(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁操作ロッドの他端部と前記アクチュエータの出力軸との間に配置され、前記絶縁操作ロッドの他端部に前記アクチュエータの出力軸の駆動力を伝えるシールロッドを有するとともに、
このシールロッドは、貫通する部分の気密を保つように構成する請求項1記載のガス遮断器。
【背景技術】
【0002】
電力系統において電流開閉を行う保護用開閉器として、接地された金属あるいは碍管からなる密封容器内に消弧性ガスを充填し、電流を遮断するガス遮断器が広く使用されている。
【0003】
従来のガス遮断器の一例として、
図11に示すような消弧室を2つ有する2点切りガス遮断器が挙げられる。
【0004】
図11は、従来のガス遮断器を正面から見た断面図である。
【0005】
従来のガス遮断器は、容器101、支持絶縁筒103、消弧室104、遮断部105、第1接触部106、第2接触部107、第1リンク群108、絶縁操作ロッド109、機構箱110、操作機構111、アクチュエータ112、出力軸113、第2リンク群114、容器支持部115、据付基礎116を有する。
【0006】
容器101内には、SF6(六フッ化硫黄)やCO2(二酸化炭素)などの消弧性ガス102が充填される。容器101内軸方向のほぼ中央には支持絶縁筒103が容器101の軸方向とほぼ垂直を成すように設けられ、2つの消弧室104(
図1の右側の消弧室は省略)を備える遮断部105は、この支持絶縁筒103によって支持される。
【0007】
消弧室104は、容器101の定位置に固定された第1接触部106と、容器101の軸方向に可動する第2接触部107とを有し、第1接触部106と第2接触部107は対向して配置される。
【0008】
第2接触部107の第1接触部106側とは反対側の端部は、第1リンク群108を介して、支持絶縁筒103のほぼ中央部を挿通する絶縁操作ロッド109と接続される。
【0009】
容器101の外部には、機構箱110が取り付けられ、機構箱110内に操作機構111が収納される。
【0010】
操作機構111は、アクチュエータ112および、図示しない油圧機構やばね機構を備える。アクチュエータ112は、図示しない油圧機構やばね機構によって生成されたエネルギーを接点の開閉動作に必要な駆動力に変換する。
【0011】
絶縁操作ロッド109の一方の端部とアクチュエータ112の出力軸113は、第2リンク群114を介して接続され、絶縁操作ロッド109とアクチュエータ112の出力軸113は略90度の位置関係を成す。
【0012】
容器101は、例えば四隅に配置された容器支持部115により据付基礎116に据え付けられる。
【0013】
このように構成される従来のガス遮断器では、アクチュエータ112の矢印G方向の駆動力が、第2リンク群114、絶縁操作ロッド109および第1リンク群108を介して第2接触部107に伝達され、第2接触部107を矢印G方向に駆動させる。すなわち、アクチュエータ112の矢印G方向の駆動力は、一旦第2リンク群114により矢印H方向の力に変換され、第1リンク群108により再度矢印G方向の力に変換される。
【0014】
そして、第2接触部107が矢印G方向に駆動されることにより、第1接触部106と第2接触部107が接離し、回路の開閉が行われる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態を図面に基づき説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るガス遮断器を正面から見た断面図である。
【0022】
本実施形態のガス遮断器は、容器1、支持絶縁筒3、消弧室4、遮断部5、第1接触部7、第2接触部8、主回路導体9、取合部10、リンク群11、絶縁ロッド12、機構箱13、操作機構14、アクチュエータ15、機構支え16、シールロッド17、容器支持部20を有する。
【0023】
容器1内には、SF6(六フッ化硫黄)やCO2(二酸化炭素)などの消弧性ガス2が充填される。容器1内にはこの容器1の軸方向とほぼ垂直をなすように支持絶縁筒3が設けられる一方、この支持絶縁筒3に対して略対称となる位置に2つの消弧室4(
図1の右側の消弧室は省略)を備える遮断部5は、支持絶縁筒3によって支持される。
【0024】
消弧室4は、容器1の定位置に固定された第1接触部7と、容器1の軸方向に可動する第2接触部8とを有し、第1接触部7と第2接触部8は対向して配置される。
【0025】
第1接触部7の第2接触部8側とは反対側の端部は、主回路導体9と略角度90度(90度を含む)の位置関係で電気的に接続され、主回路導体9は容器1に形成された取合部10を介して図示しない母線やブッシングなどに接続される。
【0026】
第2接触部8の第1接触部7側とは反対側の端部は、リンク群11を介して支持絶縁筒3の略中央部を挿通する絶縁操作ロッド12の一端と接続される。すなわち、第2の接触部8と絶縁操作ロッド12は略角度90度(90度を含む)の位置関係を成している。
【0027】
容器1の外部には、機構箱13が取り付けられ、機構箱13内に操作機構14が収納される。
【0028】
操作機構14は、アクチュエータ15および、図示しない油圧機構やばね機構を備える。アクチュエータ112は、図示しない油圧機構やばね機構によって生成されたエネルギーを遮断動作に必要な駆動力に変換する。
【0029】
アクチュエータ15には出力軸18が設けられ、その端部はシールロッド17の一方の端部に接続される。シールロッド17の他方の端部は、絶縁操作ロッド12のリンク群11とは反対側の端部と接続され、アクチュエータ15の駆動力を第2接触部に伝達する。
【0030】
そして、絶縁操作ロッド12、シールロッド17、およびアクチュエータ15の出力軸18は、略同一軸上に配置される。
【0031】
絶縁操作ロッド12は、エポキシやテフロン(登録商標)などの樹脂やFRPなどの複合材からなる絶縁材料で作製され、操作機構14と遮断部5との間を電気的に絶縁する。
【0032】
シールロッド17は、大気雰囲気となる機構箱13内と消弧性ガス2が充填された容器1内とを貫通するため、シールロッド17の摺動面および容器1の貫通部には図示しないシール機構を設けることによりその気密が保たれる。
【0033】
操作機構14は、容器1と操作機構14との間に設けられた筒状の機構支え16によって支持され、機構支え16内にシールロッド17とアクチュエータ15の出力軸18との連結部19が位置する。
【0034】
ここで、「筒状」とは円筒に限定されず、角筒なども含まれる。
【0035】
機構箱13は、操作機構14の取り出しや収納ができるように少なくとも1つの面が着脱可能である。
【0036】
操作機構14が機構箱13から取り出される際には、シールロッド17とアクチュエータ15の出力軸18との連結部19が切り離される。
【0037】
容器1は、例えば端部近傍に2本ずつ配置された合計4本の容器支持部20により据付基礎21に据え付けられる。
【0038】
次に、このように構成される第1の実施形態のガス遮断器における遮断動作について
図1を用いて説明する。
【0039】
アクチュエータ15の矢印A方向の駆動力(
図1)が、シールロッド17、絶縁操作ロッド12およびリンク群11を介して第2接触部8に伝達され、第2接触部8を矢印Aに対して略90度方向である矢印B方向(
図1)に駆動させる。すなわち、アクチュエータ15の矢印A方向の駆動力がリンク群11により矢印B方向の力に変換される。
【0040】
そして、第2接触部8が矢印B方向に駆動されることにより、第1接触部7と第2接触部8が接離し、電流の開閉が行われる。
【0041】
図示していない
図1中右側の消弧室についても同様の構成であり、同様の動作が行われる。
【0042】
図11に示した従来のガス遮断器では、2つのリンク群108,114を介してアクチュエータ112の駆動力が第2接触部107に伝達されるため、リンク群108、114での摩擦力、リンク群108,114を構成する部品による駆動質量の増加、リンク群108,114を構成する部品間での微小な間隙による可動伝達時間の遅れ、等、アクチュエータ15の駆動力のエネルギーロスが大きくなる。
【0043】
一方、第1の実施形態に係るガス遮断器では、第2リンク群114を省略した構成となり、それによって生じていた駆動力のエネルギーロスをなくし、全体としてアクチュエータ15からの駆動力のエネルギーロスを減少させることができる。
【0044】
また、第2リンク群114を省略することにより、部品点数の減少によるコストダウン、故障率の減少やメンテナンス性の向上に繋がる。
【0045】
図11に示した従来のガス遮断器では、絶縁操作ロッド109とアクチュエータ112の出力軸113が略90度の位置関係を成すように構成される。
【0046】
そのため、アクチュエータ112などのメンテナンスや交換のために操作機構111を機構箱110から取り出す際、容器支持部115が妨げとなり、操作機構111を容器101の長手方向に取り出すことができず、容器101の長手方向に対して直角方向(
図11紙面に対して垂直方向)に取り出す必要がある。
【0047】
通常、このようなガス遮断器は容器101の長手方向に対して直角方向に複数並べられるため、当該方向に操作機構111を取り出す場合、隣のガス遮断器との間に作業スペースを設ける必要がある。
【0048】
それに対して、
図1、
図2に示す第1の実施形態のガス遮断器によれば、アクチュエータ15の出力軸18が絶縁操作ロッド12と同軸上に配置され、出力軸18の絶縁操作ロッド12側とは反対側に操作機構14が配置される。
【0049】
そのため、
図2に示すように機構箱13と容器支持部20との間に十分なスペースを確保することが可能となり、容器1の長手方向(矢印C)に操作機構14を取り出すことができる。
【0050】
このことにより、隣のガス遮断器との間に作業スペースを設ける必要がなく、隣り合うガス遮断器との距離を短縮することができる。このことは機器の設置スペースの削減に繋がる。
【0051】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、
図3、
図4を用いて説明する。なお、第1の実施形態のガス遮断器の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0052】
図3は第2の実施形態に係るガス遮断器の側面図、
図4は
図3のD−D断面図である。
【0053】
この第2の実施形態が、第1の実施形態と異なる点は絶縁操作ロッド12の中心軸が据付基礎21に対して略平行(平行も含む)に位置する点にある。
【0054】
絶縁操作ロッド12、シールロッド17およびアクチュエータ15の出力軸18は、第1の実施形態と同様に略同一軸上に配置されるため、
図3中の矢印Eで示すアクチュエータ15の出力軸18の動作方向も据付基礎21に対して略平行となる。
【0055】
以上説明した第2の実施形態に係るガス遮断器によれば、絶縁操作ロッド12の中心軸が据付基礎21に対して略平行に位置するように構成することにより、第1の実施形態で得られる効果に加えて、ガス遮断器の高さを抑えることができる。
【0056】
このことにより、耐震性および保守性を向上させることができる。
【0057】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について、
図5、
図6を用いて説明する。なお、第1の実施形態および第2の実施形態のガス遮断器の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0058】
図5は第3の実施形態に係るガス遮断器の側面図、
図6は
図5のF矢視図である。
【0059】
この第3の実施形態が、第2の実施形態と異なる点は取合部10の中心軸100と絶縁操作ロッド12の中心軸が略平行(平行も含む)に位置する点にある。
【0060】
第3の実施形態に係るガス遮断器によれば、
図6に示すように、取合部10に取り付けられる母線やブッシングなどのガス絶縁開閉装置(GIS)構成要素23は、容器1とほぼ同じ高さに抑えることができる。すなわち、GIS全体としての高さの抑制に繋がる。
【0061】
また、機構箱13周りのスペースを有効活用できるため、GIS全体としての設置スペースの削減が可能となる。
【0062】
なお、
図6では取合部10の中心軸100を機構箱13の突出方向と同一の方向にしているが、機構箱13の突出方向と180°反対側にしても良い。
【0063】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について、
図7を用いて説明する。なお、第1の実施形態乃至第3の実施形態のガス遮断器の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0064】
図7は第4の実施形態に係るガス遮断器の正面図である。
【0065】
この第4の実施形態が、第1の実施形態乃至第3の実施形態と異なる点は、操作機構14と機構箱13とが固定され、機構箱13が据付基礎21に固定されることにある。
【0066】
具体的には、例えば操作機構締結部材24および機構箱締結部材25を有する。
【0067】
図7に示すように、操作機構締結部材24は操作機構14の外周面と機構箱13の内周面との間に設けられ、操作機構14と機構箱13とを締結する。
【0068】
図7では一例として、操作機構14の底面と当該面に対向する機構箱13の内面に操作機構締結部材24が配置される。
【0069】
機構箱締結部材25は機構箱13の外周面と据付基礎21を締結し、
図7では一例として、機構箱13の底面と据付基礎21との間に機構箱締結部材25が配置される。
【0070】
以上説明した第4の実施形態に係るガス遮断器によれば、操作機構締結部材24により操作機構14と機構箱13とが締結され、機構箱締結部材25により機構箱13と据付基礎21とが締結されるため、第1の実施形態で得られる効果に加えて機器全体の安定性を向上、特に、アクチュエータ15を駆動した際の容器1などに伝播する振動を低減させることができる。
【0071】
このことにより、機器部材の剛性の低減によるコストダウンをしつつ、耐震性を高めることが可能となる。
【0072】
図7では、操作機構締結部材24を1つ、機構箱締結部材25を2つ設けた例を示しているが、それぞれの数はこれらに限定されない。
【0073】
なお、
図7では第1の実施形態に対して、操作機構締結部材24および機構箱締結部材25を追加した構成を示しているが、操作機構締結部材24のみを第2の実施形態や第3の実施形態に追加した構成でもよく、同様の効果を得ることができる。
【0074】
ただし、必ずしも操作機構締結部材24あるいは機構箱締結部材25を有する必要はなく、操作機構14と機構箱13とが固定されているあるいは、機構箱13と据付基礎21とが固定されていれば機器の安定性を向上させることができる。
【0075】
(第5の実施形態)
第5の実施形態について、
図8を用いて説明する。なお、第1の実施形態乃至第4の実施形態のガス遮断器の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0076】
図8は第5の実施形態に係るガス遮断器の正面図である。
【0077】
この第5の実施形態が、第1の実施形態乃至第4の実施形態と異なる点は機構支え16が切り欠き26を有する点にある。
【0078】
切り欠き26は、機構支え16の操作機構14側端部に設けられ、アクチュエータ15の出力軸18を取り出すのに十分な大きさを有する。
【0079】
以上説明した第5の実施形態に係るガス遮断器によれば、操作機構14を機構箱13から取り出す際に、シールロッド17とアクチュエータ15の出力軸18との連結部19を切り離し、切り欠き26に出力軸18を通すことで取り出すことができる。
【0080】
すなわち、切り欠き26を有さない場合に機構箱13から操作機構14を取り出すためには、シールロッド17とアクチュエータ15の出力軸18との連結部19を切り離し、アクチュエータ15を据付基礎21方向に距離L1分移動させる必要がある。
【0081】
一方、本実施形態では切り欠き26を有することで、アクチュエータ15を据付基礎21方向に移動させる移動距離はL2でよく、操作機構14を移動させる距離を短くすることができる。
【0082】
このことにより、操作機構14の取り出し作業を容易にすることが可能となる。
【0083】
また、操作機構14の移動距離を短くできることで、機構箱13を小さくすることが可能となり、ガス遮断器の高さを抑えることができる。
【0084】
さらに、機構箱13の底面を着脱可能とすることで、より取り出し作業が容易になる。
【0085】
なお、
図8では第1の実施形態に対して、切り欠き26を有する構成を示しているが、第2の実施形態乃至第4の実施形態に適用してもよく、操作機構14の取り出し作業を容易にすることが可能となる。
【0086】
(第6の実施形態)
第6の実施形態について、
図9を用いて説明する。なお、第1の実施形態乃至第5の実施形態のガス遮断器の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0087】
図9は第6の実施形態に係るガス遮断器の側面図である。
【0088】
この第6の実施形態は、第1の実施形態に係るガス遮断器を容器1の長手方向に対して平行に3台並べ3相構造とした例を示している。
【0089】
図9に示すように、隣り合う各相の容器1は、容器同士を直接締結する相連結部材27Aで、各相の容器1を支持する容器支持部20は、相連結部材27Bによってそれぞれ固定される。
【0090】
このように構成される第6の実施形態に係るガス遮断器によれば、隣り合う各相の容器1もしくは容器支持部20が相連結部材27A、27Bによって固定されることにより、機器を安定させ、耐震性を高めることができる。
【0091】
耐震性の向上に伴い、
図9に示すように1相あたりの容器支持部材20を4本から2本に減らすことが可能となり、機器の安定性を保ちつつコストダウンに貢献できる。
【0092】
また、第1の実施形態で述べたように、アクチュエータ15の出力軸18が絶縁操作ロッド12と同軸上に配置されることにより、隣り合うガス遮断器との距離を短縮することができるため、相連結部材27A、27Bの長さは短くてすむ。そのことによってもコストダウンに貢献できる。
【0093】
本実施形態の変形例として、
図10に示すように相連結部材27Aに容器支持部20を設けてもよい。このように構成することにより、機構箱13周りにスペースを確保することができ、機構箱13から操作機構14を取り出す作業が容易になる。
【0094】
上記の第1の実施形態乃至第6の実施形態では例として消弧室4を2つ備える2点切りガス遮断器を示しているが、消弧室4が1つである1点切りガス遮断器や消弧室4が3つ以上ある多点切りガス遮断器に適用されてもよく、各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。