(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で開示するのは、過渡的な電気的事象に対する集積回路(IC)の応答性を改善するための方法および装置である。方法および装置の実施形態は、自動車用センサ用途において特に有用である。一般に、本明細書で開示する実施形態は、感知部品の保護の改善、および特有の過渡事象の結果として生じる回復時間の削減を提供する。
【0018】
本明細書において言及するように、「過渡事象」は、供給された電圧に乱れを引き起こし得る直接的な容量結合(DCC)電気パルスを含むことができる。本明細書において提供する実施例では、電圧は圧力センサに供給される。一般に、供給される電圧は、約+85Vから約−85Vの間の範囲に及ぶ。しかし、過渡事象は、一般に、センサのための電気的入力信号の乱れと特徴付けることができる。従って、本明細書において開示する実施形態は、+85Vまたは−85Vの過渡事象に対する応答性の管理に限定されず、その他の過渡事象からの影響を最小限にするのに適したものとすることができる。
【0019】
一般に、過渡事象は、自動車のスイッチされる装置またはパルスされる装置から生じ得る。しばしば、特定のセンサのためのワイヤは、燃料噴射器などのその他の構成要素のためにワイヤで束ねられる。それゆえ、過渡事象は、他の近接するシステムの構成または動作によって始まり得る。いくつかの実施例では、過渡事象は、ISO7637、パルス2aによって定義付けられるような「スローな」過渡事象と見なすことができる。
【0020】
実質的な過渡事象を経験する集積回路は、結果として、パワーオンリセット(POR)を経験する。パワーオンリセット(POR)の間、集積回路への電力は継続して印加されるが、集積回路は、正しい動作を保証するためには電力が不十分であると判断する。この結果、集積回路はそれ自身をリセットする。集積回路のリセットは、正しい動作を包括的に保証するように、全てのプロセスを再初期化すること、および起動チェックを実行することを含む。このプロセスの間、センサは入力状態を表す信号を出力しない。その代わりに、センサは、安全な動作を提供するべく障害状態を出力することができる。従って、パワーオンリセット(POR)の間、センサは使用可能なデータを提供しない。
【0021】
ここで
図1を参照すると、センサ10のための電力および制御システムの態様の簡略図が示してある。この実施例では、センサ10は、特定用途向け集積回路11(ASICまたはIC)を含む。IC11は、外部の電力供給12によって電力供給される。外部の電力供給12は、電力を調整される電力供給14に提供する。調整された電力供給14は、電気接地20で接地される。この例において、調整された電力供給14(調整された供給とも称する)は、安定化するキャパシタ15(C
ST)に電力を供給し、また、バッファキャパシタ18(C
BU)にも電力を供給する。回路の誘導特性および抵抗特性をそれぞれ表すように、寄生インダクタンス16(Lp)および寄生抵抗17(Rp)が簡略図に含まれている。IC11は、センサ10からの出力19を提供する。
【0022】
センサ10のその他の構成要素のうちのいくつかが示されていなことを認識すべきである。例えば、トランスデューサなどのセンサ構成要素は示されてはいないが、一般にセンサ10の一部とみなされる。単に本明細書における説明の目的のために、本明細書で説明し、大まかに図示されるセンサ10の態様は、センサ10に電力供給し、センサ10の電力システムを制御するための構成要素を含む。IC11などの、本明細書で述べる制御部品は、複数の目的に応じることができ、センサ10の電力供給を制御することに限定されない。例えば、IC11はさらに、感知部品からデータを受信し、出力19に出力データを提供することもできる。
【0023】
全ての交流(AC)増幅器は、周波数によって変化するゲイン特性および位相特性を有する。周波数が増加すると、ゲインは減少し、位相マージンは減少する。しかし、増幅器の安定にとっては、発振を避けるために、位相マージンの損失の前にゲインが十分に削減されることが重要である。従って、安定化キャパシタ15(C
ST)は、高周波数でゲインの必要な減衰を提供する。優れた安定化キャパシタ15(C
ST)は、(バッファキャパシタ18(C
BU)と比較して)寄生インダクタンスが非常に低く、一般に容量値が小さい。寄生インダクタンスを低く維持するために、安定化キャパシタ15(C
ST)の定格(rating)は、センサ10内の物理的配置と同様に、設計にあたって慎重に検討される。これらの検討を適切に設計することにより、キャパシタのための非常に迅速な応答時間が可能となる。
【0024】
バッファキャパシタ18(C
BU)を提供する際の重要な設計検討は、キャパシタの電荷を蓄積する能力である。優れたバッファキャパシタ18(C
BU)は大きな静電容量を有する。センサ10が自動車用途において使用される場合、問題となっている遷移は、増幅器の安定化を考慮した周波数と比較するとかなり遅い。従って、センサ10の設計は、低寄生インダクタンスの要求によって制約されない。
【0025】
少量の静電容量が、安定化機能(迅速な応答時間)を提供するようにIC11に含まれる。内部の安定化キャパシタ15(C
ST)と並行して外部でバッファキャパシタ18(C
BU)を使用すると、増幅器の利得帯域幅がセンサ10の動作にとって許容できるレベルまで減少する。一般に、寄生インダクタンス16(L
p)および寄生抵抗17(R
p)は、ASIC11とバッファキャパシタ18(C
BU)の間のPCBトレース、はんだ接合、およびワイヤボンドの関数である。
【0026】
図2を参照すると、集積回路11(IC)の例示的な実施形態が示してある。一般に、センサ10によって経験され得る性質の過渡事象は、低周波数の高調波成分を有する。従って、いくつかの低周波数の実施形態のために、集積回路11(IC)の態様が
図2の概略図によって説明され得る。
【0027】
この例では、集積回路11(IC)は、電力供給12から電力を供給される。集積回路11(IC)は、調整された供給14、第1の電気負荷21(S
1)、第2の電気負荷22(S
2)、ならびにバッファキャパシタ18(C
2で示す)およびダイオード23(D
1)、を含む。通常動作においては、調整された供給14の電流出力は、第2の電気負荷22(S
2)によって消費される電流と一致する。負の過渡事象の間、調整された供給14は電力を受け取るのを停止し、それゆえ電流を出力するのを停止する。すると、バッファキャパシタ18(C
2)が必要な電流を供給することとなる。ダイオード23(D
1)により、バッファキャパシタ18(C
2)からの電荷が電力供給12または第1の電気負荷21に入り込まないことが保証される。
【0028】
本設計の態様は、過渡事象に対するセンサの耐性を提供する。特に、設計は、電圧減衰の傾斜の減少を提供する。様々な技術が電圧減衰の傾斜を緩やかにするのに使用することができる。例えば、蓄積された電荷が増加される(バッファキャパシタ18の定格は増加され得る);電荷消費が減少される(不要な負荷回路は選択的にターンオフされ得る);また、ダイオード23(D
1)のような整流器が、レギュレータストレージから電力供給12への電荷の「バックフロー」を避けるように組み込まれ得る。
【0029】
本設計の別の態様は、電力供給12に対する過渡事象の影響を弱めることを要求する。これは、例えば、電力供給12に戻る時間を減少することによって達成することができる。
【0030】
図3は、集積回路11(IC)の調整された供給14の電圧を示すグラフである。グラフは、負電圧の過渡事象に応答する出力を示す。
【0031】
過渡事象の影響を制限するために、追加の設計戦略は、公称電圧(V
nom)を増加させること;パワーオンリセットのための最小電圧(POR
min)を減少させること;かつ、パワーオンリセットのための最大電圧(POR
max)を減少させることを含む。一般に、同等の部分対部分の変動(part-to-part variance)があると仮定すると、パワーオンリセットのための最小電圧(POR
min)を減少させることはまたPOR
maxを減少させる。パワーオンリセットのための最小電圧(POR
min)を減少させることは、一般に、正しい負荷動作のための最小の安全な電圧によって制限されることに留意すべきである。さらに、パワーオンリセットのための最大電圧(POR
max)を減少させると、部分対部分の変動が一般に削減される。
【0032】
図4は、センサ10の一部(すなわち、センサ10に電力を供給する電力構造)の別の態様を示す。この実施形態において、センサ10は、調整された供給14の出力上に大きな静電容量(C
2)を含むバッファキャパシタ18を備える。バッファキャパシタ18は、集積回路11(IC)の内部および外部のうちの少なくとも1つにあることができる。過渡事象の影響をさらに抑制するために、電流を制限する機能が、バッファキャパシタ18(C
2)と電力供給12の間に追加される。少なくとも1つのゼロ閾値(Z
Th)パスゲート26のトランジスタが、電流経路に含まれる。この実施例において、パスゲート26は、パスゲートを実行するためのN型の金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を使用するN型金属酸化物半導体(NMOS)論理を含む。一般に、NMOSトランジスタは、遮断(またはサブスレッショルド)、トライオード、飽和(アクティブと呼ばれることもある)、および速度飽和の4つの動作モードを有する。
【0033】
パスゲート26は、過渡事象の間に、バッファキャパシタ18から電力供給12へ流れることのできる許容電流を減少させるように構成され得る。バッファキャパシタ18およびパスゲート26の両方を使用する場合、調整された供給12に対する過渡事象の影響は、所望の規格内で効率的に抑制することができる。この実施形態には、Z
Th MOSFETを適切な大きさにすることにより、集積回路(IC)11の起動中に、バッファキャパシタ18への電流の突入の設計管理を可能にするという第2の利点がある。
【0034】
図5を参照すると、例示的なテスト回路50が示してある。この例示的なテスト回路50において、直接的なキャパシタ結合(DCC)の過渡事象は、接地に対して、安定化キャパシタ(C
1)15を介してライン上でセンサの電力供給12(PWR)に区別して結合される。過渡事象が印加された場合、センサ10に供給される電圧レベルは、過渡事象の間に降下する。一般に、集積回路11は、集積回路11内の調整された供給14によって電力を供給される。調整された供給14は、適切に機能するために、特定の範囲内にある電力供給12の出力に依存する。しかし、過渡的なパルスは、調整された供給14の動作を妨害し、調整された供給14の電圧をリセット限界よりも低いレベルまで引き下げる。これが生じると、集積回路11は、パワーオンリセットを経験する。
【0035】
上述のように、調整された供給14からの電圧は、外部の電力供給12の電圧にリンクされる(少なくとも部分的に依存する)。調整された供給14は、外部の電力供給12によって調整された供給14に提供された電圧よりも高い電圧を供給することはできない。この結果、提供される調整された供給14からの電圧(本明細書において「調整電圧」と呼ぶ)は、調整された供給14または外部の電力供給12からの最小の電圧である。しかし、調整された供給14に対する過渡事象の影響を抑制するために、いくつかの技法を集積回路11の設計に適用することができる。
【0036】
テスト回路50と類似の回路が、センサ10の動作に使用され得ることに留意すべきである。一般的な実施形態では、センサ10は、バッファキャパシタ18(C
2)とともに実施される。すなわち、センサ10の実装のいくつかの実施例においては、調整された供給14と直列に配置されたキャパシタが調整された供給14の出力を安定させるのに使用される。バッファキャパシタ18(C
2)を使用することにより、調整された供給14の出力は、バルクの電荷蓄積を提供することによって実質的に安定され、この結果、センサ10は過渡事象に対して実質的に耐性を有する。言い換えると、パワーオンリセットを引き起こす態様では、より多くの電流が調整された供給14からの電圧を低下させるのに必要とされる。
【0037】
図5に示すように、テスト回路50は、テストされるべきセンサ10を含む。電力供給12などのその他の構成要素は、通常動作の間、センサ10とともに使用することができる。テスト回路50は、センサの様々な実施形態の比較に有用である。従って、テスト回路50は、本明細書における教示に従って提供されるセンサ10を含め、センサ10の様々な実施形態をテストするのに適切に構成することができる。
【0038】
この例では、例示的なテスト回路50は、トランジェント(過渡事象)生成器54、電力供給12、およびオシロスコープ58などの読み出し装置を含む。一般に、トランジェント生成器54は、直接キャパシタ結合(DCC)の過渡事象を提供するように構成される。電力供給12は、センサ10に電力を供給するために、適切な電力を提供するように構成される。センサ10は、「特定用途向け集積回路」(ASIC)と呼ぶこともできる集積回路11(IC)を含む。集積回路11(IC)は、オンボードの調整された供給14を含み、かつ、アナログコアおよびデジタルコアのうちの少なくとも1つを含むことができる。オシロスコープ58は、センサ10の出力をモニタし、過渡事象に対するセンサ10の応答を検出するように構成することができる。トランジェント生成器54は、少なくとも1つの安定化キャパシタ15(C
1)を含む。センサ10は、少なくとも1つのバッファキャパシタ18(C
2)を含むことができる。
【0039】
一般に、トランジェント生成器54は、過渡波形用の適用規格などの所望の特性に従う過渡パルスを生成するように構成される既成のハードウェアとして提供される。例示的な規格は、ISO7637パルス2aを含む。回路内の関係性およびダイナミクスをより明確にするために、
図6を参照することができる。
【0040】
図6は、時間t0で集積回路(IC)の正の供給基準に印加された負の遷移を伴う例示的な集積回路のデジタル供給の電圧を示す。実際の電圧レベル対時間は、通常はわずかに非線形であるが、線形的に単純化されたものが説明目的のために許容される。同様に、デジタル供給電圧の回復(すなわち増加)は
図6に示していない。電圧レベルBは、ICのリセットまたはオフ閾値の最小値を表す。設計者は通常、全てのデジタル回路の動作が許容範囲全体で有効な動作状態に維持される最低値よりも僅かに高い電圧レベルBを設定する。電圧レベルCは、ICのリセットまたはオフ閾値の最大値を表す。電圧レベルFは、可能であるICの最も低いオン閾値を示す。電圧レベルGは、可能であるICの最も高いオン閾値を示す。電圧レベルDは、ICが回路への電流の流れを遮断する最低値を表しており、当該回路はその後、集積回路をリセットすることなく、適切な動作状態で電力供給され得る。電圧レベルEは、ICが回路への電流の流れを遮断する最大値を表しており当該回路はその後、集積回路をリセットすることなく、適切な動作状態で電力供給され得る。線Rは、デジタル供給バッファキャパシタから、デジタル電圧レギュレータを介して(すなわち、逆流)、またはアナログ回路への電流の流れを防ぐことをしていない設計にとっての、デジタル電圧供給値対時間を表す。線Sは、デジタル供給バッファキャパシタから、デジタル電圧レギュレータを介して(すなわち、逆流)、またはアナログ回路への電流の流れを防ぐことをしている設計にとっての、デジタル電圧供給値対時間を表す。線Tは、デジタル供給バッファキャパシタから、デジタル電圧レギュレータを介して(すなわち、逆流)、またはアナログ回路への電流の流れを防ぎ、かつ、「電力節約」閾値よりも低いデジタル供給電圧のために選択されたデジタルブロックへの電流の流れを遮断する設計にとっての、デジタル電圧供給値対時間を表す。線Sまたは線Tに関する設計を実施する必要性は、電圧の回復が始まる前に、デジタル供給電圧がオフ(OFF)閾値よりも低下しないことを確実にするため、集積回路のデジタル供給電圧の電圧回復を開始する時間に依存する。
【0041】
図7および
図8は、テスト回路50の例示的な出力を示す。
図7は、従来技術のセンサの例示的な出力を示しており、
図8は、本明細書における教示によるセンサ10の例示的な出力を示す。両方の例において、調整された供給14の出力は、破線で示されている。本明細書における教示によるセンサ10の場合、調整された供給14の出力は、パワーオンリセットレベルの閾値よりも高いままである。
【0042】
一般に、過渡事象の影響に対してセンサの耐性を提供する、本明細書で開示する構成要素は、集合的に「保護回路」と呼ぶことができ、また、その他の同様の用語で呼ぶことができる。一般に、実質的な定格の少なくとも1つのバッファキャパシタ18を組み込むことにより、保護回路は、センサ10の通常動作の間の調整された供給14の出力と実質的に同等の出力を過渡事象の間に提供するように構成される。実施例の中には、バッファキャパシタ18の出力の期間が、単一の過渡事象の期間と少なくとも同じ長さであるものもある。しかし、その他の実施例の中には、バッファキャパシタ18の出力の期間が、どの1つの過渡事象の期間よりも実質的に長いものもあり得る。従って、バッファキャパシタ18は、素早く連続して発生する多数の過渡事象からセンサ10を保護することができるように構成され得る。
【0043】
一般に、センサ10は、感知回路、およびセンサ用途を提供するのに所望される構成要素の形態を含むことができる。センサは、特定の用途のために構成することができる。例えば、センサは、自動車用用途のために構成することができる。従って、保護回路、感知回路、電源等の電気特性は、自働車設計者、製造者またはその他の同様の関係者の必要性に従って構成することができる。例示的な自動車のセンサは、圧力および温度のうちの少なくとも1つを感知するためのセンサを含む。
【0044】
様々なその他の構成要素が、本明細書における教示の態様を提供するのに含むことができ、また要求することができる。例えば、追加の材料、材料の組合せおよび/または材料の省略が、本明細書における教示の範囲内で追加の実施例を提供するのに使用することができる。
【0045】
本発明の要素または本発明の実施形態を紹介する際の、冠詞「a」「an」および「the」は、1つまたは複数の要素があることを意味するように意図される。同様に、形容詞「another」は、要素を説明するのに使用される際には、1つまたは複数の要素を意図している。「incluiding」および「having」という語は、記載された要素以外の追加の要素があり得るように、包括的であることを意図している。
【0046】
例示的な実施例を参照して本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ、等価物がその要素に代用できることを当業者は理解すべきであろう。さらに、本発明の必須の範囲から逸脱することなく、特定の機器、状況または材料を本発明の教示に適応するように、当業者は様々な修正形態を理解するであろう。それゆえ、本発明は、本発明を実施するために考察された最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるのではなく、本発明は添付の特許請求の範囲の範囲内にあるすべての実施例を含む。