(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である車体構造のサスペンションユニットの構成を示す斜視図である。
図1に示すサスペンションユニット10の構成について説明すると、車体20(
図2参照)側と車輪側とを連結するサスペンションリンク(サスペンションアーム)13と、このサスペンションリンク13と車体側において連結するサブフレーム15と、下端部がサスペンションリンク13に取り付けられるショックアブソーバ11とを備えている。つまり、サスペンションリンク13は、一端が車輪側のハブベアリング取り付け用のハウジング(車輪支持部)18と連結し、一端と反対側の他端が車体側のサブフレーム15と連結している。また、ハウジング18は、ロアアーム30を介してサブフレーム15と連結している。なお、サスペンションリンク13は、サブフレーム15を介して車体20に連結される第1連結部13eと、ハウジング18に連結される第2連結部13fと、第1連結部13eと第2連結部13fとの間に位置する第3連結部13gとを備えている。第1連結部13eは、ボルト28によってサブフレーム15と連結しており、第2連結部13fは、ボルト29によってハウジング18と連結している。そして、第3連結部13gは、ボルト21によってショックアブソーバ11と連結している。ここで、
図1に示すサスペンションユニット10は、自動車のリヤのサスペンションの構造を示している。
【0012】
また、サブフレーム15は、車体20に取り付けられたボルト19aが挿通したブッシュ19に固定されており、車幅方向の左右に配置されたブッシュ19に固定されている。そして、サブフレーム15には、車体20の横揺れを減少させるスタビライザ17が固定されており、このスタビライザ17の端部は、スタビライザリンク17aを介してサスペンションリンク13に繋がっている。
【0013】
なお、ボルト19aの車体取り付け側と反対側の端部には、補強フレーム14が取り付けられており、補強フレーム14が、車幅方向の左右に配置されたブッシュ19間を橋渡しして補強している。すなわち、補強フレーム14は、左右の2つのボルト19aを介して車体20に取り付けられているため、非常に剛性が高く、サブフレーム15の取り付け部の剛性を高めている。
【0014】
次に、
図2は
図1に示すサスペンションユニットにおけるショックアブソーバの取り付け構造を示す概略図、
図3は
図2に示すショックアブソーバの下端部の取り付け構造の詳細を示す部分拡大断面図である。
【0015】
衝撃吸収装置であるショックアブソーバ11は、
図2に示すように、その周囲にコイル状のスプリング12が配設されて成るものであり、スプリング12の下端側をロアスプリングシート23で支持し、スプリング12の上端側をアッパースプリングシート24で支持している。すなわち、スプリング12は、ロアスプリングシート23とアッパースプリングシート24とによって挟まれた状態で保持されている。そして、ショックアブソーバ11の上端部11dは、車体20に上側ブラケット25および下側ブラケット26を介して連結されている。一方、ショックアブソーバ11の下端部11eは、サスペンションリンク13の第3連結部13gに連結されている。
【0016】
ここで、サスペンションリンク13は、サスペンション用のアームでもあり、第1連結部13eでは、車体20に、サブフレーム15、ブッシュ19を介して連結し、さらに第3連結部13gでは、ショックアブソーバ11を介して車体20に連結されている。なお、第1連結部13e、第2連結部13fおよび第3連結部13gでは、それぞれ相互に対向して配置され、かつ車幅方向に延在する板状の支持部13a,13bを有している。そして、第3連結部13gでは、対向して配置された支持部13aと、支持部13bとの間に、ショックアブソーバ11の下端部11eが取り付けられている。
【0017】
ショックアブソーバ11の下端部11eは、アブソーバ本体11gに溶接等で固定される金属製筒部材(大径筒部材)11fと、これに挿入される筒状部材(小径筒部材、カラーともいう)11bとを備えているが、筒状部材11bは、ラバーブッシュ11aを介して金属製筒部材11fに挿入されている。つまり、
図3に示すように、サスペンションリンク13の第3連結部13gの対向する支持部13a,13bの間にショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bが配置され、支持部13aと支持部13bとで筒状部材11bを挟持している。したがって、サスペンションリンク13の第3連結部13gの対向して配置された支持部13a,13bそれぞれの対向面13cの間隔は、筒状部材11bの延在方向の長さより僅かに大きくなっている。詳細には、筒状部材11bの両端が支持部13aと支持部13bとによって挟まれるように筒状部材11bが配置され、筒状部材11bは、支持部13aおよび支持部13bのそれぞれの対向面13cによって締め付けられて固定されている。この時、支持部13a,13bのそれぞれの対向面13cには、それぞれ孔部(ボルト孔)13dが形成されている。そして、ショックアブソーバ11の下端部11eをサスペンションリンク13に取り付ける際には、支持部13a,13bのそれぞれの孔部13dと、筒状部材11bの貫通孔(ボルト孔)11cとを対向させ(孔部13dと貫通孔11cとの位置を合わせ)、さらに、筒状部材11bの貫通孔11cにボルト(ボルト部材)21を挿入して、ナット22によって締め付けて固定する。
【0018】
すなわち、ボルト21とナット22とによって、サスペンションリンク13の第3連結部13gの対向する支持部13a,13bと、ショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bとが締め付けられて固定されている。なお、筒状部材11bは、例えば金属製である。
【0019】
ここで、本実施の形態のサスペンションリンク13には、その剛性を高めるための補剛部材(補強部材)16が設けられている。補剛部材16は、例えば金属製であるが、金属以外の材料からなるものであってもよい。
【0020】
図4は
図1に示すサスペンションユニットにおけるショックアブソーバのサスペンションアームへの荷重の掛かり具合を示す模式図、
図5は
図3に示すサスペンションアームの補強部材の構造の一例を示す斜視図である。
図4に示すように、サスペンションリンク13は、その一端のA点でサブフレーム15に連結し、一方、他端のB点で
図1に示すハウジング18に連結しており、ショックアブソーバ11との連結部(
図1の第3連結部13g)であるC点に対して最も大きな荷重Fcが印加される。A点およびB点においては、それぞれ反力となる荷重Fa,Fbが印加される。この荷重Fcは、ショックアブソーバ11のスプリング12の収縮状態での取り付けによる反力であるため、ショックアブソーバ11の取り付け後は、サスペンションリンク13に常時印加される。したがって、サスペンションリンク13では、ショックアブソーバ11の支持部13a,13bの剛性(強度)を高くする必要がある。しかしながら、サスペンションリンク13の第3連結部13gの上部は、ショックアブソーバ11を取り付ける際に、ショックアブソーバ11を上方から挿入可能なように
図3に示す開口部13hを備えているため、第3連結部13gでの剛性は低い。したがって、第3連結部13gにおける支持部13a,13bの剛性を高めることが重要である。
【0021】
そこで、サスペンションリンク13の第3連結部13gの支持部13a,13bには、
図3に示すように、その補強用として、
図5に示すような形状の補剛部材(補強部材)16が設けられている。補剛部材16は、底部16dから折り曲げられて形成された対向する壁部16aを備えており、対向する壁部16aのそれぞれの外側の面は、サスペンションリンク13の第3連結部13gの支持部13a,13bのそれぞれの対向面13cと接合可能な端面(接合面)16bとなっている。
【0022】
さらに、対向する壁部16aのそれぞれには、ショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bの外周部の円と略沿った形状の凹部16cが形成されている。すなわち、
図5に示すように、補剛部材16の対向する壁部16aの凹部16cに筒状部材11bが搭載され、かつサスペンションリンク13の延在方向(D方向)に対しても筒状部材11bが位置決めされるような凹部形状となっている。
【0023】
このような補剛部材16が、
図3に示すように、サスペンションリンク13の第3連結部13gの対向して配置された支持部13a,13bの間に配置され、
図5に示す補剛部材16の両側の端面16bと、サスペンションリンク13の第3連結部13gの支持部13a,13bそれぞれの対向面13cとが、例えば、溶接等によって接合されている。そして、ショックアブソーバ11の取り付け部である筒状部材11bは、ショックアブソーバ11の上下方向(
図5のZ方向)においても、筒状部材11bの中心(円筒形の円の中心)より下部側の一部(例えば、筒状部材11bの外周の円筒面の端部)が、補剛部材16に接触している(当たっている)。つまり、ショックアブソーバ11の筒状部材11bは、
図5に示すD方向およびZ方向において、補剛部材16の壁部16aの凹部16cに接触することで、位置決めされる。すなわち、ショックアブソーバ11の筒状部材11bと、補剛部材16の壁部16aの凹部16cとにおいて、筒状部材11bが、
図5に示すD方向およびZ方向(下部方向)に対して、位置決めされる関係となっている。言い換えると、ショックアブソーバ11は、補剛部材16によって支持されている。なお、
図3に示すように、ショックアブソーバ11の下端部11eにおける金属製筒部材11fの先端(最下端)と、補剛部材16の底部16dとの間には隙間が形成されており、ショックアブソーバ11の下端部11eの金属製筒部材11fの先端は補剛部材16に接触しない位置関係となっている。
【0024】
また、筒状部材11bは、補剛部材16の壁部16aの凹部16cに接触させる(当てる)ことで位置決めされる。そして、ショックアブソーバ11をサスペンションリンク13に取り付ける際には、ショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bと補剛部材16の凹部16cとを接触させて、下端部11eの筒状部材11bの貫通孔11cと、サスペンションリンク13の第3連結部13gの孔部13dとを対向させる。すなわち、ショックアブソーバ11の下端部11eと補剛部材16とを接触させることで、サスペンションリンク13の第3連結部13gの支持部13a,13bのそれぞれの孔部13dと、筒状部材11bの貫通孔11cとが、位置決めされて対向するようになっている。これにより、ボルト21を、ショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bの貫通孔11cと、サスペンションリンク13の第3連結部13gの孔部13dとに容易に挿入することができる。つまり、ショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bの貫通孔11cと、サスペンションリンク13の第3連結部13gの孔部13dとが対向した状態であるため、ショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bの貫通孔11cと、サスペンションリンク13の第3連結部13gの孔部13dとにボルト21を容易に挿入することができる。その結果、ショックアブソーバ11とサスペンションリンク13とを容易に連結することができる。
【0025】
以上のように、本実施の形態のサスペンションリンク13に設けられた補剛部材16は、ショックアブソーバ11とサスペンションリンク13との位置決めの機能を有し、かつサスペンションリンク13の剛性・強度を高める機能も有している。なお、筒状部材11bの位置決めについては、サスペンションリンク13の第3連結部13gの支持部13a,13bの孔部13dと、ショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bの貫通孔11cとにおけるそれぞれの孔の中心が、多少ずれていてもよい。すなわち、ボルト21を筒状部材11bの貫通孔11cに容易に通すことができる程度の位置決めが、筒状部材11bと補剛部材16との間で行われていればよい。また、補剛部材16の壁部16aに形成された凹部16cの形状は、筒状部材11bの外周方向の形状に対応させて半円形状であることが好ましいが、半円形状に限定されるものではない。
【0026】
本実施の形態のサスペンションユニット10を有する車体構造によれば、サスペンションリンク13に設けられた補剛部材16がショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bと接触することで、ショックアブソーバ11の下端部11eが位置決めされるため、自動車の艤装作業性を向上させることができる。すなわち、サスペンションリンク13の第3連結部13gの支持部13a,13b間に補剛部材16が設けられたことにより、ショックアブソーバ11をサスペンションリンク13に取り付ける際に、ショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bを補剛部材16に接触させる(突き当てる)ことで、両者の取り付け孔(ボルト孔)の位置を合わせることができる。これにより、ショックアブソーバ11の取り付け作業が容易になり、サスペンションユニット10の搭載作業性を向上させることができる。その結果、自動車の艤装作業性を向上させることができる。さらに、艤装作業性を向上できるため、作業コストの低減化も図ることができる。
【0027】
また、サスペンションリンク13における第3連結部13gのショックアブソーバ11が取り付けられる支持部13a,13bに補剛部材16が設けられたことにより、支持部13a,13bの上部に開口部13hを備えていてもサスペンションリンク13の支持部13a,13bの剛性を高めることができる。
【0028】
これは、サスペンションリンク13において、ショックアブソーバ11が取り付けられる部分(第3連結部13g)は、最もスプリング12による荷重が大きく付与される部分であるため、剛性や強度が必要とされる。しかし、サスペンションリンク13は、第3連結部13gの上部に、艤装作業でショックアブソーバ11の下端部11eを挿入させるための開口部13hが形成されており、したがって、ショックアブソーバ11を固定する箇所の断面係数が小さく、剛性・強度が低い。
【0029】
そこで、本実施の形態の車体構造では、サスペンションリンク13の第3連結部13gに補剛部材16が設けられたことで、サスペンションリンク13の断面の変形を抑えることができ、サスペンションリンク13の剛性・強度を高めることができる。これにより、サスペンションリンク13によってショックアブソーバ11が強固に支えられるため、自動車における操縦の安定性を向上させることができる。また、補剛部材16は、サスペンションリンク13において荷重が最も大きく印加される箇所(第3連結部13gの支持部13a,13b)に設けられるため、サスペンションリンク13の強度・剛性・質量のバランスを向上させることができる。
【0030】
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
図6は、
図3に示すサスペンションアームに設けられる補強部材の変形例の構造を示す斜視図である。
図6に示す補剛部材(補強部材)27は、円筒形の部材をその延在方向に沿って割った形状のものであり、補剛部材16と同様に、例えば金属製の部材である。したがって、補剛部材27は、曲率を成す壁部27aを有しており、その延在方向の端面27bがサスペンションリンク13の支持部13a,13bそれぞれの対向面13cと接合する接合面となっている。
【0031】
そして、
図3に示すショックアブソーバ11の下端部11eの金属製筒部材11fの両側に補剛部材27が配置されるように補剛部材27が設けられている。したがって、ショックアブソーバ11をサスペンションリンク13に取り付ける際には、ショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bの両端部が、支持部13a側と支持部13b側とに分かれて設けられた補剛部材27のそれぞれに接触し、ショックアブソーバ11の下端部11eとサスペンションリンク13との位置決めが行われる。
【0032】
なお、補剛部材27は、その延在方向において、曲率を成す壁部27aによって凹部27cが形成された形状となっている。すなわち、補剛部材27の凹部27cの形状は、補剛部材16の凹部16cと同様に、ショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bの外周部の円と略沿った形状となっている。これにより、
図6に示すように、2つの補剛部材27のそれぞれの壁部27aによる凹部27cに筒状部材11bが搭載される。そして、補剛部材16の場合と同様に、サスペンションリンク13の延在方向(D方向)およびショックアブソーバ11の高さ方向(Z方向)の下方側に対して筒状部材11bが位置決めされるようになっている。つまり、2つの補剛部材27によってショックアブソーバ11の筒状部材11bが支持される。
【0033】
なお、補剛部材27を両側に分けて配置したことにより、ショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bから下方に突出した金属製筒部材11fと補剛部材27それぞれとの接触を回避することができる。
【0034】
サスペンションリンク13に
図6に示す2つの補剛部材27を設けることにより、補剛部材16と同様に、ショックアブソーバ11をサスペンションリンク13に取り付ける際に、補剛部材27のそれぞれがショックアブソーバ11の下端部11eの筒状部材11bと接触することで、ショックアブソーバ11が位置決めされ、その結果、自動車の艤装作業性を向上させることができる。さらに、艤装作業性を向上できるため、作業コストの低減化も図ることができる。
【0035】
また、サスペンションリンク13のショックアブソーバ11が取り付けられる第3連結部13gの支持部13a,13bに補剛部材27が設けられたことにより、第3連結部13gの支持部13a,13bの剛性を高めることができる。すなわち、2つの補剛部材27が設けられたことで、サスペンションリンク13の断面の変形を抑えることができ、サスペンションリンク13の剛性・強度を高めることができる。これにより、サスペンションリンク13によってショックアブソーバ11が強固に支えられるため、自動車における操縦の安定性を向上させることができる。なお、2つの補剛部材27は、両者を繋いだ形状とする方が好ましく、これにより、サスペンションリンク13の剛性・強度をさらに高めることができる。
【0036】
本発明は前記実施の形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の実施の形態では、
図3に示すショックアブソーバ11の取り付け構造が、
図1に示すリヤのサスペンションに取り付けられている場合を説明したが、上述のショックアブソーバ11の取り付け構造は、フロントのサスペンションに適用してもよい。