【文献】
福田嘉明,尿沈渣検査結果の入力システムの比較,都臨技会誌,日本,2006年 5月 1日,Vol.34,No.3,155〜162頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記尿検体について信頼性の低い又は異常な分析値を示す分析項目がある場合、信頼性が低い又は異常である旨の情報を前記分析項目に関連付けて表示する、請求項1又は2に記載の検体検査システム。
前記第1領域と、前記第2領域との間の関連する前記分析項目は、潜血と赤血球、蛋白濃度と円柱、白血球と白血球、亜硝酸塩と細菌、および、比重と導電率の組合せからなる群より選ばれた一の組合せである、請求項1ないし5の何れか一項に記載の検体検査システム。
前記制御部は、前記尿定性装置の分析結果と前記尿沈渣装置の分析結果との間でクロスチェックを行い、前記参考情報表示領域において、前記クロスチェックの結果を表示する、請求項1ないし6の何れか一項に記載の検体検査システム。
前記制御部は、前記尿検体について目視検査が必要であると判定した場合に、前記参考情報表示領域において、目視が必要であると判定した根拠となる情報を表示する、請求項8に記載の検体検査システム。
前記制御部は、前記尿検体の目視検査に関するコメントの入力を前記入力部を介して受け付けて、前記参考情報表示領域において、前記尿検体の目視検査に関するコメントを表示する、請求項1ないし10の何れか一項に記載の検体検査システム。
前記制御部は、前記尿検体について得られた少なくとも2つの分析項目の分析値が所定の関係を有する場合に、前記参考情報表示領域において、前記所定の関係から導かれる疾患に関する前記注釈情報を表示する、請求項12に記載の検体検査システム。
前記制御部は、前記尿検体の分析において異常が生じた場合に、前記参考情報表示領域において、前記尿検体の分析において異常が生じたことを示す前記注釈情報を表示する、請求項12または13に記載の検体検査システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、検体検査システム10は、尿定性装置20と、尿沈渣装置30と、搬送装置40と、情報処理装置50と、顕微鏡60と、を備える。搬送装置40は、複数の検体容器11を保持した検体ラック12を搬送する。検体容器11は、被検者から採取した検体が収容される。本実施形態の検体検査システム10は、病院に設置されることが想定されているため、検体は患者から採取される。
【0013】
尿定性装置20は、尿定性に関する複数の分析項目について尿中の化学成分を分析する。分析項目とは、分析対象となる化学成分の種類を指し、尿定性装置20の分析項目には、ブドウ糖(GLU)、蛋白質(PRO)、アルブミン(ALB)、ビリルビン(BIL)、ウロビリノーゲン(URO)、潜血(OB)、ケトン体(KET)、亜硝酸塩(NIT)、白血球(WBC)等が含まれる。尿定性装置20の分析項目には、さらにpH(PH)、比重(SG)、色調(COL)等も含まれる。
【0014】
尿定性装置20は、検体容器11がバーコードリーダ20aの正面に位置付けられると、この検体容器11に貼付されたラベルからバーコード情報を読み取り、検体IDを取得する。尿定性装置20は、取得した検体IDに基づいて情報処理装置50に測定オーダの問い合わせを行い、情報処理装置50から測定オーダを受信する。尿定性装置20は、検体容器11がノズル20bの直下に位置付けられると、ノズル20bを介して検体容器11に収容された検体を吸引する。尿定性装置20は、測定オーダに基づいて検体の測定を行う。尿定性装置20は、測定結果に基づいて分析を行い、分析結果を情報処理装置50に送信する。
【0015】
尿定性装置20の分析により、尿タンパクや尿糖、尿潜血などが検出された場合、腎臓や尿路系の病気の種類や部位を推測するため、尿沈渣装置30により検査が行われ、尿中の有形成分の数や有無が調べられる。
【0016】
尿沈渣装置30は、尿沈渣に関する複数の分析項目について尿中の有形成分を分析する。分析項目とは、分析対象となる有形成分の種類を指し、尿沈渣装置30の分析項目には、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、上皮細胞(EC)、円柱(CAST)、細菌(BACT)が含まれる。尿沈渣装置30の分析項目には、さらに尿導電率(Cond.)も含まれる。なお、尿沈渣装置30は、研究用のリサーチ項目として、結晶(X’TAL)、酵母様真菌(YLC)、小型円形細胞(SRC)、細胞成分などを含む病的な円柱(Path.CAST)、粘液糸(MUCUS)、精子(SPERM)、赤血球形態情報(RBC−Info.)等を分析することもできる。
【0017】
尿沈渣装置30は、体液中の成分をさらに分析できる。この場合の「体液」とは、血液、尿およびリンパ液は含まず、体腔内に存在する体腔液をいう。具体的には、体液とは、髄液、脳脊髄液、胸水、胸膜液、腹水、心嚢液、関節液、滑液、眼房液、房水等をいう。また、腹膜透析の透析液や腹腔内洗浄液なども体液の一種として含まれる。
【0018】
尿沈渣装置30は、検体容器11がバーコードリーダ30aの正面に位置付けられると、この検体容器11に貼付されたラベルからバーコード情報を読み取り、検体IDを取得する。尿沈渣装置30は、取得した検体IDに基づいて情報処理装置50に測定オーダの問い合わせを行い、情報処理装置50から測定オーダを受信する。尿沈渣装置30は、検体容器11がノズル30bの直下に位置付けられると、ノズル30bを介して検体容器11に収容された検体を吸引する。尿沈渣装置30は、測定オーダに基づいて検体の測定を行う。尿沈渣装置30は、測定結果に基づいて分析を行い、分析結果を情報処理装置50に送信する。
【0019】
顕微鏡60を用いた目視検査は、尿定性装置20の分析結果と尿沈渣装置30の分析結果に基づいて再検査が必要とされた場合に実施される。本実施形態においては、後述するように、情報処理装置50が、尿定性装置20と尿沈渣装置30から受信した分析結果に基づいて、目視検査を行う必要があるか否かを判定する。
【0020】
情報処理装置50は、尿定性装置20と尿沈渣装置30の分析結果を受信して記憶するとともに、記憶した分析結果を表示する。なお、情報処理装置50は、尿定性装置20と尿沈渣装置30の分析結果を記憶せず、尿定性装置20と尿沈渣装置30の分析結果の表示のみを行っても良い。この場合、尿定性装置20と尿沈渣装置30の分析結果を記憶するための他の装置が、別途、検体検査システム10に配置される。そして、情報処理装置50は、他の装置が記憶する分析結果に基づいて、後述するように、分析結果を表示するとともに目視検査結果の入力を受け付ける。
【0021】
情報処理装置50は、制御部51と、記憶部52と、表示部53と、入力部54と、を備える。制御部51は、記憶部52に記憶されたプログラムおよびデータに基づいて処理を行う。記憶部52は、
図2を参照して後述するように、データベース52bを記憶している。制御部51は、尿定性装置20と尿沈渣装置30から受信した検体の分析結果を記憶部52に記憶されたデータベース52bの分析結果テーブルに記憶させる。制御部51は、入力値表示領域110と参考情報表示領域120を備える画面100を、表示部53に表示させる。入力値表示領域110と参考情報表示領域120は、選択された1つの検体に関する情報を表示する。
【0022】
参考情報表示領域120は、記憶部52に記憶されたデータベース52bの分析結果テーブルから読み出された検体の分析結果を表示するための領域である。入力値表示領域110は、顕微鏡60を用いた検体の目視検査において使用される領域である。オペレータは、目視検査を行う必要があると判定された検体をスライドガラスに滴下し、スライドガラス上の検体を、顕微鏡60を用いて観察することにより目視検査を行う。オペレータは、入力部54を用いて、目視検査においてオペレータが判定した有形成分の種類の入力を行う。制御部51は、画面100が表示されている状態で、検体の目視検査において計数された有形成分の値を入力部54を介して受け付け、受け付けた計数値を入力値表示領域110に表示させる。制御部51は、入力値表示領域110に表示された計数値を、目視検査結果として記憶部52に記憶されたデータベース52bの分析結果テーブルに記憶させる。
【0023】
参考情報表示領域120は、領域121〜123を備える。領域121は、尿定性装置20による検体の分析結果を表示するための領域である。領域122は、尿沈渣装置30による検体の分析結果を表示するための領域である。領域123は、対象となる検体について、記憶部52に記憶されたデータベース52bの分析結果テーブルから読み出された目視検査結果を表示するための領域である。
【0024】
このように表示および処理が行われると、オペレータは、目視検査を行う際に、画面100により検体の分析結果を参考情報として参照できるため、目視検査における注意点等を事前に把握した上で目視検査を行うことができる。これにより、目視検査の効率化と精度向上を図ることができる。また、オペレータは、画面100が表示されている状態で、顕微鏡60を用いて行った目視検査において計数した有形成分の値を、入力部54を介して情報処理装置50に対して入力できる。これにより、参考情報の参照と目視検査結果の入力とを連続的に行うことができるため、目視検査結果の入力の効率化を図ることができる。
【0025】
また、入力値表示領域110と、目視検査の対象となる検体について、記憶部52に記憶されたデータベース52bの分析結果テーブルから読み出された目視検査結果を表示するための領域123とが、1つの画面100に表示される。これにより、オペレータは、他のオペレータが既に行った目視検査結果を参考情報として参照できる。たとえば、目視検査が複数のオペレータにより行われる場合に、目視検査を行おうとするオペレータは、他のオペレータが既に行った目視検査を参考情報として参照できる。よって、目視検査のミスなどを防止するとともに、さらに目視検査の効率化と精度向上を図ることができる。
【0026】
また、参考情報表示領域120において、領域121〜123が隣り合うよう表示される。これにより、オペレータは、参考情報として参照する領域121、122の分析結果および領域123の目視検査結果を、表示部53内で容易に見渡せる。よって、目視検査の効率化を測ることができる。
【0027】
図2に示すように、尿定性装置20は、バーコードリーダ20aと、定性制御部21と、記憶部22と、吸引部23と、試験紙供給部24と、検出部25と、インターフェース26と、を備える。定性制御部21は、たとえばCPUにより構成される。記憶部22は、たとえばROM、RAM、ハードディスクにより構成される。定性制御部21は、記憶部22に記憶されたプログラムに基づいて処理を行う。定性制御部21は、インターフェース26を介して、尿定性装置20の各部を制御し、搬送装置40を制御し、情報処理装置50と通信を行う。
【0028】
吸引部23は、
図1に示したノズル20bを介して検体容器11に収容された検体を吸引し、吸引した検体を試験紙供給部24に移送する。試験紙供給部24は、測定に必要な試験紙を、試験紙が収容されている試験紙フィーダから取り出し、取り出した試験紙の測定領域に検体を付着させる。検出部25は、検体が付着された試験紙の測定領域を撮像する。なお、検出部25は、反射光を測定できれば良く、他の反射光測定系であっても良い。
【0029】
定性制御部21は、検出部25により得られた測定結果に基づいて分析を行う。具体的には、定性制御部21は、取得された撮像データに対して画像処理を施すことによって、検体が付着された測定領域の呈色状況を判定し、各測定領域に対応する分析項目の判定を行う。測定領域の呈色状況は、複数の段階に区分される。たとえば、呈色状況は、目的成分の濃度に応じて、「−」、「±」、「+」、「2+」、「3+」、…、「7+」のように9段階に区分される。このように、尿定性装置20は、尿定性測定として、9段階区分のような半定量測定を行う。なお、尿定性装置20は、尿定性測定として、2段階区分のような定性測定を行っても良い。この場合、測定領域の呈色状況は、「+」、「−」のように成分の有無を示すよう2段階に区分される。定性制御部21は、検体ごとに生成した分析結果を情報処理装置50に送信する。
【0030】
尿沈渣装置30は、バーコードリーダ30aと、沈渣制御部31と、記憶部32と、吸引部33と、試料調製部34と、検出部35と、インターフェース36と、を備える。沈渣制御部31は、たとえばCPUにより構成される。記憶部32は、たとえばROM、RAM、ハードディスクにより構成される。沈渣制御部31は、記憶部32に記憶されたプログラムに基づいて処理を行う。沈渣制御部31は、インターフェース36を介して、尿沈渣装置30の各部を制御し、情報処理装置50と通信を行う。
【0031】
吸引部33は、
図1に示したノズル30bを介して検体容器11に収容された検体を吸引し、吸引した検体を試料調製部34に移送する。試料調製部34は、検体と試薬を混合し、測定用の試料を調製する。検出部35は、試料調製部34により調製された試料をフローサイトメータにより測定する。
【0032】
沈渣制御部31は、検出部35により得られた測定結果に基づいて分析を行う。具体的には、沈渣制御部31は、検出部35により得られた検出信号に基づいて、測定試料中の有形成分の分類を行う。沈渣制御部31は、分類した有形成分をそれぞれ計数することにより、分析項目ごとに分析結果を取得する。沈渣制御部31は、検体ごとに生成した分析結果を情報処理装置50に送信する。
【0033】
なお、検出部35は、フローサイトメータを用いて測定を行うことに代えて、検体中の有形成分の形態を直接光学的に撮像しても良い。この場合、検出部35は、たとえば、固形成分の標本像の焦点を自動で合わせる機能を持った顕微鏡により構成される。沈渣制御部31は、撮像された画像を処理して、試料中の成分を識別する。
【0034】
情報処理装置50は、制御部51と、記憶部52と、表示部53と、入力部54と、読出装置55と、インターフェース56と、を備える。制御部51は、たとえばCPUにより構成される。記憶部52は、たとえばROM、RAM、ハードディスクにより構成される。制御部51は、記憶部52に記憶された各種プログラムに基づいて処理を行う。制御部51は、インターフェース56を介して、情報処理装置50の各部を制御し、尿定性装置20および尿沈渣装置30と通信を行う。
【0035】
記憶部52は、検体に対する目視検査の結果を入力するための処理をコンピュータに実行させるプログラム52aを記憶している。プログラム52aは、目視検査の際に用いる画面100を表示部53に表示し、入力部54を介して受け付けた計数値を、目視検査結果として記憶部52に記憶されたデータベース52bの分析結果テーブルに記憶する処理等を含む。また、プログラム52aは、検体の一覧を示す画面200を表示部53に表示させる。画面200については、追って
図5を参照して説明する。また、プログラム52aは、表示の切替指示に応じて、参考情報表示領域120に表示する情報を切り替える。参考情報表示領域120に表示される詳細な情報については、追って
図6〜14を参照して説明する。このように、制御部51は、プログラム52aを実行することにより、表示部53に画面を表示し、入力部54を介して入力された指示を処理する。
【0036】
また、記憶部52は、患者に関する情報と、検体に関する情報と、測定オーダに関する情報と、分析結果とを記憶するためのデータベース52bを記憶している。データベース52bについては、追って
図4(a)〜(d)を参照して説明する。また、記憶部52は、後述するレビューフラグ、高低フラグ、分析ルールコメント、目視フラグ、およびルールコメントを設定する際に用いるルール52cを記憶している。ルール52cは、複数のルール情報を含んでいる。オペレータは、表示部53に設定画面が表示されている状態で、入力部54を介してルール52cの内容を変更することにより、検体検査システム10の使用環境に応じて適切なルール52cを設定できる。ルール52cについては、追って
図4(d)を参照して説明する。
【0037】
表示部53は、たとえばディスプレイにより構成される。入力部54は、たとえばキーボードおよびマウスにより構成される。表示部53と入力部54は、一体として構成されても良く、たとえばタッチパネルにより構成されても良い。この場合、上述した画面100および後述する画面200等は、タッチパネルに表示される。オペレータは、タッチパネルに対してタッチ操作を行うことにより、キーボードおよびマウスを使用した場合の入力と同様の入力を行うことができる。読出装置55は、たとえば光ディスクドライブにより構成される。読出装置55は、光ディスク57に記録されたプログラムを読み出すことができる。これにより、記憶部52に記憶されたプログラム52aを、必要に応じて更新できる。
【0038】
図3に示すように、尿定性装置20と尿沈渣装置30を、以下、合わせて「分析装置」と称する。分析装置から情報処理装置50に対して測定オーダの問い合わせが行われると、情報処理装置50から分析装置に対して測定オーダが送信される。尿定性装置20と尿沈渣装置30は、それぞれ、測定オーダに基づいて測定を行う。定性制御部21と沈渣制御部31は、それぞれ、各装置で得られた測定結果に基づいて分析結果情報を生成する。分析結果情報は、検体ID、測定日時、分析値、グラフ、分析装置フラグ、レビューコメント、リサーチ情報などを含む。尿定性装置20と尿沈渣装置30は、それぞれ分析結果情報を情報処理装置50に送信し、情報処理装置50は、分析装置が送信した分析結果情報を受信し、分析結果情報をデータベース52bに記憶する。
【0039】
分析結果情報に含まれる各情報は、以下の通りである。検体IDは、検体を個別に識別可能な番号である。測定日時は、分析装置で測定が行われた日時である。分析値は、分析結果を示す値である。分析値には、たとえば、分析項目に応じて、「Yellow」などの文字列、「1+」などの数値レベル、「40.3」などの数値がある。分析結果情報には、検体の分析結果として、各分析項目に対応する分析値が含まれる。
【0040】
グラフは、検体中の成分の分布を示す分布図であり、たとえば、分析の際に生成されたスキャッタグラムやヒストグラムの画像である。尿沈渣装置30が生成するグラフには、検出部35により得られる検体の測定結果に基づいて軸が設定されている。尿沈渣装置30が生成するグラフは、たとえば、検体中の有形成分から生じた異なる2つの光の強度が縦軸と横軸に設定されたスキャッタグラムの画像や、検体中の有形成分から生じた1つの光の強度が横軸に設定され、頻度が縦軸に設定されたヒストグラムの画像である。なお、グラフは、尿沈渣装置30が生成する分析結果情報にのみ含まれる。
【0041】
分析装置フラグは、分析値に関するフラグである。分析結果情報には、各分析項目に対応する分析装置フラグが含まれる。分析装置フラグには、たとえば、異常な分析値であることを示すフラグ、要再検を示すフラグ、信頼性が低い分析値であることを示すフラグがある。
【0042】
レビューコメントは、分析結果に関する注釈情報である。たとえば、尿沈渣装置30は、分析の際にスキャッタグラムで赤血球と結晶を分画できなかった場合、レビューコメントに「RBC/X’TAL分画異常」を設定する。リサーチ情報は、分析結果に関する研究用の注釈情報である。たとえば、尿沈渣装置30は、尿細管上皮細胞が多いという分析結果と赤血球形態が不均一であるという分析結果を得た場合、リサーチ情報に「腎疾患の疑い」を設定する。このように、尿定性装置20と尿沈渣装置30は、それぞれ、当該装置において少なくとも2つの分析項目の分析値が所定の関係を有する場合に、リサーチ情報に、当該所定の関係から導かれる疾患に関する注釈情報を設定する。
【0043】
図4(a)〜(d)に示すように、データベース52bは、患者テーブルと、検体テーブルと、測定オーダテーブルと、分析結果テーブルと、を含む。
【0044】
図4(a)に示すように、患者テーブルは、患者の属性情報を記憶する。患者テーブルは、患者ID、氏名、性別、生年月日、年齢、血液型、既往歴、患者の健康状態などの項目を含む。
図4(b)に示すように、検体テーブルは、検体に関する情報を記憶する。検体テーブルは、検体ID、患者ID、受付日、受付番号、診療科目、病棟名、かかりつけの医師名などの項目を含む。
図4(c)に示すように、測定オーダテーブルは、測定オーダに関する情報を記憶する。測定オーダテーブルは、種別、分析項目などの項目を含む。種別は、検体が尿と体液の何れであるかを示す。分析項目は、対象となる検体に対して設定された分析項目を示す。分析装置は、分析項目に従って測定を行い、測定結果から分析項目ごとの分析値を生成する。
【0045】
図4(d)に示すように、分析結果テーブルは、分析結果に関する情報を記憶する。分析結果テーブルは、検体ID、測定日時、分析値、グラフ、分析装置フラグ、レビューコメント、リサーチ情報、レビューフラグ、高低フラグ、分析ルールコメント、目視フラグ、ルールコメント、目視検査結果、目視検査結果入力日時、報告コメントなどの項目を含む。
図4(d)において破線で囲んだ項目、すなわち、検体ID、測定日時、分析値、グラフ、分析装置フラグ、レビューコメント、リサーチ情報の項目は、分析装置から受信した分析結果情報に基づいて記憶される。
【0046】
レビューフラグは、ルール52cに基づいて制御部51が判定した分析項目ごとの再検の要否を示すフラグである。高低フラグは、ルール52cに基づいて制御部51が判定した分析項目ごとの分析値の高低を示すフラグである。分析ルールコメントは、ルール52cに基づいて制御部51が生成した分析項目ごとの注釈情報である。たとえば、赤血球に関する分析項目の分析値が大きいとき、制御部51は、この分析項目に対応する分析ルールコメントに、「血尿の疑い」という注釈情報を設定する。
【0047】
目視フラグは、ルール52cに基づいて制御部51が判定した検体に対する目視の要否を示すフラグである。制御部51は、各テーブルの項目がルール52cに含まれる目視の要否を判定するための条件に合致する場合に、目視フラグに目視が必要であることを示すフラグを設定する。たとえば、尿定性装置20における潜血に関する分析値と、尿沈渣装置30における赤血球に関する分析値とが大きく異なる場合に、制御部51は、目視フラグに目視が必要であることを示すフラグを設定する。
【0048】
ルールコメントは、ルール52cに基づいて制御部51が生成した検体に対する注釈情報である。たとえば、制御部51は、ルール52cに基づいて目視が必要と判定した場合に、目視が必要と判定した根拠となる注釈情報などを、ルール52cに基づいてルールコメントに設定する。たとえば、尿定性装置20における潜血に関する分析項目の分析値と、尿沈渣装置30における赤血球に関する分析項目の分析値とが大きく異なる場合に、制御部51は、ルール52cに設定された「尿定性装置の潜血の値と尿沈渣装置の赤血球の値とが大きく異なったため」という注釈情報をルールコメントに設定する。
【0049】
また、制御部51は、ルール52cに基づいて対象検体についての少なくとも2つの分析項目の分析値が所定の関係を有すると判定した場合に、当該所定の関係から導かれる疾患に関する注釈情報を、ルール52cに基づいてルールコメントに設定する。たとえば、尿定性装置20におけるアルブミンとクレアチニンの比が所定値よりも大きく、かつ、尿沈渣装置30における円柱濃度に関する分析値が所定値よりも大きい場合に、制御部51は、ルール52cに設定された「早期糖尿病性腎症の疑い」という注釈情報をルールコメントに設定する。尿定性装置20における蛋白濃度に関する分析値が所定値よりも大きく、かつ、尿沈渣装置30における赤血球に関する分析値が所定値よりも大きい場合に、制御部51は、ルール52cに設定された「慢性腎炎の疑い」という注釈情報をルールコメントに設定する。
【0050】
また、制御部51は、ルール52cに基づいて、尿定性装置20の分析結果と尿沈渣装置30の分析結果とを比較して、分析結果に食い違いがないかを調べるクロスチェックを行う。制御部51は、ルール52cに基づいてクロスチェックを行い、クロスチェックの結果をルールコメントに設定する。
【0051】
制御部51は、レビューフラグ、高低フラグ、分析ルールコメント、目視フラグ、およびルールコメントを、所定のタイミングで設定する。たとえば、制御部51は、検体に対して行われた全ての分析項目の分析値を分析結果テーブルに記憶したタイミングで、ルール52cに基づく判定を行い、上記各値にフラグや注釈情報を設定する。制御部51は、複数の注釈情報を生成した場合、ルールコメントに複数の注釈情報を記憶させる。
【0052】
目視検査結果は、入力部54を介して入力された検査項目ごとの目視検査の結果である。目視検査結果入力日時は、目視検査結果が分析結果テーブルに保存された日時である。報告コメントは、目視検査の際にオペレータが入力した目視検査に関するコメントである。
【0053】
なお、データベース52bに設定されるテーブルは、
図4(a)〜(d)に示す構成に限られない。データベース52bが、患者に関する情報と、検体に関する情報と、測定オーダに関する情報と、分析結果に関する情報とを記憶できれば良い。
【0054】
次に、情報処理装置50の表示部53に表示される画面100、200の詳細な構成について説明する。画面100、200の表示、画面100、200の表示、および、画面100、200内の表示内容の切り替えは、全て制御部51がプログラム52aを実行することにより行う。
【0055】
図5に示すように、画面200は、中央部に配置された検体一覧表示領域210と、上部に配置された目視入力ボタン220とを備える。画面200は、入力部54を介して、後述する
図6に示す一覧表示ボタン101が押されると、表示部53に表示される。
【0056】
検体一覧表示領域210は、データベース52bの各テーブルから読み出された情報に基づいて、検体ごとの情報をリスト形式で表示する。検体一覧表示領域210は、左から順に、「検体ID」、尿定性の分析結果の状態を示す「定性」、尿沈渣の分析結果の状態を示す「沈渣」、目視検査結果の状態を示す「目視」、体液の分析結果の状態を示す「体液」、体液の目視検査結果の状態を示す「目視体液」、「患者ID」、「患者氏名」などの項目を含む。横方向に表示される項目の範囲および縦方向に表示される検体情報の範囲は、検体一覧表示領域210の右側および下側に配置されたスクロール操作部によって変更可能である。
【0057】
「定性」のチェックマークは、尿定性の分析結果がデータベース52bの分析結果テーブルに記憶されている状態を示す。「沈渣」のチェックマークは、尿沈渣の分析結果がデータベース52bの分析結果テーブルに記憶されている状態を示す。「目視」のチェックマークは、尿検体の目視検査結果がデータベース52bの分析結果テーブルに記憶されている状態を示す。「目視」の丸マークは、尿検体の目視検査が必要であると判定され、分析結果テーブルの目視フラグに目視の必要があることを示すフラグが設定されている状態を示す。
【0058】
「体液」のチェックマークは、尿沈渣装置30による体液検体の分析結果がデータベース52bの分析結果テーブルに記憶されている状態を示す。「目視体液」のチェックマークは、体液検体の目視検査結果がデータベース52bの分析結果テーブルに記憶されている状態を示す。「目視体液」の丸マークは、体液検体の目視検査が必要であると判定され、分析結果テーブルの目視フラグに目視の必要があることを示すフラグが設定されている状態を示す。
【0059】
「目視」が丸マークとなっている検体が選択された状態で、入力部54を介して目視入力ボタン220が押されると、検体一覧表示領域210で選択された尿検体に関する情報を含む画面100が表示部53に表示される。この場合、
図6に示すような画面100が表示される。一方、「目視体液」が丸マークとなっている検体が選択された状態で、入力部54を介して目視入力ボタン220が押されると、検体一覧表示領域210で選択された体液検体に関する情報を含む画面100を表示部53に表示する。この場合、
図14に示すような画面100が表示される。
【0060】
図6に示す画面100は、入力値表示領域110と、参考情報表示領域120と、見出し情報表示領域130と、一覧表示ボタン101と、保存ボタン102と、コメント入力ボタン103と、を備える。
【0061】
見出し情報表示領域130は、領域131、132を備える。領域131は、患者情報テーブルから読み出された情報に基づいて、検体IDと、患者IDと、患者氏名を表示する。領域132は、測定オーダテーブルから読み出された情報に基づいて、画面100に表示している検体が尿検体と体液検体の何れであるかを表示する。
図6に示す領域132は、画面100に表示している検体の情報が尿検体であることを示している。
【0062】
入力値表示領域110には、画面100に表示している検体について、目視検査において計数された有形成分の値を入力することが可能な目視検査の検査項目が表示されている。検査項目とは検査対象となる有形成分の種類を指す。入力値表示領域110に表示される目視検査の複数の検査項目は、尿沈渣装置30の分析項目と同じ種類の有形成分を検査対象とする検査項目、および、尿沈渣装置30の分析項目より詳細な細分類項目等を含む。
【0063】
尿沈渣装置30の分析項目と同じ種類の有形成分を検査対象とする検査項目としては、たとえば、尿沈渣装置30の分析項目「RBC」で分析対象となった赤血球を検査対象とする検査項目「赤血球」が含まれる。これにより、尿定性装置20の分析項目「OB」の値と尿沈渣装置30の分析項目「RBC」の値が食い違っていたような場合に、オペレータは、目視によって赤血球を確認して計数し、検査項目「赤血球」の計数値を医師に報告できる。
【0064】
また、尿沈渣装置30の分析項目より詳細な細分類項目としては、たとえば、尿沈渣装置30の分析項目「CAST」で分析対象となった円柱を細分類した検査項目「ガラス円柱」、「上皮円柱」、「顆粒円柱」等が含まれる。これにより、尿定性装置20の分析項目「PRO」で高い値が検出され、再検査で実施された尿沈渣装置30の分析項目「CAST」でも値が高くなった場合に、オペレータは、目視によって円柱を確認して細分類・計数し、検査項目「ガラス円柱」、「上皮円柱」、「顆粒円柱」の計数値を医師に報告できる。
【0065】
入力値表示領域110は、目視検査の検査項目ごとに、目視検査による計数値を表示する値表示領域110aと、ボタン110bとを備える。目視検査による計数値を入力する際には、オペレータは、入力部54を介して、入力する目視検査の項目に対応するボタン110bを押し、目視検査の項目に対応する画面を表示させる。
【0066】
たとえば、入力部54を介して、血球と上皮細胞類の目視検査の検査項目に対応するボタン110bが押されると、
図7(a)に示す画面111が、当該ボタン110bの下側に表示される。画面111は、1つの視野における数として、1個未満、1〜4個、5〜9個、10〜19個、20〜29個、30〜49個、50〜99個、100個以上、のうち何れかを入力部54を介して選択可能に構成されている。たとえば、入力部54を介して、円柱類の目視検査の項目に対応するボタン110bが押されると、
図7(b)に示す画面112または
図7(c)に示す画面113が、当該ボタン110bの下側に表示される。画面112は、個数に応じて、“−”、“1+”、“2+”、“3+”、“4+”、“5+”、のうち何れかを入力部54を介して選択可能に構成されている。画面113は、全視野における数として、0個、1〜4個、5〜9個、10〜19個、20〜29個、30〜49個、50〜99個、100〜999個、1000個以上、のうち何れかを入力部54を介して選択可能に構成されている。
【0067】
オペレータは、入力部54を介して、
図7(a)〜(c)に示したような画面111〜113において目視検査で計数した有形成分の値の結果に合致する項目を押すことにより、目視検査の計数値を選択する。これにより、画面111〜113が閉じられ、入力値表示領域110の該当する値表示領域110aの表示が、入力部54を介して入力された計数値に更新される。
【0068】
入力値表示領域110に入力した目視検査結果を保存する場合、オペレータは、入力部54を介して、画面100の上部にある保存ボタン102を押す。これにより、入力値表示領域110に表示された計数値が、目視検査結果として分析結果テーブルの目視検査結果に記憶される。また、分析結果テーブルの目視フラグが、目視が必要であることを示すフラグから目視が不要であることを示すフラグに変更される。これにより、画面200が表示されたときに、「目視」の項目にチェックマークが表示されるようになる。
【0069】
なお、目視検査による計数値を分析結果テーブルへ保存するためのオペレータの指示としては、入力部54を介して保存ボタン102を操作することに限らない。たとえば画面100を閉じる場合に「目視検査の計数値を保存しますか?」といったダイアログが表示されるようにプログラム52aを構成し、ダイアログに表示された「はい」のボタンをオペレータが入力部54を介して選択することにより、目視検査の計数値を分析結果テーブルへ保存してもよい。
【0070】
なお、入力値表示領域110に表示させる項目は、入力部54を介して図示しない設定画面を操作することにより変更可能である。また、顕微鏡60による目視検査を行いながら、入力部54を介して目視検査結果の入力が容易になるよう、入力部54に対するショートカットキーが設定されている。たとえば、入力部54のキーボードに対して「1」のキーを入力すると、赤血球の検査項目が選択され、
図7(a)〜(c)を参照して説明したような入力のための画面が開くように入力値表示領域110が設定されている。これにより、目視検査結果の入力を効率良く行うことができる。また、目視検査の検査項目が選択されると、選択された検査項目に対応付けられた音が、情報処理装置50から鳴る。これにより、選択された目視検査の検査項目を、画面100上で確認できるだけでなく、音によっても確認できるため、誤って目視検査の検査項目を選択することを防ぐことができる。
【0071】
参考情報表示領域120は、切替部120a〜120eを備える。切替部120a〜120eは、参考情報表示領域120の表示内容を切り替えるための切替指示を受け付ける。制御部51は、入力部54を介して切替部120a〜120eに対する切替指示を受け付けると、参考情報表示領域120において、切替指示に応じた表示内容を表示する。具体的には、参考情報表示領域120は、いわゆるタブコントロールにより構成され、切替部120a〜120eは、タブ表示を切り替えるボタンにより構成される。入力部54を介して切替部120a〜120eが押されると、それぞれ、
図6、8、10、11、12に示すように参考情報表示領域120の表示内容が変更される。なお、参考情報表示領域120は、必ずしもタブコントロールにより構成されなくても良く、他の手段によって参考情報表示領域120の表示および切り替えが行われるように構成されても良い。
【0072】
図6に示す参考情報表示領域120は、患者情報表示領域141と、検体情報表示領域142と、報告コメント表示領域143と、レビューコメント表示領域144と、リサーチ情報表示領域145と、ルールコメント表示領域146と、を備える。
【0073】
患者情報表示領域141は、患者情報テーブルから読み出された情報に基づいて、検体を採取した患者の属性情報を表示する。患者情報表示領域141は、たとえば患者氏名、患者ID、性別、年齢、血液型等を表示する。検体情報表示領域142は、検体情報テーブルから読み出された情報に基づいて、検体に関連する情報を表示する。検体情報表示領域142は、たとえば検体ID、受付日、受付番号、診療科目、病棟名等を表示する。
【0074】
報告コメント表示領域143は、分析結果テーブルの報告コメントから読み出された情報に基づいて、オペレータから受け付けた検体の目視検査に関するコメントを表示する。制御部51は、検体の目視検査に関するコメントの入力を受け付ける。具体的には、入力部54を介してコメント入力ボタン103が押されると、制御部51は、コメント入力のための画面を表示して、コメントの入力を受け付ける。コメント入力のための画面が閉じられると、制御部51は、報告コメント表示領域143の表示内容を、受け付けたコメントに更新する。入力部54を介して保存ボタン102が押されると、制御部51は、報告コメント表示領域143に表示しているコメントを、分析結果テーブルの報告コメントに保存する。
【0075】
これにより、オペレータは、たとえば、担当医師に対して「経過観察が必要では?」といったコメントを残すことができる。報告コメント表示領域143には、オペレータが目視で確認した所感を残すこともでき、「病的円柱が多い」、「溶血度合いが大きい」等を残すこともできる。
【0076】
レビューコメント表示領域144は、分析結果テーブルから読み出されたレビューコメントに基づいて、分析装置により生成された検体の分析結果に関する注釈情報を表示する。たとえば、レビューコメント表示領域144は、「RBC/X’TAL分画異常」などを表示する。オペレータは、レビューコメント表示領域144に表示された「RBC/X’TAL分画異常」を確認することにより、赤血球、結晶の自動分類が適切に行われていない可能性があることを知ることが出来、赤血球、結晶に着目して目視検査を行うことができる。
【0077】
リサーチ情報表示領域145は、分析結果テーブルから読み出されたリサーチ情報に基づいて、分析装置により生成された検体の分析結果に関する注釈情報を表示する。たとえば、尿沈渣装置30で尿細管上皮細胞が多いという分析結果と赤血球形態が不均一という分析結果が得られている場合、リサーチ情報表示領域145は、注釈情報として「腎疾患の疑い」などを表示する。
【0078】
上述したように、リサーチ情報には、少なくとも2つの分析項目の分析値が所定の関係を有する場合に、注釈情報が設定される。したがって、リサーチ情報表示領域145は、少なくとも2つの分析項目の分析値が所定の関係を有する場合に、当該所定の関係から導かれる疾患に関する注釈情報を表示することになる。オペレータは、リサーチ情報表示領域145に「腎疾患の疑い」が表示されている場合に、尿細管上皮細胞の存在、赤血球の形態等を目視検査で確認できる。リサーチ情報表示領域145では、「腎疾患の疑い」に代えて、たとえば「赤血球形態が不均一」という表示を行ってもよい。これにより、オペレータは、赤血球に着目して、赤血球の形態が本当に不均一であるか否かを目視で確認できる。
【0079】
ルールコメント表示領域146は、分析結果テーブルから読み出されたルールコメントに基づいて、制御部51が生成した検体に対する注釈情報を表示する。ルールコメント表示領域146は、目視が必要であった場合に、たとえば、目視が必要と判定された根拠となる「尿定性装置の潜血の値と尿沈渣装置の赤血球の値とが大きく異なったため」などを表示する。ルールコメント表示領域146は、少なくとも2つの分析項目の分析値が所定の関係を有する場合に、たとえば、「早期糖尿病性腎症の疑い」、「慢性腎炎の疑い」などを表示する。ルールコメント表示領域146は、尿定性装置20の分析結果と尿沈渣装置30の分析結果との間で行われたクロスチェックの結果を表示する。
【0080】
図8に示す参考情報表示領域120は、
図1を参照して説明したように、領域121〜123を備える。領域121は、尿定性の分析項目の分析値等を表示する。領域122は、尿沈渣の分析項目の分析値等を表示する。領域123は、入力値表示領域110と同様の目視検査の検査項目と、画面100に表示している検体について、記憶部52に記憶されたデータベース52bの分析結果テーブルから読み出された目視検査結果とを表示する。領域121、122は、分析結果テーブルから読み出された測定日時と分析値等に基づいて表示され、領域123は、分析結果テーブルから読み出された目視検査結果に基づいて表示される。横方向に表示される項目の範囲および縦方向に表示される項目の範囲は、参考情報表示領域120の右側および下側に配置されたスクロール操作部によって変更可能である。
【0081】
参考情報表示領域120が
図8に示すように領域123を含む場合も、
図6を参照して説明した保存ボタン102が入力部54を介して押されると、入力値表示領域110に表示された計数値が、目視検査結果として分析結果テーブルの目視検査結果に記憶される。この場合、さらに、分析結果テーブルから目視検査結果が読み出されて、
図8に示す領域123の目視検査の計数値が更新される。
【0082】
図8に示すように、尿定性の各分析項目の分析値と尿沈渣の各分析項目の分析値とが、1つの画面100において表示されると、オペレータは、尿定性の分析結果と尿沈渣の分析結果との間の食い違いを容易に確認できる。すなわち、オペレータは、尿定性の分析結果と尿沈渣の分析結果とを比較して分析結果に食い違いがないかを調べるクロスチェックを、画面100を参照して容易に行うことができる。したがって、オペレータは、分析結果の食い違いに基づいて、効率良く目視検査を行うことができる。
【0083】
領域121、122において、複数の分析項目の分析値は縦方向に並んでおり、領域123において、複数の検査項目の計数値は縦方向に並んでいる。また、領域121〜123は、横方向に隣り合うように並んでいる。このように領域121〜123が表示されると、分析項目の分析値および検査項目の計数値を、横方向に互いに見比べることが容易になる。
【0084】
領域121、122において、複数の分析項目の分析値が横方向に並び、領域123において、複数の検査項目の計数値が横方向に並んでも良い。この場合、領域121〜123が縦方向に隣り合うように並べば、分析項目の分析値および検査項目の計数値を、縦方向に互いに見比べることが容易になる。なお、分析装置の分析項目および目視検査の検査項目が、本実施形態のように多い場合には、特に
図8のように領域121〜123が表示されるのが好ましい。
【0085】
なお、対象となる検体について、尿定性装置20と尿沈渣装置30の両方で分析が行われた場合、
図8に示すように、参考情報表示領域120には領域121、122の両方が表示される。対象となる検体について、尿定性装置20と尿沈渣装置30の何れか一方のみで分析が行われた場合、参考情報表示領域120には分析が行われた装置に対応する領域のみが表示される。
【0086】
領域121内の分析項目と、領域122内の分析項目と、領域123内の検査項目は、並べ替えが可能となるよう構成されている。オペレータは、入力部54を介して、図示しない並べ替えのための画面を操作することにより、領域121〜123において縦方向に並ぶ分析項目および検査項目を並べ替えることができる。これにより、オペレータは、領域121〜123のうち、横に並んだ2つの領域の間で関連する分析項目および検査項目が横方向に隣り合うよう、2つの領域を表示させることができる。
【0087】
図9に示すように、たとえば、オペレータは、領域121の「OB」と、領域122の「RBC」と、領域123の「赤血球」とを横方向に隣り合うように並べることができる。「OB」は潜血に関する分析項目であり、「RBC」は赤血球に関する分析項目であるから、横方向に並ぶ「OB」、「RBC」、「赤血球」は互いに関連する。また、オペレータは、領域121の「WBC」と、領域122の「WBC」と、領域123の「白血球」とを横方向に隣り合うように並べることができる。「WBC」は白血球に関する分析項目であるから、横方向に並ぶ「WBC」、「WBC」、「白血球」は互いに関連する。
【0088】
また、オペレータは、領域121の「PRO」と、領域122の「CAST」と、領域123の「ガラス円柱」、「上皮円柱」または「顆粒円柱」とを横方向に隣り合うように並べることができる。「PRO」は蛋白濃度に関する分析項目であり、「CAST」は円柱に関する分析項目であるから、横方向に並ぶ「PRO」、「CAST」、「ガラス円柱」は互いに関連する。また、オペレータは、領域121の「SG」と領域122の「Cond.」を横方向に隣り合うように並べることができる。「SG」は比重に関する分析項目であり、「Cond.」は導電率に関する分析項目であるから、横方向に並ぶ「SG」、「Cond.」は互いに関連する。また、オペレータは、領域121の「NIT」と領域122の「BACT」を横方向に隣り合うように並べることができる。「NIT」は亜硝酸塩に関する分析項目であり、「BACT」は細菌に関する分析項目であるから、横方向に並ぶ「NIT」、「BACT」は、互いに関連する。
【0089】
なお、
図8に示す領域121、122には、臨床的な意義を有すると見なすことができる分析項目の分析値が表示される。また、後述する
図10に示す領域124には、研究的な意義を有すると見なすことができる分析項目の分析値が表示される。
図8、10に示す全ての分析項目の分析値が1つの画面100に表示される場合には、互いに関連する分析項目および検査項目の組合せは、上述した組合せ以外にも考えられ得る。
【0090】
このように領域121〜123内の分析項目および検査項目は並べ替えが可能であるため、オペレータは、
図9に示すように2つの領域の間で関連する分析項目および検査項目が横方向に隣り合うよう2つの領域内の分析項目および検査項目を表示させることができる。
図9に示すように互いに関連する分析項目および検査項目が横方向に並べられると、
図8に示すように分析項目および検査項目が並べられる場合に比べて、尿定性の分析結果と尿沈渣の分析結果との間の食い違いをさらに容易に確認できる。したがって、オペレータは、分析結果の食い違いに基づいて、さらに効率良く目視検査を行うことができる。
【0091】
領域121、122内の分析項目および領域123内の検査項目は、上述したようにオペレータにより手動で並べ替えられるだけでなく、入力部54を介してボタン等が押されることにより、制御部51が、領域121、122内の分析項目および領域123内の検査項目を
図9に示すように自動で並べ替える。
【0092】
図8に戻り、領域121、122は、「項目名」と「値」の項目のほかに、「R」、「LH」、「M」、「Rule」などの項目を含む。「R」、「LH」、「M」、「Rule」の項目は、それぞれ、分析結果テーブルから読み出されたレビューフラグ、高低フラグ、分析装置フラグ、分析ルールコメントに基づいて表示される。
【0093】
図8に示す領域121、122の場合、「OB」と「RBC」において、「R」の項目に、制御部51が要再検と判定したことを示す「△」が表示され、「LH」の項目に、分析結果が高い値であったことを示す「H」が表示され、「M」の項目に、定性制御部21または沈渣制御部31が要再検と判定したことを示す「2」が表示され、「Rule」の項目に、「血尿の疑い」が表示されている。「SG」と「Cond.」において、「LH」の項目に、分析結果が低い値であったことを示す「L」が表示されている。「PRO」と「CAST」において、「M」の項目に、分析異常を示す「1」が表示されている。「BIL」と「EC」において、「M」の項目に、低信頼を示す「3」が表示されている。
【0094】
このように、領域121、122には、
図8に示すように多くの情報が表示されるため、オペレータは、これらの項目を参考にして、効率良く目視検査を行うことができる。
【0095】
要再検を示す「△」、「2」が付された分析項目が画面上にある場合、オペレータは、そのマークが付された分析項目に着目して目視検査を行うことができる。尿定性装置20にて尿潜血が検出された場合を例にとって説明すると、尿潜血が検出され尿検体中に赤血球の存在が示唆された場合、被検者は、急性糸球体腎炎、腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎、腎腫瘍、腎結石等の疑いがある。そのため、尿検体中の赤血球を確認するために、尿沈渣装置30でも尿検体が検査される。しかしながら、尿沈渣検査で赤血球数がわずかしか検出されなかった場合には、尿検体に異常がなかったのか、尿沈渣結果が不正確であるのか不明であるため、オペレータの目視によって赤血球を確認する必要がある。このような場合、
図8に示す領域121、122において、要再検を示す「△」が潜血の分析項目および赤血球の分析項目に関連付けて表示されるため、オペレータは赤血球に着目して目視検査を行う必要があることを容易に理解でき、確実に目視検査を実施して尿検体中の赤血球を確認し、正確な赤血球数の入力、赤血球の溶血度合いに関するコメントの入力を行うことができる。そのため、尿検体の性状に関する正確な情報を担当医師に対して報告できる。
【0096】
また、低信頼を示す「3」が付された分析項目がある場合、この分析項目について尿定性装置20または尿沈渣装置30が正確な分析結果を得ることができなかったことが示唆されているため、オペレータは、このマークが付された分析項目に着目して目視検査を行うことができる。たとえば、低信頼を示す「3」が「CAST」に付されている場合、円柱に似た形状を有している粘液糸が検体中に出現しているか否かを目視で確認できる。
【0097】
他にも、たとえば分析結果が高い値であったことを示す「H」が「CAST」に付されている場合、オペレータは、円柱に着目して目視検査を行い、円柱の形態、出現数等を目視で確認できる。尿定性装置20にて尿蛋白が検出された場合を例にとって説明すると、尿蛋白が検出された場合、慢性腎炎、糸球体腎炎、腎盂腎炎などの疑いがある。そのため、病気の進行度合いや部位を推測するため、尿沈渣装置30でも尿検体が検査され、得られた尿沈渣結果において円柱の有無、量が確認される。病気が進行している場合には、尿中に、糸球体からもれ出た赤血球や白血球が、尿細管で蛋白成分とともに円柱状になった“赤血球円柱”や“白血球円柱”など、ガラス円柱以外の病的円柱(細胞性円柱)が認められることがあり、このような病的円柱が出現している場合には糸球体腎炎の可能性が高いと判断できる。オペレータは、分析結果が高い値であったことを示す「H」が「CAST」に付されている場合、円柱に着目して目視検査を確実に行うことができ、円柱の形態、量などを観察して「病的円柱が認められる」、「糸球体腎炎か?」といったコメントを入力できる。そのため、尿検体の性状に関する正確な情報を担当医師に対して報告できる。
【0098】
図10に示す参考情報表示領域120は、領域124、125を備える。領域124は、尿沈渣の分析項目のうち研究的な意義を有する分析項目の分析値を表示する。領域124は、分析結果テーブルから読み出された測定日時と分析値に基づいて表示される。領域125は、
図8の領域123と同様である。
【0099】
領域124も、
図8に示した領域122と同様、「R」、「LH」、「M」、「Rule」などの項目を含む。なお、尿定性の分析項目は、全て臨床的な意義を有すると見なされるため、
図10に示す参考情報表示領域120には、尿定性の分析項目は表示されない。
図10に示す場合も、オペレータは、研究的な意義を有する分析項目の分析値を参考情報として参照できるため、目視検査を効率良く行うことができる。
【0100】
図11に示す参考情報表示領域120は、分析結果テーブルから読み出されたグラフに基づいて、スキャッタグラムやヒストグラムなどのグラフ150を表示する。
図11に示す例では、グラフ150は、尿沈渣装置30で分析結果を生成する際に用いられたグラフである。
【0101】
図12に示す参考情報表示領域120は、領域161〜163を備える。領域161は、領域163に分析値とグラフの何れを表示するかの設定を受け付ける。領域161において分析値を表示させるためのラジオボタンが選択されると、
図12に示すように、領域163は、分析結果テーブルから読み出された測定日時と、分析値と、目視検査結果と、目視検査結果入力日時とに基づいて、時系列に沿った分析項目の分析値および目視検査結果を表示する。
図12では、今回、前回、前々回の合計3つの結果が表示されている。さらに過去の結果は、参考情報表示領域120の下側に配置されたスクロール操作部によって表示可能である。
【0102】
領域162は、
図12に示す領域163内において、定性の分析結果と、沈渣の分析結果と、目視検査結果のうち、どの結果を表示するかの設定を受け付ける。領域161においてグラフを表示させるためのラジオボタンが選択されると、
図13に示すように、領域163は、分析結果テーブルから読み出された測定日時とグラフに基づいて、時系列に沿ったスキャッタグラムやヒストグラムなどのグラフが表示される。
【0103】
図14に示す参考情報表示領域120は、領域126、127を備える。領域126は、分析結果テーブルから読み出された測定日時と分析値に基づいて、体液検体の分析項目の分析値を表示する。入力値表示領域110と領域127は、体液検体についての目視検査の項目を表示する。なお、体液検体の場合も、尿検体の場合と同様、切替部120a〜120eに応じて、参考情報表示領域120の表示内容が切り替えられる。
【0104】
図6〜14に示すように参考情報表示領域120が表示されると、オペレータは、参考情報表示領域120を参照することにより、目視検査を効率良く行うことができる。また、オペレータは、入力部54を介して切替部120a〜120eを押すことにより、
図6、8、10〜14に示すように参考情報表示領域120の表示内容を変更できる。これにより、オペレータは、簡単な操作で、参考情報表示領域120の表示内容を切り替えて、目視検査を効率良く行うことができる。
【0105】
次に、制御部51が行う処理についてフローチャートを参照して説明する。
【0106】
図15(a)に示すように、ステップS11において、制御部51は、尿定性装置20または尿沈渣装置30から分析結果情報を受信したか否かを判定する。分析結果情報が受信されると、ステップS12において、制御部51は、受信した分析結果情報を分析結果テーブルに記憶する。
【0107】
図15(b)に示すように、ステップS21において、制御部51は、検体に対して行われた全ての分析項目の分析値を分析結果テーブルに記憶したか否かを判定する。全ての分析値が記憶された場合、ステップS22において、制御部51は、ルール52cに基づいて分析結果テーブルの各項目を設定する。具体的には、制御部51は、対応する検体のレビューフラグ、高低フラグ、分析ルールコメント、目視フラグ、およびルールコメントの項目を設定する。制御部51は、全ての分析値が記憶されたタイミング以外の所定のタイミングにおいても、ルール52cに基づいて分析結果テーブルの各項目を設定しても良い。
【0108】
図16(a)に示すように、ステップS31において、制御部51は、画面200の検体一覧表示領域210において検体が選択されているか否かを判定し、ステップS32において、入力部54を介して目視入力ボタン220が押されたか否かを判定する。検体一覧表示領域210において検体が選択された状態で、入力部54を介して目視入力ボタン220が押されると、ステップS33において、制御部51は、選択された検体が、尿と体液の何れであるかを判定する。ステップS34において、制御部51は、選択された検体に基づいて、
図6または
図14に示した画面100を表示するために必要な情報をデータベース52bから読み出す。ステップS35において、制御部51は、ステップS33で取得した検体の種類と、ステップS34で読み出した情報とに基づいて、
図6または
図14に示したような画面100を表示部53に表示する。
【0109】
図16(b)に示すように、ステップS41において、制御部51は、画面100において、入力部54を介して切替部120a〜120eが押されることにより、切替指示を受け付けたか否かを判定する。切替指示が受け付けられると、ステップS42において、制御部51は、切替指示の内容に応じた参考情報表示領域120を表示するために必要な情報をデータベース52bから読み出す。ステップS43において、制御部51は、ステップS42で読み出した情報に基づいて、参考情報表示領域120の表示内容を切り替える。たとえば、切替部120bが入力部54を介して押された場合、制御部51は、分析結果テーブルから、尿定性装置20のおよび尿沈渣装置30の分析結果および目視検査結果等を読み出し、読み出した分析結果および目視検査結果等を参考情報表示領域120内に表示する。
【0110】
図17(a)に示すように、ステップS51において、制御部51は、参考情報表示領域120の表示内容が
図8に示す状態の場合に、領域121、122内の分析項目および領域123内の検査項目を並べ替えるためのボタン等が、入力部54を介して押されたか否かを判定する。入力部54を介して並べ替えのボタン等が押されると、ステップS52において、制御部51は、
図9に示したように、領域121、122内の分析項目および領域123内の検査項目を並べ替える。なお、制御部51は、参考情報表示領域120の表示内容が
図14に示す状態の場合も、同様に分析項目および検査項目を並べ替える処理を行う。
【0111】
図17(b)に示すように、ステップS61において、制御部51は、画面100において、入力部54を介して保存ボタン102が押されたか否かを判定する。入力部54を介して保存ボタン102が押されると、ステップS62において、制御部51は、入力値表示領域110に表示された計数値を、目視検査結果として分析結果テーブルに記憶する。参考情報表示領域120に領域123が表示されている場合には、制御部51は、さらに、分析結果テーブルから目視検査結果を読み出して、領域123の目視検査の計数値を更新する。また、入力部54を介して保存ボタン102が押されたときに、
図6に示すように報告コメント表示領域143にコメントが表示されている場合は、制御部51は、報告コメント表示領域143に表示されているコメントを、分析結果テーブルに記憶する。