(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体層において、前記ゲートトレンチの側面に沿うように前記半導体層の表面から深さ方向にこの順に形成された第1導電型のソース領域、第2導電型のボディ領域、および、第1導電型のドレイン領域をさらに含み、
前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜を挟んで、前記ソース領域、前記ボディ領域および前記ドレイン領域と対向している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなSiC−MISFETの課題の一つとして、低チャネル移動度がある。低チャネル移動度は、SiCのMIS界面に高密度に存在する欠陥(界面準位が多いこと)が原因である。すなわち、この欠陥が、正孔または電子を捕獲(トラップ)し、MIS界面にチャネルを形成し難くする。
従来は、比較的薄いSiO
2膜をゲート絶縁膜として使用し、Si−MISFETに比べて高い電界でゲートを駆動することによって、捕獲された正孔または電子が欠陥から解放され易くしていた。しかしながら、このやり方は、ゲート絶縁膜の劣化を加速させ、デバイスの信頼性の低下を招くおそれがある。
【0006】
これに対し、ゲート絶縁膜としてAl
2O
3膜やHfO
2等の高誘電率膜(Highk膜)を使用すれば、同じゲート容量を維持しながら、SiO
2膜に比べて膜厚を大きくできるかもしれない。しかし、この場合には、ゲート絶縁膜中に電子が捕獲されてフラットバンド電圧V
FBがシフトし、閾値電圧V
thがシフトするという問題が発生する。
そこで、本発明の目的は、ゲート絶縁膜中への電子トラップを低減し、閾値電圧V
thのシフトを抑制することができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体装置は、SiCからなる半導体層と、前記半導体層に積層された下地SiO
2層、5%以上40%以下の窒素組成を有し、前記下地SiO
2層に積層されたアモルファスまたは微結晶であるAlON層、および、前記AlON層に積層され、前記AlON層との界面部にAlおよび/またはNを含有し、外部からの電子注入を抑制する上側SiO
2層を含む積層構造を有するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極と、を含む。
【0008】
この構成によれば、ゲート絶縁膜が5%以上40%以下の窒素組成を有するAlON層を含むので、ゲート絶縁膜中への電子トラップを低減することができる。これによりフラットバンド電圧V
FBのシフトを抑制することができるので、閾値電圧V
thのシフトを抑制することができる。また、ゲートリーク電流を低減することができる。また、SiO
2の単層膜を用いる場合に比べて、同じゲート容量を維持しながら厚くすることができるので、高い電圧でゲートを駆動させてもゲート絶縁膜の劣化を抑制することができる。その結果、デバイスの信頼性の低下を抑制することができる。
【0009】
また、AlON層はアモルファスまたは微結晶である。この構成により、ゲート絶縁膜中の結晶粒界を減らすことができるので、ゲートリーク電流を低減することができる。
また、ゲート絶縁膜は、半導体層に接する下地SiO
2層と、この下地SiO
2層に積層されたAlON層と、このAlON層に積層された上側SiO
2層とを含む積層構造を有している。ゲート絶縁膜の半導体層に接する部分がSiO
2であれば、フラットバンド電圧V
FBのシフト量を低減することができる。また、トランジスタの特性を従来と同じように制御することができので、トランジスタ特性の設計を簡単にすることができる。
【0010】
また、上側SiO
2層により、AlON層が上側から覆われるので、たとえばゲート電極形成時に、エッチングや洗浄に用いる薬剤からAlON層を保護することができる。その結果、AlON層がダメージを受けることを抑制することができる。前記下地SiO
2層は熱酸化膜であることが好ましい。
また、上側SiO
2層は、AlON層との界面部にAlおよび/またはNを含有している。これにより、ゲート絶縁膜への電子注入を抑制することができる。その結果、電子トラップの低減効果およびゲートリーク電流の低減効果を高めることができる。
【0011】
前記半導体装置において、前記AlON層は50nm以上の厚さを有することが好ましい。
前記半導体装置において、前記下地SiO
2層は5nm以上の厚さを有することが好ましい。この構成により、ゲートリーク電流の立ち上がり電界を高くすることができるので、ゲートの通常駆動時におけるリーク電流の発生を抑制することができる。
【0012】
前記半導体装置において、前記ゲート絶縁膜は、55nmを超えて150nm以下の厚さを有することが好ましい。
前記半導体装置において、前記ゲート電極は、金属製であることが好ましい。この場合、AlON層がアモルファスまたは微結晶であるに加えて、ゲート電極が金属製である。したがって、たとえばポリシリコン電極(ポリシリコンゲート)に比べて低温で成膜することができるので、当該成膜時の温度環境を低めに抑えることができる。これにより、AlON層が結晶化温度に達し難くなるので、AlON層の結晶化を抑えることができる。その結果、結晶粒界の増加によるゲートリーク電流の増加を抑制することができる。また、ポリシリコンゲートに比べてゲート抵抗を低減することができるので、より高速なスイッチング動作を実現でき、スイッチング損失を低減することができる。
【0013】
前記半導体装置において、前記ゲート電極は、Mo、W、Cu、Ni、Al、Ti、Ag、AuまたはPtのうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。前記半導体装置において、前記ゲート電極は、ポリシリコン製であってもよい。金属電極(金属ゲート)の場合、たとえばポリシリコン電極(ポリシリコンゲート)に比べて低温で成膜することができるので、当該成膜時の温度環境を低めに抑えることができる。これにより、AlON層が結晶化温度に達し難くなるので、AlON層の結晶化を抑えることができる。その結果、結晶粒界の増加によるゲートリーク電流の増加を抑制することができる。また、ポリシリコンゲートに比べてゲート抵抗を低減することができるので、より高速なスイッチング動作を実現でき、スイッチング損失を低減することができる。
【0014】
前記半導体装置において、前記半導体層には、ゲートトレンチが形成されていてもよい。前記ゲート絶縁膜は、前記半導体層の表面および前記ゲートトレンチの側面を接続する前記ゲートトレンチの開口端側エッジ部を覆うように、前記ゲートトレンチの内面に加えて、前記半導体層の表面に沿って形成されていてもよい。前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲートトレンチに埋め込まれていてもよい。
【0015】
前記半導体装置は、前記半導体層において、前記ゲートトレンチの側面に沿うように前記半導体層の表面から深さ方向にこの順に形成された第1導電型のソース領域、第2導電型のボディ領域、および、第1導電型のドレイン領域をさらに含んでいてもよい。前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜を挟んで、前記ソース領域、前記ボディ領域および前記ドレイン領域と対向していてもよい。
【0016】
前記半導体装置において、前記ゲート絶縁膜は、前記半導体層の表面の上に積層されており、前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜の上に積層されていてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
半導体装置1は、n
+型(たとえば、濃度が1×10
19〜5×10
19cm
−3)のSiC基板2と、SiC基板2上に形成されたn−型(たとえば、濃度が1×10
15〜1×10
16cm
−3)のSiCエピタキシャル層3とを含む。SiC基板2およびSiCエピタキシャル層3が、本発明の「半導体層」の一例である。SiC基板2およびSiCエピタキシャル層3は、半導体装置1のドレインとして機能する。n型不純物としては、リン(P)、ヒ素(As)などが含まれている。以下、n型SiCには同様のn型不純物が含まれている。
【0019】
SiCエピタキシャル層3には、その表面からSiC基板2へ向かって掘り下がった、ゲートトレンチ4が形成されている。ゲートトレンチ4は、たとえば、格子状、ストライプ状に形成されている。これにより、SiCエピタキシャル層3には、ゲートトレンチ4により区画された単位セル5が複数形成されている。
SiCエピタキシャル層3においてゲートトレンチ4の周囲には、n
+型のソース領域6およびp型(たとえば、濃度が1×10
17〜5×10
17cm
−3)のボディ領域7が、SiCエピタキシャル層3の表面に近い側からこの順に形成されている。ボディ領域7には、p型不純物として、たとえば、ボロン(B)、アルミニウム(Al)などが含まれている。以下、p型SiCには同様のp型不純物が含まれている。
【0020】
ソース領域6は、SiCエピタキシャル層3の表面に露出するとともに、ゲートトレンチ4の側面の上部(一部)を形成するように、各単位セル5の表面部に形成されている。一方、ボディ領域7は、ソース領域6に対してSiC基板2側(SiCエピタキシャル層3の裏面側)にソース領域6に接するように、かつ、ゲートトレンチ4の側面の下部(一部)を形成するように形成されている。
【0021】
SiCエピタキシャル層3における、ボディ領域7に対してSiC基板2側の領域は、エピタキシャル成長後のままの状態が維持された、n−型のドレイン領域8となっている。ドレイン領域8は、ボディ領域7に対してSiC基板2側にボディ領域7に接しており、ゲートトレンチ4の底面を形成している。
ゲートトレンチ4の内面には、その全域を覆うように、ゲート絶縁膜9が形成されている。ゲート絶縁膜9は、ゲートトレンチ4の内面側から順に積層された下地SiO
2膜10、AlON膜11および上側SiO
2膜12を含む。この実施形態では、ゲートトレンチ4の内面全域に接するように下地SiO
2膜10が形成され、その上に、下地SiO
2膜10と同じ形状のAlON膜11および上側SiO
2膜12が、それぞれ直下の膜の全域を覆うように順に積層されている。なお、これらの膜の3層構造は、この実施形態のようにゲートトレンチ4の内面全域に亘って形成されていてもよいし、ゲートトレンチ4の内面におけるチャネル部分(ゲートトレンチ4の側面においてボディ領域7が露出する部分)に選択的に形成されていてもよい。この場合、ゲート絶縁膜9の他の部分は、SiO
2からなる単層膜であってもよい。また、ゲート絶縁膜9は、AlON膜11の単層膜であってもよいし、上側SiO
2膜12が省略された2層構造の膜(下地SiO
2膜10/AlON膜11)であってもよい。また、ゲート絶縁膜9は、この実施形態では、ゲートトレンチ4の開口端側エッジ部を覆うように形成されていてもよい。ゲートトレンチ4の開口端側エッジ部は、SiCエピタキシャル層3の表面とゲートトレンチ4の側面との挟角を形成している。したがって、ソース領域6におけるSiCエピタキシャル層3の表面およびゲートトレンチ4の側面の各近傍部分はゲート絶縁膜9に覆われることとなる。
【0022】
ゲート絶縁膜9の厚さは、たとえば、55nm〜150nmである。各膜の厚さの好ましい範囲は、下地SiO
2膜10が5nm以上(より好ましくは、5nm〜20nm)であり、AlON膜11が50nm以上(より好ましくは、50nm〜100nm)であり、上側SiO
2膜12が0nm以上(より好ましくは、0nm〜30nm)である。
下地SiO
2膜10は、この実施形態では、たとえばSiCエピタキシャル層3を熱酸化によって形成されている。SiCエピタキシャル層3(特に、チャネル部分)に接する膜を熱酸化膜とすることによって、CVD膜等の堆積膜に比べて優れたトランジスタ特性を発現することができる。
【0023】
AlON膜11は、膜中に窒素(N)原子が分散した膜であって、たとえば窒素組成が5%〜40%(好ましくは、15%〜35%)の膜である。当該窒素組成は、AlON膜11の深さ方向いずれの位置においても上記範囲に収まっている。すなわち、AlON膜11の窒素組成は深さ方向にほぼ一定であり、好ましくは、深さ方向の平均値に対して±5%〜±20%以内に収まっている。なお、AlON膜11の他の原子(Al、O)についても、それらの組成が深さ方向にほぼ一定であることが好ましい。窒素組成が上記範囲であれば、半導体装置1のフラットバンド電圧V
FBをより良好に抑制できると共に、ゲートリーク電流を低減することができる。また、AlON膜11は、アモルファスまたは微結晶であることが好ましい。AlON膜11がそのような構造であれば、ゲート絶縁膜9中の結晶粒界を減らすことができるので、ゲートリーク電流を低減することができる。
【0024】
上側SiO
2膜12は、主に酸化シリコンからなるが、AlON膜11との界面部(界面近傍)にAlおよび/またはNを含有していてもよい。この構成により、ゲート絶縁膜9への電子注入を抑制することができる。
このようなゲート絶縁膜9は、たとえば、SiCエピタキシャル層3にゲートトレンチ4を形成した後、下地SiO
2膜10、AlON膜11および上側SiO
2膜12を順に積層することによって形成することができる。下地SiO
2膜10は、たとえば熱酸化法(たとえば、1100℃〜1300℃)によって形成することができる。また、AlON膜11は、たとえばALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法、CVD法、PVD(Physical Vapor Deposition:物理気相成長)法等によって各原子を堆積させることによって形成することができる。また、上側SiO
2膜12は、たとえばCVD法によって形成することができる。
【0025】
なお、AlON膜11の形成後、たとえば700℃〜1000℃でPDA(Post Deposition Annealing:ポストデポジションアニーリング)を行ってもよい。これにより、フラットバンド電圧V
FBのシフトをより良好に抑制することができる。
ゲートトレンチ4においてゲート絶縁膜9の内側には、ゲート電極13が埋め込まれている。こうして、ゲートトレンチ4の内面を形成するソース領域6、ボディ領域7およびドレイン領域8に対して、ゲート絶縁膜9を挟んでゲート電極13が対向するトレンチゲート型のMIS構造が構成されている。
【0026】
ゲート電極13は、Mo、W、Cu、Ni、Al、Ti、Ag、AuおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種を含有する金属からなることが好ましいが、ポリシリコン(たとえば不純物がドーピングされたポリシリコン)からなっていてもよい。
各単位セル5の中央部には、SiCエピタキシャル層3の表面からSiC基板2へ向かって掘り下がった、ソーストレンチ14が形成されている。ソーストレンチ14は、SiCエピタキシャル層3の表面からソース領域6およびボディ領域7を貫通してドレイン領域8に達している。この実施形態では、ソーストレンチ14は、ゲートトレンチ4と同じ深さで形成されている。
【0027】
SiCエピタキシャル層3においてソーストレンチ14の周囲には、p型領域15が形成されている。p型領域15は、ボディ領域7の下方領域において、ボディ領域7に連なるように(繋がるように)ソーストレンチ14の内面に露出している。つまり、p型領域15は、当該下方領域においてドレイン領域8とソーストレンチ14の内面との間に介在している。これにより、ソーストレンチ14の底面および底側エッジ部にはp型領域15が露出している。
【0028】
また、p型領域15にはソーストレンチ14の底面において、p
+型のボディコンタクト領域16が形成されている。この実施形態では、ボディコンタクト領域16は、ソーストレンチ14の側面から内側に間隔を隔てた中央部に配置されている。
SiCエピタキシャル層3上には、ゲート電極13を覆うように層間絶縁膜17が形成されている。層間絶縁膜17には、ソーストレンチ14よりも大径のコンタクトホール18が形成されている。これにより、コンタクトホール18内には、各単位セル5のソーストレンチ14の全体(すなわち、ソーストレンチ14の内面全域)およびソース領域6の一部が露出している。
【0029】
層間絶縁膜17上には、ソース電極19が形成されている。ソース電極19は、各コンタクトホール18を介して、すべての単位セル5のソーストレンチ14に一括して入り込んでいる。ソース電極19は、ソーストレンチ14の底側から順にボディコンタクト領域16、p型領域15、ボディ領域7およびソース領域6に接触している。すなわち、ソース電極19は、すべての単位セル5に対して共通の配線となっている。ソース電極19は、この実施形態では、SiCエピタキシャル層3との接触側から順にTi/TiN層と、Al層とが積層された構造を有している。
【0030】
SiC基板2の裏面には、その全域を覆うようにドレイン電極20が形成されている。ドレイン電極20は、すべての単位セル5に対して共通の電極となっている。ドレイン電極20としては、たとえば、SiC基板2側から順にTi、Ni、AuおよびAgが積層された積層構造(Ti/Ni/Au/Ag)を適用することができる。
この半導体装置1によれば、ゲート絶縁膜9が5%〜40%の窒素組成を有するAlON膜11を含むので、ゲート絶縁膜9中への電子トラップを低減することができる。これによりフラットバンド電圧V
FBのシフトを抑制することができるので、閾値電圧V
thのシフトを抑制することができる。
【0031】
また、AlON膜11を適宜厚くすることによって、ゲート絶縁膜にSiO
2の単層膜を用いる場合に比べて、同じゲート容量を維持しながらゲート絶縁膜9を全体として厚くすることができる。そのため、高い電圧でゲートを駆動させてもゲート絶縁膜9の劣化を抑制することができる。その結果、デバイスの信頼性の低下を抑制することができる。
また、AlON膜11の下方に下地SiO
2膜10を介在させ、さらにその膜厚を5nm以上とすることによって、ゲートリーク電流の立ち上がり電界を高くすることができる。その結果、ゲートの通常駆動時におけるリーク電流の発生を抑制することができる。
【0032】
さらに、AlON膜11上に上側SiO
2膜12を積層し、AlON膜11を上側から覆うことによって、たとえばゲート電極13の形成時に、エッチングや洗浄に用いる薬剤からAlON膜11を保護することができる。その結果、AlON膜11がダメージを受けることを抑制することができる。
また、ゲート電極13が金属ゲートであれば、ポリシリコンゲートに比べて低温で成膜することができる。そのため、当該成膜時の温度環境を低めに抑えることができる。たとえば、金属の成膜が200℃程度で行われるのに対し、ポリシリコンの成膜では温度環境が1000℃に達する。これにより、先に形成されたAlON膜11が結晶化温度に達し難くなるので、AlON膜11の結晶化を抑えることができる。その結果、結晶粒界の増加によるゲートリーク電流の増加を抑制することができる。また、ポリシリコンゲートに比べてゲート抵抗を低減することができるので、より高速なスイッチング動作を実現でき、スイッチング損失を低減することができる。
【0033】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図2において、前述の
図1に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示す。
前述の第1の実施形態では、MIS構造は、ゲートトレンチ4の内面を形成するソース領域6、ボディ領域7およびドレイン領域8に対して、ゲート絶縁膜9を挟んでゲート電極13が対向するトレンチゲート型で構成されている。
【0034】
これに対し、この第2実施形態に係る半導体装置41のMIS構造は、プレーナゲート型で構成されている。
プレーナゲート型のMIS構造は、SiCエピタキシャル層3の表面部に選択的に形成されたp型のボディ領域42と、当該ボディ領域42に選択的に形成されたn
+型のソース領域43と、SiCエピタキシャル層3の表面に形成されたゲート絶縁膜44と、ゲート絶縁膜44を挟んで、SiCエピタキシャル層3の表面に露出するボディ領域42に対向するゲート電極45と、SiCエピタキシャル層3の表面からソース領域43を貫通し、最深部がボディ領域42に達するp
+型のボディコンタクト領域46とを含む。
【0035】
この半導体装置41のゲート絶縁膜44も、第1実施形態のゲート絶縁膜9と同様に、SiCエピタキシャル層3の表面側から順に積層された下地SiO
2膜47、AlON膜48および上側SiO
2膜49を含んでおり、第1実施形態の半導体装置1と同様の作用効果を発現することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0036】
たとえば、半導体装置1,41において、各半導体部分の導電型を反転した構成が採用されてもよい。たとえば、半導体装置1において、p型の部分がn型であり、n型の部分がp型であってもよい。
また、前述の実施形態では、本発明の半導体装置の一例としてSiC層を有する半導体装置1を取り上げたが、前述の実施形態に記載の構造は、GaN、ダイヤモンドからなる層を有する半導体装置に適用することもできる。
【0037】
また、前述の実施形態では、トレンチゲート型およびプレーナゲート型のMISFETを本発明の一例として取り上げたが、本発明は、CMOSFET(Complementary Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のMISトランジスタ構造にも適用することができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
<検証例>
以下の検証例を行うことによって、下記(1)〜(6)の効果を確かめた。
(1)ゲートリーク電流の下地SiO
2膜の厚さへの依存性(シミュレーション)
まず、前述の実施形態における下地SiO
2膜10の厚さの変化に伴ってゲートリーク電流がどのように変化するかを、シミュレーション装置を用いて検証した。シミュレーション条件は、下地SiO
2膜10の厚さ=1nm、2nm、3nm、4nm、5nmおよび6nmとした。結果を
図3に示す。
【0038】
図3によれば、下地SiO
2膜10が厚いほどゲートリーク電流が低減できることが分かった。特に、下地SiO
2膜10の厚さが5nm以上であれば、ゲートリーク電流を効果的に低減できることが分かる。
(2)ゲートリーク電流の下地SiO
2膜の厚さへの依存性(実験例)
次に、ゲートリーク電流の下地SiO
2膜の厚さへの依存性を実証するため、具体的な実験を行った。まず、n型の4H−SiC基板の(0001)面を熱酸化(ドライ酸化)することによって、下地SiO
2膜を形成した。次に、CVD法によってAlON膜を90nm堆積した。その後、熱処理を施さないで、スパッタ法によってアルミニウム膜を堆積し、当該アルミニウム膜をフォトリソグラフィによってパターニングしてアルミニウムパッドを形成した。これにより、
図4に示すMIS構造を作製した。なお、実験条件は、下地SiO
2膜の厚さ=なし(0nm)、6nm未満、6nmおよび13nmとした。また、各実験例のEOT(Equivalent Oxide Thickness:酸化膜の等価換算膜厚)はそれぞれ、上記実験条件の記載順に、143.8nm、57.6nm、58.6nmおよび66.9nmであった。
【0039】
次に、
図4のMIS構造のJ−E特性を求めた。結果を
図5に示す。
図5において、「Ref.」で示される曲線は、下地SiO
2膜およびAlON膜からなるゲート絶縁膜に代えてNOx−SiO
2膜(48nm)を採用したMIS構造のJ−E曲線である。
図5によれば、各実験例におけるゲートリーク電流の立ち上がり電界は、「なし」=約2MV/cm、「<6nm」=約4MV/cm、「6nm」=約6MV/cmおよび「13nm」=約6MV/cmであった。これらの実験例から、4H−SiC基板に直接AlON膜を形成した場合(「なし」)に比べて、下地SiO
2膜を基板との間に介在させた方がゲートリーク電流の立ち上がり電界を高くできることがわかった。特に、下地SiO
2膜が6nm以上であることが好ましいことがわかった。この実験例と前記シミュレーションの結果より、下地SiO
2膜10の厚さが5nm以上であれば、ゲートの通常駆動時におけるゲートリーク電流を効果的に低減できることが分かった。
(3)フラットバンド電圧V
FBのシフトの下地SiO
2膜の厚さへの依存性
次に、
図4のMIS構造について、開始電圧を10Vとし、+10V→−10V→+10Vとスイープ(sweep)させたときのC−V特性を求めた。結果を
図6に示す。
【0040】
図6によれば、AlON膜と基板との間に下地SiO
2膜が介在した構造を有するMIS構造(<6nm、6nmおよび13nm)は、4H−SiC基板に直接AlON膜を形成した場合(「なし」)に比べて、フラットバンド電圧V
FBのシフト量を低減できることが分かった。
(4)フラットバンド電圧V
FBのシフト量の下地SiO
2膜の厚さへの依存性
次に、上記(3)に倣って、開始電圧を変更した条件でもC−V特性を求めた。開始電圧の変更条件は、+5Vから+60Vまで5V刻みとした。このときの蓄積電圧(Accumulation Voltage)とフラットバンド電圧(Flatband Voltage)との関係を
図7に示す。
【0041】
図7によれば、蓄積電圧が同じであれば、下地SiO
2膜10が厚いほどフラットバンド電圧V
FBのシフト量を低減できることが分かった。たとえば、蓄積電圧が45Vの場合、各MIS構造のシフト量は、「<6nm」=約9V、「6nm」=約5V、「13nm」=約1Vであることが分かった。
(5)フラットバンド電圧V
FBのシフトのN組成への依存性
次に、フラットバンド電圧V
FBのシフトのN組成への依存性を実証するため、具体的な実験を行った。実験サンプルとして、上記(2)に記載の方法に倣って、
図4に示すMIS構造を作製した。ただし、AlON膜の成膜方法が異なる実験サンプルを3パターン作製した。採用した成膜方法は、CVD1法、CVD2法およびPVD法の3つである。得られたCVD1膜、CVD2膜およびPVD膜の組成をそれぞれ
図8〜
図10に示す。また、CVD1膜およびCVD2膜については、成膜後にPDAを行ったサンプル(CVD1+PDA、CVD2+PDA)も作製した。
【0042】
次に、上記(3)および(4)に記載の測定方法に倣って各サンプルのC−V特性を求めた。そして、得られたC−V特性に基づいて、蓄積電圧(Accumulation Voltage)とフラットバンド電圧(Flatband Voltage)との関係を調べた。結果を
図11に示す。
図11によれば、CVD2膜に比べてN組成(濃度)が高いCVD1膜の方が、フラットバンド電圧V
FBのシフト量を低減できることが分かった。たとえば、蓄積電圧が55Vの場合、CVD2膜のサンプルのシフト量が約15Vであるのに対し、CVD1膜のサンプルのシフト量は約10Vであった。また、成膜後のPDAの有無に関して、PDAを行った方が行わない場合に比べて、シフト量を低減できることが分かった。
(6)AlON膜によるフラットバンド電圧V
FBの抑制効果
次に、上記(5)で得られたPDA膜を用いた場合のフラットバンド電圧V
FBのシフト量が、Al
2O
3膜を用いた場合に比べてどの程度抑制されるかどうかを調べた。結果を
図12に示す。
【0043】
図12によれば、N組成が0%のAl
2O
3膜を用いた場合にはフラットバンド電圧V
FBのシフト量が非常に大きくなることが分かった。この結果、ゲート絶縁膜にAlON膜を含めることによって、フラットバンド電圧V
FBのシフトを抑制できることが分かった。したがって、AlON膜を含むゲート絶縁膜を有するMIS構造では、閾値電圧V
thのシフトを抑制することができる。(7)フラットバンド電圧V
FBと窒素組成との関係
次に、フラットバンド電圧V
FBのシフトのN組成への依存性(蓄積電圧固定)を実証するため、実験サンプルとして、上記(2)に記載の方法に倣って、
図4に示すMIS構造をSi基板上に作製した。実験サンプルは、N組成が異なるものを8種類作製した。そして、各サンプルのフラットバンド電圧V
FBのシフトが、蓄積電圧Vaccが25Vおよび30Vのときにどのように変化するかを検証した。結果を
図13に示す。なお、得られた検証結果は、Si基板上のデータであり、同様の検証をSiC基板上のMIS構造に行ったときの参考データである。
図13から、N組成15%以上の場合にフラットバンド電圧V
FBのシフトが少なくなるので、好ましい。また、N組成が大きいと誘電率が低下してしまうので、N組成が35%以下であると好ましい。
【0044】
この明細書および図面から抽出される特徴の例を以下に示す。
項1:半導体層と、前記半導体層に接するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを含むMIS構造を有し、前記ゲート絶縁膜は、窒素組成が5%〜40%のAlON層を含む、半導体装置。
この構成によれば、ゲート絶縁膜が5%〜40%の窒素組成を有するAlON層を含むので、ゲート絶縁膜中への電子トラップを低減することができる。これによりフラットバンド電圧V
FBのシフトを抑制することができるので、閾値電圧V
thのシフトを抑制することができる。また、ゲートリーク電流を低減することができる。また、SiO
2の単層膜を用いる場合に比べて、同じゲート容量を維持しながら厚くすることができるので、高い電圧でゲートを駆動させてもゲート絶縁膜の劣化を抑制することができる。その結果、デバイスの信頼性の低下を抑制することができる。
【0045】
項2:前記AlON層は50nm以上の厚さを有する、項1に記載の半導体装置。
項3:前記AlON層はアモルファスまたは微結晶である、項1または2に記載の半導体装置。
この構成により、ゲート絶縁膜中の結晶粒界を減らすことができるので、ゲートリーク電流を低減することができる。
【0046】
項4:前記ゲート絶縁膜は、前記半導体層に接する下地SiO
2層と、この下地SiO
2層に積層された前記AlON層とを含む積層構造を有する、項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置。
ゲート絶縁膜の半導体層に接する部分がSiO
2であれば、フラットバンド電圧V
FBのシフト量を低減することができる。また、MIS構造のトランジスタの特性を従来と同じように制御することができので、トランジスタ特性の設計を簡単にすることができる。なお、下地SiO
2層は熱酸化膜であることが好ましい。
【0047】
項5:前記下地SiO
2層は5nm以上の厚さを有する、項4に記載の半導体装置。
この構成により、ゲートリーク電流の立ち上がり電界を高くすることができるので、ゲートの通常駆動時におけるリーク電流の発生を抑制することができる。
項6:前記積層構造は、前記AlON層に積層された上側SiO
2層をさらに含む、項4または5に記載の半導体装置。
【0048】
この構成により、AlON層が上側から覆われるので、たとえばゲート電極形成時に、エッチングや洗浄に用いる薬剤からAlON層を保護することができる。その結果、AlON層がダメージを受けることを抑制することができる。
項7:前記上側SiO
2層は、前記AlON層との界面部にAlおよび/またはNを含有している、項6に記載の半導体装置。
【0049】
この構成により、ゲート絶縁膜への電子注入を抑制することができる。
項8:前記半導体層はSiC、GaNまたはダイヤモンドからなる、項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置。
項9:前記ゲート電極は、ポリシリコンもしくは、Mo、W、Cu、Ni、Al、Ti、Ag、AuおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種を含有する金属からなる、項1〜8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0050】
金属電極(金属ゲート)の場合、たとえばポリシリコン電極(ポリシリコンゲート)に比べて低温で成膜することができるので、当該成膜時の温度環境を低めに抑えることができる。これにより、AlON層が結晶化温度に達し難くなるので、AlON層の結晶化を抑えることができる。その結果、結晶粒界の増加によるゲートリーク電流の増加を抑制することができる。また、ポリシリコンゲートに比べてゲート抵抗を低減することができるので、より高速なスイッチング動作を実現でき、スイッチング損失を低減することができる。
【0051】
項10:前記MIS構造は、トレンチゲート型の構造を含む、項1〜9のいずれか一項に記載の半導体装置。
項11:前記MIS構造は、プレーナゲート構造を含む、項1〜10のいずれか一項に記載の半導体装置。