【0015】
(物理化学的特性)
(1)分子量:394.63
(2)分子式:C28H42O(高分解能APCI-Orbitrap法による観測値:m/z 395.33057(M+H)
+、理論値:395.33139)
(3)溶剤に対する溶解性:水に不溶、エタノールに難溶、クロロホルムに易溶
(4)紫外吸収スペクトル(MeCN):391nm
(5)
1H-NMR(CD
3OD): 6.15 (1H, m), 5.75 (1H, m), 5.65 (1H, dd, J = 2.2, 5.9
Hz), 5.27 (1H, dd, J = 7.0, 15.1 Hz), 5.21 (1H, dd, J = 7.9, 15.1 Hz), 3.64 (1H,m), 2.51 (1H, ddd, J = 2.2, 5.1, 10.6 Hz), 2.30 (1H, m), 2.20 (1H, m), 2.20 (1H, dd, J = 3.2, 7.8 Hz), 2.06 (1H, m), 2.05 (1H, m), 1.94 (1H, m), 1.90 (1H, m),1.87 (2H, m), 1.87 (1H, ddd, J = 3.2, 7.0, 7.3 Hz), 1.71 (1H, m), 1.59 (1H, m),1.57 (1H, m), 1.45 (1H, m), 1.45 (1H, ddd, J = 3.2, 6.3, 6.5 Hz), 1.30 (1H, m),1.05 (3H, d, J = 6.8 Hz ), 0.93 (3H, d, J = 7.3 Hz), 0.92 (3H, s,), 0.89 (3H, s), 0.85 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.83 (3H, d, J = 6.3 Hz).
(6)
13C-NMR(CD
3OD):149.2 (s), 143.0 (s), 135.4 (s), 132.2 (s), 132.0 (s),120.5 (s), 120.4 (s), 117.4 (s), 70.4 (s), 58.1 (s), 46.3 (s), 45.4 (s), 42.8 (s), 41.0 (s), 39.0 (s), 38.9 (s), 37.8 (s), 37.0 (s), 36.0 (s), 33.1 (s), 32.0 (s), 21.1 (s), 19.9 (s), 19.7 (s), 19.6 (s), 17.6 (s), 16.8 (s), 14.5 (s).
【実施例】
【0026】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
1.食品用途の麹エキスの抽出方法の検討(1)
白麹(Aspergillus kawachii NBRC4308)をポテトデキストロース寒天培地(Difco、BD社)に植菌し、25℃で7日間静置培養した。0.01%のTween 20を含む麦芽エキス培地(Difco Malt Extract Broth、BD社)に胞子を形成した菌体を懸濁し、フィルター濾過を行なったものを胞子溶液とした。オートクレーブ滅菌後の麦芽エキス培地50mLを容量200mLのバッフル付三角フラスコに入れ、そこに1.0×10
5胞子/mLの濃度になるように胞子溶液を添加し、120rpm、25℃で7日間振盪培養を行いった。
【0028】
培養した菌体を回収し、イソプロパノールに一晩浸漬後、超音波処理して14−DHEの抽出を行った。また、別途培養して得た菌体を100%エタノールに一晩浸漬することのみによって14−DHEの抽出を行った。それぞれの得られた抽出液をドライアップして麹エキスとし、エタノールで10mg/mLの濃度に調整した後、さらにエタノール/アセトニトリル(1:1)で1mg/mLの濃度とし、0.22μm径PTFE膜でフィルター濾過したものをHPLCサンプルとした。これをDevelosil C30-UG-3(10×250mm、野村化学社)を用いた高速液体クロマトグラフィー(アセトニトリル/イソプロパノール=99/1)に供して分析し、1Lの培養スケールで得られた14−DHEの量(mg/L)を算出した。その結果、物理的処理を加えずエタノールに浸漬するだけで、イソプロパノールと物理的処理を併用した場合と同等以上の効率で14−DHEを抽出できることがわかった(
図1)。
【0029】
2.食品用途の麹エキスの抽出方法の検討(2)
上記1と同様に、白麹(Aspergillus kawachii NBRC4308)および麦芽エキス培地を用いて培養して得られた菌体を下記のa〜gのそれぞれの手順に従って抽出した。各手順において、抽出用の溶媒は菌体1gに対して4mLの比率で用いた。なお、最終的に得られた抽出物に対してはドライアップを行わなかった。
【0030】
a:59(w/w)%エタノール水溶液で一晩浸漬し攪拌した抽出物に、等量の大豆油を加えた後に攪拌し上清(油層)を回収
b:100%エタノールで一晩浸漬し攪拌した抽出物に、等量の大豆油を加えた後に攪拌し上清(油層)を回収
c:59(w/w)%エタノール水溶液で一晩浸漬し攪拌した抽出物に、等量のヘキサンを加えた後に攪拌し上清(ヘキサン層)を回収
d:100%エタノールで一晩浸漬し攪拌した抽出物に、等量のヘキサンを加えた後に攪拌し上清(油層)を回収
e:59(w/w)%エタノール水溶液で一晩浸漬し攪拌した抽出物を回収
f:100%エタノールで一晩浸漬し攪拌した抽出物を回収
g:100%アセトンで一晩浸漬し攪拌した抽出物を回収
a〜dで得られた抽出物はカラムにUnison UK-Silica(imtakt社)を、溶離液にヘキサン/イソプロパノール=99/1を用いて、またe〜gで得られた抽出物はカラムにDevelosil C30-UG-3(10×250mm、野村化学社)を、溶離液にアセトニトリル/イソプロパノール=99/1を用いて、それぞれ高速液体クロマトグラフィーに供して分析した。
【0031】
a〜gの7種の方法による14−DHE抽出効率を比較したところ、含水エタノールに浸漬した後にさらに大豆油で液々抽出を行ったaが最も14−DHEの抽出効率に優れていることがわかった(
図2)。親油性が高い14−DHEを易溶である油脂を抽出に用いたこと、および浸漬用の溶媒が水を含んでいたことにより菌体の細胞膜または細胞壁を弱める作用が強まったことに起因して抽出効率が飛躍的に高まったものと考えられた。
【0032】
さらに最適な抽出法を検討するため、上記のaの抽出法において、大豆油を加える前に菌体を除去した場合(A)と、菌体を残したまま大豆油を加えた場合(B)とを比較した。菌体を除去した場合では14−DHE含有量は大幅に低下した(
図3)。この結果から、含水エタノールは主に菌体の細胞膜または細胞壁を弱くする作用を有し、大豆油はその菌体から14−DHEを抽出する作用を有することが推察された。