特許第6346564号(P6346564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346564
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】チコリ抽出物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/28 20060101AFI20180611BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20180611BHJP
   A61K 31/216 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20180611BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20180611BHJP
【FI】
   A61K36/28
   A61K31/352
   A61K31/216
   A61P3/04
   A61P3/06
   A61P3/10
   A61P1/16
   A23L33/105
【請求項の数】19
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-541703(P2014-541703)
(86)(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公表番号】特表2014-533676(P2014-533676A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2012072984
(87)【国際公開番号】WO2013072522
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年11月4日
(31)【優先権主張番号】11306518.9
(32)【優先日】2011年11月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517180512
【氏名又は名称】ナチュレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・シャパル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクラム・ベージモフン
【審査官】 鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0003026(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0015140(US,A1)
【文献】 Polish J. Food Nutr. Sci.,2009年,Vol.59 No.1,pp.35-43
【文献】 Food Technol. Biotechnol.,2011年 3月,Vol.49 No.1,pp.40-47
【文献】 Phytochemistry,2011年 3月,Vol.72,pp.781-790
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/28
A23L 33/105
A61K 31/216
A61K 31/352
A61P 1/16
A61P 3/04
A61P 3/06
A61P 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)粉砕したCichorium intybus種の植物をエタノール/水体積比が60/40〜40/60である抽出溶媒と接触させる工程、
b)固形分をフィルター濾過して除去し溶媒抽出物を収集する工程、
c)場合によりエタノール/水体積比が60/40〜40/60である抽出溶媒で撹拌することにより固形分を洗浄する工程、
d)場合により固形分を濾過して除去し溶媒抽出物を収集する工程、
e)溶媒抽出物を合わせて不溶性残渣を除去する工程、
f)溶媒を濃縮する工程、
g)場合により抽出物に含まれるフェノール化合物を特に食品グレードのアルコールを使用して沈殿させることにより濃縮する工程、
h)フィルター濾過し、濾液を蒸発させる工程、並びに
i)乾燥抽出物を回収する工程、
を含み、40〜60℃の温度範囲で実施される、チコリ酸、カフタル酸及びクロロゲン酸、並びにクエルセチン及び/又はルテオリン誘導体を含み、前記チコリ酸の量が抽出物の乾燥質量に対して30g/kg以上である、Cichorium intybus種の植物の地上部の含水エタノール抽出物を調製する方法。
【請求項2】
前記カフタル酸の量が抽出物の乾燥質量に対して2.5g/kg以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クロロゲン酸の量が抽出物の乾燥質量に対して1g/kg以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出物中のフラボノイド誘導体の量が、クエルセチンの標準に対応して表され、抽出物の乾燥質量に対して4.5g/kg以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記植物が、乾燥された、未乾燥の、又は湯通しされたものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項の方法で得られた、Cichorium intybus種の植物の地上部の抽出物。
【請求項7】
請求項6に記載のCichorium intybus種の植物の抽出物及び場合により担体を含む、組成物。
【請求項8】
(i)体重の調節及び/又は体重増加の治癒的又は予防的治療、
(ii) 脂肪蓄積の増加及び/又は脂肪肝の治癒的又は予防的治療、
(iii)糖尿病前症の治癒的又は予防的治療、並びに
(iv)メタボリックシンドロームの治癒的又は予防的治療
から成る群から選択される治療における使用のための、請求項6に記載の抽出物。
【請求項9】
(i)高肝トリグリセリドレベルの治癒的又は予防的治療、
(ii) 高トリグリセリド血症の治癒的又は予防的治療、
(iii)高血糖症の治癒的又は予防的治療、
(iv) 高インスリン血症の治癒的又は予防的治療、及び
(v) インスリン抵抗性の治癒的又は予防的治療
から成る群から選択される治療における使用のための、請求項6に記載の抽出物。
【請求項10】
(i) 体重の調節及び/又は体重増加の治癒的又は予防的治療、
(ii) 脂肪蓄積の増加及び/又は脂肪肝の治癒的又は予防的治療、
(iii)糖尿病前症の治癒的又は予防的治療、並びに
(iv)メタボリックシンドロームの治癒的又は予防的治療
から成る群から選択される治療における使用のための、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
(i)高肝トリグリセリドレベルの治癒的又は予防的治療、
(ii) 高トリグリセリド血症の治癒的又は予防的治療、
(iii)高血糖症の治癒的又は予防的治療、
(iv) 高インスリン血症の治癒的又は予防的治療、及び
(v) インスリン抵抗性の治癒的又は予防的治療
から成る群から選択される治療における使用のための、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
請求項6に記載の抽出物を含む、栄養補助食品。
【請求項13】
請求項6に記載の抽出物を含む、補助食品組成物。
【請求項14】
請求項6に記載の抽出物を含む、栄養補助組成物。
【請求項15】
請求項6に記載の抽出物を含む、食品組成物。
【請求項16】
請求項7に記載の組成物を含む、栄養補助食品。
【請求項17】
請求項7に記載の組成物を含む、補助食品組成物。
【請求項18】
請求項7に記載の組成物を含む、栄養補助組成物。
【請求項19】
請求項7に記載の組成物を含む、食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体重低下若しくは体重調節又は体重増大の制限、脂肪蓄積、脂肪肝、肝トリグリセリドレベル、血糖値、インスリン血レベル、インスリン抵抗性、高トリグリセリド血症、糖尿病前症及び/又はメタボリックシンドロームの様々な要因の低下又はそれらの増大を制限することを可能にする、チコリ抽出物及びそのよう抽出物を含む組成物に関する。
【0002】
さらに特に、抽出物は、脂肪性肝硬変、循環器疾患、糖尿病合併症及び/又は糖尿病に影響し得るリスクファクターに対する活性を示し得る。これらリスクファクターのうち、体重過多特に肥満、脂肪蓄積、脂肪肝、肝トリグリセリドレベル、高トリグリセリド血症、血糖値、インスリン血レベル、インスリン抵抗性及び/又はメタボリックシンドロームの様々な要因の増大が言及され得る。
【0003】
本発明はまた、このような抽出物を含む食品又は栄養補助食品にも関する。
【0004】
本発明はまた、メタボリックシンドローム、肥満、脂肪性肝硬変、循環器疾患、糖尿病合併症及び/又は糖尿病の予防又は治療に使用するための組成物にも関する。
【背景技術】
【0005】
現代社会では、脂肪性肝硬変、循環器疾患、糖尿病合併症及び/又は糖尿病等の疾患のリクスファクターが益々増大している。
【0006】
これらの疾患を治療するため、及び/又はこれらのリスクファクターの一つ又は複数を制限するために使用され得る既知の化合物又は組成物は、特に体重低下において有効であり得るが不十分であり、非常に高価で、望ましくない副作用を示し、不十分な官能特性を有し、食品の色、味及び/又は外観を変化させ得るものであり、食品中に組み込まれることを意図しているが組み込みは困難であり、少なくともいくつかのタイプの食品では、安定性が不十分であり、低い溶解性を呈し得るものであり、汎用性が不十分であり得るものであり、十分に安定調達し得ないものであり、及び/又は、豊富であり、若しくはその他の用途を有する前駆体に由来してもよい。
【0007】
一方、体重調節のための食事は、しばしばある程度は成功する。例えば、低カロリーの食事は、一時的な体重減少を引き起こし得るが、長期間にわたって体重減少を希望する及び一定の体重を維持することを望む人々にとって有効であることは証明されていない。
【0008】
従って、本発明は、挙げられた課題の全て又は一部を解決することを目的としている。
【発明の概要】
【0009】
一態様によると、本発明は、チコリ酸、カフタル酸及びクロロゲン酸として同定される主なフェノール酸誘導体並びにクエルセチン及びルテオリン誘導体であるフラボノイド類を含むフェノール誘導体を含む、チコリ(Cichorium genus)の植物に由来する抽出物を対象とする。
【0010】
本発明は、以下の利点の全部又は一部を示し得る:
- 非常に低コストで、さらにこれまで使用されていなかったが容易に採集することができる植物の部分、特に葉を評価し得ること、
- 強力な生物的効果、
- 食品グレード品質の抽出物、従って、(毒性がないか非常に少ないため)保存剤としての使用の可能性に繋がること、及び/又は
-活性剤を得ることの容易さ。
【0011】
その他の利点を以下の記述で示す。
【0012】
他の態様によると、本発明は、フェノール酸誘導体及びフラボノイド誘導体並びに場合により担体を含むチコリの植物の抽出物を含む組成物を対象とする。
【0013】
抽出物を含む組成物又は抽出物は、体重低下若しくは制御又は体重増加の制限、脂肪蓄積、脂肪肝、肝トリグリセリドレベル、高トリグリセリド血症、高血糖症、血糖値、インスリン血症、インスリン抵抗性、糖尿病前症及び/又はメタボリックシンドロームの様々な要因の増大の低下又は制限を可能にすることを意図し得るものである。
【0014】
抽出物を含む組成物又は抽出物は、体重調節及び/又は体重増加及び/又は脂肪蓄積の増大及び/又は脂肪肝及び/又は高い肝トリグリセリドレベル及び/又は糖尿病前症及び/又は高血糖症及び/又は高トリグリセリド症及び/又は高血糖症及び/又は高血糖値及び/又は高インスリン血症及び/又はインリン抵抗性及び/又はメタボリックシンドロームの治癒的又は予防的治療において使用され得る。
【0015】
本発明はまた、フェノール酸誘導体及びフラボノイド誘導体並びに場合により担体を含むチコリの植物の抽出物を含む、食品組成物、固体又は液体と対象とする。
【0016】
本発明はまた、フェノール酸誘導体及びフラボノイド誘導体並びに場合により担体を含むチコリの植物の抽出物を含み、特に、体重低下若しくは体重増大の調節、脂肪蓄積、脂肪肝、肝トリグリセリドレベル、高トリグリセリド血症、血糖値、インスリン血症レベル、インスリン抵抗性及び/若しくはメタボリックシンドロームの一つ若しくはいくつかの若しくは全ての要因の増大の低下若しくは制限を可能にするための、食品若しくは栄養補助食品又は医薬若しくは食品組成物を対象とする。
【0017】
本発明の他の態様によると、本発明は、フェノール酸誘導体及びフラボノイド誘導体並びに場合により担体を含むチコリの植物の抽出物を含み、特に、脂肪性肝硬変、循環器疾患、糖尿病合併症及び/若しくは糖尿病並びに/又はメタボリックシンドロームの一つ若しくはいくつかの要因(例えば高レベルのインスリン、高コレステロール血症、高血圧、体重過多、特に肥満及び高血糖症)を予防及び/又は治療するための使用のための、医薬組成物を対象とする。
【0018】
本発明はまた、脂肪性肝硬変、循環器疾患、糖尿病合併症及び/若しくは糖尿病及び/若しくは一つ若しくはいくつかのメタボリックシンドロームの要因(例えば高レベルのインスリン、高コレステロール血症、高血圧、体重過多、特に肥満及び高血糖症)を、必要とする対象において予防及び/又は治療する方法であって、本発明のチコリの植物の抽出物を含む組成物を投与することを含む方法に関する。
【0019】
組成物は、対象の体重を調節するため、特に対象の体重を減少、制御又は制御することを補助するために使用され得る。
【0020】
本発明はまた、対象の体重を調節する方法、特に、必要とする対象の体重を調節するため、特に対象の体重を減少、調節又は調節することを助けるための方法であって、本発明のチコリの植物の抽出物を含む組成物を前記対象に投与することを含む方法にも関する。
【0021】
簡潔に記載すると、対象はヒト又は動物、特に哺乳類であってよい。
【0022】
さらに他の態様において、本発明は、フェノール酸誘導体及びフラボノイド誘導体を含むチコリの植物の抽出物を、医薬又は医薬組成物の調製のために使用することを対象とする。
【0023】
以下のさらなる態様において、本発明は、特に、体重低下若しくは体重増加の制限、脂肪蓄積、脂肪肝、肝トリグリセリドレベル、高トリグリセリド血症、血糖値、インスリン血症、インスリン抵抗性及び/又はメタボリックシンドロームの様々な要因の増大の低下又は制限を可能にし、フェノール酸誘導体及びフラボノイド誘導体を含むチコリの植物の抽出物を含む組成物を少なくとも一日一回摂取することを含む食事を対象とする。
【0024】
本発明はまた、必要とする対象における、脂肪蓄積、脂肪肝、肝トリグリセリドレベル、高トリグリセリド血症、血糖値、インスリン血症、インスリン抵抗性及び/又はメタボリックシンドロームの様々な要因を制限する又は低下させる方法であって、本発明のチコリの植物の抽出物を含む組成物を前記対象に投与することを含む方法に関する。
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明のチコリ(Cichorium genus)の植物の抽出物は、以下の種及びそれらの混合物に由来する。
- Cichorium intybus L,
- Cichorium intybus var. foliosum,
- Cichorium intybus var. sativum,
- Cichorium intybus ssp. intybus var. sativum及び
- Cichorium endivia L.
【0026】
チコリの植物は、好ましくは、Cichorium intybus種、特にsativum及びCichorium endivia種並びにそれらの混合物から選択される。
【0027】
抽出物は、特に植物の地上部から、さらに特には葉から得られる。従って、抽出物は、有利には葉の抽出物であり得る。
【0028】
「チコリの植物の抽出物の質量」又は「抽出物の質量」という表現は、本発明の意味においては、チコリの植物の抽出物の乾燥質量又は抽出物の乾燥質量を意味する。
【0029】
本発明によるチコリの植物の抽出物は、フェノール酸誘導体およびフラボノイド誘導体を含む。フェノール酸誘導体は、有利には、チコリ酸、カフタル酸及びクロロゲン酸として同定される3つの主なフェノール酸誘導体を含む。フラボノイド誘導体は、有利には、クエルセチン及びルテオリン誘導体、特に、クエルセチン3-O-グルクロニド、イソクエルセチン及びルテオリン7-O-グルクロニドである。
【0030】
抽出物中のチコリ酸の量は、有利には、抽出物1kgあたり25g(25g/kg)以上、さらに特に、抽出物1kgあたり30g(30g/kg)以上、よりさらに特に抽出物1kgあたり45g(45g/kg)以上である。特定の態様において、抽出物中のチコリ酸の量は、主に抽出物の調製に使用されるチコリに依存し、約65〜70g/kgまでであり得る。一般的には、抽出物中のチコリ酸の量は、45〜55g/kgの範囲である。
【0031】
抽出物中のカフタル酸の量は、有利には、抽出物1kgあたり2.5g(2.5g/kg)以上、さらに特に、抽出物1kgあたり4g(4g/kg)以上、よりさらに特に抽出物1kgあたり5g(5g/kg)以上である。特定の態様において、抽出物中のカフタル酸の量は、主に抽出物の調製に使用されるチコリに依存し、約10g/kgまでであり得る。一般的には、抽出物中のカフタル酸の量は、5〜6g/kgの範囲である。
【0032】
抽出物中のクロロゲン酸の量は、有利には、抽出物1kgあたり1g(1g/kg)以上、さらに特に、抽出物1kgあたり1.5g(1.5g/kg)以上、よりさらに特に抽出物1kgあたり2g(2g/kg)以上である。特定の態様において、抽出物中のクロロゲン酸の量は、主に抽出物の調製に使用されるチコリに依存し、約10g/kgまでであり得る。一般的には、抽出物中のクロロゲン酸の量は、5〜6g/kgの範囲である。
【0033】
抽出物は、カフタル酸とチコリ酸を合わせた量で、抽出物1kgあたり30g(30g/kg)以上、さらに特に、抽出物1kgあたり40g(40g/kg)以上、よりさらに特に抽出物1kgあたり50g(50g/kg)以上であり、好ましくは、50〜60g/kgの範囲を含んでよい。
【0034】
チコリ酸/カフタル酸の質量比は、2〜20、特に3〜15、さらに特に4〜14、よりさらに特に6〜12、有利には7〜11であってよい。
【0035】
チコリ酸とカフタル酸の合計/クロロゲン酸の質量比は、5〜60、特に6〜40、さらに特に7〜50、よりさらに特に8〜20、有利には8〜19であってよい。
【0036】
抽出物中のフラボノイド誘導体の量は、クエルセチンの標準に対応して表され、有利には抽出物1kgあたり4.5g(4.5g/kg)以上、さらに特に抽出物1kgあたり5g(5g/kg)以上であり、よりさらに特に抽出物1kgあたり6.5g(6.5g/kg)以上、好ましくは6.5〜10g/kgの範囲である。
【0037】
フラボノイド誘導体の量は、標準としてクエルセチンを使用して、UVスペクトラムに基づいて決定されてよい。すなわち、フラボノイド類の量は、フラボノイド類の質量、特に、クエルセチン標準に対応して表されるクエルセチン誘導体の質量である。
【0038】
抽出物は、有利には、没食子酸に相当する、3〜10質量%の総フェノール含有量である、総フェノール含有量を含む。
【0039】
抽出物中の総フェノール含有量は、フォーリン・チオカルト(Folin-Ciocalteu)試薬を使用して及び/又はさらに逆相HPLCによって決定されてよい。
【0040】
チコリ生体材料から本発明の抽出物を調製する方法は、結果として、前記および実施例で規定するフェノール酸誘導体及びフラボノイド誘導体を含む活性な抽出物が得られるように適する方法に従わなければならない。
【0041】
特に、前記方法は、フェノール酸誘導体およびフラボノイド誘導体の安定性を考慮しなくてはならない。フェノール酸誘導体およびフラボノイド誘導体は、ポリフェノール酸化酵素に感受性を有するため、抽出物の精製は、ポリフェノール酸化酵素などのある種の反応物に対するフェノール誘導体の感受性を考慮して実施しなくてはならない。当業者は、自身の技術及び知識並びに本発明の特定の態様の開示に基づき、抽出工程及び精製工程において忌避されるべきこれらの成分を同定するだろう。
【0042】
本発明による抽出物は、有利には水性又は含水アルコール抽出物、特に水エタノール抽出物である。抽出物は、特に、本明細書の記載で開示した方法で得られる又は得ることができる抽出物であってよい。
【0043】
本発明はまた、前記及び後記のようなチコリの植物の抽出物及び場合により担体を含む組成物にも関する。
【0044】
担体は特に、通常、医薬組成物、栄養補助組成物及び食品又は栄養補助食品に使用される、食用の担体であり得る。担体は、一つ又は複数の香味剤を含んでよい。
【0045】
組成物は、チコリの植物の抽出液を、組成物の総質量に対して10〜99質量%、より好ましくは25〜95質量%、さらにより好ましくは50〜95質量%、さらにいっそう好ましくは75〜95質量%の量で含んでよい。
【0046】
食品又は栄養補助食品は、栄養補助食品の総質量に対して、抽出物を1〜100質量%の範囲の量で含んでよい。
【0047】
栄養補助組成物又は食品組成物は、組成物の総質量に対して、抽出物を0.1〜5質量%の範囲の量で含んでよい。
【0048】
栄養補助食品、栄養補助組成物又は食品組成物は、液体、固体又は粉末であってよい。
【0049】
組成物は、ヒトが一日あたり5〜60mg/kgの範囲、特に約30mg/kgを摂取することが可能になるよう製剤化されてよい。
【0050】
本発明はまた、チコリの植物の抽出物を調製するための前記及び後記に規定する方法に関しており、抽出方法は以下の工程を含む:
a)粉砕したチコリの植物を抽出溶媒と接触させる工程、
b)固形分をフィルター濾過して除去し溶媒抽出液を収集する工程、
c)場合により抽出溶媒で撹拌することにより固形分を洗浄する工程、
d)場合により固形分を濾過して除去し溶媒抽出物を収集する工程、
e) 溶媒抽出物を合わせて不溶性残渣を除去する工程、
f)溶媒を濃縮する工程、
g)場合により抽出物に含まれるフェノール化合物を特に食品グレードのアルコールを使用して沈殿させることにより濃縮する工程、
h)フィルター濾過し、濾液を蒸発させる工程、並びに
i)乾燥抽出物を回収する工程。
【0051】
本発明の抽出方法は、好ましくは植物の地上部、より好ましくは葉で実施される。
【0052】
植物は、未乾燥の状態、湯通し後、又は乾燥させて使用してよい。好ましくは、乾燥又は湯通ししたチコリの植物の未乾燥の葉を、工程a)で使用する。
【0053】
工程a)の抽出は、有利には25℃よりも高い温度、特に35℃よりも高い温度又はさらに特に50℃以上で実施される。
【0054】
特に、工程a)の抽出は、有利には25℃よりも高い温度、さらに特に35℃よりも高い温度又はよりさらに特に約50℃で実施される。
【0055】
有利には、工程a)の抽出は、25〜70℃、好ましくは40〜60℃の温度で実施される。
【0056】
抽出工程の溶媒は、好ましくは、水性、アルコール、水溶性の有機溶媒及びこれらの組み合わせから選択される。水溶性の有機溶媒は、アセトンであってよい。
【0057】
得られる抽出物は、水性、アルコール又は有機溶媒抽出物とみなしてよい。
【0058】
適する溶媒は、水、メタノール、エタノール、アセトン、n-プロパノール、イソプロパノール、2-ブタノール及びそれらの組み合わせから選択されてよい。
【0059】
より特に、抽出溶媒は、抽出溶媒の総質量に対して、少なくとも75質量%、少なくとも90質量%、さらに特に少なくとも95質量%、よりさらに特に少なくとも99質量%の有機溶媒を含み、さらに好ましくは、これらの溶媒から成る。
【0060】
以下の実施態様においては、水及び/又はアルコール溶媒特にエタノールで抽出を実施する。
【0061】
水及びアルコール特にエタノールで抽出を実施した場合、水/アルコールの体積比は、80/20〜20/80、特に70/30〜30/70、さらに特に60/40〜40/60及びよりさらに特に約50/50であってよい。
【0062】
抽出に使用されるアルコール特にエタノールの割合は、生物学的に活性な化合物の収量及び組成物に影響し得る。
【0063】
抽出は、バッチ式若しくは連続式、又は連続バッチにおいて同じ抽出溶媒を連続して使用することにより、抽出物の飽和溶媒を得ることができ得る。バッチ抽出のために、当業者は、工業的方法において最適化された、溶媒/植物の固形部分の適切な質量比を規定するだろう。溶媒/固形分比は、固形分質量に対して、2〜20倍、特に5〜15倍、さらに特に約10倍であってよい。抽出は、1回又は数回、特に2〜4回行ってよい。
【0064】
連続式又は連続バッチ抽出方法においては、低い割合で使用してよい。
【0065】
本発明の方法は、25〜70℃特に40〜60℃の範囲で、及びさらに特に約50℃で実施してよい。
【0066】
抽出は1〜5時間、特に約2時間撹拌(例えば機械的又は磁気的撹拌)しながら継続してよい。
【0067】
残存する固形分は、特にフィルターバッグによるフィルター濾過により除去されてよい。
【0068】
本発明によると、数回抽出は、単回抽出を組み合わせであってよい。
【0069】
湿潤固形分は、溶媒、特に含水アルコール混合物で、乾燥固形分の質量の1〜100倍量で、約10〜120分間さらに撹拌することにより、さらに抽出されてよい。
【0070】
固形分を収集し、抽出物を合わせてよい。
【0071】
異なる抽出物溶液を合わせ、デカンテーションのために放置し、濾紙又は遠心分離によって濾過して、不溶性残渣を除去してもよい。
【0072】
得られた澄んだ上清は、例えば濃縮器を使用して、最初の体積の約5〜20%まで濃縮されてよく、その後、食品グレードのアルコール特にエタノールで、一定の割合(例えば、最小で濃縮体積の二倍)で処理し、形成された沈殿を除去してよい。この工程は、望ましくない化合物(例えば多糖類又は水溶性タンパク質)の全部又は一部を除去することを可能にし得る。
【0073】
粉末抽出物は、濃縮された抽出物を、例えば噴霧乾燥機、50〜80℃のオーブン又は真空乾燥機を使用して乾燥することによって得てよい。
【0074】
乾燥抽出物は、計量(g)され、下記式によって抽出物の収量が計算される:
乾燥収量(%)=(抽出物の乾燥質量/植物の乾燥質量) x 100
未乾燥収量(%)=(抽出物の乾燥質量/植物材料生体の未乾燥質量) x 100
【0075】
さらに特に、植物抽出物は、下記の工程を含む方法によって得てよい:
a)粉砕し圧縮した植物を、その質量に対して2〜20倍量、特に約10倍量の抽出溶媒(特に、少なくとも30体積%のエタノール-水混合物、さらに特にエタノール-水が1/1の体積比であるエタノールを含むエタノール-水混合物)と接触させ、例えば2時間、特に25℃より高い温度、さらに特に35度より高い温度及びよりさらに特に約50℃で撹拌する工程、
b)固形分をフィルター濾過して除去し溶媒抽出物を回収する工程、
c)特に、乾燥固形分の質量の1〜100倍に相当する量で、例えば約15〜120分間、特に15〜30分間、抽出溶媒で撹拌することにより湿潤固形分を洗浄する工程、
d)固形分をフィルター濾過して溶媒抽出物を収集する工程、
e)抽出溶液を合わせて、デカンタ又はフィルター濾過して不溶性残渣を除去する工程、
f)溶媒を濃縮し、エタノール中で沈殿させることにより抽出物を濃縮する工程、
g)減圧下で濾液を濃縮する工程、並びに
h)乾燥(例えば、真空化で50〜80℃のオーブン中に置くこと、例えば、真空噴霧乾燥又は濃縮物を凍結乾燥のために凍結させてもよい)させる工程、並びに
i)乾燥抽出物を回収する工程。
【0076】
一般的に、抽出物の収量は、未乾燥の破砕固形物の総質量に対して、抽出物の質量で1.5〜3.5質量%の範囲である。乾燥葉を使用する場合には、収量は12〜17%の範囲である。
【0077】
植物の抽出物は、対象抽出物を分離する抽出方法を繰り返すことにより、商業的スケールで調製することができる。
【0078】
従って、小スケールでの抽出方法は、結果として得られる抽出物の再現可能な結果を保障するために、場合により含まれる追加の品質管理工程と共に、スケールアップすることが可能である。
【0079】
様々な抽出方法を採用することができる。一般的には、抽出物は、固形植物と溶媒を接触させて十分に混合し、植物材料中に存在する生物学的に活性な分子が溶媒中に取り込まれるよう、植物固形材料が溶媒に十分暴露されること保証する一定時間、接触させることにより、得られる。
【0080】
溶媒抽出方法は、室温又は高温下で、極性及び/又は非極性溶媒での直接及び連続(向流)抽出から選択されてよい。溶媒を植物材料との十分な接触は、懸濁液を振盪することにより促進することができる。液体画分が、次に、固体(不溶性)分から分離され、二つの画分(抽出物となる液体画分および固体画分)が生じる。
【0081】
液体及び固体画分の分離は、一つ又は複数の標準的な、当業者に知られた方法によって達成することができる。
【0082】
本発明はまた、本発明の方法によって得られた又は得ることができる抽出物の感受性にも関しており、前記抽出物はフェノール酸誘導体及びフラボノイド誘導体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1図1は、含水アルコール植物抽出物の280nmにおけるHPLCクロマトグラムを示す。
図2図2は、肥満糖尿病前症マウスにおける血糖に対する本発明のチコリ抽出物の効果を示す。
図3図3は、肥満糖尿病前症マウスにおける血中インスリン及びインスリン抵抗性に対する本発明のチコリ抽出物の効果を示す。
図4図4は、肥満糖尿病前症マウスにおける体重及び脂肪蓄積に対する本発明のチコリ抽出物の効果を示す。
図5図5は、糖尿病前症マウスにおける脂肪肝又は肝脂肪変性に対する本発明のチコリ抽出物の効果を示す。
図6図6は、肥満糖尿病前症マウスにおける血糖に対する本発明のチコリ抽出物の用量依存的効果を示す。
図7図7は、チコリ酸が低濃度であるチコリ抽出物及び、肥満糖尿病前症マウスにおける血糖値に対する本発明のチコリ抽出物の効果を示す。
図8図8は、肥満糖尿病前症マウスにおける血糖値に対する、精製チコリ酸抽出物の効果を示す。
図9図9は、エキナシア(Echinacea)葉抽出物、及び本発明のチコリ抽出物の、肥満糖尿病前症マウスにおける血糖値に対する効果を示す。
図10図10は、エキナシア葉抽出物、及び本発明のチコリ抽出物の、肥満糖尿病前症マウスにおける血中インスリン及びインスリン抵抗性に対する効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0084】
(実施例1:チコリ(Cichorium intybus L)抽出物の調製)
【0085】
材料及び方法
チコリ(Cichorium intybus L)の乾燥地上部(100g)を、抽出前に細かく(5-8 mm)細断する。
【0086】
抽出方法
植物を、約1000mlの50%エタノール/水(V/V)で、機械撹拌下で、2時間、50℃で抽出する。抽出時間の終わりに、固形分を、フィルターバッグ(PE-100)又は他の類似の濾材でフィルター濾過して除去する。湿潤固形分は、もう一回、さらに3体積の50%エタノールで、さらに約15〜30分間撹拌することにより、抽出する。
【0087】
固形分を再度フィルター濾過して除去し、得られた抽出物を合わせて、980mlの液体抽出物を得て、デカンデーションのために放置し、濾紙でのフィルター濾過又は遠心分離して不溶性残渣を除く。
【0088】
抽出溶液を減圧化で濃縮して最初の体積の5〜20%とし、食品グレードのエタノールで沈殿させることにより、濃縮した。濾液を再度濃縮し、乾燥に供する。乾燥抽出物を回収する。
【0089】
実施例1の植物抽出物の、280nmにおけるHPLCクロマトグラムを図1にクロマトグラムI(Aはカフタル酸、Bはクロロゲン酸、Cはチコリ酸、Dはクエルセチン3-O-グルクロニド及びイソクエルセチン並びにEはルテオリン7-O-グルクロニドである)として示す。さらに抽出物の組成物を以下の表1に示す。
【0090】
(実施例2:チコリ(Cichorium intybus ssp intybus var. sativum)抽出物の調製)
【0091】
未乾燥のチコリ(Cichorium intybus ssp intybus var. sativum)の地上部を使用し、細断工程の前に湯通しする以外は、実施例1と同じ方法に従った。
【0092】
実施例2の植物抽出物の、280nmにおけるHPLCクロマトグラムを図1にクロマトグラムII((Aはカフタル酸、Bはクロロゲン酸、Cはチコリ酸、Dはクエルセチン3-O-グルクロニド及びイソクエルセチン及びEはルテオリン7-O-グルクロニドである)として示す。さらに抽出物の組成物を以下の表1に示す。
【0093】
(実施例3:実施例1および2から得られた抽出物の組成物)
【0094】
分析方法
実施例1および2に由来する抽出物は、没食子酸相当で、フォーリン・チオカルト法を使用して、3〜7質量%の総フェノール含有量を含んだ。
【0095】
HPLCによる、ポリフェノール含有量の特性評価及び定量化
-HPLC-DAD 分析:
分析HPLC(Dionex)のセットアップを要する。本発明において、使用した移動相は、1000mlの高純度水中0.1%ギ酸(溶媒A)及びアセトニトリル(溶媒B)であり、以下の勾配を利用して、96分間、流速0.8ml/分でトータルランした。勾配点は、時間0.0分(Aが95%及びBが5%);10分(Aが90%及びBが10%);10分(一定組成)及び20〜40分(Bが10〜20%まで直線的に勾配が変化する);再び10分間(一定組成);50〜65分(Bが20〜30%まで直線的に勾配が変化する)及び次の10分間(50%まで直線的に変化する);75〜76分(Bが50〜100%まで直線的に勾配が変化する)及び10分間(一定組成)、85〜86分 は最初の条件(Aが95%及びBが5%)に戻り、一定組成で10分間、であった。溶出液中のフェノール化合物類は、UV-ダイオードアレイで、280nmで、逆相C-18カラム(250 X 4.6mmID X 5μm;ACE)を使用して検出した。抽出物中のフェノール酸類の量は、カフタル酸;クロロゲン酸;チコリ酸;の較正曲線を使用して決定し、抽出物中のフラボノイドの量は、クエルセチン較正曲線を使用して決定した。
【0096】
-HPLC-DAD/ESI-MS 分析:
抽出物のHPLC/MS分析は、HPLC(Thermo Finnigan surveyor)を使用して実施し、エレクトロスプレーインターフェース(Thermo Finnigan , LCQ Advantage max)に適合したLCQイオントラップスペクトロメーターにインターフェースした。溶出プログラムは、前記と同じであり、実験は正/負の両モードで実施した。スペクトルは、質量範囲m/z 80〜2000にわたってスキャンした。
【0097】
【表1】
280nmにおける、HPLCによる実施例1及び2の抽出物の定量化した組成物
【0098】
(実施例4:チコリ葉抽出物(chicory leaf extract;CLE)の、血糖(血糖症)、血中インスリン(インスリン血)、インスリン抵抗性、体重、脂肪蓄積及び脂肪肝に対する効果)
【0099】
材料と方法
5週齢のC57BL/6N1 Crlマウス(Charles River Laboratories、フランス)、体重約20gのものを実験に使用した。順化8日後、マウスを無作為に、空腹時血糖に従い、異なる実験群(1グループあたり9匹)に割り当てた。
【0100】
0日目、一つの群を通常食(カロリーの23%がタンパク質由来、66%が炭水化物由来及び11%が脂肪由来)条件下に置き、他方の群を高脂肪食(カロリーの17%がタンパク質由来、28%が炭水化物由来及び55%が脂肪由来)に供した。食事と水を自由に与えた。一回分の処方は、経口強制投与により、毎朝9〜10時の間に、1日目から56日目まで投与した。投与体積は、体重1kgあたり10ml(10ml/kg)であった。実際に投与する体積は、各動物個体の直近の体重に基づいて計算し、調整した。試験の条件は以下の通りである:
・正常対照:マウスに通常食を与え、一日一回水を投与した。
・高脂肪対照:マウスに高脂肪食を与え、一日一回水を投与した。
・CLE 400 mg/kg:マウスに高脂肪食を与え、一日一回チコリ葉抽出物(CLE)を、体重1kgあたり400mg(400 mg/kg)の用量で投与した。
【0101】
CLEの血糖に対する効果を、図2に、インスリン及びインスリン抵抗性に対する効果を図3に、体重及び脂肪蓄積に対する効果を図4に、脂肪肝に対する効果を図5に示す。
【0102】
マウスの体重を到着時及びその後一週間に3回(月曜日、水曜日及び金曜日)記録した
【0103】
絶食時血糖値は、無作為化した日(0日目)及び7、14、21、28、35、42、49及び56日目の13時00分〜14時00分の間に4時間絶食した動物について測定した。全血サンプル(1滴)を尾静脈から収集し、手持ちの血糖値計(OneTouch Ultra 2、LifeScan)で血糖値を決定した。
【0104】
調査の終わりに、4時間絶食状態に置いた後、ペントバルビタールナトリウムを0.1ml腹腔内投与して動物を麻酔した。最終血液サンプルを、心穿刺により、抗凝固剤としてヘパリンを使用して収集した。この最終血液サンプリングは、動物個体を死亡させる。血液サンプルを収集後4℃に置き、30分間遠心分離し、血漿を回収しインスリン分析まで凍結した。精巣上体脂肪体(腹部脂肪)及び肝臓を回収し、質量を測定した。
【0105】
絶食時血漿インスリンレベルは、ELIZAキット(Mercodia、スウェーデン)で測定した。その後、インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)を
式:HOMA-IR = 絶食時インスリン (mU/l) x 絶食時グルコース (mmol/l)/22.5
を使用して計算した。
【0106】
このプロトコルは、倫理委員会(Montpellier、フランス)の承認を得た。
【0107】
結果
血糖(図2)
食餌下で一週間後(7日目)、高脂肪食に供したマウスの空腹時血糖(168 ± 5.7 mg/dL)は、通常食に供したマウスの血糖値(121 ± 5.9 mg/dL)よりも有意に高かった。その後、この差異は、調査を通じて寧ろ一定であった。
【0108】
チコリ葉抽出物は糖尿病前症マウスの血糖を低下させた。調査の終了時(56日目)、血糖は58%低下した。この効果は、14、28、35、42、49および56日目に明らかに有意であった。
【0109】
血中インスリン及びインスリン抵抗性(図3)
絶食時インスリン血はまた、高脂肪食により、通常食下におけるマウスの1 .53 ± 0.37 ng/mlと比較して有意に増加して、4.70 ± 0.43 ng/mlに達した。絶食時血糖及びインスリン血の、高脂肪食による増加に伴い、インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)は、5倍に増加し、これらの動物が強いインスリン抵抗性であることを示している。
【0110】
処理期間の終わり(56日目)において、CLEは、高脂肪食によって誘導される絶食時インスリンレベルを有意に低下させた(p<0.05)。インスリン血は、CLE処理されたマウスでは3.31 ± 0.40 ng/mlに達した。従って、HOMA-IRインスリン抵抗性指数によると、CLEは糖尿病前症マウスにおいて高脂肪食により誘導されるインスリン抵抗性を、58%低下させた(p<0.01)。
【0111】
体重及び腹部脂肪質量(図4)
高脂肪食に供されたマウスは、通常食下のマウスよりも遥かに多く体重が増加した。調査の終わり、8週間食餌後において、高脂肪食下のマウスは、通常食下の対照マウスと比較して2.5倍体重が増加した。通常食下のマウスが26.3 ± 0.5 gに達したのに対し、高脂肪食下のマウスは、36.8 ± 1.3 gに達した。
【0112】
食事により増加する体重は、とりわけ腹部脂肪としてエネルギーを貯蓄することに起因する。確かに精巣上体(腹部)脂肪の質量は、高脂肪食下のマウスで、通常食下のマウスと比較して、調査の期間中3.5倍に増加した(高脂肪食マウスと通常食マウスはそれぞれ1.80 ± 0.11及び0.51 ± 0.03 g)。内臓周囲の脂肪は、インスリン抵抗性及びメタボリックシンドロームに対する強力な危険因子と関連する又は危険因子であると認識される。
【0113】
体重1kgあたり400mg(400mg/kg)の用量のCLEにより、高脂肪食で増加した体重が低下した。この効果は、処理4日目から有意であり、調査の期間中にわたり持続した(第6日以降p<0.01)。調査の終わりにおいて、高脂肪食下でCLE処理したマウスにおいては、10.1 ±0.8g増加であり、一方高脂肪食下で水処理したマウスにおいては、15.4±1.3g増加、並びに通常食下で水処理したマウスにおいては6.1 ± 0.4g増加であった。
【0114】
この低下は、少なくとも部分的に、腹部脂肪における脂肪蓄積の減少によるものである。CLEは、高脂肪食に供されたマウスにおける精巣上体脂肪の脂肪蓄積を33%低下させた(p<0.05)。CLE処理されたマウスの精巣上体脂肪の質量は、高脂肪食対照および通常食対照におけるそれぞれ1.80 ± 0.11および0.51 ± 0.03gに対して、1.38 ± 0.15gであった。
【0115】
肝臓質量(図5)
高脂肪食は肝臓における脂肪蓄積(いわゆる脂肪肝又は肝脂肪変性)を誘導した。肝臓の色は、通常食下のマウスにおける赤色に代わって白色となり、その体重は、35%増大(高脂肪食では1.38±0.10gに対して、通常食では1.02±0.03g)した。
【0116】
CLEは、脂肪肝を83%低下させ、ほぼ正常化した(p<0.01)。
【0117】
結論
高脂肪食は、C57/BL6マウスにおいて、体重の有意な増加、腹部脂肪蓄積、脂肪肝、絶食時血糖症及びインスリン血症、並びにインスリン抵抗性という、メタボリックシンドロームの明らかな表現型を誘導する。
【0118】
体重1kgあたり400mg(400mg/kg)の用量のチコリ葉抽出物は、マウスにおける慢性的な高脂肪食事摂取によって誘導される異常を顕著に低下させた。それは以下を含む。
- 絶食時血糖の低下
- 絶食時インスリン血の低下
- インスリン抵抗性の低下
- 体重の低下
- 腹部脂肪蓄積の低下
- 肝脂肪変性の低下
【0119】
従って、チコリ葉抽出物により、良好な健康状態、良好な組成となり、ひとつ又は数個のメタボリックシンドローム及び関連異常への対処となることが示されている。
【0120】
(実施例5:血糖(血糖症)に対するチコリ葉抽出物(CLE)の用量依存的効果)
材料及び方法
プロトコルは実施例4と同じであった。
実験の条件は以下の通りであった:
- 正常対照:マウスに通常食を与え、一日一回水を投与した。
- 高脂肪対照:マウスに高脂肪食を与え、一日一回水を投与した。
- チコリ葉抽出物(CLE) 100、200又は400 mg/kg:マウスに高脂肪食を与え、一日一回チコリ葉抽出物(CLE)を、100、200又は400 mg/kg体重の用量で投与した。
【0121】
結果
血糖(図6)
食餌下で一週間後(7日目)、高脂肪食に供したマウスの空腹時血糖(159 ± 3.9mg/dL)は、通常食に供したマウスの血糖値(109± 3.6mg/dL)よりも有意に高かった。その後、この差異は、調査を通じて寧ろ一定であった。
【0122】
チコリ葉抽出物は、14〜42日目において糖尿病前症マウスの血糖を低下させた。CLEの用量によりこの効果は増大し、調査の3回用量の間中、有意である。調査の終わりに、血症は、対照において200±5.4mg/dLであるのに対し、用量100、200及び400mg/kgについてそれぞれ187±3.2、177±3.1、171±6.3mg/dLに達した。
【0123】
結論
チコリ葉抽出物(CLE)は、明らかに、マウスにおける慢性的な高脂肪摂取によって誘導される絶食時高血糖症を、用量依存的に低下させた。この効果は、低用量の試験(100mg/kg体重)においてすでに有意である。
【0124】
(実施例6:低レベルのチコリ酸を含有するチコリ葉抽出物(CLE)は血糖の低下により低い効果を有する)
材料と方法
低チコリ酸-CLE抽出方法
低チコリ酸-CLEは、細断する工程の前に湯通しする工程を行わなかった点を除いて、実施例2に記載された抽出方法に従って抽出した。結果として、植物のポリフェノール酸化酵素は不活性であり、ポリフェノールレベルは低くなった。低チコリ酸-CLEは1.05%のチコリ酸を含有した。
【0125】
CLE-抽出方法
CLEは実施例2に記載された方法に従って抽出した。CLEが4.68%のチコリ酸を含んでいた。
【0126】
薬理学的プロトコル
プロトコルは、実施例4と同様であるが、処理の開始前にC57BL/6マウスを一週間高脂肪食に供し、糖尿病前症が誘導した。その後、CLE及び低チコリ酸-CLEを、強制経口投与で、体重1kgあたり200mg(200 mg/kg)の用量で3週間にわたり与えた。
【0127】
結果
絶食時飢餓状態での血糖(図7)
食餌下で一週間経過後、高脂肪食に供されたマウスの絶食時血糖(159.6 ± 4.9 mg/dL)が、通常食に供されたマウスの値(95.2 ± 4 mg/dL)と比較して有意に高かった(p<0.001)。この結果は、高脂肪食下のマウスが、処理の開始時において高血糖症であったことを確認するものである。
【0128】
CLE抽出物は、糖尿病前症のマウスの血糖を(正常対照で観察された正常値に対して)平均31.5%低下させた効果は、処理の最初の週から明らかに有意であり、最長で調査の終わりまで続いた(図7:7日目で*p<0.05並びに14及び21日目で***p<0.001)。
【0129】
一方、低チコリ酸-CLEは遥かに低い効果を示した。糖尿病前症マウスにおいて、血糖は平均10.6%低下した。この効果は、14日目において顕著であったが、7及び21日目では顕著でなかった(図7:*p<0.05)。
【0130】
結論
C57BL/6マウスを、高血糖症となる前一週間高脂肪食に供した。チコリ葉抽出物(CLE;チコリ酸4.68%を含有する)体重1kgあたり200mg(200mg/kg)の用量により、明らかに高血糖が低下した。低チコリ酸-CLE(チコリ酸1.05%を含有する)では効果が乏しいため、 この効果は抽出物中にチコリ酸が十分量存在することと関連している。
【0131】
従って、チコリ酸は、抽出物の効果に重要なCLEの成分の一つである。十分量のチコリ酸抽出物は、血糖低下効果を観察するために必要である。
【0132】
(実施例7:精製チコリ酸(25%)は血糖低下に効果がない)
材料と方法
精製チコリ酸(25%)
精製チコリ酸を、商業的供給源より得た。要するに、植物源より抽出されたポリフェノール類を、吸着性樹脂で精製して、ポリフェノール類が豊富で約25%のチコリ酸を含有する産物を得た。
【0133】
薬理学的プロトコル
プロトコルは、実施例4と同様であるが、処理の開始前にC57BL/6マウスを一週間高脂肪食に供し、高血糖症を誘導した。その後、25%精製チコリ酸を、強制経口投与で、体重1kgあたり200mg(200 mg/kg)の用量を8週間にわたり与えた。
【0134】
結果
絶食時血糖に対する効果(図8)
CLEとの差異において、精製チコリ酸(25%)は、8週間の処理後、糖尿病前症マウスの絶食時血糖に何ら影響を示さなかった(図8)。
【0135】
結論
従って、例えチコリ酸がCLEの効能に必須の成分であっても、それでは不十分である。チコリ酸精製において抑制されているコファクターもまた、糖尿病前症マウスの絶食時血糖の低下におけるCLEの効果に重要である。
【0136】
(実施例8:チコリ葉抽出物(CLE)はエキナシア葉抽出物(Echinacea Leaf Extract;EchLE)よりも強力である)
材料と方法
エキナシア(Echinacea)葉抽出物(EchLE)-抽出方法
EchLEを、実施例1に記載された抽出方法に従って抽出した。EchLEは3.32%のチコリ酸を含有した。
チコリ葉抽出物(CLE)-抽出方法
CLEを、実施例2に記載された抽出方法に従って抽出した。CLEは4.68%のチコリ酸を含有した。
【0137】
薬理学的プロトコル
プロトコルは、実施例6と同一である。処理の開始前に、C57BL/6マウスを一週間高脂肪食に供し、糖尿病前症を誘導した。その後、CLE及びEchLEは、強制経口投与で、体重1kgあたり200mg(200 mg/kg)の用量を3週間にわたり与えた。
【0138】
結果
絶食時血糖に対する効果(図9)
CLE抽出物は、糖尿病前症のマウスの血糖を(正常対照で観察された正常値に対して)平均31.5%低下させた。この効果は、処理の最初の週から明らかに有意であり、最長で調査の終わりまで続いた(図9:7日目で*p<0.05並びに14及び21日目で***p<0.001)。
【0139】
EchLEは、より非常に低い効果を示した。EchLEは、糖尿病前症マウスの血糖を、平均で13.1%低下させた。この効果は21日目で有意であったが(図9: p<0.05)、7及び14日目では顕著でなかった。
【0140】
血中インスリン抵抗性(図10)
処理期間の終わり(21日)において、絶食時インスリン血もまた、高脂肪食により、通常食下におけるマウスの2.43 ± 0.20 ng/mlと比較して有意に増加して、5.26 ± 0.27 ng/mlに達した。絶食時血糖及びインスリン血におけるこの増大に伴い、インスリン抗性指数(HOMA-IR)は、3倍に増大し、プロトコルの終わりには、マウスは明らかなインスリン抵抗性を示した。
【0141】
CLEは、高脂肪食により誘導される、絶食時血中インスリンレベルを有意に低下させ、4.16 ± 0.23ng/mlとした(図10: **p<0.01)。従って、インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)によると、CLEは、糖尿病前症マウスにおいて高脂肪食により誘導されたインスリン抵抗性を、45.9%低下させた(図10:***p<0.001)。
【0142】
同条件で、EchLEは、インスリン血をわずかに低下(4.16±0.24ng/ml)させたが、この効果は統計的に有意ではない。また、インスリン抵抗性は18.7%低下したが、有意ではなかった(図10)。
【0143】
結論
チコリ葉抽出物(CLE;4.68%チコリ酸を含有する)は、体重1kg あたり200mg(200mg/kg)の用量で、糖尿病前症マウスにおいて、高血糖症、高インスリン血並びにインスリン抵抗性を顕著に低下させた。この効果は、抽出物中における十分量のチコリ酸の存在と関連するが、非常に多量のチコリ酸(3.32%チコリ酸)を含有するエキナシア(Echinacea)葉抽出物(EchLE)が、より低い効果を呈するため、チコリ源とも関連している。チコリ植物に存在するが、エキナシアには存在しないコファクターが、CLEの効果に重要である。
【0144】
以上より、この結果は、チコリに由来する抽出物のチコリ酸およびコファクターは、CLEの効果に重要であることを示す。
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