特許第6346265号(P6346265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6346265DNAインターカレーティング剤の細胞送達
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346265
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】DNAインターカレーティング剤の細胞送達
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20180611BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20180611BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20180611BHJP
【FI】
   A61K47/34ZNA
   A61K47/42
   !A61K39/395 C
   !A61K39/395 L
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-504344(P2016-504344)
(86)(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公表番号】特表2016-523811(P2016-523811A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】US2014031192
(87)【国際公開番号】WO2014153394
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年2月9日
(31)【優先権主張番号】61/803,863
(32)【優先日】2013年3月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510099866
【氏名又は名称】ジェニスフィア・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】517043804
【氏名又は名称】ランケノー インスティテュート フォー メディカル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ,ロバート シー.
(72)【発明者】
【氏名】カドゥシン,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク−ヴァインシュタイン,ミンディ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト,ジャクリン
(72)【発明者】
【氏名】ディルグジェリ,エマニュエラ
(72)【発明者】
【氏名】ローズ,ケリー
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−195613(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/147526(WO,A1)
【文献】 MICROSUGAR CHANG,ACS NANO,2011年 8月23日,V5 N8,P6156-6163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 9/00
A61K 31/00
A61K 48/00
A61K 39/395
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体的または部分的に二本鎖の合成DNA担体と、前記DNA担体に連結された標的化剤と、前記DNA担体の二本鎖部分にインターカレートされた活性剤とを含み、前記標的化剤が、G8抗原に結合する抗体またはペプチドである
細胞または組織への活性剤の送達のための組成物。
【請求項2】
前記二本鎖DNAが、5塩基対を超える長さである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性剤が、水素結合を通して前記二本鎖DNAにインターカレートされている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記合成DNA担体がDNAデンドリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記DNAデンドリマーが、3〜216のハイブリダイズされたDNAの一本鎖を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記活性剤が、化学療法薬、抗感染剤、抗マラリア剤、抗ウイルス剤および抗真菌剤からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記活性剤が、ベルベリン、アクリジン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、シスプラチン、カルボプラチンまたはサリドマイドである、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物と、医薬的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項9】
細胞または組織に活性剤を送達するためのDNA担体を作製する方法であって、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドを構築して全体的または部分的に二本鎖のDNAを形成させること、標的化剤を前記全体的または部分的に二本鎖のDNAに連結させること、および前記全体的または部分的に二本鎖のDNAを活性剤と接触させて、前記活性剤を前記DNAの二本鎖部分にインターカレートさせることを含み、前記標的化剤が、G8抗原に結合する抗体またはペプチドである、方法。
【請求項10】
前記全体的または部分的に二本鎖のDNAを前記活性剤と接触させると同時に、前記一本鎖DNAオリゴヌクレオチドが構築される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記全体的または部分的に二本鎖のDNAを、構築の後に前記活性剤と接触させる、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記活性剤と接触させる前に、前記標的化剤前記全体的または部分的に二本鎖のDNAに連結している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
細胞または組織を、請求項8に記載の医薬組成物と接触させることによって活性剤を前記細胞または組織に送達する方法において使用するための請求項8に記載の医薬組成物
【請求項14】
請求項8に記載の医薬組成物を前記患者に投与することによって患者における疾患または状態を処置する方法において使用するための請求項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
細胞または組織への活性剤の送達のための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
患者における疾患または状態を処置するための、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性剤が担体のDNAにインターカレートしているDNA担体を用いた、該活性剤の細胞への送達に関する。該DNA担体は、該DNA担体を特定の細胞型に結合させる標的化剤をさらに含むことができ、それによりインターカレートされた活性剤の細胞への送達を促進することができる。
【背景技術】
【0002】
活性剤とDNAの間の非共有結合性相互作用は、一般に、グルーブバインディングまたはインターカレーションのいずれかにより起こる。特に抗癌治療の分野から、インターカレーションというDNA塩基対の間に平面の薬物分子を挿入することを含む工程により、DNAと相互作用する複数の化学療法薬が製造された。これにより、DNAのらせん反転および伸長の減少が得られる。インターカレーションの会合定数は、好適な疎水性結合、イオン結合、水素結合およびファンデルワースル力により10〜10−11−1になり得る。インターカレーションは、一般に、縮合環構造に関連づけられるが、非縮合環系も公知である。インターカレーションは、特に塩基性、陽イオン性または電子吸引性官能基が存在する場合にはほとんどが遺伝毒性であるため、抗腫瘍剤、抗悪性腫瘍剤、抗マラリア剤、抗生物質剤および抗真菌剤としてのこれらの化合物の有効な使用に大きく貢献するものと認識されている。
【0003】
DNAデンドリマーは、相互に連絡した天然または合成モノマーオリゴヌクレオチドサブユニットから組み立てられる複雑で高度に分岐した分子である。DNAデンドリマーは、それぞれが2つのDNA鎖から生成されたDNAモノマーから構築されており、DNA鎖は各鎖の中心部分(「ウエスト」としても公知)に位置する配列相補性の領域を共有しているが、他のモノマーの「アーム」へのハイブリダイゼーションのために4つの非相補性の一本鎖「アーム」を有する。モノマーは、単一モノマーから開始して、相補性アームを介してさらなるモノマーにハイブリダイズして、デンドリマーに構築される。同様の手法で、それまでの層の中のモノマーアームにモノマーがハイブリダイズすることにより、さらなる層が付加される。層の数の変動、およびどのアームがさらなるモノマーにハイブリダイズするかにより、異なるサイズおよび形状のDNAデンドリマーが生成される。DNAデンドリマーが経時的に崩壊するのを防ぐために、ソラレン架橋剤のインターカレーションおよび活性化を介し、UV光を利用して、化学的「点溶接部」を成長している構築物に付加することができる。デンドリマーは、典型的には超遠心分離後のショ糖勾配を変性させる際に、デンドリマーのサイズおよび分子に応じて精製させる。
【0004】
DNAデンドリマーは、一般には外層上に存在するハイブリダイズされていないアームへの連結を介して、非常に多様な異なるタイプの分子および粒子に共有結合または非共有結合することもできる。これらの分子および粒子は、特異的分子ターゲットへのDNAデンドリマーの標的化およびシグナリング分子の検出を介したターゲットへのデンドリマーの結合の検出を可能にする、DNAデンドリマー上のシグナリングおよびターゲティングデバイスであってもよい。シグナる発生部分としては、多数の蛍光色素、ハプテン、酵素および他の分子材料、ならびに金ナノ粒子および量子ドットなどの粒子が挙げられる。ターゲティングデバイスとしては、DNA、RNAおよびPNAオリゴヌクレオチド、抗体、抗体フラグメント、ハプテン、アプタマー、ペプチドなどが挙げられる。モノマーの外層は、多くのハイブリダイズされていないアームを含むため、DNAデンドリマー構築物は、一般には特異的核酸およびタンパク質の検出のために、非常に多様なインビトロ適用においてシグナル増強剤として作用するが、電子デバイス内の検出デバイスとしても作用する。適用例としては、DNAおよびタンパク質マイクロアレイ、ELISAおよびELOSA、ルミネックスビーズアッセイ、インサイチュハイブリダイゼーションなどでのシグナル増強剤が挙げられる。標識および標的化されたDNAデンドリマーの使用は、調査研究において広範に発表されており、これらの材料は、Genisphere LLC(ペンシルバニア州ハットフィールド所在)により販売または製造される市販の検査用製品として入手できる。
【0005】
DNAデンドリマーは、インビトロおよびインビボの両方の適用において送達およびトランスフェクションデバイスとしての潜在的用途を有することも示されている。例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2005/0089890号、WO2008/147526号およびWO2010/017544号を参照されたい。特にDNAデンドリマーは、運搬物(例えば、薬物)の送達を受けるように標的化された細胞上の表面形状に結合する標的化デバイス(例えば、細胞内エンドサイトーシス性内在化イベントを誘発し得る細胞表面形状に特異的な抗体)と結合する。標的化されたDNAデンドリマーと受動的に会合する運搬物は、単にデンドリマーとの空間的会合により細胞に侵入するが、運搬物は、外側のアームへの連結など、複数の付着方策を介してデンドリマーに結合することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、DNA担体を用いた、活性剤の細胞への改善された送達方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
DNA担体は、少なくとも一部が二本鎖形態であるDNAと、二本鎖DNA内にインターカレートする活性剤と、を含む。特定の実施形態において、DNA担体は、活性剤が送達される分子、細胞、または組織に結合する標的化剤も含む。特別な実施形態において、DNA担体は、DNAデンドリマーであり、DNAデンドリマーの二本鎖部分にインターカレートされる活性剤を有する。標的化される分子、細胞または組織へのDNA担体の結合の際に、デンドリマーは、細胞によりエンドソームに内在化され、エンドソームの酸性pHがDNAからの活性剤放出を促進して、細胞毒性作用または他の生物学的作用を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】LYSOSENSOR色素による生存細胞の標識を示す。
図1B】内在化されたデンドリマーを含む細胞を示す。
図1C図1Aおよび1Bの結合画像であり、デンドリマーが細胞の酸性コンパートメントに内在化されていることを示している。
図2図2図Dは、実施例2の結果を示している:非処置細胞(図2A)、非標的化Doxデンドリマー(図2B)、G8 mAbがコンジュゲートされたDoxデンドリマー(図2Cおよび2D)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本発明の複数の模範的実施形態を記載する前に、本発明が以下の説明に示された構築物または工程ステップの詳細に限定されないことが理解されなければならない。本発明は、他の実施形態で可能であり、様々な方法で実践または実行することが可能である。
【0010】
本明細書全体を通して参照される「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」または「実施形態」は、その実施形態と併せて記載された特別な特色、構造、材料または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。つまり、本明細書全体の様々な箇所にある「1つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」または「実施形態において」は、必ずしも本発明の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特別な特色、構造、材料または特性が1つ以上の実施形態において任意の適切な手法で組み合わせられていてもよい。
【0011】
第一の態様において、本発明は、インターカレートしている活性剤の細胞または組織への送達のための合成DNA担体であって、該DNAが、全体的または部分的に二本鎖であり、該DNAが、該DNAの二本鎖部分にインターカレートされた活性剤を含む、合成DNAに関する。該合成DNA担体のオリゴヌクレオチド成分は、直鎖状または分枝状オリゴヌクレオチドであってもよい。DNA担体の各二本鎖DNA部分は、5bp長以上、例えば約20〜35bp、約35〜50bp、約50〜100bp、または約100〜200bpである。合成DNA担体は、インビトロで構築され、好ましくは活性剤の負荷量を増加させるために複数の二本鎖部分を含む。複数の二本鎖部分を含む合成DNA担体の例としては、DNAデンドリマーが挙げられる。合成DNA担体が、直鎖状オリゴヌクレオチドを含む場合、該オリゴヌクレオチドは、1つの二本鎖部分または複数の二本鎖部分を含んでいてもよい。DNA担体内のそのような直鎖状オリゴヌクレオチドの全長は、典型的には少なくとも10nt、例えば10〜20nt長、10〜50nt長、10〜80nt長、10〜150nt長、または10〜200nt長である。
【0012】
一実施形態において、合成DNA担体は、DNA担体を選択された細胞または組織タイプに結合させるために該選択された細胞または組織タイプに結合する標的化剤をさらに含んでいてもよく、それにより選択された細胞または組織への活性剤の送達が促進される。選択された細胞または組織タイプへの標的化剤の結合は、細胞表面タンパク質または細胞表面受容体への標的化剤の結合を介していてもよい。適切な標的化剤としては、細胞表面タンパク質または細胞表面受容体に結合する抗体、リガンドまたはペプチドが挙げられる。標的化剤は、典型的には共有結合または非共有結合のいずれかでDNAデンドリマーに連結する(例えば、標的化剤を、デンドリマーアームに相補性のオリゴヌクレオチドに連結させて、デンドリマーアームにハイブリダイズする)。
【0013】
標的化剤により標的化され得る細胞表面受容体およびタンパク質の例としては、トランスフェリン受容体(TfR/CD71)、HIV−1エンベロープ糖タンパク質(Env)、抗マラリア剤マーカ、および葉酸受容体が挙げられる。好ましくは細胞表面受容体またはタンパク質は、感染、損傷もしくは疾患を受けた細胞上で特異的に発現されるか、または感染、損傷もしくは疾患を受けた細胞上で過剰発現される。標的化剤の具体的例としては、抗トランスフェリン抗体またはTfR標的化ペプチド、例えばトランスフェリン受容体に結合し、様々な癌で過剰発現されるTHRPPMWSPVWP(配列番号:l)が挙げられる。例として、標的化剤は、Myo/Nog細胞の表面で見出されるおよそ170kDaの部分に結合するG8モノクローナル抗体、およびその誘導体であってもよい。Myo/Nog細胞は、骨格筋特異性転写因子MyoD、骨形成タンパク質(BMP)阻害剤ノギン、および細胞表面G8エピトープのためにmRNAの発現により同定される。有用な標的化部分の他の例としては、PDGF受容体、EGFRファミリー受容体、ICAM、CD受容体、MMP−9、インターロイキン受容体、葉酸受容体、および当該技術分野で公知の他のものに結合するものが挙げられる。
【0014】
別の実施形態において、該DNA担体の二本鎖部分にインターカレートされる活性剤は、化学療法薬、抗感染剤、抗マラリア剤、および抗ウイルス剤または抗真菌剤である。そのような薬剤の具体的例としては、ベルベリン系薬剤(抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤)、アクリジン系薬剤(例えば、プロフラビンまたはキナクリン、消毒薬)、癌化学療法薬(例えば、ダウノマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、ボレロキシン)、クリプトレピン(抗マラリア性細胞毒性剤)、およびサリドマイド(多発性骨髄腫の処理)が挙げられる。
【0015】
前述の実施形態のいずれかにおいて、該DNA担体は、二層、四層、六層または八層DNAデンドリマーをはじめとするDNAデンドリマーを含んでいてもよい。該DNAデンドリマーのサイズは、必要に応じて、細胞および組織への活性剤の送達(例えば、循環系または局所注射を介して)を促進するため、および細胞によるDNA担体の取り込みを最大にするために選択される。一般に該DNA担体は、約3〜216のオリゴヌクレオチド一本鎖を含む。
【0016】
第二の態様において、本発明は、前述の実施形態のいずれかにおけるDNA担体と、少なくとも1種の医薬的に許容し得る賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。該医薬的に許容し得る賦形剤は、患者、細胞または組織への投与のためにDNA担体を配合して、治療的または他の生物学的結果を実現するために用いられ得る任意の適切なビヒクルである。該賦形剤は、二本鎖DNAと適合性があり(即ち、それらは、選択された細胞または組織への送達前にDNA担体を変性させない)、加えて活性剤と、そして存在するならば標的化剤と適合性があるそれらの賦形剤から選択される。そのような医薬的賦形剤としては、生理学的緩衝剤、糖類およびオリゴ糖、安定化剤、増粘剤、滑沢剤、ワックス、キレート化剤、界面活性剤、希釈剤、抗酸化剤、結合剤、防腐剤、着色剤、乳化剤、脂質ミセル、または医薬配合剤の他の従来の構成成分が挙げられる。特定の実施形態において、該医薬組成物は、例えば注射または輸液により、患者に非経口送達されるように配合されている。この場合、該DNA担体が循環から所望の細胞または組織タイプに向かうように、該DNA担体が標的化剤を含むことが望ましい。他の実施形態において、該医薬組成物は、活性剤の送達が望ましい細胞または組織への経口投与または局所投与に適合されていてもよい(例えば、局所配合剤)。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、前述の実施形態のいずれかに記載されたDNA担体を作製する方法に関する。一実施形態において、該DNA担体は、一本鎖DNAをハイブリダイズして全体的または部分的に二本鎖のDNAを形成させること、および活性剤を該二本鎖部分にインターカレートさせる条件下で、全体的または部分的に二本鎖のDNAを活性剤と混和すること、により構築される。余分な活性剤は、例えばクロマトグラフィーにより、除去されて、DNA担体を生成する。具体的な実施形態において、余分な活性剤を除去するクロマトグラフィーは、スピンカラムを用いて実施される。
【0018】
別の実施形態において、該活性剤は、一本鎖DNAのハイブリダイゼーションの間にDNA担体に組み込まれて、全体的または部分的に二本鎖のDNAを構築した後、先に記載された通り余分な活性剤を除去することができる。
【0019】
さらなる実施形態において、DNA担体を作製する方法は、DNAデンドリマーの構築、活性剤を該DNAデンドリマーの二本鎖部分にインターカレートさせる条件下で、DNAデンドリマーを活性剤と混和すること、および余分な活性剤を、例えばクロマトグラフィー(例えば、スピンカラム)により、除去すること、を含む。
【0020】
DNA担体が標的化剤と連結された具体的な実施形態において、該DNA担体は、一本鎖DNAから構築されて全体的または部分的に二本鎖のDNAを形成し、標的化剤は、構築されたDNAに連結される。DNAへの標的化剤の連結は、当該技術分野で公知の通り共有結合での付着により遂行されていてもよく、またはそれはハイブリダイゼーションなどの非共有結合的連結であってもよい。そのような方法としては、例えばジスルフィド結合を介した連結、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル依存性縮合反応、二官能基性架橋、電荷−電荷相互作用を介して標的化剤をDNA担体に架橋するためのポリカチオン性化合物の使用、またはWO2010/017544号に記載される通りDNA担体への直接的もしくは間接的ハイブリダイゼーションが挙げられる。例えば一本鎖のキャプチャーオリゴヌクレオチドが、DNAデンドリマーのアームに付加され、該キャプチャー配列に相補性の一本鎖オリゴヌクレオチドが、標的化剤に連結される。標的化剤の相補配列が、DNAデンドリマーのキャプチャー配列にハイブリダイズされて、標的化剤をDNAデンドリマーに連結させる。ハイブリダイズされたキャプチャーおよび相補配列は、場合により架橋されてもよい。該活性剤は、全体的もしくは部分的に二本鎖のDNAの構築の際、またはDNA担体への標的化剤の連結の後に、DNA担体に組み込まれてもよい。標的化剤が、先に記載された通りキャプチャー配列を介してDNA担体にハイブリダイズされると、連結により形成された二本鎖DNAも、活性剤をインターカレートすることができる。
【0021】
標的化剤に連結されたDNA担体を作製する別の実施形態において、一本鎖オリゴヌクレオチドが、最初のステップにおいて標的化剤に付着され、その後、相補的な一本鎖オリゴヌクレオチド配列にハイブリダイズされて、DNA担体の全体的または部分的に二本鎖のDNAを形成させる。
【0022】
DNA担体を作製する前述の方法のいずれかにおいて、DNAデンドリマーは、例えばT. W. Nilsen, et al. J. Theor. Biol. (1997) 187, 273−284に記載される通り、当該技術分野で公知の方法のいずれかにより構築されてもよい。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、活性剤を細胞または組織に送達する方法であって、該細胞または組織を、前述の実施形態のいずれかによるDNA担体と接触させて、DNA担体を細胞に取り込ませ、該活性剤を細胞内部で放出させて細胞への細胞毒性または他の生物学的作用を生成することを含む、方法に関する。該細胞または組織をビンビボまたはインビトロでDNA担体と接触させてもよい。細胞をインビトロでDNA担体と接触させる場合、細胞は、典型的には細胞培養されており、DNA担体は、その培地に添加され、細胞表面への結合を可能にする期間、細胞と共にインキュベートされて、余分なDNA担体が除去される。活性剤のエンドサイトーシスおよび放出に十分な期間の後、細胞に対する活性剤の細胞毒性または生物学的活性を、顕微鏡で視覚化することができる。細胞をインビボでDNA担体と接触させる場合、所望の作用部位への注射、輸液、局所投与を介して、または他の適切な方法により、細胞表面への結合およびエンドサイトーシスを可能にする期間、DNA担体を患者または動物へ投与する。細胞内に放出される活性剤の細胞毒性または生物学的活性は、生理学的応答をモニタリングすることにより、または罹患した組織の試料の顕微鏡検査により決定することができる。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、細胞または組織への活性剤の前述のインビボ送達方法を利用して、DNA担体を、必要とする患者に送達することにより、疾患または状態を処置する方法に関する。処置の特異性に関して、標的化剤は、一般に、細胞毒性または他の生物学的活性が望ましい細胞型にとって特異的であるように選択される。活性剤は、処置される疾患または状態に対して治療活性であるように選択され、DNA担体は、疾患または状態の症状を処置、治癒または改善するのに十分な量および期間、患者に投与される。DNA担体の投与により処置可能な疾患および状態としては、二本鎖DNAにインターカレートする活性剤が利用可能な任意の疾患または状態が挙げられる。非限定的例としては、癌、マラリア、真菌性疾患、ウイルス性疾患、線維性疾患などが挙げられる。
【0025】
処置を実行するために、合成DNA担体を、例えば組織または細胞への外用または注射により、処置される組織または細胞に局所投与してもよい。あるいは合成DNA担体を、例えば静脈注射もしくは輸液により、または経口投与により、全身投与してもよい。いずれかの実施形態において、存在するならばDNA担体に連結された標的化剤が、処置される細胞型へのDNA担体の結合、およびその細胞型への活性剤の送達を促進する。
【0026】
具体的な実施形態において、G8エピトープを標的化するモノクローナル抗体に連結されたDNAデンドリマーと、DNAをインターカレートするサイトトキシンと、を含むDNA担体の投与により、後嚢混濁(PCO)が予防されるか、またはその発症率が低下する。PCOは、白内障手術後の特定の成人および小児に起こり、水晶体上皮細胞および筋線維芽細胞が分化することにより発症して、水晶体を取り囲む嚢の透明性に影響を及ぼす。現在、PCOを予防するための有効な処置はない。ヒト水晶体組織内の筋線維芽細胞が、骨格筋特異性転写因子MyoD、骨形成タンパク質(BMP)阻害剤ノギン、およびG8モノクローナル抗体(mAb)により認識される細胞表面分子、を発現するMyo/Nog細胞を起源とすることが発見された。白内障手術を受けた患者から得たヒト水晶体組織の組織片培養におけるMyo/Nog細胞のディプリーションが、標的化剤としてのG8 mAbおよびインターカレートされたドキソルビシンを用いて、それらの細胞を本発明によるDNA担体(DNAデンドリマー)で溶解することにより完遂された。Myo/Nog細胞は、以下の実施例に示す通り、特異的に排除された。このデータから、経時的な筋線維芽細胞の蓄積が予防されるであろうことも、推定することができる。
【0027】
実施例
実施例1:横紋筋肉腫細胞におけるG8 mAbコンジュゲートデンドリマーの内在化
細胞
二層DNAデンドリマーの調製:DNAデンドリマーは、過去に開示された通り製造した(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる、特許明細書第5,175,270号、同第5,484,904号、同第5,487,973、同第6,110,687号および同第6,274,723号参照)。簡潔に述べると、各DNA鎖の中心部分に相補的に配置された配列の一領域を共有する2つのDNA鎖から生成されたDNAモノマーから、DNAデンドリマーを構築した。2つの鎖をアニーリングしてモノマーを形成するが、得られた構造は、4つの一本鎖「アーム」に隣接する中央の二本鎖「ウエスト」を有すると説明することができる。このウエスト+アーム構造は、塩基性の3DNA(登録商標)モノマーを含む。5つのモノマータイプそれぞれの端部にある一本鎖アームは、精密で特殊な方法により互いに相互作用するように設計されている。相補性モノマーのアームの間の塩基対合が、モノマー層の連続付加を通してデンドリマーの定方向の構築を可能にする。デンドリマーの各層の構築は、DNA鎖が互いに共有結合する架橋工程を含み、それにより別の方法ではデンドリマー構造の変形を引き起こす変性条件に耐える完全に共有結合の分子を形成する。加えて、相補性キャプチャーオリゴとして働く38塩基のオリゴヌクレオチドが、以下に示す通り、簡単なT4 DNAリガーゼ依存性ライゲーション反応により、利用可能なデンドリマーアームの5’末端にライゲートされる。
【0028】
DNAデンドリマーへのキャプチャー配列の付着:G8モノクローナル抗体(G8 mAb)をDNAデンドリマーに付着させるために、キャプチャー配列を、最初、デンドリマーアームの10〜15%にライゲートさせた。このキャプチャー配列への相補性オリゴヌクレオチドを、市販の化学薬品(Solulink, www.solulink.com)を用いてG8モノクローナル抗体にコンジュゲートして、利用可能なキャプチャー配列の全てを占有するモル比でハイブリダイズさせた。以下に要約する通り、デンドリマー分子あたりおよそ2〜5個のG8 mAbを付着させた。
【0029】
デンドリマーアームおよびキャプチャーオリゴヌクレオチドの隣接部分を重複させる架橋オリゴヌクレオチドを使用した簡単な核酸ライゲーション反応により、低分子(15〜100ヌクレオチド)DNAまたはRNAキャプチャーオリゴヌクレオチド(または他の生化学的類似体)をデンドリマーアームの末端に共有結合させて、それによりキャプチャーオリゴヌクレオチドをデンドリマーアームの末端に架橋させた。架橋したオリゴヌクレオチドは、核酸リガーゼ酵素(好ましくはT4 DNAリガーゼ酵素)のライゲーション活性を促進するために、隣接するデンドリマーアームおよびキャプチャーオリゴヌクレオチド配列のそれぞれの少なくとも5塩基を重複させたが、各配列の少なくとも7塩基の重複が好ましい。架橋したオリゴヌクレオチドは、デンドリマーが非デンドリマー核酸または他の分子の特異的標的化に用いられる場合には、その相補配列の核酸ブロッカーとして作用することもできる。
【0030】
以下の成分をマイクロ遠沈管に添加した:
1.1×TE緩衝液 5.4μL(2680ng)中の二層DNAデンドリマー(500ng/μL)
2.a(−)LIG−BR7架橋オリゴ(14マー)(50ng/μL) 2.7μL(134ng)
3.10× リガーゼ緩衝液 10.2μL
4.ヌクレアーゼ不含水 81.7μL
5.Cap03キャプチャーオリゴ(38マー)(50ng/μL) 4.0μL(200ng)
6.T4DNAリガーゼ(1U/μL) 10.0μL(10単位)
【0031】
最初の4つの反応体を一緒に添加し、65℃に加熱後、室温に冷却した。その後、5番目と6番目の反応体を添加し、45分間インキュベートした。0.5M EDTA溶液2.8μLを添加して、ライゲーション反応を停止させた。100kカットオフ遠心式フィルター(Millipore Corp.)の使用により、ライゲートされていないオリゴヌクレオチドを除去し、精製洗浄の間に、緩衝液を1×滅菌PBS,pH7.4に交換した。キャプチャーオリゴヌクレオチドは、デンドリマーの最初の一本鎖表面アームに連結する。
【0032】
DNAデンドリマーの抗体付着および蛍光標識:細胞表面を標的化して内在化を開始するために、G8モノクローナル抗体をDNAデンドリマーに連結させた。G8モノクローナル抗体は、予めデンドリマーにライゲートされたキャプチャー配列に相補性のオリゴヌクレオチドに共有結合により付着させた。手短に述べると、キャプチャー配列相補体(cplCap03) 5’−TTCTCGTGTTCCGTTTGT ACTCTAAGGTGGATTTTT−3’(配列番号:2)を、市販の化学薬品を用いて、3’末端によりG8モノクローナル抗体(Solulink)に共有結合させ、HPLCにより精製して余分な試薬を除去した。これらのコンジュゲートを、その後、試薬の最終的な構築の間にデンドリマーキャプチャー配列にハイブリダイズさせた(以下の3DNA調製の節を参照)。加えて、DNAデンドリマーの外表面のアームに相補性の合成オリゴヌクレオチド(IDT Technologies)を、3’および5’末端にそれぞれ1つずつとし、2つの蛍光標識(Cy3)を有するように調製した。このオリゴヌクレオチドを、その後、先に調製されたG8 mAb標的デンドリマーの外側のアームに、オリゴヌクレオチド18モル対DNAデンドリマー1モルの量でハイブリダイズした。G8 mAb標的化Cy3で標識したDNAデンドリマーを、横紋筋肉腫細胞による標的化および内在化試験に用いた。
【0033】
横紋筋肉腫細胞におけるCy3標識デンドリマーをコンジュゲートされたG8モノクローナル抗体の内在化
ヒト胎児型および胞巣型横紋筋肉腫細胞(ATCCの細胞株136および2061)を、培地8mlが入った100nm組織培養皿中のガラス製カバースリップ(12カバースリップ/プレート)上で24時間培養した。136細胞株は、10%ウシ胎仔血清を含むDMEMで培養した。2061細胞株は、10%FBSを含むRPMIで培養した。カバースリップを以下の培地1mlを含有する35mm組織培養皿に移した(2枚カバースリップ/皿):
1.2μM希釈標準溶液に1:500希釈されたLysoSensor Green DND 189原液(1mM)(Molecular Probe/Invitrogen)を含む培地
2.2μM LysoSensor+1:75希釈されたG8:4n デンドリマー−Cy3を含む培地
【0034】
細胞を空気中の5%CO中、37℃で1時間インキュベートした。細胞を37℃のPBSですすぎ、2%パラホルムアルデヒド中で10分間固定した。細胞を落射蛍光顕微鏡測定により視覚化した。様々な希釈およびインキュベーション時間を、テストした。1時間インキュベートされた1:500LysoSensor+1:75 G8:デンドリマーが、最良の結果をもたらした。結果を図1A図1Bおよび図1Cに示すが、それらは横紋筋肉腫細胞において標識されたデンドリマーの内在化成功を示している。図1Aは、酸性pHで緑色蛍光を発するLYSOSENSOR色素で標識された細胞を示す(図1Aでは細胞内の黒いスポットに集まっている)。図1Bは、細胞内のCy3標識デンドリマーからの赤色蛍光を示す(図1Bでは細胞内の黒いスポットに集まっている)。図1Cは、図1Aおよび1Bの結合画像であり、緑色シグナルと赤色シグナルの共局在化を示し黄色として視覚化されており、図1Cでは細胞内の矢印により示された黒いスポットとして示されている。これらの結果から、DNAデンドリマーに連結されたG8 mAbが細胞の酸性コンパートメント(即ち、リソゾーム)に内在化されることが確認される。
【0035】
実施例2:Myo/Nog細胞の標的化ディプリーション
二層DNAデンドリマーの調製:二層DNAデンドリマーを、実施例1に記載された通り付着されたキャプチャー配列を用いて調製した。キャプチャー配列を、デンドリマーアームの10〜15%にライゲートさせた。
【0036】
DNAデンドリマーへのG8 mAbの付着:G8モノクローナル抗体(G8 mAb)を、同じく実施例1に記載された通りDNAデンドリマーに付着させた。最初に、キャプチャー配列に相補性のオリゴヌクレオチド(cplCap03)の3’末端を、市販の化学薬品(Solulink, www.solulink.com)を用いてG8モノクローナル抗体にコンジュゲートした。コンジュゲートをHPLCにより精製して、余分な試薬を除去した。キャプチャー配列およびそのキャプチャー配列の相補体を、その後、利用可能なキャプチャー配列の全てを占有するモル比でハイブリダイズさせた。以下に要約する通り、デンドリマー分子あたりおよそ2〜5個のG8 mAbを付着させた。
【0037】
ドキソルビシン二本鎖オリゴヌクレオチドG8抗体の調製:G8 mAbオリゴヌクレオチドコンジュゲート(先に調製された通り)1.282μgを、相補性オリゴヌクレオチド配列(配列番号:2)1.282μgおよび200μM Dox溶液 1500μlと混和し、以下の表に従って滅菌1×PBSを用いて、最終容量を3000μlに調整した。混合物を37℃で30分間インキュベートした。3mL溶液中のDoxの最終濃度は、100μMであった。Quickspin High Capacity Sephadex G50カラム(Roche)を用い、製造業者のプロトコルに従って試薬を精製した。5M NaCl(Life Technologies)16μlを添加して、86mM NaCl濃度を得た。最終的なドキソルビシンを、蛍光分析法により決定した。
【表1】
【0038】
ドキソルビシン二層デンドリマーの調製(標的化なし):二層Cap 03デンドリマー(3μg)を、200μM Dox溶液 1500μlと混合し、以下の表に従って滅菌1×PBSを用いて、最終容量を3000μlに調整して、37℃で30分間インキュベートした。3mL溶液中のDoxの最終濃度は、100μMであり、最終的なデンドリマー濃度は、10ng/μlであった。Quickspin High Capacity Sephadex G50カラム(Roche)を用い、製造業者のプロトコルに従って試薬を精製した。5M NaCl(Life Technologies)16μlを添加して、86mM NaCl濃度を得た。最終的なドキソルビシンおよびデンドリマー濃度を、蛍光分析法およびUV/Vis分光法により決定した。
【表2】
【0039】
ドキソルビシン二層G8標的化デンドリマーの調製:二層Cap 03デンドリマー(3μg)を、G8 mAbオリゴヌクレオチドコンジュゲート(先に調製された通り)1.282μlおよび200μM Dox溶液 1500μlと混合し、以下の表に従って滅菌1×PBSを用いて、最終容量を3000μlに調整した。混合物を37℃で30分間インキュベートした。3mL溶液中のDoxの最終濃度は、100μMであり、最終的なデンドリマー濃度は、10ng/μlであった。Quickspin High Capacity Sephadex G50カラム(Roche)を用い、製造業者のプロトコルに従って試薬を精製した。5M NaCl(Life Technologies)16μlを添加して、86mM NaCl濃度を得た。最終的なドキソルビシンおよびデンドリマー濃度を、蛍光分析法およびUV/Vis分光法により決定した。
【表3】
【0040】
ドキソルビシンをインターカレートされたDNAデンドリマーをコンジュゲートされたG8モノクローナル抗体によるヒト水晶体組織中のMyo/Nog細胞の標的化:白内障手術の際に嚢切開により除去されたヒト前部水晶体組織を、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(DF)を含むDMEM/F12培地に採取した。水晶体組織を、以下のものを含むDF 240μlを含む8ウェルチャンバー組織培養スライドに移した:
1.添加なし
2. G8Ab/Cap03オリゴ/CPL −Dox DFに1:8希釈された
3. 二層G8 Ab/Cap03オリゴ/Cplオリゴ − DFで1:8に希釈
4. 二層Cap03 − DF中に1:8に高度に希釈
【0041】
レンズがスライドの底に沈むまで、レンズをチャンバー内で浮遊させた。レンズを空気中の5%CO中、37℃で24時間培養した。組織をPBSですすぎ、2%パラホルムアルデヒドで10分間固定し、その後、G8抗体およびAlexa488でコンジュゲートされた抗マウスIgMと、ローダミンチャネルの下で蛍光を発するROCHE TUNELキットの試薬で二重標識した。
【0042】
G8+およびTUNEL+細胞の割合、TUNELを含むG8+細胞の割合、ならびにG8を含むTUNEL+細胞の割合を、落射蛍光顕微鏡測定により決定した。結果を、以下の表に示す:
【表4】
【0043】
未処置培養物では、1%未満の細胞がTUNEL+であった(図2A)。加えて、Doxのみを含むデンドリマー(DNA:DOX)は、赤色の染色がないことから示される通り、Myo/Nog細胞またはG8陰性水晶体細胞(図2B)においてアポトーシスを誘導しなかった。しかし、Doxを含むG8 mAbにコンジュゲートされたデンドリマー(G8:DNA:DOX)は、Myo/Nog細胞にアポトーシスを特異的に誘導した(図2Cおよび図2Dは異なる数の陽性細胞を含む培地の2つの異なる区分を示す)。G8含有細胞は緑色に染色され、アポトーシスを受けた細胞(TUNEL+)は、赤色に染色される。図2CのTUNEL+細胞(赤色)は、黒色のスポットにより示され、図2DのTUNEL+細胞(赤色)は、濃灰色のスポットにより示される。小さな黒色の斑点は、緑色に染色されたG8含有細胞である。
【0044】
Doxにインターカレートされた二本鎖オリゴにコンジュゲートされたG8 mAbもまた、Myo/Nog細胞内にアポトーシスを特異的に誘導した(データを示さない)。
【0045】
実施例3:膵臓腫瘍細胞の標的化ディプリーション
二層DNAデンドリマーの調製:二層DNAデンドリマーを、デンドリマーアームの10〜15%へのキャプチャー配列の付着をはじめとし、実施例1に記載された通り調製する。
【0046】
G8 mAbの代わりに、トランスフェリン受容体(TfR/CD71)標的化ペプチドTHRPPMWSPVWP(TfRペプチド、配列番号:1)をデンドリマーに連結させる。キャプチャー配列に相補性のcplCap03オリゴヌクレオチドを、市販の化学薬品(Bio−Synthesis, www.biosyn.com)を用いてTfRペプチドの3’末端により共有結合させ、HPLCにより精製して余分の試薬を除去し、利用可能なキャプチャー配列の全てを占有するモル比でハイブリダイズさせる。以下に要約する通り、デンドリマー分子あたりおよそ2〜5個のペプチドが付着される。
【0047】
ドキソルビシン二本鎖オリゴヌクレオチドTfRペプチドの調製:Doxを含むG8 mAb二本鎖オリゴヌクレオチドコンジュゲートの調製のために、実施例1に記載された通り、TfRペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲート(先に調製された通り)をキャプチャーオリゴヌクレオチドにハイブリダイズして、Doxと混和する。
【0048】
ドキソルビシン二層デンドリマーの調製(標的化なし):TfRペプチドの標的化を含まないドキソルビシン二層デンドリマーも、既に記載された通り調製する。
【0049】
ドキソルビシン二層TfRペプチドを標的化するデンドリマーの調製:Doxを含むG8 mAbデンドリマーの調製のために、実施例1に記載された通り、先に調製された二層TfRペプチドを標的化するデンドリマーをDoxと混和した。
【0050】
インビボマウス試験:マウスにおいて腫瘍形成を誘導するために、Matrigel 20ml中のPAN02−Luc細胞(ホタルルシフェラーゼを安定発現するネズミ膵臓癌細胞)2×10個を、B6マウスの膵臓に直接注射した。4週間後、マウスの眼窩後部に、1×PBS(陰性対照)、ドキソルビシンを含むTfRペプチド二本鎖DNAオリゴヌクレオチド、ドキソルビシンを含む非標的化DNAデンドリマー、またはドキソルビシンを含むTfR標的化DNAデンドリマーの100μlを注射する。注射は、1週間あたり2回を2週間とし、合計4回実施する。最後の投与後3日目にマウスを殺処分し、腫瘍、肝臓、脾臓を10%ホルマリンで2時間固定し、パラフィン包埋切片を調製して、さらなる試験のためにスライド上に載せる。処置の結果である細胞死のレベルを決定するために、TUNELアッセイを、In situ Cell Death Detectionキット(Roche)を用いて実施した。
【0051】
インターカレートされたドキソルビシンを含むTfR標的化DNAデンドリマー、およびTfR標的化二本鎖オリゴヌクレオチドで処置されたマウスの腫瘍は、PBS緩衝液対照またはDoxを含む非標的化DNAデンドリマーのいずれかよりも有意に多くの細胞死を示した。
【0052】
本明細書の発明は、特別な実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態が単に本発明の原理および適用例の例示であることは、理解されなければならない。本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、様々な改良および変更を本発明の方法および装置に施し得ることは、当業者に明白であろう。つまり本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれる改良および変更、ならびにその均等物を含むものとする。
図1A
図1B
図1C
図2A-2B】
図2C-2D】