(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウム電池などに用いられる電極体は、セパレータを挟んで複数の正極シート(正極板)および負極シート(負極板)を積層することにより製造される。このため、簡易な構成で、精度よく、セパレータ、正極シートおよび負極シートを積層できる装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、セパレータを挟んで正極シートおよび負極シートが積層された電極体を製造する装置である。この装置は、第1の領域にセパレータの連続体を折り重ねる第1のユニットと、第1のユニットがセパレータの連続体を折り重ねるのに同期して、第1の領域に正極シートおよび負極シートを交互に供給する第2のユニットとを有する。第1のユニットは、第1の領域の両側に配置され、第1の領域に対し相互に転倒および反転する第1
の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体に対しセパレータの連続体をテンションローラーを介して供給する搬送ユニットとを含み、第1
の壁体および第2の壁体
は、セパレータの連続体を交互に
、吸着した状態で第1の領域に転倒し、解放した状態で反転して前記第1の領域に折り畳む、第1の壁面および第2の壁面と、転倒したときにセパレータの連続体を
反対側の壁体の前記
第2の壁面および第1の壁面に
それぞれ押しつける
第3の壁面および第4の壁面とを含む。
【0006】
第1および第2の壁面で交互にセパレータの連続体(以降ではセパレータ)を吸着支持することにより、連続したセパレータを折り重ねるときに第1の領域の近傍における張力を維持できる。このため、セパレータを第1の領域に折り重ねる(畳む)ときにテンションが変動するのを抑制できる。したがって、連続したセパレータを用い、精度よく、セパレータ、正極シートおよび負極シートが積層された積層体(電極体)を製造できる。
【0007】
第1の壁面および第2の壁面は、第1の領域の両側に配置され、第1の領域に対し相互に転倒および反転することが望ましい。壁面を転倒させるという簡単な動作で、これらの壁面を交互に第1の領域に重ねることができる。第1の壁面および第2の壁面は、第1の領域の両側に配置され、第1の領域に対し相互に転倒および起立することがさらに好ましい。壁面の可動範囲を狭くでき、セパレータの移動範囲も狭くできる。このため、コンパクトでタクトタイムの短い装置を提供しやすい。
【0008】
第1のユニットは、第2の壁面が転倒したときに第1の壁面でセパレータの連続体を吸着し、セパレータの連続体を吸着した状態で第1の領域に第1の壁面を転倒させ、セパレータの連続体を解放した状態で第1の壁面を反転する第1のサブユニットと、第1の壁面が転倒したときに第2の壁面でセパレータの連続体を吸着し、セパレータの連続体を吸着した状態で第1の領域に第2の壁面を転倒させ、セパレータの連続体を解放した状態で第2の壁面を反転する第2のサブユニットとを含むことが望ましい。
【0009】
第1の壁面は、転倒したときにセパレータの連続体を第2の壁面の基端に導く先端を含み、第2の壁面は、転倒したときにセパレータの連続体を第1の壁面の基端に導く先端を含むことが有効である。壁面を転倒させる動作に、他の壁面へセパレータの連続体を引き渡して吸着支持させる動作を兼ねさせることができる。第1のユニットは、第1の壁面が転倒したときにセパレータの連続体を第2の壁面に押しつける第3の壁面と、第2の壁面が転倒したときにセパレータの連続体を第1の壁面に押しつける第4の壁面とを含むことが望ましい。第1の壁面から第2の壁面、その逆に第2の壁面から第1の壁面へと、相互にセパレータの連続体を、いっそう確実に吸着支持させることができる。
【0010】
この装置は、第1の壁面および第2の壁面に対し張力がある状態でセパレータの連続体を供給する供給ユニットをさらに有することが有効である。第1の領域の近傍で壁面によりセパレータは支持されるので、折り重ねられるときに、少ない張力でセパレータの歪みや撓みの発生を抑制できる。このため、セパレータの連続体にかかる張力を緩和でき、品質の高い積層体を製造できる。
【0011】
また、この装置は、第1の領域に積層された積層体を第1の壁面および第2の壁面に対し後退させる位置調整ユニットをさらに有することが望ましい。多層の積層体を製造する際に、積層される位置と、壁面との関係を一定に保持できる。位置調整ユニットは、壁面を上昇させてもよく、積層体を後退(下降)させてもよい。
【0012】
本発明の他の態様の1つは、セパレータを挟んで正極シートおよび負極シートが積層された電極体を製造することを有する方法であり、典型的には、積層体(電極体)の製造方法、電極体を含む電池の製造方法である。この方法は以下のステップを含む。
1.第1の領域に、折り重ねる長さとほぼ等しい長さの第1の壁面および第2の壁面を、セパレータの連続体を交互に吸着した状態で重ねて、第1の領域にセパレータの連続体を折り重ねること。
2.セパレータの連続体を折り重ねるのに同期して、第1の領域に正極シートおよび負極シートを交互に供給して積層すること。
【0013】
折り重ねることは、第1の領域の両側に配置された第1の壁面および第2の壁面が第1の領域に相互に転倒および反転し、第1の領域に対し上方から供給されるセパレータの連続体を第1の領域に折り畳むことを含むことが望ましい。さらに、折り畳むことは、第1の壁面がセパレータの連続体を吸着した状態で第1の領域に転倒し、セパレータの連続体を解放した状態で反転することと、第1の壁面が転倒したときに、第2の壁面がセパレータの連続体を吸着することとを含むことが望ましい。同様に、折り畳むことは、第2の壁面がセパレータの連続体を吸着した状態で第1の領域に転倒し、セパレータの連続体を解放した状態で反転することと、第2の壁面が転倒したときに、第1の壁面がセパレータの連続体を吸着することとを含むことが望ましい。
【0014】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、第1のユニットおよび第2のユニットを有する装置の制御方法である。この装置は、第1の領域に、折り重ねる長さとほぼ等しい長さの第1の壁面および第2の壁面を相互に転倒させて第1の領域にセパレータの連続体を折り重ねる第1のユニットと、セパレータの連続体を折り重ねるのに同期して、第1の領域に正極シートおよび負極シートを交互に供給する第2のユニットとを有する。制御方法は、以下のステップを含み、CPUおよびメモリなどのコンピュータ資源を有するコンピュータまたはコンピュータを動作させるプログラム(プログラム製品)として適当なメディア(CD−ROMなど)に記録して提供される。
・セパレータの連続体を吸着した状態で第1の領域に第1の壁面を転倒させ、セパレータの連続体を解放した状態で第1の壁面を起こすこと。
・第1の壁面が起きたときに、セパレータの連続体を吸着した状態で第1の領域に第2の壁面を転倒させ、セパレータの連続体を解放した状態で第2の壁面を起こすこと。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に正極シート、負極シートおよびセパレータを積層して電極体(セル)を製造する積層装置を示している。この積層装置1は、正極シート11を供給する第1の供給ライン110と、負極シート12を供給する第2の供給ライン120と、セパレータ13を供給する第3の供給ライン130と、セパレータ13を挟んで正極シート11および負極シート12を積層してセル(積層体)10を生成する積層ユニット50と、第1の供給ライン110から積層ユニット50へ正極シート11を搬送する第1の搬送ユニット61と、第2の供給ライン120から積層ユニット50へ負極シート12を搬送する第2の搬送ユニット62とを含む。
【0017】
図2に、積層装置1のさらに詳しい構成を示している。第1の供給ライン110および第2の供給ライン120は共通した構成であり、
図2には、第2の供給ライン120は最終のアライメントユニットのみを示し、他の構成は第1の供給ライン110で説明する。正極シート(電極シート)11を供給する第1の供給ライン110は、連続した電極シート11が円柱状に巻かれたロール111と、ロール111から一定の長さのシートを引き出す定寸フィーダ112と、一定の寸法にシートをカットするカッター113と、カットされた電極シート11の向きを調整するアライメントユニット115と、カッター113からアライメントユニット115へ電極シート11を搬送する搬送ユニット114とを有する。
【0018】
アライメントユニット115は、電極シート11の姿勢(向き)を検出するカメラ117と、電極シート11の姿勢を制御するXYθテーブル116とを含む。XYθテーブル116により姿勢が所定の向きになるように調整された電極シート11が、第1の搬送ユニット61(
図2には不図示)により積層ユニット50へ搬送される。負極シート12においても同様であり、第2の供給ライン120のXYθテーブル116によりアライメントされた負極シート12が第2の搬送ユニット62(
図2には不図示)により積層ユニット50へ搬送される。
【0019】
セパレータ13を供給する第3の供給ライン130は、連続したセパレータ13が円柱状に巻かれたロール131と、連続したセパレータに一定のテンション(張力)を与えるテンションローラー132と、連続したセパレータ13を積層ユニット50へ搬送する第3の搬送ユニット135とを含む。第3の搬送ユニット135は、連続したセパレータ13の供給方向を変更する供給ローラー136と、供給ローラー136の連続したセパレータ13の連続した方向(長手方向、X方向)の位置を変えるスライダー137とを含む。
【0020】
積層ユニット(折り重ねユニット、電極体組立ユニット、第1のユニット)50は、積層体を支持する積層ステージ55と、積層ステージ55の積層領域(第1の領域)56の両側(第1の領域56を挟んで対峙または対向する側)に配置された第1のウィング(第1の壁体)71および第2のウィング(第2の壁体)72と、第1のウィング71をX方向に回転駆動する第1の駆動モーター75と、第2のウィング72をX方向に回転駆動する第2の駆動モーター76と、積層ステージ55のZ方向の位置を制御する位置調整ユニット59とを含む。積層装置1は、さらに、これらのモーターなどを制御する制御ユニット100を有する。第1のウィング71は、積層ステージ55の積層領域(第1の領域)56に面し、積層領域56に転倒および反転する第1の壁面51を含む。第2のウィング72は、積層領域56に面し、積層領域56に転倒および反転する第2の壁面52を含む。
【0021】
第1のウィング71は、基端51aを中心として積層ステージ55の積層領域56に対して直立した状態(起立した状態)と転倒した状態に動く(回転する)第1の壁面51と、第1の壁面51の先端51bから積層領域56と反対側に垂直に伸びた第3の壁面53とを含む逆L字型の部材(ユニット)である。第2のウィング72は、基端52aを中心として積層ステージ55の積層領域56に対して直立した状態と転倒した状態に動く(回転する)第2の壁面52と、第2の壁面52の先端52bから積層領域56と反対側に垂直に伸びた第4の壁面54とを含む逆L字型の部材(ユニット)である。
【0022】
第1の壁面51および第2の壁面52の長さ(縦方向の長さ)は、連続したセパレータ(セパレータの連続体)13を折り重ねる(折り畳む)積層領域(第1の領域)56の長さと等しく、第3の壁面53および第4の壁面54の長さ(水平方向の長さ)は、第1の壁面51および第2の壁面52の長さより短く、1/3〜2/3程度である。第1のウィング71および第2のウィング72は、これらの壁面51〜54をそれぞれ含むものであればよく、L字型に限らず、直方体あるいは立方体であってもよく、三角柱のような形状であってもよい。
【0023】
第1のウィング71および第2のウィング72は、積層ステージ55の積層領域56のX方向の両側、すなわち、連続したセパレータ13が連続する方向(連続して供給される方向)の両側に対向して配置されている。
【0024】
図3に、積層ユニット50をX方向から見た状態を示している。
図4に、積層ユニット50をY方向から見た様子を示している。積層装置1は、積層ユニット(第1のユニット)50に対し、正極シート11および負極シート12を、Y方向(セパレータ13が連続して供給される方向と直交する方向)から供給するシート搬送ユニット(第2のユニット)60を有する。シート搬送ユニット60は、積層ユニット50がセパレータ13の連続体を折り重ねるのに同期して、積層領域(第1の領域)56に正極シート11および負極シート12を交互に供給する。
【0025】
シート搬送ユニット(第2のユニット)60は、Y方向に延びたレール65と、レール65をY方向に移動する第1の搬送ユニット61および第2の搬送ユニット62とを含む。第1の搬送ユニット61は、第1の供給ライン110のXYθテーブル116から積層ステージ55の上の積層領域56に正極シート11を搬送する。第2の搬送ユニット62は、第2の供給ユニット120のXYθテーブル116から積層ステージ55の上の積層領域56に負極シート12を搬送する。それぞれの搬送ユニット61および62は、それぞれのシート11および12を吸着支持する吸着ヘッド66を含む。
【0026】
リチウム電池用の電極体10の正極シート(正極板)11の一例は、金属酸化物(ニッケル酸リチウムなど)の正極活物質に、カーボンブラックなどの導電材と、ポリ四フッ化エチレンの水性ディスパージョンなどの接着剤とを混合した正極活性材をアルミニウム箔などの金属箔の両面に塗着、乾燥させ、圧延したのち所定の大きさに切断したものである。負極シート(負極板)12の一例は、非晶質炭素などの、正極活物質のリチウムイオンを吸蔵および放出する負極活性材をニッケル箔あるいは銅箔などの金属箔の両面に塗着、乾燥させ、圧延したのち所定の大きさに切断したものである。正極シート11および負極シート12は、リチウム電池用に限定されず、他のタイプの電池であってもよく、燃料電池用の電極体であってもよい。
【0027】
図4に示す積層ユニット(第1のユニット)50は、折り重ねる長さL1とほぼ等しい長さの壁面であって、セパレータ13の連続体を交互に吸着した状態で積層領域(第1の領域)56に重ねる第1の壁面51および第2の壁面52を含む。第1および第2の壁面51および52の幅は、セパレータ13の幅と同じ、または若干広いことが望ましい。第1および第2の壁面51および52の幅は、セパレータ13の幅より狭くてもよいが、セパレータ13の幅全体を支持した方が、折り重ねるときの折り曲げ部分の精度を高く維持しやすい。
【0028】
セパレータ13は、上述した正極シート(正極板、正極層)11と負極シート(負極板、負極層)12との短絡を防止するもので、電解液を保持する機能を備えていてもよい。セパレータ13は、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン等から構成される微多孔性膜であり、過電流が流れると、その発熱によって膜の空孔が閉塞され電流を遮断する機能をも有する。セパレータ13は、ポリオレフィンなどの単層膜のみに限られず、ポリプロピレン層をポリエチレン層でサンドイッチした三層構造や、ポリオレフィン微多孔膜と有機不織布などを積層したものも用いることができる。なお、本明細書においてセパレータとは電極間に挟まれる膜状の物質を示している。
【0029】
積層ユニット50の第1のウィング71は、第1の壁面51と、第1の壁面51に垂直な方向に延びる第3の壁面53とを含む全体として逆L字型のユニットであり、第1の壁面51は、セパレータ13を吸着(吸引)するための複数の吸引孔41を備えている。第2のウィング72は、第2の壁面52と、第2の壁面52に垂直な方向に延びる第4の壁面54とを含む、全体として逆L字型のユニットであり、第2の壁面52は、セパレータ13を吸着(吸引)するための複数の吸引孔41を備えている。
【0030】
積層ユニット50は、第1のウィング71を制御する第1のサブユニット73と、第2のウィング72を制御する第2のサブユニット74とを含む。第1のサブユニット73は、第1のウィング71を基端51aを中心に旋回させて積層領域56に転倒した状態と反転した状態(垂直方向に起立した状態)とに駆動するモーター75と、第1の壁面51に設けられた複数の吸引孔41を負圧にして第1の壁面51に吸着を与えてセパレータ13を保持したり、負圧をブレークしてセパレータ13を解放したりする吸着制御ユニット77とを含む。具体的には、第1のサブユニット73は、第2の壁面52が転倒したときに第1の壁面51でセパレータ13の連続体を吸着し、セパレータ13の連続体を吸着した状態で積層領域(第1の領域)56に第1の壁面51を転倒させ、セパレータ13の連続体を解放した状態で第1の壁面51を反転する。
【0031】
第2のサブユニット74は、第2のウィング72を基端52aを中心に旋回させて積層領域56に転倒した状態と反転した状態(起立した状態)とに駆動するモーター76と、第2の壁面52に設けられた複数の吸引孔41を負圧にして第2の壁面52に吸着を与えてセパレータ13を保持したり、負圧をブレークしてセパレータ13を解放したりする吸着制御ユニット78とを含む。第2のサブユニット74は、第1の壁面51が転倒したときに第2の壁面52でセパレータ13の連続体を吸着し、セパレータ13の連続体を吸着した状態で積層領域(第1の領域)56に第2の壁面52を転倒させ、セパレータ13の連続体を解放した状態で第2の壁面52を反転する。
【0032】
それぞれの壁面51および52の基端51aおよび52aは、積層体(電極体)10の断面(平面視)と同一サイズの積層領域56のX方向に対峙する辺と一致するように配置される。第1の壁面51の長さ(高さ)L1は、積層領域56の長さ(幅)L1、すなわち、積層体10の長さ(幅)と同じであり、第1のウィング71が時計方向に旋回すると、第1の壁面51が積層領域56に重なり、第1の壁面51に吸着されていたセパレータ13が積層領域56に折り畳まれて重ねられ、長さ(幅)L1の電極体10が製造される。
【0033】
このとき、第1の壁面51の上端51bは、対峙する第2の壁面52の基端52aのごく近傍に到達し、第3の壁面53は、第2の壁面52にごく短い距離で対峙(対向、対面)する。したがって、第1のウィング71が積層領域56に向かって転倒すると、セパレータ13の連続体が積層領域56に折り畳まれるのに加えて、セパレータ13の連続体は第1の壁面51の上端51bにより第2のウィング72の第2の壁面52に導かれ、第1のウィング71の第3の壁面53と、第2のウィング72の第2の壁面52とに挟まれた状態になる。この状態で、第1の壁面51の吸引(吸着)を解除し、第2の壁面52でセパレータ13の連続体を吸着すると、セパレータ13の連続体は緩むことなく、第1の壁面51から第2の壁面52に支持が受け継がれる。
【0034】
第2のウィング72により、セパレータ13の連続体が積層領域56に折り畳まれて重ねられるときも同様である。したがって、セパレータ13の連続体は、積層領域56に折り重ねられるときに、第1の壁面51および第2の壁面52に相互に吸着支持される。さらに、セパレータ13の支持が、第1の壁面51から第2の壁面52に受け継がれるときは、一方の壁面51または52によりセパレータ13が積層領域56に畳まれて押圧されており、さらに、他方の壁面51または52と、第3の壁面または第4の壁面53または54とにより挟まれた状態になる。したがって、第1の壁面51から第2の壁面52にセパレータ13の支持が移行するとき、または、その逆に支持が移行するときに、セパレータ13が動いたり、支持が緩んだりすることはなく、一定のテンションおよび長さで、精度よくセパレータ13を積層領域56に折り重ねることができる。
【0035】
このため、セパレータ13に対してテンションを加えるテンションローラー132においては、セパレータ13に対し、第1の壁面51および第2の壁面52に到達する際に緩みがない程度の必要最小限の張力を与えるように調整されていればよい。したがって、セパレータ13に対する張力を比較的緩くすることができ、セパレータ13が切れたり、折り重ねた後に縮んでしまったりするようなトラブルを未然に防止できる。また、セパレータ13の張力が弱過ぎて、折り重ねている間に皺がよったり、ゆがんだりするトラブルも未然に防止できる。
【0036】
特に、第1の壁面51および第2の壁面52は、セパレータ13を折り重ねる積層領域56と同じ長さL1を備え、幅も同じかまたは広い。したがって、第1の壁面51および第2の壁面52は、セパレータ13を折り重ねるサイズおよび面積で、吸着支持することができ、折り畳むときに皺が発生したり、セパレータ13がゆがんだりするトラブルを未然に防止できる。また、第1の壁面51の先端51bには第3の壁面53が設けられ、第2の壁面52の先端52bには第4の壁面54が設けられており、セパレータ13を折り返す部分が第3の壁面53および第4の壁面54によりガイドされ、精度よく他方の壁面51または52に吸着される。したがって、セパレータ13を折り返す部分、すなわち、折り重ねられたセパレータ13の端部の精度も確保しやすい。このため、この積層装置1により、品質の高い積層体(電極体)10を製造できる。
【0037】
積層ステージ55は最初に折り重ねられるセパレータ13を吸着支持する吸引孔(不図示)を有する。積層ステージ55の上でセパレータ13が正極シート11および負極シート12を挟みながら折り重ねられると、積層ステージ55は、位置調整ユニット59として動くステッピングモーターにより、ウィング71および72を回転支持する支持台79に対して徐々に降下する。したがって、第1の壁面51および第2の壁面52によりセパレータ13が折り重ねられる積層領域56の位置は、常に支持台79の上面に一定になるように制御される。このため、第1の壁面51および第2の壁面52によりセパレータ13が折り重ねられる角度や、第1の壁面51および第2の壁面52によりセパレータ13が積層体10に押しつけられる(加圧される)力も一定に保たれる。位置調整ユニット59は、積層ステージ55の代わりに、支持台79の位置を制御してもよく、両者の位置を制御してもよい。
【0038】
図5に、積層ユニット50において、積層体(電極体)10が製造される過程を示している。
図5(a)において、第1のウィング71が第1の壁面51にセパレータ13の連続体(セパレータ)を吸着した状態で、時計方向に回転して積層領域56に対し転倒する。
図5(b)において、第1の壁面51によりセパレータ13は積層領域56に折り畳まれ、重ねられる。それとともに、第3の壁面53によりセパレータ13は第2の壁面52に対向するようにガイドされ、セパレータ13は第2の壁面52により吸着支持される。
【0039】
その後、
図5(c)において、第1のウィング71はセパレータ13を解放した状態で反時計方向に回転(反転)し、第1の壁面51は積層領域56からほぼ直角な方向に起き上がる。それとともに、第1の搬送ユニット61により正極シート11が積層領域56に搬入され、折り重ねられたセパレータ13の上に正極シート11が積み重ねられる。その後、第2のウィング72が第2の壁面52にセパレータ13を吸着支持した状態で、反時計方向に回転(転倒)する。
【0040】
図5(d)において、第2の壁面52によりセパレータ13は積層領域56に折り重ねられる。それとともに、第4の壁面54によりセパレータ13は第1の壁面51に対向するようにガイドされ、セパレータ13は第1の壁面51により吸着支持される。その後、
図5(e)において、第2のウィング72はセパレータ13を解放した状態で時計方向に回転(反転)し、第2の壁面52は積層領域56から起き上がる。それとともに、第2の搬送ユニット62により負極シート12が積層領域56に搬入され、折り重ねられたセパレータ13の上に負極シート12が積み重ねられる。この後、
図5(a)に戻って、所定の数の正極シート11および負極シート12がセパレータ13を挟んで積層されるまで、上記の工程を繰り返す。
【0041】
この間、積層ステージ55の位置は、積み重ねられるセパレータ13、正極シート11および負極シート12の厚みに対応して、位置調整ユニット59により下降される。また、セパレータ13の供給位置は、第3の搬送ユニット135の供給ローラー136がスライダー137に沿ってX方向に移動することにより、第1の壁面51および第2の壁面52にほぼ沿った位置になるようにX方向に前後に移動する。
【0042】
図6に、この積層装置1を制御ユニット100により制御し、電池用の積層体(電極体、セル)10を製造する過程を示している。制御ユニット100は、CPU、メモリなどのコンピュータ資源を備えたコントローラであり、プログラム(プログラム製品)により積層装置1を制御する。
【0043】
まず、ステップ81で、モーター75を制御して、連続したセパレータ13を吸着した状態で第1の壁面51を転倒させ積層領域56にセパレータ13を折り重ねる。ステップ82で、第2の壁面52の吸着を開始し、その後、第1の壁面51の吸着を解除する。これにより、第1の壁面51から第2の壁面52にセパレータ13の支持が移行する。ステップ83で、第1の壁面51を反転させて、セパレータ13を解放した状態で第1の壁面51を起こす。ステップ84で、第1の搬送ユニット61により正極シート11を積層領域56に搬入してセパレータ13に積み重ねる。
【0044】
ステップ85で、モーター76を制御して、連続したセパレータ13を吸着した状態で第2の壁面52を転倒させ積層領域56にセパレータ13を折り重ねる。ステップ86で、第1の壁面51の吸着を開始し、その後、第2の壁面52の吸着を解除する。これにより、第2の壁面52から第1の壁面51にセパレータ13の支持が移行する。ステップ87で、第2の壁面52を反転させて、セパレータ13を解放した状態で第2の壁面52を起こす。ステップ88で、第2の搬送ユニット62により負極シート12を積層領域56に搬入してセパレータ13に積み重ねる。
【0045】
ステップ89で、所定の量(回数)の折り重ね(積層)作業が終了するまで、ステップ81から88を繰り返す。以上の工程により、積層装置1では、連続したセパレータ13を用いてセル10が次々と製造される。
【0046】
なお、上記では、積層装置1によりリチウムイオン電池用の電極体(セル)10を製造する例を説明しているが、リチウムイオン電池に限らず、積層型の電極体を含む電池の製造に積層装置1は好適である。