特許第6346422号(P6346422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サーボ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6346422-モータ 図000002
  • 特許6346422-モータ 図000003
  • 特許6346422-モータ 図000004
  • 特許6346422-モータ 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346422
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/30 20160101AFI20180611BHJP
【FI】
   H02K11/30
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-176556(P2013-176556)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-113030(P2014-113030A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2016年7月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-246642(P2012-246642)
(32)【優先日】2012年11月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】日本電産サーボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】米田 孝司
(72)【発明者】
【氏名】石井 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】平田 栄一
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−300741(JP,A)
【文献】 特開平11−325180(JP,A)
【文献】 特開2009−264483(JP,A)
【文献】 実開昭61−165068(JP,U)
【文献】 特開2000−324751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K11/30−11/33
H02K 5/00− 5/26
F16F15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転する略円筒状のロータ部と、
前記ロータ部を回転可能に支持する軸受部と、
前記軸受部を保持する軸受保持部と、
前記軸受保持部が固定された略円盤状のベース部と、
前記ロータ部の内周側に配設され、前記軸受保持部に固定されたステータ部と、
前記ベース部と前記ステータ部との間に配され前記ステータ部に保持された回路基板とを備え、
前記回路基板は、前記ベース部に対して絶縁性かつ難燃性の防振部材を介在させて支持し、
前記防振部材は、前記回路基板の外周部下面と前記ベース部との間に配置されていることを特徴とするモータ
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記防振部材は、前記回路基板の周縁部における3以上の複数箇所に互いに間隔を開けて配置されていることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータにおいて、
前記防振部材は、硬度の異なる2種類のゴムシートを貼り合わせて構成されていることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のモータにおいて、
前記防振部材を構成する2種類のゴムシートのうち、硬度の低い側のシートが前記ベース部側に配置されていることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項4に記載のモータにおいて、
前記2種類のゴムシートのうち、硬度の低い側のシートの厚さが硬度の高い側のシートの厚さより大きく設定されていることを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載のモータにおいて、
前記防振部材は、前記回路基板側のゴムシートとほぼ同程度の硬度を有する接着剤を用いて前記回路基板に固着されていることを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記ロータ部には、該ロータ部と共に回転して空気流を発生させる羽根車が固定されていることを特徴とするモータ。
【請求項8】
請求項7に記載のモータにおいて、
前記羽根車は、前記ロータ部に固定され、該ロータ部の径方向外方に広がる環状の連結部と、前記連結部に固定され、前記ロータ部の径方向外方において該ロータ部の周方向に配列された複数の羽根とを備えてなる遠心ファン用羽根車であることを特徴とするモータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機等に用いられるモータに関し、より詳細にはステータのコイルが接続される回路基板を備えたものの改良に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器等の冷却用送風機として使用される遠心ファンは、回転軸に対して周方向に配列された複数の羽根を、モータで回転させることによって、軸方向に吸入した空気を径方向に排出する構成になっている。
【0003】
この種の遠心ファンは、回転軸を中心に回転する略円筒状部を有するロータ部に、ロータ部より径方向外方に広がる環状のハブと、このハブに固定されロータ部の径方向外方においてロータ部の周方向に配列された複数の羽根とからなる羽根車を固定し、ロータ部の回転軸を回転可能に支持する軸受部をベース部の軸受保持部の内側に保持すると共に、ロータ部の内周側に配設されるステータ部をこの軸受保持部の外側に固定し、かつ、ベース部とステータ部との間に回路基板を配置する構成になっている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
上記回路基板は、通常、軸受保持部の外側に遊嵌されるよう環状に構成され、特許文献1にも示されるように、ステータ部のインシュレータに植設されたからげピンを回路基板に半田付けすることにより支持されており、このからげピンにステータ部のコイルがからげて接続されることにより、コイルがからげピンを介して回路基板に接続されるようになっている。
【0005】
ところが、特許文献1のように、回路基板をステータ部のからげピンのみで支持する構成の場合、ステータ部に発生する電磁振動が回路基板に伝達されると回路基板自体が振動しやすくなり、加えて、羽根車の回転により発生した空気流の一部が回路基板周辺に回り込んだ際には、回路基板が加振されることもあり、遠心ファン全体としての振動・騒音特性に悪影響を及ぼす危険がある。
【0006】
このような問題を解決する技術として、遠心ファンにおけるファンケーシングの反吸込口側に凹部を設け、そこに回路基板を配置し、回路基板ごと樹脂封止剤で充填することが考えられる(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−256610号公報
【特許文献2】特開平7−75288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献2のような構成の場合、回路基板が樹脂封止剤で覆われてファンケーシングに固定されるため、回路基板に対する防振構造が得られ、加えて、防塵・防水効果も発揮できることになるが、回路基板を封止剤で充填する際に、特に、回路基板を収容する凹部を確保しておく必要があり、構造的に凹部を設けることができない場合には、封止剤の充填のために回路基板を覆う壁を一時的にも用意しておく必要があり、構造が複雑になる問題がある。加えて、封止剤を充填した後は乾燥工程が必要であり、製造工程が増すばかりでなく、設備も大がかりになる問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、ステータ部に支持された回路基板に対する防振を簡単な構造でかつ安価に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のモータにおいては、回転軸を中心に回転する略円筒状のロータ部と、このロータ部を回転可能に支持する軸受部と、軸受部を保持する軸受保持部と、軸受保持部が固定された略円盤状のベース部と、ロータ部の内周側に配設され軸受保持部に固定されたステータ部と、ベース部と前記ステータ部との間に配されステータ部に保持された回路基板とを備え、回路基板を、ベース部に対して絶縁性かつ難燃性の防振部材を介在させて支持し、前記回路基板の外周部下面と前記ベース部との間に配置されていることを特徴とする。
【0011】
上述の本発明のモータにおいては、防振部材を、回路基板の周縁部における3以上の複数箇所に互いに間隔を開けて配置するのが望ましい。また、この防振部材を、硬度の異なる2種類のゴムシートを貼り合わせて構成することができ、特に、防振部材を構成する2種類のゴムシートのうち、硬度の低い側のシートをベース部側に配置するのがよく、2種類のゴムシートのうち、硬度の低い側のシートの厚さが硬度の高い側のシートの厚さより大きく設定することが望ましい。
【0012】
また、本発明のモータにおいて、ロータ部に、これと共に回転して空気流を発生させる羽根車を固定するようにしてもよく、この場合、羽根車を、ロータ部に固定されロータ部の径方向外方に広がる環状の連結部と、この連結部に固定されロータ部の径方向外方においてロータ部の周方向に配列された複数の羽根とを備えてなる遠心ファン用羽根車とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるモータによれば、軸受保持部を固定するベース部と、軸受保持部に固定されたステータ部との間に、ステータ部に保持された回路基板を配置し、この回路基板をベース部に対して絶縁性かつ難燃性の防振部材を介在させて支持する構成としたので、回路基板に対する防振効果が各段に高まり、樹脂封止剤を充填する場合のような複雑な構造を取ることもなく、乾燥工程を要することもなく、簡単な構成で防振対策を講じることができ、特に、防振部材を絶縁性かつ難燃性としているため、回路基板を安全に支持することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における遠心ファンの構成を模式的に示した断面図である。
図2図1の遠心ファンを上部カバー及びロータ部を取り除いた状態の平面図である。
図3】(a)・(b)は、遠心ファンのアキシャル方向の振動を測定したキャンベル線図を示し、(a)は従来の遠心ファン、(b)は図1の遠心ファンである。
図4】(a)・(b)は、遠心ファンのラジアル方向の振動を測定したキャンベル線図を示し、(a)は従来の遠心ファン、(b)は図1の遠心ファンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態における説明では、便宜上、各図面の上下方向を「上下方向」とするが、実際の取付状態における方向を意味するものではない。また、本実施形態における説明では、回転軸に平行な方向を「軸方向」とし、回転軸を中心とする半径方向を「径方向」としている。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態における遠心ファン100の構成を模式的に示した断面図である。
図1に示すように、本実施形態における遠心ファン100は、回転軸Jを中心に回転する略円筒状のロータ部2と、ロータ部2の内周側に配されたステータ部3と、ロータ部2の周方向に配列した複数の羽根52とを備えている。ここで、ロータ部2は、略有蓋円筒状のロータホルダ21と、ロータホルダ21の側壁部の内側に固定された界磁用磁石22と、ロータホルダ21の中央部に固定され、回転軸Jを中心に回転するシャフト23とを備えている。
【0017】
また、ロータ部2には、ロータ部2の径方向外方に広がる環状の連結部51が固定され、この連結部51には、ロータ部2の径方向外方において、ロータ部2の周方向に配列された複数の羽根52が固定されており、連結部51と羽根52とにより羽根車5が構成され、この羽根車5がロータ部2と一体になって回転するようになっている。本実施形態では、複数の羽根52は、ロータ部2の外周面から離間して固定されている。ここで、環状の連結部51は、ロータ部2の周方向に複数の羽根52を固定する機能を有すれば足り、連結部51がロータ部2に固定される形態に制限はない。
【0018】
ロータ部2は、シャフト23を介して軸受部4で回転可能に支持され、軸受部4は、軸受保持部6に固定されている。この軸受保持部6は、略円盤状のベース部7に一体に固定されている。本実施形態では、ベース部7は、モータと羽根車5とを収納するハウジング8の下部ケース81の底部で構成され、軸受部4は、ボールベアリングで構成されている。ハウジング8は、平面視ほぼ蝸牛状をしており、下部ケース81と上部ケース82とを嵌め合わせることで構成されている。上部ケース82のほぼ中央部に円形の吸入口9が設けられる一方、下部ケース81を示した図2よりわかるように、ハウジング8の側面に吐出口10が前方に開口して設けられている。下部ケース81におけるベース部7は、下部ケース81の底壁部に環状凸部51aを設ける等して底壁部の中央部に円形凹状に形成されている。
【0019】
軸受保持部6に固定されたステータ部3は、ロータ部2の内周側に配設されている。ステータ部3は、複数の突極を有するステータコア31と、このステータコア31の上下面及びスロット内面を覆う上下のインシュレータ部32a・32bと、ステータコア31の各突極にインシュレータ部32a・32bを介して巻回されたコイル33とよりなり、ステータコア31の各突極の外周面がロータ部2の界磁用磁石22の内周面にエアギャップを介して対向している。
【0020】
ベース部7とステータ部3との間には、モータの回転駆動を制御する略円板状の回路基板11が配設されている。ステータ部3の下インシュレータ32bには複数本のからげピン34が植設され、これにコイル33の端部がからげられており、各からげピン34が回路基板11の接続孔に挿通されて半田付けされることにより、回路基板11がステータ部3に支持されると共に、からげピン34を介してコイル33の端部が回路基板11上のパターンに電気接続される。この回路基板11には、その下面にモータ制御回路を構成する各種電子部品が実装されている。
【0021】
回路基板11の外周部下面とベース部7上面との間には、複数箇所(実施例では3箇所)に互いに間隔を開けて配置された防振部材12が介在され、回路基板11がベース部7上に防振部材12を介して支持されている。この防振部材12は、ともに絶縁性と難燃性とを有する2枚のゴムシート12a・12bを貼り合わせて構成され、防振部材12がゴムシート12a側に設けた接着剤12cを用いて回路基板11に固着されている。防振部材12における上層のゴムシート12aは、比較的柔らかめのゴム材料からなり、厚みが例えば1mm程度とされ、下層のゴムシート12bは、上層のゴムシート12aより更に柔らかいゴム材料で構成され、厚みが例えば2mm程度となっている。接着剤12cは上層のゴムシート12aとほぼ同じ柔らかさの材料からなり、0.3〜0.4mm程度の厚みを有している。これらゴムシート12a・12bの貼り合わせの結果、防振部材12としての振動吸収範囲が例えば400〜1500Hz程度得られることになり、広範囲の振動吸収特性を実現している。
【0022】
なお、防振部材12は、回路基板11とベース部7との間に多少収縮した状態で介在される結果、防振部材12の下層のゴムシート12bの下面はベース部7の上面に圧接し、ゴムシート12b自身の自己粘着力でベース部7にしっかり固着されている。勿論、ゴムシート12bの下面を別途接着剤を用いてベース部7上面に固着するようにしてもよい。
【0023】
このような構成の遠心ファンにあっては、ステータ部3のコイル33への通電を開始すると、コイル33により励磁されたステータコア31の各突極と界磁用磁石22との電磁相互作用により、ロータ部2が所定回転し、このロータ部2と共に羽根車5が回転する。羽根車5が回転すると、吸入口9より空気が取り込まれ、羽根52の回転移動と共に空気が遠心方向に送り出されるとともに周方向に移動され、ハウジング8の周壁内面に沿って移送されて吐出口10より外部に送風される。
【0024】
この動作時、ロータ部2とステータ部3との間に電磁振動が誘起され、軸受保持部6で支持されたステータ部3においてはからげピン34で支持された回路基板11にも振動が伝達されることになる。しかしながら、この回路基板11はベース部7に対して3箇所の防振部材12を介して支持されているため、回路基板11に作用する振動は各防振部材12で吸収され、ベース部7に伝達されることが抑制される。
【0025】
図3及び図4は、防振部材12が存在しない遠心ファンと防振部材12を有する遠心ファンとの振動測定結果をキャンベル線図にて表したものであり、それぞれの(a)は防振部材12無しの場合、それぞれの(b)は防振部材12有りの場合である。図3は、ハウジング8の上部ケース82における吸入口9の近傍の天板上でアキシャル方向の振動測定を行ったものであり、図4は、ハウジング8の側壁でラジアル方向の振動測定を行ったものである。キャンベル線図は、周知のように、縦軸に周波数、横軸に回転速度、斜軸に回転次数をとって振幅の大きさを円の大きさで表したものであり、振幅の大きいところの次数、回転速度、周波数を目視で確認することができるものである。図3及び図4より明らかなように、防振部材12を備えることにより、アキシャル振動及びラジアル振動がともに大幅に抑制されることがわかる。
【0026】
このように、硬度の異なる2種類のゴムシート12a・12bを貼り合わせた防振部材12を用いることで、可聴域前後の幅広い周波数帯での振動を効果的に抑制することが可能であり、しかも、絶縁性及び難燃性を有する防振部材12とすることで、回路基板11を直接的に防振部材12で支持することが可能となり、簡単な構成で顕著な防振効果が得られることになる。
【0027】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態では、モータとして遠心ファンの場合を用いて説明したが、軸流ファンのみならず、上記構成と同様に、ステータ部で回路基板を支持する形態のモータ全般に適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、遠心ファンや軸流ファン等の冷却用送風機を要する各種電子機器や、OA機器・産業機器等に搭載のモータ全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
2 ロータ部
3 ステータ部
4 軸受部
5 羽根車
6 軸受保持部
7 ベース部
8 ハウジング
12 防振部材
12a ゴムシート
12b ゴムシート
12c 接着剤
21 ロータホルダ
22 界磁用磁石
23 シャフト
51 連結部
52 羽根
図1
図2
図3
図4