特許第6346503号(P6346503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346503
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】インサート成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20180611BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20180611BHJP
   B29K 105/20 20060101ALN20180611BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C33/12
   B29K105:20
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-128514(P2014-128514)
(22)【出願日】2014年6月23日
(65)【公開番号】特開2016-7734(P2016-7734A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】504005448
【氏名又は名称】有限会社吉井電子工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 一成
【審査官】 深草 祐一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−000661(JP,A)
【文献】 特開平10−258442(JP,A)
【文献】 特開2008−093957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76,39/26−39/36,41/38−41/44,43/36−43/42,43/50,45/00−45/84,49/48−49/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の板材の一部を直角に曲げた形状のインサート部材を金型内に設置し、溶融させた樹脂材を前記金型内に射出して前記インサート部材をインサート成形するインサート成形品の製造方法であって、
前記金型内に設置された前記インサート部材を、互いに対向する水平方向に進退可能に取り付けられた一対の押えピンにて前記インサート部材の上下方向に沿った部分を水平方向に挟んで位置決めするとともに、前記一対の押えピンとは異なり、互いに対向する上下方向に進退可能に取り付けられた一対の押えピンにて前記インサート部材の水平方向に沿った部分を上下方向に挟んで位置決めする型締め工程と、
前記金型内に前記樹脂材を射出する射出工程と、
前記金型内が前記樹脂材にて満たされ、かつこの樹脂材が硬化する前の状態で、前記各押えピンの先端面が前記金型の内面に沿う位置まで前記押えピンのそれぞれを後退させて前記インサート部材の位置決めを解除し、このインサート部材と前記金型との間に前記樹脂材を流し込むための隙間を形成させるピン移動工程と、
前記樹脂材が硬化した状態で型開きして前記インサート部材がインサート成形された前記インサート成形品を取り出す取り出し工程と、
を備えたことを特徴とするインサート成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項記載のインサート成形品の製造方法において、
前記ピン移動工程は、前記金型の端部側に位置する前記押えピンを後退させてから、前記金型の中央側に位置する前記押えピンを後退させる
ことを特徴とするインサート成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチの極盤等のインサート成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインサート成形品の製造方法としては、例えば下記特許文献1に記載のように、上型および下型に取り付けた各押えピンにて金型内の導電プレートを上下方向に挟持して位置決めし、金型内に射出した絶縁性樹脂が硬化する前に押えピンを後退させ、押えピンとの隙間に絶縁性樹脂を充填させて、押えピンの後退時も絶縁性樹脂の圧力にて導電プレートを位置決めする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−65176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1によれば、金型内の導電プレートを上下方向に挟持、すなわち一方向のみ挟持して位置決めする構成である。このため、例えば、高圧の絶縁性樹脂を金型内に充填する際に、金型内で導電プレートが、押えピンの挟持方向に直交する方向、すなわち水平方向にずれてしまうおそれがある。この結果、インサート部材を絶縁性樹脂でシールドしたインサート成形品においては、シールドした絶縁性樹脂の厚さが部分的に異なってしまったり、ひいてはインサート部材が部分的に絶縁性樹脂から露出してしまったりといった問題に発展し、高い防水性および絶縁性が求められるスイッチの極盤等のインサート成形品においては、製品として成立しなくなるほどの致命傷な欠陥となってしまう。
【0005】
そこで本発明は、従来技術における上記問題を解決し、インサート部材の必要箇所を樹脂材にて精度よく確実にシールドでき、防水性および絶縁性を確実に確保できるインサート成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、請求項1にかかる本発明は、平板状の板材の一部を直角に曲げた形状のインサート部材を金型内に設置し、溶融させた樹脂材を前記金型内に射出して前記インサート部材をインサート成形するインサート成形品の製造方法であって、前記金型内に設置された前記インサート部材を、互いに対向する水平方向に進退可能に取り付けられた一対の押えピンにて前記インサート部材の上下方向に沿った部分を水平方向に挟んで位置決めするとともに、前記一対の押えピンとは異なり、互いに対向する上下方向に進退可能に取り付けられた一対の押えピンにて前記インサート部材の水平方向に沿った部分を上下方向に挟んで位置決めする型締め工程と、前記金型内に前記樹脂材を射出する射出工程と、前記金型内が前記樹脂材にて満たされ、かつこの樹脂材が硬化する前の状態で、前記各押えピンの先端面が前記金型の内面に沿う位置まで前記押えピンのそれぞれを後退させて前記インサート部材の位置決めを解除し、このインサート部材と前記金型との間に前記樹脂材を流し込むための隙間を形成させるピン移動工程と、前記樹脂材が硬化した状態で型開きして前記インサート部材がインサート成形された前記インサート成形品を取り出す取り出し工程と、を備えたインサート成形品の製造方法である。
【0007】
請求項は、請求項記載のインサート成形品の製造方法において、前記ピン移動工程は、前記金型の端部側に位置する前記押えピンを後退させてから、前記金型の中央側に位置する前記押えピンを後退させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金型内に設置されたインサート部材を第1の方向、および第1の方向に交わる第2の方向のそれぞれにおいて押えピンにて押えて位置決めしているため、金型内においてインサート部材を押えピンにて三次元的に位置決めすることができる。よって、これら押えピンにてインサート部材を金型内で位置決めした状態で樹脂材を射出した際に、この樹脂材の圧力にてインサート部材が押され、金型内で移動してしまうことを防止できる。したがって、インサート成形品において樹脂材の厚さが部分的に異なったり、インサート部材が部分的に樹脂材から露出したりする可能性を低減できる。この結果、インサート部材の必要箇所を樹脂材にて精度よく確実にシールドでき、インサート成形品の防水性および絶縁性を確実に確保できる。
【0009】
また、金型内に設置されたインサート部材を上下方向と水平方向とにおいて押えピンにて押えて位置決めするため、金型の開閉を考慮した、インサート部材の三次元的な位置決めをより容易に実現できるとともに、互いに直交する上下方向と水平方向とにおいてインサート部材を押えピンにて押えて位置決めするため、インサート部材の三次元的な位置決めをより精度良く確実にできる。
【0010】
さらに、金型内のインサート部材を一対の押えピンにて水平方向に挟んで位置決めするとともに、このインサート部材を異なる一対の押えピンにて上下方向に挟んで位置決めすることにより、金型内におけるインサート部材の三次元的な位置決めを、直交する方向から押えピンにて行うことができる。よって、このインサート部材の金型内での位置決めをより確実にでき、インサート成形品の樹脂材の厚さが部分的に異なったり、インサート部材が部分的に樹脂材から露出したりする可能性をより精度良く低減できる。
【0011】
また、平板状の板材の一部を直角に曲げた形状のインサート部材であっても、このインサート部材の上下方向に沿った部分を一対の押えピンにて水平方向に挟んで位置決めできるとともに、このインサート部材の水平方向に沿った部分を、他の一対の押えピンにて上下方向に挟んで位置決めできる。よって、平板状の板材の一部を直角に曲げた形状のインサート部材においても、金型内での位置決めをより確実にでき、インサート成形品の樹脂材の厚さが部分的に異なったり、インサート部材が部分的に樹脂材から露出したりする可能性をより精度良く低減できる。
【0012】
一般に、金型内においては、金型の中央側に位置する押えピンによるインサート部材の位置決め精度は、金型の端部側に位置する押えピンによるインサート部材の位置決め精度より高い。そこで、金型内が樹脂材にて満たされ、かつこの樹脂材が硬化する前の状態で、金型の端部側に位置する押えピンを後退させてから、金型の中央側に位置する押えピンを後退させることにより、金型の端部側に位置する押えピンを後退させる際における、インサート部材のずれを、金型の中央側に位置する押えピンにて防止することができる。よって、押えピンにてインサート部材を位置決めした状態で樹脂材を射出した際に、この樹脂材の圧力にてインサート部材が押され、金型内で移動してしまうことをより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態によるインサート成形品の製造方法に用いられる金型の型締め状態を示す概略図である。
図2】上記金型を開いた状態の下型を示す概略図である。
図3図1の型締め状態で樹脂材を射出した状態を示す概略図である。
図4図3の樹脂材を射出した状態で端部側の押えピンを後退させた状態を示す概略図である。
図5図4の樹脂材を射出した状態で中央側の押えピンを後退させた状態を示す概略図である。
図6】上記金型で製造されたインサート成形品を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係るインサート成形品の製造方法について図1ないし図6を参照して説明する。
【0015】
<全体構成>
このインサート成形品Aの製造方法に用いられる製造装置1は、2プレートタイプのインサート成形装置であって、インサート成形品Aにインサート成形されるインサート部材(ターミナル)としての導電プレートBの高度な防水性能および絶縁性能を確保することを目的としたものである。導電プレートBは、例えば銅等の導電性を有する金属材料等にて形成された導電板であって、例えばスイッチの極盤・ターミナルや固定接点等の役目を果たす部分となる。具体的に、導電プレートBは、インサート成形品Aにインサート成形された後においては、図6に示すように、導電プレートBの長手方向の先端部を除く部分が絶縁性樹脂Cにてシールドされ、防水性および絶縁性が確保された構造となる。
【0016】
<導電プレート>
導電プレートBは、図6に示すように、細長矩形平板状の板材の長手方向の一端部B1を、この一端部B1よりも中央に位置する本体部B2に対し幅方向に沿って直角に屈曲させた形状とされている。また、導電プレートBは、板材の長手方向の他端部B3を、一端部B1とは相対する反対側に向けて幅方向に沿って直角に屈曲させた形状とされている。よって、導電プレートBは、矩形平板状の本体部B2の長手方向の両端部B1,B3が、相対する方向に向けて屈曲した側面視略S字状とされている。
【0017】
<製造装置>
製造装置1は、上型2と下型3とで構成された金型4を備えている。製造装置1は、金型4の上型2と下型3との間の樹脂充填領域である成形部としての成形空間5に導電プレートBを設置して載置してから、これら上型2と下型3とを型締めした状態で、これら上型2と下型3との間の成形空間5に樹脂材である絶縁性樹脂Cを射出して注入することにより、導電プレートBがインサート成形されたインサート成形品Aが製造される。金型4は、この金型4の上側の約2分の1を構成する上型2と、この金型4の下側の約2分の1を構成する下型3とからなる。
【0018】
<上型>
上型2の下面であるパーティングラインとしての成形面2aには、下方に開口した断面略凹状の成形領域となる上型空間21が設けられている。上空間21は、導電プレートBの一端部B1を覆う部分となる上側水平部21aと、導電プレートBの本体部B2を覆う部分となる垂直部21bと、導電プレートBの他端部Bを覆う部分となる下側水平部21cとで構成されている。上側水平部21aの長手方向の他端側が垂直部21bの上端側に接続され、垂直部21b下端側に下側水平部21cの長手方向の一端側が接続されている。
【0019】
上側水平部21aの長手方向の一端側には、導電プレートBの一端部B1の先端部の厚さ方向における上側の約2分の1の部分を嵌合して位置決めするための嵌合凹部21dが設けられている。そして、下側水平部21cの長手方向の他端側にもまた、導電プレートBの他端部B3の先端部の厚さ方向における上側の約2分の1の部分を嵌合して位置決めするための嵌合凹部21eが設けられている。
【0020】
上側水平部21a、垂直部21bおよび下側水平部21cそれぞれの底部21fには、これら上側水平部21a、垂直部21bおよび下側水平部21cの底部21fに対して垂直に外部に向けて貫通したピン挿通孔22a〜22cが穿設されている。ピン挿通孔22aは、第1の方向である鉛直方向としての上下方向に沿って設けられ、上側水平部21aに所定の間隔を開けて、複数、例えば2本ほど設けられている。ピン挿通孔22bは、第1の方向に交わる第2の方向としての水平方向に沿って設けられ、垂直部21bに所定の間隔を開けて、複数、例えば3本ほど設けられている。ピン挿通孔22cは、上下方向に沿って設けられ、下側水平部21cに所定の間隔を開けて、複数、例えば2本ほど設けられている。なお、これらピン挿通孔22aとピン挿通孔22b、およびピン挿通孔22bとピン挿通孔22cは、互いに重なり合わないように、上型2の幅方向(奥行き方向)にずらした位置に設けられている。
【0021】
上側水平部21aの長手方向の他端側には、金型4の成形空間5内に絶縁性樹脂Cを注入するための導入口としての樹脂注入口であるゲート23が設けられている。ゲート23は、上下方向に沿って設けられ、上型2を貫通して上側水平部21aに貫通し、このゲート23へ射出される絶縁性樹脂Cを成形空間5へ導入させる。
【0022】
各ピン挿通孔22a〜22cには、細長円柱状の押えピン24a〜24cの先端側が挿入され進退可能に取り付けられている。各押えピン24a〜24cは、各ピン挿通孔22a〜22cの軸方向に沿って進退可能とされている。各押えピン24a〜24cの先端には、軸方向に直交する平坦な押え面25が形成されている。これら押え面25は、金型4内に収容された導電プレートBの上側を押えて位置決めする部分であるとともに、各押えピン24a〜24cを後退移動させて上型2の底部21fに沿わせた際に、対応するピン挿通孔22a〜22cを塞ぎつつ上型2の底部21fを構成する部分である。
【0023】
各押えピン24a〜24cの上型2から突出している基端側には、これら各押えピン24a〜24cを進退移動させるためのアクチュエータ(図示せず)が取り付けられている。これらアクチュエータは、例えば油圧シリンダやエアシリンダ等であり、対応する押えピン24a〜24cをピン挿通孔22a〜22cに沿って進退移動させる。
【0024】
<下型>
下型3は、上型2を上下方向に反転させた同様の構成とされており、下型3の上面であるパーティングラインとしての成形面3aに形成された断面略凹状の成形領域となる下型空間31を、上型2の上型空間21に対向させて取り付けられている。下型空間31は、上型空間21と同様に、導電プレートBの一端部B1を覆う部分となる上側水平部31aと、導電プレートBの本体部B2を覆う部分となる垂直部31bと、導電プレートBの他端部B3を覆う部分となる下側水平部31cとで構成されている。
【0025】
上側水平部31aの長手方向の一端側、および下側水平部31cの長手方向の他端側にもまた、導電プレートBの一端部B1または他端部B3の先端部の厚さ方向における下側の約2分の1の部分を嵌合して位置決めするための嵌合凹部31d,31eが設けられている。
【0026】
上側水平部31a、垂直部31bおよび下側水平部31cそれぞれの底部31fには、これら上側水平部31a、垂直部31bおよび下側水平部31cに対して垂直に外部に向けて貫通したピン挿通孔32a〜32cが穿設されている。各ピン挿通孔32a〜32cには、細長円柱状の押えピン34a〜34cの先端側が挿入されて進退可能に取り付けられている。各押えピン34a〜34cは、上型2の各ピン挿通孔22a〜22cに取り付けられた各押えピン24a〜24cに等しい外径寸法とされ、下型3の下空間31に上型2の上型空間21を向かい合わせて型締めした状態で、対応する押えピン24a〜24cに対し同心状に対向する位置に取り付けられている。また、各押えピン34a〜34cの先端には、軸方向に直交する平坦な押え面35が形成されている。これら押え面35は、金型4内に収容された導電プレートBの下側を押えて位置決めする部分であるとともに、各押えピン34a〜34cを後退移動させて下型3の底部31fに沿わせた際に、各ピン挿通孔32a〜32cを塞ぎつつ下型3の底部31fを構成する部分である。
【0027】
各押えピン34a〜34cの下型3から突出している基端側には、これら各押えピン34a〜34cを進退移動させるためのアクチュエータ(図示せず)が取り付けられている。これらアクチュエータは、例えば油圧シリンダやエアシリンダ等であり、対応する押えピン34a〜34cをピン挿通孔32a〜32cに沿って進退移動させる。
【0028】
<製造方法>
次に、上記製造装置1を用いたインサート成形品Aの製造方法について説明する。
【0029】
<設置工程>
まず、金型4を型開きし、型開きした下型3の上側水平部31aの嵌合凹部31dに、導電プレートBの一端部B1の先端部を嵌合させつつ、この導電プレートBの他端部B3の先端部を、下型3の下側水平部31cの嵌合凹部31eに嵌合させて、下型3に位置決めさせてセットする。
【0030】
この状態で、対応するアクチュエータを駆動させて、図2に示すように、下型3の各ピン挿通孔32a〜32cから押えピン34a〜34cの押え面35のそれぞれを、導電プレートBの下側に接触して位置決めする位置まで、下型3の下型空間31の底31よりも下型空間31内へ所定距離ほど突出させる。
【0031】
このとき、導電プレートBの一端部B1の下面が、下型3の上側水平部31aへ突出している押えピン34a上に載置されて位置決めされ、導電プレートBの本体部B2の左側面が、下型3の垂直部31bへ突出している押えピン34bにて支持される。さらに、導電プレートの他端部B3の下面が、下型3の下側水平部31cへ突出している押えピン34c上に載置されて位置決めされる。
【0032】
<型締め工程>
この状態で、これら下型3および上型2を近づく方向に相対的に移動させて、これら下型3の成形面3aと上型2の成形面2aとを接触させて型締めする。このとき、下型3にセットされている導電プレートBの一端部B1の先端部の上側の約2分の1の部分が上型2の上側水平部21aの嵌合凹部21dに嵌合されるとともに、導電プレートBの他端部B3の先端部の上側の約2分の1の部分が上型2の下側水平部21cの嵌合凹部21eに嵌合され、上型2の嵌合凹部21e,21dと下型3の嵌合凹部31d,31eと間に導電プレートBの一端部B1および他端部B3それぞれの先端部が挟持されて位置決め固定される。
【0033】
次いで、対応するアクチュエータを駆動させて、導電プレートBの上側を位置決めする所定位置まで、上型2の各ピン挿通孔22a〜22cから上型空間21内へ各押えピン24a〜24cを突出させる。
【0034】
この結果、図1に示すように、上型2の上側水平部21aへ突出している押えピン24aによって、導電プレートBの一端部B1の上面が位置決めされ、上型2の垂直部21bへ突出している押えピン24bによって、導電プレートBの本体部B2の右側面が位置決めされる。さらに、上型2の下側水平部21へ突出している押えピン24cによって、導電プレートBの他端部B3の上面が位置決めされ、上型2の押えピン24a〜24cと下型3の押えピン34a〜34cと間に、導電プレートBが上下方向および水平方向のそれぞれにおいて位置決め保持された状態となる。
【0035】
<射出工程>
この後、溶融させた液状の絶縁性樹脂Cを上型2のゲート23から金型4内へ徐々に注入していき、図3に示すように、この絶縁性樹脂Cを金型4内の成形空間5に射出して自充填する。このとき、絶縁性樹脂Cは、各押えピン24a〜24c,34a〜34cが位置する部分を除いた成形空間5内を満たしていき、これら各押えピン24a〜24c,34a〜34cの周囲を覆っていき、この成形空間5内への絶縁性樹脂Cの充填が完了する。
【0036】
<第1のピン移動工程>
そして、絶縁性樹脂Cが金型4内の成形空間5に射出され、成形空間5が絶縁性樹脂Cにて満たされた後、対応するアクチュエータを駆動させ、図4に示すように、上型2および下型3の各上側水平部21a,31a、垂直部21b,31bおよび下側水平部21c,31cそれぞれにおける端部側に位置する各押えピン24a〜24c,34a〜34cの押え面25,35が上型2および下型3の底部21f,31fに沿う位置、すなわち面一な位置となるまで、これら各押えピン24a〜24c,34a〜34cを後退移動させる。
【0037】
<第2のピン移動工程>
さらに、各上側水平部21a,31a、垂直部21b,31bおよび下側水平部21c,31cそれぞれにおける端部側に位置する各押えピン24a〜24c,34a〜34cの後退移動が完了した後、対応するアクチュエータを駆動させ、図5に示すように、上型2および下型3の各上側水平部21a,31a、垂直部21b,31bおよび下側水平部21c,31cそれぞれにおける中央側に位置する各押えピン24a〜24c,34a〜34cの押え面25,35が上型2および下型3の底部21f,31fに沿う位置、すなわち面一な位置となるまで、これら各押えピン24a〜24c,34a〜34cを後退移動させる。
【0038】
上記第1および第2のピン移動工程において、各押えピン24a〜24c,34a〜34cは、絶縁性樹脂Cが硬化(液体から個体に状態変化)する前の状態、すなわち後退させた押えピン24a〜24c,34a〜34cと導電プレートBとの間の隙間に絶縁性樹脂Cを廻し充填可能な状態で、後退移動される。そして、これら押えピン24a〜24c,34a〜34cを後退させる速度としては、これら押えピン24a〜24c,34a〜34cによる導電プレートBの位置決めが解除され、これら押えピン24a〜24c,34a〜34cを後退移動させる際に、導電プレートBと押えピン24a〜24c,34a〜34cとの間に絶縁性樹脂Cが廻って流れ込むことによって、この導電プレートBが金型4の成形空間5内の所定位置からずれない程度に調整されている。
【0039】
金型4の成形空間5に射出された絶縁性樹脂Cは、押えピン24a〜24c,34a〜34cが後退していく動作とともに、これら押えピン24a〜24c,34a〜34cが位置していた空間に充填していき、各押えピン24a〜24c,34a〜34cの押え面25,35と導電プレートBとの間の隙間に充填される。金型4の成形空間5においては、絶縁性樹脂Cが充填されていることから、成形空間5での絶縁性樹脂Cによる圧力(加圧)によって導電プレートBが位置決め保持されており、各押えピン24a〜24c,34a〜34cを後退させる際においても、導電プレートBが絶縁性樹脂Cの圧力によって位置決め保持されている。
【0040】
<取り出し工程>
金型4の成形空間5に射出された絶縁性樹脂Cが硬化(固化)した後の状態で、金型4の上型2と下型3とを引き離すように相対的に移動させて型開きし、図6に示すように、導電プレートBの一端部B1および他端部Bの先端部を除く部分が絶縁性樹脂Cにてシールドされて被覆されたインサート成形品Aを、金型4の成形空間5内から取り出す。このとき、インサート成形品Aを金型4の成形空間5から取り出す際においては、このインサート成形品Aとともに、ゲート23内に残った絶縁性樹脂Cも取り外す。
【0041】
<効果>
前述のように、金型4内に設置された側面視略S字状の立体的な形状の導電プレートBの両端部B1,B3を、上型2および下型3それぞれの上側水平部21a,31aおよび下側水平部21c,31cに取り付けられた各押えピン24a,24c,34a,34cにて、対向する上下方向から挟持して位置決めするとともに、この導電プレートBの本体部B2を、上型2および下型3それぞれの垂直部21b,31bに取り付けられた各押えピン24b,34bにて対向する水平方向から挟持して位置決めする構成としている。
【0042】
この結果、金型4の上型2および下型間の成形空間5に設置される導電プレートBを、これら上型2および下型3の各押えピン24a〜24c,34a〜34cにて、上下方向および水平方向に亘った三次元的な位置決めを行うことができる。よって、これら押えピン24a〜24c,34a〜34cにて導電プレートBを金型4内に位置決めした状態で、金型4の成形空間5に絶縁性樹脂Cを射出した際に、この絶縁性樹脂Cの射出圧等の圧力にて導電プレートBが押される等し、この導電プレートBが成形空間5内で移動してしまうことを三次元的な方向から防止することができる。
【0043】
したがって、両端部B1,B3が屈曲した立体的な形状の導電プレートBであっても、金型4内での導電プレートBの位置決め固定を確実に行うことができ、この導電プレートBの成形空間5内での絶縁性樹脂Cの射出時のずれを確実に防止することができる。よって、成形されたインサート成形品Aにおいて絶縁性樹脂Cの厚さが部分的に異なったり、導電プレートBが不必要な箇所で部分的に絶縁性樹脂Cから露出したりする可能性を大幅に無くすことができる。この結果、導電プレートBの両端部B1,B3の各先端部を除く必要箇所を絶縁性樹脂Cにて精度よく確実にシールドすることができ、インサート成形品Aの防水性および絶縁性を確実に確保できる。よって、インサート成形品Aに対し、より高度な防水性能をおよび高絶縁性を施すことができ、インサート成形品Aの使用用途の限定を少なくできる。
【0044】
特に、金型4内に設置された導電プレートBを水平方向と上下方向との直交する二方向において各押えピン24a〜24c,34a〜34cにて挟んで位置決めする構成としているため、上下方向に開く上型2および下型3にて構成された金型4の開閉方向を考慮した、導電プレートBの三次元的な位置決めをより容易な構成で確実に実現することができる。また同時に、互いに直交する水平方向と上下方向との二方向において導電プレートBを各押えピン24a〜24c,34a〜34cにて挟持して位置決めするため、導電プレートBの三次元的な位置決めを精度良く確実にできる。
【0045】
さらに、一般に、金型4内においては、金型4の中央側に位置する押えピン24a〜24c,34a〜34cによる導電プレートBの位置決め精度は、金型4の端部側に位置する押えピン24a〜24c,34a〜34cによる導電プレートBの位置決め精度より高い。そこで、金型4の成形空間5が絶縁性樹脂Cにて満たされた状態であって、この絶縁性樹脂Cが硬化する前の状態で、図4に示すように、金型4の端部側に位置する押えピン24a〜24c,34a〜34cのみを後退させてから、図5に示すように、金型4の中央側に位置する押えピン24a〜24c,34a〜34cを後退させる二段階のピン移動工程とする構成とした。
【0046】
この結果、金型4の端部側に位置する押えピン24a〜24c,34a〜34cを後退させる際における、導電プレートBのずれを、金型4の中央側に位置する押えピン24a〜24c,34a〜34cにて確実に精度良く防止することができる。よって、各押えピン24a〜24c,34a〜34cにて導電プレートBを立体的に位置決めした状態で絶縁性樹脂Cを射出した際に、この絶縁性樹脂Cの射出圧等の圧力にて導電プレートBが押される等し、金型4の成形空間5での導電プレートBの移動をより確実に防止することができる。
【0047】
さらに、絶縁性樹脂Cを金型4の成形空間5に射出した後においては、絶縁性樹脂Cが硬化する前の状態で、各押えピン24a〜24c,34a〜34cの押え面25,35が上型2または下型3の底部21f,31fと面一になる位置まで後退させる。このため、これら後退させた各押えピン24a〜24c,34a〜34cの押え面25,35と導電プレートBとの間の隙間(空間)に絶縁性樹脂Cを廻らせて充填することができる。
【0048】
また、各押えピン24a〜24c,34a〜34cにて導電プレートBを位置決めしている状態で、金型4の成形空間5に絶縁性樹脂Cを充填しているため、成形空間5に充填された絶縁性樹脂Cが有する圧力によって導電プレートBが位置決め保持される。このため、各押えピン24a〜24c,34a〜34cを後退させる際においても、導電プレートBを絶縁性樹脂Cが有する圧力にて位置決め保持できる。
【0049】
[その他]
上記一実施形態では、金型4内に設置された導電プレートBを、各押えピン24a〜24c,34a〜34cにて上下方向および水平方向の直交する二方向から三次元的に位置決めした。しかしながら、導電プレートBを三次元的に位置決めすることができる構成であれば、上下方向および水平方向とは異なる方向であっても、交差する二方向のそれぞれから押えピンにて導電プレートを挟んで位置決めすることにより、上記一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0050】
さらに、金型4の成形空間5に絶縁性樹脂Cを充填した状態で、図4に示すように、金型4の端部側に位置する押えピン24a〜24c,34a〜34cのみを後退させてから、図5に示すように、金型4の中央側に位置する押えピン24a〜24c,34a〜34cを後退させる二段階のピン移動工程としたが、金型の成形空間5に充填した絶縁性樹脂Cが有する圧力にて、成形空間5内の導電プレートBが確実に位置決め保持される場合は、図3に示す状態から図5に示す状態となるように、押えピン24a〜24c,34a〜34cのすべてを一度、すなわち同時に後退させてもよい。また、必要に応じ、押えピン24a〜24c,34a〜34cを二段階以上の複数回に亘って時間差を設けて後退させてもよい。
【0051】
また、金型4内に設置した導電プレートBを押えピン24a〜24c,34a〜34cにて押えて位置決めした状態で絶縁性樹脂Cを金型4内に射出してから押えピン24a〜24c,34a〜34cを後退させる方法としたが、金型4内に設置した導電プレートBを押えピン24a〜24c,34a〜34cにて位置決めした状態で、この導電プレートBの一部を切断してから絶縁性樹脂Cを射出した後に各押えピン24a〜24c,34a〜34cを後退させる方法ともできる。
【0052】
さらに、インサート部材として導電性を有する導電プレートBを用いたが、本発明に用いるインサート部材としては、絶縁性を有する部材であっても良い。また、インサートする導電プレートBの形状に対応させた金型4とすることにより、導電プレートBの形状は三次元的な立体形状であれば、どのような形状であってもよい。さらに、金型4内に射出する樹脂材としては、絶縁性を有する樹脂材、すなわち絶縁性樹脂Cのほか、導電性を有する樹脂材等であっても用いることができる。
【0053】
また、金型4の上型2および下型3のいずれか一方を移動型とし、これら上型2および下型3のいずれか他方を固定型としたり、これら上型2および下型3のそれぞれを移動型としたりもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 製造装置
2 上型
2a 成形面
3 下型
3a 成形面
4 金型
5 成形空間
21 上型空間
21a 上側水平部
21b 垂直部
21c 下側水平部
21d,21e 嵌合凹部
21f 底部
22a〜22c ピン挿通孔
23 ゲート
24a〜24c 押えピン
25 押え面
31 下型空間
31a 上側水平部
31b 垂直部
31c 下側水平部
31d,31e 嵌合凹部
31f 底部
32a〜32c ピン挿通孔
34a〜34c 押えピン
35 押え面
A インサート成形品
B 導電プレート(インサート部材)
B1 一端部
B2 本体部
B3 他端部
C 絶縁性樹脂(樹脂材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6