(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フィルム基材が、両最外層が厚さ8〜60μm、融点80℃以上150℃以下のポリエチレンフィルム層であり、中層が1〜30μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム層である、フィルム基材全体の厚さが17μm以上100μm未満のものである、請求項1記載のトイレットロール包装体。
【背景技術】
【0002】
トイレットロールは、複数個をまとめて厚み20〜50μm程度の薄厚のポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムで包装し、トイレットロール包装体として製品化されている。
【0003】
ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムは、柔らかく円筒型のトイレットロールにフィットする柔軟性、袋を形成したり封止したりする際に行なわれる熱融着処理のしやすさの点において、トイレットロールの包装に適している。
【0004】
ところで、トイレットロールにおいては、そのペーパー自体や紙管に香料を付与して香り付きとしたものが提案されている。
【0005】
しかし、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムは、ガスバリア性という点においては、必ずしも高いものではないため、特に揮散性の高い香料を用いた場合には、製品化後出荷前保管時、出荷後の倉庫保管時、店頭陳列時に香料が外部に漏れ出るおそれがある。
【0006】
一方で、トイレットロールを包装する包装フィルムには、インキによって商品名やデザイン性向上のための絵柄・模様などが印刷されている。この印刷は、出荷時、配送時や商品購入後の持ち運び時などに生ずる製品外面の摺れによるインキの脱落を防止するために、包装体内面、すなわち包装フィルムのトイレットロールと接する側の面に印刷されている。
【0007】
しかし、揮発性の高い香料成分は、有機溶媒として作用して包装フィルムの内側面にある印刷部分のインクを軟化させるおそれがある。特に高温となる環境下、例えば、日本国の夏期の車内等においてその作用が助長され、トイレットロールとフィルムが摺れた際に、トイレットロールにインクが付着してしまうおそれがある。
【0008】
包装フィルムのガスバリア性を改善して、揮発性の高い香料成分を使用可能にしても、高温の環境下においては、その揮発性の高い香料成分が気密性の高められた包装体内に充満しやすくなるため、インクの溶出を助長するリスクが高まってしまう。
【0009】
包装フィルムからのインキの溶出を防止する技術として、予め印刷面をコロナ放電処理したフィルム基材を用いることが考えられる。しかし、コロナ放電処理を行なうと熱融着性が著しく低下するためトイレットロール包装体の製造性が低下する。フィルム基材の印刷する部分のみコロナ放電処理し、熱融着する部分にはコロナ放電処理を行なわないことも考えられるが、印刷部分のみにコロナ放電処理を効率よく行うことは非常に難しい。
【0010】
インクを耐熱性のあるインクに変更することで高温環境下における脱落を防止することも考えられるが、耐熱性のあるインクは乾燥後の剛性が高くなる傾向にあり、包装フィルムの使用時の伸縮に追従できず、却ってインクの脱落のおそれが高まる。これは、特に、低温環境下においてそのリスクが高まる。
【0011】
このようにトイレットロール包装体においては、包装フィルムのガスバリア性の観点と商品名、デザイン柄や模様などの印刷の観点から、トイレットロールに香りを付与する香料が、揮発性の低いものに限られ、「香り」のバリエーションの増加や、それによる商品差別を難しくしている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のトイレットロール包装体1の実施形態を
図1〜3を参照しながら詳述する。本実施形態に係るトイレットロール包装体1は、各々隣接する二つのトイレットロール20,20…が周面で接するように4個並べ、これを端面方向に3段積み重ねた計12個のトイレットロール群をフィルム10でガゼット包装したものである。但し、本発明におけるトイレットロール20の包装数はこの数に限定されるものではない。このトイレットロール包装体1は、工場内で製造された後、工場内倉庫保管、出荷搬送、出荷先倉庫保管、店頭陳列を経て消費者へと流通していく。
【0021】
本実施形態に係るトイレットロール20は、紙管に帯状のトイレットペーパーを巻きつけた芯有りのトイレットロールであっても、コアレスとも称される芯無しトイレットロールの形態のいずれであってもよい。トイレットロールの大きさは、特に限定されない。高さ(幅)が100〜115mm、巻径(直径)が100〜120mm、芯径が10〜48mm、巻長が20〜100mのものが一般的であり、本包装体1もかかるトイレットロールを採用しうる。
【0022】
トイレットロール20を構成するトイレットペーパーは、1プライから3プライ、紙厚100〜180μm、1プライ当り米坪が11.0〜25.0g/m
2の範囲のものが例示できる。なお、ここでの米坪は、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法によるものであり、紙厚は、JIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて5回測定した平均値をいう。
【0023】
本実施形態に係るトイレットロール包装体1は、特徴的に包装フィルム10が、酸素透過度40cc/m
2・day・atm以下、より好ましくは20cc/m
2・day・atm以下であり、さらにその包装フィルム10は、トイレットロール20と接する内面側に施された印刷部分10Bが、塩化ビニル系樹脂層10Cにより被覆されている。
【0024】
包装フィルム10の酸素透過度が40cc/m
2・day・atm以下であることにより、揮発性の高い香料成分であっても外部に漏れ出ることが防止される。包装フィルム10の酸素透過度の下限値は、特に限定されないが、コストなどトイレットロールの包装に適するフィルムであることを考慮すれば、0.5cc/m
2・day・atmが実質的な下限値である。なお、本発明における酸素透過度は、JIS K 7126(B)に基づいて、23℃、65%RHの測定条件で測定した値である。
【0025】
また、印刷部分10Bがトイレットロール20と接する側である内面側に施されていることにより、出荷時、配送時や商品購入後の持ち運び時などに生ずる製品外面の摺れによるインキの脱落が防止される。そして、それとともに、その印刷部分10Bが塩化ビニル系樹脂層10Cで被覆されていることにより、印刷部分10Bを構成するインクが香料に起因して溶出することが防止される。塩化ビニル系樹脂は、耐摩擦性に優れるともにガスバリア性にも優れるため、印刷部分10Bをこの塩化ビニル系樹脂層10Cで被覆することにより、香料に起因するインク溶出を防止することができるのである。なお、印刷部分10Bは、商品名や商品説明、デザイン柄・模様をインクにより印刷した部分である。この印刷自体は、フィルムに対して従来既知のインク及び印刷方法によって設けることができる。
【0026】
本実施形態に係る包装フィルム10は、特に、
図2に示すように、両最外層12,13が厚さ8〜60μm、融点80℃以上150℃以下のポリエチレンフィルム層であり、それらの間に1〜30μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム層11が介在された、全体の厚さが17μm以上100μm未満のフィルム基材10Aに対して、印刷部分10Bと塩化ビニル系樹脂層10Cとが設けられたものであるのが望ましい。両最外層12,13を構成するポリエチレンフィルム層は融点が低く熱融着性に優れ、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム層11は極めて酸素透過度が低いため、酸素透過度を40cc/m
2・day・atm以下とするとともに、熱融着性と柔軟性とが両立される。特に、この包装フィルム10は、従来から使用されているガゼット包装装置を用いて、従来製品と同様にガゼット包装を行うことができる利点がある。また、好ましく酸素透過度を20cc/m
2・day・atm以下とすることができる。
【0027】
フィルム基材10を構成するポリエチレンフィルム層12,13は、融点が低いほうが低温で融着処理できるが、過度に融点が低い場合には、摩擦などによって包装フィルム10に傷が付いたり穴が空くおそれが高まるため、下限値は80℃である。この融点80℃以上150℃以下のポリエチレンフィルム層12,13は、直鎖低密度ポリエチレンフィルム層(LLDPE)、低密度ポリエチレンフィルム層(LDPE) 中密度ポリエチレンフィルム層(MDPE)等が例示できる。なお、両外層12,13は、必ずしも同じ種類のポリエチレンフィルム層である必要はない。
【0028】
一方、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム層11(EVOH樹脂層とも言われる)は、公知の樹脂を用いて構成することができ、その樹脂としては、株式会社クラレ社製のエバール、日本合成化学工業株式会社のソアノールが提示できる。特に、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム層の融点が180℃以下であることにより、包装フィルム10全体としての熱融着性が阻害されない。チレン−ビニルアルコール共重合体フィルム層11では、エチレン含有量を多くすることにより融点を下げることができる。但し、エチレンの含有割合の増加に伴って酸素透過度が低下するため、この観点から実質的な融点の下限値は150℃である。エチレン−塩化ビニル共重合体フィルム層11は、上記融点及び効果的な酸素透過度を確保すべく、エチレン含有割合が38mol%以上、好ましくは40mol%以上、特に好適には44mol%以上であるのが望ましい。上限値については、酸素透過度を確保するのが困難となることから、50mol%程度である。
【0029】
なお、フィルム基材10Aをポリエチレンフィルム層とエチレン−ビニルアルコール共重合体層とを有する複数層構造とするにあたっては、各層及びそれら相互による効果を損なわない範囲で、他の層を有するようにすることができる。例えば、ポリエチレンフィルム層12,13とエチレン−ビニルアルコール共重合体層11とを一体化するための接着層や架橋材層など積層フィルムを効果的に積層一体化構造とするために用いられる適宜の層を設けることができる。この接着層の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリオレフィン層などが例示できる。接着層等を設ける場合、その厚みは3〜7μm程度であり、この場合においてもフィルム10A全体としての厚みは柔軟性を損なわないように17〜100μmとするのが望ましい。なお、本実施形態に係るフィルム及び各層の厚みの確認は、断面を光学顕微鏡により測定することにより確認することができる。
【0030】
ここでトイレットロール包装体1におけるガゼット包装は、
図1及び
図3から理解されるように、予め筒状に形成された包装フィルム10を、その両側部分を断面M時型になるように筒内側に押し込んだ状態で一方開口部を熱融着処理等により封止して一方が閉じられた三方閉じの袋状の前駆体を形成し、次に被包装物であるトイレットロール20をその袋内に挿入して、その後に他方開口部を熱融着処理して封止してなるものであり、その一方又は他方の開口部を封止する際に、把手部35を形成する。このガゼット包装は、両端開口部が熱融着処理等で封止されるため密封性が高く、香り付きのトイレットロール20の包装体1に適するが、特に
図3に断面を示すように、両側部分を断面M時型になるように筒内側に押し込んだ状態、すなわち少なくとも包装フィルムが四層が重ねられた状態で一度に短時間でフィルム表裏面の熱融着処理を行う必用があるため、特にフィルム厚み方向の熱伝達性とフィルムの表裏における優れた熱融着性を有することが求められる。図示例では、把手部35には包装フィルム10に補強用のポリエチレンフィルムシート15が積層されているものであり、
図1中における符号31は指掛け孔である。本実施形態に係る両最外層12,13が厚さ8〜60μm、融点80℃以上150℃以下のポリエチレンフィルム層であり、それらの間に1〜30μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム層11が介在された、全体の厚さが17μm以上100μm未満のフィルム基材10Aに対して、印刷部分10Bと塩化ビニル系樹脂層10Cとが設けられた包装フィルム10は、係る構造のガゼット包装をこれまでどおりに行うことができる。そのうえ、円筒形状のトイレットロール20の形状に追従する適度な柔軟性と、人の手で容易に開封できつつ意図せず破れない強度をも確保できる。すなわち、従来のポリエチレンフィルム単層の包装フィルムと同等の取り扱い性を有しつつ、高いガスバリア性を有するものとすることができる。なお、トイレットロール包装体1におけるガゼット包装は、その熱融着処理は、一般的に160〜250℃で行なわれる。本実施形態に係る複数層構造のフィルム10は、この温度範囲での熱融着処理において特に適する構造である。また、特にガゼット包装における熱融着に関しては、JIS K 1707におけるヒートシールレンジが、圧力0.2MPa、1秒の条件において、110℃以上で10N/15mmであるのが望ましく、本実施形態に係る複数層構造のフィルム10はこの範囲とすることができる。
【0031】
他方、本実施形態に係る印刷部分10Bを設ける前の複数層構造のフィルム基材10Aは、Tダイ法による共押出法、押し出しラミネート法によって製造することができる。
【0032】
他方、本実施形態に係るトイレットロール包装体1の印刷部分10Bは、フィルム基材10Aに対して従来既知のインク及び印刷方法によって設ければよい。上記複数層構造とした場合には、最外層がポリエチレンフィルム層12,13であるため、従来のポリエチレンフィルム単層の包装フィルムに行ってきた印刷方法と同様の印刷方法により印刷部分を設ければよい。
【0033】
印刷部分10Bを被覆する塩化ビニル系樹脂層10Cは、塩化ビニル層又は塩化ビニリデン層、塩化ビニル合成樹脂層が例示できる。この塩化ビニル系樹脂層10Cは、印刷によって設けることができる。ラミネート法などが必用とされる樹脂層と比較して簡易に設けることができるという利点がある。塩化ビニル系樹脂層10Cの印刷は、塩化ビニル系樹脂を適宜の溶媒に溶解させて印刷すればよい。溶媒は、塩化ビニル系樹脂及び被印刷物であるフィルムの具体的種類等に応じて適宜選択することができる。具体的には、水等の水性溶媒、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、トルエン、それらの混合物等の有機溶媒が、溶媒として例示できる。有機溶媒であれば、有機溶媒の質量に対して0.5〜50質量%の塩化ビニル系樹脂を溶解させた溶液を用いて印刷するのがよい。また、特に本実施形態に係る上記複数層構造のフィルム10Aを用いる場合には、ポリエチレンに不溶であり、塩化ビニルを溶解させるシクロヘキサノールを用いるのが望ましい。水を溶媒として水性の塩化ビニル合成樹脂を用いる場合には、有機溶媒を用いるものよりも乾燥し難い傾向にあるため印刷後に乾燥工程を設けて乾燥させるようにするのがよい。また、表面張力によってフィルム基材上に均一に塗布することが困難である場合には、表面張力を下げ、かつ水の乾燥を阻害しない界面活性剤等を含有させるようにしてもよい。取り扱い性や印刷のしやすさから、好ましくは、有機溶媒を用いるものが望ましい。塩化ビニル系樹脂の印刷については、印刷部分10Bに重ねて、印刷塗工機によってベタ印刷してもよいし、グラビア印刷によって設けてもよい。好ましくは、簡易に塩化ビニル系樹脂層を形成できる印刷塗工機によるベタ印刷である。グラビア印刷であれば、好適なグラビア版は、面積率70%以上、線数を50線以下とするのがよい。印刷は、2回以上重ね印刷してもよい。多色刷り印刷装置を用いて、印刷部分の形成と塩化ビニル系樹脂層の形成とを行うようにしてもよい。
【0034】
他方、本実施形態に係る包装フィルム10は、JIS Z 1707における抗張力が、MD方向で20〜60MPa、好ましくは25〜35MPa、TD方向で20〜60MPa、好ましくは25〜35MPaとすることができる。また、本実施形態に係る包装フィルム10は、JIS Z 1707における伸度が、MD方向で、150〜400%、好ましくは160〜350%、TD方向で150〜800%、好ましくは400〜700%とすることができる。これら抗張力及び伸度の範囲であれば、トイレットロール20に追従する適度な柔軟性、ガゼット包装とした際の持ち運びやすさ、使用時に意図して包装フィルムを引き裂く操作などが効果的に発揮されるものとなる。なお、抗張力及び伸度の測定は、引張速度500mm/minで測定する。さらに、本実施形態に係る包装用フィルム10は、JIS K 7128における引裂試験(エルメンドルフ法)における結果は、特に限定はないが、概ねMD方向、CD方向ともに100〜800N/cm程度であればよい。
【0035】
他方で、本実施形態に係るトイレットロール20は、香料が付与された香り付きのトイレットロールである。香料を付着させる位置は、トイレットペーパーの表裏面、紙管、トイレットロールの端面が例示できる。紙管を有する芯有りのものであるならば、紙管に香料を付着させておけば、トイレットペーパーを使用する際に香料が肌に付着することがなく、また、巻かれているトイレットペーパーが使いきられるまでトイレ内で長期に渡って香気を放つものとなるので望ましい。さらに、紙管に付与されているものであれば、フィルムと直接接触しない紙管内面に香料があれば、印刷インクへの影響が小さい。
【0036】
香料は、天然系あるいは合成系の香料を用いることができる。具体例としては、レモン油、グレープフルーツ油、ローズマリー油、ペパーミント油、マンダリン油、ライム油、ユズ油、カモミール油、ラベンダー油、ローズ油、スペアミント油等の天然香料類;リナロール、シトロネロール、メントール、ゲラニオール等のアルコール類等の合成香料などが挙げられる。これらは単独の香料として用いても、香料成分として複数を組み合わせて調合香料とするものとして用いてもよい。香料或いは香料成分の選択は、所望の香調によって決定すればよい。なお、香料は、香気の強さや揮散性の調整のために適宜ジプロピレングリコール、パラフィンオイル等の鉱物油、ヒマシ油、大豆油の植物油を用いて希釈することができる。
【0037】
特に、本実施形態に係る包装フィルム10は、酸素透過度が40cc/m
2・day・atm以下と従来のポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムからなる包装用フィルムに比して桁違いに酸素透過度が低いうえに、印刷部分10Bにおけるインクの溶出の問題が解決されており、従来使用が困難であった揮散性の高い香料成分を用いることができる。香料製品では、トップノートと称される揮発性が高く初期に強く感じされる香りと、ボトムノートと称される揮発性が低く徐々に感じられるようになる香りと、ミドルノートと称されるこれらの中間の香りを適宜混合して、複雑な香りや経時的な香りの変化を構成することが行なわれる。香り付きのトイレットロールでは、これまで包装フィルムの酸素透過度が高いために、特にトップノートに係る香りが感じられる香調のもの、多くの人がフレッシュな印象や、さわやかな印象を感じるような香調のものとすることが困難であった。本実施形態に係るトイレットロール包装体1は、トップノートに係る香料成分、数値でいえば、温度20℃、湿度50%RHの環境下で蒸気圧が50Pa以上ある香料成分を使用してもその香料成分による香調が可能となり、香り付きトイレットロール製品の「香り」のバリエーションを増加させることができる。
【0038】
以上詳述のとおり本実施形態に係るトイレットロール包装体10は、揮発性の高い香料が付与されたトイレットロール20であっても、香料が外部に漏れ出ず、しかも香料に起因する印刷部分のインクの溶出のリスクがなく、もって、トイレットロールにおける「香り」のバリエーションを増加させることができ、しかも従来製品と同様にガゼット包装とすることができ、生産性も低下することがない。
【実施例】
【0039】
次いで、本発明の実施例及び比較例について熱融着性、インクの脱落、香りの持続性に関して試験した。各例、試験及び評価は下記のとおりであり、試験の結果は下記表1に示すとおりである。
【0040】
(実施例1)厚さ16μm、融点120℃のポリエチレンフィルム層(PE層)の間に、厚さ3μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム層(EVOH)が介在された、全体の厚さが35μmのフィルム基材に、デザイン印刷を施したのち、この印刷部分を塩化ビニル樹脂層で被覆した包装フィルムでトイレットロール包装体を形成した。なお、塩化ビニル樹脂層は、溶媒としてシクロヘキサノールを用い、その溶媒の5質量%の塩化ビニル樹脂を溶解させた液を、ベタ印刷して形成した。酸素透過度は、3.3cc/m
2・day・atmであった。
【0041】
(実施例2)厚さ16μm、融点120℃のポリエチレンフィルム層(PE)の間に、厚さ0.7μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム層(EVOH)が介在された、全体の厚さが32.7μmのフィルム基材に、デザイン印刷を施したのち、この印刷部分を塩化ビニル樹脂層で被覆した包装フィルムでトイレットロール包装体を形成した。なお、塩化ビニル樹脂層は、溶媒としてシクロヘキサノールを用い、その溶媒の5質量%の塩化ビニル樹脂を溶解させた液を、ベタ印刷して形成した。酸素透過度は、39cc/m
2・day・atmであった。
【0042】
(比較例1)厚さ50μmのポリエチレンフィルム単層(PE)のフィルムに従来のインクでデザイン印刷した包装フィルムを用いてトイレットロール包装体を形成した。酸素透過度は、3300cc/m
2・day・atmあった。
【0043】
(比較例2)厚さ48μmのポリエチレンフィルム単層(PE)のフィルムに耐熱インクでデザイン印刷し、塩化ビニル系樹脂層は形成していない包装フィルムを用いてトイレットロール包体を形成した。酸素透過度は、3200cc/m
2・day・atmであった。
【0044】
(比較例3)厚さ47μmのポリエチレンフィルム単層(PE)のフィルムの一方面をコロナ放電処理し、その処理面に従来のインクでデザイン印刷を行い塩化ビニル系樹脂層は形成しない包装フィルムを用いてトイレットロール包装体を形成した。酸素透過度は、3150cc/m
2・day・atmであった。
【0045】
(比較例4)厚さ47μmのポリエチレンテレフタラートフィルム単層(PET)のフィルムの一方面をコロナ放電処理し、その処理面に従来のインクでデザイン印刷を行い塩化ビニル系樹脂層は形成しない包装フィルムを用いてトイレットロール包装体を形成した。酸素透過度は、3150cc/m
2・day・atmであった。
【0046】
(試験方法及び評価)
熱融着性は、
図1に示す形態のガゼット包装を行い、必用各部が熱融着されて封止されているか否かを確認した。評価は、必要各部が融着されて問題なくガゼット包装できていると確認できたものを○、必要各部は一応融着されているがやや融着の強度に不足が認められるものを△、必要各部に融着されていない部位があるものを×と評価した。
【0047】
インクの脱落は、包装するトイレットロールを、紙管に香料を付与したものとして、高温環境下(70℃)で480分、低温環境下(−5℃)で480分、放置した際にインクが溶出、或いは離脱がないかを目視にて確認した。評価は、インクの脱落が認められないものを○、認められたものを×と評価した。なお、香料は、アルコール類22質量%、アルデヒド類14質量%、エステル類39質量%、ラクトン類7質量%、合成ムスク13質量%、その他5質量%の組成の合成香料を用いた。
【0048】
香りの持続性は、各例に係るフィルムを用いて、インクの脱落の試験で用いた香り付きのトイレットロールを密封し、50℃、50%RHの環境下で2日間放置した後、内部のトイレットロールの香りが維持されているか否かを確認した。評価は、香りが概ね持続していると感じられたものを○、香りの低下がやや感じられたものを△、香りの著しい低下が感じられたもの×と評価した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から理解されるように、本発明の実施例1,2はともに、問題なくガゼット包装することができ。また、トイレットロールの香りの持続性も十分で香りが漏れ出ないことも認められた。さらに、実施例1及び実施例2では、香りの持続性の試験結果からして香料が外部に漏れ出ず、包装内は香料が揮散し充満している環境下になっていると認められるが、そのような状況下においても、低温環境下、高温環境下のいずれにおいてもインクの脱落は認められなかった。
【0051】
これに対して、比較例1は、ガゼット包装は問題なく行うことができたが、高温環境下でインクの溶出が見られた。また、香りの維持性にも問題があった。
【0052】
比較例2は、ガゼット包装は問題なく行うことができたが、低温環境下でフィルム基材から一部インクが離脱する現象が確認された。
【0053】
比較例3は、一部熱融着が完全にされていない部分があり、ガゼット包装を問題なく行うことができなかった。
【0054】
比較例4も同様に、一部熱融着が完全にされていない部分があり、ガゼット包装を問題なく行うことができなかった。また、トイレットロールの香りの持続性は比較例1〜3と比べると良好であったものの、不十分であった。
【0055】
以上の試験の結果から明らかなとおり、本発明に係るトイレットロール包装体は、揮発性の高い香料を用いても香料が外部に漏れ出ることがなく、印刷インクの脱落もなく、しかも熱融着性に優れて製造性にも優れるトイレットロール包装体であることが確認された。