(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両を走行させるための電動機と、当該電動機に電力を供給する蓄電手段と、前記電動機の駆動状態および前記蓄電手段の充放電状態を制御するコントロールユニットとを備えた車両制御装置であって、
前記電動機と前記蓄電手段との間には、前記電動機と前記蓄電手段との間での前記電力の行き来を遮断状態または連通状態とするコンタクタが設けられ、
前記コントロールユニットは、イグニッションスイッチがオン状態でかつ前記車両を走行させるためのスタートスイッチがオフ状態の場合に、前記コンタクタが連通状態でかつ前記車両の走行が行われない状態が一定時間以上継続した場合に、前記コンタクタを遮断状態とする電力消費抑制制御を行うことを特徴とする車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1はハイブリッド車両を駆動する駆動装置の概要を示すスケルトン図を、
図2はモータ駆動回路の概要を示す電気回路図を、
図3は
図2のコントロールユニットの詳細を示すブロック図をそれぞれ表している。
【0015】
ハイブリッド車両(図示せず)は、
図1に示すようなハイブリッド駆動装置10を備えている。ハイブリッド駆動装置10は、ハイブリッド車両の前方側に搭載され、エンジン(内燃機関)11およびモータ(電動機,電気負荷)12を備えている。エンジン11は、クランクシャフト11aを備え、クランクシャフト11aの一端側(図中左側)はエンジン11内に配置され、クランクシャフト11aの他端側(図中右側)はモータ12に向けて延ばされている。
【0016】
エンジン11の側部には、エンジン11を始動するスタータとしての機能に加え、エンジン11の駆動により発電するオルタネータとしての機能を有するISGモータ13が設けられている。ISGモータ13は回転軸13aを備え、当該回転軸13aの一端側にはギヤ13bが設けられている。回転軸13aのギヤ13bは、クランクシャフト11aの一端側に設けられたギヤ11bに噛み合わされており、回転軸13aおよびクランクシャフト11aは互いに動力伝達可能となっている。ただし、回転軸13aおよびクランクシャフト11aは、ギヤの噛み合いに限らず、タイミングベルト,ファンベルト,チェーン等を介して動力伝達可能としても良い。
【0017】
モータ12は、回転軸12aが固定された回転子12bを備え、例えば、U相,V相,W相を有する3相のブラシレスDCモータにより構成されている。モータ12は、車室内等(図示せず)に搭載されたコントロールユニット50(
図2,3参照)により力行駆動または回生駆動され、力行駆動することでハイブリッド車両はモータ走行し、回生駆動することで運動エネルギを電気エネルギとして回収し、高電圧バッテリ41(
図2参照)を充電するようになっている。
【0018】
エンジン11のクランクシャフト11aとモータ12の回転軸12aとの間には、エンジン11側から、トルクコンバータ14,第1ワンウェイクラッチ15,油圧クラッチ16,第2ワンウェイクラッチ17および無段変速機18が設けられている。
【0019】
第1ワンウェイクラッチ15は、第1ギヤ機構19を介して油圧ポンプ20のエンジン11側に接続され、第2ワンウェイクラッチ17は、第2ギヤ機構21を介して油圧ポンプ20のモータ12側に接続されている。つまり、油圧ポンプ20は、エンジン11の一方向への回転およびモータ12の一方向への回転により一方向に回転駆動されるようになっている。ここで、油圧ポンプ20は、エンジン11およびモータ12の双方に回転駆動されるが、回転数が速い方によって回転駆動される。なお、油圧ポンプ20においてもギヤによる回転駆動に限らず、タイミングベルト,ファンベルト,チェーン等により回転駆動するようにしても良い。
【0020】
トルクコンバータ14は、ポンプインペラ14aおよびタービンランナ14bを備え、ポンプインペラ14aとタービンランナ14bとの間には、ステータ14cが設けられている。トルクコンバータ14の内部には、比較的粘度の低いオイル(図示せず)が循環するようになっており、ポンプインペラ14aの回転に伴うオイルの慣性力がタービンランナ14bに伝達され、これによりタービンランナ14bに固定された出力軸14dが回転するようになっている。
【0021】
クランクシャフト11aの他端側はポンプインペラ14aを介して第1ワンウェイクラッチ15に接続され、出力軸14dの他端側は油圧クラッチ16の固定ケース16aに接続されている。また、ステータ14cは、トルクコンバータ14,油圧クラッチ16,無段変速機18等を収容する変速機ケース22に固定されている。さらに、モータ12を形成する回転軸12aの一端側は油圧クラッチ16の移動部材16bに接続されている。
【0022】
油圧クラッチ16は、出力軸14dに固定された固定ケース16aと、回転軸12aに固定されて固定ケース16aに向けて移動する移動部材16bとを備えている。移動部材16bは、油圧ポンプ20からの油液の供給により固定ケース16aに向けて移動するようになっている。そして、油圧クラッチ16に油液を供給することで移動部材16bが固定ケース16aに向けて移動し、その後、両者は一体となって互いに駆動力が伝達される締結状態となる。また、油圧クラッチ16から油液を排出することで移動部材16bが固定ケース16aから後退(離間)して駆動力が伝達されない遮断状態となる。ここで、油圧クラッチ16は、油液の供給量に応じて締結力が比例するようになっている。つまり、油液の供給量を増加させると、これに伴い締結力も増加するようになっている。
【0023】
無段変速機18は、油圧クラッチ16とモータ12との間に設けられ、エンジン11やモータ12の回転数を変速して出力するようになっている。無段変速機18は、プライマリプーリ23およびセカンダリプーリ24を備え、各プーリ23,24間には駆動チェーン25が巻掛けられている。
【0024】
プライマリプーリ23は回転軸12a上に設けられ、回転軸12aに固定された固定シーブ23aと、回転軸12aの軸方向に移動可能な可動シーブ23bとを備えている。プライマリプーリ23には、油圧ポンプ20から油液が給排されるようになっており、プライマリプーリ23に油液を供給することで、可動シーブ23bは固定シーブ23aに向けて移動し、その結果、プライマリプーリ23に対する駆動チェーン25の巻掛け径が大きくなり、ひいては変速比が高速側に変化する。一方、プライマリプーリ23から油液を排出することで、可動シーブ23bは固定シーブ23aから離れて、上記とは逆に駆動チェーン25の巻掛け径が小さくなり、ひいては変速比が低速側に変化する。
【0025】
セカンダリプーリ24は回転軸12aに対して平行となった平行軸26上に設けられ、平行軸26に固定された固定シーブ24aと、平行軸26の軸方向に移動可能な可動シーブ24bとを備えている。セカンダリプーリ24には、油圧ポンプ20から油液が供給されるようになっており、セカンダリプーリ24に油液を供給することで、可動シーブ24bは固定シーブ24aに向けて移動し、これにより変速時等に駆動チェーン25が弛むのを防止している。よって、プライマリプーリ23とセカンダリプーリ24との間で、動力伝達を効率良く行えるようになっている。
【0026】
プライマリプーリ23から伝達されるセカンダリプーリ24の駆動力は、平行軸26,第3ギヤ機構27および出力クラッチ28を介して駆動シャフト29に伝達されるようになっている。駆動シャフト29に伝達された駆動力は、ディファレンシャルギヤ30を介して、駆動輪が装着された車軸31に出力されるようになっている。つまり、セカンダリプーリ24は車軸31に動力伝達可能に接続されている。ここで、出力クラッチ28は、油圧ポンプ20からの油液の給排により締結状態または遮断状態となる。具体的には、シフトポジションがドライブ(D)またはリバース(R)のときに締結状態となり、シフトポジションがパーキング(P)またはニュートラル(N)のときに遮断状態となる。
【0027】
次に、モータ12を駆動するモータ駆動回路40について、
図2を用いて詳細に説明する。モータ駆動回路40は、本発明における車両制御装置を構成しており、高電圧バッテリ41,インバータ(高電圧系デバイス,電気負荷)42,モータ12,DC/DCコンバータ(高電圧系デバイス,電気負荷)43,12V系負荷(電気負荷)44,コントロールユニット50およびコンタクタ60を備えている。
【0028】
蓄電手段としての高電圧バッテリ41は、リチウムイオン二次電池によって構成され、当該高電圧バッテリ41には、プラス側配線45aおよびマイナス側配線45bの一端がそれぞれ電気的に接続されている。ここで、高電圧バッテリ41の正極(+)および負極(−)間の電位差は100V以上の高電圧となっている。そして、高電圧バッテリ41は、モータ12を力行駆動するときに当該モータ12に電力を供給し、モータ12を回生駆動するときに当該モータ12からの電力を蓄えるようになっている。
【0029】
プラス側配線45aおよびマイナス側配線45bの他端には、モータ12を駆動制御するためのインバータ42が電気的に接続されている。インバータ42は、高電圧バッテリ41からの電力をU相,V相,W相の3相に変換して駆動電流を生成し、生成した駆動電流をモータ12に供給するようになっている。このように、インバータ42は三相出力型となっており、モータ12を駆動すべく待機状態にあるときは、比較的大きな待機電力を消費するようになっている。
【0030】
プラス側配線45aおよびマイナス側配線45bの他端には、インバータ42に対して並列となるようDC/DCコンバータ43が電気的に接続されている。DC/DCコンバータ43は、高電圧バッテリ41の高電圧(100V以上)を、12V系負荷44を駆動するための低電圧(約11V〜14V)に降圧する降圧型のスイッチング電源となっている。このDC/DCコンバータ43においても待機状態にあるときは、比較的大きな待機電力を消費するようになっている。ここで、12V系負荷44としては、例えば、ヘッドライト,ワイパ装置,パワーウィンド装置等、駆動系統以外の電気負荷が挙げられる。
【0031】
高電圧バッテリ41と、モータ12を含むインバータ42および12V系負荷44を含むDC/DCコンバータ43との間には、コンタクタ60が設けられている。コンタクタ60は、高電圧バッテリ41と電気負荷(モータ12,インバータ42,12V系負荷44,DC/DCコンバータ43等)との間での電力の行き来の遮断または連通を制御する磁気接触器となっている。
【0032】
コンタクタ60のプラス側配線45a側には、プラス側コンタクタ61が設けられ、コンタクタ60のマイナス側配線45b側には、マイナス側コンタクタ62が設けられている。また、コンタクタ60のプラス側配線45a側には、プラス側コンタクタ61をバイパスするようにして、抵抗rを備えたプリチャージリレースイッチ63が設けられている。
【0033】
コンタクタ60は、ハイブリッド車両のイグニッションスイッチ(図示せず)をオン操作することで、コントロールユニット50のBCU55(
図3参照)により制御される。具体的には、イグニッションスイッチのオン操作とともに、マイナス側コンタクタ62およびプリチャージリレースイッチ63がこの順番で閉成してオン状態となり、これによりプラス側配線45aとマイナス側配線45bとの間に設けたコンデンサ46が充電される。そして、コンデンサ46の充電に伴い、プラス側配線45aとマイナス側配線45bとの間の電位差が略ゼロとなり、プラス側コンタクタ61が閉成してオン状態となる。その後、インバータ42に対して電力が供給されるようになり、プリチャージリレースイッチ63が開成してオフ状態となる。このようにコンタクタ60は、システム起動時において、モータ駆動回路40に突入電流(始動電流)が流れるのを防止するようになっている。
【0034】
コントロールユニット50は、高電圧バッテリ41,インバータ42,DC/DCコンバータ43およびコンタクタ60をそれぞれ制御し、これにより、モータ12の駆動状態や高電圧バッテリ41の充放電状態を制御するようになっている。以下、コントロールユニット50について、
図3を用いて詳細に説明する。
【0035】
コントロールユニット50は、ハイブリッド駆動装置10(
図1参照)を統括的に制御するHEVCU(ハイブリッド車両コントロールユニット)51を備え、当該HEVCU51には、TCU(トランスミッションコントロールユニット)52,ECU(エンジンコントロールユニット)53,MCU(モータコントロールユニット)54,BCU(バッテリコントロールユニット)55,DC/DCCU(DC/DCコンバータコントロールユニット)56およびISGモータ13が電気的に接続されている。
【0036】
HEVCU51には、ハイブリッド車両の状態信号を出力するアクセルセンサ57,ブレーキセンサ58およびシフトポジションセンサ59が電気的に接続されている。アクセルセンサ57は、操作者によるアクセルペダル(図示せず)の踏み込み操作により加速要求信号αを出力し、ブレーキセンサ58は、操作者によるブレーキペダル(図示せず)の踏み込み操作により減速(停止)要求信号STを出力し、シフトポジションセンサ59は、操作者によるシフトレバー(図示せず)のチェンジ操作によりドライブ信号Dやパーキング信号P等を出力する。これによりHEVCU51は、ハイブリッド車両が現在どのような走行状態にあるのか(加速状態,減速状態、停止状態等)を演算して把握し、TCU52,ECU53,MCU54,BCU55,DC/DCCU56およびISGモータ13に対して要求信号や駆動信号等、種々の信号を出力し、ハイブリッド車両を統括的に制御する。
【0037】
TCU52には、油圧クラッチ16および無段変速機18に対して、油圧ポンプ20からの油液の給排を制御する複数の給排ソレノイド(図示せず)が電気的に接続されている。TCU52は、HEVCU51からのトランスミッション要求信号TOSに基づいて各給排ソレノイドをそれぞれ駆動制御し、これにより油圧クラッチ16および無段変速機18に対する油液の給排量を調整するようになっている。また、TCU52からは、油圧クラッチ16の現在の状態および無段変速機18の現在の状態がフィードバック信号FB1としてHEVCU51に出力され、これによりHEVCU51は、TCU52に補正制御等を加え、油圧クラッチ16の締結状態および無段変速機18の変速状態を最適制御できるようにしている。
【0038】
ECU53には、エンジン11を制御する燃料噴射装置や点火装置等(図示せず)が電気的に接続されている。ECU53は、HEVCU51からのエンジン要求信号EOSに基づいて燃料噴射装置や点火装置等をそれぞれ所定のタイミングで駆動制御し、これによりエンジン11の運転状態を制御するようになっている。また、ECU53からは、エンジン11の現在の状態、つまりエンジン11の現在の回転数やエンジン11が発生している現在の駆動トルク等がフィードバック信号FB2としてHEVCU51に出力されるようになっている。これによりHEVCU51は、ECU53に補正制御等を加え、エンジン11の回転数やエンジン11の駆動トルクを最適制御できるようにしている。
【0039】
MCU54には、モータ12(
図1,2参照)を駆動制御するインバータ42が電気的に接続されている。MCU54は、HEVCU51からのモータ要求信号MOSに基づいてインバータ42を制御し、これによりモータ12を駆動制御するようになっている。また、MCU54からは、モータ12の現在の状態、つまりモータ12の現在の回転数やモータ12が発生している現在の駆動トルク等がフィードバック信号FB3として、インバータ42を介してHEVCU51に出力されるようになっている。これによりHEVCU51は、MCU54に補正制御等を加え、モータ12の回転数やモータ12の駆動トルクを最適制御できるようにしている。
【0040】
BCU55には、高電圧バッテリ41およびコンタクタ60が電気的に接続されている。BCU55は、HEVCU51からのバッテリ要求信号BOSに基づいてコンタクタ60を駆動制御するとともに、高電圧バッテリ41の蓄電容量(SOC)を監視するようになっている。また、BCU55からは、高電圧バッテリ41の現在のSOCの状態に加えて、コンタクタ60の現在の状態がフィードバック信号FB4としてHEVCU51に出力されるようになっている。これによりHEVCU51は、BCU55を介して高電圧バッテリ41の充放電、つまりモータ12および12V系負荷44に対する電力の供給または停止を最適制御できるようにしている。
【0041】
DC/DCCU56には、12V系負荷44(
図2参照)を駆動制御するDC/DCコンバータ43が電気的に接続されている。DC/DCCU56は、HEVCU51からのDC/DC要求信号DOSに基づいてDC/DCコンバータ43を制御し、これにより12V系負荷44への電力を供給または停止するようになっている。また、DC/DCCU56からは、12V系負荷44の現在の駆動状態、つまりDC/DCコンバータ43の現在の状態がフィードバック信号FB5として、HEVCU51に出力されるようになっている。これによりHEVCU51は、例えば、12V系負荷44のうちのパワーウィンド装置(図示せず)が失陥(フェイル)していることを検出できるようにしている。
【0042】
HEVCU51には、ISGモータ13が電気的に接続されており、HEVCU51は、ISGモータ13に対してクランキング要求信号CRおよび発電要求信号GEを出力するようになっている。ここで、クランキング要求信号CRは、ISGモータ13をスタータとして駆動するための駆動電流であって、ISGモータ13は、クランキング要求信号CRを受けるとエンジン11を始動するようになっている。つまり、クランキング要求信号CRは、種々の条件が揃ってハイブリッド車両をモータ走行からエンジン走行に移行させる際に出力されるようになっている。一方、発電要求信号GEは、ISGモータ13をジェネレータとして駆動するための駆動切替信号であって、当該発電要求信号GEはエンジン11の運転中に出力されるようになっている。これにより、ISGモータ13はエンジン11の駆動力により発電動作を行い、図示しない低電圧バッテリ(12V)を充電したりできるようにしている。
【0043】
次に、コントロールユニット50の動作内容について、図面を用いて詳細に説明する。
図4は電力消費抑制制御の動作内容を示すフローチャート図を表している。
【0044】
運転者によりイグニッションスイッチがオン操作されると、これによりモータ駆動回路40が待機状態となり、
図4に示すフローチャート(電力消費抑制制御)がスタートする(ステップS1)。具体的には、イグニッションスイッチのオン操作に伴い、コントロールユニット50のBCU55によりコンタクタ60が上述のように連通状態に制御され、これによりモータ駆動回路40がオン制御される。
【0045】
ステップS2では、ハイブリッド車両が「停車状態」にあるか、または「起動前放置」の状態にあるかをHEVCU51により判定する。ここで「停車状態」とは、ハイブリッド車両を走行させるためのスタートスイッチ(図示せず)がオン状態で、かつブレーキペダルが踏み込まれている状態、例えば赤信号や渋滞で停車している状態、つまりハイブリッド車両の走行が行われない状態のことである。このときHEVCU51には、ブレーキセンサ58からの減速(停止)要求信号STが入力されており、この減速(停止)要求信号STの入力により判定することができる。一方「起動前放置」とは、イグニッションスイッチがオン状態、かつスタートスイッチがオフ状態で放置されている場合のことで、例えばアクセサリ電源(ACC)がオン状態となっている場合のことである。
【0046】
ステップS2における判定が、「停車状態」でも「起動前放置」でもない場合、つまりno判定の場合には、ステップS2を繰り返す処理を実行する。一方、「停車状態」または「起動前放置」であると判定した場合、つまりyes判定の場合には、ステップS3に進む。以下、ステップS3以降の動作説明においては、ステップS2での判定が「停車状態」であるとの判定を前提として説明する。
【0047】
ステップS3では、「停車状態」が所定時間(一定時間)t(例えば100sec)以上を経過(継続)したか否かをHEVCU51が判定する。ステップS3において「停車時間」が所定時間t以上を経過していないと判定した場合(no判定)には、ステップS2に戻る処理を実行する。一方、ステップS3において「停車状態」が所定時間t以上を経過したと判定した場合(yes判定)には、ステップS4に進む。ここで、「所定時間t」の長さは、以下に述べる場合1〜場合3のときに、例えば100secから50sec等に短く調整されるようになっている。
【0048】
[場合1]
高電圧バッテリ41のSOC(蓄電容量)が所定値以下の場合(例えば10%未満)は、高電圧バッテリ41が過剰放電であるとし、高電圧バッテリ41を保護するために所定時間tを短縮する。なお、高電圧バッテリ41のSOCが復帰したら、次回の制御周期において所定時間tを延長するようにする。
【0049】
[場合2]
シフトポジションセンサ59(
図3参照)からの信号が、パーキング信号Pやニュートラル信号Nである場合は、ドライブ信号Dやリバース信号Rに比して運転者の長期停車の意思がくみ取れるので、このときの所定時間tを短縮する。
【0050】
[場合3]
ハザードランプ信号(図示せず)が入力された場合は、運転者の長期停車の意思がくみ取れるので、このときの所定時間tを短縮する。
【0051】
ここで、上記場合1〜場合3に示す所定時間tの短縮回数を記憶しておき、この短縮回数が多い場合には、運転者は高電圧バッテリ41を過剰放電し易いリスクの高い運転をしているとして、所定時間tをより短く調整(例えば30sec)するようにしても良い。
【0052】
ステップS4では、ハイブリッド車両が「停車状態」あるいは「起動前放置」にあって、モータ12を含むインバータ42等と、高電圧バッテリ41との間での電力の授受が所定時間t行われていないことに基づき、高電圧系デバイスであるインバータ42およびDC/DCコンバータ43(
図2参照)における待機電力の消費を抑える処理を実行する。具体的には、これらの高電圧系デバイスへの通電を停止する処理を実行するが、HEVCU51がBCU55を介して、
図2に示すコンタクタ60のプラス側コンタクタ61およびマイナス側コンタクタ62の双方を開成し、モータ駆動回路40をオフ制御する。これによりコンタクタ60が遮断状態となり、インバータ42およびDC/DCコンバータ43が停止し、インバータ42およびDC/DCコンバータ43での無駄な電力消費を抑制することができる。
【0053】
ステップS5では、運転者が「走行意思有り」にあるか、またはハイブリッド車両が「走行状態」にあるかをHEVCU51により判定する。ここで「走行意思有り」とは、シフトポジションセンサ59からの信号が、パーキング信号Pまたはニュートラル信号Nから、ドライブ信号Dまたはリバース信号Rに切り替えられた場合や、ドライブ信号Dが入力状態にあり、かつブレーキセンサ58からの減速(停止)要求信号STの入力が無くなったり、アクセルセンサ57からの加速要求信号αが出力されたりした場合のことである。一方「走行状態」とは、油圧クラッチ16が締結状態となってエンジン11の駆動力で走行し始めた場合のことで、この場合にはモータ12は空転状態、つまりエンジン11の駆動力により連れ回っている状態となっている。
【0054】
ステップS5における判定が、「走行意思有り」でも「走行状態」でもない場合、つまりno判定の場合には、ステップS5を繰り返す処理を実行する。一方、「走行意思有り」または「走行状態」であると判定した場合、つまりyes判定の場合には、ステップS6に進む。
【0055】
ステップS6では、ハイブリッド車両が「走行意思有り」あるいは「走行状態」にあることから、コンタクタ60が上述のように連通状態に制御され、これによりモータ駆動回路40がオン制御される。このように高電圧系デバイスであるインバータ42およびDC/DCコンバータ43が駆動許可され、これらの高電圧系デバイスは待機状態あるいは駆動状態となる。これにより、コントロールユニット50による電力消費抑制制御が終了する(ステップS7)。
【0056】
ここで、ステップS5でyes判定する場合としては、より具体的には、以下に述べる条件1〜条件3に示すような場合が挙げられる。
【0057】
[条件1]
車両がエンジン11で走行している状態(状態A),モータ12への要求トルクが小さい状態(状態B),無段変速機18の変速比が大きくない状態(状態C),モータ12の回転数が所定の範囲内の状態(状態D)のうちの全て、つまり状態A〜状態Dを満たす場合にコンタクタ60を連通状態とする。ここで、状態Dにおけるモータ12の回転数としては、車速(=モータ回転数)がある程度あり、モータ12へのスイッチング開始時における瞬間的な電流流れ(突入電流)による影響が小さい回転数や、モータ12の回転に伴って発生する誘起電圧がバッテリ電圧よりも小さい回転数となるようにする。このようにコンタクタ60を連通状態に制御することで、モータ12による発電動作や回生動作を直ぐに実施でき、その結果、高電圧バッテリをSOCが低下した状態から迅速に復帰させることができる。本実施の形態においては、モータ12により発電動作や回生動作ができるようになるまでに、高電圧バッテリを使用しなくても、エンジン11により走行できるため、条件1のような制御を行ったとしても、ハイブリッド車両の走行に対して悪影響を与えることは殆ど無い。
【0058】
[条件2]
運転者によりシステムが再起動された場合、つまりイグニッションスイッチが再操作等された場合であって、システムの停止状態からシステムの起動状態を検出した場合に、通常のイグニッションスイッチのオン操作のときと同様に、コンタクタ60を連通状態に制御する。
【0059】
[条件3]
運転者によるエアコン操作(電動エアコンの場合)やナビゲーション操作を検出し、システムを再起動する必要があると判定した場合に、コンタクタ60を連通状態に制御する。つまり、前者(エアコン操作)においては、例えば車室内が高温になるのを防止し運転者や搭乗者等を保護するために、コンタクタ60を連通状態に制御し、ひいては電動エアコンの動作を許可する。一方、後者(ナビゲーション操作)においては、運転者のナビゲーション操作により、ハイブリッド車両は走行する可能性があるとし、これによりコンタクタ60を連通状態に制御する。
【0060】
以上詳述したように、本実施の形態に係るモータ駆動回路40によれば、モータ12と高電圧バッテリ41との間に、モータ12と高電圧バッテリ41との間での電力の行き来を遮断状態または連通状態とするコンタクタ60を設け、コントロールユニット50は、コンタクタ60が連通状態で、かつハイブリッド車両の走行が所定時間t以上行われない場合に、コンタクタ60を遮断状態とする電力消費抑制制御を行う。したがって、従前のように高電圧バッテリのSOCに依らず、停車状態の時間が長く続く場合にコンタクタ60を遮断状態とするので、これによりインバータ42等の高電圧系デバイスでの無駄な電力消費を抑制できる。よって、車両の燃費を向上させることができるとともに、高電圧バッテリ41を過剰放電から確実に保護できる。
【0061】
また、本実施の形態に係るモータ駆動回路40によれば、コントロールユニット50は、高電圧バッテリ41のSOCが少ないことを検出した場合に所定時間tの長さを短く調整するので、より速やかに高電圧バッテリ41を保護することができる。したがって、車両の燃費をより向上させることができるとともに、高電圧バッテリ41を過剰放電からより確実に保護できる。
【0062】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、エンジン11およびモータ12を1つずつ備え、両者間に油圧クラッチ16が設けられたハイブリッド駆動装置10(
図1参照)に本発明を適用したものを示したが、これに限らず、例えば、駆動源として1つのモータを備えた電気自動車の駆動装置にも適用することができる。この場合、コンタクタの遮断状態への制御は、長時間停車する場合にのみ行えば良く、これにより電気自動車(EV)の航続距離を延ばすことが可能となる。
【0063】
また、上記実施の形態においては、コントロールユニット50による電力消費抑制制御において、コンタクタ60の連通状態または遮断状態への制御時に、運転者に警報等を出力しない場合を示したが、本発明はこれに限らず、例えばインストルメントパネル(図示せず)の警告灯を点灯表示させつつ、警報音を鳴らすようにしても良い。この場合、特に「起動前放置」の検出によりコンタクタ60を遮断状態とするときには、警告表示や警報音を出力させるのが望ましい。
【0064】
さらに、上記実施の形態においては、コントロールユニット50は、ハイブリッド車両の走行しない状態を複数の車載機器(ブレーキセンサ58等)の状態により判断しているが、これらに代えて、高電圧バッテリ41の入出力電流を監視し、走行状態と判断できない所定の電流以下の状態を「停車状態」の様な走行しない状態と判断することも可能である。