特許第6346487号(P6346487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6346487-抵抗器の製造方法、抵抗値測定方法 図000002
  • 特許6346487-抵抗器の製造方法、抵抗値測定方法 図000003
  • 特許6346487-抵抗器の製造方法、抵抗値測定方法 図000004
  • 特許6346487-抵抗器の製造方法、抵抗値測定方法 図000005
  • 特許6346487-抵抗器の製造方法、抵抗値測定方法 図000006
  • 特許6346487-抵抗器の製造方法、抵抗値測定方法 図000007
  • 特許6346487-抵抗器の製造方法、抵抗値測定方法 図000008
  • 特許6346487-抵抗器の製造方法、抵抗値測定方法 図000009
  • 特許6346487-抵抗器の製造方法、抵抗値測定方法 図000010
  • 特許6346487-抵抗器の製造方法、抵抗値測定方法 図000011
  • 特許6346487-抵抗器の製造方法、抵抗値測定方法 図000012
  • 特許6346487-抵抗器の製造方法、抵抗値測定方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346487
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】抵抗器の製造方法、抵抗値測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 17/02 20060101AFI20180611BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20180611BHJP
   G01R 27/08 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   H01C17/02
   G01R27/02 R
   G01R27/08
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-82108(P2014-82108)
(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公開番号】特開2015-204328(P2015-204328A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100108394
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 健一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕一
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−155567(JP,A)
【文献】 特開2015−081862(JP,A)
【文献】 特開2014−194961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 17/02
G01R 27/02
G01R 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極および第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた抵抗体と、を有する抵抗器を、前記第1の電極と前記第2の電極とにそれぞれ接触して電流を流す一対の電流端子と、前記第1の電極と前記第2の電極とにそれぞれ接触して電圧を測定する一対の電圧検出端子とを備えた抵抗値測定手段により測定する工程を有する抵抗器の製造方法であって、
前記抵抗値測定手段により測定する工程は、
前記第1の電極と前記第2の電極との配置方向に前記抵抗器を2分する基準線を基準として対角に位置するように前記第1の電極の第1のエリアと前記第2の電極の第2のエリアとを規定し、
前記電流端子を前記基準線寄りとなる位置に接触させるとともに、前記電圧検出端子を、前記第1のエリアおよび前記第2のエリアのそれぞれにおいて、前記電流端子の接触位置よりも前記基準線から離れた位置に接触させて、4端子測定を行う工程を含む
抵抗器の製造方法。
【請求項2】
前記電流端子を、前記第1のエリアおよび前記第2のエリアのそれぞれのエリア内となるように接触させて測定を行うことを特徴とする請求項1に記載の抵抗器の製造方法。
【請求項3】
前記抵抗器は長方形状であり、長辺側が電極であることを特徴とする請求項1又は2に記載の抵抗器の製造方法。
【請求項4】
前記抵抗体は金属板であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の抵抗器の製造方法。
【請求項5】
第1の電極および第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた抵抗体と、を有する抵抗器を、前記第1の電極と前記第2の電極とにそれぞれ接触して電流を流す一対の電流端子と、前記第1の電極と前記第2の電極とにそれぞれ接触して電圧を測定する一対の電圧検出端子とを備えた抵抗値測定手段により測定する抵抗器の抵抗値測定方法であって、
前記抵抗値測定手段により測定する工程は、
前記第1の電極と前記第2の電極との配置方向に前記抵抗器を2分する基準線を基準として対角に位置するように前記第1の電極の第1のエリアと前記第2の電極の第2のエリアとを規定し、
前記電流端子を前記基準線寄りとなる位置に接触させるとともに、前記電圧検出端子を、前記第1のエリアおよび前記第2のエリアのそれぞれにおいて、前記電流端子の接触位置よりも前記基準線から離れた位置に接触させて、4端子測定を行う工程を含む
抵抗器の抵抗値測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗器の製造方法及び抵抗測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ型抵抗器の製造工程において、最終工程で抵抗値を測定して良品を選別し、或いは、途中の工程で抵抗値を測定し、必要に応じて抵抗体を加工等するなどの方法で、抵抗値を調整することが行われている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、4端子法による抵抗値の測定が開示されている。例えば10mΩ以下など低い抵抗値を有する抵抗器を用いた電流検出が行われ、このような抵抗器の抵抗値測定は、一般に4端子法が用いられる。4端子法を用いることで、抵抗値を精度良く測定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−289075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電流プローブまたは電圧のプローブの少なくとも一方のコンタクト位置がずれると、測定抵抗値の変動が生じる。一般に、抵抗器の抵抗値測定時の位置合せ、すなわち、プローブと抵抗器との位置合せ余裕が少なく、抵抗値精度のバラツキを抑えて量産することが難しいという問題があった。特に、長辺側を電極とした長辺型抵抗器の構造においては、電極幅が狭いため、電流が流れる方向に電流プローブと電圧のプローブを並べて当てることは難しく、コンタクト位置のずれに起因する抵抗値精度のバラツキを抑えることが難しいという問題が顕在化していた。
本発明は、抵抗器の抵抗値を精度良く測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、第1の電極および第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた抵抗体と、を有する抵抗器を、前記第1の電極と前記第2の電極とにそれぞれ接触して電流を流す一対の電流端子と、前記第1の電極と前記第2の電極とにそれぞれ接触して電圧を測定する一対の電圧検出端子とを備えた抵抗値測定手段により測定する工程を有する抵抗器の製造方法であって、前記抵抗値測定手段により測定する工程は、前記第1の電極と前記第2の電極との配置方向に前記抵抗器を2分する基準線を基準として対角に位置するように前記第1の電極の第1のエリアと前記第2の電極の第2のエリアとを規定し、前記電流端子を前記基準線寄りとなる位置に接触させるとともに、前記電圧検出端子を、前記第1のエリアおよび前記第2のエリアのそれぞれにおいて、前記電流端子の接触位置よりも前記基準線から離れた位置に接触させて、4端子測定を行う工程を含む抵抗器の製造方法が提供される。
【0007】
前記電流端子を、前記基準線上において接触させて測定を行っても良い。
前記抵抗器は長方形状であり、長辺側が電極である場合に当該製造方法を適用することが好ましい。
前記抵抗体は金属板であることが好ましい。
【0008】
また、本発明は、第1の電極および第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極と
の間に設けられた抵抗体と、を有する抵抗器を、前記第1の電極と前記第2の電極とにそれぞれ接触して電流を流す一対の電流端子と、前記第1の電極と前記第2の電極とにそれぞれ接触して電圧を測定する一対の電圧検出端子とを備えた抵抗値測定手段により測定する抵抗器の抵抗値測定方法であって、前記抵抗値測定手段により測定する工程は、前記第1の電極と前記第2の電極との配置方向に前記抵抗器を2分する基準線を基準として対角に位置するように前記第1の電極の第1のエリアと前記第2の電極の第2のエリアとを規定し、前記電流端子を前記基準線寄りとなる位置に接触させるとともに、前記電圧検出端子を、前記第1のエリアおよび前記第2のエリアのそれぞれにおいて、前記電流端子の接触位置よりも前記基準線から離れた位置に接触させて、4端子測定を行う工程を含む抵抗器の抵抗値測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、抵抗器の抵抗値を精度良く測定することができる。また、抵抗器の抵抗値精度のバラツキを抑えて量産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態による抵抗器の製造方法及び抵抗値の測定方法において用いられる長辺型抵抗器の外観構成例を示す斜視図である。
図2】長辺型抵抗器をその長辺方向と直交する方向に切った断面図である。
図3A】長辺型抵抗器の製造工程の一例を示す斜視図である。
図3B】長辺型抵抗器の製造工程の一例を示す斜視図である。
図4】長辺型抵抗器の製造工程の一例を示す断面図である。
図5】製造工程の流れを示すフローチャート図である。
図6】長辺型抵抗器のパラメータの一例を示す図であり、図6(a)は抵抗器の平面図、図6(b)は側面図である。
図7】4端子法における一般的なプローブ配置例を示す図である。
図8】本実施の形態による抵抗値測定における電圧端子と電流端子の配置例を示す図であり、図3B(h)に対応する図である。
図9図8と比較する比較例による抵抗値測定における電圧端子と電流端子の配置例を示す図である。
図10】製品位置ズレの影響を示す図である。
図11】プローブ位置ズレの影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態による抵抗器の製造方法及び抵抗値の測定方法について、長辺型抵抗器を例にして、図面を参照しながら詳細に説明を行う。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態による抵抗器の製造方法及び抵抗値の測定方法において用いられる長辺型抵抗器の外観構成例を示す斜視図であり、図2は、長辺型抵抗器をその長辺方向と直交する方向に切った断面図である。また、図3A図3Bは、長辺型抵抗器の製造工程の一例を示す斜視図であり、図4は、長辺型抵抗器の製造工程の一例を示す断面図であり、図5は、製造工程の流れを示すフローチャート図である。
【0013】
本実施の形態による長辺型抵抗器100は、Ni−Cr系などの板状の抵抗体111と、その一面(抵抗体上面111aの反対側の抵抗体下面111b)に、ある距離だけ離れて形成され、例えばCuからなる2つの電極113とを有し、一面の電極113間の領域に抵抗体下面111bが露出している。その露出面に保護膜が形成されていても良い。ここで、抵抗体上面111aとは反対側の電極113の下面113xと電極113の外側面113y及び抵抗体端面111dとが、電極コート材131により被覆されている。
【0014】
以下に、上記の抵抗器100の製造方法について説明する。図3から図5までは、抵抗体の製造工程の要部を示す図であり、図3A図3Bは斜視図、図4図3A図3Bにおける要部断面図、図5は製造工程の例を示すフローチャート図である。
【0015】
まず、図3A(a)、図4の(1)に示すように、例えば、Ni−Cr系などの第1の金属材からなる抵抗体の板(層)111とCuなどの第2の金属材からなる電極板(層)113との平板状の積層材110を準備する(図5: ステップS1)。
【0016】
次いで、フォトレジストなどを用いたリソグラフィー技術を利用して、積層材110に、厚さ方向に貫通し、面内の一方向(第1の方向)に延在するスリット201を形成する(ステップS2)。そのために、電極材113側の一面に、スリット201の幅の領域を開口するレジストパターンA1が、他の一面にも同じ領域に開口を有するレジストパターンA2が形成される。スリット201は、第1の方向と直交する第2の方向に間隔をあけて複数設けられる。尚、スリット幅と間隔は、それぞれ、位置により変更して、異なる幅の抵抗器を形成するようにしても良い。要するに、抵抗器の幅がスリット間の間隔により決定する。
【0017】
次いで、レジストパターンA1、A2を利用して、抵抗体の板111と電極板113とをエッチングする。エッチングは、ウェットエッチング、ドライエッチングのいずれでもよい。なお、レジストやエッチングではなく、プレスなどにより打ち抜いても良い。次いで、レジストを除去すると、図4(2)に示すように、抵抗体の板111と電極板113と貫通するスリット201が形成される。(図3Aの(c))。このスリットの一方の位置は、図1図2に示す電極113の側面113b及び抵抗体端面111dに位置する。スリット201は、積層材110の第1の方向の端面までは形成されていない。
【0018】
次いで、図3Aの(d)に示すように、スリット201が形成された積層材110の両面にそれぞれフォトレジストB1、B2を塗布する。
【0019】
次いで、図3Aの(e)に示すように、積層材110の電極材の板113側の一面に、スリット201と同じ方向に延在するレジストパターンB2−1を形成する。レジストパターンB2−1の幅は、電極材の板113を分離して電極を形成した場合における隣接する電極間の距離に対応し、レジストパターンB2−1の端部と隣接するスリット201の端部との間の距離が電極幅に対応する位置に形成される。したがって、この段階で、電極間距離と電極幅とを規定することができる。この際、積層材110の抵抗材の板111側の一面には全面にフォトレジストB1を残しておく。次いで、レジストパターンB2−1をマスクとして、Snの電解メッキなどにより電極コート材131を形成する。図4の(3)に示すように、抵抗体の板111と電極板113の側面が、電極コート材131により被覆される(図3A(f)、ステップS3)。
【0020】
次いで、図3B(g)に示すように、レジストパターンB2−1とB1とを除去する。B1は残しても良い。すると、図4の(4)に示すように、レジストパターンB2−1を除去した領域141に、電極板113の表面が露出する(ステップS4)。
【0021】
次いで、図3B(h)に示すように、例えば塩化第二鉄の水溶液を用いて、Ni−Crに対してCuの選択エッチングを行う。これにより、図4の(5)に示すように、レジストパターンB2−1を除去した領域141に抵抗体の板111が露出し、電極113が分離する(ステップS5)。
【0022】
次いで、図3B(i)に示すように、スリット201の端部近傍のスリット201内の位置で、スリット201の延在方向と直交する方向に、ダイシング、せん断などにより、積層材110をカットする(ステップS6)。
【0023】
次いで、図3B(j)、(k)に示すように、スリット201の延在方向と直交する方向に、ダイシング、せん断などにより、積層材110をカットして個片化する。これにより、図4の(6)に示すように、図1と同様の長辺型抵抗器の構造を形成することができる。なお、以上の説明では抵抗体の板と電極の板からなる積層材について説明したが、抵抗体の端部にめっき等により銅等の電極を形成したものでもよい。
【0024】
以上のようにして製造した長辺型抵抗器の抵抗値を、例えば、最終選別工程において、図3B(h)に示すように4端子法により測定する。抵抗値の測定は、抵抗値の調整等の中間工程において行っても良い。以下に、計算機シミュレーションにより求めた4端子法による抵抗値について説明する。
【0025】
図6は、長辺型抵抗器100の計算機シミュレーションに用いるパラメータを示す図であり、図6(a)は長辺型抵抗器100の平面図、図6(b)は長辺型抵抗器100の側面図である。3.2mm×1.6mm×0.2mmの金属板抵抗体111の下面に、厚さ0.1mmの銅電極113を形成した構造を用いた。抵抗体111としてCu/Ni(マンニガン)の体積抵抗率は、45×10−8Ω・mとした。
【0026】
図8は、本実施の形態による抵抗値測定における電圧端子と電流端子の配置例を示す図であり、図3B(h)に対応する図である。図8(a)、(b)に例示する本実施の形態による抵抗値の測定方法では、第1の電極113aと第2の電極113bとの両電極の配置方向に抵抗器を2分する線を基準線11と定義し、この基準線11を基準として対角に位置するように、第1の電極部分を第1のエリア15b、第2の電極部分を第2のエリア15cとして規定した場合に、第1のエリア15bおよび第2のエリア15cのそれぞれにおいて、基準線11寄りにそれぞれ2本の電流端子(I(+)、I(−): 丸印、以下、同様である。)を、それよりも基準線11から離れた位置に2本の電圧端子(V(+)、V(−): 三角印、以下、同様である。)を、接触させる。第1のエリアを15aとした場合には、第2のエリアを15dとすれば良い。
【0027】
図8(a)は、2本の電流端子を、2つの電極113a、113bのそれぞれの延在方向の中心位置に、すなわち、両銅電極113の配置方向に長辺型抵抗器100を2分する基準線11上に配置した例である。
【0028】
以上のように、図8(a)の例では、2本の電圧端子を、基準線11から1.2mmだけ離れた位置に配置している。このプローブ配置を配置Cと称する。
【0029】
また、図8(b)では、図8(a)において、2本の電流端子を基準線からそれぞれ逆方向に0.4mmだけ離れた位置に配置している。このプローブ配置を、配置Dと称する。
【0030】
図7(a)、(b)は、比較例としてのプローブ配置例を示す図であり、図7(a)では、2本の電圧端子をエリア15bとエリア15dに、2本の電流端子とをエリア15aとエリア15bに、それぞれが対向するように配置している。この例では、電圧端子と電流端子とが基準線11から1.2mmずつ離れ、電圧端子同士、電流端子同士がそれぞれ対向する位置に配置される。このプローブ配置を配置Aと称する。
【0031】
図7(b)では、2本の電圧端子をエリア15b、15cに、2本の電流端子をエリア15a、15dに配置している。この例では、電圧端子と電流端子とが基準線11から1.2mmずつ離れ、電圧端子と電流端子とがそれぞれ対向する位置に配置される。このプローブ配置を配置Bと称する。
【0032】
また、図9は、図8と比較する比較例による抵抗値測定における電圧端子と電流端子の配置例を示す図である。図9(a)は、2つの電圧端子を、2つの電極113a、113bのそれぞれの延在方向の中心位置に、すなわち、両電極113a、113bの配置方向に抵抗器100を2分する基準線11上に配置する。また、基準線11を基準として対角に位置するように、第1の電極部分を第1のエリア15b、第2の電極部分を第2のエリア15cとして規定した場合に、2本の電流端子を、第1のエリア15bおよび第2のエリア15cそれぞれにおいて、基準線11から離れた位置に配置する。図9(a)の例では、2本の電流端子を、基準線11から1.2mmだけ離れた位置に配置している。このプローブ配置を配置Eと称する。
【0033】
図9(b)の例では、図9(a)において、2本の電圧端子を基準線からそれぞれ逆方向に0.4mmだけ離れた位置に配置している。このプローブ配置を、配置Fと称する。
【0034】
これらのプローブ配置において、抵抗値測定精度の違いについて計算機シミュレーションによる理論値に基づいて以下に説明する。
【0035】
まず、図10(a)に示すように、上記の配置AからDまでについて、抵抗器の位置がX方向(電極の延在する方向(配置方向)であり搬送方向と一致する。)とY方向(X方向と直交する方向(基準線の延びる方向))とに位置ずれした場合の測定抵抗値の変動について以下に説明する。
【0036】
図10(b)は、搬送方向であるX方向に抵抗器が位置ずれした場合(Xずれ)における、位置ずれしていない場合の抵抗値を基準とした、抵抗値の変動を%で示す図である。
【0037】
図10(b)に示すように、電極の延在方向の端部近傍に配置している配置A、配置Bに対して、電流端子の配置を電極の中央付近の基準線に沿って配置し、電圧端子の配置を基準線から離れた位置であって、基準線に対して反対側の位置(対角位置)に配置する配置Cとすることにより、Xずれに対する抵抗値の変動を抑制することができることがわかる。さらに、電流端子の配置を電極の中央付近の基準線に沿って基準線から離れる逆方向に移動させた配置Dとすることで、Xずれに対する抵抗値の変動をより一層抑制することができることがわかる。尚、配置Dは配置Cの状態から、抵抗器の中心を軸として電流端子を時計周りに回転させるように、電極の端部方向に平行移動させた(X方向に電圧端子に近づく方向に例えば0.4mm移動させた)配置例であるが、電流端子の回転方向を抵抗器の中心を軸として反時計周りに回転させるように、電極の端部方向に平行移動させた配置(X方向に電圧端子から遠ざかる方向に例えば0.4mm移動させた)配置としても良い。
【0038】
このように、配置Cや配置DにおけるXずれに対する抵抗値の変動の抑制効果は、対角方向に流れる電流(電子の移動)が少ない方向において電圧を測定することで、電流分布に依存する電圧測定値の変動を抑制できることに起因するものと解釈できる。
【0039】
図10(c)は、Y方向に抵抗器が位置ずれした場合における抵抗値の、位置ずれしていない場合の抵抗値を基準とした変動を%で示す図である。この場合でも、配置C、Dでは、配置A、Bよりも変動は抑制できるという、X方向のずれの場合と同様の効果が得られている。但し、その効果は図10(b)よりも少なく、長辺型抵抗器の場合には、電極が延在するX方向を搬送方向としたときにより高い効果が得られることがわかる。
【0040】
図11は、片側の電圧検出プローブの当接位置がX方向又はY方向にズレた場合における、配置AからDまで、及び配置E、Fにおける抵抗値の測定値の変動値を示す図である。
【0041】
図11(a)は、ずれの様子を示す図であり、図11(b)は、電圧プローブのXズレの影響を示し、図11(c)は、電圧プローブのYズレの影響を示す図である。
【0042】
このように、比較例の配置である電極の延在方向の端部近傍に配置している配置A、配置Bに対して、電流端子の配置を電極の中央付近の基準線に沿って配置し、電圧端子の配置を基準線から離れた位置であって、基準線に対して反対側の位置(対角位置)に配置する配置Cとすることにより、1本の電圧プローブのXずれに対する抵抗値の変動を抑制することができることがわかる。さらに、電流端子の配置を電極の中央付近の基準線に沿って基準線から離れる逆方向に移動させた配置Dとすることで、1本の電圧プローブのXずれに対する抵抗値の変動をより一層抑制することができることがわかる。
【0043】
尚、電流プローブを外側に配置した配置E、Fでは、1本の電圧プローブのコンタクト位置のXずれに対する抵抗値の変動を抑制することはできていないことがわかる。これは、電流プローブを外側に配置すると、電圧プローブのコンタクト位置のXずれの影響が大きくなるためである。このように、電圧プローブは、基準線からできるだけ外側に配置することが好ましい。
【0044】
図11(c)に示す1本の電圧プローブのコンタクト位置のYずれについても、配置依存性はXズレと同様の傾向を示すことがわかる。
【0045】
以上に結果から、両電極の配置方向に抵抗器を2分する線を基準として対角に位置するように、第1の電極部分を第1のエリア、第2の電極部分を第2のエリアとして規定し、第1のエリアおよび第2のエリアそれぞれにおいて、基準線寄りに電流端子を、それよりも基準線から離れた位置に電圧検出端子を、接触させるようにして4端子測定を行うことで、X方向及びY方向の抵抗器の製品ずれと1本のプローブずれのいずれに関しても、ズレに対する測定値の変動を抑制することができる。
【0046】
すなわち、測定時の搬送方向は、電極の長さ方向とし、交差する方向で測定するとともに、電圧端子を外側にすることで、抵抗器の抵抗測定時の抵抗器の位置ズレやプローブズレに起因する測定値の変動を抑制することができる。
【0047】
尚、上記の効果は、抵抗器が長方形状であり、長辺側が電極である長辺型抵抗器では電流方向に電流と電圧のプローブを並べて当てられない長辺型抵抗器の測定及び製造工程においてより有用である。
【0048】
また、抵抗体が金属であるような低抵抗な抵抗器において、より有用である。
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0049】
例えば、本実施の形態では、長辺型抵抗器を例に説明したが、電極が長辺方向に延材する構造に限定されるものではない。
【0050】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、抵抗器の製造方法、測定方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
100…長辺型抵抗器、111…抵抗体、113…電極。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11