし、システム・シャットダウン、故障、誤り、または他の条件の場合には、空気袋166への空気圧を止めることが可能であり、それによって、空気袋166の空気を抜き、板バネ165を真っすぐにし、ピンチヘッド161を拡張してラインを閉塞する。示された構成の1つの考え得る利点は、板バネ165の復元力が平衡を
保たれるということであり、その結果、ピンチヘッド161は、ピンチヘッド・ガイド163に対して移動するときに、一般にはピンチヘッド・ガイド163に拘束されない。加えて、板バネ165の対向する力は、アセンブリの枢動軸およびブッシングの非対称な磨耗量を減少させる傾向がある。また、一旦板バネ165が略直線位置になると、板バネ165は、ピンチヘッド161の長さに概して沿った方向に力を与えることができ、その力は、板バネ165上に空気袋166によって与えられる力よりも数倍大きく、それによって、板バネ165を互いに分離し、ピンチヘッド161を後退させる。さらに、板バネ165が平坦または略平坦な状態では、ピンチヘッド161によって与えられる圧迫力を克服するために、押し潰されたチューブ中の流体によって与えられる必要がある力は、それらの端部で板バネに加えられ、平坦にされた板バネの平面に本質的に平行ときに必要とされる比較的大きな力に達し、それによって、平坦にされた板バネのカラム安定性を壊すことによって板バネを座屈させる。その結果、閉塞部147は、ラインを閉塞するのに非常に効果的であり、故障の機会を少なくすることができる一方で、ピンチヘッド161を後退させるために空気袋166によって加えられる比較的小さな力を要求する。例示の実施形態の2重の板バネ配置は、板バネを曲げるのに必要な任意の所定の力に対して、および/または、板バネの任意の所定のサイズおよび厚さに対して、ピンチヘッドによって提供される圧迫力を著しく増大させるという付加的な利点を有することがある。
【0246】
幾つかの状況では、ライン上の閉塞部147の力が比較的大きく、ドア141を開くことを困難にすることがある。つまり、ピンチヘッド161がラインに接触して閉塞するときに、ドア141は、閉塞部147の力に対向しなければならず、幾つかの場合には、これは、ドア141を閉じ状態に維持するラッチを手で動作させることが困難になるかまたは不可能になることがある。勿論、サイクラ14が始動され、動作するための空気圧を発生している場合には、閉塞部空気袋166は、膨張することができ、閉塞部ピンチヘッド161が後退される。しかし、サイクラ14でのポンプ故障のような幾つかの場合には、空気袋166の膨張は、不可能または困難であることがある。ドアの開放を可能にするために、閉塞部147は、手動解放を備えることが可能である。この例示の実施形態では、閉塞部147は、
図38および
図39に示されるような解放刃169を備えることが可能であり、それは、板バネ165間の回転動作のために枢動可能に取り付けられた一対の羽根を備えている。停止の際には、解放刃羽根は、
図39に示されるようにバネと整列することが可能であり、閉塞部が通常動作することを可能にする。しかし、板バネ165が平坦な状態であり、ピンチヘッド161が手動で後退される必要がある場合には、解放刃169は、例えば、六角レンチまたは他のツールを解放刃169に係合させ、解放刃169を回すことによって回転されることが可能であり、その結果、羽根は、板バネ165を離すように押す。六角レンチまたは他のツールは、サイクラ14のハウジング82の開口(例えば、サイクラ・ハウジング82の左側ハンドル凹部近傍の開口)に挿入され、閉塞部147を係合解除すべく動作され、ドア141の開放を可能にすることが可能である。
[ポンプ供給体積測定]
本発明の別の態様では、サイクラ14は、流量計、重量計、または流体体積もしくは重量の他の直接的な測定手段の使用なしに、システム10の様々なラインに供給される流体の体積を判断することが可能である。例えば、一実施形態では、カセット24内のポンプなどのポンプによって移動される流体の体積は、ポンプを駆動するために使用される気体の圧力測定値に基づいて判断されることが可能である。一実施形態では、体積判断は、2室を互いから分離し、分離した2室のそれぞれの圧力を測定し、2室内の圧力が部分的にまたは実質的に等しくなることを可能にし(2室を流体接続することによって)、圧力を測定することによってなされることができる。測定した圧力と、2室のうちの一方の既知の容積と、均一化が断熱で生じるという仮定とを使用して、他方の室(例えば、ポンプ室)の体積を演算されることができる。一実施形態では、2室を流体接続した後で測定された圧力は、実質的には互いに等しくないことがある(つまり、2室内の圧力は、完全には均一化していないことがある)。しかし、下に説明されるように、これらの実質的に等し
くない圧力は、ポンプ制御室の体積を判断するために使用されることが可能である。
【0247】
例えば、
図42は、カセット24のポンプ室181、付随する制御構成要素、および流入経路/流出経路の模式図を示している。この図示の例では、ヒータバッグ22と、ヒータバッグ・ライン26と、カセット24を通じた流体経路とを備えることが可能である液体供給源は、ポンプ室の上側開口191に液体入力を設けるように示されている。液体出口は、この例では、ポンプ室181の下側開口187から液体を受けるように示され、例えば、カセット24の流体経路および患者ライン34を備えることが可能である。液体供給源は、バルブ(例えば、バルブ・ポート192を備える)を備えることが可能であり、それは、開閉してポンプ室181との間の流れを許容/妨害することができる。同様に、液体出口は、バルブ(例えば、バルブ・ポート190を備える)を備えることが可能であり、それは、開閉してポンプ室181との間の流れを許容/妨害することができる。勿論、液体供給源は、一又は複数の透析液容器、患者ライン、カセット24内の一又は複数の流路、または他の液体源などの任意の適切な構成を備えることができ、同様に、液体出口は、導出ライン、ヒータバッグおよびヒータバッグ・ライン、カセット24内の一又は複数の流路、または他の液体出口などの任意の適切な構成を備えることができる。一般的に言えば、ポンプ室181(つまり、
図42における膜14の左側)は、動作中に水または透析液などの非圧縮液体で充填される。しかし、空気または他の気体は、初期運転中、準備中、または下で議論されるような他の状況などの幾つかの状況でポンプ室181内に存在することがある。また、ポンプの容積および/または圧力検出に関する本発明の態様は、カセット24のポンプ構成に関して記述されるが、本発明の態様は、任意の適切なポンプまたは流体移動システムと共に使用されることが可能であると理解されるべきである。
【0248】
さらに、
図42は、膜15および制御面148(それらは互いに隣接する)の右方に、上で議論したように、ポンプ室181に対する制御面148のポンプ制御領域1482に関連づけられた嵌め合いブロック170における空隙または他の空間として形成されることがある制御室171を模式的に示している。制御室171には、適切な空気圧が導入され、それによって、膜15/制御領域1482を移動させて、ポンプ室181内の液体の圧送を達成する。制御室171は、ラインL0と連通することが可能であり、このラインは、別のラインL1と、圧力源(例えば、空気圧源または真空源)と連通する第1バルブX1とに分岐する。圧力源は、ピストン・ポンプを備え、それによって、室内をピストンが移動して制御室171に供給される圧力を制御することが可能であるか、または、異なる種類の圧力ポンプおよび/またはタンクを備え、それによって、適切な気体圧力を供給して膜15/制御領域1482を移動させ、ポンプ作用を行うことが可能である。さらに、ラインL0は、別のラインL2および参照室(例えば、下に述べられる測定を行うように適切に構成された空間)と連通する第2バルブX2に導く。さらに、参照室は、通気口または他の参照圧力(例えば、大気圧源または他の参照圧力源)に導くバルブX3を有したラインL3と連通する。バルブX1,X2,およびX3のそれぞれは、独立して制御されることが可能である。圧力センサは、制御室および参照室に関連する圧力を測定するように配置されることが可能であり、例えば、1つのセンサを制御室171に、別のセンサを参照室に配置する。これらの圧力センサは、任意の適切な方法で圧力を検出するように配置および動作されることが可能である。圧力センサは、サイクラ14用の制御システム16、または、ポンプもしくは他の特徴部によって供給される体積を判断する他の適切なプロセッサと連通することが可能である。
【0249】
上述したように、
図42に示されるポンプ機構のバルブおよび他の構成要素は、ポンプ室181、液体供給源、および/または液体出口の圧力を測定する、および/または、ポンプ室181から液体供給源または液体出口に供給される液体の体積を測定するように制御されることができる。体積測定に関して、ポンプ室181から供給される流体の体積を判断するために使用される1つの技術は、2つの異なるポンプ状態の参照室内の圧力に対
して制御室171の相対圧力を比較することである。相対圧力を比較することによって、制御室171の容積の変化を判断することができ、それは、ポンプ室181の容積の変化に対応し、ポンプ室181から供給され、該ポンプ室に受ける体積に反映される。例えば、制御室171内の圧力がポンプ室導入サイクル中に低下され(例えば、開いたバルブX1を通じて圧力源から負圧を加えることによって)、その結果、膜15およびポンプ制御領域1482を制御室壁の少なくとも一部と接触するように(または膜15/領域1482の別の適した位置に)引き込んだ後で、圧力源から制御室を分離するようにバルブX1を閉じ、バルブX2を閉じ、それによって、制御室171から参照室を分離する。バルブX3は、開いて参照室を大気圧に通気することが可能であり、次に、閉じて参照室を分離する。バルブX1が閉じ、制御室および参照室内の圧力が測定された状態で、次に、バルブX2を開き、制御室および参照室内の圧力均一化を開始させる。参照室および制御室の初期圧力は、参照室の既知の容積と、均一化が開始された後(必ずしも完了している必要はない)で測定された圧力と共に、制御室の容積を判断するために使用されることがある。この処理は、シート15/制御領域1482がポンプ室181のスペーサ要素50と接触するように押し込まれるときに、ポンプ供給サイクルの終端で繰り返されることが可能である。供給サイクルの終端での制御室容積を導入サイクルの終端での体積と比較することによって、ポンプから供給された液体の体積を判断することができる。
【0250】
概念的には、圧力均一化処理(例えば、バルブX2を開く際の)は、断熱で、つまり、制御室および参照室の空気とその周囲環境との間に生じる熱伝導なしに生じるものとして見られる。その概念的な考えは、バルブX2が閉じるときにバルブX2に仮想ピストンが初期的に位置し、バルブX2が開くときに仮想ピストンがラインL0またはL2中で移動して制御室および参照室内の圧力を均一化させるということである。(a)圧力均一化処理が比較的速く起こるので、(b)制御室および参照室内の空気は、元素の濃度が略同じであり、(c)温度が同様であり、圧力均一化が断熱で起こるという想定は、体積測定に小さな誤差のみを導入することがある。また、一実施形態では、均一化が開始された後で得られた圧力は、実質的な均一化が生じる前に測定されることが可能であり、さらに、ポンプ室容積を判断するために使用される初期圧力測定と最終圧力測定との間の時間を短くする。さらに、誤差は、例えば、膜15/制御面148、カセット24、制御室171、ライン、参照室などに対して低い熱伝導率の材料を使用することによって減少させることができ、その結果、熱伝導を低減する。
【0251】
断熱系が、バルブX2が閉じた状態と、バルブX2が開き、圧力が均一化する状態との間に存在するという想定で、次のことが成り立つ。
PVγ=定数 …(1)
ここで、Pは圧力であり、Vは体積であり、γは定数に等しい(例えば、気体が空気などの二原子の場合には約1.4)。このように、次式は、バルブX2を開き圧力均一化が生じる前後の制御室および参照室内の圧力および容積を関連づけるように書かれることができる。
【0252】
PrVrγ+PdVdγ=定数=PfVfγ …(2)
ここで、Prは、バルブX2を開く前の参照室ならびにラインL2およびL3の圧力であり、Vrは、バルブX2を開く前の参照室ならびにラインL2およびL3の容積であり、Pdは、バルブX2を開く前の制御室ならびにラインL0およびL1の圧力であり、Vdは、バルブX2を開く前の制御室ならびにラインL0およびL1の容積であり、Pfは、バルブX2を開いた後の参照室および制御室の均一化した圧力であり、Vfは、制御室、参照室、ならびにラインL0、L1、L2、およびL3を備えたシステム全体の容積である(つまり、Vf=Vd+Vr)。Pr,Vr,Pd,Pf,およびγは既知であり、Vf=Vr+Vdであるので、この数式は、Vdについて解くために使用されることができる(ここでは、特許請求の範囲を含めて、容積値などを判断する際の「測定された圧力」
に使用するように言及されるが、そのような測定された圧力値は、必ずしもpsi単位などの任意の特定の形態である必要がないと理解されるべきである)。これに代えて、「測定された圧力」または「判断された圧力」は、電位、抵抗値、マルチビットのデジタル値などのような圧力を代表する任意の値を含むことが可能である。例えば、ポンプ制御室内の圧力を測定するために使用される圧力変換器は、ポンプ制御室内の圧力を代表するアナログの電位、抵抗、または他の表示を出力することが可能である。トランスデューサからの生の出力は、測定された圧力、および/またはトランスデューサからのアナログ出力を使用して生成されたデジタル値、トランスデューサ出力に基づいて生成されるpsiまたは他の値などのような出力の或る修正された形態として使用されることも可能である。同じことが、判断された容積などの他の値にも言えるが、必ずしも立方センチメートルなどの特定の形態である必要はない。これに代えて、判断された容積は、容積の代表である任意の値を含むことが可能であり、例えば、立方センチメートルで実際の容積を生成するために使用されることができる。
【0253】
ポンプによって供給される体積を判断するための流体管理システム(FMS)技術の実施形態では、バルブX2を開く際の圧力均一化が断熱系で生じると想定される。このように、下の式(3)は、圧力均一化前後の参照室系の容積の関係を与える。
【0254】
Vrf=Vri(Pf/Patm)−(1/γ) …(3)
ここで、Vrfは、参照室の容積、ラインL2およびL3の容積、ならびに開いた後でバルブX2の左または右に移動することが可能である「ピストン」の移動がもたらす容積調整を含む参照室系の最終(均一化後)容積であり、Vriは、参照室ならびに「ピストン」がバルブX2に位置する状態でのラインL2およびL3の初期(均一化前)容積であり、Pfは、バルブX2が開いた後の最終均一化圧力であり、Patmは、バルブX2が開く前の(この例では大気圧)参照室の初期圧力である。同様に、式(4)は、圧力均一化前後の制御室系の容積の関係を与える。
【0255】
Vdf=Vdi(Pf/Pdi)−(1/γ) …(4)
ここで、Vdfは、制御室の容積、ラインL0およびL1の容積、ならびに開いた後でバルブX2の左または右に移動することが可能である「ピストン」の移動がもたらす容積調整を含む制御室系の最終容積であり、Vdiは、制御室ならびに「ピストン」がバルブX2にある位置する状態でのラインL0およびL1の初期容積であり、Pfは、バルブX2が開いた後の最終圧力であり、Pdiは、バルブX2が開く前の制御室の初期圧力である。
【0256】
参照室系および制御室系の容積は、バルブX2が開き、圧力を均一化させた後で、同じ絶対量だけ変化するが、式(5)に示されるように、符号が異なる(例えば、バルブX2が開いたときに容積変化が「ピストン」の左または右への移動によってもたらされるからである)。
【0257】
ΔVr=(−l)ΔVd …(5)
(なお、この参照室および制御室の容積変化は、仮想ピストンの移動のみによるものである。参照室および制御室は、通常状態下の均一化処理中に実際には容積が変化しない)。また、式(3)からの関係を使用して、参照室系の容積変化は、次式から与えられる。
【0258】
ΔVr=Vrf−Vri=Vri(−1+(Pf/Patm)−(1/γ)) …(6)
同様に、式(4)を使用して、制御室系の容積変化は、次式から与えられる。
【0259】
ΔVd=Vdf−Vdi=Vdi(−1+(Pf/Pdi)−(1/γ)) …(
7)
Vriが既知であり、PfおよびPatmが測定されるかまたは既知であるので、ΔVrを演算することができ、それは式(5)によれば(−)ΔVdと等しいと想定される。従って、Vdi(参照室との圧力均一化前の制御室系の容積)は、式(7)を使用して演算されることができる。この実施形態では、Vdiは、L0およびL1が固定および既知の量である、制御室ならびにラインL0およびL1の容積を表している。VdiからL0およびL1を減算して、制御室の容積を単独で得る。上の式(7)を使用することによって、例えば、(例えば、導入サイクルの終端および導出サイクルの終端の)ポンプ動作の前(Vdi1)および後(Vdi2)の両方で、制御室の容積変化を判断することができ、従って、ポンプによって供給される(またはポンプに取り込まれる)流体の体積の測定値を提供する。例えば、Vdi1が充填行程の終端での制御室の容積であり、Vdi2がそれに続く供給行程の終端での制御室の容積である場合には、ポンプによって供給される流体の体積は、Vdi2からVdi1を減算することによって推定されることが可能である。この測定は圧力に基づいてなるので、体積判断は、圧送行程が完全か部分的であるかに拘わらず、ポンプ室181内の膜15/ポンプ制御領域1482の殆ど如何なる位置に対してもなされることができる。しかし、充填および供給行程の終端になされた測定は、ポンプ動作および/または流量への影響が殆どないか影響がまったくなしに達成されることができる。
【0260】
本発明の一態様は、制御室の容積判断および/または他の目的に使用される圧力測定値を特定する技術に関与している。例えば、圧力センサは、制御室内の圧力および参照室内の圧力を検出するために使用されることが可能であるが、検出された圧力値は、バルブの開閉、制御室への圧力導入、参照室の大気圧または他の参照圧力への通気などに応じて変化することがある。また、一実施形態では、制御室と参照室との間の圧力均一化前の時点から均一化後まで断熱系が存在すると想定されるので、時間的に近いタイミングで測定された適切な圧力値を特定することは、誤差を低減するのを補助することが可能である(例えば、圧力測定値間での短い経過時間は、システムで交換される熱量を減少させることが可能である)。このように、測定された圧力値は、注意深く選択される必要がある場合があり、それによって、適切な圧力が、ポンプなどによって供給される体積を判断するために使用されることを確実にするのを補助する。
【0261】
説明の目的のために、
図43は、バルブX2を開く前の時点から、バルブX2を開いて2室内の圧力を均一化させて暫くするまでの、制御室および参照室に対する例示の圧力値のプロットを示している。この例示の実施形態では、制御室内の圧力は、均一化前の参照室内の圧力よりも高いが、制御室内圧力は、充填行程中および/またはその終端などの幾つかの構成における均一化前の参照室内圧力よりも低いことがあると理解されるべきである。また、
図43におけるプロットは、均一化圧力に印を付けた水平線を示すが、この線が明瞭さのためにのみ示されていると理解されるべきである。均一化圧力は、一般にバルブX2を開く前には知られることはない。この実施形態では、圧力センサは、制御室および参照室の両方に対して約2000Hzの頻度で圧力を検出するが、他の適切なサンプリング・レートを使用するもことができる。バルブX2を開く前に、制御室および参照室内の圧力は略一定であり、2室には空気または他の流体はまったく導入されていない。このように、バルブX1およびX3は、一般にはバルブX2を開く前に閉じる。また、バルブ・ポート190および192などのポンプ室に導くバルブは、ポンプ室、液体供給源、または液体出口における圧力変化の影響を防ぐために閉じることが可能である。
【0262】
初めに、測定された圧力データは、制御室および参照室に対する初期圧力(つまり、PdおよびPr)を特定するために処理される。1つの例示の実施形態では、初期圧力は、測定された圧力データで使用される10点のスライド・ウィンドウの解析に基づいて特定される。この解析は、各ウィンドウ内のデータ(またはデータセット)に対する最近似線
を、例えば最小二乗法を使用して生成し、最近似線の傾きを判断することを含む。例えば、新しい圧力が制御室または参照室に対して測定される都度、最小二乗近似線が、最新の測定値および9個の先の圧力測定値を含むデータセットに対して判断されることが可能である。この処理は、圧力データの幾つかのセットに対して繰り返されることが可能であり、判断は、最小二乗近似線の傾斜が最初に負(または非零値)になったときになされることが可能であり、後続のデータセットに対してさらに負の方へ(または零傾斜から逸れるように)成長させ続ける。最小二乗近似線が適切な増加する非零傾斜を有する点は、2室の初期圧力を特定するために使用されることが可能である(つまり、バルブX2が開く前の時点で)。
【0263】
一実施形態では、参照室および制御室に対する初期圧力値は、連続した5個のデータセットの最後にあると判断されることが可能であり、ここでは、それらのデータセットに対する最近似線の傾斜が、第1データセットから第5データセットまで増加し、第1データセットに対する最近似線の傾斜が、最初に非零になる(つまり、第1データセットに先行するデータセットに対する最近似線の傾斜が、零であるかまたは十分に非零ではない)。例えば、圧力センサは、1/2ミリ秒毎にサンプリングすることが可能であり(または他のサンプリング・レート)、バルブX2を開く前の時点にサンプリングを開始する。圧力測定値がなされる都度、サイクラ14は、先の9個の測定値と共に最新の測定値を取り、セット中の10個のデータ点に対する最近似線を生成することが可能である。次の圧力測定値を取る際に(例えば、1/2ミリ秒後)、サイクラ14は、9個の先の測定値と共に測定値を取り、再びセット中の10点に対する最近似線を生成することが可能である。この処理は、繰り返されることが可能であり、サイクラ14は、1セット10個のデータ点に対する最近似線の傾斜が最初に非零になったとき(または適切に傾斜したとき)を判断することが可能であり、例えば、10個のデータ点の5個の後続のセットに対する最近似線の傾斜が個々の後のデータセットに応じて増加することを判断することが可能である。使用すべき特定の圧力測定値を特定するために、1つの技術は、制御室または参照室に対する初期圧力(つまり、PdまたはPr)として使用される測定値として、第5データセット(つまり、最近似線が一貫した傾斜で増加していることが分かり、第1測定値が時間的に最も早く得られた圧力測定値である第5データセット)中の第3測定値を選択することである。この選択は、経験的方法を使用して選択された(例えば、圧力測定値をプロットし、次に、圧力が均一化処理を開始したときを最良に表す点を選択する)。勿論、適切な初期圧力を選択するために他の技術を使用することも可能である。
【0264】
1つの例示の実施形態では、選択されたPdおよびPrの測定値が生じたときが、所望の時間閾値内(例えば、互いに1〜2ミリ秒以内)にあったことの確認がなされることが可能である。例えば、上述した技術が、制御室内圧力および参照室内圧力を解析し、圧力均一化が開始される直前に圧力測定値(従って、時点)を特定するために使用される場合には、圧力が測定されるタイミングは、互いに比較的接近しているべきである。そうでなければ、圧力測定値の一方または両方を無効化する誤差または他の誤り条件があったことになる。生じたPdおよびPrが適切に互いに接近するタイミングを確認することによって、サイクラ14は、初期圧力が適切に特定されたと確認することが可能である。
【0265】
制御室および参照室内の圧力が均一化し、その結果、測定された室内圧力がポンプ室容積を安定して判断するために使用されることができるタイミングを特定するために、サイクラ14は、制御室および参照室の両方に対する圧力測定値からの一連のデータ点を含むデータセットを解析し、データセットのそれぞれに対する最近似線を判断し(例えば、最小二乗法を使用して)、制御室用のデータセットおよび参照室用のデータセットに対する最近似線の傾斜が、最初に適切に互いに類似する(例えば、傾斜は両方とも零近傍であるかまたは互いに閾値内にある値を有する)タイミングを特定することが可能である。最近似線の傾斜が同様であるかまたは零に近いときに、圧力は、均一化したと判断されること
が可能である。何れかのデータセット用の第1圧力測定値は、最終均一化圧力(つまり、Pf)として使用されることも可能である。1つの例示の実施形態では、圧力均一化が、バルブX2を開いた後、一般に約200〜400ミリ秒以内に生じ、均一化の大部分が、約50ミリ秒以内に生じたことが分かった。従って、制御室および参照室内の圧力は、バルブX2を開く前の時点から均一化が達成される時点まで、均一化処理全体の間に約400〜800回、またはそれ以上の回数、サンプリングされることが可能である。
【0266】
幾つかの場合には、代替のFMS技術を使用して、制御室容積測定の正確さを向上させることが望ましいことがある。圧送されている液体と制御室気体と参照室気体との間の温度の実質的な差は、圧力均一化が断熱で生じるという想定に基づいた演算に著しい誤差を導入することがある。制御室と参照室との間の十分な圧力均一化まで圧力測定を行うのを待機することは、過剰な量の熱伝導を生じさせることがある。本発明の一態様では、互いに実質的に不等である、つまり、完全な均一化が生じる前に測定される、ポンプ室および参照室の圧力値は、ポンプ室容積を判断するために使用されることが可能である。
【0267】
一実施形態では、熱伝導は最小限となることがあり、断熱演算誤差は、バルブX2の開放から完全な圧力均一化を通じた均一化期間全体に亘って室内圧力を測定し、断熱演算に対する均一化期間にサンプリング点を選択することによって低減される。APDシステムの一実施形態では、制御室と参照室との間の完全な圧力均一化に先立って得られる測定室内圧力は、ポンプ室容積を判断するために使用されることができる。一実施形態では、これらの圧力値は、2室が最初に流体接続され、均一化が開始されてから約50ミリ秒後に測定されることが可能である。上述したように、一実施形態では、完全な均一化は、バルブX2が開いてから約200〜400ミリ秒後に生じることがある。このように、測定圧力は、バルブX2を開いた(または、均一化が開始された)後の時点で得られることが可能であり、それは、均一化期間全体の約10%〜50%またはそれ以下である。別の方法では、測定圧力は、圧力均一化の50〜70%が生じた時点で得られることが可能である(つまり、参照室およびポンプ室内圧力は、初期室内圧力と最終均一化圧力との間の差の約50〜70%変化した。コンピュータ対応のコントローラを使用して、制御室および参照室内の実質的な回数の圧力測定が、均一化期間中になされ、格納され、および解析されることができる(例えば、40〜100回の個々の圧力測定)。均一化期間の最初の50ミリ秒におけるサンプリングされた時点のうち、断熱演算を行うための理論上最適化されたサンプリング点が存在する(例えば、最適化されたサンプリング点が、バルブX2を開いた後、約50ミリ秒で生じる、
図43を参照)。最適化されたサンプリング点は、バルブX2の開放の後の十分に早い時点で生じることが可能であり、それによって、2室の気体体積間の熱伝達を最小限にするが、圧力センサの特性とバルブ作動の遅れとによる圧力測定の著しい誤差を導入するほど早い時点では生じない。しかし、
図43で見ることができるように、ポンプ室および参照室内の圧力は、この時点では互いに実質的に等しくないことがあり、従って、均一化は完了していない場合がある(なお、幾つかの場合では、バルブX2を開いた直後に信頼できる圧力測定値を得ることが技術的に困難である場合がある。例えば、圧力センサの固有の不正確さ、バルブX2を完全に開くのに必要な時間、および、バルブX2を開いた直後の制御室または参照室の一方の圧力の急激な初期変化などの理由がある)。
【0268】
圧力均一化中に、制御室および参照室内の最終圧力が同じでないときには、式(2)は次のようになる。
PriVriγ+PdiVdiγ=定数=PrfVrfγ+PdfVdfγ
…(8)
ここで、Pri=バルブX2を開く前の参照室内の圧力、Pdi=バルブX2を開く前の制御室の圧力、Prf=最終参照室内圧力、Pdf=最終制御室内圧力である。
【0269】
最適化アルゴリズムは、ΔVdおよびΔVrの絶対値間の差が均一化期間に亘って最小化(または所望の閾値以下に)される圧力均一化期間中の時点を選択するために使用されることができる(断熱処理では、この差は、式(5)によって示されるように、理想的にはゼロであるべきである。
図43では、ΔVdおよびΔVrの絶対値間の差が最小化される時点は、50ミリ秒の線で生じ、「最終圧力が特定された時点」とマークされている)。まず、圧力データは、制御室および参照室から、バルブX2の開放と最終圧力均一化との間の複数点j=1〜nで収集されることができる。Vri、つまり、圧力均一化前の参照室系の固定容積は公知であるので、Vrj(バルブX2を開いた後のサンプリング点jでの参照室系容積)の後続の値は、均一化曲線に沿った各サンプリング点Prjで式(3)を使用して演算されることができる。Vrjの個々のそのような値については、ΔVdに対する値は、式(5)および式(7)、つまり、Vrjの各値を使用して演算されることができ、従って、Vdij、Vdiに対する推定値、圧力均一化前の制御室系の容積を得る。Vrjの各値およびVdijのその対応する値を使用して、また、式(3)および式(4)を使用して、ΔVdおよびΔVrの絶対値の差は、均一化曲線に沿った各圧力測定点で演算されることができる。2乗した差の合計は、Vrjの各値およびその対応するVdijに対する圧力均一化中のVdiの演算値における誤差の測定値を提供する。|ΔVd|および|ΔVr|の2乗した差の最小の合計を得るための参照室内圧力をPrf、その関連する参照室容積をVrfとして示せば、Vrfに対応するデータ点PrfおよびVdfは、Vdiの最適化された推定値、制御室系初期容積を演算するために使用されることができる。
【0270】
PdfおよびPrfに対する最適化された値を、均一化曲線上の何処でキャプチャするかを判断する1つの方法は、次の通りである。
1)制御室および参照室から、バルブX2を開く直前に開始し、PrおよびPdが等しく近づく状態で終了する一連の圧力データセットを得る。Priがキャプチャされた最初の参照室内圧力である場合には、
図32における後続のサンプリング点は、Prj=Pr1,Pr2,...Prnと称される。
【0271】
2)式(6)を使用して、Priの後の各Prjについて、対応するΔVrjを演算する(ここで、jは、Priの後のj番目の圧力データ点を表す)。
ΔVrj=Vrj−Vri=Vri(−1+(Prj/Pri)−(1/γ))
3)個々のそのようなΔVrjについて、式(7)を使用して、対応するVdijを演算する。
例えば、
ΔVr1=Vri*(−1+(Pr1/Pri)−(1/γ))
ΔVd1=−ΔVr1
従って、
Vdi1=ΔVd1/(−1+(Pd1/Pdi)−(1/γ))
Vdin=ΔVdn/(−1+(Pdn/Pdi)−(1/γ))1セットn個の制御室系初期容積(Vdi1〜Vdin)を、圧力均一化中のそのセットの参照室内圧力データ点Pr1〜Prnに基づいて演算して、今度は、圧力均一化期間全体に亘る制御室系初期容積(Vdi)の最適化された測定値を得る時点(f)を選択することができる。
【0272】
4)式(7)を使用して、Vdi1〜Vdinの各々について、時点k=1〜nに対する制御室内圧力測定値Pdを使用してΔVdj,kをすべて演算する。
Pr1に対応するVdiについて、
ΔVd1,1=Vdi1*(−1+(Pd1/Pdi)−(1/γ))
ΔVd1,2=Vdi1*(−1+(Pd2/Pdi)−(1/γ))
・
・
・
ΔVd1,n=Vdi1*(−1+(Pdn/Pdi)−(1/γ))
・
・
・
Prnに対応するVdiについて、
ΔVdn,l=Vdin*(−1+(Pd1/Pdi)−(1/γ))
ΔVdn,2=Vdin*(−1+(Pd2/Pdi)−(1/γ))
・
・
・
ΔVdn,n=Vdin*(−1+(Pdn/Pdi)−(1/γ))
5)ΔVrおよびΔVdj,kの絶対値間の2乗誤差の合計を取る。
【0274】
[S1は、Vr1およびΔVrからの、Vdi、つまり、制御室系初期容積を判断するために第1データ点Pr1を使用したときの、均一化期間中のすべてのデータ点に亘って|ΔVd|から|ΔVr|を減算した2乗誤差の合計を表している]。
【0276】
[S2は、Vr2およびΔVrからの、Vdi、つまり、制御室系初期容積を判断するために第2データ点Pr2を使用したときの、均一化期間中のすべてのデータ点に亘って|ΔVr|から|ΔVd|を減算した2乗誤差の合計を表している。]
・
・
・
【0278】
6)次に、ステップ5から最小の2乗誤差合計S(または所望の閾値以下の値)を生成するPr1とPrnとの間のPrデータ点は、選択されたPrfとなり、そこから、Pdf、およびVdiの最適化された推定値、つまり、制御室初期容積を判断することができ
る。この例では、Pdfが、Prfと同時にまたは略同時に生じる。
【0279】
7)上記の手順は、制御室容積の推定値が望まれるときにはいつでも適用されることができるが、好ましくは各充填行程および各供給行程の終端に適用されることができる。充填行程の終端での最適化されたVdiと、対応する供給行程の終端での最適化されたVdiとの間の差は、ポンプによって供給される液体の体積を推定するために使用されることができる。
[空気検出]
本発明の別の態様は、ポンプ室181内の空気の存在と、存在する空気の体積(もしあれば)との判断を含んでいる。そのような判断は、例えば、準備シーケンスが適切に行われて、カセット24から空気を除去することを確実にするのを補助するのに、および/または、空気が患者に供給されないことを確実にするのを補助するのに重要である場合がある。或る実施形態では、例えば、ポンプ室181の底の下側開口187を通じて患者に流体を供給するときに、ポンプ室に捕集された空気または他の気体は、ポンプ室181内に残る傾向があることがあり、その気体の体積がポンプ室181の有効デッドスペースの容積よりも大きくない限り、患者に圧送されることを禁じられる。下で議論されるように、ポンプ室181に含まれる空気または他の気体の体積は、本発明の態様に従って判断されることができ、その気体は、気体の体積がポンプ室181の有効デッドスペースの容積よりも大きくなる前に、ポンプ室181から除去されることができる。
【0280】
ポンプ室181内の空気の量の判断は、充填行程の終端になされることが可能であり、従って、圧送処理を中断せずに行うことが可能である。例えば、膜15およびポンプ制御領域1482がカセット24から引き離され、その結果、膜15/領域1482が制御室171の壁と接触させられる充填行程の終端では、バルブX2を閉じることが可能であり、参照室は、例えば、バルブX3を開くことによって、大気圧に通気される。その後、バルブX1およびX3を閉じることが可能であり、それによって、仮想「ピストン」をバルブX2に固定する。次に、バルブX2を開くことが可能であり、それによって、制御室の容積を判断すべく圧力測定を行うときに上述したように、制御室および参照室内の圧力均一化を可能にする。
【0281】
ポンプ室181内に気泡がない場合には、参照室系の既知の初期容積と参照室の初期圧力とを使用して判断された、参照室の容積の変化(つまり、仮想「ピストン」の移動による)は、制御室系の既知の初期容積と制御室の初期圧力とを使用して判断された制御室の容積の変化と等しくなる(制御室の初期容積は、膜15/制御領域1482が制御室の壁と接触しているか、または、ポンプ室181のスペーサ要素50に接触している条件で既知であることがある)。しかし、ポンプ室181内に空気がある場合には、制御室の容積の変化は、制御室容積とポンプ室181内の気泡との間で実際には分散される。その結果、制御室系の既知の初期容積を使用して演算された制御室に対する容積の変化は、演算された参照室に対する容積の変化と等しくはならず、従って、ポンプ室内の空気の存在を示す旨の信号を出力する。
【0282】
ポンプ室181内に空気がある場合には、制御室系の初期容積Vdiは、式(9)に示されるように、制御室とラインL0およびL1との容積の合計(Vdfixと称される)と、ポンプ室181内の気泡の初期体積(Vbiと称される)とに実際には等しい。
【0283】
Vdi=Vbi+Vdfix …(9)
膜15/制御領域1482を充填行程の終端に制御室の壁に対して押し付けた状態で、制御室内の任意の空気空間の容積(例えば、制御室壁の溝または他の特徴部の存在、および、ラインL0およびL1の容積(合わせてVdfix)による)は、かなり正確に知られることができる(同様に、膜15/制御領域1482をポンプ室181のスペーサ要素
50に対して押し付けた状態で、制御室ならびにラインL0およびL1の容積を正確に知ることができる)。充填行程の後、制御室系の容積は、正圧の制御室プレチャージを使用して試験される。この試験した容積と充填行程の終端で試験した容積との間の如何なる相違も、ポンプ室内の空気の体積を示すことが可能である。式(9)を式(7)に代入して、制御室の体積変化ΔVdが、次式で与えられる。
【0284】
ΔVd=(Vbi+Vdfix)(−1+(Pdf/Pdi)−(1/γ)) …(10)
ΔVrは式(6)から演算されることができ、式(5)から、ΔVr=(−1)ΔVdであることが分かるので、式(10)は、次のように書き換えられる。
【0285】
(−l)ΔVr=(Vbi+Vdfix)(−1+(Pdf/Pdi)−(1/γ)) …(11)
そして、再び、
Vbi=(−1)ΔVr/(−l+(Pdf/Pdi)−(1/γ))−Vdfix
…(12)
従って、サイクラ14は、式(12)を使用して、ポンプ室181内に空気があるか否か、および泡の凡その体積を判断することができる。この気泡体積の演算は、例えば、ΔVr(式(6)から判断されるような)およびΔVd(Vdi=Vdfixを使用して式(7)から判断されるような)の絶対値が、互いに等しくないことが分かった場合に行われることが可能である。つまり、Vdiは、ポンプ室181内に存在する空気がない場合に、Vdfixと等しくなるべきであり、従って、Vdiの代わりのVdfixを使用して式(7)から与えられるΔVdの絶対値は、ΔVrと等しくなる。
【0286】
充填行程が完了した後で、また、上述した方法によって空気が検出された場合には、ポンプ室側または膜15の制御側に空気が位置しているか否かを判断するのは難しいことがある。不完全な圧送行程および不完全なポンプ室の充填をもたらす圧送中の条件(例えば、閉塞など)によって、圧送される液体中に気泡が存在することがあるか、または、ポンプ膜15の制御(空気圧)側に残った空気がある場合がある。この時点では、負圧のポンプ室プレチャージを使用した断熱FMS測定を行うことができる。このFMS体積が正圧のプリチャージを伴うFMS体積と一致する場合には、膜は、両方向に自由に移動することができ、それは、ポンプ室が単に部分的に充填されたこと(例えば、場合によっては閉塞により)を示唆している。膜15/領域1482が制御室の内壁に接触したときに、負圧のポンプ室プレチャージFMS体積の値が公称の制御室空気体積と等しい場合には、可撓膜のポンプ室側の流体中に気泡があると断定することが可能である。
[頭高検出]
幾つかの状況では、カセット24またはシステムの他の部分に関する患者の高さ位置を判断することが有用である場合がある。例えば、幾つかの状況での透析患者は、導入または導出動作中に患者の腹膜腔を流入出する流体による「引っ張り」または他の動きを感じることがある。この感覚を低減すべく、サイクラ14は、導入および/または導出動作中に患者ライン34に加えられる圧力を低下させることが可能である。しかし、患者ライン34に対する圧力を適切に設定すべく、サイクラ14は、サイクラ14、ヒータバッグ22、ドレイン、またはシステムの他の部分に対する患者の高さを判断することが可能である。例えば、導入動作を行うときに、患者の腹膜腔がヒータバッグ22またはカセット24の5フィート上に配置される場合には、サイクラ14は、患者の腹膜腔がサイクラ14の5フィート下に配置される場合によりも高い圧力を、透析液を送るために患者ライン34に使用する必要がある場合がある。この圧力は、例えば、所望の目標ポンプ室内圧力を達成すべく、可変時間間隔でバイナリ空気圧ソースバルブを交互に開閉することによって、調整されることが可能である。平均の所望の目標圧力は、例えば、ポンプ室内圧力が所
定量だけ目標圧力を下回るときにバルブを開いたままにし、また、ポンプ室内圧力が所定量だけ目標圧力を上回るときにバルブを閉じたままにするように時間間隔を調整することによって維持されることができる。完全な行程体積の供給を維持するような如何なる調整も、ポンプ室の充填および/または供給時間を調整することによってなされることができる。可変オリフィス・ソースバルブが使用される場合には、目標ポンプ室内圧力は、バルブが開閉される間隔のタイミングを調整するのに加えて、ソースバルブのオリフィスを変化させることによって達することができる。患者位置の調整のために、サイクラ14は、流体の圧送を一瞬止めることが可能であり、それによって、患者ライン34をカセット中の一又は複数のポンプ室181と開放された流体連通状態のままにする(例えば、カセット24内の適切なバルブ・ポートを開くことによって)。しかし、ポンプ室181用の上側バルブ・ポート192などの他の流体ラインは閉じることが可能である。この条件では、ポンプのうちの1つに対する制御室内の圧力を測定することが可能である。本技術分野において周知であるように、この圧力は、患者の「頭」の高さに相関し、患者への流体の供給圧力を制御するためにサイクラ14によって使用されることができる。同様のアプローチは、ヒータバッグ22の「頭」の高さ(一般に知られる)および/または透析液容器20の頭高を判断するために使用されることができる。なぜならば、これらの構成要素の頭高は、適切な方法で流体を圧送するのに必要な圧力に影響がある場合があるからである。
[サイクラのノイズ低減特徴]
本発明の態様によれば、サイクラ14は、動作中にまたはアイドル状態で、サイクラ14によって生じたノイズを低減する一又は複数の特徴部を備えることが可能である。本発明の一態様では、サイクラ14は、該サイクラ14の様々な空気圧式装置を制御するために使用される圧力および真空の両方を生成する単一のポンプを備えることが可能である。一実施形態では、ポンプは、圧力および真空の両方を同時に生成することができ、それによって、全体的な実行時間を減少させ、ポンプをもっとゆっくりと(従って、より静かに)動作させることを可能にする。別の実施形態では、空気ポンプの始動および/または停止は、漸増または漸減する(例えば、始動時のポンプ速度または出力を増加させる、および/または、ポンプ速度または出力を減少させる)。この構成は、空気ポンプの始動および停止に関連する「オン/オフ」ノイズを低減するのを補助することが可能であり、従って、ポンプ・ノイズは、それほど気にならなくなる。別の実施形態では、空気ポンプは、目標出力圧力または体積流量に近づいた際に、低いデューティ・サイクルで動作されることが可能であり、その結果、空気ポンプは、停止されてその短時間後に作動されるのに対して、動作し続けることができる。その結果、空気ポンプのオン・オフのサイクルを繰り返すことによって生じる途絶を回避することが可能である。
【0287】
図44は、サイクラ14の内部区画の斜視図に示しており、ハウジング82の上部が取り外されている。この例示の実施形態では、サイクラ14は、単一の空気ポンプ83を備えており、それは、遮音筺体内に含まれた実際のポンプおよびモータ駆動部を備えている。遮音筺体は、金属製またはプラスチック製のフレームなどの外側シールドと、該外側シールド内の、モータおよびポンプを少なくとも部分的に包囲する遮音材料とを備えている。この空気ポンプ83は、空気圧および真空を同時に、例えば、一対のアキュムレータ・タンク84に提供することが可能である。タンク84のうちの1つは、正圧の空気を格納し、他のタンクは、真空を格納することが可能である。適切なマニホールドおよびバルブの構成は、タンク84に結合されることが可能であり、その結果、サイクラ14の構成要素に供給される空気圧/真空を提供および制御する。
【0288】
本発明の別の態様によれば、閉塞部などのサイクラ動作中の比較的一定の圧力または真空の供給を必要とする構成要素は、少なくとも比較的長い時間、空気圧/真空源から分離されることが可能である。例えば、サイクラ14中の閉塞部147は、一般に閉塞部の空気袋166内に一定の空気圧を必要とし、その結果、患者および導出ラインは、流れに対
して開いたままである。サイクラ14が電源故障などなく適切に動作し続ける場合には、空気袋166は、システム動作の初めに一度膨張することがあり、シャットダウンされるまで膨張し続けることが可能である。発明者らは、幾つかの状況では、空気袋166などの比較的静的な空気動作式装置は、「きしみ」音を発生するか、または、供給された空気圧の僅かな変化に呼応してノイズを発生することを認識した。そのような変化は、空気袋166のサイズを僅かに変化させることがあり、それは、付随した機械部品を動かし、潜在的にノイズを発生させる。空気袋166および同様の空気圧式動力の要求がある他の構成要素の態様によれば、例えば、バルブを閉じることによって、空気ポンプ83および/またはタンク84から分離されることが可能であり、その結果、空気袋または他の空気圧式構成要素内の圧力変化を減少させ、従って、圧力変化の結果として生成されることがあるノイズを低減する。空気圧供給源から分離されることがある別の構成要素は、カセット取付位置145のドア141内の空気袋であり、それは、ドア141を閉じたときに、制御面148に対してカセット24を押し付けるように膨張する。他の適切な構成要素もまた、望まれるように分離されることがある。
【0289】
本発明の別の態様によれば、空気圧式構成要素が作動される速度および/または力は、構成要素の動作によって生成されるノイズを低減するように制御されることが可能である。例えば、カセット24上のバルブ・ポートを開閉するようにカセット膜15の対応する部分を動作させるバルブ制御領域1481の動作は、膜15がカセット24をピシャっと打つおよび/またはカセットからから離れる際の「ポップ」音を発生させることがある。そのようなノイズは、例えば、制御領域1481を移動させるために使用される空気の流量を制限することによって、バルブ制御領域1481の動作速度を制御して低減されることが可能である。空気の流れは、例えば、関連づけられた制御室に導くライン中に適切な小さいサイズのオリフィスを提供することによって、または、他の方法で制限されることが可能である。
【0290】
コントローラは、サイクラ14のマニホールドでの一又は複数の空気圧ソースバルブの作動にパルス幅変調(PWM)を適用するようにプログラムされることが可能である。カセット24の様々なバルブおよびポンプに供給される空気圧は、カセット24内のバルブまたはポンプの作動の期間中に、関連づけられたマニホールド・ソースバルブを繰り返し開閉させることによって制御されることができる。次に、膜15/制御面148に対する圧力の上昇率または下降率は、作動期間中の特定のマニホールド・バルブの「オン」部分の持続時間を調整することによって制御されることができる。マニホールド・ソースバルブにPWMを適用することの付加的な利点は、より高価で潜在的にそれほど信頼できない可変オリフィス・ソースバルブではなく、バイナリ(オン/オフ)ソースバルブだけを使用してカセット24の構成要素に可変空気圧を供給することができるということである。
【0291】
本発明の別の態様によれば、一又は複数のバルブ要素の移動は、バルブ繰返し運動によって生じたノイズを低減するように適切に減衰されることが可能である。例えば、流体(磁性流体など)に対して、高周波電磁バルブのバルブ要素を設けることが可能であり、それによって、要素の動作を減衰する、および/または、開位置と閉位置との間のバルブ要素の移動によって生じたノイズを低減させる。
【0292】
別の実施形態によれば、空気圧制御ライン通気口は、互いに接続される、および/または、共通の遮音空間に導かれることが可能であり、その結果、空気圧または真空の解放に関連するノイズが低減される。例えば、閉塞部空気袋166が通気されて、板バネ165が互いに向かって近づき、一又は複数のラインを閉塞することを可能にしたときには、解放された空気圧は、解放に関連するノイズがより容易に聞き取れることがある空間に解放されるのに対して、遮音筺体に解放されることが可能である。別の実施形態では、空気圧を解放するように構成されたラインは共に、空気真空を解放するように構成されたライン
と接続されることが可能である。この接続(周囲環境、アキュムレータ、または他のものへの通気を含むことがある)によって、圧力/真空解放によって生じるノイズをさらに低減することが可能である。
[制御システム]
図1に関して記述された制御システム16は、透析治療を制御し、透析治療に関する情報を通信するなど、多数の機能を有している。これらの機能は、単一のコンピュータまたはプロセッサによって扱われることが可能であるが、それらの機能の実施が物理的および概念的に分離された状態が維持されるように、異なる機能に対して異なるコンピュータを使用することが望ましい場合がある。例えば、1台のコンピュータが透析機類を制御し、別のコンピュータがユーザ・インタフェースを制御するために使用されることが望ましい場合がある。
【0293】
図45は、制御システム16の典型的な実施を図示するブロック図を示しており、制御システムは、透析機類を制御するコンピュータ(「自動化コンピュータ」300)と、ユーザ・インタフェースを制御する個別のコンピュータ(「ユーザ・インタフェース・コンピュータ」302)とを備える。記述されるように、セーフティクリティカル・システム機能は、専ら自動化コンピュータ300上で実行されることが可能であり、その結果、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、セーフティクリティカル機能の実行から分離される。
【0294】
自動化コンピュータ300は、透析治療を実施するバルブ、ヒータ、およびポンプなどのハードウェアを制御する。加えて、自動化コンピュータ300は、ここでさらに記述されるように、治療の順序付けをし、ユーザ・インタフェースの「モデル」を維持する。示されるように、自動化コンピュータ300は、コンピュータ処理ユニット(CPU)/メモリ304と、フラッシュディスク・ファイル・システム306と、ネットワーク・インタフェース308と、ハードウェア・インタフェース310を備える。ハードウェア・インタフェース310は、センサ/アクチュエータ312に結合される。この結合は、自動化コンピュータ300がセンサを読み、APDシステムのハードウェア・アクチュエータを制御して治療動作を監視し、治療動作を行うことを可能にする。ネットワーク・インタフェース308は、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302に自動化コンピュータ300を結合するインタフェースを提供する。
【0295】
ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、ユーザおよび外部装置および実体を含む外部世界とのデータ交換を可能にする構成要素を制御する。ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、コンピュータ処理ユニット(CPU)/メモリ314と、フラッシュディスク・ファイル・システム316と、ネットワーク・インタフェース318とを備え、それらはそれぞれ、自動化コンピュータ300上のそれらの相当物と同一または同様であることが可能である。Linux(登録商標)オペレーティング・システムは、自動化コンピュータ300およびユーザ・インタフェース・コンピュータ302のそれぞれで実行されることが可能である。自動化コンピュータ300のCPUとしての使用、および/または、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302のCPUとしての使用に適していることがある典型的なプロセッサは、Freescale社のPowerPC5200B(登録商標)である。
【0296】
ネットワーク・インタフェース318を介して、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、自動化コンピュータ300に接続されることが可能である。自動化コンピュータ300およびユーザ・インタフェース・コンピュータ302の両方は、APDシステムの同一のシャーシ内に含まれることが可能である。これに代えて、一方もしくは両方のコンピュータまたは前述のコンピュータの一部(例えば、表示部324)は、シャーシの外部に配置されることが可能である。自動化コンピュータ300およびユーザ・インタフ
ェース・コンピュータ302は、広域ネットワーク(WAN)、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、バス構造、無線接続、および/または或る他のデータ転送媒体によって結合されることが可能である。
【0297】
ネットワーク・インタフェース318は、インターネット320および/または他のネットワークにユーザ・インタフェース・コンピュータ302を結合するために使用されることも可能である。そのようなネットワーク接続は、例えば、クリニックまたは臨床医への接続を開始する、遠隔・データベース・サーバに治療データをアップロードする、臨床医から新しい処方箋を得る、アプリケーション・ソフトウェアをアップグレードする、サービス・サポートを得る、仕入れを要求する、および/または、メンテナンス利用のためにデータをエクスポートするために使用されることが可能である。1例によれば、コールセンタの専門家は、ネットワーク・インタフェース318を通じてインターネット320上の警報ログおよび透析機構成情報に遠隔にアクセスすることが可能である。もし望まれれば、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、接続が遠隔の開始プログラムによってではなくユーザまたはシステムによって単にローカルに開始されることがあるように構成されることが可能である。
【0298】
ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、
図10に関して記述されるユーザ・インタフェース144などのユーザ・インタフェースに結合されたグラフィックス・インタフェース322をさらに備える。1つの典型的な実施によれば、ユーザ・インタフェースは、液晶表示部(LCD)を備え、タッチスクリーンに関連づけられた表示部324を備える。例えば、タッチスクリーンは、LCD上に被せられることが可能であり、その結果、ユーザは、指またはスタイラスなどで表示部に触れることによって、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302に入力を与えることができる。表示部は、特に、音声プロンプトおよび録音されたスピーチを再生することができる音声システムに関連づけられることも可能である。ユーザは、それらの環境および好みに基づいて表示部324の明るさを調整することが可能である。随意に、APDシステムは、光センサを備えることが可能であり、表示部の明るさは、光センサによって検出された周辺光量に応じて自動的に調整されることが可能である。
【0299】
表示部の明るさは2つの異なる条件:高い周辺光および低い周辺光についてユーザによって設定されることが可能である。光センサは周辺光のレベルを検出し、制御システム16は、測定された周辺光に基づいて、高いまたは低い何れかの周辺光について表示部の明るさを予め選択されたレベルに設定するであろう。ユーザは、それぞれの条件について1〜5の値の選択によって高いおよび低い周辺光につき明るさのレベルを選択することが可能である。ユーザ・インタフェースはそれぞれの条件についてのスライダ・バーであることが可能である。別の例では、ユーザは数を選択することができる。制御システムは表示部光のレベルにマッチするようにボタン光のレベルを設定することが可能である。
【0300】
LCD表示部および/または表示部324のタッチスクリーンは誤りを生じる場合があり、そこでは、それらは正しく表示しおよび/または応答しない。原因の唯一の理論ではないが1つの理論は、ユーザからスクリーンへの静電放電であり、それは、LCD表示部およびタッチスクリーンのための駆動体のメモリ中の値を変化させる。ソフトウェアはUICエグゼクティブ354を処理し、またはACエグゼクティブ354は、タッチスクリーンおよびLCD表示部のための駆動体の一定メモリ・レジスタをチェックする低優先性サブプロセスまたはスレッドを備えることが可能である。スレッドがメモリ・レジスタ中の一定の値の何れかがユーザ・インタフェース・コンピュータ302または自動化コンピュータ300中のどこかに格納されたのと異なることを見出す場合、スレッドは別のソフトウェア処理がLCD表示部および/またはタッチスクリーンのための駆動体を再度初期化することを要求する。一実施形態では、LCD表示部はキエコ・エプソン(Kieko
Epson)S1d13513チップによって駆動され、タッチスクリーンはウォルフソン・マイクロエレクトロニクス(Wolfson Microelectoronics)WM97156チップによって駆動される。一定レジスタ値の例としては、限定されるものではないが、スクリーンに表示された画素の数、表示された色の数が挙げられる。
【0301】
加えて、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、USBインタフェース326を備える。USBフラッシュ・ドライブなどのデータ記憶装置328は、USBインタフェース326を介してユーザ・インタフェース・コンピュータ302に選択的に結合されることが可能である。データ記憶装置328は、患者固有のデータを格納するために使用される「患者データ・キー」を含むことがある。透析治療および/または調査質問(例えば、重量、血圧)からのデータは、患者データ・キーに記録されることが可能である。このように、患者データは、USBインタフェース326に結合されたときにユーザ・インタフェース・コンピュータ302にアクセス可能であり、インタフェースから取り外されたときに携帯可能になることがある。患者データ・キーは、サイクラ交換中に1つのシステムまたはサイクラから別のものにデータを転送することが可能であり、それによって、臨床ソフトウェアからシステムに新しい治療およびサイクラ構成データを転送し、システムから臨床ソフトウェアに治療履歴および装置履歴情報を転送するために使用される。典型的な患者データ・キー325が
図65に示されている。
【0302】
示されるように、患者データ・キー325は、コネクタ327と、該コネクタに結合されたハウジング329とを備える。患者データ・キー325は、随意に専用のUSBポート331に関連づけられることが可能である。ポート331は、凹部333(例えば、APDシステムのシャーシ中の)と、該凹部内に配置されるコネクタ335とを備える。凹部は、ポート331に関連づけられたハウジング337によって少なくとも部分的に規定されることが可能である。患者データ・キー・コネクタ327およびポート・コネクタ335は、選択的に互いに電気的および機械的に結合されるように構成される。
図65から分かることがあるように、患者データ・キー・コネクタ327およびポート・コネクタ335が結合されるときには、患者データ記憶装置325のハウジング329は、凹部333内に少なくとも部分的に受容される。
【0303】
患者データ・キー325のハウジング329は、それが関連づけられたポートを示す視覚的手掛かりを備える、および/または、正しくない挿入を防止するように形成されることが可能である。例えば、ポート331の凹部333および/またはハウジング337は、患者データ・キー325のハウジング329の形状に対応した形状を有することが可能である。例えば、それぞれが、非長方形状を有するか、または、
図65に示されるような上部の刻み付けを持った楕円形などの不規則な形状を有することが可能である。ポート331の凹部333および/またはハウジング337ならびに患者データ・キー325のハウジング329は、それらの関連づけを示すための付加的な視覚的手掛かりを備えることが可能である。例えば、それぞれが、同一材料から作られる、ならびに/または、同一または同様の色および/もしくはパターンを有することが可能である。
【0304】
さらなる実施形態では、
図65Aに示されるように、患者データ・キー325のハウジング329は、コネクタ327から離れるように傾斜して構築されることが可能であり、それによって、キー325上に跳ねることがある如何なる液体もコネクタ327から離れるようにかつハウジング329の反対の端部に向かって運び、ハウジング329の孔339は、患者データ・キー325およびそのポート・コネクタ335との結合部から流体を除去するのを補助することが可能である。
【0305】
一実施形態では、ポート331および凹所333は
図9−11に示されたようにサイクラ14の前方パネル1084に配置されている。ドア141が閉じられ、治療が開始され
る前に、患者データ・キー325がポート331に挿入される。ドア141は、ドア141が閉じられたときに、患者データ・キー325を収容するための第2の凹所2802を備えている。患者データ・キー325をドア141の背後に配置させると、すべての治療データがPDKに記録されることが可能であることを確実とする。この配置はユーザが該キーを治療半ばで取り出すのを妨げる。
【0306】
これに代えてまたはこれに加えて、患者データ・キー325は、患者データ・キーが期待される種類および/または製造元のものであることを確認するAPDシステムによって判読可能な確認コードを含むことがある。そのような確認コードは、患者データ・キー325のメモリに格納され、患者データ・キーから読み取られ、APDシステムのプロセッサによって処理されることが可能である。これに代えてまたはこれに加えて、そのような確認コードは、例えば、バーコードまたは数字コードとして、患者データ・キー325の外部に含まれることがある。この場合、コードは、カメラおよび付随するプロセッサ、バーコード・スキャナ、または別のコード読取装置によって読み取られることが可能である。
【0307】
システムの電源が入れられたときに患者データ・キーが差し込まれなければ、警告は、キーの挿入を要求するものとして生成されることがある。しかし、システムは、それが前もって構成されている限り、患者データ・キーなしで実行されることが可能である。このように、自分の患者データ・キーをなくした患者は、代替キーを取得することができるようになるまで治療を受けることが可能である。データは、患者データ・キーに直接的に格納されるか、または、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302上への格納後に患者データ・キーに転送されることが可能である。データは、患者データ・キーからユーザ・インタフェース・コンピュータ302に転送されることも可能である。
【0308】
加えて、USBブルートゥース(登録商標)・アダプタ330は、例えば、データが近傍のブルートゥース対応装置と交換されることを可能にすべく、USBインタフェース326を介してユーザ・インタフェース・コンピュータ302に結合されることが可能である。例えば、APDシステム近傍のブルートゥース対応体重計は、USBブルートゥース・アダプタ330を使用してUSBインタフェース326を介してシステムに患者の体重に関する情報を無線転送することが可能である。同様に、ブルートゥース対応血圧計カフは、USBブルートゥース・アダプタ330を使用してシステムに患者の血圧に関する情報を無線で転送することが可能である。ブルートゥース・アダプタは、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302に内蔵されることが可能であるか、または、外部にあることが可能である(例えば、ブルートゥース・ドングル)。
【0309】
USBインタフェース326は、幾つかのポートを備えることが可能であり、また、これらのポートは、異なる物理位置を有し、異なるUSB装置に使用されることが可能である。例えば、患者データ・キー用のUSBポートを透析機の前面からアクセス可能にすることが望ましいことがあり、別のUSBポートを透析機の後面に設けて該後面からアクセス可能とすることも可能である。ブルートゥース接続用のUSBポートは、シャーシの外側に備えられることが可能であるか、または、これに代えて、例えば、透析機の内部もしくはバッテリ・ドアの内側に配置されることが可能である。
【0310】
上で注記したように、セーフティクリティカルな意味合いを持つことがある機能は、自動化コンピュータ上で分離されることが可能である。セーフティクリティカル情報は、APDシステムの動作に関係する。例えば、セーフティクリティカル情報は、治療を実施または監視するためのAPD処置および/またはアルゴリズムの状態を含むことが可能である。非セーフティクリティカル情報は、APDシステムの動作に必要ではないスクリーン表示の視覚的表現に関する情報を含むことがある。
【0311】
自動化コンピュータ300上でセーフティクリティカルな意味合いを持つことがある機能を分離することによって、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、セーフティクリティカル動作の扱いから解放されることが可能である。このように、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302上で実行されるソフトウェアの問題またはそのソフトウェアへの変更は、患者への治療の提供には影響しない。ユーザ・インタフェース・ビューを開発するのに必要な時間を縮小するためにユーザ・インタフェース・コンピュータ302によって使用されることがあるグラフィカル・ライブラリ(例えば、Trolltech社のQt(登録商標)ツールキット)の例を考える。これらのライブラリは、自動化コンピュータ300のものから分離された処理およびプロセッサによって扱われるので、自動化コンピュータは、システムの残りの部分(セーフティクリティカル機能を含む)に影響することがあるライブラリの任意の潜在的な欠陥から保護される(同一のプロセッサまたは処理によって扱われる)。
【0312】
勿論、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、ユーザに対するインタフェースの表示を担当するが、データは、例えば、表示部324を介して、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302を使用してユーザによって入力されることも可能である。自動化コンピュータ300およびユーザ・インタフェース・コンピュータ302の機能間の分離を維持すべく、表示部324を介して受信したデータは、解釈用に自動化コンピュータに送られ、表示用にユーザ・インタフェース・コンピュータに返されることが可能である。
【0313】
図45は、2つの別個のコンピュータを示すが、セーフティクリティカル機能の格納および/または実行の、非セーフティクリティカル機能の格納および/または実行からの分離は、CPU/メモリ構成要素304および314などの別個のプロセッサを備えた単一のコンピュータを有することによって提供されることが可能である。このように、別個のプロセッサまたは「コンピュータ」の提供は必要ではないと認識されるべきである。さらに、これに代えて、単一のプロセッサが、上述した機能を行うために使用されることも可能である。この場合、透析機類を制御するソフトウェア構成要素の実行および/または格納を、ユーザ・インタフェースを制御するものから機能的に分離することが望ましいことがあるが、本発明はこの観点に限定されるものではない。
【0314】
システム・アーキテクチャの他の態様は、安全上の注意事項に対処するように設計されることも可能である。例えば、自動化コンピュータ300およびユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、各コンピュータ上のCPUによって有効化または無効化することができる「安全線」を備えることが可能である。安全線は、APDシステムのセンサ/アクチュエータ312のうちの少なくとも幾つかを有効にするのに十分な電圧(例えば、12V)を生じる電圧供給源に結合されることが可能である。自動化コンピュータ300のCPUおよびユーザ・インタフェース・コンピュータ302のCPUの両方が安全線にイネーブル信号を送るときに、電圧供給源によって生じた電圧は、センサ/アクチュエータに送られ、或る構成要素を作動および無効化する。その電圧は、例えば、空気圧バルブおよびポンプを作動させ、閉塞部を無効化し、ヒータを作動することが可能である。一方のCPUが安全線にイネーブル信号を送ることを止めたときには、電圧経路は遮断され(例えば、機械的リレーによって)、空気圧バルブおよびポンプを非作動にし、閉塞部を有効化し、ヒータを非作動にすることが可能である。このように、自動化コンピュータ300またはユーザ・インタフェース・コンピュータ302の一方がそれを必要とみなしたときには、患者は、流体経路から急速に分離されることが可能であり、加熱および圧送などの他の活動を停止することが可能である。各CPUは、セーフティクリティカル誤差を検出したとき、または、ソフトウェア監視機構が誤差を検出したときなどに、いつでも安全線を無効化することができる。システムは、一旦無効化されると、安全線は、自動化コン
ピュータ300およびユーザ・インタフェース・コンピュータ302の両方がセルフテストを完了するまで再び有効化されないように構成されることが可能である。
【0315】
図46は、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302および自動化コンピュータ300のソフトウェア・サブシステムのブロック図を示している。この例では、「サブシステム」は、関連する特定のセットのシステム機能に割り当てられた一群のソフトウェア(場合によっては、ハードウェア)である。「処理」は、独立して実行可能である場合があり、それは、自身の仮想アドレス空間中で実行され、処理間通信機器を使用して他の処理にデータを渡す。
【0316】
エグゼクティブ・サブシステム332は、自動化コンピュータ300のCPUおよびユーザ・インタフェース・コンピュータ302のCPU上で実行されるソフトウェアの実行のインベントリを作成し、確認し、開始し、および監視するために使用されるソフトウェアおよびスクリプトを備える。カスタム・エグゼクティブ処理は、前述のCPUのそれぞれで実行される。各エグゼクティブ処理は、自身のプロセッサ上のソフトウェアをロードおよび監視し、他のプロセッサ上のエグゼクティブを監視する。
【0317】
ユーザ・インタフェース(UI)サブシステム334は、ユーザおよびクリニックとのシステム相互作用を扱う。UIサブシステム334は、「モデル・ビュー・コントローラ」設計パターンに応じて実施され、データの表示(ビュー)をそのデータ自体(モデル)から分離する。特に、システム状態およびデータ修正機能(モデル)およびサイクラ制御機能(コントローラ)は、自動化コンピュータ300上のUIモデルおよびサイクラ・コントローラ336によって扱われ、サブシステムの「ビュー」部分は、UIコンピュータ302上でUIスクリーン・ビュー338によって扱われる。ログ閲覧または遠隔アクセスなどのデータ表示およびエクスポート機能は、全体的にUIスクリーン・ビュー338によって扱われることがある。UIスクリーン・ビュー338は、ログ閲覧および臨床医インタフェースを提供するものなどの、付加的な用途を監視および制御する。これらの用途は、UIスクリーン・ビュー338によって制御されるウィンドウ中で生成され、その結果、制御は、警告、警報、またはエラーの場合にUIスクリーン・ビュー338に返されることができる。
【0318】
治療サブシステム340は、透析治療の供給を指図し、時間を計る。さらに、処方箋を確認すること、処方箋、時間、および利用可能な流体に基づいて治療サイクルの回数および継続時間を演算すること、治療サイクルを制御すること、供給バッグ内の流体を追跡すること、ヒータバッグ内の流体を追跡すること、患者中の流体の量を追跡すること、患者から取り除かれた限外ろ過の量を追跡すること、および、警告または警報状態を検出することを担当することがある。
【0319】
透析機制御サブシステム342は、透析治療を実施するために使用される透析機類を制御し、治療サブシステム340によって呼び出されたときに、高レベル圧送および制御機能を統合する。特に、次の制御機能が、透析機制御サブシステム342によって行われることが可能である:エアコンプレッサ制御、ヒータ制御、流体供給制御(圧送)、および流体体積測定。透析機制御サブシステム342は、下に述べられる、I/Oサブシステム344によってセンサの示度についての信号をさらに送る。
【0320】
自動化コンピュータ300上のI/Oサブシステム344は、治療を制御するために使用されるセンサおよびアクチュエータへのアクセスを制御する。この実施では、I/Oサブシステム344は、ハードウェアへの直接アクセスを持つ唯一のアプリケーション処理である。このように、I/Oサブシステム344は、インタフェースを発行して、他の処理が、ハードウェア入力の状態を取得し、ハードウェア出力の状態を設定することを可能
にする。
[FPGA]
幾つかの実施形態では、
図45中のハードウェア・インタフェース310は、機械制御機能の予め規定されたセットを実行でき、かつ安全性のさらなる層をサイクラ・コントローラ16に提供することができる自動化コンピュータ300およびユーザ・インタフェース302からの別のプロセッサであることが可能である。フィールド・プログラマブレ・ゲート・アレイ(FPGA:field programmable gate array)のような第2のプロセッサは、自動化コンピュータ300からの幾らかの計算タスクをハードウェア・インタフェース310(例えば、FPGA)まで移動させることによって、サイクラ14の応答性およびスピードを増大させることが可能であり、その結果、自動化コンピュータ300はより多くの源を流体管理および治療制御に向けることが可能である。というのは、これらは源集約的演算を備えているからである。ハードウェア・インタフェース310は空気圧バルブを制御でき、様々なセンサからのデータを記録し、一時的に格納することが可能である。ハードウェア・インタフェース310によるバルブ、圧力レベルおよびデータ記録のリアルタイム制御は、自動化コンピュータ300で実行されるソフトウェア処理または機能がそれらに対して準備できると、自動化コンピュータ300が命令を送り、データを受容するのを可能とする。
【0321】
ハードウェア・インタフェース・プロセッサ310は、有利には、1又は複数のポンプ、および流体の1又は複数のソース容器(例えば、透析液バッグ、または導入すべき流体を含有するヒータバッグ)からの1又は複数のバルブの配置によって流体が患者またはユーザに圧送される、(限定されるものではないが)腹膜透析サイクラ14を含む何れかの医療流体供給装置で実行されることが可能である。それは、患者またはユーザからの流体をレセプタクル(例えば、ドレイン・バッグ)まで圧送するように構成された流体供給装置(例えば、腹膜透析サイクラ)で行われることも可能である。主たるプロセッサはポンプおよびバルブの適切なシーケンスおよびタイミングの制御に向けられて、特有な機能(例えば、透析液バッグからヒータバッグへの圧送、ヒータバッグからユーザへの圧送、またはユーザから導出レセプタクルへの圧送)を行い、1つの位置から次の位置へ圧送される流体の体積を監視することが可能である。第2の(ハードウェア・インタフェース)プロセッサ(例えば、FPGA)は、対応して、中断されない固定された速度(例えば、約100Hzまたは200Hz)にて様々なセンサ(例えば、ポンプに付随する圧力センサ、または加熱システムに関連づけられる温度センサ)から受容したデータを収集し、それを格納し、それが主たるプロセッサによって要求されるまでデータを格納することに向けられるのが可能である。それは、主たるプロセッサで出現する何れの処理からも独立した速度、またはスケジュールにて、ポンプの圧送圧を制御することも可能である。他の機能(後記参照)に加えて、それは、主たるプロセッサからの命令に基づいて個々のバルブを開き、または閉じることも可能である。
【0322】
1例では、ハードウェア・インタフェース310は、限定されるものではないが以下を含む多数の機能を実行するプロセッサであることが可能である:
・予測可能であり、かつ微小な分解時間ベースに基づいた空気圧式圧力センサ・データの獲得;
・自動化コンピュータ300によって要求されるまでのタイムスタンプでの圧力データの格納;
・その自動化コンピュータ30から受容したメッセージの有効化;
・1又は複数の空気圧式バルブの自動制御の提供;
・ピック・アンド・ホールド(Pick & Hold)機能性を提供し、および/または電流フィードバックを伴って幾つかのバルブを制御するための、可変パルス幅変調(PWM)デューティ・サイクルでの幾つかのバルブの制御;
・バルブ組合せ、最大圧力および温度と能力の自動化された、および冗長な安全性のチェ
ックの提供。
・必要に応じてフェール・セーフ・モードにサイクラ14を入れる他のコンピュータ300、302から独立していること。
・サイクラ14でのボタンの状態の監視およびボタン照明のレベルの制御;
・自動接続ネジ駆動機構1321の制御および自動接続位置決め感知の監視;
・透析液キャップ31および/またはスパイク・キャップ63の存在の検出;
・空気圧式ポンプの制御;
・準備センサLEDおよび検出器の制御;
・過電圧の検出および過電圧を検出するハードウェアの試験;
・1又は複数の流体検出器の制御および監視;
・ドア141上のラッチ1080および近接性センサ1076の監視;
・システム・レベルでの臨界電圧の監視。
【0323】
ハードウェア・インタフェース310は自動化コンピュータ300およびユーザ・インタフェース302におけるプロセッサとは別のプロセッサ、A〜Dコンバートおよび1又は複数のIO基板を備えることが可能である。別の実施形態では、ハードウェア・インタフェースはFPGA(フィールド・プログラマブレ・ゲート・アレイ)を備えている。一実施形態では、FPGAはカリフォルニア州所在のザイリンクス(Xilink Inc.)によって製造された400Kゲートおよび236ボール・パッケージにおけるSPARTAN(登録商標)3Aである。ハードウェア・インタフェース310は、制御CPU機能のうちの多くについて独立した安全性モニタとして動作するように使用される知的な構成要素である。ハードウェア・インタフェースまたは制御CPUの何れかが主たるコントローラとして働き、他のものがモニタとして働く、数個の安全性臨界操作がある。
【0324】
ハードウェア・インタフェース310は、限定されるものではないが、以下を含む次の自動化コンピュータ300の機能を監視するように働く:
・自動化コンピュータ300から受容されるべきシステム制御データの一体性の監視;
・治療中の患者ハザードを生じ得る組合せについての命令されたバルブの構成の評価;
・過剰に高いまたは低い温度についての流体およびパンの温度の監視;
・過電圧モニタの監視および試験;および
・ハードウェア・インタフェースから戻された臨界的データを有効化するための自動化コンピュータ300に対する手段の提供。
【0325】
図45Aは、自動化コンピュータ300、UIコンピュータ302およびハードウェア・インタフェース・プロセッサ310の1つの構成の略図である。ハードウェア・インタフェース310は連通ラインを介して自動化コンピュータ300に接続されており、サイクラ14中のセンサおよびアクチュエータ312に接続される。電圧供給源2500は、コンピュータ300、302、310の何れかによって使用可能または使用不能とされるのが可能である安全性臨界アクチュエータのための電力を提供する。安全性臨界アクチュエータは、限定されるものではないが、空気圧バルブ、空気圧式ポンプおよびヒータ回路上の安全リレーを備えている。空気圧式システムは、電源が切られた時の安全な状態に対して構成されている。空気圧安全状態は、患者に対するライン28、34を閉塞すること、制御室171を分離すること、および/またはカセット24上のすべてのバルブ184、186、190、192を閉めることを含むことが可能である。ヒータ回路2212中の安全リレー2030は開いており、リレーが電源を切られたときに電気的な加熱を妨げる。それぞれのコンピュータ300、302、310は、それぞれ、バルブ、ポンプおよび安全リレーへの電力を中断することが可能である別の電気的スイッチ2510を制御する。3つのコンピュータの何れかが誤った状態を検出する場合、それは、3つのスイッチ2510のうちの1つを開くことによって、サイクラ14をフェール・セーフ状態とすることが可能である。電気的スイッチ2510は、それぞれ、UIコンピュータ302、お
よび自動化コンピュータ300における安全性エグゼクティブ処理352、354によって制御される。
【0326】
図45Bは、ハードウェア・インタフェース310と、様々なセンサと、空気圧バルブと、バッグヒータと自動化コンピュータ300との間の接続の略図である。ハードウェア・インタフェース300は、パルス幅変調DC電圧を介して、空気圧バルブ2660〜2667および空気圧式ポンプまたはコンプレッサ2600のそれぞれを制御する。
図45Bは、空気圧バルブ2660〜2667、ポンプ2600およびヒータ安全リレー2030へ電力を供給する安全ライン2632の代替実施形態を表し、そこでは、単一のスイッチ2510が、3つのコンピュータ300、302、310に接続されたANDゲート2532によって駆動される。主たるセンサはハードウェア・インタフェース310によって制御され、監視される。ボタンLEDの明るさは、PWM’d電圧を介してハードウェア・インタフェース310によって制御される。
【0327】
図45Bにおいてリストされたボタン、圧力センサ、温度センサおよび他の要素からのデータ信号はハードウェア・インタフェース310によって監視され、データは、自動化コンピュータ300によって要求されるまでバッファ・メモリに格納される。デジタル入力はハードウェア・インタフェース310に直接的に接続される。圧力、温度、電流センサおよび他のセンサからのアナログ信号は、アナログ信号をデジタル値に変換し、スケールであることが可能であり、および/またはデジタル値をオフセットすることが可能なアナログ−対−デジタル・コンバータ(ADC)基板に接続される。ADCの出力はSPIバスに亘ってハードウェア・インタフェース310に伝達される。データは固定された速度で記録され、バッファに格納される。蓄圧器および流体トラップに関する圧力データ、温度および電流の測定値を含むデータ信号の幾つかは比較的遅い速度で記録されることが可能である。低速データは100Hzで記録されることが可能である。断熱FMS体積測定アルゴリズムは、規則的な間隔で記録される高速圧力データで改良されることが可能である。好ましい実施形態では、制御体積171および参照室174でのセンサからの圧力データは2000Hzで記録される。データはタイムスタンプと共にランダム・アクセス・メモリ(RAM)に格納されることが可能である。データ収集の速度は、好ましくは、自動化コンピュータ300から、およびハードウェア・インタフェースでの処理またはサブルーチンから独立して進行することが可能である。処理がその値を要求するときに、データは自動化コンピュータ300に報告される。
【0328】
ハードウェア・インタフェース310から自動化コンピュータ300の間のデータの転送は、受容コンピュータによって用いるために有効化され、次に、許容される前に、データ・パケットがバッファに転送され、そこに格納される場合に、2ステップ処理で行うことが可能である。1例では、送付コンピュータは第1のデータ・パケットを伝達し、続いて、第1のデータ・パケットについての周期的冗長チェック(CRC)値の第2の伝達を行う。受容コンピュータは第1のデータ・パケットをメモリ・バッファに格納し、新しいCRC値の第1のデータ・パケットを演算する。次に、受容コンピュータは新しく演算されたCRC値を受容されたCRC値と比較し、2つのCRC値が合致する場合に第1のデータ・パケットを許容する。周期的冗長チェック(CRC)は、生のデータに対する偶然の変化を検出するためにデジタル・ネットワークおよび格納デバイスで通常用いられる誤差検出コードである。これらのシステムに入るデータのブロックは、それらの内容の多項式分割の残りに基づいて、添付された短いチェック値を獲得し;検索に際して、演算が反復され、チェック値が合致しない場合は、想定されるデータ破損に対して修正動作を取ることが可能である。CRC値が合致しない場合、データは自動化コンピュータとハードウェア・インタフェースとの間で移動されない。多数の連続データ・パケットがCRC試験に失敗すれば、受容コンピュータは警鐘を発信し、安全ライン2632の電源を切ることよって、透析機を失敗−安全状態に置くことが可能である。1例では、警鐘状態は第3の
連続的失敗CRCチェックに際して起こる。
【0329】
自動化コンピュータ300は命令を通過させて、選択されたバルブを開き、特定の体積における特定の圧力をハードウェア・インタフェース300に対して設定する。ハードウェア・インタフェース310は、今度は、PWM’d電圧をそれぞれのバルブに提供することによってバルブの位置を制御する。バルブが最初に高い電圧または電流で作動され、次に、より低い電圧または電流で所定の箇所に保持されている、ピック・アンド・ホールド・アルゴリズムでの要求に従い、ハードウェア・インタフェース310はバルブを開く。バルブのピック・アンド・ホールド操作は、有利には、電力引き出しを低減させ、サイクラ14内部の熱の消散のレベルを低下させることが可能である。
【0330】
ハードウェア・インタフェース310は、特定された体積での測定された圧力に基づいて、特定された体積と適切な蓄圧器との間のバルブを開閉することによって特定された体積における圧力を制御する。ハードウェア・インタフェース310は、蓄圧器における測定された圧力に基づいて、空気圧式ポンプと蓄圧器のうちの1つとの間のバルブを開閉することによって蓄圧器における圧力を制御することも可能である。特定された体積は制御室171、参照体積174、流体トラップおよび正圧および負圧の溜めのそれぞれを備えることが可能である。ハードウェア・インタフェース310は、限定されるものではないが、オン−オフ制御、またはPWM信号でのバルブの比例制御を含む多数の制御スキームを介してこれらの特定された体積のそれぞれにおける圧力を制御することが可能である。1例では、前述したように、ハードウェア・インタフェース310は、第1および第2の限度を設定し、圧力が第2の上限を上回るときにバルブを閉じ、圧力が第1の下限未満であるときはバルブを開く、時々はバングバング式コントローラと称されるオン−オフ・コントローラを実行する。別の例では、ハードウェア・インタフェース310は、特定された体積と両方の蓄圧器との間のバルブを作動させて、所望の圧力を達成することが可能である。他の例では、自動化コンピュータ300は1又は複数のバルブを特定し、特定のバルブが特定されたセンサによって測定して圧力を制御するように命令することが可能である。
【0331】
ハードウェア・インタフェース310は、自動接続キャリッジの位置および動作を制御する。自動接続キャリッジ146の移動および位置決めは、キャリッジ146の測定された位置に基づいてハードウェア・インタフェースによってリアルタイムで制御される。自動化コンピュータ300はキャリッジについての特別な機能または位置を命令することが可能である。ハードウェア・インタフェース310は、自動化コンピュータ300のメモリまたは処理に負荷をかけずに命令された機能を行う。キャリッジ146の位置決めは、位置センサからのフィーバック・ループで制御される。加えて、上で記述したように、FPGAは感知要素1112で透析液キャップ31および/またはスパイク・キャップ630の存在を検出する。これに代えて、キャップ31および/またはスパイク・キャップ63の存在は、限定されるものではないが、ビジョン・システム、透析液キャップおよび/またはスパイク・キャップによってブロックされることが可能な光学センサ、または例えば、ストリッパ要素1491上のマイクロ・スイッチを含む感知技術の範囲によって検出されることが可能である。
【0332】
ハードウェア・インタフェース310は、自動化コンピュータ300またはユーザ・インタフェース・コンピュータ302から独立して安全性機能を実行することが可能である。安全性ライン2632を使用不能とし、および/または安全性エグゼクティブ352、354に対する警鐘を発信するハードウェア・インタフェース310の独立した動作は、さらに、安全でない状態が起こる可能性を低下させる。ハードウェア・インタフェース310は、何れかの時点において、規定されたバルブ組合せについて、警鐘を送り、および/または安全ライン2632の電源を切ることが可能である。許可されていないバルブの
位置に基づいてのサイクラのシャットダウンは、患者を保護し、(必要であればリセットの後に)治療を完了する能力を維持する。ハードウェア・インタフェース310は、ヒータ・パンおよび/またはバッグ・ボタン上での過剰な温度、制御室または溜めにおける過剰な圧力を含む安全でない状態において、警鐘を発し、安全ラインの電源を切ることも可能である。ハードウェア・インタフェースは、水が流体トラップで検出されるとき、警鐘し、安全ラインの電源を切ることが可能である。
[ヒータ制御システム]
上述された制御システムを用いて、患者に供給される透析液が所定の温度の範囲内に維持されるのを確実とすることが可能である。治療処理中に、サイクラ14は、ヒータバッグ・ライン26を介して、接続された透析液容器20からの透析液をヒータバッグ22に導入する。ヒータバッグ22は、電気抵抗ヒータを備えることが可能なヒータ・パン142上に支えられている。ヒータバッグ22は断熱されたカバー143で覆われることが可能である。ヒータ・パン142に供給された熱エネルギーを制御するようにヒータ・コントローラを機能させて、患者に透析液を供給するに先立って透析液の温度を所望の設定値に制御することが可能である。透析液の温度は、患者の腹腔に供給されるに先立って安全範囲内にあって、患者に負傷または不快感を引き起こすこと、または低体温症または高体温症を引き起こすことを回避すべきである。ヒータ・コントローラは、ヒータ・パンの温度を、触れて安全な温度に制限することも可能である。ヒータ・コントローラは、透析液を適時に許容される温度の範囲内に加熱し、そこに維持するように構築して、最も効果的な治療を確実とする。
【0333】
図49−1は、透析液ヒータ・システム500の例示的な実施形態の模式図である。この例では、透析液ヒータ・システム500はサイクラ14のハウジング82内に配置される。ハウジングは、ハウジング82の頂部に取り付けられるのが可能な断熱された蓋143を備えている。従って、ハウジング82およびヒータ蓋143は、透析液ヒータ・システム500の構成要素を収容するように働く領域を規定することが可能である。透析液ヒータ・システムは以下の要素:ハウジング82、ヒータ蓋143、ヒータ・パン22、ヒータ要素508、ヒータ・パン温度センサ504、ボタン温度センサ506、断熱リング507およびヒータ制御エレクトロニクス50を備えることが可能である。ヒータ・パン142はハウジング82の内部に配置され、ヒータ・トレイ142の頂部に配置されたときに、ヒータバッグ22を収容することが可能である。好ましくは、ヒータ・パン142は傾けて、ヒータバッグの入口および/または出口を従属的位置に置き、バッグ中の流体がバッグ中の流体の量に拘わらず入口/出口と常に接触していることを確実とするのを補助する。或る実施形態では、ヒータ・パン142のフロアに沿って配置された6までのまたはそれ以上のヒータ・パン温度センサ504(ただ1つの例示的なヒータ・パン温度センサ504が
図49−1に示されている)があることができる。加えて、ヒータ・パン142内に配置されたボタン温度センサ506があることができる。断熱性リング507によってヒータ・パン142から熱的に分離されつつ、ボタン・センサ506をヒータバッグと良好な熱的接触をなすように配置して、バッグ中の流体または透析液の温度の近似を提供する。別の実施形態では、ボタン・センサ506はアルミニウム・ボタン上に設けられたサーミスタ対を備えることができる。アルミニウム・ボタンは、例えば、LEXAN(登録商標)3412Rプラスチックまたは別の低熱伝導率材料で作成された断熱性リングによって熱的に分離される。透析液ラインがヒータバッグ22に接続されて、ヒータバッグが満杯の略1/3未満であるときにヒータバッグ内の流体の温度をより良好に測定する、ボタン温度センサ506はトレイの末端近傍に配置されるのが可能である。ボタン・センサ506は流体または透析液温度センサと称することも可能である。センサがバッグ内の流体温度のより正確な読み取りを提供し、かつヒータ要素508によって比較的影響されないように、パンの従属的部分により向けられたバッグ・センサと共に、パンの上端により向けられた、ヒータ・パン142下に配置された複数のヒータ要素508もあることが可能である。ヒータ要素508の熱的出力はヒータ制御エレクトロニクス505によ
って制御されて、ヒータバッグにおける所望の流体温度を達成することが可能である。ヒータ制御エレクトロニクス505は、限定されるものではないが、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)信号(
図49−2に示されたPWM信号511)を生じるヒータ制御モジュール509を備えることが可能である。入力−出力(IO:input−output)サブシステム344における電気的ハードウェアは、PWM信号511に基づいて、電力をヒータ要素508に接続し、IOサブシステム344でのハードウェアは、ヒータ・パン温度センサ504およびボタン温度センサ506の出力を読み取る。PWM信号511はヒータ要素508のそれぞれに供給された電力を制御することが可能であり、その結果、透析液ヒータ・システム500は、次に、ヒータバッグ22をユーザが設定可能な快適温度まで加熱することが可能であり、これは、好ましい安全温度範囲内に制御することが可能である。透析液ヒータ・システム500は、ヒータ・パン142の表面温度を、触れて安全な温度に限定することも可能である。ヒータ制御回路505のハードウェア構成要素はコントローラ16の部分であることが可能である。ヒータ・パン142およびヒータバッグ22をサイクラ12の電子的および空気圧式の構成要素から熱的に隔離するように機能するヒータ要素508の下方に配置された断熱体510もあることが可能である。加えて、ヒータ蓋143はヒータバッグ22を周囲の環境から隔離することが可能である。そのようにして、透析液ヒータ・システム500は、ボタン温度センサ506によって測定して、ヒータバッグ22内部の透析液温度をできる限り早く所望の流体設定値温度550(
図49−3参照)まで持っていくように構築されることが可能であり、治療サイクルの残りを通じてその所望の流体設定値温度550を維持する。幾つかの実施形態では、温度センサはハードウェア・インタフェース310に接続する。同一のハードウェア・インタフェース310は、ヒータを使用不能とする安全リレーを制御することが可能である。
【0334】
幾つかの実施形態では、ヒータ要素は、スイッチの温度が第1の所定値を超えると開く熱スイッチを備えることが可能である。一旦スイッチの温度が第2のより低い所定の値以下まで降下すれば、スイッチは再度閉じられるであろう。熱スイッチは、ヒータ要素に直接的に組み込まれることが可能であり、またはヒータ要素の外側に、またはヒータ・パン上に設置されることが可能である。熱スイッチは、安全でないパン温度に対して保護のさらなる層を提供する。
【0335】
別の例では、熱スイッチは一回可融性リンクを備えた熱ヒューズであることが可能である。溶断熱ヒューズを置き換えるためにサービス・コールが必要となり、これは、治療を再び開始する前に、サイクラ14を検査し、および/または試験する機会を提供することが可能であることが有利である。
図49−2はヒータ制御サブシステムのソフトウェア関係の模式的ブロック図を示している。或る実施形態では、ヒータ制御回路505のロジックは、APDシステムのソフトウェア構成において透析機制御サブシステム342中のヒータ制御モジュール509として実行されることが可能である。ヒータ・コントローラ・ソフトウェアは、下に記述されるように、コントローラ16(
図45)において実行されることが可能である。加えて、治療サブシステム340は、ヒータバッグ体積およびボタン温度センサ506についての設定値などの情報を透析機制御サブシステム342に供給することが可能である。ヒータ要素508は治療サブシステム340によって使用可能とされることが可能である。透析機制御サブシステム342は、透析機制御サブシステム342の下方に配置されたI/Oサブシステム344から温度値を読み取ることも可能である。さらに、ヒータ・コントローラ509は、次に、ヒータ要素508に供給された電力を制御することが可能なPWM信号511を出力することが可能である。
【0336】
或る実施形態では、透析機制御サブシステム342は、I/Oサブシステム344を働かせ、変数を更新し、状態を検出するように定期的に(例えば、略10ミリ秒毎に。)要求されることが可能である。透析機制御サブシステム342は、更新された信号をヒータ
制御モジュール509に定期的に(例えば、略10ms毎に)送ることも可能である。更新された信号はヒータバッグ体積、ヒータ・パン温度515、ボタン温度517、設定値温度550およびヒータが使用可能とする機能を備えることが可能である。ヒータ制御モジュールはこれらの信号の幾つかまたはすべてを連続的に平均することが可能であるが、より低い頻度では(例えば、2秒毎に)その出力511を演算および更新するだけである。
【0337】
別の態様では、透析液ヒータ・システム500は、ヒータバッグ22における透析液温度を所望の流体設定値温度550の与えられた範囲内に制御できることが可能である(
図49−2および
図49−7〜
図49−9参照)。さらに、透析液ヒータ・システム500は、雰囲気温度(例えば、略5℃〜略37℃まで)、バッグ導入体積(例えば、略0mL〜略3200mL)、および透析液容器20の温度(例えば、略5℃と略30℃との間)の比較的広い範囲などの、様々な異なる操作条件下で予め規定された仕様内で機能するように設計されている。加えて、たとえヒータバッグ22中の透析液および補充サイクル中に導入された透析液が異なる温度であり得る場合であっても、透析液ヒータ・システム500は仕様内で機能することが可能である。透析液ヒータ・システム500は、公称電圧の±10%程度とかなり変動するヒータ供給電圧にて仕様内で機能するようにも設計されている。
【0338】
透析液ヒータ・システム500は非対称システムであると考えられることができ、そこでは、透析液ヒータ・システム500はヒータ要素508で透析液温度を上昇させるのが可能であるが、自然対流に依拠して、ヒータバッグ22中の透析液温度をより降下させる。熱の喪失は、断熱材510および断熱されたカバー143によってさらに制限されることが可能である。1つの可能な結果として、温度オーバシュートの場合に、ヒータバッグがゆっくりと冷却されつつ、APDシステム10は患者導入を遅延させることが可能である。ヒータ・パン142上にヒータ要素を置く可能な結果として、ヒータ・パン142は加熱処理中のヒータバッグ22の温度よりも実質的に高い温度におけるものである可能性がある。ボタン温度センサ506によって記録されたヒータバッグ温度に対する単純なフィードバック制御は、ヒータ・パンにおけるより高い温度での熱エネルギーが、ヒータバッグ22が所望の設定値温度550からオーバシュートするのを回避するのに十分なようにヒータを早めにオフとすることが可能でないことがある。これに代えて、ヒータ508を制御して、ヒータバッグ温度がオーバシュートしないようにするヒータ・パン温度504を達成することの結果、遅いヒータ・システムをもたらし、それにより、治療を遅らせることがある。
【0339】
ヒータバッグ中の透析液についての時間を最小限として、オーバシュートなしに設定値温度550を達成するには、部分的には、ヒータ・パン142、ヒータバッグ22およびヒータバッグ22内の流体の平衡温度を制御することによって、ヒータ要素508の電力を変化させて、ヒータバッグ中の所望の流体温度を達成する制御ループを、ヒータ制御モジュールが実行することが可能である。一実施形態では、比例積分(PI:Proportional−Integral)コントローラが、ヒータバッグ22およびヒータ・パン142の温度およびヒータバッグ中の透析液の体積の関数である平衡温度532を制御する。平衡温度は、ヒータバッグ22およびヒータ・パン142中の透析液が、ヒータをオフとし、2つの構成要素が平衡に達するようにされた場合に到達するだろう温度であると理解されることが可能である。平衡温度は、それぞれの熱キャパシタンスによって重み付けされた、ヒータ・パン142についての目標温度および透析液導入ヒータバッグの測定された温度の加重平均としても理解されることが可能である。平衡温度は、測定されたヒータ・パン温度および透析液温度の加重平均として演算されることも可能であり、そこでは、温度はそれらのそれぞれの熱キャパシタンスによって重み付けされる。或る実施形態では、ヒータ・パンおよびヒータバッグ中の流体の加重平均温度は、目標ヒータ・パン
温度にヒータ・パンの熱キャパシタンスを掛け、これに、流体温度にヒータバッグ中の流体の熱キャパシタンスを掛けたものを加えた総和として演算されることが可能であり、ここに、該総和は、ヒータ・パンの熱キャパシタンスとヒータバッグ中の流体の熱キャパシタンスとの総和で割られる。ヒータ・パンおよび流体の加重平均は、これに代えて、ヒータ・パンおよびバッグ中の流体の質量、またはヒータ・パンおよびバッグ中の流体の体積によって重み付けされるのが可能である。
【0340】
平衡温度の制御は、例えば、比例、積分および/または微分コントローラを用いる単一のフィードバック・ループおよび入れ子型ループなどの多数の制御スキームを用いて実行されることが可能である。縦列入れ子型制御ループを用いる制御スキームの一実施形態は
図49−3に示されている。外側ループ・コントローラ514は、内側ループ・コントローラ512に供給されたヒータ・パン設定値温度527を変化させることによって、ボタン温度センサ506によって測定されるヒータバッグ温度を流体設定値温度550に制御することが可能である。それに代えて、外側ループ・コントローラ514は、ヒータ・パン設定値温度527を変化させることによって、ヒータバッグ22、流体およびヒータ・パン142の平衡温度を流体設定値温度550に制御することが可能である。ヒータバッグ22および流体の温度はボタン温度センサ506によって測定されることが可能であり、ヒータ・パン温度は1又は複数のヒータ・パン温度センサ504によって測定されることが可能である。外側ループ・コントローラは以下の要素:比例コントローラ、積分コントローラ、微分コントローラ、飽和限界、アンチワインドアップ・ロジックおよび0次保持ロジック要素のうちの1つは複数を備えることが可能である。
【0341】
内側ループ・コントローラ512は、ヒータ要素508の熱的出力を変化させることによって、ヒータ・パン温度をヒータ・パン設定値温度527に制御することが可能である。パンの温度は、1つは複数のヒータ・パン温度センサ504によって測定されることが可能である。内側ループ・コントローラは以下の要素:比例コントローラ、積分コントローラ、微分コントローラ、飽和限界、アンチワインドアップ・ロジックおよび0次保持ロジック要素のうちの1つまたは複数を備えることが可能である。
【0342】
ヒータ制御モジュール509の例示的な実施は、比例・積分・微分(PID:Proportional−Integral−Derivative)コントローラと結合されたPIレギュレータ・カスケードを利用する。
図49−3の実施形態では、PID内側ループ・コントローラ512はヒータ・パン142の温度を制御することが可能であり、PI外側ループ・コントローラ514は、ヒータ・パン温度センサ504およびボタン温度センサ506によって測定される、ヒータバッグ、ヒータバッグ中の流体およびヒータ・パンの平衡温度を制御することが可能である。ループ・コントローラ514は、透析液ヒータ・システム500による所望の流体設定値550の何れかのオーバシュートが、下に記述されるロジック制御可能インテグレータによって最小限とされることが可能な点で、標準PIレギュレータとは異なる。或る実施形態では、ヒータ・パン温度信号515およびボタン温度センサ(ヒータバッグ)信号517は比較的高いフレーム・レート(例えば、フル100Hzフレーム・レート)で制御フィルタ519の対を通って低域ろ過される一方で、ヒータ制御モジュール509は、より低いレート(例えば、1/2Hzのレート)でヒータの出力を変化させることが可能である。
【0343】
図49−4は、内側ループ・コントローラ512(ヒータ・パン・コントローラ)の一実施形態の模式図を示している。この実施形態では、内側ループ・コントローラ512は、限定されるものではないが、相違要素519を含む標準PIDレギュレータを用いて、温度誤差を生じさせ、比例利得要素522を用いて、PWM信号511を生じさせる。内側ループ・コントローラ512は、さらに、オフセット誤差を低下させるための離散時間インテグレータ516を備えることが可能である。内側ループ・コントローラ512は、
内側ループ・コントローラ512の出力を飽和すると、長時間存在する温度誤差によるオーバシュートを最小限とするためにアンチワインドアップ・ロジック要素518を備えることも可能である。内側ループ・コントローラ512は、さらに、ヒータ・パンの現実温度515に作用して、ヒータの応答性を改良する離散微分項520を備えることが可能である。内側ループ・コントローラ512は、さらに、最大および/または最小の許容されたヒータ・コマンドまたはPWM信号511を設定する飽和制限要素521を含むことが可能である。内側ループ・コントローラ512は、さらに、略2秒毎に起こるコントローラ演算間でPWM信号511を一定に保持するための0次保持ロジック523を備えることが可能である。
【0344】
図49−5は、外側ループ・コントローラ514(ボタン温度センサ・コントローラ)の模式図を示す。この例では、外側ループ・コントローラ514は、相違要素531、インテグレータ534および比例利得要素526を含むことが可能な変調されたPI型レギュレータを利用する。外側ループ・コントローラ514は、さらに、ヒータ制御モジュール509におけるロジックによってインテグレータが、スイッチが入れられまたは切られるのを可能とするための、インテグレータ切換えロジック522および対応するスイッチ529を備えることが可能である。外側ループ・コントローラ514は、さらに、外側ループ・コントローラ514の応答性を改良するためのコマンド・フィード・フォワード524を備えることが可能である。外側ループ・コントローラ514は、さらに、ボタン温度センサ目標温度517とヒータ・パン目標温度527の加重組合せに作用するための、比例フィードバック項526を備えることが可能である。得られた測定値は、先述された平衡温度532である。外側ループ・コントローラ514は、さらに、飽和制限要素521および/または低域通過フィルタ542を備えることが可能である。外側ループ中の飽和制限要素521は、最大の許容された目標パン温度527を設定する。低域通過フィルタ542は、透析液ヒータ・システム500のバンド幅の外側で頻繁に一時的制御信号をろ過除去するように設計されるのが可能である。
【0345】
外側ループ・コントローラ514中の積分要素534は、以下の条件の幾つかまたはすべてが存在するときに、スイッチ529によってオンにされることが可能である:ボタン温度517の変化の速度が所定の閾値未満であること、ボタン温度517が流体設定値温度550の所定の度数内にあること、またはバッグ体積が所定の最小値よりも大きいこと、およびコントローラ512、514の何れも飽和されていないこと。平衡温度フィードバック・ループは透析液ヒータ・システム500の一時的な挙動を制御することが可能であり、周囲の雰囲気温度が通常〜上昇した範囲にあるときに支配的であるのが可能である。インテグレータ516の動作はより寒い環境でのみ重要であることが可能であり、その結果、平衡時に、ボタン・センサ現実温度517とヒータ・パン現実温度515との間の実質的な温度差がもたらされることが可能である。フィード・フォワード項524は、ヒータ・パン目標温度527までずっと流体設定値温度550を通過することが可能である。この動作は流体設定値温度550においてヒータ・パン目標温度527を開始させ、ゼロに代えて、これは、それにより、透析液ヒータ・システム500の一時的な応答を改良する。
【0346】
ヒータ・モジュール509は、ヒータ・パン現実温度515が所定の閾値(この閾値は、最大の許容されたヒータ・パン目標温度527よりも僅かに高くなるように設定されることが可能である)と交わる場合、PWM信号511をオフとするチェック部を備えることも可能である。このチェック部は通常の操作下で始動されない場合もあるが、ヒータ・パン142の温度が所定の最大値にある間に、ヒータバッグ22が取り除かれた場合、始動されることが可能である。
【0347】
PIコントローラ514は、平衡温度532に作用する比例項を備えることができる。
平衡温度は、ヒータ508がオフとされ、かつヒータ・パン142および透析液導入ヒータバッグ22が平衡となることが許される場合にもたらされるであろう、ボタン・センサ506によって測定されたヒータバッグ温度である。平衡温度は、制御体積解析546におけるヒータ・パン142およびヒータバッグ22の模式的ブロック図を示す
図49−6を参照することによって良好に理解されるのが可能である。制御体積解析546は、平衡温度532が判断されるのが可能であるモデル環境を描く。この例示的な実施形態では、透析液ヒータ・システム500は、少なくとも2つの熱質量:ヒータ・パン142およびヒータバッグ22を備えることが可能な制御体積548としてモデル化されるのが可能である。制御体積548の境界は、熱移動だけがヒータ・パン142およびヒータバッグ22の間で起こる完全な断熱材として機能すると想定されるのが可能である。このモデルでは、熱エネルギー549がヒータ要素508を介してシステムに加えられることが可能であるが、熱エネルギーはヒータ・パン142およびヒータバッグ22から取り除かれるのが可能でないことがある。このモデルでは、透析液ヒータ・システム500におけるように、ヒータ・パン142およびヒータバッグ22が平衡となるに従い、ヒータバッグ22がその目標温度に到達するのに丁度十分にヒータ・パン142を加熱するのが望ましい。従って、平衡温度532はヒータバッグ22の初期温度およびヒータ・パン142の初期温度の関数として演算されるのが可能である:
E=MpcpTp+VbρbcbTb=(Mpcp+Vbρbcb)Te
ここで、Mp、cpはヒータ・パン142の質量および比熱であり、Vp、ρb、cbはバッグ中の透析液の体積、密度および比熱であり、TpおよびTbは、それぞれ、ヒータ・パン515およびボタン517の温度である。平衡温度について解くと、パンおよびボタン温度の線形組合せが得られる:
Te=cTb+(1−c)Tp
ここで、
【0351】
である。
定数cは平衡定数であり、kは透析液に対するヒータ・パンの熱キャパシタンス比である。添字bはヒータバッグ22中の透析液を示す一方で、pはヒータ・パン142を示す。
【0352】
このモデルでは、初期過渡状態中にヒータ・モジュール509が平衡温度532を制御するのを可能とすると、ヒータ・パン現実温度515を十分早くやはり低下させて、熱オーバシュートを防止しつつ、ヒータバッグ22の迅速な加熱を可能とすることが可能である。cパラメータは経験的に判断されることが可能である。ヒータ・モジュール509はcを測定された値よりも大きな値に設定して、所望の設定値550に到達するのに必要な全エネルギーを過小に見積もるのが可能であり、さらに、透析液ヒータ・システム500
の熱的オーバシュートを制限する。
【0353】
図49−7は、通常の条件下で作動する開示された実施形態の透析液ヒータ・システム500の性能をグラフにより示している。ヒータ・パン・センサ504、ボタン温度センサ506およびさらなる温度プローブの測定された温度が時間に対してプロットされている。流体温度プローブは、制御スキームを実証するための実験設定の一部であった。流体プローブ温度はライン552として示される。ボタン温度はライン517として示され、熱パン温度はライン515として示される。ライン550はボタン温度センサ506についての目標温度である。この試験の開始時に、ヒータバッグは実質的に空であり、ヒータはオフとされ、流体は移動しておらず、その結果、すべての温度は公称値におけるものである。時刻T=1において、25℃の流体はヒータバッグ22に流れ始め、プローブおよびボタン温度552、517を下げる一方で、ヒータがオンとされ、ヒータ・パン温度515を上昇させる。通常の操作下では、平衡温度532の比例制御は、ヒータバッグ22内の透析液を所望の流体設定値温度550近くの温度まで加熱するのに十分である可能性がある。従って、
図49−7では、透析液ヒータ・システム500は有効に機能し、ヒータ・パン現実温度515、ボタン・センサ現実温度517、およびプローブ温度552は、すべて、略50分内に流体設定値温度550に収束する。
【0354】
図49−8は、雰囲気温度が35℃である高温環境で作動させる透析液ヒータ・システム500の性能をグラフで示している。上述されたように、試験は実質的に空であるヒータバッグで開始される。一旦流体が流れ始め、ヒータがオンとされれば、プローブおよびボタン温度552、517は低下し、ヒータ・パン温度515は上昇する。高温環境では、透析液ヒータ・システム500は通常の条件と実質的に同様に機能する。それにより、平衡温度532の比例制御は、再度、ヒータバッグ22内の透析液を所望の流体設定値温度550近くの温度まで加熱するのに十分であることが可能である。
図49−7では、透析液ヒータ・システム500は有効、かつ所望の仕様内で機能し、ヒータ・パン現実温度515、ボタン・センサ現実温度517、およびプローブ温度552は、すべて、略30分以内に所望の設定値温度550に収束する。
【0355】
図49−9は、雰囲気温度が10℃およびソース流体が5℃である場合に冷たい環境で操作された透析液ヒータ・システム500の性能をグラフで示している。上述されたように、試験は実質的に空であるヒータバッグで開始される。一旦流体が流れ始め、かつヒータがオンとされれば、プローブおよびボタン温度552、517は低下し、ヒータ・パン温度515は上昇する。冷たい環境では、所望の流体設定値温度550を平衡温度532と等しく設定するのは、ボタン・センサ506の温度の定常状態誤差に導くことがある。冷たい環境での熱喪失は、熱平衡中にヒータ・パン142とボタン・センサ506との間の大きな温度差を必要とすることがある。平衡温度532はヒータ・パン142およびボタン・センサ506の加重総和であるので、ヒータ・パン142の温度が平衡において所望の流体設定値温度550を上回る場合、ボタン・センサ506の温度は流体設定値温度550以下であることがある。これは、たとえ平衡温度532が流体設定値温度550と等しくても起こる可能性がある。この定常状態誤差を補償するには、ボタン・センサ506の温度誤差に作用する外側PIコントローラ514に積分項を加えることが可能である。インテグレータ538は、以下の条件の1つまたは複数が満足されるとオンとされることが可能である:ボタン・センサ506の温度の第1の微分が低いこと;ボタン・センサ506が流体設定値温度550に近く、ヒータバッグ22の体積が最小閾値を超えること;および内側PIDループ512または外側PIコントローラ514の何れも飽和されていないこと。この例示的な実施形態では、積分項の切換えは通常の操作中にインテグレータ538の効果を最小限とすることが可能であり、温度過渡状態中に積分によって引き起こされたオーバシュートを最小限とすることも可能である。従って、
図49−9では、透析液ヒータ・システム500は有効に、かつ所望の仕様内で機能し、ヒータ・パン現実温
度515、ボタン・センサ現実温度517、およびプローブ温度552は、すべて、略30分以内に流体設定値温度550に収束する。
【0356】
まとめると、開示された温度コントローラは、第1の構成要素の質量が経時的に変化し、かつ第2の構成要素がヒータまたはクーラを備えるものであり、両方の構成要素は断熱された体積中にある2構成要素システムの良好な熱制御を達成することが可能である。この熱制御は、平衡温度を制御することによって達成することが可能である。温度コントローラは、両方の構成要素の温度ならびに可変構成要素の質量を判断する。温度コントローラは第2の構成要素の加熱または冷却を変化させて、平衡温度を所望の設定値温度までもってゆく。平衡温度は2つの構成要素の熱キャパシタンス加重平均温度である。コントローラは比例フィードバック・ループを用いて、平衡温度を制御することが可能である。
【0357】
温度コントローラは、設定値温度と第1の構成要素の温度との間の差に応答する積分項も備えることが可能である。積分項は、随意に、以下の条件の幾らかまたはすべてが満足されるとオンとすることができる:
・第1の構成要素の温度変化の速度が低いこと;
・第1の部分の温度が設定値温度の近傍であること;
・第1の部分の体積が幾らか最小レベルを超えること;
・制御出力信号が飽和されていないこと。
【0358】
温度コントローラは、設定値温度を比例および積分項の出力に加えるフィード・フォワード項も備えることが可能である。
さらに、温度コントローラは、外側ループ・コントローラが、少なくとも、平衡温度についての比例制御項備え、かつ内側コントローラに対する設定値温度を出力するカスケード温度コントローラの外側ループ・コントローラであることが可能である。内側コントローラは、ヒータまたはクーラ要素で第1構成要素の温度を外側コントローラによって生じた設定値温度に制御する。
ユニバーサル電源
開示の態様によると、APDシステム10は、ライン電圧を、サイクラ14中の電気機械式要素およびエレクトロニクスの幾らかまたはすべてについてのDC電圧の1又は複数のレベルに変換するユニバーサル電源を備えることが可能であり、かつヒータ・パン142のための電気ヒータにAC電力を提供する。サイクラ14中の電気機械式要素は空気圧式バルブ、電気モータ、および空気圧ポンプを備えることが可能である。サイクラ14中のエレクトロニクスは制御システム16、表示部324、およびセンサを備えることが可能である。AC電力はヒータ・コントローラに供給されて、ヒータ・トレイ142上のヒータバッグ22中の透析液の温度を、ユーザ/患者に透析液を供給するに先立って所望の設定値に制御する。ユニバーサル電源は2つ(またはそれ以上の)ヒータ要素の構成を変化させて、ACライン電圧の2つの範囲:例えば、110±10ボルトrmsの第1の範囲;および220±20ボルトrmsの第2の範囲を受け入れる。この構成は、多数の異なる国においてAPDシステム10の使用を受け入れること意図する。治療セッションの開始中に、APDサイクラ14は、ヒータバッグ・ライン26を介して接続された透析液容器20からの透析液をヒータバッグ22に導入する。代替実施形態では、透析液の予め導入されたバッグを治療の開始時にヒータ・パン142上に置くことが可能である。
PWMヒータ回路
APDサイクラ中のヒータ・コントローラは、ヒータ・パン142に取り付けられたヒータ要素に供給された電力を変調する。APDサイクラは世界中の様々な場所で用いられることが可能であり、かつ100〜230ボルトrmsの電力を供給するAC本管に差し込まれることが可能である。ヒータ・コントローラおよび回路は、継続的に十分なヒータ電力を供給し、多数の方法でヒューズを飛ばすこともヒータ要素を損傷することもないようにしつつ、様々なAC電圧に適合させることが可能である。
【0359】
ヒータ回路の一実施形態は
図49−10に示されており、そこでは、パルス幅モジュレータ(PWM)ベースの回路2005が、AC本管2040の1つのリードとヒータ要素2000との間に接続されたパルス幅変調(PWM)要素2010でヒータ・パン142の温度を制御する。コントローラ2035はリレー2030およびPWM要素2010に動作可能に接続されている。コントローラ2035は、電圧検出部2020および温度センサ2007からデータを得ることによってヒータの動作を監視する。コントローラ2035は、PWM要素2010への信号を介してヒータ2000に供給された電力の量を変調することが可能である。PWMまたはパルス幅変調要素は、0と100%との間の固定された時間の一部に対して閉じられている。PWM要素2010は時間の0%閉じられているときに、電気エネルギーはヒータ2000まで流れない。PWM要素が100%閉じられているときに、ヒータはAC本管2040に連続的に接続されている。PWM要素2010を、包括的に、0と100%との間の値の範囲に設定することによって、コントローラ2035はヒータ2000によって消失された電力の量を変調することが可能である。
【0360】
PWM要素2010スイッチの大きな電流が1秒当たり多数回流れたり流れなかったりする。PWM要素2010は、典型的には、幾つかの種類の固体リレー(SSR:solid state relay)である。AC電圧のためのSSRは、典型的には、電力スイッチを制御する回路を始動させることを含む。始動回路は、例えば、リード・リレー、変圧器または光学カプラであることが可能である。電力スイッチはシリコン制御整流器(SCR:silicon control retifier)またはTRIACであることができる。SCRまたはTRIACはサイリスタとも称される。SSRの1例はクライドム・インコーポレイテッド(Crydom Inc.)によるMCX240D5(登録商標)である。
【0361】
1例では、コントローラ2035はPWM要素値を変調して、温度センサ2007によって測定されるヒータ・パン142の温度を制御することが可能である。別の例では、コントローラ2035はPWM要素値を変調して、ヒータバッグ22中の流体の温度を制御することが可能である。別の例では、コントローラ2935はPWM要素2010を制御して、ヒータ電力の固定されたスケジュールを提供することが可能である。コントローラ2035は、ヒータ回路を開き、ヒータ2000への電力の流れを停止する安全リレー2030を命令することが可能である。安全リレー2030は別のコントローラ(図示せず)によって制御されて、コントローラ2035から独立した安全回路を提供することが可能である。PWMベースの回路2005は、AC本管2040での電圧を示すコントローラ2035への信号を提供する電圧検出要素2020を備えることが可能である。1例では、電圧検出要素2020はAC本管2040に亘ってAC電位を測定するのが可能である。別の例では、電圧検出要素2020はヒータ2000を通る電流の流れを測定するのが可能である。コントローラ2035は、ヒータ要素2000、PWM要素2010信号および測定された電流の既知の抵抗からAC本管に亘っての電圧を演算することが可能である。
【0362】
PWMベースの回路2005は、PWM要素2010の最大許容デューティ・サイクルを変動させて、様々なAC本管電圧を受け入れることが可能である。ヒータ要素2000は、最低の可能なAC電圧を持つ最大必要電力を提供するように設計されることが可能である。コントローラは、PWM要素2010のデューティ・サイクルを変動させて、AC本管での電圧の範囲に対する一定の最大ヒータ電力を提供するのが可能である。例えば、110ボルトACラインからヒータ2000に供給された電圧は100%デューティ・サイクルにて供給されることが可能であり、PWM要素2010が25%に設定されている場合、同一量の電力を220ボルトACラインからヒータ2000に供給されることが可
能である。PWM要素2010のデューティ・サイクルは、さらに、最大値未満に低下させて、ヒータ・パン142の温度を制御することが可能である。
【0363】
ヒータ要素2000およびヒータ・パン142の温度は、該要素およびヒータ・パンの熱質量の関数である時定数に対する平均ヒータ電力によって制御されるのが可能である。平均ヒータ電力は、比較的一定であるヒータの抵抗、およびヒータ要素2000に亘るrms電圧から演算されることが可能である。現実的なサイズのヒータでは、PWM振動数はヒータ・システムの時定数よりもかなり速く、従って、ヒータ要素に亘っての有効電圧は、単純に、PWMデューティ・サイクルにrms電圧を掛け合わせたものである。
【0364】
図49−10中の回路のヒータ・パン温度を制御するための1方法は、コントローラ2035を、2020において測定された電圧に基づいて最大PWMデューティ・サイクルを設定するように仕向けることが可能である。最大デューティ・サイクルは、所望の最大ヒータ電力、ヒータ要素2000の既知の抵抗および測定された電圧から演算されることが可能である。演算の1つの可能な例は:
PWMMAX=(PMAX*RHEATER)0.5/Vrms
であり、ここで、PWMMAXは最大許容PWMデューティ・サイクルであり、PMAXは最大ヒータ電力であり、RHEATERはヒータ要素2000の公称抵抗であり、Vrmsは電圧検出部2020によって測定された供給電圧である。演算の別の例は
PWMMAX=PMAX/(I2*THEATER)
であり、ここで、Iは、電圧がかけられたときのヒータを通っての電流である。コントローラ2035は、最大PWMデューティ・サイクルを設定した後に、次に、PWM要素2010のPWMデューティ・サイクルを変動させて、温度センサ2007によって測定されるヒータ・パン142の温度を制御する。コントローラはPWM要素を制御して、例えば、PIDフィードバック・ループ、またはPIフィードバック・システムを含む多数の方法で所望の温度を達成するのが可能である。
【0365】
代替方法および構成では、PWM回路2005は電圧検出部2020を備えていない。この代替方法では、コントローラ2035はPWM要素2010のPWMデューティ・サイクルを変動させて、温度センサ2007によって測定される所望のヒータ・パン温度を達成する。コントローラ2035は最小PWMデューティ・サイクルでサイクルの加熱を開始し、温度センサが所望の温度をコントローラ2035に報告するまでPWMデューティ・サイクルを増大させる。PWM速度の増加の率は制限されるか、または制御されて、ヒューズ2050をトリップし、飛ばす可能性がある過剰な電流を回避することが可能である。コントローラ2035は、それに代えて、フィードバック演算において小さな利得を用いて、PWMデューティ・サイクル増大の速度を制限することが可能である。それに代えて、コントローラはフィード・フォワード制御を用いて、PWMデューティ・サイクル増大の速度を制限することが可能である。
デュアル電圧ヒータ回路
ヒータの抵抗を変化させるデュアル電圧ヒータ回路2012の例が、
図49−11において模式的ブロック図として示されている。
図49−11中のブロック図は、110および220ボルトrmsの2つの標準AC電圧に対する略一定のヒータ電力を提供するためのデュアル電圧ヒータ回路2012の1例を表している。デュアル電圧ヒータ回路2012は、ヒータを再構成することによって最大電流を制限し、それにより、回路2005におけるようなPWM要素のデューティ・サイクルを設定するソフトウェアのエラーに対して余り感受性でなくなる。回路2012は、PWM要素2010を通っての最大の電流の流れをより低下させ、これは、より小さくてより安価なSSRを可能とする。回路2012におけるヒータ構成の選択はヒータ変調から切り離されて、制御および信頼性を改良する。ヒータ電力を変調するPWM要素2010A、2010Bは、典型的には、SSRであり、これは、典型的には、故障時閉の状態にあり、それにより、最大電力を提供する。
ヒータ選択リレー2014は、高いサイクル用途について理想的よりは劣るが、典型的には、部分的には、電気機械式継電器が故障時開である傾向のため安全性臨界回路で好ましいことがある。プロセッサによるヒータ構成の選択はヒータ構成のより大きな制御を可能とする。
【0366】
恐らくは電圧降下によるAC本管電圧揺らぎの場合には、コントローラは好ましくはヒータ構成を一定に保持する。対照的に、瞬時の電圧に基づいてヒータ構成を自動的に変化させる回路はヒータ構成の間で変動するであろう。この結果、回路が、一時的により低いレベルからその元のレベルに戻るライン電圧に十分速く応答しない場合は、高い電流の流れがもたらされる可能性がある。或る実施形態では、プロセッサは、ヒータ構成(並列または直列)を選択するにおいてユーザまたは患者からの入力を受容し、デュアル電圧ヒータ回路2012は、変動するライン電圧に呼応して構成の間で自動的に切り替わらない。別の実施形態において、プロセッサは、出力全開において直列の構成(つまり、より高い抵抗の構成)で電流の流れを測定し、治療の開始時にAC本管電圧に適切なヒータ構成を選択し、治療が続く間に構成を変化させない。
【0367】
デュアル電圧ヒータ回路2012は、相互に並列または直列に接続されて、AC本管2040において2つの異なる電圧に対して同一のヒータ電力を提供することができる2つのヒータ要素2001、2002を備えることが可能である。それぞれのヒータ要素2001、2002は1又は複数のヒータサブ要素を備えることが可能である。ヒータ要素2001、2002の電気抵抗は好ましくは略等しい。コントローラ2035は電流感知部2022からの信号を受け取り、ヒータ選択リレー2014を制御して、ヒータ要素2001、2002を直列または並列に接続させることが可能である。コントローラ2035は2つのヒータ要素の電気的構成を変化させて、様々なAC本管電圧に由来する電流の流れを制限することが可能である。電流感知部2022の1例は、アクメ・エレクトリック(Acme Electric)によって製造された電流検知変圧器AC−1005である。
【0368】
ヒータ要素2001、2002における電力は、コントローラ2035によって制御されたPWM要素2010A、2010Bによってさらに変調されて、温度センサ2007によって測定される所望の温度を達成し、あるいは上述された他の制御目標を達成することが可能である。PWM要素2010A、2010Bは、クライドム・インコーポレイテッド(Crydom Inc.)によるMCX240D5(登録商標)などの固体リレーであることが可能である。安全リレー2030は、ヒータ要素2001、2002をAC本管2040から接続解除するように構成されることが可能である。安全リレー2030は、コントローラ2035または別のプロセッサもしくは安全回路(図示せず)によって制御されるのが可能である。
【0369】
安全リレー2030およびヒータ選択リレー2014は固体または電気機械式継電器であることが可能である。好ましい実施形態では、安全リレー2030および/またはヒータ選択リレー2014は電気機械式継電器である。電気機械式継電器の1例はオムロン・エレクトロニック・コンポーネンツ(OMRON ELECTRONIC COMPONENTS)および他の製造業者によって製造されたG2AL−24−DC12である。電気機械式継電器は、しばしば、安全臨界回路に対して好ましい。というのは、それらは固体リレーよりも頑強かつ信頼性があると考えられ、かつ故障状態開の傾向を有するからである。それらは、コントローラ・ソフトウェアにおいて様々な故障に対して感受性がより低いこともあり得る。
【0370】
1例では、ヒータ選択リレー2014は、出力がヒータ要素2001、2002に接続された二極双投リレーを備える。非通電状態であるヒータ選択リレー2014はヒータ要
素2001、2002に直列で接続され、その結果、電流は1つの要素、次に、他の要素を通って流れる。直列構成は、1例の回路では、以下によって達成されるのが可能である;ヒータ要素2001の第1の端をPWM要素2010Aを介してL1回路2041に接続すること;ヒータ要素2001、2002の接合端を第1の極2014Aを介して開回路に接続すること;ヒータ要素2002の第2の端を第2の極2014Bを介してL2回路2042に接続すること。通電状態では、ヒータ選択リレー2014は、並列にヒータ要素に接続され、その結果、略半分の電流がそれぞれのPWMおよびヒータ要素を通って流れる。並列構成は以下によって同一例の回路で達成されるのが可能である:ヒータ要素2001の第1の端をPWM要素2010Aを介してL1回路2041に接続すること;ヒータ要素2002の第2の端をPWM要素2010Bを介してL1回路2041に接続すること;ヒータ要素2001、2002の接合端を第1の極2014Aを介してL2回路2042に接続すること。好ましい回路は電源が切られた状態でヒータ要素2001、2002を直列に接続する。というのは、より高い電圧AC本管に接続された場合、得られたより高い抵抗は電流の流れを制限し、ヒューズ2050の過剰負荷または加熱要素2001、2002の過剰加熱を回避するので、それはより安全な構成だからである。
【0371】
ヒータの構成を変化させることによってヒータの有効抵抗を変化させるヒータ回路2112の別の例が、模式的ブロック図として
図49−12に示されている。ヒータ回路2112は、L1およびL2電力回路が壁ソケットにおいて逆転された場合にヒータ回路2112がより良好な漏れ電流保護を提供することを除いて、(
図49−11に示された)ヒータ回路2012と同様である。L1およびL2電力回路の逆転は、電力が、ヒータ回路に電力を供給するビルにおいて誤って配線されている場合にあり得る。住居ビルでの配線は病院と同程度に信頼性がない場合があり、すべての電気システムは資格を持った個人によって設置および維持される。
【0372】
ヒータ回路2112中のPWM要素2010A、2010Bと、公称L1回路2041と、ヒータ要素2001、2002と、ヒータ選択リレー2014と公称L2回路2042との間の電気的構成要素および接続は、壁ソケットの極性に拘わらず漏れ電流を最小限とするように配置される。
図49−12に示された非通電状態では、ヒータ選択リレー2014はヒータ要素2001、2002を直列にPWM要素2010Aと接続する。ヒータ要素を直列に接続する1つの可能な回路は:PWM要素2010Aを介してL1回路2041に接続されたヒータ要素2001の第1の端;第1の極2014A、L1 2014Cおよび第2の極2014Bを介してヒータ要素2002の第1の端に接続されたヒータ要素2001の第2の端;およびPWM要素2010Bを介してL2回路2042に接続されたヒータ要素2002の第2の端を備えている。通電状態では、ヒータ要素2001、2002およびPWM要素2010A、2010Bは並列に接続されている。通電状態では、ヒータ選択リレー2014は回路2122中のヒータ要素を並列に接続し、その結果、略半分の電流がそれぞれのPWMおよびヒータ要素を通って流れる。2つのヒータおよびPWM要素を並列に接続するための1つの可能な回路は:PWM要素2010Aを介してL1回路2041に接続されたヒータ要素2001の第1の端;第1の極2014Aを介してL2回路に接続されたヒータ要素2001の第2の端;第2の極2014Bを介してL1回路2041に接続されたヒータ要素2002の第1の端;PWM要素2010Bを介してL2回路2042に接続されたヒータ要素2002の第2の端を備えている。安全リレー2030はL2回路2042に配置され、故障が起こる場合に開くことによって電流の流れなしのフェール・セーフ状態を生じさせる。安全リレーの制御は下に記述される。コントローラ2035はヒータ構成を制御して、電流感知部2022によって測定される電流の流れをヒューズ2050、ヒータ要素2001、2002、PWM要素2010A、2010Bに対する定格電流未満のレベルまで制限し、全ヒータ電力を制限する。コントローラ2035はPWM要素2010A、2010Bのデューティ・サイクルを変化させて、センサ2007によって測定されるヒータ・パン142の温度を制御する
。
デュアル電圧ヒータ回路の実行
本発明の一実施形態の回路
図2212が
図49−13に示されており、これは
図49−11中のヒータ回路2012と同等である。回路2212では、リレー・コイル2014Dが非通電であるときは、ヒータ要素2001、2002はヒータ選択リレー2014によって直列に接続される。コントローラ(図示せず)は、トランジスタ・スイッチ2224Aを閉じるノード2224における信号を供給し、Vs DC電力2214を用いてリレー・コイルに通電することによって、ヒータ要素2001、2002およびPWM要素2010A、2010Bを並列に接続する。コントローラは、ノード2220における信号を介し、かつV電源2210で電力が与えられたPWM要素2010A、2010Bのデューティ・サイクルを変化させることによってヒータ電力を変調させる。電流は電流検知2022部で測定される。安全リレー2030は通常開いている。安全リレー2030は、コントローラから分離されているFPGA基板によって制御されるのが可能である。FPGA基板は、ヒータ・パン温度、電流検知および数個の他のパラメータを含むAPDサイクラの動作を監視する。FPGA基板は、ノード2228において信号を取り除くことによってリレーを開くことが可能である。安全リレー・コイル2030DにはV安全2218によって動力が与えられる。
【0373】
1例では、電圧供給V電源2210、Vs2214、V安全2218は同一の電圧源であることが可能である。別の例では、それぞれの電圧源は、付加された安全性に対するヒータ回路の追加の動作制御を提供するように制御可能である。1例では、V安全2218はAPDサイクラ14中の多数のプロセッサによって制御されるのが可能である。プロセッサの何れかがエラーおよび故障を検出する場合、V安全回路は開かれ、安全リレー2030は開かれ、ヒータ電力はオフとされる。
[デュアル電圧ヒータ回路の操作]
ヒータ回路は、障害を与える電流がヒータ要素2001、2002またはヒューズ2050を通って流れるのを可能とせずに、適切なヒータ電力を提供するように操作される。ヒータ回路2212は、治療がAPDサイクラ14で実行され、AC本管における電圧変化に拘わらず操作中に変化されない前に構成されることが可能である。(
図45中の)制御システム16は、非通電ヒータ選択リレー2014でヒータ制御回路2212を起動させ、それにより、ヒータ要素は直列に接続されて、電流を最小限とする。起動処理の一部として、自動化コンピュータ300中のソフトウェアは、PWM要素2010A、2010Bに100%デューティ・サイクルまで命令することによってヒータの電流の流れ試験を行うことが可能であり、得られた試験電流は電流感知部2022によって測定され、自動化コンピュータ300に伝達される。PWM要素2010のデューティ・サイクルは電流の流れ試験の後にゼロにリセットされるのが可能である。
【0374】
1例の方法では、自動化コンピュータ300は所定の値に対して測定された試験電流を評価する。測定された試験電流が与えられた値を上回る場合、自動化コンピュータ300はADPサイクラ起動処理で進行するであろう。測定された試験電流値がその同一の与えられた値未満である場合、自動化コンピュータ300はヒータ選択リレーに通電して、ヒータ要素2001、2002を並列に再構成する。電流の流れ試験を反復し、新しい測定された試験電流が所定の値を上回る場合、自動化コンピュータ300はADPサイクラ起動処理で進行するであろう。並列ヒータ要素での電流の流れ試験からの測定された試験電流が所定の値より低い、或いは、より高い場合、自動化コンピュータ300はエラーをユーザ・インタフェース・コンピュータ302に発信するであろう。
【0375】
それに代えて、自動化コンピュータ300は、測定された試験電流およびヒータ要素構成に基づいて試験電圧を演算することが可能である。試験電圧が180〜250ボルトrmsの範囲にある場合、自動化コンピュータ300はADPサイクラ起動処理で進行する
であろう。試験電圧が90〜130V rmsの範囲にある場合、自動化コンピュータ300はヒータ選択リレーに通電して、ヒータ要素2001、2002を並列に再構成し、電流の流れ試験を反復し、試験電圧を再演算する。試験電圧が90〜130V rmsの範囲にある場合、自動化コンピュータ300がユーザ・インタフェース・コンピュータ302にエラーを送信しない場合、自動化コンピュータ300はADPサイクラ起動処理で進行するであろう。
【0376】
別の例の方法では、自動化コンピュータ300は直列に構成されたヒータ要素での測定された試験電流を電流値の直列低範囲および直列高範囲と比較する。直列低範囲は、直列に配置されたヒータ要素を通って流れる低いAC電圧と合致する。直列高範囲は、直列に配置されたヒータ要素を通って流れる高いAC電圧と合致する。例示的な実施形態では、低いAC電圧は100〜130ボルトのrms値を備え、他方、高いAC電圧は200〜250ボルトのrms値を備える。
【0377】
測定された試験電流が低範囲および高範囲の外にある場合、自動化コンピュータ300は、ヒータ回路が破壊されたと判断し、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302にエラーを発信することが可能である。測定された試験電流が高範囲内にある場合、ヒータ構成は変化しないままであり、APDサイクラ14の起動は継続することができる。測定された試験電流が低範囲内にあって、ヒータ要素が直列に配置される場合、自動化コンピュータ300は、ノード2224における信号を介してヒータ選択リレー2014に通電することによって、ヒータ要素2001、2002を並列配置に再構成することが可能である。自動化コンピュータ300は、信号を提供して、ヒータ選択リレー2014を作動させるハードウェア・インタフェース310に送られた命令を介してヒータ選択リレー2014を制御することが可能である。
【0378】
PWM要素2010A、2010Bを100%デューティ・サイクルまで再度命令し、電流の流れを電流感知部2022で測定することによって、ヒータ要素を並列配置に再構成した後に、自動化コンピュータ300は電流の流れ試験を反復することが可能である。測定された試験電流は、電流値の並列低範囲に対して評価されること可能である。測定された試験電流が並列低範囲値内である場合、ADPサイクラ起動処理が進められる。新たに測定された試験電流が並列低範囲値の外である場合、自動化コンピュータ300はユーザ・インタフェース・コンピュータ302にエラーを発信するであろう。
【0379】
ハードウェア・インタフェース310で実行されるFPGAコントローラは、ヒータ選択リレー2014が切り替えられた間に、安全リレー2030に命令してノード2228における信号を介して開くようにプログラムされるのが可能である。安全リレー2030は、ヒータ選択リレー2014が開閉される毎に開かれて、ヒータ選択リレー2014内での1つの極から他の極への短絡を防げることが可能である。
ユーザ入力でのデュアル電圧ヒータ回路の操作
代替実施形態では、ヒータ要素2001、2002を再構成する前に、自動化コンピュータ300はユーザの介入を必要とすることがある。ユーザ入力の要求は、本発明の一実施形態の価値ある安全性特徴を提供する。
図49−14は、入手可能なAC電圧に対してヒータ要素を適切に構成するにおいてユーザを含めるための方法2240を説明するロジック・フロー・チャートを示している。ステップ2241では、(
図45中の)制御システム16は、非通電ヒータ選択リレー2014でヒータ制御回路2212(
図49−13)を起動させ、それにより、ヒータ要素は直列に接続されて、電流を最小限とする。設定2242では、自動化コンピュータ300はPWM要素2010A、2010Bを100%デューティ・サイクルまで命令し、電流は電流感知部2022によって測定され、測定された試験電流はプロセッサに伝達される。PWM要素2010のデューティ・サイクルは、試験電流が測定された後に、ゼロにリセットされることが可能である。ステップ22
44では、自動化コンピュータ300は測定された試験電流を第1の範囲と比較する。ステップ2245では、測定された試験電流が第1の範囲内にある場合、ヒータ構成は正しく、APD操作がステップ2254で進められる。代替実施形態では、方法2240は、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302がユーザに頼んで、ステップ2245からの進行前に、自動化コンピュータ300が測定された試験電流およびヒータ構成から判断したAC本管電圧を確認するステップ2245Aを含む。ユーザがAC電圧レベルを確認しない場合、方法2240はステップ2252まで進行し、エラーを表示する。
【0380】
ステップ2246では、測定された電流が第2の範囲の外である場合、方法2240はステップ2252においてエラーを表示し、そうでなければ、方法2240はステップ2247まで進む。ステップ2247では、ユーザが低いAC電圧を確認する場合、ヒータ構成はステップ2248で変化され、そうでなければ、方法2240はステップ2252においてエラーを表示する。ステップ2248では、ノード2224における信号を介してヒータ選択リレー2414に通電することによって、自動化コンピュータ300はヒータ要素2001、2002を並列配置に再構成する。ステップ2248でヒータ要素を再構成した後、方法2240はステップ2242でヒータを再試験し、方法2240のロジック・フロー・チャートを介して継続する。
【0381】
代替実施形態では、ユーザまたは患者は制御システム16のメモリに高いまたは低いAC電圧を格納するのが可能であり、その結果、自動化コンピュータ300はそれぞれの処置においてユーザまたは患者に問合せして、AC電圧を確認する必要はない。
図49−15は、AC電圧値が制御システム16のメモリに格納される方法2260を説明するロジック・フロー・チャートを示している。ステップ2241〜2246は、前述した方法2240と同一である。ステップ2249では、メモリは格納されたAC電圧値について問合せされる。格納されたAC電圧値が低い場合、方法2260はステップ2248まで進み、ヒータ要素を並行配置に再構成する。格納されたAC電圧が高いかまたはゼロである場合、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302はユーザに問合せして、低いAC本管電圧を確認することが可能である。ユーザが低いAC電圧を確認する場合、方法2260はステップ2248まで進み、ヒータ要素を並行配置に再構成する。ステップ2248は格納されたAC電圧を低く設定することを含むこともできる。ステップ2248でヒータ要素を再構成した後、方法2260はステップ2242でヒータを再試験し、方法2260のロジック・フロー・チャートを介して継続する。
【0382】
1例では、方法2260は、メモリから読み取り、または測定された試験電流およびヒータ構成から試験電圧を演算し、次に、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302はユーザに頼んで試験電圧を確認するステップ2245Aを含み得る。該方法は2245と2246との間にステップを含むことが可能であり、ヒータが並列配置に再構成され、かつ電流が高い範囲内にない場合、該方法はステップ2252まで進み、APCサイクラ14をシャットダウンする。
【0383】
方法2240,2260は多数の様々な方法によって測定された試験電流を評価することが可能である。好ましい方法は前述され、代替例は下に述べられる。ステップ2245での第1の範囲は、電流ヒータ要素構成に対する所望の量の最大ヒータ電力を提供するであろう電流レベルの範囲であることが可能である。これに代えて、ステップ2245は測定された試験電流およびヒータ要素構成から試験電圧を演算することが可能であり、試験電圧がヒータ構成に対して正しいかを評価することが可能である:並列構成に対して略110V rmsおよび直列構成に対して略220V rms。これに代えて、ステップ2245は、測定された試験電流が与えられた所定の値を上回るかを試験することが可能である。ステップ2246での第2の範囲は、直列構成での略110V rmsに対応する電流値範囲であることが可能である。これに代えて、ステップ2246は測定された試験
電流およびヒータ要素構成から試験電圧を演算することが可能であり、試験電圧が直列構成に対して略110V rmsであるかを評価することが可能である。これに代えて、ステップ2246は、測定された試験電圧が与えられた所定の値未満であるかを評価することが可能である。
【0384】
別の実施形態では、方法2260での選択されたAC電圧値は、用法の予測された配置に基づいて工場または流通センタに予め入れられることが可能である。例えば、APDサイクラが合衆国、カナダまたは日本で用いられる場合、AC電圧値は低いのに対して選択されることが可能である。別の例では、APDサイクラが欧州またはアジアで用いられる場合、AC電圧値は高いのに対して選択されることが可能である。
【0385】
与えられた領域で動作されることが予測される透析機では、このデータベースは、工場における透析機にロードされる、または操作の現場で初期設定中に技術者によってロードされる地域的電圧と同程度に単純であることが可能である。これらの地域的AC電圧値の規定は、イーサネット(登録商標)またはワイアレス接続を用いて世界中のウェブに亘って、または当業者に明白な何れかの他のデータ転送メカニズムによって、メモリ・スティックまたは同様なデバイスを用い、個人データ・キー(PDK)、コンパクト・ディスク、バーコード・リーダを用い、手動で入力されることが可能である。他の実施形態では、地域的電圧のセットは制御システム16にアクセスできることが可能であり、それを用いてその人の地方における典型的な操作電圧をユーザに伝えることが可能である。一実施形態では、ステップ2247でユーザ入力を許可して、従前の設定から電圧を変化させるに先立って、ユーザには地域の典型的な電圧が知らされ;それにより、地域的電圧の値に親しんでいないユーザは、その人の現在地を知って、電圧不適合性に対してセーフガードを提供することだけが求められるであろう。
【0386】
別の実施形態では、APDサイクラ14には、その現在地、例えば、GPSトラッカ、イーサネット接続を判断するための機構、および接続の場所を判断するための機構、またはユーザ・インタフェース302を用いて、国または大陸などの現在地を入力することができるモードが備えられているであろう。ある実施形態では、直列ヒータ構成を起動させ、電流の流れ試験を実施した後、ユーザはその人の現在地に関して単に問合せされる場合があり;その問合せに対する応答が測定された試験電流およびヒータ構成に関連する電圧、およびその地域に対する典型的な電圧の両方にマッチする場合、処理が進められる。
【0387】
本発明の一実施形態では、手動スイッチ(図示せず)、またはそれに代えて、ロジック・スイッチを用いて、APD透析機を用いるのに適した安全な電圧に設定する。瞬時電圧を測定し、特定の値としての、またはカテゴリ記述子としてのこの測定値をユーザに表示する。ユーザは、測定された電圧が現在構成されているような透析機に対して安全な動作範囲内にあると応答しなければならず、またはそれに代えて、電力が加熱要素まで流される前に、透析機の構成を改変することによって応答しなければならない。構成は、例えば、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302を介して電子的に改変される可能性があり、またはスイッチを反転させることによって手動により実行される可能性がある。
【0388】
本発明の別の実施形態では、整流器は何れかの入ってくる交流(AC)を単一の直流(DC)に変換する。ヒータ回路は、電圧検出2020要素が、AC電圧を選択されたDC電圧に整流するユニバーサルDC電源で置き換えられている以外は、
図49−8中のヒータ回路2005に似ているであろう。ヒータ要素2001、2002に供給された電力は、整流器中のPWM要素によって、または別のPWM要素2030によって変調されることが可能である。ヒータ回路は安全リレー2010を備えることが可能である。単一の電圧DC電源は1つのヒータ構成の使用を可能とする。この実施形態でのPWM要素は1又は複数のIGBTまたはMOSFETスイッチおよび関連する電気的ハードウェアを備え
ることが可能である。好ましい実施形態では、入ってくる交流は12V〜48Vの範囲の直流に変換されるであろう。
【0389】
別の実施形態では、ヒータ要素2000は、それ自体が、電力が消失するのを制限する正の温度係数(PTC:Positive Temperature Coefficient)要素を備えることが可能である。PTC要素の内部電気抵抗は温度と共に増大し、従って、電力レベルは自己制限性である。PTCヒータ要素は、110〜220V rmsの電圧で作動するように規格されたステゴ(STEGO)などの会社から商業的に入手可能である。PTC加熱要素を採用するヒータ回路は、電圧検出要素2020が取り除かれたヒータ回路2005に似ているであろう。ヒータ電力は、Triacを用いてPWM要素2010で制御されるであろう。
[データベースおよびインタフェース・システム]
同じくユーザ・インタフェース・コンピュータ302上のデータベース・サブシステム346は、透析機、患者、処方箋、ユーザ・エントリ、および治療履歴の情報のオンボード格納に使用されるデータベースにすべてのデータを格納し、データベースからすべてのデータを取り出す。これは、そのような情報がシステムによって必要であるときに共通のアクセス・ポイントを提供する。データベース・サブシステム346によって提供されるインタフェースは、幾つかの処理によってそれらのデータ格納要求に対して使用される。データベース・サブシステム346は、データベースのファイル・メンテナンスおよびバックアップも管理する。
【0390】
UIスクリーン・ビュー338は、治療履歴データベースをブラウズするために治療ログ・クエリ・アプリケーションを起動することが可能である。このアプリケーションを使用して(これに代えて複数のアプリケーションとして実施されることがある)、ユーザは、彼らの治療履歴、彼らの処方箋、および/または履歴上の透析機ステータス情報をグラフィカルに再閲覧することができる。アプリケーションは、データベース・サブシステム346にデータベース・クエリを送信する。アプリケーションは、透析機の安全な動作に干渉することなく、患者が透析されている間、実行されることができる。
【0391】
遠隔アクセス・アプリケーション(単一のアプリケーションまたは複数のアプリケーションとして実施されることがある)は、遠隔システム上の解析および/または表示用の治療および透析機診断データをエクスポートするための機能を提供する。治療ログ・クエリ・アプリケーションは、要求された情報を取り出すために使用されることが可能であり、データは、転送用のXMLなどの透析機の中立的なフォーマットに再フォーマットされることがある。フォーマットされたデータは、メモリ記憶装置、直接ネットワーク接続、または他の外部インタフェース348によってオフボードで転送されることが可能である。ネットワーク接続は、ユーザによって要求されるように、APDシステムによって開始されることが可能である。
【0392】
サービス・インタフェース356は、治療中でないときに、ユーザによって選択されることが可能である。サービス・インタフェース356は、一又は複数の専門のアプリケーションを備えることが可能であり、それらは、試験結果を記録し、例えば、診断センタにアップロードされることができる試験レポートを随意に生成する。メディア・プレーヤ358は、例えば、ユーザに提示される音声および/または動画を再生することが可能である。
【0393】
1つの典型的な実施によれば、上述したデータベースは、SQLite、つまり、自己内蔵型の、サーバが不要な、ゼロ・コンフィギュレーションの、トランザクションのSQLデータベース・エンジンを実施するソフトウェア・ライブラリを使用して実施される。
【0394】
エグゼクティブ・サブシステム332は、2つのエグゼクティブ・モジュールを実施する(ユーザ・インタフェース・コンピュータ302上のユーザ・インタフェース・コンピュータ(UIC)エグゼクティブ352および自動化コンピュータ300上の自動化コンピュータ(AC)エグゼクティブ354)。各エグゼクティブは、オペレーティング・システムがブートされた後で実行されるスタートアップ・スクリプトによって開始され、それが開始する処理のリストを備えている。エグゼクティブがそれらのそれぞれの処理リストを調べるので、各処理画像は、処理が開始される前にファイル・システムのその完全性を保証するために確認される。エグゼクティブは、子処理をそれぞれ監視して、それぞれが期待通りに開始されることを確実にし、例えば、Linux(登録商標)親子処理報知を使用して、子処理が実行されている間、それらを監視し続ける。子処理が終了または故障したときには、エグゼクティブは、それを再び開始するか(UIビューの場合のように)、または、システムをフェール・セーフ・モードに配置して透析機が安全な方法で動作することを確実にする。エグゼクティブ処理は、透析機が電源を切られているときに、オペレーティング・システムを綺麗にシャットダウンすることも担う。
【0395】
エグゼクティブ処理は、互いに通信して、それらが様々なアプリケーション構成要素のスタートアップおよびシャットダウンを調整することを可能にする。ステータス情報は、2つのエグゼクティブ間で定期的に共有され、プロセッサ間の監視機能をサポートする。エグゼクティブ・サブシステム332は、安全線の有効化または無効化を担当する。UICエグゼクティブ352およびACエグゼクティブ354の両方が安全線を有効化したときに、ポンプ、ヒータ、およびバルブを動作させることができる。安全線の有効化の前に、エグゼクティブは、適切な動作を確実にするために各線を独立して試験する。加えて、各エグゼクティブは、他の安全線の状態を監視する。
【0396】
UICエグゼクティブ352およびACエグゼクティブ354は、協働して、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302と自動化コンピュータ300との間の時間を同期させる。時間基準は、スタートアップ時にアクセスされるユーザ・インタフェース・コンピュータ302上のバッテリ駆動の実時間クロックを介して構成される。ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、実時間クロックに対して自動化コンピュータ300のCPUを初期化する。その後、各コンピュータ上のオペレーティング・システムは、自身の内部時間を維持する。エグゼクティブは、協働して、パワー・オン・セルフテストを定期的に行うことによって計時を十分に保証する。自動化コンピュータの時間とユーザ・インタフェース・コンピュータの時間との間の差が、与えられた閾値を超えた場合には、警告を生成することが可能である。
【0397】
図47は、APDシステムの様々なサブシステムと処理との間の情報のフローを示している。先に議論したように、UIモデル360およびサイクラ・コントローラ362は、自動化コンピュータ上で実行される。ユーザ・インタフェースの設計は、UIビュー338によって制御されるスクリーン表示を、サイクラ・コントローラ362によって制御されるスクリーン間フローと、UIモデル360によって制御される表示可能なデータ項目から分離する。これは、スクリーン表示の視覚的な表現が、下層の治療ソフトウェアに影響することなく変更されることを可能にする。治療値およびコンテキストはすべて、UIモデル360に格納され、セーフティクリティカル治療機能からUIビュー338を分離する。
【0398】
UIモデル360は、システムおよび患者の現在の状態について記述する情報を統合し、ユーザ・インタフェースを介して表示されることができる情報を維持する。UIモデル360は、オペレータに現在は見えないかまたは認識可能でない状態を更新することが可能である。ユーザが新しいスクリーンに案内されるときに、UIモデル360は、新しいスクリーンおよびそのコンテンツに関する情報をUIビュー338に提供する。UIモデ
ル360は、インタフェースを露出させて、UIビュー338または或る他の処理が現在のユーザ・インタフェース・スクリーンおよび表示すべきコンテンツのクエリを可能にする。このように、UIモデル360は、遠隔のユーザ・インタフェースおよびオンライン・アシスタンスなどのインタフェースがシステムの現在の動作状態を取得することができるという共通点を提供する。
【0399】
サイクラ・コントローラ362は、オペレータ入力、時間、および治療層状態に基づいてシステムの状態に対する変更を扱う。容認可能な変更は、UIモデル360に反映される。サイクラ・コントローラ362は、治療層命令、治療ステータス、ユーザ要求、および時間イベントを調整する階層状態機械として実施され、UIモデル360の更新を介してビュースクリーン制御を提供する。さらに、サイクラ・コントローラ362は、ユーザ入力を有効にする。ユーザ入力が許容された場合には、ユーザ入力に関する新しい値が、UIモデル360を介してUIビュー338に反映される。治療処理368は、サイクラ・コントローラ362に対するサーバとして作用する。サイクラ・コントローラ362からの治療命令は、治療処理368によって受信される。
【0400】
UIコンピュータ302上で実行されるUIビュー338は、ユーザ・インタフェース・スクリーン表示を制御し、タッチスクリーンからのユーザ入力に応答する。UIビュー338は、ローカル・スクリーン状態の追跡を継続するが、透析機の状態情報を維持しない。透析機状態および表示されるデータ値は、それらがユーザによって変更されている途中でない限り、UIモデル360から供給される。UIビュー338が終了し再開された場合には、それは現在のデータを持った現在の状態のためのベース・スクリーンを表示する。UIビュー338は、スクリーンのどのクラスをUIモデル360から表示すべきかを判断し、それは、UIビューにスクリーン表示を残す。ユーザ・インタフェースのセーフティクリティカル態様はすべて、UIモデル360およびサイクラ・コントローラ362によって扱われる。
【0401】
UIビュー338は、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302上の他のアプリケーション364をロードし実行することが可能である。これらのアプリケーションは、非治療制御タスクを行うことがある。典型的なアプリケーションは、ログ・ビューア、サービス・インタフェース、および遠隔アクセス・アプリケーションを備えている。UIビュー338は、該UIビューによって制御されるウィンドウ内のこれらのアプリケーションを配置し、それは、適切なようにUIビューがステータス、エラー、および警告スクリーンを表示することを可能にする。或るアプリケーションは、積極活動療法中に実行されることがある。例えば、ログ・ビューアは、積極活動療法中に実行されることがあるが、サービス・インタフェースおよび遠隔アクセス・アプリケーションは、一般に実行されない場合がある。UIビュー338に従属するアプリケーションが実行されており、進行中の治療がユーザの注意を必要とするときには、UIビュー338は、アプリケーションを停止し、スクリーンおよび入力の機能の制御を回復することが可能である。停止されたアプリケーションは、UIビュー338によって再開または中断されることができる。
【0402】
図48は、
図46に関して記述された治療サブシステム340の動作を図示している。治療サブシステム340の機能は、3つの処理に分割される(治療制御、治療演算、および透析液管理)。これには、機能分割、試験のし易さ、および更新のし易さという効果がある。
【0403】
治療制御モジュール370は、そのタスクを達成すべく、治療演算モジュール372、透析液管理モジュール374、および透析機制御サブシステム342(
図46)のサービスを使用する。治療制御モジュール370の担当は、ヒータバッグの流体体積を追跡すること、患者の流体体積を追跡すること、患者導出体積および超ろ過を追跡すること、サイ
クル体積を追跡および記録すること、治療体積を追跡および記録すること、透析治療(導出・導入・滞留)の実行を指示すること、治療セットアップ動作を制御することを含む。治療制御モジュール370は、治療演算モジュール370によって指図されるような治療の各段階を行う。
【0404】
治療演算モジュール370は、腹膜透析治療からなる導出・導入・滞留サイクルを追跡および再演算する。患者の処方箋を使用して、治療演算モジュール372は、サイクル数、滞留時間、および必要な透析液の量(合計治療体積)を演算する。治療が進むと、これらの値の部分集合が、実際の経過時間を考慮して再演算される。治療演算モジュール372は、治療シーケンスを追跡し、要求されたときに、治療段階およびパラメータを治療制御モジュール370に渡す。
【0405】
透析液管理モジュール374は、透析液供給バッグの配置をマッピングし、各供給バッグの容積を追跡し、透析液データベース中のレシピに基づいて透析液の混合を命令し、混合または非混合の透析液の要求された体積のヒータバッグへの移送を命令し、透析液レシピおよび利用可能なバッグ容積を使用して利用可能な混合透析液の体積を追跡する。
【0406】
図49は、治療の初期の補充および透析部分中の、上述した治療モジュール処理の典型的な相互作用を図示するシーケンス図を示している。典型的な初期の補充処理376中に、治療制御モジュール370は、治療演算モジュール372から最初の導入用の透析液IDおよび体積をフェッチする。透析液IDは、患者ラインおよび最初の患者導入の準備に備えて、ヒータバッグを透析液で充填する要求と共に、透析液管理モジュール374に渡される。透析液管理モジュール374は、ヒータバッグへの透析液の圧送を開始するために要求を透析機制御サブシステム342に渡す。
【0407】
典型的な透析処理378中に、治療制御モジュール370は、一度に1サイクル(初期の導出、導入、滞留・補充、および導出)を実行し、治療演算モジュール372の制御下でこれらのサイクルを順番に行う。治療中に、治療演算モジュール372は、実際のサイクル・タイミングで更新され、その結果、必要に応じて治療の残りの部分を再演算することができる。
【0408】
この例では、治療演算モジュール372は「初期導出」として段階を指定し、治療制御モジュールは、その要求を透析機制御サブシステム342にする。治療演算モジュール372によって指定される次の段階は「導入」である。その指示は、透析機制御サブシステム342に送られる。治療演算モジュール372は、治療制御モジュール370によって再び呼び出され、それは、流体が「滞留」段階中にヒータバッグに補充されることを要求する。透析液管理モジュール374は、治療制御モジュール370によって呼び出され、それによって、透析機制御サブシステム342を呼び出すことによってヒータバッグ中の流体を補充する。次の段階を得るべく治療演算モジュール372を呼び出す治療制御モジュール370によって、処理が継続する。これは、段階がそれ以上なくなるまで繰り返され、そして治療が完了する。
[ポンプ・モニタ/Mathリピータ]
ポンプ・モニタ/Mathリピータ処理は、ソフトウェア処理、または安全エグゼクティブ354とは別の自動化コンピュータ300で実行される機能である。ポンプ・モニタ/Mathリピータ処理は独立して実行される2つの別々のスレッドまたはサブ機能で実行される。本明細書ではMRスレッドと称されるmathリピータ・スレッドは、FMS演算の結果を確認する。PMスレッドと称されるポンプ・モニタ・スレッドは、透析機処理342からのルーチン状態メッセージで提供された情報からの関連終点に亘っての正味の流体および空気の流れを監視する。関連終点は、限定されるものではないが、5つの潜在的バッグ・スパイク、ヒータバッグ、患者ポートおよび導出ポートを備えることが可能
である。PMスレッドは、IOサーバ処理からの情報を介してヒータ・パン温度も監視するであろう。流体の流れ、空気の流れまたは温度に対する予め規定された限界を超えた場合、PMスレッドは警鐘を安全エグゼクティブ345に発信する。
【0409】
MRスレッドは、高速圧力データを許容し、前述したFMS演算を反復して、置き換えられた流体体積を再演算する。MRスレッドは、その再演算された流体体積を透析機処理342によって演算された体積と比較し、メッセージを安全エグゼクティブに送る。別の例では、MRスレッドは、2つの流体体積値が一致しない場合、エラー状態を宣言する。
【0410】
PMスレッドは、サイクラ14の機能に対する安全チェックとして圧送処理の数個の態様を監視する。PMスレッドは、ハードウェア・インタフェース310が、透析機サブシステム342による命令されたポンプ動作に対応しないバルブ開を通知する場合に、無効なポンプ動作エラー状態を宣言するであろう。無効なバルブ状態の例は、何れかのポート・バルブ186、184(
図6)が開いており、他方、ポンプがアイドル・モードにある場合であろう。カセット中のバルブの状態は、ハードウェア・インタフェース310によって通電される対応する空気圧式バルブ2710の状態にマッピングされる。無効なバルブ状態の別の例は、流体の吸込みの特定のソースに対応しない開いたポート・バルブ184、186であろう。
【0411】
ヒータ・ボタン温度センサ506が与えられた温度よりも低いことを報告する間に過剰な流体が患者に圧送された場合、PMスレッドはエラー状態を宣言するであろう。好ましい実施形態では、ボタン温度が32℃よりも低い間に、50mlを超える流体が患者に圧送されれば、PMスレッドはエラー状態を宣言するであろう。
【0412】
PMスレッドは、患者に圧送された流体の量に対して数値アキュムレータを維持するであろう。患者に圧送された流体の全体積が特定の量を超える場合、PMスレッドはエラーを宣言するであろう。特定の量は規定情報において定義されることが可能であり、1室体積と等しいさらなる体積または略23mlを含むことが可能である。
【0413】
PMスレッドは、それぞれのバッグから採取された空気についてのFMS方法によって圧送室で測定された空気の量について数値アキュムレータを維持するであろう。何れかのバッグからの空気の全量がそのバッグに対する空気の最大許容体積を超える場合、PMスレッドはエラーを宣言するであろう。好ましい実施形態では、ヒータバッグに対する最大許容空気体積は350mlであって、供給バッグに対する最大許容空気体積は200mlである。バッグからの大きな空気体積は、それが大気への漏れを含むことがあるのを示す。ヒータバッグに対する最大許容空気体積は、流体が加熱される時のガス抜けを説明するにはより大きいことがある。
[警告/警報機能]
APDシステムの条件またはイベントは、記録されたおよび/またはユーザに表示される警告および/または警報をトリガすることがある。これらの警告および警報は、ユーザ・インタフェース・サブシステムに存在するユーザ・インタフェース構成体であり、システムの任意の部分に生じる条件によってトリガされることがある。これらの条件は3つのカテゴリにグループ化されることがある((1)システム・エラー条件、(2)治療条件、および(3)システム動作条件)。
【0414】
「システム・エラー条件」は、ソフトウェア、メモリ、またはAPDシステムのプロセッサの他の態様において検出されるエラーに関する。これらのエラーは、システムの信頼性に疑問を呈し、「復帰不可能」と考えられることがある。システム・エラー条件は、表示されるかまたはユーザに知らせる警報を発する。警報は、記録されることも可能である。システムの完全性をシステム・エラー条件の事例では保証することができないので、シ
ステムは、フェール・セーフ・モードに入り、ここで記述される安全線を無効化することが可能である。
【0415】
図46に関して記述される各サブシステムは、自身のシステム・エラーのセットを検出することを担当する。サブシステム間のシステム・エラーは、ユーザ・インタフェース・コンピュータ・エグゼクティブ352および自動化コンピュータ・エグゼクティブ354によって監視される。システム・エラーが、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302上で実行される処理に起因するときには、システム・エラーを報告している処理を終了する。UIスクリーン・ビュー・サブシステム338を終了する場合には、ユーザ・インタフェース・コンピュータ・エグゼクティブ352は、例えば、最大3回までそれを再起動することを試みる。UIスクリーン・ビュー338の再起動に失敗し、治療が進行中である場合には、ユーザ・インタフェース・コンピュータ・エグゼクティブ352は、フェール・セーフ・モードに透析機を移行させる。
【0416】
システム・エラーが自動化コンピュータ300上で実行される処理に起因する場合には、その処理を終了する。自動化コンピュータ・エグゼクティブ354は、処理が終了したことを検出し、治療が進行中である場合には安全な状態に移行させる。
【0417】
システム・エラーが報告されたときには、例えば、視覚的および/または音声のフィードバックでユーザに報知する試みがなされると共に、そのエラーをデータベースに記録する。システム・エラーの取り扱いは、エグゼクティブ・サブシステム332でカプセル化され、復帰不可能イベントの一様な取り扱いを確実にする。UICエグゼクティブ352およびACエグゼクティブ354のエグゼクティブ処理は、互いに監視し合い、その結果、一方のエグゼクティブ処理が治療中に故障した場合に、他方のエグゼクティブが透析機を安全な状態に移行させる。
【0418】
「治療条件」は、許容可能な境界を超えた治療に関連づけられたステータスまたは変数によってもたらされる。例えば、治療条件は、境界外センサ示度によってもたらされることが可能である。これらの条件は、警告または警報に関連づけられ、そして、記録されることが可能である。警報は、重大なイベントであり、一般に即時の行為を必要とする。警報は、条件の重大度に基づいて、例えば、低、中、または高として優先順位づけされることが可能である。警告は、警報ほど重大ではなく、一般には、治療の喪失または不快以外の、任意に関連づけられた危険を有していない。警告は、3つのカテゴリ(メッセージ警告、エスカレート警告、およびユーザ警告)のうちの1つに該当することがある。
【0419】
警報または警告条件をもたらすことがある治療条件の検出に対する担当は、UIモデルと治療サブシステムとの間で共有される。UIモデル・サブシステム360(
図47)は、治療前および治療後の警報および警告条件の検出を担当する。治療サブシステム340(
図46)は、治療中の警報および警告条件を検出を担当する。
【0420】
治療条件に関連づけられた警告または警報の扱いに対する担当は、UIモデルと治療サブシステムとの間でも共有される。治療前および治療後に、UIモデル・サブシステム360は、警報または警告条件の扱いを担当する。治療セッション中に、治療サブシステム340は、警報または警告条件を扱うこと、および、警報または警告条件が存在することをUIモデル・サブシステムに報知することを担当する。UIモデル・サブシステム360は、エスカレート警告を担い、また、警報または警告条件が検出されたときに、ユーザに視覚的および/または音声のフィードバックを提供するように、UIビュー・サブシステム338と共に調整する。
【0421】
「システム動作条件」は、それらに関連づけられた警告または警報を有していない。こ
れらの条件は、システム動作の記録を提供すべく単に記録される。聴覚的または視覚的なフィードバックを提供する必要はない。
【0422】
上述したシステム・エラー条件、治療条件、またはシステム動作条件に呼応して講じられることがある処置は、その条件を検出したサブシステム(または層)によって実施され、それは、そのステータスをより高位のサブシステムに送る。この条件を検出したサブシステムは、条件を記録し、条件に関連づけられた任意の安全的考慮を処理することが可能である。これらの安全的考慮は、次のもののうちの何れか1つまたはそれらの組合せを含むことがある(治療を中断して閉塞部に係合すること、必要なときに状態およびタイマをクリアすること、ヒータを無効化すること、治療全体を終了すること、閉塞部を閉じるべく安全線を非作動にし、ヒータを止め、バルブから動力を除去すること、および、システムがサービスに戻ることを要求するパワー・サイクルの後であっても、サイクラの治療実行を防止すること)。UIサブシステム334は、自動的にクリアされることができる条件(つまり、非ラッチ条件)と、ラッチされ、単にユーザ相互作用によってクリアされることができるユーザ復帰可能条件とを担当することが可能である。
【0423】
各条件は、ソフトウェアが条件の重大度に応じて作用することを可能にする或る情報を含むように規定されることが可能である。この情報は、数値の識別子を含むことがあり、それは、優先順位、エラーの記述的な名称(つまり、条件名)、条件を検出したサブシステム、どのステータスまたはエラーがその条件をトリガするかの記述、および、その条件が上述した一又は複数の行為を実施するか否かのためのフラグを規定するルックアップ・テーブルと組み合わせて使用されることが可能である。
【0424】
条件は、優先順位でランク付けされることが可能であり、その結果、複数の条件が生じたときには、より高い優先順位条件を最初に扱うことが可能である。この優先順位ランキングは、条件が治療の管理を止めるか否かに基づくことが可能である。治療を止める条件が生じたときには、この条件は、ステータスを次のより高位のサブシステムに中継する際に条件を優位にする。上で議論したように、条件を検出するサブシステムは、条件を扱い、上記のサブシステムにステータス情報を送る。受信したステータス情報に基づいて、上位サブシステムは、異なる行為およびそれに関連づけられた異なる警告/警報を有することがある異なる条件をトリガすることが可能である。各サブシステムは、新しい条件に関連づけられた任意の付加的な行為を実施し、上記のサブシステムにステータス情報を渡す。1つの典型的な実施によれば、UIサブシステムは、所定時間で1つの警告/警報だけを表示する。この場合、UIモデルは、それらの優先順位によってアクティブなイベントをすべてソートし、最優先イベントに関連づけられた警告/警報を表示する。
【0425】
優先順位は、重大度、潜在的な被害、およびその被害の兆候に基づいた警報に割り当てられることが可能である。下の表1は、どのように優先順位がこの方法で割り当てられることがあるかの1例を示している。
【0427】
表1のコンテキストでは、潜在的な被害の兆候は、いつ怪我が生じるかを指すものであるが、いつそれが明示されるかを参照するものではない。「即時」として指定された兆候を有する潜在的な被害は、手動の修正処置では通常十分でない時間内に発展する可能性がある被害を表示する。「迅速」として指定された兆候を有する潜在的な被害は、手動の修正処置に通常十分な時間内に発展する可能性がある被害を表示する。「遅延」として指定された兆候を有する潜在的な被害は、「迅速」の下で与えられるよりも長い無指定の時間内に発展する可能性がある被害を表示する。
【0428】
図F〜
図Kは、タッチスクリーン・ユーザ・インタフェースに表示されることがある警告および警報に関する典型的なスクリーン・ビューである。
図50は、警報の第1スクリーンを示しており、それは、ダイアグラム380と、ユーザに彼らの移送セットを閉じるように指示するテキスト382とを備えている。このスクリーンは、視覚的な警告384を備えており、音声警告にも関連づけられている。音声警告は、タッチスクリーンの「音声オフ」オプション386を選択することによってオフにされることが可能である。ユーザが移送セットを閉じたときに、ユーザは、タッチスクリーン上の「確認」オプション388を選択する。
図51は、ユーザに彼らの移送セットを閉じるように指示する同様の警報スクリーンを示している。この場合には、導出が休止されたことの表示390と、「端部処理」を選択する指示とが提供されている392。
【0429】
先に議論したように、警告は、一般には、治療の喪失または不快以外の危険性には関連づけられていない。このように、警告は、治療を中断させたりさせなかったりすることがある。警告は、イベントがクリアされた場合に警告を自動的にクリアするような「自動復帰可能」、または、ユーザ・インタフェースとのユーザ相互作用が警告をクリアするために必要であるような「ユーザ復帰可能」の何れかであることができる。或る範囲内で変動することが可能なボリュームを有することがある可聴警告プロンプトは、ユーザの注意を引くために使用されることが可能である。加えて、情報または指示をユーザに対して表示することがある。その結果、情報または指示は、ユーザによって見られることが可能であり、ユーザ・インタフェースの自動調光特徴は、警告中に無効化されることがある。
【0430】
ユーザの混乱の程度を減少させるために、警告は、どれくらい警告が重要か、および、どれくらい迅速にユーザが応答する必要があるかに基づいて様々な種類にカテゴリ分けされることが可能である。3つの典型的な種類の警告は、「メッセージ警告」、「エスカレート警告」、および「ユーザ警告」である。これらの警告は、どのように情報がユーザに視覚的に提示されるか、および、どのように可聴プロンプトが使用されるかに基づいて異なる特性を有している。
【0431】
「メッセージ警告」は、ステータス・スクリーンの一番上に現われることがあり、ユー
ザ相互作用が必要でないときには情報目的に使用される。警告をクリアするために何もする必要がないので、可聴プロンプトは、一般には、患者の邪魔をしたり、場合によっては眠っている患者を起こしたりすることを回避する。しかし、可聴警告は、随意に提示されることがある。
図52は、典型的なメッセージ警告を示している。特に、
図52は、透析液が所望の温度または範囲よりも下であるときにユーザに報知するために使用されることがある低温メッセージ警告394を示している。この場合、ユーザは、如何なる処置も講ずる必要はないが、透析液が熱されている間、治療が遅れると報知される。患者がさらなる情報を望む場合には、「ビュー」オプション396がタッチスクリーン上で選択されることがある。これは、
図53に示されるように、スクリーン上に現われる警告に関する付加的な情報398をもたらす。メッセージ警告は、ユーザが修正しようとしている低流量イベントがあるときに使用されることが可能である。この場合、メッセージ警告は、ユーザがその問題を解決したか否かについてユーザにフィードバックを提供すべく低流量イベントがクリアされるまで、表示されることが可能である。
【0432】
「エスカレート警告」は、耳障りでない方法で処置を講ずるようにユーザに促すように意図されている。エスカレート警告中に、視覚的なプロンプトがタッチスクリーン上に表示されることが可能であり、可聴プロンプトが提示されることも可能である(例えば、一度)。与えられた時間の後、警告をもたらしたイベントがクリアされない場合には、より強調した可聴プロンプトが提示されることも可能である。追加の時間の後で、警告をもたらすイベントがクリアされなかった場合には、警告は、「ユーザ警告」にエスカレートされる。ユーザ警告の1つの典型的な実施によれば、視覚的なプロンプトは、警告がクリアされ、無音であることができる可聴プロンプトが提示されるまで表示される。UIサブシステムは、エスカレート警告からユーザ警告への移行を扱わない。むしろ、元々のイベントをトリガさせたサブシステムは、ユーザ警告に関連づけられた新しいイベントをトリガする。
図54は、エスカレート警告に関する情報を表示するスクリーン・ビューを示している。この典型的な警告は、スクリーン上の警告メッセージ400と、導出ラインの折れ曲がりおよびクランプの閉鎖、ならびに可聴プロンプトを確認するようにユーザに指示するプロンプト402とを含む。可聴プロンプトは、それがユーザによって消音されるまで継続することが可能である。
図55は、可聴プロンプトを消音するために選択されることがある「音声オフ」オプション404を備えたスクリーン・ビューを示している。この警告は、直接的に、または、エスカレート警告スキームの一部として使用されることができる。
【0433】
各々の警告/警報は、次のものによって指定される:警告/警報用の固有識別子である警告/警報コード、警告/警報の記述的な名称である警告/警報名、警告の種類または警報のレベルを含む警告/警報タイプ、可聴プロンプトが警告/警報に関連づけられているか否かの表示、警告および関連するイベントがユーザによって回避(または無視)されることができるか否かの表示、および警告/警報をトリガするイベント(複数可)のイベント・コード。
【0434】
警報、エスカレート警告、およびユーザ警告中に、イベント・コード(上述したように、警報または警報コードとは異なる場合がある)は、必要な場合にユーザがサービスマンに対してコードを読むことができるようにスクリーン上に表示されることが可能である。これに代えてまたはこれに加えて、音声ガイダンス・システムは、遠隔のコールセンタに接続されている場合、システム構成、状態、およびエラー・コードについての関連情報を発声することができるように使用されることが可能である。システムは、ネットワーク、電話接続、または或る他の手段を介して遠隔のコールセンタに接続されることが可能である。
【0435】
治療サブシステムによって検出される条件の1例は、
図56に関連して下に述べられて
いる。この条件は、APDシステムが水平な面に配置されていないときに生じ、それは空気管理に対して重要である。特に、この条件は、APDシステムが水平面に対して35°などの所定閾値を超えて傾けられたことを傾斜センサが検出したときに生じる。下に述べられるように、復帰可能なユーザ警告は、傾斜センサが所定閾値よりも大きな絶対値を持った角度を検出した場合に、治療サブシステムによって生成されることが可能である。迷惑な警報を回避すべく、ユーザは、治療が始まる前に、APDシステムを水平にするように指示されることがある。傾斜閾値は、この治療前時間中には低いことがある(例えば、35°)。ユーザは、その問題が修正されたか否かに関するフィードバックを与えられることも可能である。
【0436】
治療中に傾斜角度が閾値を超えたことを傾斜センサが検出したときには、透析機サブシステム342は、あたかもそれがポンプ室内の空気を検出したかのように、同様の方法でポンプを停止することによって応答する。治療サブシステム340は、ステータスを尋ね、透析機層342が傾斜によって圧送を休止したと判断する。さらに、それは透析機の角度に関するステータス情報を受信する。この時点では、治療サブシステム340は、傾斜状態を生成し、治療を休止し、圧送を休止すべく透析機サブシステム342に命令を送る。この命令は、流体測定システム(FMS)の測定をし、患者バルブを閉じるなどの、クリーンアップをトリガする。さらに、治療サブシステム340は、タイマをスタートさせ、UIモデル360までの自動復帰可能傾斜状態を送り、その条件は、UIビュー338に送られる。UIビュー338は、エスカレート警告に対する条件をマッピングする。治療サブシステム340は、傾斜センサ測定値を監視し続け、それが閾値以下に落ちた場合に、条件をクリアして治療を再開させる。タイマが終了する前に条件がクリアされない場合には、治療サブシステム340は、自動復帰可能傾斜状態に取って代わるユーザ復帰可能「傾斜タイムアウト」条件をトリガする。それは、この条件をUIモデル360に送り、その条件は、UIビュー338に送られる。UIビュー338は、ユーザ警告に対する条件をマッピングする。この条件は、治療再開命令がUIサブシステムから受信される(例えば、ユーザが復旧ボタンを押す)まで、クリアされることができない。傾斜センサ示度が閾値レベル以下である場合には、治療が再開される。それが閾値以下でない場合には、治療層は、自動復帰可能傾斜状態をトリガし、タイマをスタートさせる。
[優先的音響信号]
サイクラは、音響信号および音声ガイダンスをユーザに提供して、限定されるものではないが、数選択、音効果(ボタン選択、動作選択)、透析機状態、動作方向、警告、および警鐘を含む或る範囲の情報を伝達することが可能である。サイクラ・コントローラ16は、制御システム16において、コンピュータ300、302の一方または両方についてのメモリに格納された格納音ファイルからの音響信号および発声をスピーカに了知させることができる。それに代えて、発声は特殊なボイス・チップによって格納および生成されることが可能である。
【0437】
幾つかの例では、サイクラは、同時にまたは順次に非常に短い間に多数の音響信号を了知させる必要があることがある。短い時間内の数個の信号の了知は、ユーザを圧倒し、その結果、臨界的安全性情報の迷惑または喪失がもたらされることがある。サイクラ・コントローラ16はそれぞれの音響信号に優先性を割り当て、より低い優先性の信号を抑制して、より高い優先性の音響信号の明瞭な伝達を可能とすることが可能である。1例では、音響信号は最も高い優先性の警鐘信号から数のシーケンスの最も低い優先性の了知まで優先付けされる:
1.警鐘
2.警告
3.音の効果
4.音声ガイダンス
5.数のシーケンスについての了知。
【0438】
警鐘および警告は前述される。音の効果は、ボタンまたはチョイスが選択されたことを示す音を確認することが可能である。音の効果は、特別な動作がサイクラによって取られつつあることを告知または確認することも可能である。音声ガイダンスは、特別な処理を実行し、援助にアクセスし、コールセンタおよび他の方向付け指示にコンタクトするための音声指示を備えることが可能である。数のシーケンスについての了知は、ユーザまたはコールセンタへの読み戻し、ユーザが丁度キー入力した数を備えることが可能であるか、あるいは了知は要求された入力に対するユーザ許容値を読み出すことが可能である。
[可聴睡眠補助]
サイクラ14は、夜に癒し音を演奏して、睡眠を補助するオプションを備えることが可能である。雨、海洋波等のような音の演奏は音療法と称される。睡眠のための音療法は、幾人かのユーザに、夜間のノイズに対するより高い許容性、および睡眠妨害を最小限とするよりリズミカルな癒し音での夜間のノイズのマスクまたは置き換えを供給することができる。音療法は、聴覚過敏および耳鳴りなどの聴覚疾患を患っている個人を助けることが可能である。ユーザ・インタフェース324は、ユーザに、音の種類、体積レベルおよび持続時間を選択し、その結果、音療法が睡眠の初期時間中の前に演じることができるメニューを提供することが可能である。音ファイルはコンピュータ300、302のメモリに格納されることが可能であり、サイクラ14中のスピーカによって演じられることが可能である。別の例では、サイクラは外部スピーカを駆動するための出力ジャックを備えることが可能である。別の例では、音ファイルおよび/またはスピーカ駆動体エレクトロニクスは自動化コンピュータ300またはユーザ・インタフェース・コンピュータ302何れかから分離されていることが可能である。音ファイルは限定されるものではないが、雨の音、雷を伴った嵐、海洋波、雷、森の音、コオロギ、白色雑音、および桃色雑音(変動する振幅およびより大きな低温)を備えることが可能である。
[電池操作]
サイクラは、バックアップ電源として用いるための再充電可能なリチウムイオン電池を含むことが可能である。最小限、この電池は、ユーザに警告し、かつ処置の現在の状態を節約せずに、サイクラがオフとされないことを確実とすることを補助する。電力管理システムは、電池に残っている電荷の量に左右される電池通電時に、サイクラによって実行されることが可能である。電池が十分に充電された時、サイクラは節電または短い停電が治療の完了に干渉することを妨げることが可能である。サイクラ制御回路は電池の電荷の状態を測定することが可能であり、電池電荷レベルを動作可能な状態と相関させることが可能である。この情報は試験を通じて経験的に得られることが可能であり、電池電荷レベルと様々なサブシステムを動作させる能力との間の相関はメモリに格納されることが可能である。以下の機能は電池電荷レベルと関連づけられることが可能である:
レベル4:治療の1サイクルを実行するのに十分な電力。例えば、電池の電荷レベルが略1100ミリアンペア−時間と等しいか、またはそれよりも大きい場合に実行される。
レベル3:ユーザ導出を実行するのに十分な電力。例えば、電池の電荷レベルが略500ミリアンペア−時間と等しいか、またはそれよりも大きい場合に実行される。
レベル2:治療を終了し、警告を表示し、治療後明細を通じてユーザを案内するのに十分な電力。例えば、電池の電荷レベルが略300ミリアンペア−時間と等しいか、またはそれよりも大きい場合に実行される。
レベル1:治療を終了し、警告を表示するのに十分な電力。例えば、電池の電荷レベルが略200ミリアンペア−時間と等しいか、またはそれよりも大きい場合に実行される。
レベル0:動作するのに十分でない電力。
【0439】
電池に十分な電荷がある場合(レベル4)、サイクラは、電流サイクルが終了するまで治療を継続するであろう。これは、ヒータバッグを補充すること、または透析液を加熱することを含まないことがある。従って、既に導入段階となっていれば、サイクラは、ヒータバッグ中の透析液が適切な温度範囲にあり、かつヒータバッグ中に十分な透析液があれ
ば、治療を継続することが可能である。電池が20分の導出を行うのに十分な能力を有するに過ぎない場合(レベル3)、サイクラはユーザに警告し、ユーザに、導出するか、または導出せずに処理を終了するオプションを与える。電池がユーザに警告するのに十分な電力を有するに過ぎない場合(レベル2)、それはユーザに、導出するオプションを与え、ユーザは治療後明細を通じて案内されるであろう。明細を通じてユーザを案内するのに十分な電力が無い場合(レベル1)、ユーザは接続解除するように促され、次に、サイクラは電源を切る。この電池レベルでは、サイクラはドアを開放するのに十分な電力を有さない場合があり、従って、ユーザは治療を分析できないことがある。起動中に、サイクラは電池の状態にアクセスすることが可能であり、電池が故障を有する場合、または電池が十分な電荷を有さなくて、少なくとも、主電源が失われている場合に患者に警告する場合、ユーザに警告する。治療後明細を通じてユーザに提供し、警告および案内する十分な能力を有する電池なしに、ユーザに処置を開始させないようにサイクラはプログラムされることが可能である(電池レベル2)。
【0440】
電池電荷レベルおよび利用可能な治療チョイスまたは透析機動作の別の例は4つの電池電荷レベルおよび利用可能な治療チョイスまたは透析機動作を設定する:
レベル4:
導入処理が開始されなかった場合、AC電力が回復するまで動作を停止する。停止は30分に限られる。
【0441】
導入処理が開始された場合、導入、滞留および導出処理を含むサイクルを完了する。
電池操作中に加熱がないので、ヒータバッグは再度導入されないであろう。
治療を終了し、サイクラ14からの透析液供給セット12aの取り除きを含む治療後明細を通じてユーザを案内する。
レベル3:
導入または導出処理にある場合、AC電力が回復するまで動作を停止する。停止は30分に限られる。
【0442】
導出処理が開始されている場合、サイクルを完了する。
電池操作中に加熱が無いので、ヒータバッグは再度導入されないであろう。
治療を終了し、サイクラ14からの透析液供給セット12aの取り除きを含む治療後明細を通じてユーザを案内する。
レベル2:
治療を終了し、サイクラ14からの透析液供給セット12aの取り除きを含む治療後明細を通じてユーザを案内する。
レベル1:
治療を終了する。
レベル0:
動作するのに十分でない電力。
【0443】
警告はレベル1〜4においてユーザまたは患者に表示されるであろう。最終のスクリーン・タッチから与えられた時間の後に表示スクリーン324を薄暗くすることによって、制御システム16は電池電力に対してサイクラ動作を延長することが可能である。別の例では、最も最近のメッセージ、警告または警鐘の出現から与えられた時間の後に、表示スクリーン324は薄暗くすることが可能である。1例では、より最近のスクリーン・タッチまたは最後のスクリーン・タッチから2分後に、表示スクリーン324は薄暗くなるであろう。表示スクリーン324は、電池電力に対する操作を示すメッセージまたはシンボルを備えることが可能である。
【0444】
電池を空気圧バルブに接続する電気回路は、供給された可変電池電圧を一致する電圧ま
で上げる、調節された電圧ブースト・コンバータを備えることが可能である。供給された電池電圧は、電池が放電されるにつれて降下することがある。1例では、完全充電時のLi−イオン電池は12.3ボルトを供給することが可能である。電池が十分に放電された時、電池が9ボルトと低くなるまで枯渇するにつれ、供給された電圧は降下することがある。空気圧バルブは、信頼性良く十分に開くために最小電圧を必要とすることがある。1例では、バルブを信頼性良く開けるための最小電圧は12ボルトであることが可能である。
【0445】
調節された電圧ブースト・コンバータは、供給バッタとバルブとの間に置かれて、十分な電圧を確保して、電池が放電するにつれてバルブを信頼性良く開けることが可能である。調節された電圧ブースト・コンバータは、可変電池電圧入力よりも高い値において調節された電圧を出力するであろう。1例では、調節された電圧ブースト・コンバータは、テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)によって製造されたTPS61175などの集積チップであることが可能である。調節された電圧降圧形/ブースト・コンバータは、電池とバルブとの間で用いられることも可能である。降圧形/ブースト・コンバータは、入力電圧より高い、それと等しい、またはそれよりも低い、供給電圧から調節された電圧出力を供給することが可能である。
【0446】
一実施形態では、バルブ駆動体のPWMデューティ・サイクルは、測定された電池電圧に従って変化することが可能である。バルブはピック・アンド・ホールド様式で動作されることが可能であり、初期のより高い電圧が加えられて、バルブを開け、次に、より低い電圧が加えられて、所望の状態にバルブを保持する。保持機能に対するPWMデューティ・サイクルは、測定された電池電圧に逆比例したスケールとされて、首尾一貫した平均電圧または電流をバルブに提供することが可能である。PWMデューティ・サイクルはより高い電圧の開動作または選択動作に対して測定された電池電圧に逆比例したスケールとされることが可能である。
[スクリーン表示]
先に議論したように、UIビュー・サブシステム338(
図47)は、ユーザへのインタフェースの表示を担当する。UIビュー・サブシステムは、自動化コンピュータ上で実行されるUIモデル・サブシステム360(
図47)のクライアントであり、UIモデル・サブシステム360と接続する。例えば、UIビュー・サブシステムは、どのスクリーンがユーザに所定時間に表示されるべきかを判断すべくUIモデル・サブシステムと通信する。UIビューは、スクリーン・ビュー用のテンプレートを備えることが可能であり、表示言語、スキン、音声言語、および文化的な配慮がなされたアニメーションなど場所特有の設定を扱うことが可能である。
【0447】
UIビュー・サブシステムに生じる基本的な種類のイベントには3つある。これらは、個々のスクリーンによって扱われるローカル・スクリーン・イベント、スクリーン・イベントがUIモデル・サブシステムにまで伝播されなければならないモデル・イベント、およびタイマ上に生じ、ステータスについてUIモデル・サブシステムに尋ねる問合せ・イベントである。ローカル・スクリーン・イベントは、単にUIビュー・レベルに影響する。これらのイベントは、ローカル・スクリーン移行であり(例えば、単一のモデル状態に対する複数のスクリーンの場合)、設定を見るために更新し(例えば、地域および言語オプション)、与えられたスクリーンからメディア・クリップの再生を要求する(例えば、指示アニメーションまたは音声プロンプト)。モデル・イベントは、どのようにイベントを扱うかを判断すべくUIビュー・サブシステムがUIモデル・サブシステムと協議しなければならないときに生じる。このカテゴリに該当する例は、治療パラメータの確認または「治療開始」ボタンを押すことである。これらのイベントは、UIビュー・サブシステムによって開始されるが、UIモデル・サブシステム中で扱われる。UIモデル・サブシステムは、このイベントを処理し、UIビュー・サブシステムに結果を返す。この結果は
、UIビュー・サブシステムの内部状態を決定する。問合せ・イベントは、タイマが時間信号を生成し、UIモデル・サブシステムが問い合わせられるときに生じる。問合せ・イベントの場合、UIビュー・サブシステムの現在の状態は、評価用にUIモデル・サブシステムに送られる。UIモデル・サブシステムは、状態情報を評価し、UIビュー・サブシステムの所望の状態で応答する。これは、次のものを構成することが可能である:(1)状態変化(例えば、UIモデル・サブシステムおよびUIビュー・サブシステムの主な状態が異なる場合)、(2)スクリーン更新(例えば、UIモデル・サブシステムからの値がスクリーン上に表示された値を変更する場合)、または、(3)状態変化なし(例えば、UIモデル・サブシステムおよびUIビュー・サブシステムの状態が同一である場合)。
図57は、上述した機能を行うUIビュー・サブシステム338の典型的なモジュールを示している。
【0448】
図57に示されるように、UIモデル・クライアント・モジュール406は、UIモデルにイベントを通信するために使用される。このモジュール406は、現在のステータス用のUIモデルを問い合わせるためにも使用される。応答ステータス・メッセージ内では、UIモデル・サブシステムは、自動化コンピュータおよびユーザ・インタフェース・コンピュータのクロックを同期するために使用される時間を埋め込むことが可能である。
【0449】
グローバル・スロット・モジュール408は、与えられたイベント(信号)が生じたときに報知されるように複数のコールバック・ルーチン(スロット)が予約することができる機構を提供する。これは、スロットを多数の信号に結び付けることができるので、「多対多」関係であり、同様に、信号はその作動の際に呼び出される多数のスロットに結び付けられることができる。グローバル・スロット・モジュール408は、UIモデル・問合せまたはスクリーンの外側で生じるボタンを押すこと(例えば、音声プロンプト・ボタン)用のアプリケーション・レベルのタイマなどの非スクリーン特有のスロットを扱う。
【0450】
スクリーン・リスト・クラス410は、すべてのスクリーンのリストをテンプレートおよびデータ・テーブルの形態で含んでいる。スクリーンは、テンプレートと、そのスクリーンに配置すべく使用される関連するデータ・テーブルとからなる。テンプレートは、包括的な方法でそれに配置されたウィジェットを備えたウィンドウであり、ウィジェットに割り当てられたコンテンツはない。データ・テーブルは、ウィジェットを配置すべく使用されるコンテンツと、ウィジェットの状態とを記述するレコードを備えている。ウィジェット状態は、確認されても確認されなくてもよく(チェックボックス型のウィジェットの場合)、見えていても隠されていてもよく、あるいは、有効でも無効でもよい。データ・テーブルは、ボタンを押す結果として生じる行為についても記述することができる。例えば、テンプレート「l」に由来するウィンドウ「A」上のボタンは、UIモデルにイベントを送ることができるが、さらにテンプレート「l」に由来するウィンドウ「B」上の同じボタンは、UIモデルにイベントを伝播させることなくローカル・スクリーン移行を単にもたらすことが可能である。データ・テーブルは、コンテキストに応じたヘルプ・システムへのインデックスを備えることが可能である。
【0451】
スクリーン・リスト・クラス410は、UIモデルから意図したスクリーンにデータを転送し、UIモデルから適切なスクリーンに基づいたデータを選択し、スクリーンを表示させる。スクリーン・リスト・クラス410は、2つの要因に基づいてどのスクリーンを表示させるかを選択する(UIモデルによって報告された状態およびUIビューの内部状態)。幾つかの場合では、UIモデルは、UIビューに、それがカテゴリ内の任意のスクリーンを表示することを許容されたことを単に報知することが可能である。例えば、そのモデルは、透析機がアイドル状態である(例えば、治療が始められていない、または、セットアップ段階がまだ生じていない)と報告することが可能である。この場合には、ユーザがメニューからそのサブメニューに進むときに、UIモデルに尋ねることは必要ではな
い。変更を追跡すべく、UIビューは、現在のスクリーンをローカルに格納する。このスクリーンのローカル・シーケンスは、上述したテーブル・エントリによって扱われる。テーブル・エントリは、それぞれのボタンが押されたときに開始する行為を列挙している。
【0452】
言語マネージャ・クラス412は、翻訳上のインベントリの作成および翻訳の管理を担当する。チェックサムは、翻訳の何れかが破損および/または欠落している場合に、UIビューに警告を発するために、インストールされた言語のリスト上で行われることが可能である。ストリングを翻訳することを望む如何なるクラスも、それを行うように言語マネージャ・クラス412に指示する。翻訳は、ライブラリ(例えば、Qt(登録商標))によって扱われることがある。好ましくは、翻訳は、レンダリングの時間に可及的に接近していることを要求される。この目的のために、殆どのスクリーン・テンプレート部アクセス方法は、レンダリング用のウィジェットにそれを渡す直前に翻訳を要求する。
【0453】
スキンは、ユーザ・インタフェースの「外観および操作感」を決定するスタイル・シートおよび画像を含んでいる。スタイル・シートは、フォント、色、およびどの画像をウィジェットがその様々な状態(正常、押された、無効化されたなど)を表示するために使用するかなどの事項を制御する。如何なる表示されたウィジェットも、スキン変化によってその外観を変更することができる。スキン・マネージャ・モジュール414は、スクリーン・リスト(拡張によって、スクリーンウィジェット、どのスタイル・シートおよびスキン・グラフィックスを表示すべきか)に対する報知を担当する。スキン・マネージャ・モジュール414は、アプリケーションが表示したい任意のアニメーション化したファイルをさらに備えている。スキン変更イベントでは、スキン・マネージャは、現在使用中のセットのディレクトリ内の画像およびスタイル・シートを、アーカイブから取り出された適切なセットで更新する。
【0454】
動画マネージャ・モジュール416は、特定の動画を表示する要求を与えられたときの地域に配慮した動画の再生を担当する。地域変更イベントでは、動画マネージャは、現在使用中のセットのディレクトリ内の動画およびアニメーションをアーカイブからの適切なセットで更新する。動画マネージャは、音声マネージャ・モジュール418における音声を伴う動画も再生する。これらの動画のプレイバックに際して、動画マネージャ・モジュール416は、音声マネージャ・モジュール418に適切な要求をし、元々要求されていた動画クリップに属する録画を再生する。
【0455】
同様に、音声マネージャ・モジュール418は、特定の音声クリップを再生する要求を与えられたときの地域に配慮した音声の再生を担当する。地域変更イベントでは、音声マネージャは、現在使用中のセットのディレクトリ内の音声クリップをアーカイブからの適切なセットで更新する。音声マネージャ・モジュール418は、UIビューによって開始された音声をすべて扱う。これは、音声プロンプト用のアニメーションおよび音声クリップのダビングも含んでいる。
【0456】
データベース・クライアント・モジュール420は、データベース・マネージャ処理と通信するために使用され、それは、UIビュー・サブシステムとデータベース・サーバ366(
図47)との間のインタフェースを扱う。UIビューは、このインタフェースを使用して、設定を格納および抽出し、変数(例えば、重量および血圧)に関する質問に対するユーザ提供の回答によって治療ログを補足する。
【0457】
ヘルプ・マネージャ・モジュール422は、コンテキストに応じたヘルプ・システムを管理するために使用される。ヘルプ・ボタンを提示するスクリーン・リスト中のページはそれぞれ、コンテキストに応じたヘルプ・システムへのインデックスを含むことが可能である。このインデックスは、ヘルプ・マネージャがページに関連づけられたヘルプ画面を
表示することができるように使用される。ヘルプ画面は、テキスト、画像、音声、および動画を含むことが可能である。
【0458】
自動IDマネージャ424は、治療前セットアップ中に呼び出される。このモジュールは、透析液バッグ・コード(例えば、データ行列コード)の画像(例えば、写真画像)のキャプチャを担当する。次に、画像から抽出されたデータは、透析機制御サブシステムに送られ、透析液バッグの内容と共に、コードに含まれた他の情報(例えば、製造元)を特定するために治療サブシステムによって使用される。
【0459】
上述したモジュールを使用して、UIビュー・サブシステム338は、ユーザ・インタフェース(例えば、
図45の表示部324)を介してユーザに表示されるスクリーン・ビューをレンダリングする。
図N〜
図Tは、UIビュー・サブシステムによってレンダリングされることがある典型的なスクリーン・ビューを示している。これらのスクリーン・ビューは、例えば、典型的な入力機構、表示フォーマット、スクリーン移行、アイコン、およびレイアウトを図示している。示されたスクリーンは、一般には治療中または治療前に表示されるが、スクリーン・ビューの態様は、示されたものとは異なる入出力機能に使用されることがある。
【0460】
図58に示されるスクリーンは、指定された治療428を開始するための「治療開始」426と、設定を変更するための「設定」430との間で選択するオプションをユーザに提供する初期画面である。アイコン432および434はそれぞれ、明るさおよび音声レベルを調整するために提供され、情報アイコン436は、ユーザがより情報を求めることを可能にするために提供される。これらのアイコンは、他のスクリーンにも同様の方法で表示されることが可能である。
【0461】
図59は、治療のステータスについての情報を提供するステータス・スクリーンを示している。特に、スクリーンは、行われている治療の種類438、完了予定時刻440、ならびに、現在の導入サイクル数および導入サイクル442の総数を示す。現在の導入サイクルの完了パーセンテージ444および治療全体の完了パーセンテージ446は、両方とも数値的かつグラフィカルに表示される。ユーザは、治療を休止すべく「休止」オプション448を選択することが可能である。
【0462】
図60は、様々な快適さ設定を備えたメニュー・スクリーンを示している。メニューは、明るさ矢印450、音量矢印452、および温度矢印454を備えている。それぞれの対の上向きまたは下向きの矢印の何れかを選択することによって、ユーザは、スクリーンの明るさ、音量、および流体温度を増減させることができる。現在の明るさのパーセンテージ、音量のパーセンテージ、および温度も表示される。設定が望まれた通りであるときに、ユーザは、「OK」ボタン456を選択することが可能である。
【0463】
図61は、ヘルプ・メニューを示しており、それは、例えば、前のスクリーン上でヘルプまたは情報ボタンを押すことによって到達されることが可能である。ヘルプ・メニューは、ユーザを支援するためのテキスト458および/またはイラスト460を備えることが可能である。テキストおよび/またはイラストは「操作状況に合わせた」ものであるか、または、前のスクリーンのコンテキストに基づいたものであることが可能である。ユーザに提供される情報を1つのスクリーン中で都合良く提供することができない場合、例えば、マルチステップ処理の場合には、矢印462は、ユーザが一連のスクリーン間で前後に案内されることを可能にするように提供されることがある。ユーザが所望の情報を得たときに、ユーザは、「戻る」ボタン464を選択することが可能である。追加の支援が必要な場合には、ユーザは、「コール・サービス・センタ」オプション466を選択して、システムにコール・サービス・センタに連絡を取らせることが可能である。
【0464】
図62は、ユーザが1セットのパラメータを設定することを可能にするスクリーンを図示している。例えば、スクリーンは、現在の治療モード468および最小導出体積470を表示し、ユーザがこれらのパラメータを変更するために選択することを可能にする。パラメータは、現在のスクリーン上のラウンドロビン(ダイヤル)式メニューから所望のオプションを選択することなどによって、多数の方法で変更されることが可能である。これに代えて、ユーザが変更するパラメータを選択したときに、新しいスクリーンが
図63に示されるように表示されることが可能である。
図63のスクリーンは、キーパッド474を使用して数値472を入力することによって、ユーザが最小導出体積を調整することを可能にする。一旦入力されると、ユーザは、ボタン476および478を使用して値を確認または取り消すことが可能である。次に、
図62を再び参照して、ユーザは、「戻る」および「次へ」の矢印480および482を使用して、それぞれ異なるセットのパラメータを備えた一連のパラメータ・スクリーンを通じて案内される。
【0465】
一旦所望のパラメータがすべて設定されるかまたは変更されると(例えば、ユーザが一連のパラメータ・スクリーンを通じて案内されたときに)、
図64に示されるようなスクリーンが提示され、ユーザが設定を吟味および確認することを可能にすることが可能である。変更したパラメータは、ユーザの注意を引くために、或る方法で随意に強調されることがある。設定が望まれた通りであるときに、ユーザは、「確認」ボタン486を選択することが可能である。
[自動腹膜透析治療制御]
持続的携行式腹膜透析(「CAPD」)は、伝統的には、手動で行われ、患者またはユーザは透析液をバッグからその人の腹膜腔に移動させ、3〜6時間の間の腹部での流体滞留を有し、次に、流体を収集または導出バッグに移す。これは、典型的には、1日当たり3または4回行われる。自動腹膜透析(「APD」)は、APDが、(例えば、眠っているかまたは夜に)数時間の時間中に一連の導入−滞留−導出サイクルを行う腹膜透析機(「サイクラ」)の助けを借りて達成される点でCAPDとは異なる。APDでは、サイクルの導入段階中に導入された流体と、何れかの限外ろ過流体とは、サイクルの次の導出段階中に完全には導出されないことがある。これはユーザのベッド中での位置の結果である場合があり、例えば、腹膜腔中の凹所での流体の隔離に導き、留置カテーテルが存在する流体のすべてにアクセスするのを妨げる。持続的周期性腹膜透析(「CCPD」)では、サイクラは、導入および滞留段階後に十分な導出を行って、それぞれの連続サイクルにて保持された流体(残存腹腔内体積)の蓄積を妨げることを試みる。APDは、概して、透析液の複数の短い夜間の交換を含み、他方、ユーザはサイクラに接続され、眠る。夜間治療の最後に、恐らくは異なる組成の一定体積の透析流体が、溶質の継続した交換、廃棄合成物の移動、および限外ろ過に対して日中に腹膜腔に残ることがある。間欠的腹膜透析(「IPD」)では、延長された残存(または日中)滞留サイクルを有さずに、透析液の多数回交換が(例えば、夜間に)一定期間に亘って行われる。
【0466】
サイクラでの治療は、概して、初期導出段階で開始されて、腹膜腔で流体が空になるのを確実とするよう試みられる。透析液の特徴は、通常、患者の組織からの流体の腹膜腔内空間限外ろ過への幾らかの移動を引き起こす。一連のサイクルを通じて治療が進行するにつれ、導出段階が、導入段階中に注入された流体の体積と、透析液が腹膜腔中にある時間中に生じた限外ろ過された流体の体積とを生じさせない場合、流体は腹膜内腔に蓄積することがある。幾つかのモードでは、導出体積が導入された流体の体積に加えて、予測された限外ろ過(「UF」)体積に一致しなかった場合、ユーザに警鐘を発するようにサイクラはプログラムされることが可能である。(予測されたUF体積は、とりわけ、個々の患者の生理学、透析液の化学的な組成、およびその間に透析液が腹膜腔に存在すると期待される時間の関数である)。
【0467】
他のモードでは、所定量の導出時間が経過し、かつ先の導入体積の所定の最小パーセンテージ(例えば、85%)が導出された場合、サイクラは次の導入−滞留−導出サイクルに進むことが可能である。この場合、サイクラは、最小導出時間後であり、かつ最小導出パーセンテージに到達した前に、導出流れが所定の速度未満に減少する場合に、警鐘を発するようにプログラムされることが可能である。サイクラは、腹膜腔からの流体を圧送するときに所定の流量を維持しようと試みるが、それに失敗して数分(例えば、2分)後にユーザに警告するようにプログラムされることが可能である。低流状態は、ストロークの終わりがコントローラによって検出される前にポンプ室に導入するのに必要とされる時間の増大のため、サイクラによって検出可能であることが可能である。ゼロ流または無流状態は、早期ストローク終了状態のコントローラによる検出のため、サイクラによって検出可能であることが可能である。ユーザに警告し、または新しい導入−滞留−導出サイクルを開始する前の時間遅延の持続時間は、低流状態において数分(例えば、2分)であるようにプログムされることが可能であり、無流状態ではより短い(例えば、30秒)ことがある。無流状態中のより短い待ち時間は、例えば、患者のより大きな不快度に関連づけられるのが可能であり、または患者ラインまたはカテーテルでの曲がりなどの迅速に直すことができる問題の結果であることがあるので、それは好ましいことがある。この遅延時間は、サイクラ製造段階でプログラムされることが可能であるか、または規定パラメータとして臨床家によって選択できる可能性がある。該遅延の程度は、とりわけ、目標とされる全治療時間内に留まるユーザまたは臨床家の望みを補償することによって管理されることが可能である(腹膜腔内体積(「IPV」)が低いか、またはゼロに近いと、透析は殆ど起こらないようであることは銘記されたし)。完全な導出が達成されない場合、サイクラはそれぞれのサイクルで蓄積されると想定される流体の量を追跡することも可能であり、累積IPVが所定量を超える場合には警告または警鐘を発することも可能である。この最大IPVは、個々の患者/ユーザの特別な生理学的特徴を考慮し、臨床家によってサイクラにプログラムされた治療処方のパラメータであることが可能である。
【0468】
一連のCCPDサイクル中に流体の累積滞留を取り扱う1方法は、CCPD治療をタイダル腹膜透析(「TPD」)治療に変えることである。TPDは、概して、導出体積が、意図的に、(規定パラメータとして臨床家によって最初にやはり入力されることが可能な)初期導入体積の規定の分率とされる導入−滞留−導出サイクルを備える。導入された流体の所定のパーセンテージ、または流体の所定の量は、治療の間の続いての導入−滞留−導出サイクル中に腹膜腔に留まるように配置される。好ましくは、続いての導入体積は、導出体積(から予測されたUFを減じたもの)に一致させて、比較的一定の残存腹膜内体積を維持するようにやはり低下される。例えば、3000mlの初期導入体積は治療の最初に導入されることが可能であり、続いて導出、およびただ1500ml、つまり、初期導入体積の50%に達する[導入+予測UF]体積が行われる。次に、腹膜腔中の予備または残存流体が、治療の最後に完全に導出される。代替モードでは、所定または規定数の導入−滞留−導出サイクル後に完全な導出が試されることが可能である(例えば、完全な導出が3サイクルのタイダル治療後に試みられるのが可能であり、このグループ分けは治療「クラスタ」を備える)。TPDは、ユーザが反復された大きな導入体積に付随する少ない不快感、または腹膜腔を十分に空にする反復された試みを経験することが可能である点で有益であることがある。小さな腹膜腔内流体体積に付随する低流状態もまた減少させることも可能であり、それにより、全治療時間の延長を回避するのを補助する。残存小体積を導出する試みに付随した不快感を減らすためには、例えば、タイダル導出体積を初期導入体積の75%(±予期されたUF体積)に設定することが可能であり、例えば、治療の持続時間の間、またはサイクルのクラスタの持続時間の間、腹膜腔中に予備または残存体積として略25%を残す。
【0469】
ユーザが、(例えば、快適理由で)続いての導出段階の最後に腹膜腔に残存体積の流体を維持することを選択する場合、治療のコース中に治療のCCPDモードを治療のTPD
モードに変えるようにサイクラがプログラムされることも可能である。この場合、治療に加えるべき過剰なサイクルの数および導入すべき残りの透析液の体積に基づいて、残存体積(または初期導入体積の或るパーセントとしての体積)のチョイスを演算するようにサイクラはプログラムされる。例えば、サイクラ・コントローラは、さらなる1つ、2つ以上のサイクルを備えた残りのサイクルに基づいて残りの導入体積を演算することが可能である。これらの可能性のそれぞれについて導入体積を判断したならば、サイクラ・コントローラは、IPVが最大規定IPV(Max IPV)下で残ることを確実としつつ、どれくらい多くの残存体積がそれぞれの残りの導出段階の最後に残ることが可能かを演算することが可能である。次に、サイクラは、1つ、2つ以上のサイクルによって延長された治療においてそれぞれの残りのサイクルに対して利用可能な(初期導入体積のパーセンテージとしての、または体積換算で)一定範囲の可能な残存体積をユーザに提示することが可能である。ユーザは、選択された過剰サイクルの数および導出後残存体積の所望の量に基づいて選択をなすことが可能である。タイダル治療への切換えは、ユーザへの低導出流警告の数を低下させるのを補助することが可能であり、これは、夜間の治療中で特に有利であることが可能である。
【0470】
タイダル・モードへの切換えでは、予備または残存体積パーセンテージ(導入体積+予測UFのパーセントとしての腹膜腔に残存する体積)を選択するようにサイクラはプログラムされることが可能である。これに代えて、予備体積は、随意に、ユーザよりもより広い範囲の可能な値を選択する能力を有した臨床家と共に、一定範囲の値からユーザが選択できるか、または臨床家が選択できる可能性がある。或る実施形態では、サイクラは、残りの導入体積および予測残存IP体積パーセンテージに対する1つ、2つまたは3つのさらなるサイクルを加える効果を演算し、ユーザまたは臨床家に演算された値の中から選択するオプションを与えることが可能である。随意に、サイクラは、残存IP体積パーセンテージを所定の最大値(例えば、初期導入体積+予測UFのパーセンテージ、または最大許容IPVのパーセンテージ)未満に保つように拘束されるのが可能である。
【0471】
CCPDがTPDに変えられたた場合、1又は複数の治療サイクル(導入−滞留−導出サイクル)を、治療セッションに対する規定体積の透析液のすべてを用いるために治療に加える必要があることがある。次に、進行する導入すべき残りの体積は、サイクルの残りの数によって割られるであろう。さらに、臨床家またはユーザが、さらなるサイクルを受け入れるために目標全治療時間(サイクルをベースとする治療)の延長の間で選択し、または滞留時間を調整して(つまり、滞留時間の短縮)、必要であれば、進行する導入−滞留−導出サイクル持続時間を低下させる(時間ベースの治療)ことによって目標治療時間を維持するように試みることを可能とするようにサイクラはプログラムされることが可能である。
【0472】
代替実施形態では、どれくらい多くの流体が特定の導出時間間隔内で導出できるかに依存して、サイクラは、残存IP体積が1つのサイクルから次のサイクルで(随意に所定の限界内で)変動するのを可能とすることがある。先に予定された時間内で治療を完了するようにサイクラがプログラムされている場合、導出段階で利用可能な時間は限定されることがあるか、またはサイクラが、遅い速度で流体を長時間引っ張るのを試みるのを妨げるように導入段階が終了されるのは可能である。CCPDからTPDに切換えるにおいて、サイクラが1又は複数のさらなるサイクルを加えて、入手可能な透析液で完全な治療を行う場合、予定された治療の終了時間を満足するには、滞留時間の短縮、またはそれぞれの導出段階の減少が必要とされる場合があり、これは、導出流状態に依存して、タイダル・モードに対する残存体積を変動させる可能性がある。サイクラが残存体積の量を見積もり、追跡するにつれて、続いての全体積+予期されたUF体積が規定された最大IPVに到達するか、またはそれを超えるか否かを演算するようにそれはプログラムされることが可能である。もしそうであれば、サイクラはユーザに警告し、ユーザに2つ以上のオプショ
ンを提供するのが可能である:ユーザは治療を終え、残存腹膜腔内体積をより低下させる試みにおいて導出段階を反復または延長するのが可能であるか、または続いての導入体積を低下させるためにサイクルを加えることが可能である。さらなる1又は複数のサイクルを加える治療時間に対する効果を演算した後(より低い体積での導入および導出時間の低下に対するサイクル数の増大)、さらなる1又は複数のサイクルによって生成したさらなる治療時間をオフセットするのに必要な時間の大きさによって続いての滞留回数をサイクラは随意に低下させることが可能である。
【0473】
サイクラに接続されていない間に、同一または異なる組成の新鮮な透析液を供給する随意の最後の導入段階を、延長された滞留時間の間にユーザの腹膜腔に供給するようにサイクラはプログラムされることが可能である(例えば、「昼間治療」のための延長された滞留段階、つまり、夜間治療に続いての日中)。ユーザのオプションにおいて、最後の導入体積は、夜間治療中で用いる導入体積より少ないように選択されるのが可能である。サイクラは、(夜間治療の終了後に比較的長時間でユーザによって運ばれるのが可能である)最終導入体積の導入に先立って、腹膜腔を完全に空にするチャンスをユーザに与えるために随意の過剰な最終導出を選択するように随意にユーザに促すことも可能である。この機能が使用可能とされた場合、サイクラは起き上がり、または立つようにユーザに促すことが可能であり、またはそうでなければ動き回って、この最後の導出段階中に腹膜腔中の何れかのトラップされた流体を動かすようにサイクラはユーザに促すことが可能である。
【0474】
透析機がオンまたはオフされた滞留段階中に生成された限外ろ過(「UF」)流体の予期量を説明し、導入された体積に加えて、この予期されたUFを含む最小導出体積が治療の最初に、または治療中の導入−滞留−導出サイクル中の何れかにまず導出されない場合、ユーザに警告するようにサイクラはプログラムされることも可能である。或る実施形態では、最小初期導出体積および最小初期導出時間について、測定された導出流量が所定の数分間に所定の閾値未満まで減少した場合に、導出段階を休止しまたは終えるようにサイクラはプログラムされることが可能である。最小初期導出体積は、先行する夜間治療における最後の導入段階の体積に加えて、日中治療滞留段階からの予期されたUF体積を含むことが可能である。最小(またはそれ以上の)初期導出体積が達成され、最小初期導出時間に到達し、および/または導出流量が減少した場合、サイクラ・コントローラによって追跡されたIPVは初期導出段階の最後にゼロに設定されることが可能である。もしそうでなければ、サイクラはユーザに警告することが可能である。サイクラはユーザに最小初期導出体積の要件を迂回させることが可能である。例えば、ユーザは、APDを開始する前の或る時点で手動により導出されてしまっていることがある。ユーザが最小初期導出体積への固執を止めることを選択する場合、ユーザによって選択された治療の種類に拘わらず第1のサイクルの最後に完全導出を行うようにサイクラはプログラムされることが可能である。使用可能とされた場合、この特徴は、第2の導入−滞留−導出サイクルが可及的にゼロに近いIPVにおいて開始するのを確実とするのを補助し、規定された最大IPVは治療の続いてのサイクル中に超えられるべきでないことを確実とするのを補助する。
【0475】
サイクラは、ユーザに治療を休止させるようにプログラムされるのも可能である。休止中に、ユーザは、導入体積を低下させ、治療時間を短縮し、計画された「日中治療」を終了し、または治療をすべて一緒に終了させることによって治療を変更するオプションを有することが可能である。加えて、ユーザは、治療中の何れの時点においても即時の導出を行うオプションを有することが可能である。予定されていない導出の体積はユーザによって選択されるのが可能であり、その際、サイクラはそれが中断された段階でサイクルを再開することが可能である。
【0476】
サイクラは、規定者または「臨床家」モードを有するようにプログラムされることが可能である。ソフトウェア用途は、臨床家が、特別な患者またはユーザのための治療規定を
形成し、ならびにそれ内ではユーザがアクセスできるパラメータをユーザが調整することが可能な限界を設定するパラメータのセットを作り出し、または修飾するのを可能とするのを可能とする。臨床家モードは、臨床家が、さもなければユーザにとってアクセス可能な1又は複数の処置パラメータを固定し、ならびにユーザがそれを変化させるのを妨げるようにパラメータをロックするのを可能とすることも可能である。臨床家モードは権限のないアクセスを予防するようにパスワード保護されているのが可能である。臨床家モード用途は、データベースにインタフェース接続して、規定を備えたパラメータを読み出しおよびそれに書き込むように構築されることが可能である。好ましくは、「ユーザ・モード」は、ユーザが、治療の予備治療開始段階中にユーザがアクセス可能なパラメータにアクセスし、それを調整するのを許可する。加えて、「積極活動治療モード」は、治療中にユーザにとって随意に利用可能であってもよいが、ユーザ・モードで利用可能なパラメータまたはパラメータ範囲のサブセットだけにアクセスできる。或る実施形態では、サイクラ・コントローラは、積極活動治療モード中にパラメータ変化を可能として、現行の治療だけに影響を及ぼすようにプログラムされることが可能であり、パラメータの設定は続いての治療前に先に規定された値にリセットされる。或るパラメータは、好ましくは、まったくユーザが調整可能ではなく、規定設定を通じて臨床家の同意を得てユーザが調整可能であり、または規定をプログラムするにおいて臨床家によって設定された値の範囲内だけでユーザが調整可能である。ユーザによってのみ調整可能でないことがあるパラメータの例としては、例えば、最小初期導出体積または時間、最大初期導入体積、および最大IPVが挙げられる。ユーザが調整可能なパラメータは、例えば、(例えば、1サイクルと5サイクルとの間で調整可能な)クラスタにおけるタイダル導出頻度、および(例として、例えば、85%のデフォルト値からの所定の量だけ上方または下方に調整可能な)導出すべきタイダル治療導入体積のパーセンテージを備えることが可能である。代替実施形態では、臨床家モードは、夜間導入−滞留−導出サイクルに割り当てられた初期導入体積の所定の倍数(例えば、200%)よりも最大IPVが大きくなるようにユーザがプログラムするのを臨床家が妨げるのを可能とすることができる。
【0477】
ルーチン的にユーザに警告し、いつ、ユーザが調整可能なパラメータが所定の範囲の外となるかの確認を要求するようにサイクラはプログラムされることも可能である。例えば、最大IPVが臨床家モードにおいてユーザが調整可能とされているときに、その人が、夜間治療に対するプログラムされた導入体積の範囲率(例えば、130〜160%)の外にあるMax IPV値を選択することを試みる場合、サイクラはユーザに警告することが可能である。
【0478】
初期導出体積が臨床家モードにおいてユーザが調整可能とされている場合、サイクラは、ユーザに警告し(かつ、恐らくは、確認を求める)ようにプログラムされることも可能であり、ユーザは、(例えば、それが最後の導入体積の70%未満であるように調整される場合)最後の治療の導入体積の所定のパーセンテージ未満である初期導出体積を選択する。別の例では、全予測UV体積が臨床家モードによってユーザが調整可能とされている場合、サイクラは、ユーザに警告し(かつ、恐らくは、確認を求める)ようにプログラムされることが可能であり、ユーザは(例えば、全予測UF体積が全夜間治療体積の7%より少なく設定される場合)夜間治療のために処理された全体積の或るパーセンテージ未満である全予測UF体積を選択する。概して、予測されたUF体積は、腹膜透析でのユーザの従前の経験に基づいて、臨床家によって経験的に判断されることが可能である。さらなる実施形態では、治療の1又は複数の従前のサイクルにおける現実のUV体積に従って、予測UF体積値を調整するようにサイクラはプログラムされることが可能である。この体積は、測定された全導出体積とそれに先立つ測定された導入体積との間の差を演算することによってCCPDモードで演算されることが可能である。幾つかの場合、いつ腹膜腔から流体が十分に導出されるかを判断するのは困難な場合があり、多数のサイクルに亘って、全導出体積と従前の導入体積との間の差の平均値を取るのが好ましいことがある。
【0479】
プログラム可能な処置設定の幾つかは:
− サイクラを用いる日中交換の数;
− それぞれの日中交換に対して用いられるべき透析液の体積;
− 夜間治療に対する全時間;
− (日中滞留段階が用いられる場合に、最後の導入体積を含まない)夜間治療に対して用いられるべき透析液の全体積;
− サイクル当たりの導入されるべき透析液の体積;
− タイダル治療での、それぞれのサイクル中に導出および再導入されるべき流体の体積(夜間治療での初期導入体積のパーセンテージ);
− 夜間治療中に生成されるべき見積もられた限外ろ過体積;
− 治療の最後に供給されるべきであり、かつ長い期間に腹膜腔に残る透析液の体積(例えば、日中滞留);
− 治療を進めるのに必要とされる最小初期導出体積;
− (腹膜腔に導入された測定された体積、腹膜腔から取り出された測定された体積、および治療中に生成された限外ろ過の見積もられた体積に基づくことが可能な)サイクラが患者の腹膜腔に存在させる、存在することが知られた、または存在することが想定される最大腹腔内体積
を備えることが可能である。
【0480】
サイクラに対するより進んだプログラム可能処置設定の幾つかは:
− タイダル腹膜透析中に行われるべき全導出の頻度;
− 引き続いての導入が許される前に導出されなければならない日中治療中の腹膜に供給された体積の最小%;
− 見積もられた全UFの所定のパーセンテージが収集されない場合に、治療の最後に過剰な導出段階を行うようにとのユーザへの促し;
− 治療が開始される前に初期導出を行うのに必要な時間の最小の長さ;
− 日中治療モードまたは夜間治療モードの何れかにおいて、続いての導出を行うのに必要な時間の最小の長さ;− 導入回数または導出回数の何れかが変化した(それにより、ユーザの予定の破壊を回避するのを補助する)ときに、固定された全治療時間を維持するサイクラ・コントローラによって調整された可変滞留時間;
を備えることが可能である。
【0481】
サイクラは、ユーザに、値の推奨される範囲外に入っているパラメータについての警告または警鐘を提供することができる。例えば:
− 治療前の最小初期導出体積が、以前の治療の最後における現在規定された最終導入体積の所定のパーセンテージ未満である(例えば、<70%);
− 最大IPVがサイクル当たりの導入体積の所定のパーセンテージ範囲外である(例えば、<130%または>160%);
− 治療の最後に過剰な導出を行うように警告を引き起こすためのUV体積閾値が治療当たりの見積もられたUF体積の所定のパーセンテージ未満である(例えば、<60%);− 演算された、または入力された滞留時間が所定の数分間未満である(例えば、<30分):
− 治療当たりの見積もられたUF体積が治療当たりの全透析液体積の所定のパーセンテージよりも大きい(例えば、>25%);
− 流体ラインの準備、および空気緩和処理中の導出に対する流体の喪失を説明するために、治療のためのすべての透析液バッグ体積の総和はCCPD治療セッション中に用いられる透析液の体積よりも幾分大きくあるべきである;
場合、警鐘は発せられることが可能である。
【0482】
臨床家モードでは、選択可能な最大IPVを有することに加えて、サイクラは、初期導出、日中治療導出、および夜間治療導出のための別々の最小導出時間を許容するようにプログラムされることが可能である。ユーザ・モードでは、または積極活動治療モードでは、サイクラは、治療の開始時にユーザが初期導出段階を抜かしまたは短縮するのを妨げるようにプログラムされることが可能である。加えて、サイクラは、一連の段階的に拡大される低導出流警告の後だけに、初期導出段階の早い終了を許可することが可能である。(初期警告は、腹膜透析カテーテルの位置を変化させ、そのカテーテルを再度位置決めするようにユーザに指令することが可能であり、次に、これに続いて、低流状態が最大数の警告まで執拗に続く場合、さらなる代替指令を行うことができる)。段階を迂回することを含む計画された治療に対してユーザが成す何れの変化も確認するようにサイクラはユーザに要求することもできる。臨床家は、ユーザが夜間治療中に導出段階を迂回するのを妨げるような規定設定において指定することが可能である。治療中に、(限外ろ過によって生成されたさらなるIPVを説明するために)導出体積が先行する導入体積を超えるのでなければ、IPVをゼロにリセットしないようにサイクラ・コントローラはプログラムされることが可能である。サイクラは、導入中に見積もられたIPVをユーザに表示するようにプログラムされることも可能であり、何れかの導出体積が所定量だけ導入体積を超えるかをユーザに知らせることが可能である(例えば、充填体積+予測UF体積よりも大きな導出体積)。
【0483】
サイクラは、ユーザ入力におけるエラーを同定し、明らかな入力エラーをユーザに知らせるようにプログラムされることも可能である。例えば、サイクラによって演算された治療中のサイクルの数は、臨床家またはユーザによって入力された規定パラメータに基づいて、所定の範囲内にあるべきである(例えば、1〜10)。同様に、サイクラによって演算された滞留時間はゼロよりも大であるべきである。加えて、ユーザまたは臨床家によって入力された最大IPVは、サイクル当たりの導入体積+予測UF体積よりも大きいか、またはそれと等しくあるべきである。さらに、サイクル当たりの導入体積に亘って所定の量より大きい最大IPVに対する入力された値を拒絶するようにサイクラはプログラムされることは可能である(例えば、最大IPV≦初期導入体積の200%)。幾つかの場合、透析液が日中治療中などの、長時間腹膜腔に残る場合、最大IPVを最後の導入体積以下に設定するようプログラムされるのはサイクラにとって望ましいことがある。この場合、サイクラ・コントローラが、最後の導出体積が完全な導出より少なくなると演算する場合、サイクラは、ユーザに警告するようにプログラムされることが可能であり、その際、サイクラは、ユーザに、治療を終了するか、別の導出段階を行うチョイスを提供することが可能である。
[警鐘を最小限としつつIPVを増大させることの管理]
或る実施形態では、持続的周期性腹膜透析(「CCPD」)治療から標準タイダル腹膜透析(「TPD」)治療に変えずに、治療中に増大するIPVを追跡および管理するようにサイクラはプログラムされることが可能であり、これは、残存体積を初期導入体積の或るパーセンテージに固定するであろう。むしろ、順応性タイダル治療モードが開始されることが可能であり、そこでは、何れかの導出段階中に遭遇することがある何れかの遅い導出状態に呼応して、残存体積は変動し、または「揺れる」。何れかの続いての導入体積+予測UFが規定された最大IPV(「Max IPV」)を超えない限り、このモードが動作されるのを可能とするようにサイクラはプログラムされることが可能である。それにより、滞留段階IPVは、治療中に最大IPVまで増加し、または減少するのが許可されるのが可能であり、好ましくは、臨床家モードでは臨床家によって設定されるのが可能である。この順応性タイダル治療モードでは、治療中のそれぞれの導出段階において、割り当てられた時間内で、または低流または無流状態が規定されたまたは予め設定された数分間検出されていない限り、完全な導出をサイクラは継続的に試みる。導出段階の最後における残存体積が、次の導入段階において、または次の滞留段階中に最大IPVの超過に導くかもしれない量を超えない限り、それは変動し、または「揺れる」のが許される。好ま
しい実施形態では、サイクラが、続いての導入段階または滞留段階が最大IPVに到達しないまたはそれを超過しないと演算する限り、ユーザに警告または警鐘を発しないようにサイクラはプログラムされることが可能である。
【0484】
サイクラ・コントローラが、次の導入体積はIPVに最大IPVを超過させないであろうと演算するまで治療のそれぞれのサイクル中に全導入体積を供給するようにサイクラはプログラムされることが可能である。(例えば、導出段階の最後などの)便利な時点で、導出の最後に最大許容可能残存IP体積を表して、次のサイクルが先にプログラムされた導入体積で進行するのを可能とする最大残存IP体積を演算するようにサイクラ・コントローラはプログラムされることが可能である。導出された流体の量が残存IPVを最大残存IPV未満とする限り、警鐘し、または警告を発さずに部分的導出はサイクラによって許可されるであろう。導出段階の最後における見積もられたまたは予測されたIPVが最大残存IPVより少ない場合、サイクラは、Max IPVの超過の危険を冒さずに、次のサイクルにおける全導入段階で進行することが可能である。導出の最後における見積もられたIPVが最大残存IPVよりも大きい場合、サイクラ・コントローラは、続いての充填+UVが最大IPVを超えることがあるという警告をユーザにすることができる。或る実施形態では、サイクラは、この警告に応答するためにユーザにとっての幾つかのオプションを表示することが可能である:それはユーザが治療を終了し、別の導出段階を試み、または改定されたサイクル治療モードに入るように進めることを可能とすることができ、そこでは、それぞれの続いての充填体積は減少し、1又は複数のサイクルが治療に加えられ(それにより、新鮮な透析液の残りの体積がその治療中に用いられるのを確実とする)。或る実施形態では、臨床家またはユーザは、治療の最初におけるサイクラが、治療中にユーザに警告する必要なくしてこの改定されたサイクル治療モードに自動的に入ることを可能とすることができる。
【0485】
幾つかの状況では、さらなるサイクルの数は計画された全治療時間によって制限されることが可能である。例えば、夜間治療の持続時間は、ユーザが覚醒し、または起きて仕事に行く予定である時間によって制限されることが可能である。夜間治療では、例えば、予定された時間で治療を終えるのに好都合な、治療で計画されたすべての透析液の使用を優先するようにサイクラ・コントローラはプログラムされることが可能である。臨床家またはユーザが調整可能なように滞留時間を選択した場合、サイクラ・コントローラは、(1)1または複数のサイクルを加えて、導入体積+予測UFが最大IPVを超えないことを確実とし;(2)透析液のすべてが治療で用いられるのを確実とし;(3)残りのサイクルの滞留時間を短縮することによって目標とした治療終了時に到達することを試みるであろう。ユーザに利用可能な代替オプションは、治療終了時間を延長することである。好ましい実施形態では、1つまたは2つのさらなるサイクルを治療に加えて、導入体積の減少を可能として、最大IPVの超過を妨げるようにサイクラはプログラムされることが可能である。増大した数のサイクルによって生じた減少した導入体積を用い、最大残存IPVを再演算するようにサイクラ・コントローラはプログラムされる。そのようにして、導出中の低流状態が同一IPVで起こる場合、新しいより高い最大残存IPVは、最大IPVを超えずに透析が進むことを可能とすることが可能である。最大許容数の過剰サイクル(例えば、例示的な夜間治療シナリオにおいては2サイクル)を加えることによって導入体積を十分減少させることができない場合、サイクラは、ユーザに2つのオプション:導出段階を再度試みる、または治療を終了する、を提示することが可能である。導入体積の調整後に導入体積を再びリセットし、導出の最後における低流状態が、新しく再演算されかつリセットされた最大残存IPVを超えるIPVで再度遭遇される場合、恐らくは、さらなるサイクルを加えるようにサイクラはプログラムされることが可能である。このようにして、早期の低流状態が反復して遭遇される場合、続いての導入体積を反復して調整して、最大IPVの超過を妨げるようにサイクラはプログラムされることが可能である。
[滞留時間減少に対する補充の制限]
或る実施形態では、1つは複数のサイクルを加えることによってサイクラが導入体積を減少させる場合、それは滞留時間を減少させて、全計画治療時間内に治療セッションを保つように試みることもできる。このモードは夜間治療で有用である場合もあり、その結果、患者は、朝の目覚めの計画された時間前に治療を終えていることを合理的に確実とすることができる。しかし、治療中に必要とされれば、サイクラはヒータバッグを継続して補充し、(PDカセットはそうでなければ患者との間で圧送しないときに)補充は概して滞留段階中に起こる。従って、幾つかの状況では、残りの滞留時間における必要な減少が、残りの新鮮な透析液をヒータバッグに補充するのに必要な見積もられた全時間未満である全残りの滞留時間に導くときに、全治療時間は延長される必要があることがある。従って、サイクラ・コントローラは、残りの治療サイクルで利用可能な最大滞留時間減少を演算し、残りの新鮮な透析液が適切に加熱されることを確実とするように全治療時間を延長することが可能である。サイクラ・コントローラはヒータバッグ中の透析液の体積、ヒータバッグ中の透析液の温度、および導入されることが予定された残りの新鮮な透析液の体積の追跡を保つので、それは、(その固有の圧送能力を仮定すれば)ヒータバッグを所定の体積まで補充するのに必要な時間、およびそれがユーザに導入される前に規定された温度までヒータバッグ中の透析液を持っていくのに必要な時間の量の見積もりを演算することができる。代替実施形態では、サイクラ・コントローラは何れかの時点でユーザとの間の圧送動作を中断して、ヒータバッグの補充用のポンプに係合することが可能である。例えば、ヒータバッグ中の流体の体積が、最後のサイクル中以外の、治療中の何れかの時点における所定の体積未満に落ちるのを妨げるようにサイクラ・コントローラはプログラムされることが可能である。
【0486】
或る実施形態では、サイクラがユーザとの間で流体を移動させる時よりも大きな流量で流体をヒータバッグに供給するようにサイクラはプログラムされることが可能である。バイナリ・バルブを用いて、正圧/負圧溜めの間の制御流体または気体の流れ、およびカセット・ポンプの制御または作動室を調節する場合、コントローラは、ポンプの制御または作動室で測定された様々な圧力レベルにおいてバルブに対してオン−オフ命令を発することが可能である。それにより、コントローラがバイナリ・バルブに対して「オフ」命令を発動する時点のポンプ制御または作動室における圧力閾値は、サイクラがユーザの腹膜腔との間で流体を供給し、または引っ張っているときは、対応する圧力閾値よりもヒータバッグとの間の供給中により大きい絶対値を有することが可能である。ポンプ膜に加えられたより高い平均圧力は、圧送すべき流体のより大きな流量をもたらすことが予測されることがある。可変オリフィス・バルブを用いて、蓄圧器とカセット・ポンプの制御または動作室との間の制御流体または気体の流れを調節する場合、同様なアプローチが用いられることが可能である。この場合、コントローラは可変オリフィス・バルブによって提供された流れ抵抗を変調して、ポンプ膜がそのストロークを通じて移動するのにつれ、ポンプ制御室中の所望の圧力を所定の限度内に維持することが可能である。
[治療の例示的なモード]
図67は、CCPDモードにあるときの、サイクラの順応性タイダル・モードのグラフ表示(体積または時間何れかにおいてスケール通りではない)である。明瞭性のため、治療の最初における初期導出は省略されている。最大IPV(Max IPV)700は、好ましくは臨床家によって設定された規定パラメータである。初期導入体積702もまた、好ましくは、規定パラメータとして臨床家によって設定される。予測UF体積は、滞留段階706中のさらなるIPV増加704によって表される。全治療に対する予測UF体積は臨床家によって規定に入力されることが可能であり、次に、サイクラは、治療中のサイクルの数および、従って、サイクル当たりの予測UF体積に基づいてサイクル当たりの滞留時間を演算することが可能である。限外ろ過は、導入−滞留−導出サイクル全体に亘って行われると予測されることに注意すべきであり、予測UF体積はサイクル期間全体に亘って限外ろ過された流体の体積を備えることは可能である。殆どの場合、滞留時間は導入または導出時間よりもかなり長く、導入または導出中の限外ろ過体積を比較的意味がな
いものとする。(導入および導出時間は、蓄圧器とポンプとの間の制御バルブを調節するためのコントローラによって用いられる圧力設定値を変えることによって調整可能であるときがある。しかし、ユーザに対する流体供給流量および圧力の調整性は、好ましくは、ユーザの快適を確保するために制限される)。そのようにして、サイクル704当たりの予測UF体積は、合理的には、サイクル中の限外ろ過の代表であることが可能である。この例でのサイクルの導出段階708は、治療のCCPDモードで起こるだろうように、完全な導出である。
【0487】
最大残存体積710は、一旦Max IPV700、初期導入体積702、および予測UF体積が臨床家によって入力されると、サイクラ・コントローラによって演算されることが可能である。最大残存体積710は、Max IPV700に到達する前により多くの流体を収容するための腹膜腔で利用可能な「ヘッドルーム」712の表示である。治療のCCPDモード内の順応性タイダル・モードでは、導出体積714、716が最大残存体積710より少ない見積もられた残存体積718、720としておく限り、Max IPV700は違反すると予測されないために、続いての導入体積722、724は不変であることが可能である。
図67に示されるように、残存体積718および720での低流状態の発生は、サイクラをトリガして、次の導入段階722および724を開始させる。治療のこの形態中に、低流または無流状態は見積もられたゼロIPVに達する前には遭遇しないと想定して、サイクラは割り当てられた時間内で完全な導出726を行うことを継続して試みるであろう。このようにして、たとえ完全な導出が(低流または無流状態のため)行われなくても、この場合、完全な導入体積が継続して導入され、残存IPVは所定の範囲内で揺らぐことが許され、ユーザは、好ましくは、何らかの警鐘または警告通知によって乱されないであろう。
【0488】
図68は、最大残存IPV710に到達しない不完全な導出をどのようにしてサイクラが扱うことが可能かのグラフ表示である。この場合、第3のサイクルの導出段階730は、サイクラが最大残存IPV710未満で腹膜腔から導出するのを妨げる低流または無流状態に遭遇する。見積もられた残存体積732(低流状態の所定の持続時間後の見積もられた残存体積)を仮定すれば、サイクラは、続いての導入段階体積734は規定されたMax IPV700を736到達させ、またはそれを超えさすだろうことを演算する。従って、導出段階730の最後に、サイクラはユーザにこの問題に対して警告することが可能である。次に、ユーザは、治療を終了し、サイクラに(恐らくは、位置を変化させて、またはPDカテーテルを再度位置決めした後に)導出段階を再度試みるよう指示し、あるいは続いての導入体積が低下され、1又は複数のサイクルが加えられて、透析液の計画された全体積での治療が完了される改正されたサイクル治療モードに入るようにサイクラに指令するオプションを有することが可能である。割り当てられたまたは規定された全治療時間内に保つためには、導入および導出時間を減少させて、減少した導入および導出体積を説明し、次に、治療セッションの指名された終了時間を満足するためにどれぐらい多く滞留時間が短縮される必要があるか、およびその必要性があるか否かを判断することによって、サイクラは修正されたサイクルの持続時間を演算することが可能である。
【0489】
ユーザは、随意に、治療の開始時にCCPDの改正されたサイクル・モードを使用可能とすることが可能であり、その結果、治療中の低流状態の発生は、警告または警鐘でユーザを乱さずに、改正されたサイクル・モードをトリガすることが可能である。さもなければ、最大残存IPVを超える低流状態の発生に際して、ユーザは改正されたサイクル・モードを選択することが可能である。ユーザが改正されたサイクル・モードに入ることを選択する場合、サイクラ・コントローラは、さらなる1つ、2つ以上のサイクルのそれぞれに対する必要な導入体積(残りの導入体積を、残りの計画されたサイクルにさらに1つは複数のサイクルを加えたもので割ったもの)を演算することが可能である。1つのさらなるサイクルが、Max IPVへの到達またはその超過を回避するのに十分に低い導入体
積(+予測UF)を生じる場合、サイクラは(自動的に、またはユーザのオプションで)その新しい導入体積738においてCCPDを再開させるであろう。さもなければ、サイクラ・コントローラは、治療のさらに2つのサイクルに基づいて新しい導入体積を演算するであろう。(稀には、Max IPVが残りの治療中に違反されないことを確実とするために、2を超えるさらなるサイクルが必要とされることがある。さらなるサイクルが残りの滞留時間の実質的な減少を必要とする場合、特に、最小滞留時間が規定されているか、またはヒータバッグ補充制限が全治療時間の延長を必要とする場合、サイクラはユーザに警告することが可能である)。今や減少した導入体積738は、サイクラ・コントローラが、サイクル当たりの新しい導入体積と予測UF体積との総和の関数である改正最大残存IPV740を再演算するのを可能とする。見積もられた残存IP体積を改正最大残存体積740未満とする何れの続いての導出段階も、好ましくは、ユーザに何れのさらなる警告または警鐘もトリガせず、タイダル治療の順応性モードが使用可能なままとする。或る実施形態では、サイクラが残存滞留段階の持続時間を減少させて、計画された全治療時間内に留まらせる場合、サイクラは予測UF体積を再演算することが可能である。予測UF体積の何れの再演算された減少も、さらに、改正最大残存IPVを増加させることが可能である。
図68に示された例では、サイクラは継続してCCPDモード治療を実行し、残りのサイクルにおいて十分導出させることが偶々可能である。ユーザにさらなる不便をかけないように、(特に、透析液の全体積および全治療時間が規定されたパラメータ内に保たれている場合)、サイクラは、随意に、治療に対する何れのさらなる調整もなすことが禁じられることがある。
【0490】
図69は、サイクラ・コントローラがユーザのMax IPV700が治療中に到達または超過されるらしいことを演算するならば、計画された標準タイダル腹膜透析(TPD)治療はまた、TPD治療の改正サイクル・モードに付されることが可能であることを示す。この例では、ユーザまたは臨床家は標準的なタイダル治療を選択しており、そこでは、(現実の体積換算で、または初期導入体積のパーセンテージとしての)計画された残存IP体積が選択されている。サイクラの随時の特徴点として、ユーザまたは臨床家は、治療セッション中のサイクル・クラスタを備えた、タイダル導入−滞留−導出の3サイクル毎の後に完全な導出744を行うことも選択している。この例では、最大残存体積710未満の導出を妨げる低流状態が第3のサイクル746の最後に起こる。ユーザまたは臨床家のオプションにおいて、サイクラは、ユーザに警告して、治療を終了させ、導出段階を反復し、または改正サイクルTPD治療を開始させるか、の何れかを選択させ、あるいはサイクラは自動的に改正サイクルTPD治療を開始するのが可能とされる。この場合、導入体積の結果としての減少を伴う第6のサイクルの改正導入体積748への付加は、さもなければ起こっていたであろう750、Max IPV700の超過を回避するのに十分である。この例では、サイクルは進行して、クラスタの最後に完全な導出744を行うが、その後、標準TPD治療を再開する。計画された残存体積がクラスタの初期導入体積の或るパーセンテージであると特定された場合、そのパーセンテージは改正残存IPV752に適用されることが可能である。次に、改正導入体積748の適切な分率+予測UF体積を演算して、改正残存IPV752まで導出することによって、サイクラは続いての導出体積754を演算することが可能である。サイクラが、Max IPV700が違反されないことを演算する限り、何れの続いての導入体積758も改正導入体積748と同様なままであることが可能である。これに代えて、続いての導入体積は、比較的一定した改正滞留段階IPV756を維持するように設計されたように減少されることが可能である。この場合、全残りの透析溶液が、改正導入体積748と、改正滞留段階IPV756を維持するように減少された後の導入体積との間に適切に分割されることを確実とするのに必要なさらなる演算をなすようにサイクラ・コントローラはプログラムされることが可能である。代替実施形態では、臨床家またはユーザは、規定された残存IP体積742が治療を通じて体積的に比較的固定されることを選択するのが可能である。この場合、サイクラ・コントローラは残存IP体積742のパーセンテージ値を体積値(例えば、ミリメー
トル単位)に変換することが可能であり、改正サイクル・モードが開始された後に継続してその目標残存体積を用いることが可能である。何れにせよ、サイクラ・コントローラは何れの改正導入体積の演算においても、継続してMax IPV700制限を適用することが可能である。
【0491】
図70は、標準タイダル治療中に、どのようにして順応性タイダル治療モードが採用されるのが可能であるかを示している。この例では、遅い導出状態760は、最大残存体積710未満で遭遇される。サイクラの随時の特徴点として、ユーザまたは臨床家は、この例において、治療セッション中のサイクル・クラスタを備えた、タイダル導入−滞留−導出の4サイクル毎後に完全な導出764を行うことも選択している。この場合、サイクラは、タイダル導入体積762が維持された場合に、Max IPV700は到達されないであろうと演算する。改正残存IP体積760においてタイダル治療を継続して、別の遅い導出状態を回避するようにサイクラはプログラムされているのが可能である。(この一方で、既に規定された残存IP体積742まで導出して戻すのを試みるようにサイクラはプログラムされていることが可能である)。タイダル治療はMax IPV700に違反する危険性なしに継続することが可能であるので、ユーザは、順応性タイダル治療モードの訂正されたまたは揺らぐ残存体積の開始に対して警告される必要はない。全導出764は規定されたように開始され、成功すれば、サイクラ・コントローラは、元来規定されたタイダル治療パラメータを再度開始することが可能である。或る実施形態では、全導出がタイダル治療クラスタの最後に達成できない場合、ユーザに警告するようにサイクラはプログラムされることが可能である。
【0492】
本発明の態様は、その特定の実施形態と共に記述されているが、多くの代替物、修正物、および変形物が当業者に明白になることは明らかである。従って、ここで述べられるような本発明の実施形態は、限定なしに例示であるように意図されている。様々な変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、なされることが可能である。