特許第6346249号(P6346249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346249
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】剪断押出システム
(51)【国際特許分類】
   B21C 25/04 20060101AFI20180611BHJP
【FI】
   B21C25/04
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-223149(P2016-223149)
(22)【出願日】2016年11月16日
(62)【分割の表示】特願2012-196575(P2012-196575)の分割
【原出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2017-35738(P2017-35738A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2016年12月9日
(31)【優先権主張番号】61/531674
(32)【優先日】2011年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512231967
【氏名又は名称】シア フォーム、インク
【氏名又は名称原語表記】Shear Form, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート イー、バーバー
(72)【発明者】
【氏名】カール ティー、ハートウィッグ
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−245156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 23/08,25/04
C22F 1/00, 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剪断押出システム(equal channel angular extrusion system)であって、
内部マンドレルであって、該内部マンドレルの一部に内部マンドレル剪断前領域部を備え、さらに、
拡張剪断材料部及び収縮剪断材料部と、
前記拡張剪断材料部と前記収縮剪断材料部との間に配置された内部マンドレル剪断後拡張済領域部と、
内部マンドレル剪断後収縮済領域部であって、前記収縮剪断材料部が該内部マンドレル剪断後収縮済領域部と前記内部マンドレル剪断後拡張済領域部との間に配置され、前記内部マンドレル剪断前領域部と同じ直径を有する前記内部マンドレル剪断後収縮済領域部と、を備える前記内部マンドレルと、
材料と、
前記材料の少なくとも一部が内部に配置されるウォールと、
加圧器と、
を備えることを特徴とする剪断押出システム。
【請求項2】
請求項1記載の剪断押出システムであって、前記拡張剪断材料部が第一剪断拡張域と第二剪断拡張域とを有することを特徴とする剪断押出システム。
【請求項3】
請求項1記載の剪断押出システムであって、前記拡張剪断材料部が拡張角と第二拡張角とを有することを特徴とする剪断押出システム。
【請求項4】
請求項1記載の剪断押出システムであって、前記収縮剪断材料部が第一剪断収縮域と第二剪断収縮域とを有することを特徴とする剪断押出システム。
【請求項5】
請求項1記載の剪断押出システムであって、前記収縮剪断材料部が収縮角と第二収縮角とを有することを特徴とする剪断押出システム。
【請求項6】
請求項1記載の剪断押出システムであって、前記材料が前記内部マンドレルの一部に配置されることを特徴とする剪断押出システム。
【請求項7】
請求項1記載の剪断押出システムであって、前記ウォールが、ウォール剪断前領域部と、ウォール剪断後拡張済領域部と、ウォール剪断後収縮済領域部との内部に配置された前記材料の全周に接触することを特徴とする剪断押出システム。
【請求項8】
請求項1記載の剪断押出システムであって、前記加圧器が、前記材料に圧力を加えることにより前記材料を押して前記拡張剪断材料部に接触させて拡張済剪断後材料部を提供することを特徴とする剪断押出システム。
【請求項9】
請求項1記載の剪断押出システムであって、前記加圧器からの圧力が前記材料に加えられることにより、拡張済剪断後材料部を押して前記収縮剪断材料部に接触させて収縮済剪断材料部を提供することを特徴とする剪断押出システム。
【請求項10】
請求項1記載の剪断押出システムであって、前記ウォールが前記材料と平行に移動することを特徴とする剪断押出システム。
【請求項11】
請求項1記載の剪断押出システムであって、前記材料が潤滑剤を備えることを特徴とする剪断押出システム。
【請求項12】
請求項1記載の剪断押出システムであって、前記材料が前記内部マンドレルの一部に配置される前に加熱されることを特徴とする剪断押出システム。
【請求項13】
請求項1記載の剪断押出システムであって、加圧器はすべての前記材料が前記収縮剪断材料部を構成するまで圧力を加え続けることを特徴とする剪断押出システム。
【請求項14】
請求項1記載の剪断押出システムであって、収縮剪断材料部が実質的に均一な微細構造を有することを特徴とする剪断押出システム。
【請求項15】
強度の塑性変形を材料に加えることにより材料に実質的に均一な微細構造を与える方法であって、
(A)材料を内部マンドレルの一部とスライディングウォールの一部との間に配置し;
(B)加圧器で前記材料を押し;
(C)前記材料を拡張して、拡張済剪断後材料部を提供し;
(D)前記拡張済剪断後材料部を収縮して、収縮済剪断材料部を提供し、それにより、前記収縮済剪断材料部が実質的に均一な微細構造を有し;
(E)前記内部マンドレルと前記スライディングウォールとが前記材料とともにスライドし;
(F)ステップ(A)−(E)を少なくとも1回繰り返し;
(G)材料に対して熱処理を加える;
ことを含む、材料に実質的に均一な微細構造を与える方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法であって、拡張することは、前記材料を拡張剪断材料部に接触させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15記載の方法であって、収縮することは、前記材料を収縮剪断材料部に接触させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
剪断押出システムであって、
マンドレル剪断前領域部とマンドレル剪断後領域部とを有するマンドレルで、前記マンドレル剪断後領域部が前記マンドレル剪断前領域部に対して角度をなしている、前記マンドレルであって、
前記マンドレルが、前記マンドレル剪断前領域部と前記マンドレル剪断後領域部との交差において剪断域を更に有し;
材料と;
加圧器と;
前記加圧器から加えられる圧力によって前記材料とともに移動するスライディングウォールと;
前記材料とともに移動する内部マンドレルと;
を有する剪断押出システム。
【請求項19】
請求項18記載の剪断押出システムであって、強度の塑性変形により前記材料に実質的に均一な微細構造を与えることを特徴とする剪断押出システム。
【請求項20】
請求項18記載の剪断押出システムであって、更に、ウォールを備え、前記材料が前記ウォールと前記内部マンドレルとの間に配置されることを特徴とする剪断押出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属加工の分野に関するものであり、より具体的には均一な特質と均一な構造を有する金属部の製造の分野に関するものである。
(関連出願の参照)
本出願は、2011年9月7日に出願された米国出願61/531,674の優先権の利益を主張した、仮出願ではない出願であって、この参照によりその全体がここに組み込まれるものとする。
(連邦政府による支援の研究または開発に関する記載)
本出願はDOE認可参照番号DE−FG02−07ER84916およびDE−SC0004589のもとで政府の支援によりなされたものである。
【背景技術】
【0002】
パイプやチューブは、鋳造や押し出し成形やストリップ形成(strip forming)とボンディング/溶接とを組み合わせた従来の工程で製造される。パイプやチューブの主な機能は、一般的には、物質(すなわち、液体)を一つの場所から他の場所へと運ぶことである。従来のパイプやチューブのための材料上の要件としては、強度、漏えいに対する気密性、耐腐食性および耐化学浸食性が挙げられる。材料に対するこのような典型的な機能の要求は、多くの場合、高い水準の要求ではないし、挑戦すべき課題となることもない。例えば、チューブあるいはパイプの微細構造が重要となることはないかもしれない。パイプあるいはチューブにおける微細構造が個所によって変化しても、重大なマイナスの影響とはならないかもしれない。
【0003】
例えば、パイプやチューブに対する運用時の力学的要件が重要である場合には、しばしば、パイプおよびチューブ材料の微細構造に対して十分な特性が必要とされる。一例として、そのような特性として、粒径が十分に小さいことが挙げられる。また、そのような十分な特性として、十分に均一あるいは一貫した微細構造であることが挙げられる。そのような特性によって、後の形成および運用の際に、期待された性能が提供されることが望まれるであろう。チューブまたはパイプが高圧の液体を搬送する場合、あるいは別の形に形成される(すなわち、液圧成形によって)場合、意義のある力学的要件が必要とされると考えられる。チューブまたはパイプが劣った特質の部分を含んでいるなら、運用条件は弱い連結特質(すなわち、特性)によって制約される場合があり、パイプまたはチューブの形成または運用特性が低下するかもしれない。そのような劣った特質は、溶接部あるいはその近くにあるものも含まれるかもしれない。これらの要因のどちらもコストパフォーマンスに影響するであろう。多くの場合、チューブ壁の厚さ方向の微細構造は均一ではない。そのような不均一性は、製造条件に由来するかもしれない。例えば、鋳造金属パイプの場合、チューブ壁の外表面および内表面近くでは粒径が小さいであろう。不均一性の欠点は、チューブ性能にマイナスの影響を与え、それゆえに総費用にもマイナスの影響を与えるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、チューブおよびパイプの製造のために改良された処理が必要とされている。さらに、材料の中空断面において、均一で一貫した微細構造を作るための改良された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
剪断押出システム(ECAE法:equal channel angular extrusion system)による一実施例では、当技術分野におけるこれらおよび他の必要に取り組む。システムは内部マンドレルを有している。内部マンドレルは拡張剪断材料部と収縮剪断材料部とを有している。加えて、システムは材料を含んでいる。材料は内部マンドレルの一部の付近に配置される。更に、システムは加圧器を有している。加圧器は材料に圧力を加え、材料を押して拡張剪断材料部に接触させ、拡張済剪断後材料部がもたらされる。加圧器からの圧力が材料に加えられて、拡張済剪断後材料部を押して収縮剪断材料部に接触させ、収縮済剪断材料部がもたらされる。
【0006】
他の実施例では、強度の塑性変形を材料に与えるための方法によって、当技術分野におけるこれらおよび他の必要に取り組み、材料に実質的に均一な微細構造が与えられる。本方法は、材料を内部マンドレルの一部の付近に配置することを含む。本方法は、更に、材料を拡張させて、拡張済剪断後材料部を提供する。加えて、本方法は、拡張済剪断後材料部を収縮させて、収縮済剪断材料部をもたらすことを含んでいる。収縮済剪断材料部は実質的に均一な微細構造を有する。収縮済剪断部もまた、実質的に均一な微細構造を有する。
【0007】
加えて、当技術分野におけるこれらおよび他の必要は、剪断押出システムによる一実施例において取り組まれる。システムはマンドレルを有している。マンドレルはマンドレル剪断前領域部とマンドレル剪断後領域部とを有している。マンドレル剪断後領域部は、マンドレル剪断前領域部に対してある角度をなしている。マンドレルは更に、マンドレル剪断前領域部とマンドレル剪断後領域部との交差において、剪断域を有している。本システムは材料をも含んでいる。更に、本システムは加圧器を有している。加圧器は、圧力を材料に加えて、材料を押して剪断域を通過させる。剪断域において、強度の塑性変形が材料に与えられる。
【0008】
上記は、以下における本発明の詳細な説明をよりよく理解するために、本発明の特徴および技術的利点をかなり広く概説したものである。本発明の付加的な特徴および利点を以下に説明するが、それらは本発明の請求の範囲の対象となるものである。当業者にとっては当然のことながら、開示される概念および特定の実施例は、本発明と同じ目的を達成するために、修正の、あるいは他の実施例の設計のための基礎として容易に利用できる。やはり当業者には当然のことであるが、このような均等な実施例は、特許請求の範囲に示した本発明の趣旨および範囲から逸脱するものではない。
【0009】
発明を実施するための形態の説明のために、次の添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】材料が剪断域に到達していない剪断押出システムの実施例の垂直断面図を示している。
図2】材料が剪断域を通過しつつある剪断押出システムの実施例の垂直断面図を示している。
図3】材料が剪断域を通過しつつある剪断押出システムの実施例の垂直断面図を示している。
図4a】材料が拡張されそして収縮された剪断押出システムの実施例の垂直断面図を示している。
図4b】材料が拡張された剪断押出システムの実施例の垂直断面図を示している。
図4c】材料が収縮された剪断押出システムの実施例の垂直断面図を示している。
図5】拡張しつつある剪断材料部の実施例の垂直断面図を示している。
図6】代表的な体積要素の実施例を示している。
図7】収縮剪断材料部の実施例の垂直断面図を示している。
図8】代表的な体積要素の実施例を示している。
図9】代表的な体積要素の実施例の画像を示している。
図10】すべての材料が剪断部を通過した後の剪断押出システムの実施例を示している。
図11】材料がマンドレル越しに押される剪断押出システムの実施例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図2および図3は、材料10とマンドレル15と加圧器35とを有する剪断押出システム5の実施例を示している。剪断押出システム5(equal channel angular extrusion system)は、材料10に強度の塑性変形を加えるものである。実施例において、剪断押出システム5を材料10に対して適用する前は、材料10は微細構造的に不均一性を有している。限定されるものではないが、剪断押出システム5は不均一な微細構造を均一な微細構造へと変換する。均一な微細構造とは、材料10全体にわたって実質的に同じ特質と構造を有する微細構造のことである。均一な微細構造は、周方向に対称な微細構造で厚さ方向に実質的に均一であってもよい。限定されるものではないが、さらに剪断押出システム5による強度の塑性変形は、材料10全体に均一な塑性歪みを与え、それにより材料10に均一な微細構造を与える。限定されるものではないが、更に、剪断押出システム5は、材料10が剪断押出システム5により処理された後に、材料10に結果としてもたらされるテクスチャを制御することができる。実施例においては、テクスチャは材料10に適用される歪み経路によって制御される。限定されるものではないが、更に、剪断押出システム5は、中空部における不均一な微細構造を、部分形状を変化させることなく均質化する(すなわち、均一にする)ことができる。
【0012】
図1は、剪断域30を通過する前の材料10を示している。図2図3は材料10の一部が剪断域30を通過した実施例を示している。この実施例において、剪断前材料部40は、材料10のうち、剪断域30(図において、説明の目的のためだけに、点線で記されている)を通過していない部分であり、剪断後材料部45は、材料10の剪断域30を通過した部分である。
【0013】
材料10は、強度塑性変形に適したどんな材料であってもよい。実施例では、材料10は金属である。実施例によっては、金属は遷移金属、金属合金、あるいはそれらの任意の組み合わせである。例えば、ある実施例に含まれるのは、ニオブを有する金属である。別の実施例では、金属はタンタルである。材料10は望ましいどんな形状であってもよい。例えば、材料10は中空であってもよいし中まで詰まっていてもよい。材料10は、円形の断面や、六角形の断面や、八角形の断面や、正方形の断面などであってもよい。限定されるものではないが、材料10の例として、パイプ、棒、チューブ、板、中空板などを挙げることができる。実施例によっては、剪断域30は材料10の直径の約1%から約10%の間である。
【0014】
マンドレル15はマンドレル剪断前領域部20とマンドレル剪断後領域部25と剪断域30とを有している。図示された実施例では、マンドレル15は中空である。マンドレル剪断前領域部20はマンドレル剪断後領域部25に対して角度120をなしている。角度120は材料10の強度の塑性変形に適したどんな角度であってもよい。実施例では、角度120は約90度と約180度の間、あるいは約90度と約150度の間である。ある実施例では、角度120は約90度である。図1および図2に示された剪断押出システム5の実施例の場合、角度120は約90度である。図3に示された剪断押出システム5の実施例では、角度120は約135度である。
【0015】
図1図2図3に示されているように、角度120により剪断域30が提供される。剪断域30は、材料10がマンドレル剪断前領域部20からマンドレル剪断後領域部25へと進む際に、材料10に対して単純剪断が作用する場所である。剪断域30は、マンドレル剪断前領域部20とマンドレル剪断後領域部25との交差位置において、マンドレル15を横断して横方向に伸びている。
【0016】
加えて、図1図2図3に示されているように、加圧器35は、材料10が押されてマンドレル15を通って進むために十分な圧力を材料10に与える。実施例では、加圧器35は水撃ポンプ、ピストン等である。ある実施例では、加圧器35は水撃ポンプである。
【0017】
実施例において、材料10は潤滑剤により潤滑されている。ある実施例では、マンドレル15に配置される前に、材料10の外部が潤滑される。材料10とマンドレル15との間の摩擦を減らすのに適したどんな潤滑剤でも使用できるであろう。潤滑剤は、液体潤滑剤、乾式潤滑材、あるいはそれらの任意の組み合わせであってもよい。液体潤滑剤としては油性潤滑剤が挙げられる。限定されるものではないが、適切な油性潤滑剤の例としては、石油留分、植物油、合成液体、あるいはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。限定されるものではないが、更に、合成液体の例としては、シリコーン、フッ化炭素、あるいはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。乾式潤滑材としては、グラファイト、二硫化タングステンなどの二硫化物、およびモリブデン、あるいはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。潤滑剤は任意の適切な方法で材料10に塗布することができる。限定されるものではないが、材料10に潤滑剤を塗布する適切な方法の例としては、吹付、ディッピング、ブラシ塗り、あるいはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0018】
図1図2図3に示された実施例では、材料10は潤滑され、加熱される。材料10を加熱し潤滑するのは、任意の適切な順序でよい。実施例では、材料10は加熱の前に潤滑される。材料10がマンドレル15を通過する際の材料10の変形性を増加させるために、任意の適切な温度へと材料10を加熱することができる。別の実施例では、材料10はマンドレル15を通過する前には加熱されない。潤滑と加熱の後に、材料10の一部あるいは全部をマンドレル剪断前領域部20に配置する。図1において、矢印は、マンドレル剪断前領域部20において材料10が動く方向を表わしている。材料10が押されると、マンドレル剪断前領域部20を通って、剪断接触域125においてマンドレル15の壁に接触するに至る。剪断接触域125において、加圧器35により材料10に加えられる圧力により、材料10が剪断域30を通過する際に、材料10に単純剪断が強いられる。単純剪断により、剪断前材料部40に対して強度の塑性変形が加えられて、剪断後材料部45がもたらされる。剪断前材料部40のすべてが剪断域30を通過してしまうまで、加圧器35により圧力が加えられる。図10は、材料10のすべてが剪断域30を通過したときの、剪断押出システム5の実施例を示している。次いで、材料10をマンドレル15から取り出すことができる。実施例によっては、加圧中にマンドレル15が固定される。そのような実施例の場合、加圧中にマンドレル15の動きを阻止するため十分に固定する。マンドレル15から取り出した後に得られた材料10は、マンドレル15に配置する前とおよそ同じサイズ(すなわち、およそ同じ幅と高さ)である。実施例では、材料10を1回より多くマンドレル15を通過させる。ある実施例では、材料10は多数回マンドレル15を通過する。実施例では、材料10は、材料10に望ましく均一な微細構造が実現されるまで、十分な回数、マンドレル15を通過させられる。限定されるものではないが、材料10がマンドレル15を通過する度に、材料10における均一な微細構造が向上する。実施例によっては、材料10がマンドレル15を多数回通過する場合に、マンドレル15に配置する前に潤滑が追加されることが望ましい。別の実施例(図示されていない)では、マンドレル15が1か所より多い剪断域30および/または1個より多い角度120を有している。
【0019】
実施例によっては、剪断押出システム5は、マンドレル15の通過が望ましい回数実現された後に、変形後熱処理を材料10に対して加えることを含んでいる。熱は任意の適切な方法で加えることができる。限定されるものではないが、変形後熱処理には、微細構造の所望の回復、再結晶化、軟化、または細粒化を実現するために、任意の適切な温度および継続期間が含まれてもよい。
【0020】
ある実施例では、剪断押出システム5には、所望の回数マンドレル15の通過が実現された後の、材料10の引っ張りが含まれる。引っ張りは熱処理の前および/または後にし終えることができる。限定されるものではないが、引っ張りによって材料10の直径および/または長さを調節することができる。
【0021】
図11は、剪断押出システム5の別の実施例を示すものであり、材料10が加圧器35によってマンドレル15の上からに押される。このような実施例では、材料10は中空である。
【0022】
図4a)は、剪断押出システム5の実施例の一部分を示しているが、内部マンドレル50の外部の上から材料10が押されている。このような実施例の場合、材料10は中空である。加圧器35が図示されていないのは、図解の都合のためだけである。更に、矢印は材料10が動く方向を表わしている。このような実施例の場合、内部マンドレル50は拡張角130、第二拡張角155、収縮角135、第二収縮角160、内部マンドレル剪断前領域部60、内部マンドレル剪断後拡張済領域部65、および内部マンドレル剪断後収縮済領域部70を有している。幾つかの実施例では、内部マンドレル剪断前領域部60は、内部マンドレル剪断後収縮済領域部70とほぼ同じ直径を有している。拡張角130、第二拡張角155、収縮角135、および第二収縮角160は、材料10の強度の塑性変形に適した任意の角度でよい。幾つかの実施例では、拡張角130、第二拡張角155、収縮角135、および第二収縮角160は、それぞれ約90度と約180度との間、あるいは、それぞれ約90度と約150度との間とすることができる。ある実施例では、拡張角130、第二拡張角155、収縮角135および/または第二収縮角160は、それぞれ約90度である。図示された実施例では、剪断押出システム5はウォール55を有し、材料10が内部マンドレル50とウォール55との間に配置される。幾つかの実施例では、ウォール55は材料10と同様の構成を有している。ある実施例では、ウォール55はウォール剪断前領域部140、ウォール剪断後拡張済領域部145、およびウォール剪断後収縮済領域部150を有している。実施例によっては、ウォール55は材料10の拡張とともに拡張する。図4b)および4c)に示されているような実施例の場合、ウォール55はスライディングウォール(sliding wall)である。このような実施例では、加圧器35から加えられる圧力によってウォール55は材料10とともに移動する。このような実施例では、剪断押出システム5は固定ピース165を有している。そのような固定ピースは材料10との関連で移動しない。このような実施例では、内部マンドレル50も材料10およびウォール55とともにスライドする。別の実施例(図示されていない)では、剪断押出システム5はウォール55を有していない。
【0023】
図4b)、図4c)および図5に示された実施例の動作においては、材料10は内部マンドレル50の外部上を押され、材料10の剪断前材料部40は内部マンドレル剪断前領域部60の外部沿いに進む。図5は、拡張剪断材料部75を含む剪断押出システム5の一部を示している。実施例では、材料10は潤滑および/または予熱される。ウォール55および内部マンドレル50は材料10とともに移動する。実施例では、加圧器35(図示されていない)により加えられる圧力によってウォール剪断前領域部140は剪断前材料部40と対応して平行に移動する。材料10の拡張されていない部分(剪断前材料部40)が内部マンドレル50の拡張剪断材料部75に対応する部分に接触すると、材料10はスライドしつづけ、材料10は拡張角130のあたりで拡張する。拡張剪断材料部75は、第一剪断拡張域95と第二剪断拡張域100とを有している。第一剪断拡張域95および第二剪断拡張域100(図4においては、説明の目的のためだけに、破線で示されている)は、材料10が内部マンドレル剪断前領域部60から内部マンドレル剪断後拡張済領域部65へと通過する際に、材料10に対して単純剪断が作用する場所である。第一剪断拡張域95および第二剪断拡張域100によって与えられる単純剪断により、材料10に対して強度の塑性変形が加えられる。実施例では、第一剪断拡張域95は拡張角130のあたりで材料10を横断して伸びており、第二剪断拡張域100は第二拡張角155のあたりで材料10を横断して伸びている。第一剪断拡張域95から第二剪断拡張域100への領域は拡張剪断材料部75である。
【0024】
図4b)、図4c)および図5に更に示されている実施例では、拡張剪断材料部75が材料10を拡張させた後に、材料10は移動(すなわち、スライド)しつづけ、材料10の拡張された部分(拡張済剪断後材料部80)は内部マンドレル剪断後拡張済領域部65の外部沿いに移動する。実施例では、内部マンドレル剪断後拡張済領域部65は拡張済剪断後材料部80を拡張しない(すなわち、拡張済剪断後材料部80に対して角度をなしていない)。実施例では、拡張済剪断後材料部80は剪断前材料部40より大きな直径を有している。実施例によっては、剪断後材料部80は剪断前材料部40の外径とほぼ同じ内径を有している。ウォール55および内部マンドレル50は材料10とともに移動する。ある実施例では、ウォール55および内部マンドレル50は材料10と平行に移動する。実施例では、加圧器35により内部マンドレル剪断前領域部60およびウォール剪断前領域部140の対向端に加えられた圧力により、拡張剪断材料部75から、ウォール剪断後拡張済領域部145は拡張済剪断後材料部80と対応して平行に移動する。材料10は拡張された後に取り出され、次いで収縮してもよいが、それは図4c)に示されている。
【0025】
図4b)図4c)および図7に更に示されている実施例では、材料10の拡張済剪断後部分が内部マンドレル50の収縮剪断材料部85に接触すると、材料10はスライドしつづけ、材料10は収縮角135のあたりで収縮する。収縮剪断材料部85は第一剪断収縮域105と第二剪断収縮域110とを有している。第一剪断収縮域105および第二剪断収縮域110(図4では、説明の目的のためだけに、破線で示されている)は、材料10が内部マンドレル剪断後拡張済領域部65から内部マンドレル剪断後収縮済領域部70へと進む際に材料10に対して単純剪断が作用する場所である。第一剪断収縮域105および第二剪断収縮域110により与えられる単純剪断より、材料10に対して強度の塑性変形が加えられる。実施例では、第一剪断収縮域105は収縮角135のあたりで材料10を横断して伸びており、第二剪断収縮域110は第二収縮角160のあたりで材料10を横断して伸びている。第一剪断収縮域105から第二剪断収縮域110への領域は収縮剪断材料部85である。
【0026】
図4および図7に更に示されている実施例では、収縮剪断材料部85が材料10を収縮した後、材料10は移動(すなわち、スライド)しつづけ、材料10の収縮された部分(収縮済剪断材料部90)は内部マンドレル剪断後収縮済領域部70の外部に沿って移動する。実施例では、内部マンドレル剪断後収縮済領域部70は収縮済剪断材料部90を拡張しない(すなわち、収縮済剪断材料部90と角度をなしていない)。実施例では、収縮済剪断材料部90は拡張済剪断材料部80より小さな直径を有している。実施例によっては、収縮済剪断材料部90は剪断前材料部40とほぼ同じ直径を有している。ウォール55および内部マンドレル50は対応して材料10とともに移動する。実施例では、加圧器35により内部マンドレル剪断前領域部60およびウォール剪断前領域部140の対向端に加えられた圧力により、拡張剪断材料部75から、ウォール剪断後収縮済領域部150は収縮済剪断材料部90と対応して平行に移動する。
【0027】
別の実施例(図示されていない)では、材料10は収縮され、次いで、ほぼ元の大きさに戻るように拡張される。
【0028】
限定されるものではないが、材料10とともにスライドするウォール55および内部マンドレル50により摩擦が減少するであろう。限定されるものではないが、更に、材料10とともにスライドするウォール55および内部マンドレル50により、材料10の移動も容易になる。
【0029】
実施例では、材料10は内部マンドレル50上を少なくとも1回通過させられる。ある実施例では、材料10は内部マンドレル50上を多数回通過させられる。実施例では、材料10は、材料10に望ましく均一な微細構造が実現されるまで、十分な回数内部マンドレル50上を通過させられる。限定されるものではないが、内部マンドレル50上の通過の度に、材料10における均一な微細構造が向上する。実施例によっては、材料10が内部マンドレル50上を多数回通過させられる場合に望ましいこととして、内部マンドレル剪断前領域部60上に配置する前に潤滑が追加される。別の実施例(図示されていない)では、内部マンドレル50が少なくとも一か所の拡張剪断材料部75および/または少なくとも一か所の収縮剪断材料部85を有している。実施例によっては、望ましく均一な微細構造とは実質的に均一な微細構造のことである。
【0030】
図4a)は、ウォール55が材料10とともにスライドしない剪断押出システム5の実施例を示す。図示されたような実施例では、剪断押出システム5が同じ装置に収縮と拡張とを備えている。別の実施例(図示されていない)では、ウォール55および内部マンドレル50がスライドせず、拡張および収縮が図4b)、図4c)のスライディングウォール55の実施例と類似した別々の装置で実行される。
【0031】
実施例によっては、剪断押出システム5には、内部マンドレル50上の所望の回数の通過が実現した後、材料10に対して変形後熱処理を加えることが含まれる。ある実施例では、剪断押出システム5には、内部マンドレル50上の所望の回数の通過が実現した後の材料10の引っ張りが含まれる。
【0032】
図6は、図5の説明目的の円部分から取られた、拡張剪断材料部75を含む剪断押出システム5の一部を示し、図8は、図7の説明目的の円部分から取られた、収縮剪断材料部85を含む剪断押出システム5の一部を示す。図5図6図7図8の円は、説明目的のためだけのものであり、構造的な要素を表わすものではない。図6および図8に示された実施例では、代表的な体積要素115が説明目的のためだけに示されており、収縮および拡張が材料10の要素に及ぼす影響を示している。
【0033】
実施例では、材料10は、材料10の微細構造に不規則性をもたらす、溶接部、不規則、亀裂など、任意のタイプの体積要素(すなわち、材料体積要素)を含むことができる。そのような典型的な体積要素115の強度の塑性変形によって、剪断押出システム5は材料10を通して実質的に均一な微細構造をもたらす。図9は、剪断押出システム5の断面図を示す。図示されているように、体積要素115は拡張剪断材料部75においては拡張の前には、拡張済剪断後材料部80よりも大きな粒子を有している。
【0034】
ある実施例では、剪断押出システム5の応用の一例が、超電導高周波(SRF)空洞に形成された高RRRの純ニオブ(Nb)チューブを含んでいる。実施例では、高RRR純ニオブチューブが材料10である。剪断押出システム5を高RRR純ニオブチューブに適用することにより、均一で一貫した微細構造を備えた製品(SRF空洞)が提供される。実施例では、SRF空洞は、端と端を結合した多くの空洞ストリングからなる荷電粒子加速器に用いることができる。限定されるものではないが、空洞ストリングに形成されたチューブが一貫した微細構造を有し、その結果、SRG空洞形状に形成した後に空洞が一貫したジオメトリを有するのは好ましいであろう。実施例では、そのようなチューブは、SRF空洞形状に拡張するのに特に適したテクスチャを有することができる。
【0035】
本発明およびその利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく様々な変更、置換、および修正を行なうことができる。
【符号の説明】
【0036】
5:剪断押出システム、10:材料、15:マンドレル、20:マンドレル剪断前領域部、25:マンドレル剪断後領域部、30:剪断域、40:剪断前材料部、45:剪断後材料部、50:内部マンドレル、55:ウォール、60:内部マンドレル剪断前領域部、65:内部マンドレル剪断後拡張済領域部、70:内部マンドレル剪断後収縮済領域部、75:拡張剪断材料部、80:拡張済剪断後材料部、85:収縮剪断材料部、90:収縮済剪断材料部、140:ウォール剪断前領域部、145:ウォール剪断後拡張済領域部、150:ウォール剪断後収縮済領域部、165:固定ピース
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11