特許第6346382号(P6346382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346382
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】印刷材カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20180611BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180611BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20180611BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   B41J2/175 119
   B41J2/01 401
   B41J2/175 175
   G03G21/16 176
   G03G15/08 330
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-539273(P2017-539273)
(86)(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公表番号】特表2018-509648(P2018-509648A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】US2015027271
(87)【国際公開番号】WO2016171694
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2017年8月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ジェラン,ポール
【審査官】 村石 桂一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−051269(JP,A)
【文献】 特開2002−307710(JP,A)
【文献】 特開2008−074100(JP,A)
【文献】 特開2010−012659(JP,A)
【文献】 特開2008−149724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
G03G 15/08
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンターコントローラを有するプリンターに装着される印刷材カートリッジであって、
印刷材料を収容するための容器と、
前記カートリッジが前記プリンターに装着されたときに、前記カートリッジと前記プリンターコントローラとの間で情報をやり取りできるようにするためのカートリッジメモリ
を備え、
前記カートリッジメモリは、プリンターIDプロンプト用の第1のメモリアドレスを有する第1のライトワンス読み出し専用メモリ、及びプリンターID用の第2のメモリアドレスを有する第2のライトワンス読み出し専用メモリを備え、
前記カートリッジメモリは、前記第1及び第2のライトワンス読み出し専用メモリへのデータの格納、及び該第1及び第2のライトワンス読み出し専用メモリからのデータの取り出しを制御するためのメモリコントローラを備え、
前記メモリコントローラは、前記プリンターコントローラとの情報のやり取りを制御し、
前記第1のメモリアドレスにプロンプトが記憶されていない状態は、前記第2のメモリアドレスにプリンターIDが記憶されているか否かの状態に関係なく、前記第2のメモリアドレスにプリンターIDを書き込まないように、前記プリンターコントローラに指示するための情報を提供し、前記第1のメモリアドレスにプロンプトが記憶されている状態と前記第2のメモリアドレスにプリンターIDが記憶されていない状態の組み合わせだけが、前記第2のメモリアドレスにプリンターIDを書き込むように、前記プリンターコントローラに指示するための情報を提供することからなる、印刷材カートリッジ。
【請求項2】
前記第1のメモリアドレス内の前記プロンプトは、単一ビット値を含むことからなる、請求項1のカートリッジ。
【請求項3】
前記プリンターIDは、一群のプリンター、すなわち、1つの主体によって所有されもしくは操作されるプリンターのグループ、またはプリンターのあるグループに印刷を限定する義務が課されているものとして特定される該グループを識別する1つの識別子を含む、請求項1または2のカートリッジ。
【請求項4】
前記容器内に印刷材料を含む、請求項1〜3のいずれかのカートリッジ。
【請求項5】
前記カートリッジはトナーカートリッジであり、前記容器はトナーを収容する、請求項1〜4のいずれかのカートリッジ。
【請求項6】
前記カートリッジはインクカートリッジであり、前記容器はインクを収容する、請求項1〜4のいずれかのカートリッジ。
【請求項7】
前記カートリッジメモリは、前記容器に取り付けられた集積回路チップで具現化され、かつ、一連の接触パッド及び導電線を介して前記プリンターコントローラに動作可能に接続される、請求項1〜6のいずれかのカートリッジ。
【請求項8】
前記カートリッジメモリは、書き換え可能なメモリをさらに備え前記メモリコントローラは、データ端子及びクロック端子を介して前記プリンターコントローラと情報をやり取りすることができ、及び内部バスを介して前記第1及び第2のライトワンス読み出し専用メモリと情報をやり取りすることができることからなる、請求項1〜7のいずれかのカートリッジ。
【請求項9】
前記第1のメモリアドレスは、プロンプト値とプロンプト状態とノープロンプト値とノープロンプト状態とのうちの1つを有することができる、請求項1〜8のいずれかのカートリッジ。
【請求項10】
前記第1のメモリアドレスは、ノープロンプトに対応する未書き込み状態とプロンプトに対応する書き込み済み状態とのいずれかの状態にある単一ビットのメモリ位置として実施される、請求項2のカートリッジ。
【請求項11】
前記第2のメモリアドレスは、ID値、ID状態、ノーID値、またはノーID状態を有することができる、請求項1〜10のいずれかのカートリッジ。
【請求項12】
前記第2のメモリアドレスは、ノーIDに対応する未書き込み状態にある16ビットのメモリ位置、または個々のプリンターもしくはプリンターのグループのIDを表す値を有する書き込み済み状態にある16ビットのメモリ位置として実施される、請求項11のカートリッジ。
【請求項13】
前記第2のメモリアドレスに書き込まれたプリンターID値は、実際のIDパラメータをハッシュ化したバージョン、または実際のIDパラメータを暗号化したバージョン、または、その他のやり方で得られた実際のIDパラメータのバージョンである、請求項1〜12のいずれかのカートリッジ。
【請求項14】
プリンターに装着される印刷材カートリッジを許可する方法であって、
前記カートリッジは、印刷材料を収容するための容器と、前記カートリッジが前記プリンターに装着されたときに前記カートリッジとプリンターコントローラとの間で情報のやり取りを可能にするためのカートリッジメモリを備え、
前記カートリッジメモリは、プリンターIDプロンプト用の第1のメモリアドレスを有する第1のライトワンス読み出し専用メモリ、及びプリンターID用の第2のメモリアドレスを有する第2のライトワンス読み出し専用メモリを備え、
前記カートリッジメモリは、前記第1及び第2のライトワンス読み出し専用メモリへのデータの格納、及び該第1及び第2のライトワンス読み出し専用メモリからのデータの取り出しを制御するためのメモリコントローラを備え、
前記メモリコントローラは、前記プリンターコントローラとの情報のやり取りを制御し、
前記方法が、
前記印刷材カートリッジが前記プリンターに装着されると、前記プリンターコントローラが、前記第1のメモリアドレスを読み取るステップと、
前記プリンターコントローラが前記第1のメモリアドレスからプロンプトを読み取った場合に、該プリンターコントローラが、前記第2のメモリアドレスを読み取るステップと、
前記プリンターコントローラが、前記第2のメモリアドレスからプリンターIDを読み取らなかった場合には、前記プリンターコントローラが、前記第2のメモリアドレスに前記プリンターのプリンターIDを書き込むステップ
を含むことからなる、方法。
【請求項15】
前記メモリコントローラは、データ端子及びクロック端子を介する前記プリンターコントローラとの情報のやり取り、及び内部バスを介する前記第1及び第2のライトワンス読み出し専用メモリとの情報のやり取りを制御し、
前記方法が、
前記プリンターコントローラが前記第1のメモリアドレスからプロンプトを読み取らなかった場合には、許可プロセスを終了することと、
前記プリンターコントローラが前記第2のメモリアドレスからプリンターIDを読み取った場合には、該プリンターコントローラが、前記第2のメモリアドレスからの該プリンターIDと前記プリンターのプリンターIDを比較して、前記プリンターが前記印刷材カートリッジを使用することを許可されているか否かを判定すること
を含むことからなる、請求項14の方法。
【請求項16】
前記第2のメモリアドレスからの前記プリンターIDと前記プリンターのプリンターIDが一致した場合には、前記プリンターコントローラが、前記プリンターは前記印刷材カートリッジを使用できると判定することと、
前記第2のメモリアドレスからの前記プリンターIDと前記プリンターのプリンターIDが一致しない場合には、前記プリンターコントローラが、前記プリンターは前記印刷材カートリッジを使用できないと判定することと、
前記プリンターコントローラが、前記第2のメモリアドレスからプリンターIDを読み取らなかった場合には前記プリンターは前記印刷材カートリッジを使用できると判定すること
を含む、請求項15の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多くのプリンターでは、トナー、インク、及びその他の印刷材料(印刷材)は、定期的に(たとえば印刷材料を完全に使い切ったときに)交換することが可能な脱着可能なカートリッジに収容される。印刷材カートリッジは、該カートリッジがプリンターに装着されているときに、該カートリッジとプリンターコントローラとの間で情報をやり取りできるようにするメモリ(記憶装置)を備えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】(補充可能性あり)
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】印刷材カートリッジの1例を実装しているプリンターを示す。
図2図1に示されているプリンターなどに使用することができる印刷材カートリッジの1例を示す。
図3】トナーカートリッジの1例を示す。
図4】インクカートリッジの1例を示す。
図5図1に示されているプリンターなどで実施することができる印刷材カートリッジの許可プロセスの1例を示す。
図6図1に示されているプリンターなどで実施することができる印刷材カートリッジの許可プロセスの別の例を示す。
図7図5及び図6に示されているプロセスなどの許可プロセスを実行するためのプログラム命令を有するプリンターコントローラの1例を示す。
図8A図5及び図6に示されているプロセスの要素を組み合わせたカートリッジ許可プロセスの別の例を(図8Bと共に)示す。
図8B図5及び図6に示されているプロセスの要素を組み合わせたカートリッジ許可プロセスの別の例を(図8Aと共に)示す。
図9】印刷材カートリッジの他の例を示している。
図10】印刷材カートリッジの他の例を示している。図面全体を通じて、同じ要素番号は、同じかまたは類似の要素を示している。
【発明を実施するための形態】
【0004】
いくつかの印刷用途では、1つのプリンターまたは一群のプリンターで使用できる印刷材カートリッジ(印刷材料カートリッジともいう)を制御することが望ましい場合がある。たとえば、印刷サービス契約の契約者は、契約に基づいて供給される特定のカートリッジでの印刷に限定することを望む場合がある。プリンターが許可されていないカートリッジで印刷しないことを確実にするのを助けるために印刷材料カートリッジにメモリ(記憶装置)を利用する新たな技術が開発されている。1例では、該カートリッジのメモリ(カートリッジメモリ)は、プリンターによって読み取られると、プリンター識別子を第2のメモリアドレスに書き込むように該プリンターに要求(または指示)する値を格納している(第2のメモリアドレスとは異なる)第1のメモリアドレスを有するようにプログラムされる。
【0005】
第1のメモリアドレスと第2のメモリアドレスは両方とも、一回だけ書き込みが可能でその後は読み出しだけが可能なメモリ(write once then read onlymemory。以下、該メモリを「ライトワンス読み出し専用メモリ」という)であり、このため、(第1のメモリアドレスにある)プロンプト(要求または指示)と(第2のメモリアドレスにある)プリンターID(プリンター識別子)の両方共、一度書き込まれると変更できないようになっている。したがって、カートリッジが最初にプリンターに装着されてプリンターIDが該カートリッジのメモリに書き込まれると、その後は、該カートリッジは、当該プリンターもしくは一致するIDを有する別のプリンターでのみ動作する。プリンターIDは、単一のプリンターまたは一群の(複数の)プリンターを識別することができる。たとえば、印刷サービス契約の場合には、プリンターIDを、該カートリッジを使用できる一群の契約プリンターを識別するフリートID(fleet ID)とすることができる。
【0006】
上記の例及び本明細書に記載されている他の例は、例示であって、添付の特許請求の範囲で画定される本発明の範囲を限定するものではない。
【0007】
本明細書で使用されている「1群の」プリンターは、1つの主体(エンティティ。個人や組織など)によって所有されるかまたは操作される(ないし動作させられる)プリンターのグループ、またはプリンターのあるグループに印刷を限定する義務が課されるものとして特定される該グループ(すなわち、印刷を行うプリンターがあるグループ内のプリンターに限定されるところの該グループ)を意味し、「メモリ」(記憶装置)は、プロセッサによって使用される情報または命令を具現化し、含み、格納し、または保持することができる任意の非一時的な有形のプロセッサ可読媒体(プロセッサが読み取ることができる媒体)を意味する。
【0008】
図1は、新規の例示的な印刷材カートリッジ(印刷材料供給カートリッジ)12を実装しているプリンターを示すブロック図である。図1を参照すると、プリンター10は、カートリッジ12と、印刷エンジン14と、カートリッジ12及び印刷エンジン14に動作可能に接続されたコントローラ16とを備えている。印刷材カートリッジ12は、トナー、インクまたは別の印刷材料を印刷エンジン14に供給する交換可能な構成要素である。1つのカートリッジ12だけが図示されているが、プリンター10は、複数の印刷材カートリッジ12を備えることができる。たとえば、カラープリンターは、それぞれのカラー印刷材料毎に個別のカートリッジ12を備えることができる。
【0009】
印刷エンジン14は、カートリッジ12からの印刷材料を、印刷される画像の所望のパターンで紙や他の被印刷物に加えるプリンターの構成要素を表している。たとえば、レーザープリンター10では、印刷エンジン14は、画像形成用レーザー(イメージングレーザー)、光導電体(感光体)、フューザー(定着機構)、及び、被印刷物を光導電体及びフューザーを通過するように移動させるための移送システムを備えることができる。別の例を挙げると、インクジェットプリンターでは、印刷エンジン14は、プリントヘッドと、該プリントヘッドを通過するように被印刷物を移動させるための移送システムを備えることができる。印刷エンジン14のいくつかの構成要素をカートリッジ12の一部とすることができる。たとえば、レーザープリンター10では、光導電体をトナーカートリッジ12の一部とすることができる。別の例を挙げると、インクジェットプリンター10では、プリントヘッドをインクカートリッジ12の一部とすることができる。
【0010】
カートリッジ12は、印刷材料20を含んでいる(収容している)容器18と、プリンター識別プロンプト(プリンターIDプロンプト)用のアドレス24及びプリンター識別(プリンターID)用のアドレス26を有するメモリ22とを備えている。カートリッジメモリ22は、通常は、容器18に取り付けられた集積回路「チップ」で(または該集積回路チップ内に)具現化されて、一連(ないし一組)の接触パッド及び導電線(導電トレース)を介してプリンターコントローラ16に動作可能に接続されている。プリンターコントローラ16は、カートリッジ12及びプリンター10の機能要素を制御するために必要なプログラム、処理、及び関連するメモリ、並びにその他の電子回路及び構成要素を表している。具体的には、コントローラ16は、カートリッジ許可命令30を含むメモリ28と、命令30を実行するためのプロセッサ31とを備えている。詳細に後述するように、許可命令30は、たとえばプリンター10に装着された新しいカートリッジ12を初期化している間に、カートリッジメモリ22と通信して、メモリアドレス24、26(の内容)を読み出し、及び/又はそれらのメモリアドレスに書き込むための命令を含んでいる。
【0011】
図2は、例示的な印刷材カートリッジ12をより詳しく示しており、カートリッジメモリ22は、1回だけ書込みが可能でその後は読み出しだけが可能なメモリ(ライトワンス読み出し専用メモリ)32と書き換え可能なメモリ(リライタブルメモリ)34とを備えている。ライトワンス読み出し専用メモリは、一般に、WORM(write once read many)という略称で呼ばれている。そのため、図2では、ライトワンス読み出し専用メモリ32及び書き換え可能なメモリ34は、それぞれ、WORM、非WORM(non-WORM)で示されている。図2には示されていないが、アドレス24にあるプロンプト(要求または指示)及びアドレス26にあるプリンターIDに加えて、WORM32及び非WORM メモリ32、34は、たとえば、プリンターコントローラ16の印刷処理を支援する出荷時設定の構成情報、及び、カートリッジがプリンターに装着された後で収集されて保存された使用(状況)情報を含むことができる。
【0012】
プロンプトアドレス24は、プロンプト値(たとえばプロンプトがあることを表す値)もしくはプロンプト状態(たとえばプロンプトがあることを表す状態)23、またはノープロンプト値(たとえばプロンプトがないことを表す値)もしくはノープロンプト状態(たとえばプロンプトがないことを表す状態)25を有することができる。1例では、プロンプトアドレス24は、ノープロンプト(プロンプト無し)25に対する(ないし対応する)未書き込み状態(論理0)とプロンプト23に対する(ないし対応する)書き込み済み状態(論理1)とのいずれかの状態にある単一ビットのメモリ位置(記憶場所)として実施される。プリンターIDアドレス26は、ID値もしくはID状態27、またはノーID値(たとえばIDがないことを表す値)もしくはノーID状態(たとえばIDがないことを表す状態)29を有することができる。1例では、プリンターIDアドレス26は、ノーID(ID無し)に対する(ないし対応する)未書き込み状態(0x0000)と、個々のプリンターのIDもしくはプリンターのグループのIDを表す値を有する書き込み済み状態とのいずれかの状態にある16ビットのメモリ位置(記憶場所)として実施される。たとえば、シリアル番号、MAC(媒体アクセス制御)アドレス、及び、フリートID用の顧客番号もしくは契約番号を含む任意の適切なパラメータを用いて、1つのプリンターまたはプリンターのグループを識別することができる。カートリッジメモリアドレス26に書き込まれているプリンターID値29を、実際のIDパラメータをハッシュ化したもの(ハッシュ化バージョン)、または実際のIDパラメータを暗号化したもの(暗号化バージョン)、または、その他のやり方で得られた実際のIDパラメータのバージョン(すなわち、該その他のやり方で実際のIDパラメータを変更ないし変形したもの)とすることができる。
【0013】
カートリッジメモリ22はまた、メモリ32、34へのデータの格納(すなわち保存)及びそれらのメモリからのデータの取り出し(すなわちデータの読み出し)を制御するためのコントローラ36を備えている。コントローラ36は、データ(DATA)端子38及びクロック(CLK)端子40を介してプリンターコントローラ16と情報をやり取りし、また、内部バス46、48を介してメモリ32、34と情報をやり取りする。電力は、電力(PWR)端子42及びグランド(GND:接地)端子44を介してカートリッジメモリ22に供給される。プリンターコントローラ16は、データ(DATA)端子38にアドレス及び制御信号を送り、及びクロック(CLK)端子40に適切なクロック信号を送ることによって、読み出し(リード)処理を開始する。これに応答して、カートリッジメモリコントローラ36は、読み取りコマンドにおいて識別されたメモリアドレスからデータを取り出して、該データをデータ(DATA)端子38に返す。同様に、プリンターコントローラ16は、データ(DATA)端子38にデータ、アドレス及び制御信号を送り、及びクロック(CLK)端子40に適切なクロック信号を送ることによって、書き込み(ライト)処理を開始する。これに応答して、カートリッジメモリコントローラ36は、書き込みコマンド内で識別されたメモリアドレスに該データを格納する。図2には、4端子のメモリ22が示されているが、他の構成も可能である。たとえば、いくつかの実施例では、データ及びクロック信号が電力(PWR)端子を介して伝送される2端子のメモリを使用することが望ましい場合がある。
【0014】
図1に示されているように、カートリッジ12内の容器18がプリンター10に装着されているときには、容器18は通常は、印刷材料20を収容しているが、図2のカートリッジ12は、印刷材料20が収容されているかもしくは収容されていない(たとえば印刷材料が充填(または補充)される前の空のカートリッジを含む)印刷材カートリッジを表している。さらに、図2のカートリッジメモリ22の構成は1例に過ぎない。図2には示されていない他のもしくは異なる構成要素及び/ないしアドレス及び/ないし情報を含む、カートリッジメモリ22の他の適切な構成も可能である。
【0015】
1例では、印刷材カートリッジ12は、図3に示されているトナーカートリッジ12として実施される。別の例では、印刷材カートリッジ12は、図4に示されているインクカートリッジ12として実施される。
【0016】
図5は、図1図4に示されているカートリッジ12などの印刷材カートリッジ用の例示的な許可プロセス(許可処理)100を示すフローチャートである。図1図4の要素番号が、以下の許可プロセス100の説明で使用されている。許可プロセス100を、たとえば、プリンターコントローラ16上で許可命令30を実行するプロセッサ31によって実施することができる。許可プロセス100は、コントローラ16上で他の許可プロセス及び/または認証プロセスを実行することを排除せず、図5のプロセス100自体を、他の要素及び/又はルーチン及び/又はサブルーチンを含む認証プロセスの一部とすることができる。
【0017】
図5を参照すると、印刷材カートリッジ12がプリンター10に装着されると、プリンターコントローラ16は、プリンターIDプロンプト用のカートリッジメモリ32のアドレス24を読み取る(ブロック102)。プリンターコントローラ16がプロンプト23を読み取った場合には、コントローラ16は、プリンターID用のカートリッジメモリ32のアドレス26を読み取る(ブロック104)。ブロック102でプリンターコントローラ16がプロンプト23を読み取らなかった場合には、許可プロセス100は終了する。ブロック104でプリンターコントローラ16がプリンターID27を読み取った場合には、プリンターコントローラ16は、カートリッジメモリ32からのプリンターID27とプリンター10のプリンターIDを比較して、プリンター10がカートリッジ12を使用することを許可されているか否かを判定する(ブロック106)。
【0018】
プリンター10のプリンターIDを、コントローラ16に、またはコントローラ16がアクセス可能なリモートのアドレスに格納することができる。プリンター10のプリンターIDは、カートリッジ12を使用することを許可された単一のプリンター、またはカートリッジ12を使用することを許可されたプリンターのグループを識別することができる。IDが一致した場合には、プリンターコントローラ16は、プリンター10はカートリッジを使用することができると判定する(ブロック108)。IDが一致しない場合には、プリンターコントローラ16は、プリンター10はカートリッジ12を使用できないと判定する(ブロック110)。また、IDが一致しない場合には、該プリンターは、該カートリッジにはこのプリンターで使用するための許可が与えられていないことを示すメッセージをユーザーに表示することができる。
【0019】
ブロック104でプリンターコントローラ16がプリンターID27を読み取らなかった場合には、プリンターコントローラ16は、カートリッジメモリ32にプリンター10のプリンターID27を書き込み(ブロック112)、及び、プリンター10はカートリッジ12を使用できると判定する。
【0020】
図6は、プリンターがカートリッジの許可(使用許可)を可能にするための設定を含む許可プロセス200の他の例を示している。図7は、許可設定50、許可モード52、及び図6の許可プロセス200を実行するための命令30を有するプリンターコントローラ16を示している。
【0021】
図6及び図7を参照すると、印刷材カートリッジ12がプリンター10に装着されると、プリンターコントローラ16は、カートリッジ許可設定(またはカートリッジ許可設定値)50を読み取る(図6のブロック202)。許可設定50が「イネーブル(許可)ではない(すなわちディセーブル(禁止))」54の場合には、許可プロセス200は終了する。許可設定50がイネーブル(許可)56である場合には、プリンターコントローラ16は、(1)カートリッジ許可モード52を読み取って、プリンターIDのモードを単一プリンターID58またはフリートID60として決定し(図6のブロック204)、及び(2)プリンターID用のカートリッジメモリ32のアドレス26を読み取る(図6のブロック206)。
【0022】
ブロック206でプリンターコントローラ16がプリンターID27を読み取った場合には、プリンターコントローラ16は、カートリッジメモリ32からのプリンターID27と(モード52の設定に依存して)プリンターID58もしくはフリートID60とを比較して、プリンター10がカートリッジ12を使用することを許可されているか否かを判定する(図6のブロック208)。IDが一致した場合には、プリンターコントローラ16は、プリンター10はカートリッジを使用できると判定し(図6のブロック210)、許可プロセス200は終了する。IDが一致しない場合には、プリンターコントローラ16は、プリンター10はカートリッジ12を使用できないと判定し(図6のブロック212)、許可プロセス200は終了する。ブロック206でプリンターコントローラ16がプリンターID27を読み取らなかった場合には、プリンターコントローラ16は、カートリッジメモリ32に(モード52の設定に依存して)プリンター10の単一プリンターIDまたはフリートIDを書き込み、及び、プリンター10はカートリッジ12を使用できると判定する(図6のブロック214)。
【0023】
図8A及び図8Bは、図5のプロセス100と図6のプロセス200の要素を組み合わせた別の例示的なカートリッジ許可プロセス300を示すフローチャートである。図8A及び図8Bを参照すると、印刷材カートリッジ12がプリンター10に装着されると、プリンターコントローラ16は、プリンターIDプロンプト用のカートリッジメモリ32のアドレス24を読み取る(ブロック302)。プリンターコントローラ16がプロンプト23を読み取った場合には、プリンターコントローラ16は、(1)カートリッジ許可モード52を読み取って、プリンターIDのモードを単一プリンターID58またはフリートID60として決定し(ブロック304)、及び(2)プリンターID用のカートリッジメモリ32のアドレス26を読み取る(ブロック306)。ブロック302でプリンターコントローラ16がプロンプト23を読み取らなかった場合には、許可プロセスはブロック316に進んで、許可設定50がプリンターコントローラ16においてイネーブル(許可)にされているか否かを判定する。
【0024】
ブロック306でプリンターコントローラ16がプリンターID27を読み取った場合には、コントローラ16は、カートリッジメモリ32からのプリンターID27と(モード52の設定に依存して)プリンターID58もしくはフリートID60とを比較して、プリンター10がカートリッジ12を使用することを許可されているか否かを判定する(ブロック308)。IDが一致した場合には、プリンターコントローラ16は、プリンター10はカートリッジを使用できると判定し(ブロック310)、許可プロセス300は終了する。IDが一致しない場合には、プリンターコントローラ16は、プリンター10はカートリッジを使用できないと判定し(ブロック312)、許可プロセス300は終了する。
【0025】
ブロック304でプリンターコントローラ16がプリンターID27を読み取らなかった場合には、プリンターコントローラ16は、カートリッジメモリ32に(モード52の設定に依存して)プリンター10の単一プリンターIDまたはフリートIDを書き込み、及び、プリンター10はカートリッジ12を使用できると判定し(ブロック314)、許可プロセスは終了する。
【0026】
ブロック302でプリンターコントローラ16がプロンプト23を読み取らなかった場合には、許可プロセスはブロック316に進んで、許可設定50がプリンターコントローラ16においてイネーブル(許可)にされているか否かを判定する。ブロック316において、プリンターコントローラ16は、カートリッジ許可設定50を読み取る。許可設定50が、「イネーブル(許可)でない(すなわちディセーブル(禁止))」54の場合には、許可プロセス300は終了する。許可設定50がイネーブル(許可)56である場合には、プリンターコントローラ16は、ブロック304に戻って上記したようにプロセス300の実行を継続する(ブロック318)。
【0027】
図9は、IDプロンプトを有しておらず、かつ、たとえば図6のブロック214においてプリンターIDメモリアドレス26に書き込まれたフリートID値27を有する印刷材カートリッジ12を示している。フリートID27は、通常は、対応する一群のプリンターを識別する単一の識別子として実施されることが予期されているが、フリートID27を、複数の単一の識別子の各々が対応する一群のプリンターを識別するところの該複数の単一の識別子として実施することもできる。
【0028】
図10は、IDプロンプト23を有し、かつ、たとえば図5のブロック112または図8Bのブロック314においてプリンターIDメモリアドレス26に書き込まれたフリートID値27を有する印刷材カートリッジ12を示している。
【0029】
この詳細な説明の初めの方で述べたように、図示し及び上記した例は、例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。他の例も可能である。したがって、上記の説明は、添付の特許請求の範囲において画定される本特許の範囲を限定するものではない。
【0030】
特許請求の範囲で使用されている「1つの」は1以上を意味する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10