(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346311
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】バッテリ管理のための方法、及び、バッテリ管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20180611BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
H02J7/00 302A
H02J7/00 P
H01M10/48 P
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-569813(P2016-569813)
(86)(22)【出願日】2015年4月27日
(65)【公表番号】特表2017-519474(P2017-519474A)
(43)【公表日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】EP2015059085
(87)【国際公開番号】WO2015180910
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2016年11月25日
(31)【優先権主張番号】102014210197.2
(32)【優先日】2014年5月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】シュティム、フランク
(72)【発明者】
【氏名】マンゴールド、ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】コルン、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】リムケ、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】デュフォー、トーマス
【審査官】
永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−124353(JP,A)
【文献】
特開2013−051115(JP,A)
【文献】
特開平09−120843(JP,A)
【文献】
特開2007−323999(JP,A)
【文献】
特開2007−288906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42−10/48
H02J7/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリセル(19)を含むバッテリ(16)のバッテリ管理のための方法であって、前記バッテリ(16)が放出可能な電流の最大値が、前記バッテリ(16)により放出された二乗平均電流の頻度分布(44)を用いて制御され、
前記制御は、前記バッテリ(16)の保証された駆動時間内でのみ行われ、前記バッテリ(16)の前記保証された駆動時間の間に、現在の駆動時間と前記保証された駆動時間との比率に従って、当該保証された駆動時間の終りに近づくほど電流の最大値を計算するための重みが少なくなるように行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記頻度分布(44)から、低電流範囲(36)の比率、第1の高電流範囲(38)の第1の比率、及び、第2の高電流範囲(40)の第2の比率についての数値が定められ、前記第1の高電流範囲(38)は、前記第2の高電流範囲(40)よりも低く設定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御は、前記第1の高電流範囲及び第2の高電流範囲(38、40)のそれぞれの前記比率のための目標設定に従って行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の高電流範囲(38)のための第1の目標設定は、10%〜50%であり、及び/又は、前記第2の高電流範囲(40)のための第2の目標設定は、1%〜10%であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の高電流範囲(38)は、60A〜100Aであり、前記第2の高電流範囲(40)は、100A〜130Aであることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
コンピュータプログラムが、プログラム可能なコンピュータ装置で実行される場合に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法を実行するためのコンピュータプログラム。
【請求項7】
複数のバッテリセル(19)を含むバッテリ(16)のバッテリ管理システムであって、前記バッテリ(16)により放出された二乗平均電流を定めるユニット(26)と、前記バッテリ(16)により放出された前記二乗平均電流の頻度分布(44)を評価するユニット(30)と、前記頻度分布(44)を評価する前記ユニット(30)の結果を用いて、前記バッテリ(16)が放出可能な電流の最大値を、前記バッテリ(16)の保証された駆動時間内でのみ設定し、前記バッテリ(16)の前記保証された駆動時間の間に、現在の駆動時間と前記保証された駆動時間との比率に従って、当該保証された駆動時間の終りに近づくほど電流の最大値を計算するための重みが少なくなるよう動作するユニット(32)と、を有するバッテリ管理システム。
【請求項8】
請求項7に記載のバッテリ管理システムを有するバッテリ(16)を備えた自動車(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ管理のための方法に関する。さらに、本発明は、本方法を実行するよう構成されたコンピュータプログラム及びバッテリ管理システム、並びに、バッテリ及びこのようなバッテリ管理システムを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、電気で駆動する車両において、リチウムの化学的性質に基づく蓄電池が、ニッケル又は鉛をベースとする蓄電池と比べて従来利用可能なエネルギー密度が最も高いため、電気エネルギー貯蔵器(EES)として使用されている。電気で駆動する車両で使用されるバッテリシステムは、利用可能なエネルギー含量、放電性能、充電/放電効率、寿命、及び信頼性に関する要求が非常に高い。この蓄電池には、15年の寿命が求められている。
【0003】
このようなバッテリシステムの障害のない駆動のためには、セル、モジュール、及びバッテリパック全体の確実で信頼性が高い機能が求められる。このような機能を実現するために、電流の強さ、電圧、温度、絶縁抵抗、及び、圧力等の物理的変数が継続的に制御される。バッテリシステムの保証された寿命、信頼性、及び安全性をそれにより遵守することが可能な管理機能及び動作機能が、上記変数の測定値を用いて実現される。蓄電池が早期に劣化することを回避するために、例えば、セル電圧限界値及び最大電流が予め設定される。
【0004】
劣化にとって非常に重要なパラメータは、二乗平均電流である。このパラメータは、即ち、厳密に言えば、このパラメータの平方根は、I
RMS値とも称される。二乗平均電流では、高い電流は、低い電流よりも大きく重み付けされる。従って、I
RMS値は、セル内部の温度勾配の上昇、及び、電極でのリチウムの堆積、即ち所謂リチウムめっき(Lithium−Plating)の影響を考慮する。二乗平均電流は、以下のようにも表される。
【0005】
【数1】
【0006】
上記パラメータのために、従来技術でそれに対して制御される限界値が存在する。独国特許出願公開第102011012818号明細書には、例えば、二乗平均電流を決定し、所定の目標値を下回るように保つこと、即ち、以下ように保つことが記載されている。
(I
RMS)
2<(I
RMS_lim)
2
【0007】
国際公開第2012/091077号明細書には、劣化状態(SOH:State of Health)が、二乗平均電流から定められる方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
低温時、及び、山道での動的な始動の際は、二乗平均電流の限界値が、非常に短期間に、例えば10秒後には既にその限界に達するため、本発明の課題は、限界値の上昇を検知することであり、その際に、例えば約15年の保証されたバッテリ寿命に関して制限を課す必要はない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
複数のバッテリセルを含むバッテリのバッテリ管理のための本発明に係る方法では、バッテリが放出可能な電流の最大値が、バッテリにより放出された二乗平均電流の頻度分布を用いて制御されることが構想される。
【0010】
本発明は、二乗平均電流の履歴メモリの評価によって、セル劣化の設定を遵守することを可能にする。このことは、バッテリが放出可能な電流の最大値の制御によって成就する。その際に、バッテリが放出可能な電流の最大値が、例えばバッテリ管理システムに報知され、従って、インバータがこれに対応して調整されて、上記電流の最大値のみを呼び出す。
【0011】
本発明に係る方法によって、出力電力が大き過ぎることによる蓄電池への損傷が防止され、バッテリの所与の寿命の保証が良好に実現される。このことによって、最大電流によりバッテリで生じる損傷が防止されるだけではなく、バッテリが所望の範囲内で動作し劣化し、従って早期に交換されないことが保証される。
【0012】
有利に、例えばバッテリの全駆動時間のごく一部について高い最大値が許容されるということが可能である。例えば、運転者が一時的により出力を上げることが可能となる。運転者が全駆動期間に渡って段階的に走行する場合には調整されうる。これにより、本発明は、現在の従来技術に対して明らかに改良されている。
【0013】
本発明は、電気自動車又はハイブリッド自動車で使用されるバッテリで特に適している。このバッテリに対する要求には、例えば、バッテリが50V〜600Vの電圧を提供するということが含まれている。適切なバッテリの種類の例として、全種類のリチウムイオンバッテリが含まれる。本方法が適用される際には、特に、一方では、バッテリ内部での、損害をもたらす温度勾配の上昇が防止され、他方では、電極でのリチウムの堆積も防止される。
【0014】
好適な実施形態によれば、上記制御は、保証された駆動時間内で行われ、即ち、保証された駆動時間が経過するまで行われる。上記制御を数学的に表すと、この制限は、バッテリが放出可能な電流の最大値の計算においては、現在の時点t
aktが保証された駆動時間t
gwよりも大きい場合には0が設定される重み係数、即ち、
t
akt>t
gwの場合、W=0
の導入によって実現される。
【0015】
特に好適に、上記制御は、上記保証された駆動時間の間に、現在の駆動時間t
aktと保証された駆動時間t
gwとの比率に従って、当該保証された駆動時間の終りに近づくほど軽度に行われる。この制御機能を数学的に表すと、このことは、以下のような重み係数によって考慮され、
【0016】
【数2】
【0017】
その際に、特に好適に、以下のことが有効である。即ち、
【0018】
【数3】
【0019】
及び、t
akt>t
gwの場合、W=0。
【0020】
バッテリにより放出された二乗平均電流の頻度分布から、好適に、低電流範囲の比率、第1の高電流範囲の第1の比率、及び、第2の高電流範囲の第2の比率についての数値が定められ、その際に、第1の高電流範囲は、第2の高電流範囲よりも低く設定されている。好適に、第1の高電流範囲は、第2の高電流範囲に直接的に連なっている。好適に、低電流範囲も同様に、第1の高電流範囲に直接的に連なっている。即ち、バッテリが放出可能な電流の最大値の制御は、好適に、少なくとも3つの互いに別々の電流範囲の相対的な比率がそれから定められる頻度分布を用いて行われる。
【0021】
その際に、上記制御は、高電流範囲の比率についての目標設定、特に、第1の高電流範囲及び第2の高電流範囲の比率についての目標設定に従って行われる。
【0022】
第1の高電流範囲のための第1の目標設定は、全駆動期間の10%〜50%、特に20%〜40%、特に好適に約35%である。第2の高電流範囲のための第2の目標設定は、全駆動期間の1%〜10%、特に2%〜5%、特に好適に約3%である。本実施形態では、低電流範囲については制限が存在せず、即ち、バッテリは、全駆動期間の100%に至るまで、低電流範囲の二乗平均電流を放出することが可能である。
【0023】
第1の高電流範囲は、例えば、60A〜100Aである。第2の高電流範囲は、例えば、100A〜130Aである。低電流範囲は、例えば60A未満である。上記の電流範囲を区切る限界値60A、100A、及び130Aは好適な値ではあるが、実際には別に定義することも可能である。実際にはこのことは、対応する一連の試験により設定される。
【0024】
本発明によれば、さらに、コンピュータプログラムがプログラム可能なコンピュータ装置で実行される場合に、本明細書に記載する方法のうちの1つがそれにより実行されるコンピュータプログラムが提案される。コンピュータプログラムは、例えば、自動車内のバッテリ管理システム又はその下位システムを実現するためのモジュールでありうる。コンピュータプログラムは、機械読み取り可能な記憶媒体に格納可能であり、即ち、例えば、永久的な若しくは上書き可能な記憶媒体に、又は、コンピュータ装置の付属品に、又は、取り出し可能なCD−ROM、ブルーレイ(Blu−ray、登録商標)ディスク、若しくはUSBスティック等に格納されうる。追加的又は代替的に、コンピュータプログラムは、例えばインターネット、又は、電話線若しくは無線接続等の通信接続のようなデータネットワークを介したダウンロードのために、例えばサーバ又はクラウドシステム等の、コンピュータ装置に提供される。
【0025】
本発明によれば、さらに、複数のバッテリセルを含むバッテリのバッテリ管理システムであって、バッテリにより放出された二乗平均電流を定めるユニットと、バッテリにより放出された二乗平均電流の頻度分布を評価するユニットと、頻度分布を評価する上記ユニットの結果を用いて、バッテリが放出可能な電流の最大値を設定するユニットと、を有する上記バッテリ管理システムが設けられる。
【0026】
好適に、バッテリ管理システムは、本明細書に記載の方法を実行するよう形成及び/又は構成される。これに対応して、本方法の枠組みにおいて記載される特徴は、対応してバッテリ管理システムにも当てはまり、反対に、バッテリ管理システムの枠組みにおいて記載される特徴は、対応して本発明にも当てはまる。
【0027】
バッテリ管理システムの上記ユニットは、必ずしも物理的に互いに分かれていない機能ユニットとして設けられる。従って、例えば、複数の機能が制御装置のソフトウェアで実現される場合には、バッテリ管理システムの複数のユニットが、1つの物理的ユニットに実現されうる。バッテリ管理システムの上記ユニットは、ハードウェアモジュールでも、例えば、センサユニット、メモリユニット、及び、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Circuit)によって実現されうる。
【0028】
本発明によれば、さらに、複数のバッテリセルを含むバッテリと、このようなバッテリ管理システムと、を備えたバッテリシステムが提供される。バッテリは、特に、リチウムイオンバッテリ又はニッケルメタルハイドライドバッテリであってもよく、自動車の駆動システムと接続可能でありうる。
【0029】
「バッテリ」及び「バッテリユニット」という概念は、本明細書の記載では、通常の言語使用に合わせて、蓄電池又は蓄電ユニットのために利用される。バッテリは、1つ以上のバッテリセルを含み、これにより、バッテリセル、バッテリモジュール、モジュール線、又はバッテリパックと称されうる。バッテリの内部では、バッテリセルが、好適に空間的に纏められて回路技術的に互いに接続され、例えば、モジュールに対して直列又は並列に接続される。複数のモジュールが、所謂バッテリダイレクトコンバータ(BDC:Battery Direct Converter)を形成し、さらに、複数のバッテリダイレクトコンバータが、バッテリダイレクトインバータ(BDI:Battery Direct Inverter)を形成する。
【0030】
本発明によれば、さらに、このようなバッテリシステムを備えた自動車が提供され、その際に、バッテリシステムのバッテリは、例えば、自動車の駆動システムと接続されている。自動車は、純粋な電気自動車として構成され、電気的駆動システムのみ含んでもよい。代替的に、自動車は、電気的駆動システム及び内燃機関を備えるハイブリッド自動車として構成されうる。幾つかの変形例において、ハイブリッド自動車のバッテリは、内部で、発電機を介して、内燃機関の余ったエネルギーで充電可能である。外部で再充電可能なハイブリッド自動車(PHEV:Plug−in Hybrid Electric Vehicle、プラグインハイブリッド電気自動車)によって、さらに、外部の電力網を介してバッテリを再充電する可能性が設けられる。このように構成された自動車の場合、走行サイクルは、駆動パラメータが検出される駆動段階として、走行駆動及び/又は充電駆動を含む。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る方法によって、従来技術によるバッテリ駆動に対して、短期間で、バッテリからのより大きな放電電力が可能となるが、それにも関わらず、バッテリの保証された駆動期間及び保証された寿命が遵守される。
【0032】
その際に、最大可能放電電力は、保証されたバッテリ駆動期間を遵守した上で、運転者が理想的に何も気付かないように制御される。提供可能なバッテリ電力の制御は穏やかに、均一に、全バッテリ駆動期間に渡って行われる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の実施例が図面に示され、以下の明細書において詳細に解説される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、少なくとも部分的に電気で駆動する自動車10が示されており、この自動車10は、バッテリシステム12を備えている。
【0035】
図1の自動車10は、純粋に電気で駆動する車両として、又は、追加的に内燃機関を有するハイブリッド自動車として構成されうる。このために、自動車10には、電動機(図示せず)を介して少なくとも部分的に電気的に自動車10を駆動する電気的駆動システム14が具備されている。
【0036】
電気エネルギーは、バッテリ16によって提供される。バッテリ16は、複数のバッテリセル又は蓄電セルを含み、例えば、電圧範囲が2.8〜4.2Vのリチウムイオンセルを含む。バッテリセル19は、一群に纏められてバッテリモジュール20となり、その際には直列に、及び部分的に追加的に並列に接続され、従って、バッテリ16によって、要求されるエネルギーデータが実現される。
【0037】
バッテリ16は、バッテリシステム12の構成要素であり、このバッテリシステム12は、バッテリ管理システムをさらに備える。バッテリ管理システムは、主制御装置18と、バッテリモジュール20に対応付けられたセンサ制御装置17と、を備える。
【0038】
個々のバッテリセル19又はバッテリモジュール20を監視するために、当該バッテリセル19又はバッテリモジュール20には、セル監視ユニット22又はモジュール監視ユニット23が備えられ、このセル監視ユニット22又はモジュール監視ユニット23は、個々のバッテリセル19又は個々のバッテリモジュール20の電圧、電流、又は温度等の駆動パラメータを継続的に、定められたサンプリングレートで測定値として検出し、検出された測定値をセンサ制御装置17に提供する。センサ制御装置17は、セル監視ユニット22及びモジュール監視ユニット23のセンサの測定値を受信し、場合によってはこの測定値にタイムスタンプを付し、SPIバス(Serial Peripheral Interface Bus)又はCANバス(Controller Area Network Bus)等の通信チャネル24を介して主制御装置18へと送信する。
【0039】
主制御装置18は、バッテリ16を制御及び監視する機能を実現する。主制御装置18は、バッテリ16により放出された二乗平均電流を定めるユニット26を有する。この二乗平均電流を定めるユニット26は、二乗平均電流を以下の数式に従って計算する。
【0041】
時間t
2は、例えば、10ms〜60sであり、好適に約0.1sである。測定値ごとに平方根が求められ、これによりI
RMS値が形成される。このI
RMS値は、メモリユニット28に格納され、メモリユニット28では、I
RMS値によって、
図2に関連して記載される頻度分布44が形成される。
【0042】
主制御装置18は、頻度分布44を評価する更なる別のユニット30を有し、このユニット30は、メモリユニット28へのアクセス権を有する。頻度分布44を評価するユニット30は、どの電流範囲36、38、40にI
RMS値が入るのかを定める。I
RMS値が60A未満である場合には、I
RMS値は低電流範囲36に入り、I
RMS値が60A〜100Aである場合には、I
RMS値は第1の高電流範囲38に入り、I
RMS値が100A〜130Aである場合には、I
RMS値は第2の高電流範囲40に入る。電流範囲36、38、40については、
図2に関連して詳細に記載する。
【0043】
この量子化が行われた後で、頻度分布44を評価するユニット30は、第1の高電流範囲38のI
RMS値のパーセンテージ、即ちP_i(I
35%)を決定し、第2の高電流範囲40のI
RMS値のパーセンテージ、即ちP_i(I
3%)を決定し、さらに、低電流範囲36のI
RMS値のパーセンテージ、即ちP_i(I
100%)を決定し、これらのI
RMS値のパーセンテージを、バッテリ16が放出可能な電流の最大値を設定するユニット32に提供する。
【0044】
バッテリ16が放出可能な電流の最大値を設定するユニット32は、バッテリ16により放出された二乗平均電流の頻度分布44を用いて、特にI
RMS値を用いて、上記最大値を制御する。
【0045】
このために、上記最大値を設定するユニット32は、バッテリ16と駆動システム14との間に配置された、操作装置34と接続されている。操作装置34は、例えば自動車10の運転者がアクセルペダルを介して望んだバッテリ16の出力設定を実現しないことにより、定められた最大値を実際に運用するよう構成されている。
【0046】
上記最大値を設定するユニット32は、第1の工程で、
I
RMS_MAX=I
3%RMS+w(P_i(I
35%)‐P(I
3%))・(I
35%‐I
3%)
を定める。但し、具体的なパーセンテージである3%及び35%は例示的なものであり、当然のことながら、他の比率に設定されうる。
【0047】
ここで、I
RMS_MAXは、計算された、電流の新しい許容限界値である。
【0048】
P_i(I
35%)は、メモリユニット28からの第1の高電流範囲38における頻度分布44の比率であり、即ち、履歴メモリからの対応するIの実際の分布の実際値であり、P(I
3%)は、設定からの、即ち例えばセルデータシートからの第1の高電流範囲38のための目標値である。
【0049】
I
3%RMSは、例えば上記セルデータシートに基づく設定値である。この値には、上記分布の目標値、即ちP(I
3%)が属する。
【0050】
Wは、重み付け係数であり、即ち、以下のとおりである。
【0052】
及び、t
akt>t
gwの場合、W=0である。
【0053】
上記分布の実際値が目標値よりも大きい場合には、即ちこのことは大抵の場合に当てはまるが、トータルで、計算される値I
RMS_MAXがより小さくなり、これにより、バッテリの最大平均電流が低減される。このことが、上記アルゴリズムの目標であり、即ち、最も効率の良い制限である。この制限は後に逆に緩めること可能であり、メリットである。
【0054】
上記分布の実際値が目標値よりも小さい場合には、即ちこのことは滅多に当てはまらないが、トータルで、計算される値I
RMS_MAXがより大きくなるであろう。このようなことは起きてはならず、従って、上記ユニット32は、第2の工程において、以下の数式に従って、最大値を定める。
I
RMS_MAX=min(I
RMS_MAX;I
3%RMS)
【0055】
図2は、本発明の根底にある思想を反映する制御の一例を示す。x方向には、I
RMS値が示されている。グラフは、y方向には、0〜100%までのスカラーを示している。バッテリにより放出された二乗平均電流の平方根について、3つの領域、即ち、低電流範囲36、第1の高電流範囲38、及び、第2の高電流範囲40が示されている。その際に、低電流範囲36は60A未満であり、第1の高電流範囲38は60A〜100Aであり、第2の高電流範囲40は100A〜130Aである。
【0056】
さらに、データシートに従った理想的な頻度分布42と、メモリユニット28の評価後の頻度分布44と、が示されている。
【0057】
2つの矢印46は、
図1に関連して記載された制御機能によって、どのように頻度分布44に対して、許容される全駆動期間における第2の高電流範囲40の比率を越えないように影響が与えられるのかを示している。
【0058】
頻度分布44では、制御アルゴリズムは必要な場合には、許容されるI
RMS_MAX値を少し低減し、従って、第2の高電流範囲40からの増大した放電電流のための駆動時間である3%を超過しない。これにより、流れた放電電流の度数、即ち、P(I
3%)に影響が与えられる。I
RMS_MAX値は、継続的に計算される。その際に、運転が穏やかな運転者には、全駆動期間の3%の間、最大可能I
3%RMS値が提供される。運転が激しい運転者は、穏やかなやり方で、制限された、即ち釣り合いを取ったI
3%RMS値を獲得する。再び穏やかな走行形態となった際には、運転が動的な運転者のためにも、上記釣り合いを取ったI
3%RMS値が再び上方に制御される。理想的に、保証された駆動期間が実現される。
【0059】
本発明は、本明細書で記載した実施例及び実施例で強調される観点には限定されない。むしろ、特許請求項により示される範囲内で、当業者の行為の枠組みでの複数の変形例が可能である。