(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346306
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】サイドミラーレスの後方確認装置を有する自動車
(51)【国際特許分類】
B60R 1/00 20060101AFI20180611BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20180611BHJP
B60R 1/06 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
B60R1/00 A
B60R11/02 S
B60R11/02 C
B60R1/06 D
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-563417(P2016-563417)
(86)(22)【出願日】2015年3月28日
(65)【公表番号】特表2017-515722(P2017-515722A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】EP2015000666
(87)【国際公開番号】WO2015158416
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2016年10月19日
(31)【優先権主張番号】102014005803.4
(32)【優先日】2014年4月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ヘーニンガー,アントン
【審査官】
菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−105038(JP,A)
【文献】
特表2013−520363(JP,A)
【文献】
特開2010−120595(JP,A)
【文献】
実開昭55−022228(JP,U)
【文献】
特開平02−081744(JP,A)
【文献】
特開平10−166943(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0295181(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/067082(WO,A1)
【文献】
実開平01−112140(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00
B60R 1/06
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方の空間/交通の少なくとも一部を撮像可能な少なくとも1つのカメラ(3)と、該少なくとも1つのカメラ(3)によって撮像された画像部分を表示可能な少なくとも1つのモニタ(4)とを有し、該少なくとも1つのモニタ(4)が車室の方向に突出するサイドドア(6)のコンソール(5)に配置される、サイドミラーレスの後方確認装置(2)を備える自動車(1)であって、
前記コンソール(5)は、
前記サイドドア(6)が閉じている場合に少なくとも部分的にダッシュボード(8)の凹部(9)に係合し、
前記サイドドア(6)が閉じている場合に前記ダッシュボード(8)の換気ローゼット(13)と連通し、サイドウインドウ(14)への送風のため及び/又は前記モニタ(4)の冷却のために形成された換気ダクト(12)を有し、
前記少なくとも1つのカメラ(3)は、
前記サイドドア(6)の外側に配置される棒状のカンチレバー(19)により支持される
ことを特徴とする、自動車。
【請求項2】
前記サイドドア(6)が閉じている場合に、前記換気ダクト(12)を前記換気ローゼット(13)と気密に連結するシーリング(15)、ゴムシーリング、又は発泡シーリングが前記換気ダクト(12)の入口に配置されることを特徴とする、請求項1記載の自動車。
【請求項3】
前記換気ダクト(12)は、前記モニタ(4)の後方に延びることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の自動車。
【請求項4】
前記コンソール(5)内にスピーカ(16)又は高音域用スピーカが一体化されることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項5】
前記スピーカ(16)は、フロントガラス(17)の方向を向いていることを特徴とする、請求項4記載の自動車。
【請求項6】
前記コンソール(5)内に、アンテナ又はセンサの少なくとも1つの別の構成部材が配置されることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項7】
前記サイドドア(6)が閉じている場合に、前記コンソール(5)は、サイド換気ノズル(18)の上方で前記ダッシュボードに配置されることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項8】
前記サイドドア(6)が閉じている場合に、前記換気ダクト(12)を前記換気ローゼット(13)と気密に連結するシーリング(15)、ゴムシーリング、又は発泡シーリングが前記換気ダクト(12)の入口に配置され、
前記コンソール(5)内にスピーカ(16)又は高音域用スピーカが一体化され、
前記モニタ(4)、前記換気ダクト(12)、前記シーリング(15)、及び前記スピーカ(16)を有する前記コンソール(5)は、事前組み立てされた、又は事前組み立て可能なアセンブリとして形成されることを特徴とする、請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載の自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
後方の空間/交通の少なくとも一部を撮像可能な少なくとも1つのカメラと、
その少なくとも1つのカメラによって撮像された画像部分を表示可能な少なくとも1つのモニタとを
有し、その少なくとも1つのモニタは、車室の方向に突出するサイドドアのコンソールに配置される、サイドミラーレスの後方確認装置を有する自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の外側を向く対物レンズと、自動車の車室に配置され、対物レンズからカメラに送られる画像情報を表示可能なモニタと、を有する自動車のこのような交通監視装置は、特許文献1から公知である。
自動車に搭載された該自動車の後方を向く視角を有する少なくとも1つの電子カメラシステムを備えるサイドミラーレスの後方確認装置を有す
る自動車は、特許文献
2から公知であり、自動車の後方を向く視角を有する、自動車に搭載された少なくとも1つの電子カメラシステムを備える。この電子カメラシステムの対物レンズは、常に自動車の輪郭からわずかに突出するように、かつ、カメラシステムによって記録された自動車の左後方領域の交通状況を表示するためにステアリングの左側に配置されたモニタと、カメラシステムによって記録された自動車の右後方領域の交通状況を表示するためにステアリングの右側に配置されたモニタと、を有するように、自動車の車体に配置されている。それによって、自動車の幅及び自動車の空気抵抗に悪影響を及ぼさずに、後方の交通状況の監視が自動車の両側面において可能になるとされている。
【0003】
自動車の周囲の画像を撮像するために自動車に配置された少なくとも1つのカメラと、画像を処理するためにそのカメラと接続された電子装置と、当該電子装置と接続された画像を表示するための少なくとも1つの画像表示装置とを有する、自動車用画像処理装置が、特許文献
3から公知である。画像表示装置は、自動車の乗員車室に面するAピラーの領域に配置され、それによって、従来の外部バックミラーの視界と一致する領域に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国実用新案第200 10 180 U1号明細書
【特許文献2】独国特許第10 2007 054 342 B3号明細書
【特許文献3】独国特許第10 2007 032 527 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術の欠点は、このようなサイドミラーレスの後方確認装置がAピラーの領域に配置される限り、ドライバーの視界がフロントガラスによって制約されることである。これに対して、ダッシュボード内に配置すると、それぞれのドライバーは、サイドミラーを見るためにそれまでの視角を移さなければならない。
【0006】
したがって本発明の課題は、特に先行技術の欠点を克服し、しかも更なる機能的利点をもたらす、改良された、又は少なくとも代替の実施形態を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本課題は、本発明により、独立請求項1の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0008】
本発明は、サイドミラーレスの後方確認装置のモニタを、一方ではドライバーの視界を制約せず、他方ではこれまで使用されていない自動車の設置スペースに配置し、それによって設置スペース技術上の利点が得られるという考えに基づいている。概ね、本発明による自動車は、後方の空間を撮像可能な少なくとも1つのカメラと、少なくとも1つのカメラによって撮像された画像部分を表示可能な少なくとも1つのモニタとを含む前述のサイドミラーレスの後方確認装置を備えている。本発明によれば、少なくとも1つのモニタは、車室の方向に突出するサイドドアのコンソールに配置され、このコンソールは、サイドドアが閉じている場合は少なくとも部分的にダッシュボードの凹部に係合する。それによって、人間工学的に適した、見慣れた高さに配置された、これまで使用されなかった位置にモニタを設置できるという大きな利点が得られる。この領域に配置することによって、Aピラーの領域での外側への視界の遮りが最小限になり、そのためドライバーの視界を制約することがない。同時に、モニタを正確にこの位置に配置することで視認性と操作性が最適になる。モニタをサイドドアのコンソール内に一体化することによって、カメラとモニタとの間の干渉に影響され易いビデオケーブルを最短に抑えることができ、それによって干渉がない画像を確保できる。加えてこのことは、特に、ビデオケーブルはまた、移動範囲を持たず、例えば、EMC干渉を引き起こすことがある他の電線と接触することもないため有利となる。
【0009】
本発明に
より、コンソールは、サイドドアが閉じている場合にダッシュボードの換気ローゼットと連通し、特にサイドウインドウへの送風のため、及び/又はモニタの冷却のために形成された換気ダクトを備えている。したがって、このように形成されたコンソールは、この領域に配置されたモニタが換気を、特にサイドウインドウが曇らないようにすることを全く妨害しないため、機能性を大幅に高める。同時に、換気ローゼットからコンソールを通って送られる空気流によってサイドミラーレスの後方確認装置のモニタが冷却され、それによって、温度に敏感で、従来はこの目的には使用できなかった高解像度のモニタさえも使用することが可能になる。従来はダッシュボードの領域に配置されていた、サイドウインドウに送風するための換気ローゼットは、実質的に変更しないままでよいため、対応してダッシュボードに適合させる必要なく、バックミラーを事後にサイドミラーレスの後方確認装置に改造し、又はこれと交換することさえ可能になる。その際、コンソール内の換気ダクトとダッシュボードの換気ローゼットとの気密連結を確立できるようにするため、サイドドアが閉じている場合に換気ダクトを換気ローゼットと気密に連結するシーリング、特にゴムシーリング又は発泡シーリングが換気ダクトの入口に配置されている。
【0010】
本発明に係る解決手段の
好適な実施形態では、コンソール内にスピーカ、特に高音域用スピーカ(ツイータ)が一体化されている。したがってコンソールは、モニタを収容し、サイドウインドウへの送風及び/又はモニタの冷却のための換気ダクトを実施可能にするだけではなく、付加的にスピーカ、特に高音域用スピーカの設置スペースをも提供する。したがって、従来は通常ミラートライアングル内に配置される高音域用スピーカを簡単に動かしてコンソール内に配置することができ、それによってパッケージ上の利点が得られる。その上、例えばアンテナ、センサ、及び/又はハンズフリーマイクなどの構成部材をコンソール内に一体化することができる。このコンソールでは、これが事前組み立て式アセンブリとして製造可能であり、換気ダクト、モニタ、スピーカ、及びオプションの追加構成部材などの構成部品全体を備えていることからも、特に有利である。このような事前組み立て式アセンブリによって、この場合はコンソールを単に取り付け、特にねじ止めし、例えば、プラグ接続によって適宜に電気的に接続するだけでよいため、特に組み立てラインのサイクル時間を短縮するができる。前述の構成部品を有するコンソールの実際の組み立ては、例えば、納入業者において、又は別個の事前組み立てで行うことができる。
【0011】
サイドドアの外側に、少なくとも1つのカメラを支持するカンチレバーを配置することが適切である。しかし、カメラは、最も好適な場合はピンの頭程度の大きさしかないため、このようなカンチレバーは、従来の外部バックミラーと比較してきわめて細く、したがって空気力学的に好適な状態にすることができる。モニタをサイドドア及び少なくとも1つのカメラの近傍に配置することによって、特に干渉の影響を受け易いビデオケーブルを短く抑えることができ、ひいては干渉のない受信、又は干渉のない画像が確保される。
【0012】
本発明のその他の重要な特徴及び利点は従属請求項、図面、及び図面を参照した関連する図面の説明から明らかになる。
【0013】
前述の、及び以下に更に記載する特徴はそのつど記載する組み合わせだけではなく、本発明の範囲を逸脱することなく別の組み合わせで、又は単独で使用できることが理解されよう。
【0014】
本発明の好適な実施形態を図面で示し、以下に詳細に説明する。同一の参照符号は同一又は類似又は機能的に同一の構成部品を指す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】サイドドアが閉じている場合に車室に突出しているコンソールに配置されたモニタを有する本発明に係る自動車の概略内部図である。
【
図2】
図1と同様であるが、サイドドアが開かれている場合の概略内部図である。
【
図3】コンソールの領域の自動車の概略断面図である。
【
図4】本発明に係るサイドミラーレスの後方確認装置がない、すなわち先行技術の車室の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図3に示すように、本発明による自動車1は、後方の空間又は後方の交通の少なくとも一部を撮像可能な少なくとも1つのカメラ3(
図3を参照)と、少なくとも1つのカメラ3によって撮像された画像部分を表示可能な少なくとも1つのモニタ4と、を含む、サイドミラーレスの後方確認装置2を備えている。本発明によれば、少なくとも1つのモニタ4は、車室の方向に突出する、サイドドア6の内側にあるコンソール5に配置され、このコンソール5は、サイドドアが閉じている場合は少なくとも部分的にダッシュボード8の凹部9(特に
図2及び
図3を参照)に係合する。先行技術から既知のように、モニタをAピラーに又はダッシュボード内に直線接続する場合とは異なり、本発明によりモニタをサイドドアの内側に配置すると、カメラ3とモニタ4とを互いに密接して配置することができ、それによってこれらの両方の構成部品3および4を結合するビデオケーブル10が短いだけではなく、移動範囲がなくて済み、それが干渉のない受信に寄与する。ダッシュボード8のこの特定領域でコンソール5とモニタ4とをAピラー7の下端の高さに配置することが、視認性及び操作性に関する最適な解決手段であり、特にドライバーの視界はまったく、又はほとんど制約されない。その上、モニタ4は、従来の自動車1’の場合に配置されている外部バックミラー11’(
図4を参照)とほぼ同じ位置に配置され、それによって人間工学的、及びドライバーの慣れの観点で最適に配置することができる。
【0017】
図3を見ると、コンソール5は、サイドドア6が閉じている場合にダッシュボード8の換気ローゼット13と連通し、特にサイドウインドウ14に送風するため及び/又はモニタ4の冷却のために形成された換気ダクト12を備えていることが分かる。その上、サイドドア6が閉じている場合に換気ダクト12を換気ローゼット13と気密に連結するシーリング15、特にゴムシーリング又は発泡シーリングが換気ダクト12の入口に配置されている。それによって、所望しないバイパスフローを避けることができる。その際、換気ダクト12は、
図3に示すようにモニタ4の背後に延びているため、このモニタ4を冷却することができる。
【0018】
その上、後方確認装置2のコンソール5内にスピーカ16、特に高音域用スピーカを一体化することができ、このスピーカ16は、例えば自動車1のフロントガラス17の方向を向き、それによって間接的な音響放射を生じることができる。その上、勿論、例えばアンテナ、センサ、及び/又はハンズフリーマイクをコンソール5内に一体化することができる。サイドドア6が閉じている場合、コンソール5は、及びコンソール5と共にモニタ4もまた、サイド換気ノズル18(
図1及び
図3を参照)の上方に配置され、それによっても人間工学的に好適で、特に側方換気機能をも損なわずに配置される。
【0019】
図3を参照すると、サイドドア6の外側に、少なくとも1つのカメラ3を支持するカンチレバー19が配置されている。しかし、カメラ3は、外部バックミラー11’(
図4を参照)と比較して小さくしておくことができ、特にピンの頭程度の大きさしかない。そのため、このようなカンチレバー19は極めて細く、したがって空気力学的に好適に形成することができる。
【0020】
本発明に係る後方確認装置2によって、モニタ4の人間工学的に好適な配置が可能になり、さらにドライバーの視界をまったく、又はほとんど制約しない。モニタ4を本発明に係るコンソール5に一体化し、かつ対応する凹部9をダッシュボード8に設けることによって、サイドドア6が閉じている場合に、モニタ4が少なくとも部分的に凹部9内に埋め込まれて配置されるため、ドライバーの動きの自由度を制約する設置スペースは生じない。サイドドア6が閉じている場合、コンソール5は、同時に換気ダクト12としても利用され、それによってコンソール5を通したサイドウインドウ14への支障のない送風が確保される。しかしその際、換気ダクト12によってサイドウインドウ14への送風が可能になり、ひいては氷が付かない状態及び曇らない状態が確保されるだけではなく、付加的にモニタ4の冷却も可能になる。その上、コンソール5は、例えば、スピーカ16及び/又はアンテナ、センサ、又はマイクなどの小部品について更に収納することができるため、その機能性を高めることができる。その際、コンソール5の形状構成を個々の自動車の設計バリエーションに適応させることができるため、本発明に係る後方確認装置2は、異なる車種の自動車に応用できる。
図1を再び参照すると、モニタ4及びその後方に配置されているコンソール5は、フロントガラス17の方向でもサイドウインドウ14の方向でも視界を妨げることはなく、それによって当然、このような後方確認装置2の従来の実施形態と比較して、ドライバーの安全性が高まる。
【0021】
従来の自動車1’に使用される外部バックミラー11’と比較して、サイドウインドウ14を通した視界はむしろ広がる。
図4に示す先行技術から公知の自動車1’では、
図1及び
図3に示す本発明による自動車1と同じ部品には、同一の参照符号及びアポストロフィが付されている。