特許第6346372号(P6346372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6346372不織布積層体、伸縮性不織布積層体、繊維製品、吸収性物品及び衛生マスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346372
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】不織布積層体、伸縮性不織布積層体、繊維製品、吸収性物品及び衛生マスク
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20180611BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20180611BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20180611BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20180611BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20180611BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20180611BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20180611BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20180611BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   B32B5/26
   B32B27/32 E
   D04H3/007
   C08L23/10
   C08F10/06
   A61F13/514 100
   A61F13/511 300
   A62B18/02 C
   A41D13/11 Z
【請求項の数】13
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-505385(P2017-505385)
(86)(22)【出願日】2016年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2016057462
(87)【国際公開番号】WO2016143834
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2017年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-46377(P2015-46377)
(32)【優先日】2015年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼久 翔一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】横山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】島田 幸一
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/070518(WO,A1)
【文献】 特開2012−012759(JP,A)
【文献】 特開2009−504933(JP,A)
【文献】 特開2007−321292(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/063892(WO,A1)
【文献】 特開2004−238775(JP,A)
【文献】 特開2001−140158(JP,A)
【文献】 特開2001−303421(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0130544(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00−18/04
D01F1/00−9/04
B32B1/00−43/00
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性不織布と、前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置され、少なくとも一方向の最大荷重伸度が50%以上である伸長性スパンボンド不織布と、を有し、下記(1)及び(2)を満たす不織布積層体。
(1)前記弾性不織布は、下記(a)〜(f)を満たす低結晶性ポリプロピレンと、エチレンに由来する構成単位及びプロピレンに由来する構成単位を含み、融点が100℃以上であり、結晶化度が15%以下であるαオレフィン共重合体Aと、を含む樹脂組成物からなる。
(2)前記樹脂組成物は、前記樹脂組成物100質量部に対してαオレフィン共重合体Aを5質量部〜50質量部含む。
(a)[mmmm]=20〜60モル%
(b)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(c)[rmrm]>2.5モル%
(d)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
(e)重量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
(a)〜(d)中、[mmmm]はメソペンタッド分率であり、[rrrr]はラセミペンタッド分率であり、[rmrm]はラセミメソラセミメソペンタッド分率であり、[mm]、[rr]及び[mr]はそれぞれトリアッド分率である。
【請求項2】
前記樹脂組成物は、前記樹脂組成物100質量部に対して、前記低結晶性ポリプロピレンを95質量部〜50質量部含む請求項1に記載の不織布積層体。
【請求項3】
前記αオレフィン共重合体Aは、引張り弾性率が100MPa以下である請求項1又は請求項2に記載の不織布積層体。
【請求項4】
前記αオレフィン共重合体Aは、エチレン、プロピレン及びブテンに由来する構成単位を含む共重合体である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項5】
前記弾性不織布の両面側に前記伸長性スパンボンド不織布が配置されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項6】
前記弾性不織布は、スパンボンド法により得られる不織布である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項7】
前記伸長性スパンボンド不織布が、芯部をMFRが1g/10分〜200g/10分の範囲にある低MFRのプロピレン系重合体とし、鞘部をMFRが16g/10分〜215g/10分の範囲にある高MFRのプロピレン系重合体とし、且つ、前記低MFRのプロピレン系重合体と前記高MFRのプロピレン系重合体のMFRの差が15g/10分以上である、同芯の芯鞘型複合繊維からなる伸長性スパンボンド不織布である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項8】
前記伸長性スパンボンド不織布が、結晶性プロピレン系重合体80質量%〜99質量%と、高密度ポリエチレン20質量%〜1質量%と、を含むオレフィン系重合体組成物からなる請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項9】
前記弾性不織布と前記伸長性スパンボンド不織布との目付比(弾性不織布:伸長性スパンボンド不織布)が10:90〜90:10の範囲にある請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の不織布積層体を、延伸加工して得られる伸縮性不織布積層体。
【請求項11】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の不織布積層体又は請求項10に記載の伸縮性不織布積層体を含む繊維製品。
【請求項12】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の不織布積層体又は請求項10に記載の伸縮性不織布積層体を含む吸収性物品。
【請求項13】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の不織布積層体又は請求項10に記載の伸縮性不織布積層体を含む衛生マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布積層体、伸縮性不織布積層体、繊維製品、吸収性物品及び衛生マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不織布は通気性及び柔軟性に優れることから各種用途に幅広く用いられている。そのため、不織布には、その用途に応じた各種の特性が求められるとともに、その特性の向上が要求されている。
【0003】
例えば、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料、湿布材の基布等に用いられる不織布は、耐水性があり、且つ透湿性に優れることが要求される。また、使用される箇所によっては伸縮性、嵩高性、装着性を有することも要求される。
【0004】
不織布に伸縮性を付与する方法の一つとして、スパンボンド不織布の原料として熱可塑性エラストマーを用いる方法(例えば、特表平7−503502号公報参照)、低結晶性ポリプロピレンを用いる方法(例えば、特開2009−62667号公報及び特開2009−79341号公報参照)などが提案されている。
【0005】
特開2009−62667号公報又は特開2009−79341号公報では、スパンボンド不織布のべたつき等を改良するために、低結晶性ポリプロピレンに、高結晶性ポリプロピレン又は離型剤を添加することが提案されている。国際公開第2012/070518号には、低結晶性ポリプロピレンを含む不織布と伸張性スパンボンド不織布との積層体が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2009−62667号公報又は特開2009−79341号公報に記載の方法では、低結晶性ポリプロピレンを用いてスパンボンド不織布を製造する際に生じる、成形性低下(エンボス工程をはじめとする装置内の各回転機器その他の不織布と接触する部位への付着)を防ぐには、低結晶性ポリプロピレンに高結晶性ポリプロピレン又は離型剤の添加量を増す必要があり、その結果、得られるスパンボンド不織布の残留歪が大きくなり、伸縮性が劣る傾向にある。国際公開第2012/070518号に記載の方法では、低結晶性ポリプロピレンと伸長性スパンボンド不織布とを積層することで伸縮性を保持しているが、更なる伸縮性の向上が強く求められている。あわせて良好な触感、装着性及び耐ロールブロッキング性向上の実現も求められている。
【0007】
ここで、ロールブロッキングとは、不織布積層体をロール状態で長期保管した場合、保管環境温度や不織布積層体にかかる圧力などにより、重なりあった不織布積層体が相互に付着し、ロールが固まってしまう現象を意味する。国際公開第2012/070518号等に記載の低結晶性ポリプロピレンを使用する不織布積層体は、高温で長期保管された場合の耐ブロッキング性の改善が求められている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み、製造の際の成形性、伸縮性、触感、装着性及び耐ロールブロッキング性に優れる不織布積層体、並びにこれを用いた伸縮性不織布積層体、繊維製品、吸収性物品及び衛生マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>弾性不織布と、前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置され、少なくとも一方向の最大荷重伸度が50%以上である伸長性スパンボンド不織布と、を有し、下記(1)及び(2)を満たす不織布積層体。
(1)前記弾性不織布は、下記(a)〜(f)を満たす低結晶性ポリプロピレンと、エチレンに由来する構成単位及びプロピレンに由来する構成単位を含み、融点が100℃以上であり、結晶化度が15%以下であるαオレフィン共重合体Aと、を含む樹脂組成物からなる。
(2)前記樹脂組成物は、前記樹脂組成物100質量部に対してαオレフィン共重合体Aを5質量部〜50質量部含む。
(a)[mmmm]=20〜60モル%
(b)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(c)[rmrm]>2.5モル%
(d)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
(e)重量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
(a)〜(d)中、[mmmm]はメソペンタッド分率であり、[rrrr]はラセミペンタッド分率であり、[rmrm]はラセミメソラセミメソペンタッド分率であり、[mm]、[rr]及び[mr]はそれぞれトリアッド分率である。
【0010】
<2>前記樹脂組成物は、前記樹脂組成物100質量部に対して、前記低結晶性ポリプロピレンを95質量部〜50質量部含む<1>に記載の不織布積層体。
【0011】
<3>前記αオレフィン共重合体Aは、引張り弾性率が100MPa以下である<1>又は<2>に記載の不織布積層体。
【0012】
<4>前記αオレフィン共重合体Aは、エチレン、プロピレン及びブテンに由来する構成単位を含む共重合体である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【0013】
<5>前記弾性不織布の両面側に前記伸長性スパンボンド不織布が配置されている<1>〜<4>のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【0014】
<6>前記弾性不織布は、スパンボンド法により得られる不織布である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【0015】
<7>前記伸長性スパンボンド不織布が、芯部をMFRが1g/10分〜200g/10分の範囲にある低MFRのプロピレン系重合体とし、鞘部をMFRが16g/10分〜215g/10分の範囲にある高MFRのプロピレン系重合体とし、且つ、前記低MFRのプロピレン系重合体と前記高MFRのプロピレン系重合体のMFRの差が15g/10分以上である、同芯の芯鞘型複合繊維からなる伸長性スパンボンド不織布である<1>〜<6>のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【0016】
<8>前記伸長性スパンボンド不織布が、結晶性プロピレン系重合体80質量%〜99質量%と、高密度ポリエチレン20質量%〜1質量%と、を含むオレフィン系重合体組成物からなる<1>〜<7>のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【0017】
<9>前記弾性不織布と前記伸長性スパンボンド不織布との目付比(弾性不織布:伸長性スパンボンド不織布)が10:90〜90:10の範囲にある<1>〜<8>のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【0018】
<10><1>〜<9>のいずれか1項に記載の不織布積層体を、延伸加工して得られる伸縮性不織布積層体。
【0019】
<11><1>〜<9>のいずれか1項に記載の不織布積層体又は<10>に記載の伸縮性不織布積層体を含む繊維製品。
【0020】
<12><1>〜<9>のいずれか1項に記載の不織布積層体又は<10>に記載の伸縮性不織布積層体を含む吸収性物品。
【0021】
<13><1>〜<9>のいずれか1項に記載の不織布積層体又は<10>に記載の伸縮性不織布積層体を含む衛生マスク。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、製造の際の成形性、伸縮性、触感、装着性及び耐ロールブロッキング性に優れる不織布積層体、並びにこれを用いた伸縮性不織布積層体、繊維製品、吸収性物品及び衛生マスクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、ギア延伸装置の概略図である。
図2図2は、予熱装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合、原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0025】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0026】
<不織布積層体>
本発明の不織布積層体は、弾性不織布と、前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置され、少なくとも一方向の最大荷重伸度が50%以上である伸長性スパンボンド不織布と、を有し、下記(1)及び(2)を満たす。
(1)前記弾性不織布は、下記(a)〜(f)を満たす低結晶性ポリプロピレンと、エチレンに由来する構成単位及びプロピレンに由来する構成単位を含み、融点が100℃以上であり、結晶化度が15%以下であるαオレフィン共重合体Aと、を含む樹脂組成物からなる。
(2)前記樹脂組成物は、前記樹脂組成物100質量部に対してαオレフィン共重合体Aを5質量部〜50質量部含む。
(a)[mmmm]=20〜60モル%
(b)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(c)[rmrm]>2.5モル%
(d)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
(e)重量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
(a)〜(d)中、[mmmm]はメソペンタッド分率であり、[rrrr]はラセミペンタッド分率であり、[rmrm]はラセミメソラセミメソペンタッド分率であり、[mm]、[rr]及び[mr]はそれぞれトリアッド分率である。
【0027】
本発明の不織布積層体は、弾性不織布の少なくとも片面側に伸長性スパンボンド不織布が配置されているため、エンボス工程等で使用する装置内の各種回転機器等の部材への不織布積層体の付着が防止でき、成形性及び生産性に優れる。また、スパンボンド不織布が伸長性を有するため、弾性不織布の優れた伸縮性が維持される。さらに、弾性不織布が特定の樹脂組成物からなるため、不織布積層体の残留歪が小さく、伸縮性が従来の不織布積層体よりも向上している。さらに、触感、装着性及び耐ロールブロッキング性も良好である。
【0028】
本発明の不織布積層体は、不織布製造装置に付随する回転機器に接触する側の面に、少なくとも伸長性スパンボンド不織布が配置された構造を有することが好ましく、弾性不織布の両面側に伸長性スパンボンド不織布が配置された構造を有することがより好ましい。
【0029】
本発明の不織布積層体は、通常、目付が360g/m以下であり、好ましくは240g/m以下であり、より好ましくは150g/m以下であり、更に好ましくは120g/m〜15g/mの範囲内である。目付は、後述する実施例で用いた方法により測定することができる。
【0030】
弾性不織布と伸長性スパンボンド不織布の構成比は、種々の用途に応じて適宜決めることができる。通常は、弾性不織布:伸長性スパンボンド不織布(目付比)が、10:90〜90:10の範囲内であり、好ましくは20:80〜80:20の範囲内であり、より好ましくは20:80〜50:50の範囲内である。弾性不織布(又は伸張性スパンボンド不織布)が2以上存在するときは、弾性不織布(又は伸長性スパンボンド不織布)の目付は2以上の合計である。
【0031】
本発明の不織布積層体は、通常、少なくとも一方向の残留歪が26%以下であり、好ましくは25%以下である。少なくとも一方向の残留歪が26%以下であると、伸縮性が良好である。残留歪は、後述する実施例で用いた方法により測定することができる。
【0032】
本発明の不織布積層体は、通常、少なくとも一方向の最大荷重伸度が205%以上であり、好ましくは230%以上である。最大荷重伸度は、後述する実施例で用いた方法により測定することができる。
【0033】
本発明の不織布積層体は、延伸加工後のエンボス残存率が60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。延伸加工後のエンボス残存率が60%以上であると、触感が良好である。エンボス残存率は、後述する実施例で用いた方法により測定することができる。
【0034】
本発明の不織布積層体は、不織布積層体を2枚重ねてオーブンで保管した後の剥離強度が10N以下であることが好ましく、9N以下であることがより好ましく、8N以下であることが更に好ましい。剥離強度が10N以下であると、耐ロールブロッキング性が良好である。剥離強度は、後述する実施例で用いた方法により測定することができる。
【0035】
〔弾性不織布〕
本発明の不織布積層体を構成する弾性不織布は、後述する(a)〜(f)を満たす低結晶性ポリプロピレン(以下、単に低結晶性ポリプロピレンともいう)と、エチレンに由来する構成単位及びプロピレンに由来する構成単位を含み、融点が100℃以上、結晶化度が15%以下であるαオレフィン共重合体Aと、を含む樹脂組成物からなる。
【0036】
本発明において弾性不織布とは、延伸した後に応力が解放されると弾性により回復する性質を有する不織布をいう。
【0037】
弾性不織布は、種々の公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等が挙げられる。弾性不織布の中でも、スパンボンド法により得られるスパンボンド不織布またはメルトブロー法により得られるメルトブロー不織布が好ましい。
【0038】
弾性不織布は、通常、目付が120g/m以下であり、好ましくは80g/m以下であり、より好ましくは50g/m以下であり、更に好ましくは40g/m〜2g/mの範囲にある。
弾性不織布を構成する繊維は、通常、繊維径が50μm以下であり、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。
【0039】
(樹脂組成物)
弾性不織布を構成する樹脂組成物は、樹脂組成物100質量部に対して、αオレフィン共重合体Aを5質量部〜50質量部含む。さらに、樹脂組成物は、樹脂組成物100質量部に対して、低結晶性ポリプロピレンを95質量部〜50質量部含むことが好ましい。このような樹脂組成物からなる弾性不織布を有する不織布積層体は、残留歪が小さく、伸縮性に優れ、最大荷重伸度が高く、触感、装着性及び耐ロールブロッキング性に優れる。樹脂組成物は、樹脂組成物100質量部に対してαオレフィン共重合体Aを5質量部〜45質量部含み、低結晶性ポリプロピレンを95質量部〜55質量部含むことがより好ましい。
【0040】
本発明の目的を効果的に達成する観点からは、樹脂組成物の総質量中のαオレフィン共重合体A及び低結晶性ポリプロピレンの合計含有率は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
【0041】
(αオレフィン共重合体A)
αオレフィン共重合体Aは、エチレンに由来する構成単位及びプロピレンに由来する構成単位を含み、融点が100℃以上であり、結晶化度が15%以下である。
αオレフィン共重合体Aは、上記条件を満たすものであれば特に制限されず、エチレン又はプロピレン以外のαオレフィンに由来する構成単位の1種以上をさらに含んでもよい。エチレン又はプロピレン以外のαオレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、4メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。
【0042】
本発明の目的を効果的に達成する観点からは、αオレフィン共重合体Aの全構成単位中のエチレンに由来する構成単位及びプロピレンに由来する構成単位の合計の割合は80モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが更に好ましい。
【0043】
αオレフィン共重合体Aの融点は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される。具体的には、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料5mgを窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして求めることができる。
【0044】
αオレフィン共重合体Aの融点は、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上である。
【0045】
αオレフィン共重合体Aの結晶化度は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのうち主成分の融解に由来する融解熱カーブより算出される。具体的には、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料5mgを窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのうち主成分の融解に由来する融解熱カーブより下記の式を用いて算出することができる。
結晶化度=ΔH/ΔH0×100(%)
【0046】
式中、ΔHはエチレンとプロピレンを含むαオレフィン共重合体Aの主成分の融解に由来する融解熱カーブより求めた融解熱量(J/g)であり、ΔH0は主成分の完全結晶の融解熱量(J/g)である。つまり、主成分がエチレンの場合、ΔH0は293J/gであり、主成分がプロピレンの場合、ΔH0は210J/gである。
【0047】
αオレフィン共重合体Aの結晶化度は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0048】
αオレフィン共重合体Aは、JIS K7161(2011年度版)に準拠した方法で測定される引張り弾性率が100MPa以下であることが好ましく、40MPa以下であることがより好ましく、25MPa以下であることが更に好ましい。
【0049】
(低結晶性ポリプロピレン)
低結晶性ポリプロピレンは、下記(a)〜(f)の要件を満たす重合体である。
(a)[mmmm]=20〜60モル%:
低結晶性ポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]が20モル%以上であると、べたつきの発生が抑制され、60モル%以下であると、結晶化度が高くなりすぎることがないので、弾性回復性が良好となる。このメソペンタッド分率[mmmm]は、好ましくは30〜50モル%であり、より好ましくは40〜50モル%である。
【0050】
メソペンタッド分率[mmmm]、後述するラセミペンタッド分率[rrrr]及びラセミメソラセミメソペンダッド分率[rmrm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率、及びラセミメソラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。また、後述するトリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]も上記方法により算出される。
【0051】
なお、13C−NMRスペクトルの測定は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案されたピークの帰属に従い、下記の装置及び条件にて行うことができる。
【0052】
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/ml
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
【0053】
[計算式]
M=m/S×100
R=γ/S×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8〜22.5ppm
Pαβ:18.0〜17.5ppm
Pαγ:17.5〜17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7〜20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖:21.7〜22.5ppm
【0054】
(b)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
[rrrr]/[1−mmmm]の値は、上記のペンタッド単位の分率から求められ、低結晶性ポリプロピレンの規則性分布の均一さを示す指標である。この値が大きくなると、既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高規則性ポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物となり、べたつきの原因となる。
低結晶性ポリプロピレンにおいて、[rrrr]/(1−[mmmm])が0.1以下であると、得られる弾性不織布におけるべたつきが抑制される。このような観点から、[rrrr]/(1−[mmmm])は、好ましくは0.05以下であり、より好ましくは0.04以下である。
【0055】
(c)[rmrm]>2.5モル%
低結晶性ポリプロピレンのラセミメソラセミメソ分率[rmrm]が2.5モル%を超える値であると、該低結晶性ポリプロピレンのランダム性が増加し、弾性不織布の弾性回復性がさらに向上する。[rmrm]は、好ましくは2.6モル%以上であり、より好ましくは2.7モル%以上である。その上限は、通常10モル%程度である。
【0056】
(d)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
[mm]×[rr]/[mr]は、低結晶性ポリプロピレンのランダム性の指標を示し、この値が2.0以下であると、弾性不織布は十分な弾性回復性が得られ、かつべたつきも抑制される。[mm]×[rr]/[mr]は、0.25に近いほどランダム性が高くなる。上記十分な弾性回復性を得る観点から、[mm]×[rr]/[mr]は、好ましくは0.25を超え1.8以下であり、より好ましくは0.5〜1.5である。
【0057】
(e)重量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000
低結晶性ポリプロピレンにおいて重量平均分子量が10,000以上であると、該低結晶性ポリプロピレンの粘度が低すぎず適度のものとなるため、弾性不織布の製造時の糸切れが抑制される。また、重量平均分子量が200,000以下であると、上記低結晶性ポリプロピレンの粘度が高すぎず、紡糸性が向上する。この重量平均分子量は、好ましくは30,000〜150,000であり、より好ましくは50,000〜150,000である。この重量平均分子量の測定法については後述する。
【0058】
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
低結晶性ポリプロピレンにおいて、分子量分布(Mw/Mn)が4未満であると、弾性不織布のべたつきの発生が抑制される。この分子量分布は、好ましくは3以下である。
上記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により、下記の装置及び条件で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量であり、上記分子量分布(Mw/Mn)は、同様にして測定した数平均分子量(Mn)及び上記重量平均分子量(Mw)より算出した値である。
【0059】
[GPC測定装置]
カラム :TOSO GMHHR−H(S)HT
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
[測定条件]
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ml/分
試料濃度 :2.2mg/ml
注入量 :160μl
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
【0060】
低結晶性ポリプロピレンは、さらに以下の(g)を満たすことが好ましい。
(g)示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0℃〜120℃である。
【0061】
低結晶性ポリプロピレンの融点(Tm−D)が0℃以上であると、弾性不織布のべたつきの発生が抑制され、120℃以下であると、十分な弾性回復性が得られる。このような観点から、融点(Tm−D)は、より好ましくは0℃〜100℃であり、更に好ましくは30℃〜100℃である。
【0062】
なお、上記融点(Tm−D)は、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして求めることができる。
【0063】
低結晶性ポリプロピレンは、例えば、WO2003/087172号公報に記載されているような、いわゆるメタロセン触媒と呼ばれる均一系の触媒を用いて合成することができる。
【0064】
樹脂組成物、αオレフィン共重合体A及び低結晶性ポリプロピレンは、本発明の目的を損なわない範囲で、任意成分として、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等の種々公知の添加剤を含んでもよい。
【0065】
〔伸長性スパンボンド不織布〕
本発明の不織布積層体を構成する伸長性スパンボンド不織布は、少なくとも一方向の最大荷重伸度が50%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは100%以上であり、更に好ましくは弾性回復が殆どない性質を有する不織布である。
【0066】
伸長性スパンボンド不織布は、通常、目付が120g/m以下であり、好ましくは80g/m以下であり、より好ましくは50g/m以下であり、更に好ましくは40g/m〜5g/mの範囲にある。
【0067】
伸長性スパンボンド不織布を構成する繊維は、通常、繊維径が50μm以下であり、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。
【0068】
伸長性スパンボンド不織布としては、例えば、後述するオレフィン系重合体の1種又は2種以上を用いて得られる不織布が挙げられる。
オレフィン系重合体を用いて得られる不織布としては、(1)流動誘起結晶化誘導期の差が100秒以上の二種以上のオレフィン系重合体(高融点のプロピレン系重合体と低融点のプロピレン系重合体)からなる芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維(サイド・バイ・サイド型複合繊維)又は捲縮複合繊維からなるスパンボンド不織布、(2)プロピレン系重合体とエチレン系重合体とからなる芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維又は捲縮複合繊維からなるスパンボンド不織布、(3)芯部をメルトフローレート(以下MFRともいう。ASTMD−1238、230℃、荷重2160g)が1g/10分〜1000g/10分の範囲にある低MFRのプロピレン系重合体とし、鞘部をMFRが1g/10分〜1000g/10分の範囲にある高MFRのプロピレン系重合体とし、且つ、MFRの差が1g/10分以上、好ましくは15g/10分以上、より好ましくは30g/10分以上、更に好ましくは40g/10分以上である同芯の芯鞘複合繊維からなるスパンボンド不織布等が挙げられる。
【0069】
具体的には、(1)プロピレン単独重合体80質量%〜99質量%と、高密度ポリエチレン20質量%〜1質量%とからなるオレフィン系重合体組成物を用いて得られるスパンボンド不織布、(2)MFRが同一又は異なり、且つ、融点が157℃〜165℃の範囲にある高融点のプロピレン系重合体、好ましくはプロピレン単独重合体と融点が130℃〜150℃の範囲にある低融点のプロピレン・αオレフィンランダム共重合体とからなる芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維又は捲縮複合繊維からなるスパンボンド不織布、(3)芯部をMFRが1g/10分〜200g/10分の範囲にある低MFRのプロピレン系重合体、好ましくはプロピレン単独重合体とし、鞘部をMFRが16g/10分〜215g/10分の範囲にある高MFRのプロピレン系重合体、好ましくはプロピレン単独重合体とし、且つ、MFRの差が15g/10分以上である同芯の芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布等が挙げられる。
【0070】
伸長性スパンボンド不織布としては、(1)芯部をMFRが10g/10分〜200g/10分の範囲にあり、融点が157℃〜165℃の範囲にある低MFRで高融点のプロピレン系重合体、好ましくはプロピレン単独重合体とし、鞘部をMFRが10g/10分〜200g/10分の範囲にあり、融点が130℃〜150℃の範囲にある高MFRで低融点のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体とし、且つ、MFRの差が1g/10分以上である同芯の芯鞘型複合繊維からなる芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維若しくは捲縮複合繊維からなるスパンボンド不織布、又は(2)芯部をMFRが1g/10分〜200g/10分の範囲にある低MFRのプロピレン系重合体、好ましくはプロピレン単独重合体とし、鞘部をMFRが31g/10分〜230g/10分の範囲にある高MFRのプロピレン系重合体、好ましくはプロピレン単独重合体とし、且つ、MFRの差が30g/10分以上である同芯の芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布であることが好ましい。これらの伸長性スパンボンド不織布は、少なくとも一方向の最大荷重伸度が110%以上であると特に伸長性に優れる。
【0071】
(オレフィン系重合体)
伸長性スパンボンド不織布がオレフィン系重合体の1種又は2種以上から形成される場合、オレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のαオレフィンの単独重合体又は共重合体であるエチレン系重合体、プロピレン系重合体、結晶性の重合体等が挙げられる。
エチレン系重合体として具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン(所謂HDPE)等のエチレン単独重合体エチレン・αオレフィンランダム共重合体等が挙げられる。
プロピレン系重合体として具体的には、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体等のプロピレン・αオレフィンランダム共重合体などが挙げられる。
結晶性の重合体として具体的には、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0072】
(プロピレン系重合体)
上述したプロピレン系重合体は、通常、ポリプロピレンの名称で、製造・販売されている結晶性樹脂である。具体的には、通常、融点(Tm)が155℃以上、好ましくは157℃〜165℃の範囲にあるプロピレンの単独重合体又はプロピレンを主成分とし、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2以上(但し炭素数3を除く)、好ましくは炭素数2〜8(但し炭素数3を除く)である1種若しくは2種以上のα−オレフィンを共重合成分とする共重合体、及び、通常、融点(Tm)が130℃〜155℃未満、好ましくは130℃〜150℃の範囲にあるプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2以上(但し炭素数3を除く)、好ましくは炭素数2〜8(但し炭素数3を除く)である1種若しくは2種以上のαオレフィンとの共重合体が挙げられる。共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体等が挙げられる。
【0073】
プロピレン系重合体は、溶融紡糸し得る限り、そのメルトフローレート(MFR:ASTMD−1238、230℃、荷重2160g)は特に限定されない。通常は、1g/10分〜1000g/10分の範囲内であり、好ましくは5g/10分〜500g/10分の範囲内であり、更に好ましくは10g/10分〜100g/10分の範囲内である。
【0074】
(オレフィン系重合体組成物)
本発明に係る伸長性スパンボンド不織布は、エチレン系重合体と、プロピレン系重合体とを含むオレフィン系重合体組成物から形成されることが好ましい。オレフィン系重合体組成物は、プロピレン系重合体を通常は80質量%〜99質量%含み、好ましくは84質量%〜96質量%含み、エチレン系重合体を通常は20質量%〜1質量%含み、好ましくは16質量%〜4質量%含む(但し、プロピレン系重合体+エチレン系重合体=100質量%)。
【0075】
オレフィン系重合体組成物に含まれるエチレン系重合体は特に制限されないが、好ましくは密度が0.94g/cm〜0.97g/cm、より好ましくは0.95g/cm〜0.97g/cm、更に好ましくは0.96g/cm〜0.97g/cmの範囲にある高密度ポリエチレンである。また、紡糸性を有する限り特に限定されないが、伸長性を発現させる観点から、エチレン系重合体のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、通常は0.1g/10分〜100g/10分、より好ましくは0.5g/10分〜50g/10分、更に好ましくは1g/10分〜30g/10分の範囲内である。
【0076】
上述したオレフィン系重合体、エチレン系重合体及びプロピレン系重合体は、本発明の目的を損なわない範囲で、任意成分として、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、親水剤等の種々公知の添加剤を含んでもよい。
【0077】
〔他の層〕
本発明の不織布積層体は、用途に応じて弾性不織布及び伸長性スパンボンド不織布以外の他の層を1又は2以上有していてもよい。
【0078】
他の層として具体的には、編布、織布、弾性不織布及び伸長性スパンボンド不織布以外の不織布、フィルム等が挙げられる。本発明の不織布積層体に他の層をさらに積層する(貼り合せる)方法は特に制限されず、熱エンボス加工、超音波融着等の熱融着法、ニードルパンチ、ウォータージェット等の機械的交絡法、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤等の接着剤を用いる方法、押出しラミネート等の種々の方法を採り得る。
【0079】
本発明の不織布積層体が弾性不織布及び伸長性スパンボンド不織布以外の不織布を有する場合の不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、湿式不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等の、種々公知の不織布が挙げられる。これらの不織布は伸縮性不織布であっても、非伸縮性不織布であってもよい。ここで非伸縮性不織布とは、MD(不織布の流れ方向、縦方向)又はCD(不織布の流れ方向に直角の方向、横方向)に伸長後、戻り応力を発生させないものをいう。
【0080】
本発明の不織布積層体がフィルムを有する場合のフィルムとしては、本発明の不織布積層体の特徴である通気性及び親水性を保持する観点から、通気性(透湿性)フィルムが好ましい。通気性フィルムとしては、透湿性を有するポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマーからなるフィルム、無機微粒子又は有機微粒子を含む熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸して多孔化してなる多孔フィルム等の、種々の公知の通気性フィルムが挙げられる。多孔フィルムに用いる熱可塑性樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、これらの組み合わせ等のポリオレフィンが好ましい。但し、不織布積層体の通気性及び親水性を保持する必要がない場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの組み合わせ等の熱可塑性樹脂のフィルムを用いてもよい。
【0081】
〔不織布積層体の製造方法〕
本発明の不織布積層体は、弾性不織布の原料となる低結晶性ポリプロピレン及びαオレフィン共重合体A、伸長性スパンボンド不織布の原料となるオレフィン系重合体、並びに必要に応じて用いられる添加剤を用いて、公知の不織布の製造方法により製造し得る。
【0082】
不織布積層体の製造方法の一例として、少なくとも二列の紡糸装置を備えた不織布製造装置を用いる方法について以下に説明する。
まず、一列目の紡糸装置に備えられた押出機、必要に応じて二個以上の押出機でオレフィン系重合体、必要に応じて二種以上のオレフィン系重合体を溶融し、多数の紡糸孔(ノズル)を備えた口金(ダイ)、必要に応じて芯鞘構造を有する紡糸孔に導入し、吐出する。その後、溶融紡糸されたオレフィン系重合体を含む長繊維を冷却室に導入し、冷却風により冷却した後、延伸エアにより長繊維を延伸(牽引)し、伸長性スパンボンド不織布を移動捕集面上に堆積させる。
他方、二列目の紡糸装置に備えられた押出機で低結晶性ポリプロピレンとαオレフィン共重合体Aを含む樹脂組成物を溶融し、多数の紡糸孔(ノズル)を備えた口金(ダイ)を有する紡糸孔に導入し、樹脂組成物を吐出する。その後、溶融紡糸された樹脂組成物を含む長繊維を冷却室に導入し、冷却風により冷却した後、延伸エアにより長繊維を延伸(牽引)し、伸長性スパンボンド不織布上に堆積させて、弾性不織布を形成する。
必要に応じて、三列目の紡糸装置を用いて、伸長性スパンボンド不織布を弾性不織布上に堆積させてもよい。
【0083】
弾性不織布及び伸長性スパンボンド不織布の原料となる重合体の溶融温度は、それぞれの重合体の軟化温度あるいは融解温度以上、且つ熱分解温度未満であれば特に限定されない。口金の温度は、用いる重合体の種類にもよるが、例えば、プロピレン系重合体を用いる場合は、通常は180℃〜240℃、好ましくは190〜230℃、より好ましくは200〜225℃の温度に設定し得る。
【0084】
冷却風の温度は重合体が固化する温度であれば特に限定はされないが、通常5℃〜50℃、好ましくは10℃〜40℃、より好ましくは15℃〜30℃の範囲にある。延伸エアの風速は、通常100m/分〜10,000m/分、好ましくは500m/分〜10,000m/分の範囲にある。
【0085】
本発明の不織布積層体は、弾性不織布の少なくとも一部と、伸長性スパンボンド不織布の少なくとも一部とが熱融着した構造を有することが好ましい。この際、弾性不織布の少なくとも一部と伸長性スパンボンド不織布の少なくとも一部とを熱融着する前に、ニップロールを用いて、押し固めておいてもよい。
【0086】
熱融着の方法は特に制限されず、種々の公知の方法から選択できる。例えば、超音波等の手段を用いる方法、エンボスロールを用いる熱エンボス加工、ホットエアースルーを用いる方法等がプレボンディングとして例示できる。中でも、延伸する際に長繊維が効率よく延伸される観点からは熱エンボス加工が好ましく、その温度範囲は、60℃〜115℃であることが好ましい。
【0087】
熱エンボス加工により積層体の一部を熱融着する場合は、通常、エンボス面積率が5%〜30%、好ましくは5%〜20%、非エンボス単位面積が0.5mm以上、好ましくは4mm〜40mmの範囲にある。非エンボス単位面積とは、四方をエンボス部で囲まれた最小単位の非エンボス部において、エンボスに内接する四角形の最大面積である。刻印の形状としては、円、楕円、長円、正方、菱、長方、四角、これらの形状を基本とする連続した形状等が挙げられる。
【0088】
<伸縮性不織布積層体>
本発明の伸縮性不織布積層体は、前記不織布積層体を延伸することによって得られる、伸縮性を有する不織布積層体である。
【0089】
本発明の伸縮性不織布積層体は、前記不織布積層体を、延伸加工することによって、得ることができる。延伸加工の方法は特に制限されず、従来より公知の方法を適用できる。延伸加工の方法は、部分的に延伸する方法であっても、全体的に延伸する方法であってもよい。また、一軸延伸する方法であっても、二軸延伸する方法であってもよい。機械の流れ方向(MD)に延伸する方法としては、たとえば、2つ以上のニップロールに部分的に融着した混合繊維を通過させる方法が挙げられる。このとき、ニップロールの回転速度を、機械の流れ方向の順に速くすることによって部分的に融着した不織布積層体を延伸できる。また、図1に示すギア延伸装置を用いてギア延伸加工することもできる。
【0090】
延伸倍率は、好ましくは50%以上、より好ましくは100%以上、更に好ましくは200%以上であり、且つ、好ましくは1000%以下、より好ましくは400%以下である。
【0091】
一軸延伸の場合には機械の流れ方向(MD)の延伸倍率、又はこれに垂直な方向(CD)のいずれかが上記延伸倍率を満たすことが好ましい。二軸延伸の場合には機械の流れ方向(MD)とこれに垂直な方向(CD)のうち、少なくとも一方が上記延伸倍率を満たすことが好ましい。
【0092】
このような延伸倍率で延伸加工することにより、弾性不織布と伸長性スパンボンド不織布を形成する(長)繊維は何れも延伸されるが、伸長性スパンボンド不織布層を形成する長繊維は、塑性変形して、上記延伸倍率に応じて伸長される(長くなる)。
【0093】
したがって、不織布積層体を延伸した後、応力が解放されると、弾性不織布を形成する(長)繊維は弾性回復し、伸長性スパンボンド不織布を形成する長繊維は、弾性回復せずに褶曲し、不織布積層体に嵩高感が発現する。しかも、伸長性スパンボンド不織布を形成する長繊維は細くなるので柔軟性及び触感が良くなるとともに、伸び止り機能を付与することができる。
【0094】
<繊維製品>
本発明の繊維製品は、本発明の不織布積層体又は伸縮性不織布積層体を含む。繊維製品は特に制限されず、使い捨ておむつ、生理用品等の吸収性物品、衛生マスク等の衛生物品、包帯等の医療物品、衣料素材、包装材などが挙げられる。本発明の繊維製品は、本発明の不織布積層体又は伸縮性不織布積層体を伸縮部材として含むことが好ましい。
【実施例】
【0095】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
【0096】
(1)目付〔g/m
不織布積層体から流れ方向(MD)が200mm、横方向(CD)が50mmの試験片を6枚採取した。なお、採取場所はMD、CDともに任意の3箇所とした(計6箇所)。次いで、採取した各試験片の質量(g)を、上皿電子天秤(研精工業社製)を用いてそれぞれ測定した。各試験片の質量の平均値を求めた。求めた平均値から1m当たりの質量(g)に換算し、小数点第1位を四捨五入して、目付〔g/m〕とした。
【0097】
(2)最大荷重〔N/50mm〕及び最大荷重伸度〔%〕
不織布積層体から、流れ方向(MD)が200mm、横方向(CD)が50mmの試験片を5枚採取した。この試験片について、定速伸長型引張試験機を用いて、チャック間100mm、引張速度100mm/分の条件で引張試験を行った。試験片に掛かる最大の荷重〔N/50mm〕を測定した。また、最大荷重における試験片の伸び率〔%〕を測定した。5枚の試験片の平均値を求め、それぞれ、最大荷重、最大荷重伸度とした。伸張性スパンボンド不織布の最大荷重伸度〔%〕は、上記と同じ方法で測定することによって求めた。
【0098】
(3)残留歪〔%〕
不織布積層体から、流れ方向(MD)が200mm、横方向(CD)が50mmの試験片を5枚採取した。この試験片について、定速伸長型引張り試験機を用いて、チャック間100mm、引張速度100mm/分、延伸倍率100%の条件で延伸した後、直ちに同じ速度で原長まで回復させた。さらに直ちに同じ速度で延伸倍率100%の条件で延伸し
た後、直ちに同じ速度で原長まで回復させて、回復時の歪を測定した。5枚の不織布積層体についての平均値を残留歪(単位:%)として評価した。
【0099】
(4)紡糸性
スパンボンド不織布製造装置のノズル面近傍の紡糸状況を目視で観察し、5分あたりの糸切れ回数(単位:回/5分)を数えた。糸切れ回数が0回/5分であれば「○」、糸切れが発生し不織布採取に至らない場合は「×」と評価した。
【0100】
(5)成形性
エンボス工程にて、金属ロールを5分間走行させ、不織布積層体がエンボスロールを通過する際に生じる付着状態を評価した。
○:目視にて付着が全く確認されない状態。
△:目視にて付着が殆ど確認されない状態。
×:目視にて付着が確認される状態、又はエンボスロールに巻付く状態。
【0101】
(6)触感
不織布積層体から、流れ方向(MD)が250mm、横方向(CD)が200mmの試験片を1枚採取した。この試験片を、CD方向が図2に示すような予熱装置のロール回転方向と一致するように挿入し、予熱された不織布積層体を得た。得られた不織布積層体を直ちに図1に示すようなギア加工機のロール回転方向とCD方向が一致するように挿入し、MD方向(不織布積層体の流れ方向)にギア延伸された不織布積層体を得た。なお予熱はロール表面温度が60℃となるように調整し、ギア加工機に搭載されるギアロールは各々直径が200mm、ギアピッチが2.5mmであり、両ロールの噛み合い深さを5.5mmとなるように調整した。上記のようにして得たギア延伸された不織布積層体について、評価者10人が手触りを確認し、触感を下記基準で評価した。
3:10人の内10人がザラツキが無いと評価。
2:10人の内9〜7人がザラツキが無いと評価。
1:10人の内6〜3人がザラツキが無いと評価。
0:10人の内2〜0人がザラツキが無いと評価。
【0102】
(7)エンボス残存率〔%〕
触感評価と同様の方法で得たギア延伸された不織布積層体について、SEMによる形態観察を行い、エンボスの残存率を評価した。エンボス残存率が高いほど、触感が良好であるとした。エンボス残存率は下記の式を用いて算出した。
エンボス残存率=破壊されていないエンボス数/観察されたエンボス数×100
なお、ギア延伸された不織布積層体のSEMによるエンボス部の観察により、エンボス部での孔あきや繊維の脱離、エンボス部とその境界における繊維切れが確認されなかったエンボス部を「破壊されていないエンボス」とした。
【0103】
(8)オムツ装着性
不織布積層体から、流れ方向(MD)が250mm、横方向(CD)が200mmの試験片を切り取った。この試験片を、CD方向が図2に示すような予熱装置のロール回転方向と一致するように挿入し、予熱された不織布積層体を得た。得られた不織布積層体を直ちに図1に示すようなギア加工機のロール回転方向とCD方向が一致するように挿入し、MD方向(不織布積層体の流れ方向)にギア延伸された不織布積層体を得た。なお予熱はロール表面温度が60℃となるように調整し、ギア加工機に搭載されるギアロールは各々直径が200mm、ギアピッチが2.5mmであり、両ロールの噛み合い深さを3.5mmとなるように調整した。市販のオムツから不織布を剥がし、上記のようにして得たギア延伸された不織布積層体を貼り付け、評価者10人が装着し、装着性を下記基準で評価した。
3:10人の内10人がズレ無しの評価。
2:10人の内9〜7人がズレ無しの評価。
1:10人の内6〜3人がズレ無しの評価。
0:10人の内2〜0人がズレ無しの評価。
【0104】
(9)剥離強度〔N〕(耐ロールブロッキング性)
不織布積層体の耐ロールブロッキング性を以下の方法で評価した。
2枚重ね合せた不織布積層体に、重り4kg(10cm×10cm角)を載せ、90℃のオーブンに2時間保管した。2時間の保管後、オーブンより取り出した不織布積層体の剥離強度を測定した。この測定により、不織布積層体をロール状態で保管した場合の、保管環境温度や圧力などによるブロッキングのしやすさの指標とした。つまり、剥離強度が小さいほど、ブロッキングしにくく、耐ブロッキング性が高いことになる。剥離強度は以下の方法で測定した。
オーブンから取り出した重ね合せた不織布積層体から、流れ方向(MD)が10.0cm、横方向(CD)が5.0cmの試験片2枚を採取した。次に、ガムテープ「(株)寺岡製作所、布テープNo.159、50mm巾」を15.0cm切り取り、上記試験片の全面に対し、試験片の流れ方向(MD)とガムテープの長辺方向が一致するように貼り合わせた。ガムテープは試験片の両面に貼り合わせ、ガムテープ/重ね合せた不織布積層体/ガムテープという三層構造を作製した。次に、上記三層構造体の両面それぞれのガムテープを低速伸長型引張試験機のチャック上下にそれぞれ取付け、チャック間50mm、引張速度100mm/分の条件で引っ張ることにより、重ね合せた不織布積層体の剥離強度〔N〕を測定した。剥離強度は、2枚の試験片の平均値を少数点第三位で四捨五入し、剥離強度とした。重ね合せた不織布積層体の剥離強度が、基材破壊を起こす程度に強固に固定されている場合は、「材破」とした。
【0105】
[実施例1]
<低結晶性ポリプロピレンの合成>
攪拌機付き、内容積0.2mのステンレス製反応器に、n−ヘプタンを20L/hで、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/hで、さらに、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートと(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドとトリイソブチルアルミニウムとプロピレンとを事前に接触させて得られた触媒成分をジルコニウムあたり6μmol/hで連続供給した。
【0106】
重合温度70℃で気相部水素濃度を8mol%、反応器内の全圧を0.7MPa・Gに保つようにして、プロピレンと水素を連続供給した。
得られた重合溶液に、SUMILIZER GP(住友化学社製)を1000ppmになるように添加し、溶媒を除去することにより、プロピレン重合体を得た。
【0107】
得られたプロピレン重合体の重量平均分子量(Mw)は1.2×10、Mw/Mn=2であった。また、NMR測定から求めた[mmmm]が46モル%、[rrrr]/(1−[mmmm])が0.038、[rmrm]が2.7モル%、[mm]×[rr]/[mr]が1.5であった。
【0108】
<プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体の合成>
充分に窒素置換した容量2000mlの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサンと、100gの1−ブテンと、トリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)とを常温で仕込んだ。その後、重合装置の内温を40℃に昇温し、プロピレンを導入して加圧した。その後、エチレンを導入して系内圧力を0.8MPaに調整した。
【0109】
次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.001mmolとアルミニウム換算で0.3mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)とを含有するトルエン溶液を重合器内に添加した。その後、内温を40℃に、系内圧力をエチレンを導入することにより0.8MPaに保ちながら20分間重合した。その後、20mlのメタノールを添加して重合を停止した。脱圧後、2リットルのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃で12時間乾燥した。
【0110】
得られたポリマーのプロピレン含量は78モル%であり、エチレン含量は16モル%であり、1−ブテン含量は6モル%であった。融点は161℃、結晶化度は6%、引張り弾性率は23.5MPaであった。上記のようにして得られたプロピレン・エチレン・1−ブテン(C2/C3/C4)共重合体をPEB−1とする。
【0111】
<不織布積層体の製造>
MFR(ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgで測定)8.5g/10分、密度0.91g/cm、融点160℃のプロピレン単独重合体(以下、「重合体I」という)を50mmφの押出機を用いて溶融し、それとは独立してMFR(ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgで測定)60g/10分、密度0.91g/cm、融点160℃のプロピレン単独重合体(以下、「重合体IIという」)を75mmφの押出機を用いて溶融した。その後、「重合体I」が芯、「重合体II」が鞘となるような同芯の芯鞘複合繊維の成形が可能な紡糸口金(ダイ、孔数2887ホール)を有するスパンボンド不織布成形機(捕集面上の機械の流れ方向に垂直な方向の長さ:800mm)を用いて、樹脂温度とダイ温度がともに250℃、冷却風温度20℃、延伸エアー風速3750m/分の条件でスパンボンド法により複合溶融紡糸を行い、芯部と鞘部の質量比が10/90の同芯の芯鞘型複合繊維からなる伸長性スパンボンド不織布を捕集面上に第一層目として堆積させた。
【0112】
次いで、伸長性スパンボンド不織布の堆積面上に、弾性不織布を第二層目として堆積させた。具体的には、上記工程で合成した低結晶性ポリプロピレンとPEB−1を質量比95:5の割合で予めブレンドした原料を、スクリュー径75mmφの単軸押出機を用いて溶融した。その後、溶融した原料を紡糸口金(ダイ、孔数808ホール)を有するスパンボンド不織布成形機(捕集面上の機械の流れ方向に垂直な方向の長さ:800mm)を用いて、樹脂温度とダイ温度がともに215℃、冷却風温度20℃、延伸エアー風速3750m/分の条件でスパンボンド法により溶融紡糸し、第2層目として堆積させた。
【0113】
次いで、弾性不織布からなる第二層目の上に、第3層目として、第1層目と同様の芯鞘型複合繊維を第1層目と同様の方法により堆積させ、3層構造の堆積物を作製した。この堆積物をエンボスロールで加熱加圧処理(エンボス面積率18%、エンボス温度70℃)して、総目付量が30.0g/m、1層目及び3層目の目付量がそれぞれ10.0g/m、2層目の目付量が10.0g/mである不織布積層体を作製した(弾性不織布層が全体に対して占める質量分率が33.3%)。
【0114】
上記のようにして得た不織布積層体は、エンボス工程における金属ロール表面への付着は殆どなく、成形性は良好であった。また、不織布積層体をロール状態に巻き取った際、ロールブロッキングも起こらず、容易に引き出すことができた。
【0115】
得られた不織布積層体の各物性を測定した結果を表1に示す。得られた不織布積層体の最大荷重、最大荷重伸度及び残留歪はいずれも良好であった。
【0116】
[実施例2]
実施例1で合成した低結晶性ポリプロピレンとPEB−1を質量比90:10の割合でブレンドし、エンボス温度を75℃に変更した以外は、実施例1と同様にして不織布積層体を作製した。
【0117】
上記のようにして得た不織布積層体は、エンボス工程における金属ロール表面への付着は殆どなく、成形性は良好であった。また、不織布積層体をロール状態に巻き取った際、ロールブロッキングも起こらず、容易に引き出すことができた。
【0118】
得られた不織布積層体の各物性を測定した結果を表1に示す。得られた不織布積層体の最大荷重、最大荷重伸度及び残留歪はいずれも良好であった。
【0119】
[実施例3]
実施例1で合成した低結晶性ポリプロピレンとPEB−1を質量比80:20の割合でブレンドし、エンボス温度を80℃に変更した以外は、実施例1と同様にして不織布積層体を作製した。
【0120】
上記のようにして得た不織布積層体は、エンボス工程における金属ロール表面への付着は殆どなく、成形性は良好であった。また、不織布積層体をロール状態に巻き取った際、ロールブロッキングも起こらず、容易に引き出すことができた。
【0121】
得られた不織布積層体の各物性を測定した結果を表1に示す。得られた不織布積層体の最大荷重、最大荷重伸度、残留歪、エンボス残存率、触感及び装着性の評価はいずれも良好であった。また、耐ロールブロッキング性の評価も、試験中に試験片が破れる(材破)ことなく剥離でき、良好であった。
【0122】
[実施例4]
実施例1で合成した低結晶性ポリプロピレンとPEB−1を質量比60:40の割合でブレンドし、エンボス温度を95℃に変更した以外は、実施例1と同様にして不織布積層体を作製した。
【0123】
上記のようにして得た不織布積層体は、エンボス工程における金属ロール表面への付着は殆どなく、成形性は良好であった。また、不織布積層体をロール状態に巻き取った際、ロールブロッキングも起こらず、容易に引き出すことができた。
【0124】
得られた不織布積層体の各物性を測定した結果を表1に示す。得られた不織布積層体の最大荷重、最大荷重伸度及び残留歪はいずれも良好であった。また、耐ロールブロッキング性評価も、試験中に試験片が破れる(材破)ことなく剥離でき、良好であった。
【0125】
[実施例5]
実施例1で合成した低結晶性ポリプロピレンとPEB−1を質量比50:50の割合でブレンドし、エンボス温度を105℃に変更した以外は、実施例1と同様にして不織布積層体を作製した。
【0126】
上記のようにして得た不織布積層体は、エンボス工程における金属ロール表面への付着は殆どなく、成形性は良好であった。また、不織布積層体をロール状態に巻き取った際、ロールブロッキングも起こらず、容易に引き出すことができた。
【0127】
得られた不織布積層体の各物性を測定した結果を表1に示す。得られた不織布積層体の最大荷重、最大荷重伸度及び残留歪はいずれも良好であった。
【0128】
[実施例6]
実施例1で合成したPEB−1を、Vistamaxx 2120(ExxonMobil社製:エチレン・プロピレン(C2/C3)共重合体、融点162℃、結晶化度10%、引張り弾性率30.9MPa)とし、実施例1で合成した低結晶性ポリプロピレンとVistamaxx 2120を質量比60:40の割合でブレンドし、エンボス温度を105℃に変更した以外は、実施例1と同様にして不織布積層体を作製した。
【0129】
上記のようにして得た不織布積層体は、エンボス工程における金属ロール表面への付着は殆どなく、成形性は良好であった。また、不織布積層体をロール状態に巻き取った際、ロールブロッキングも起こらず、容易に引き出すことができた。
【0130】
得られた不織布積層体の各物性を測定した結果を表1に示す。得られた不織布積層体の最大荷重、最大荷重伸度及び残留歪はいずれも良好であった。
【0131】
[比較例1]
第2層目を実施例1で合成した低結晶性ポリプロピレンのみからなる層に変更した以外は、実施例1と同様にして不織布積層体を作製した。
【0132】
上記のようにして得た不織布積層体は、エンボス工程における金属ロール表面への付着は殆どなく、成形性は良好であった。また、不織布積層体をロール状態に巻き取った際、ロールブロッキングも起こらず、容易に引き出すことができた。
【0133】
得られた不織布積層体の各物性を測定した結果を表1に示す。得られた不織布積層体の最大荷重及び最大荷重伸度は良好であるが、残留歪が大きく、エンボス残存率が低く、触感の評価が低かった。また、耐ロールブロッキング性の試験中に試験片が破れ(材破:11N以上)、耐ロールブロッキング性に劣る結果であった。
【0134】
[比較例2]
実施例1で合成した低結晶性ポリプロピレンとPEB−1を質量比40:60の割合でブレンドし、エンボス温度を120℃に変更した以外は、実施例1と同様にして不織布積層体を作製した。
【0135】
上記のようにして得た不織布積層体は、エンボス工程における金属ロール表面への付着は殆どなく、成形性は良好であった。また、不織布積層体をロール状態に巻き取った際、ロールブロッキングも起こらず、容易に引き出すことができた。
【0136】
得られた不織布積層体の各物性を測定した結果を表1に示す。得られた不織布積層体の最大荷重及び残留歪は良好であるが、最大荷重伸度が小さい不織布であった。
【0137】
[比較例3]
<エチレン・1−ブテン共重合体の製造>
(触媒溶液の調製)
トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートを18.4mg採り、トルエンを5ml加えて溶解させ、濃度が0.004ミリモル/mlのトルエン溶液を調製した。また、〔ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シラン〕チタンジクロライドを1.8mg採り、トルエンを5ml加えて溶解させ、濃度が0.001ミリモル/mlのトルエン溶液を調製した。
重合開始時においては、トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を0.38ml、〔ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シラン〕チタンジクロライドのトルエン溶液を0.38ml採り、さらに希釈用のトルエンを4.24ml加えて、トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートがB換算で0.002ミリモル/リットルに、〔ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シラン〕チタンジクロライドがTi換算で0.0005ミリモル/リットルとなるトルエン溶液を5ml調製し、触媒溶液とした。
【0138】
(重合)
充分に窒素置換した容量1.5リットルの撹拌翼付きSUS製オートクレーブに、23℃でヘプタン750mlを導入した。このオートクレーブに、撹拌翼を回し、かつ氷冷しながら1−ブテン6g、水素150mlを導入した。次に、このオートクレーブを100℃まで加熱し、更に全圧が6kg/cmとなるように、エチレンで加圧した。オートクレーブの内圧が6kg/cmになったところで、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)の1.0ミリモル/mlヘキサン溶液1.0mlを窒素で圧入した。続いて、上記触媒のトルエン溶液5mlを窒素でオートクレーブに圧入して重合を開始した。その後、5分間、オートクレーブを内温が100℃になるように温度調節し、かつ圧力が6kg/cmとなるように直接的にエチレンの供給を行った。重合を開始してから5分後に、オートクレーブにポンプでメタノール5mlを装入して重合を停止させ、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液に3リットルのメタノールを撹拌しながら注いだ。得られた溶媒を含む重合体を130℃、13時間、600Torr(80000Pa)で乾燥した。得られたポリマーのエチレン含量は88モル%であり、1−ブテン含量は12モル%であった。融点は70℃、結晶化度は24%、引張り弾性率は23.5MPaであった。上記のようにして得られたエチレン・1−ブテン(C2/C4)共重合体をEB−2とする。
【0139】
<不織布積層体の製造>
第2層目の形成のために実施例1で合成した低結晶性ポリプロピレンと上記工程で合成したEB−2を質量比60:40の割合でブレンドしたが、紡糸性が著しく悪く、不織布積層体を得るに至らなかった。
【0140】
[比較例4]
<プロピレン・1−ブテン共重合体の製造>
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを900ml、1−ブテンを90g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した。その後、プロピレンを供給して全圧7kg/cm2Gにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、上記PEB−1の製造例と同様の方法で製造されたrac−ジメチルシリレン−ビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドをZr原子に換算して0.001ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を7kg/cm2Gに保ちながら30分間重合を行った。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。得られたポリマーのプロピレン含量は74モル%であり、1−ブテン含量は26モル%であった。融点は77℃、結晶化度は19%、引張り弾性率は217.3MPaであった。上記のようにして得られたプロピレン・1−ブテン(C3/C4)共重合体をPB−3とする。
【0141】
<不織布積層体の製造>
第2層目を、実施例1で合成した低結晶性ポリプロピレンと上記工程で合成したPB−3を質量比60:40の割合でブレンドし、エンボス温度を105℃に変更して形成した以外は、実施例1と同様にして不織布積層体を作製した。
【0142】
上記のようにして得た不織布積層体は、エンボス工程における金属ロール表面への付着は殆どなく、成形性は良好であった。また、不織布積層体をロール状態に巻き取った際、ロールブロッキングも起こらず、容易に引き出すことができた。
【0143】
得られた不織布積層体の各物性を測定した結果を表1に示す。得られた不織布積層体は最大荷重伸度が小さく、残留歪が大きかった。
【0144】
[比較例5]
第2層目を、実施例1で合成した低結晶性ポリプロピレンとアフィニティーPL 1850(Dow Chemical社製:エチレン・1−オクテン(C2/C8)共重合体、融点100℃、結晶化度35%、引張り弾性率75.4MPa)を質量比95:5の割合でブレンドし、エンボス温度を80℃に変更して形成した以外は、実施例1と同様にして不織布積層体を作製した。
【0145】
上記のようにして得た不織布積層体は、エンボス工程における金属ロール表面への付着は殆どなく、成形性は良好であった。また、不織布積層体をロール状態に巻き取った際、ロールブロッキングも起こらず、容易に引き出すことができた。
【0146】
得られた不織布積層体の各物性を測定した結果を表1に示す。得られた不織布積層体は残留歪が大きかった。
【0147】
[比較例6]
第2層目の形成のために実施例1で合成した低結晶性ポリプロピレンとアフィニティーPL 1850(Dow Chemical社製:エチレン・1−オクテン(C2/C8)共重合体、融点100℃、結晶化度35%、引張り弾性率75.4MPa)を質量比60:40の割合でブレンドしたが、紡糸性が著しく悪く、不織布積層体を得るに至らなかった。
【0148】
[比較例7]
第2層目の形成のために実施例1で合成した低結晶性ポリプロピレンとエンゲージ8407(Dow Chemical社製:エチレン・1−オクテン(C2/C8)共重合体、融点63℃、結晶化度26%、引張り弾性率8.2MPa)を質量比60:40の割合でブレンドしたが、紡糸性が著しく悪く、不織布積層体を得るに至らなかった。
【0149】
[比較例8]
第2層目を、実施例1で合成した低結晶性ポリプロピレンと、プライムポリプロS119(プライムポリマー社製:ポリプロピレン(C3)単独重合体、融点160℃、結晶化度50%、引張り弾性率1570MPa)とを質量比80:20の割合でブレンドし、エンボス温度を85℃に変更して形成した以外は、実施例1と同様にして不織布積層体を作製した。
【0150】
上記のようにして得た不織布積層体は、エンボス工程における金属ロール表面への付着は殆どなく、成形性は良好であった。また、不織布積層体をロール状態に巻き取った際、ロールブロッキングも起こらず、容易に引き出すことができた。
【0151】
得られた不織布積層体の各物性を測定した結果を表1に示す。得られた不織布積層体は最大荷重伸度が小さく、残留歪が大きく、触感が悪かった。
【0152】
【表1】
【0153】
日本国特許出願第2015−046377号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図1
図2