(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作部材は、前記可動パネルに設けられた動滑車に巻掛けられて一端が躯体に固定されたワイヤを巻取るドラムと、前記ドラムの回転を許容又はロックするロック機構と、を備え、
前記固定パネルには、外側から前記ロック機構のロック状態を解除可能な解除部材が設けられている、請求項2に記載の外装パネル。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る外装パネル20の一例について、
図1〜
図5に従って説明する。
【0015】
外装パネル20はガラスや金属から成る矩形状の板部材である。
図1に示すように、躯体としての建物10の正面が、複数の外装パネル20によって覆われている。また、外装パネル20は、固定パネル22と可動パネル24とから構成されている。なお、本発明で建物の正面とは、
図1に示す建物10の側面及び裏面を含む概念である。
【0016】
固定パネル22は、建物10に設けられた方立12に固定されており、複数の固定パネル22が建物10の側面の左右方向に並列され、上下方向に間隔をあけて設置されている。
【0017】
一方、可動パネル24は、後述するレール13に上下方向に移動可能に取り付けられている。可動パネル24は、
図1(A)に示すような固定パネル22間の開口29を閉鎖する閉鎖状態と、
図1(B)に示すような固定パネル22の裏側へ収納され開口29を開放する開放状態との間で移動する。
【0018】
図2に示すように、建物10の柱18間には、引き違い窓15と引き違い窓15の下端に設けられた嵌め殺し窓16とが設置されており、天井スラブ14A、床スラブ14B、柱18、引き違い窓15等によって居室空間11が形成されている。
【0019】
また、天井スラブ14A及び床スラブ14Bにはファスナ17が固定されており、ファスナ17には方立12が連結されている。方立12は建物10の上下方向に延出した板状部材であり、方立12の外側端面には、ボルト等によって固定パネル22が固定されている。
【0020】
また、方立12の側面には、建物10の上下方向に沿ってチャンネル状のレール(ガイド機構の一例)13が設けられている。さらに、床スラブ14Bの外側には、落下防止用又は外部からの非常進入時用の足場23が設けられている。
【0021】
一方、
図3に示すように、可動パネル24は、同じ大きさの上側可動パネル24Aと下側可動パネル24Bとから構成されている。上側可動パネル24A及び下側可動パネル24Bの裏面の四隅には、それぞれレール13上を摺動可能なローラ25が設けられており、ローラ25がレール13に係合することによって、可動パネル24が横振れせずに上下方向に移動可能となっている。また、レール13には、ローラ25の移動を規制するためのストッパ19が上下に設けられており、可動パネル24を閉鎖状態及び開放状態で停止させる。
【0022】
建物10の躯体には、連動用ワイヤ(巻掛け部材の一例)27が上下に巻掛けられた連動用滑車(回転部材の一例)26が設けられている。上側可動パネル24Aと下側可動パネル24Bは、連動用ワイヤ27の一端及び他端にそれぞれ連結され、互いに連動して移動する。また、下側可動パネル24Bには重り28が内蔵又は装着されており、下側可動パネル24Bは上側可動パネル24Aより重くされている。
【0023】
固定パネル22の下端部には、非常用レバー(解除部材の一例)21が設けられている。非常用レバー21は、後述するオペレーション40とロック解除用ワイヤ35によって連結されており、非常用レバー21を手前に引くことでオペレーション40のロック状態を解除することができる。
【0024】
さらに、下側可動パネル24Bの下端部には、支持板38が取り付けられており、支持板38にはパネル側動滑車30が設けられている。一方、建物10には、転向滑車31、第1枠滑車32、第2枠滑車33がそれぞれ間隔を空けて水平方向に配列されている。
【0025】
パネル側動滑車30は、下側可動パネル24Bが閉鎖状態のとき、第1枠滑車32と第2枠滑車33との間に位置するように配置されている。また、パネル側動滑車30、転向滑車31、第1枠滑車32、第2枠滑車33には、開閉用ワイヤ(ワイヤ)34が巻掛けられている。
【0026】
開閉用ワイヤ34は、一端が第2枠滑車33近傍に固定されており、第2枠滑車33の上側、パネル側動滑車30の下側、第1枠滑車32の上側、転向滑車31の下側を通って室内側に設けられた室内側滑車37の上側へ巻掛けられ、
図4に示すオペレーション40の巻取りドラム(ドラム)44に他端が巻取られている。このようにパネル側動滑車30を設けることで、可動パネル24の閉鎖操作時に開閉用ワイヤ34を巻取る力を半分にすることができる。
【0027】
オペレーション(操作部材の一例)40は箱状のケース41を有し、
図4に示すように、ケース41内に巻取りドラム44が回転自在に支持されている。巻取りドラム44の端面には六角溝形状の軸44Aが形成されており、軸44Aには、ケース41の外側からハンドル42の六角柱形状の嵌合部42Aが着脱可能に嵌合される。また、ハンドル42には取っ手42Bが形成されており、取っ手42Bを回すことによりドラム44を回転させることができる。
【0028】
巻取りドラム44には同軸上にワンウェイダンパ43が設けられている。ワンウェイダンパ43は、開閉用ワイヤ34を巻取る方向に巻取りドラム44が回転する際にはトルクがほとんど発生せず、開閉用ワイヤ34を繰り出す方向に巻取りドラム44が回転する際にはトルクを発生させて開閉用ワイヤ34の繰り出し速度を制限する。
【0029】
また、巻取りドラム44の軸44A上にはラチェットギア44Bが取り付けられており、ラチェットギア44Bには係合爪(ロック機構の一例)46が係合している。係合爪46は、回転軸46Aを中心に回転可能な鉤爪形状の部材であり、図示しないトーションバネによってラチェットギア44Bに係合する方向に付勢されている。
【0030】
係合爪46の一端がラチェットギア44Bに係合した状態では、巻取りドラム44の開閉用ワイヤ34を巻取る方向の回転は許容され、開閉用ワイヤ34を繰り出す方向の回転は規制(ロック)されている。
【0031】
また、係合爪46の回転軸46Aからは、板片47が張出している。ケース41外に突出したロック解除ボタン48を押すと、ロック解除ボタン48の押圧突起48Aが板片47を押圧し、係合爪46が回転軸46A回りに回転して巻取りドラム44のラチェットギア44Bから離間する方向に回転する。
【0032】
さらに、板片47には、インナーケーブルとアウターケーブルとで構成されたロック解除用ワイヤ35の一端が固定されている。一方、ロック解除用ワイヤ35のインナーケーブルの他端は、非常用レバー21の回転中心に設けられた図示しない円板に巻掛けられている。非常用レバー21を手前に引くと、円板が回転してロック解除用ワイヤ35が引っ張られ、係合爪46が巻取りドラム44のラチェットギア44Bから離間する方向に回転する。
【0033】
次に、第1実施形態に係る外装パネル20の作用及び効果について説明する。
【0034】
図1(A)、
図5(A)に示すように、外装パネル20は、可動パネル24の上側可動パネル24Aと下側可動パネル24Bとが当接し、固定パネル22間の開口29が閉鎖された閉鎖状態とされている。このとき、オペレーション40の巻取りドラム44は、係合爪46がラチェットギア44Bに係合しているため、開閉用ワイヤ34を繰り出す方向の回転が規制(ロック)されている。
【0035】
外装パネル20を開放状態にする場合には、まず、非常用レバー21を手前に引く、又はオペレーション40のロック解除ボタン48を押すことによって、ロック解除用ワイヤ35又は押圧突起48Aにより係合爪46を巻取りドラム44のラチェットギア44Bから離間する方向に回転させる。係合爪46が巻取りドラム44のラチェットギア44Bから離間すると、巻取りドラム44の回転が許容され、巻回されていた開閉用ワイヤ34が繰り出し可能となる。
【0036】
下側可動パネル24Bは重り28によって上側可動パネル24Aより重くされているため、開閉用ワイヤ34が繰り出し可能となると、下側可動パネル24Bは自重によって下方向へ移動する。また、下側可動パネル24Bと連動用ワイヤ27によって連結されている上側可動パネル24Aも連動して上方向へ移動する。
【0037】
下側可動パネル24Bの下方向への移動に伴って、開閉用ワイヤ34が巻取りドラム44から繰り出されるが、巻取りドラム44の内部に設けられたワンウェイダンパ43によって開閉用ワイヤ34の繰り出し速度が制限される。したがって、適度な速度で上側可動パネル24A及び下側可動パネル24Bを移動させることができる。
【0038】
上側可動パネル24A及び下側可動パネル24Bが、
図1(B)、
図5(B)に示すように、それぞれ固定パネル22の裏側に収納される位置まで移動すると、ローラ25がストッパ19に当接して上側可動パネル24A及び下側可動パネル24Bの移動が停止し、外装パネル20が開放状態となる。
【0039】
その後、外装パネル20を閉鎖状態にする場合には、巻取りドラム44の軸44Aにハンドル42を取り付け、オペレーション40のケース41外側からハンドル42を手動で回転させる。ハンドル42が回転すると、ハンドル42の嵌合部42Aが嵌合している巻取りドラム44の軸44Aが回転し、巻取りドラム44が開閉用ワイヤ34を巻取る方向に回転する。
【0040】
開閉用ワイヤ34が巻取られると、パネル側動滑車30の下側部分に巻掛けられた開閉用ワイヤ34が上方向に引っ張られ、開閉用ワイヤ34の巻取りに伴って下側可動パネル24Bが上方向へ移動する。このとき、下側可動パネル24Bと連動用ワイヤ27によって連結されている上側可動パネル24Aも連動して下方向へ移動する。
【0041】
パネル側動滑車30が第1枠滑車32と第2枠滑車33との間まで移動すると、ローラ25がストッパ19に当接して上側可動パネル24A及び下側可動パネル24Bの移動が停止し、外装パネル20が閉鎖状態となる。このとき、係合爪46がラチェットギア44Bに係合して、巻取りドラム44の開閉用ワイヤ34を繰り出す方向の回転が規制(ロック)される。したがって、可動パネル24が移動することはない。
【0042】
第1実施形態に係る外装パネル20によると、可動パネル24を上下方向へ移動させることによって外装パネル20を開閉させるため、開放状態のときに可動パネル24が外側へ突出することがない。つまり、可動パネル24が敷地越境する虞が無いため、狭い敷地であっても外装パネル20を設置することができる。
【0043】
また、居室空間11内からオペレーション40によって外装パネル20を開閉させることができるため、操作性が良好である。さらに、非常時には外側から非常用レバー21を手前に引くことによって巻取りドラム44のロック状態を解除して可動パネルを開放することができるため、非常用進入口を確保することができる。
【0044】
また、下側可動パネル24Bを自重で下方向に移動させ、上側可動パネル24Aを下側可動パネル24Bと連動させて上方向へ移動させる。したがって、可動パネルの開閉を短時間で行うことができ、開閉操作することで上側可動パネルと下側可動パネルを同時に開閉させることができる。
【0045】
さらに、外装パネル20の閉鎖状態では、可動パネル24が固定パネル22間の開口29全面を閉鎖させるため、意匠性と遮光効果を両立させることができる。また、開放状態では、可動パネル24が固定パネル22の裏側へ収納されて固定パネル22間の開口29全面が開放されるため、可動パネル24が居室空間11からの眺望の邪魔となる虞がない。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る外装パネル50の一例について、
図6に従って説明する。なお、建物10やオペレーション40等の構成は第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付与して説明を省略する。
【0047】
図6に示すように、外装パネル50は固定パネル52と可動パネル54とから構成されている。固定パネル52は、第1実施形態の固定パネル22と同様の構成となっている。一方、可動パネル54は、1枚の矩形状の板部材から成り、固定パネル52間の開口を閉鎖可能な大きさとされている。
【0048】
第1実施形態と同様に、可動パネル54の下端部にはパネル側動滑車30が設けられており、建物10には、転向滑車31、第1枠滑車32、第2枠滑車33が配列されている。また、パネル側動滑車30、転向滑車31、第1枠滑車32、第2枠滑車33には、オペレーション40に連結された開閉用ワイヤ34が巻掛けられている。さらに、固定パネル52の下端部には、ロック解除用ワイヤ35を介してオペレーション40に連結された非常用レバー21が設けられている。
【0049】
図6(A)に示す閉鎖状態の外装パネル50を開放状態にする場合には、第1実施形態と同様に、非常用レバー21を手前に引く、又はオペレーション40のロック解除ボタン48を押すことによって、巻取りドラム44のロック状態を解除する。ロック状態を解除すると可動パネル54が自重によって下方向へ移動する。
【0050】
可動パネル54が、
図6(B)に示すように、固定パネル52の裏側に収納される位置まで移動すると、ローラ25がストッパ19に当接して可動パネル54の移動が停止し、外装パネル50が開放状態となる。
【0051】
その後、外装パネル50を閉鎖状態にする場合には、オペレーション40のハンドル42を手動で回転させ、巻取りドラム44によって開閉用ワイヤ34を巻取る。開閉用ワイヤ34が巻取られるとパネル側動滑車30の下側部分に巻掛けられた開閉用ワイヤ34が上方向に引っ張られ、開閉用ワイヤ34の巻取りに伴って可動パネル54が上方向へ移動する。
【0052】
パネル側動滑車30が第1枠滑車32と第2枠滑車33との間まで移動すると、ローラ25がストッパ19に当接して可動パネル54の移動が停止し、外装パネル50が閉鎖状態となる。
【0053】
第1実施形態の外装パネル20と比べて、第2実施形態の外装パネル50は、可動パネル54が1枚の板部材から成るため、固定パネル52間の開口が狭く、可動パネル54の移動範囲が狭い場合に特に有効である。可動パネル54が1枚の板部材から成るため、連動用滑車や連動用ワイヤ等の巻掛け部材が不要となり、簡易な構成とすることができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る外装パネル60の一例について、
図7に従って説明する。なお、建物10やオペレーション40等の構成は第1実施形態、第2実施形態と同様であるため、同一の符号を付与して説明を省略する。
【0055】
図7に示すように、外装パネル60は固定パネル62、可動パネル64から構成されている。固定パネル62は、第1実施形態、第2実施形態の固定パネル22、52と同様の構成となっている。一方、可動パネル64は、1枚の矩形状の板部材から成り、固定パネル62間の開口を閉鎖可能な大きさとされている。
【0056】
また、可動パネル64の下方の固定パネル62の裏側には、可動パネル64より重い重り66が配置されている。建物10には、連動用チェーン(巻掛け部材の一例)68が巻掛けられた連動用ギア(回転部材の一例)67が設けられており、可動パネル64及び重り66は、連動用チェーン68の一端及び他端にそれぞれ連結されて、互いに連動して移動する。なお、重り66には、ローラ66Aが設けられており、レール13上を摺動可能となっている。
【0057】
重り66の下端部には、支持板65が取り付けられており、支持板65には重り側滑車69が設けられている。一方、建物10には、転向滑車31、第1枠滑車32、第2枠滑車33が配列されている。また、重り側滑車69、転向滑車31、第1枠滑車32、第2枠滑車33には、オペレーション40に連結された開閉用ワイヤ34が巻掛けられている。さらに、固定パネル62の下端部には、ロック解除用ワイヤ35を介してオペレーション40に連結された非常用レバー21が設けられている。
【0058】
図7(A)に示す閉鎖状態の外装パネル60を開放状態にする場合には、第1実施形態、第2実施形態と同様に、非常用レバー21を手前に引く、又はオペレーション40のロック解除ボタン48を押すことによって、巻取りドラム44のロック状態を解除する。
【0059】
ロック状態を解除すると重り66が自重によって下方向へ移動する。このとき、重り66と連動用チェーン68によって連結されている可動パネル64も連動して上方向へ移動する。
【0060】
可動パネル64が、
図7(B)に示すように、固定パネル62の裏側に収納される位置まで移動すると、可動パネル64のローラ25、及び重り66のローラ66Aがそれぞれストッパ19に当接して可動パネル64及び重り66の移動が停止し、外装パネル60が開放状態となる。
【0061】
その後、外装パネル60を閉鎖状態にする場合には、オペレーション40のハンドル42を手動で回転させ、巻取りドラム44によって開閉用ワイヤ34を巻取る。開閉用ワイヤ34が巻取られると、重り側滑車69の下側部分に巻掛けられた開閉用ワイヤ34が上方向に引っ張られ、開閉用ワイヤ34の巻取りに伴って重り66が上方向へ移動する。このとき、重り66と連動用チェーン68によって連結されている可動パネル64も連動して下方向へ移動する。
【0062】
重り側滑車69が第1枠滑車32と第2枠滑車33との間まで移動すると、可動パネル64のローラ25、及び重り66のローラ66Aがそれぞれストッパ19に当接して可動パネル64及び重り66の移動が停止し、外装パネル60が閉鎖状態となる。
【0063】
第3実施形態に係る外装パネル60によると、可動パネル64と重り66とを連動させて移動させるため、非常用レバー21を手前に引く、又はオペレーション40のロック解除ボタン48を押すことによって、可動パネル64を上方向に移動させることができる。
【0064】
(その他の実施形態)
なお、本発明について実施形態の一例を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。
【0065】
例えば、第1実施形態〜第3実施形態の外装パネル20、50、60は、非常用レバー21によって開放可能であったが、非常時に開放する必要のない低層階の外装パネル20、50、60であれば、非常用レバー21は設けられていなくてもよい。
【0066】
巻取りドラム44のロック機構の解除部材として非常用レバー21を用いていたが、ボタンやハンドル等の構成が用いられていてもよい。また、巻掛け伝動機構として、連動用ワイヤ27や連動用チェーン68を用いていたが、ベルトやロープ等の構成が用いられていてもよい。
【0067】
また、オペレーション40は、ハンドル42や、巻取りドラム44、係合爪46を備える構成とされていたが、可動パネル24、54、64を上下移動させることのできる構成であれば、どのような構成でも構わない。もちろん、巻取りドラム44のロック機構として係合爪46以外の構成が用いられていてもよい。