特許第6346605号(P6346605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346605
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】複合材料を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 20/08 20060101AFI20180611BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20180611BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   C23C20/08
   B05D1/36 Z
   B05D7/24 301H
   B05D7/24 301A
【請求項の数】20
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-512057(P2015-512057)
(86)(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公表番号】特表2015-522712(P2015-522712A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】EP2013060129
(87)【国際公開番号】WO2013171297
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2016年2月26日
(31)【優先権主張番号】2012/0326
(32)【優先日】2012年5月16日
(33)【優先権主張国】BE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514288794
【氏名又は名称】プレイオン ソシエテ アノニム
(73)【特許権者】
【識別番号】303036566
【氏名又は名称】ユニヴェルスィテ・ドゥ・リエージュ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リケット、ディミトリ
(72)【発明者】
【氏名】パエツ、カルロス アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】カルベルク、セドリック
(72)【発明者】
【氏名】エスケナジ、ダヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ピラール、ジャン − ポール
(72)【発明者】
【氏名】ハインリッヒ、ベノワ
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−058604(JP,A)
【文献】 特表2006−527697(JP,A)
【文献】 特開2008−189836(JP,A)
【文献】 特開2004−241758(JP,A)
【文献】 特開2005−336573(JP,A)
【文献】 特開2004−231927(JP,A)
【文献】 特開2004−161978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00− 30/00
B05D 1/00− 7/26
B32B 15/00− 15/20
C09J 1/00− 5/10,
9/00−201/10
B82Y 5/00− 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と粉体をベースにした塗膜とを含む複合材料を製造する方法であって、
前記基材は、金属、又は二酸化チタンもしくは酸化ケイ素で塗装された他の材料からなる群から選択され、前記金属は、圧延又は非圧延、塗装又は非塗装の形鋼又は非形鋼、低、中、又は高炭素鋼、ステンレス平鋼又は形鋼、他の支持体に付着させた白金、圧延又は非圧延の、成形されたアルミニウム、シート被覆鋼、プレコート鋼、アルミニウム板又は二酸化チタンの層で塗装された鋼板からなる群から選択され、
前記方法は、
f)水及び少なくとも1つのアルコール官能基を含む飽和又は不飽和の直鎖有機アルコールからなる群から選択される少なくとも1種の第1溶媒を含有する第1溶液による前記基材の表面処理を含む、基材を官能化するステップと、
g)第1安定コロイドゾルを形成するステップと、
h)前記第1コロイドゾルの少なくとも1層を官能化基材上に少なくとも1回塗布するステップと、
i)前記第1コロイドゾルの前記少なくとも1層を乾燥するステップと、
j)50℃超500℃未満の温度に加熱することによって、前記基材に付着している前記第1コロイドゾルによって形成される第1塗膜層を形成するステップと、
を含み、
k)前記第1安定コロイドゾルを形成する前に、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物、ポスト遷移金属酸化物、メタロイド酸化物、ランタニド酸化物、アクチニド酸化物、金属酸化物及び/又は酸化ケイ素を含む第1粉体を、カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する作用物質によって官能化するステップ
を更に含むこと、及び、
前記第1安定コロイドゾルが第2溶媒中でカルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する作用物質によって官能化された前記第1粉体をベースとしており、前記塗膜が均一分布した前記第1粉体で形成されていることを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
前記第1塗膜を形成するために、前記ステップh)及びi)を交互に前記第1粉体の層の数に応じて所定の回数繰り返す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)n番目(n≧2)の粉体を官能化し、Z番目(Z≧n+1)の溶媒中に官能化された前記n番目(n≧2)の粉体を含有するn番目(n≧2)のコロイドゾルを形成するステップと、
b)前記n番目の粉体の前記n番目のコロイドゾルの少なくとも1層を前記(n−1)番目の塗膜で塗装された基材上に塗布するステップと、
c)前記n番目のコロイドゾルの前記少なくとも1層を乾燥するステップと、
を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記n番目の塗膜を形成するために、前記ステップb)及びc)を交互に前記n番目の粉体の層の数に応じて所定の回数繰り返す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
d)50℃超500℃未満の温度に加熱することによって、前記(n−1)番目の塗膜に付着している前記n番目の粉体の前記n番目のコロイドゾルで形成される塗膜層を、形成するステップ
を更に含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び/又は前記n番目のコロイドゾルが水を含有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粉体が、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化パラジウム、酸化銅、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化鉛及びそれらの組合せ、コバルトとリチウム、鉄とマンガン、リチウムとチタンの混合酸化物の群から選択される1種又は複数の酸化物を含む粉体である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び/又はn番目のコロイドゾルが、カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する作用物質の存在下で形成される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1官能化粉体を含有する前記第1コロイドゾルの形成に伴う前記第1粉体の前記官能化ステップが、
a)前記第2溶媒(SO1)中においてカルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する前記作用物質の第1溶液S1を調製するステップであって、前記第2溶媒(SO1)が少なくとも1つのアルコール官能基を含む線状の飽和又は不飽和鎖の有機アルコールから選択されるステップと、
b)前記第1粉体を前記第1溶液S1に分散させることによって、懸濁液Sp1を調製するステップと、
c)希釈溶液S1dを生成するために、水を前記第1溶液S1に添加するステップと、
d)前記希釈溶液S1d及び前記懸濁液Sp1を10℃と前記第2溶媒の還流温度との間に含まれる温度で混合するステップと、
e)前記第1官能化粉体を含有する前記第1コロイドゾルが得られるまで、前記混合物を均質化するステップと
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記n番目(n≧2)の官能化粉体を含有するn番目(n≧2)のコロイドゾルの形成に伴う前記n番目の粉体(n≧2)の前記官能化ステップが、
f)前記Z番目の(Z≧n+1)溶媒(SOZ)中において、カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する前記作用物質のn番目(n≧2)の溶液Snを調製するステップと、
g)前記n番目(n≧2)の粉体を前記n番目(n≧2)の溶液Snに分散させることによって、懸濁液Spnを調製するステップと、
h)n番目(n≧2)の希釈溶液Sndを生成するために、水を前記n番目(n≧2)の溶液Snに添加するステップと、
i)前記n番目(n≧2)の希釈溶液Snd及び前記懸濁液Spnを、10℃と、水及び少なくとも1つのアルコール官能基を含む飽和又は不飽和の直鎖有機アルコール、メトキシエタノール、エタノール、エチレングリコール、1−プロパノール、メタノール、n−ブタノール、2−フェニルエタノール、2−プロパノール及びそれらの混合物の群から選択される前記Z番目(Z≧n+1)の溶媒の還流温度と、の間に含まれる温度で混合するステップと、
j)前記n番目(n≧2)の官能化粉体を含有する前記n番目(n≧2)のコロイドゾルが得られるまで、前記混合物を均質化するステップと
を含む、請求項3〜7のいずれか一項に従属する場合の、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1粉体が官能化溶媒Sf中で官能化され、前記第1コロイドゾルが、
a)前記第1官能化粉体を前記第2溶媒SO1に分散させることによって、懸濁液Sp1を調製するステップと、
b)希釈溶液S1dを生成するために、水を前記第2溶媒SO1に添加するステップと、
c)前記希釈溶液S1d及び前記懸濁液Sp1を10℃と前記第2溶媒SO1の還流温度との間に含まれる温度で混合するステップと、
d)前記第1官能化粉体を含有する中間コロイドゾルが得られるまで、前記混合物を均質化するステップと、
e)前記第1コロイドゾルSOL1を形成するために、カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する作用物質を第3溶媒中に含有する溶液を前記中間コロイドゾルに添加するステップと
によって形成される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記n番目の粉体(n≧2)が官能化溶媒Sf中で官能化され、前記n番目のコロイドゾルが、
f)前記n番目(n≧2)の官能化粉体を前記Z番目(Z≧n+1)の溶媒(SOZ)に分散させることによって、懸濁液Spnを調製するステップと、
g)希釈溶液Sndを生成するために、水を前記Z番目(Z≧n+1)の溶媒に添加するステップと、
h)前記希釈溶液Snd及び前記懸濁液Spnを10℃と前記Z番目(Z≧n+1)の溶媒の還流温度との間に含まれる温度で混合するステップと、
i)前記n番目の官能化粉体を含有する溶液の中間コロイドゾルが得られるまで、前記混合物を均質化するステップと、
j)前記n番目のコロイドゾルSOLnを形成するために、カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する作用物質を第3溶媒中に含有する溶液を前記中間コロイドゾルに添加するステップと
によって形成される、請求項3〜7のいずれか一項に従属する場合の、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2溶媒が、水及び少なくとも1つのアルコール官能基を含む飽和又は不飽和の直鎖有機アルコールからなる群から選択される、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第3溶媒が、水及び少なくとも1つのアルコール官能基を含む飽和又は不飽和の直鎖有機アルコールからなる群から選択される、請求項3から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記Z番目の(Z≧n+1)溶媒が、水及び少なくとも1つのアルコール官能基を含む飽和又は不飽和の直鎖有機アルコールからなる群から選択される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項16】
前記第1溶媒が、エチレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール10,000及びポリエチレングリコール1,500,000、エトキシ化天然脂肪アルコール、ステアリルアルコールをベースとするエトキシ化天然脂肪アルコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び4−ヒドロキシ安息香酸、並びにそれらの混合物の群から選択される添加剤を含む、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記官能化溶媒Sfが、エチレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール10,000及びポリエチレングリコール1,500,000、エトキシ化天然脂肪アルコール、ステアリルアルコールをベースとするエトキシ化天然脂肪アルコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、パラ−ヒドロキシ安息香酸、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する前記作用物質が、アルコール鎖を有する単官能又は多官能カルボン酸、ベンゼン環を有する単官能又は多官能カルボン酸、飽和若しくは不飽和の炭素鎖を有する単官能又は多官能カルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、及びそれらの混合物の群から選択される、請求項1から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
基材と粉体をベースにした少なくとも1つの塗膜とを含む材料であって、
前記基材が、金属、又は二酸化チタンもしくは酸化ケイ素で塗装された他の材料からなる群から選択され、前記金属は、圧延又は非圧延、塗装又は非塗装の形鋼又は非形鋼、低、中、又は高炭素鋼、ステンレス平鋼又は形鋼、他の支持体に付着させた白金、圧延又は非圧延の、成形されたアルミニウム、シート被覆鋼、プレコート鋼、アルミニウム板又は二酸化チタンの層で塗装された鋼板からなる群から選択され、
前記塗膜が前記粉体からなり、前記基材への接着力がASTM4541規格に従って17N/mmを超えることを特徴とし、
前記粉体が、コバルトとリチウム、鉄とマンガン、リチウムとチタンの混合酸化物の群から選択される酸化物を含む粉体である、上記材料。
【請求項20】
n番目の粉体をベースにしたn番目(n≧2)の塗膜を更に含み、前記n番目の塗膜が前記n番目の粉体からなる、請求項19に記載の材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と粉体をベースにした塗膜とを含む複合材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、例えば、その表面が不完全であり、柔軟であり得るので酸化イットリウム層で塗装しなければならない基材を塗装する方法が記載されている文献WO2012005977により公知である。この文献の教示によれば、溶媒中酸化イットリウム前駆体の溶液が、一層の溶液で基材を塗装することによって施用される。次に、溶媒を除去するために基材が加熱され、酸化物前駆体が酸化イットリウムに変換される。この一連のステップは繰り返すことができる。
【0003】
残念なことに、このような方法では、酸化イットリウム前駆体の酸化イットリウムへの変換を実施するのに多大なエネルギーが必要であり、現在ますます厳しくなる環境規制に相反する。更に、得られた塗膜には凸凹を塞ぐことが期待されるが、基材を均質に被覆するのに適しているようには思われない。本発明において、「焼成」という用語は、鉱物試料を空気中又は中性雰囲気中で高温(典型的には500℃を超え、最高で約1,200℃)まで加熱することからなるステップを意味する。これに対し、「燃焼」という用語は、支燃性物質、例えば空気又は純酸素の存在下に有機試料を加熱し、典型的には水及びCOを生成することからなるステップを意味し、このステップは典型的には550℃未満の温度で行われる。
【0004】
電気分解(ELD)又は電気泳動(EPD)によるセラミック材料の電着のような他の方法も当該技術状態において公知である。電着は、電場印加時における荷電粒子の移動によって実施される。これらの荷電粒子は最初に溶液状態であり、電極に付着する。粒子が次いで付着する陰極反応において、粒子の電気分解による付着がコロイド粒子を生成させる。
【0005】
残念なことに、この種の方法では、大面積にわたってこれらのコロイド粒子を塗布しようとする場合、それに見合った設備が必要であることがしばしばであり、ELD法又はEPD法により、コロイド粒子を得てから移動させるために又はコロイド粒子を単に移動させるだけで比較的大量のエネルギーが必要である。
【0006】
電気分解による粒子の付着という枠の中においても、粒子間力が存在し、コロイド懸濁液の凝固、添加剤の存在の一般的必要性といった多数の欠点を引き起こす恐れがある。
【0007】
したがって、場合によっては、これにより、塗膜が非均質になり、望ましくない汚染分子が存在する結果となる。
【0008】
最近、Zhitomirskyら(J.Colloid.Interface Science 352(2010−371頁乃至378頁))は、TiO及びMnOフィルムを作製するために電気分解による粒子の付着を研究した。4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、サリチル酸及びそのナトリウム塩など安息香酸をベースとし、フェノール性分子を含むコロイド懸濁液のいくつかの添加剤を試験した。安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸及び3,5−ジヒドロキシ安息香酸を含有する懸濁液のカソードにおける付着物並びに没食子酸又はサリチル酸ナトリウム塩を含有する懸濁液のアノードにおける付着物について、添加剤の濃度及び付着時間に対する付着収率を調査した。
【0009】
OH基数の違うフェノール性分子について得られた結果を、OH基を含まない安息香酸について得られた結果と比較して分析した。酸化物粒子上への分子の吸着にとって、OH基は、フェノール性分子の芳香族環に結合しているCOOH基に隣接したOH基であっても有益である。吸着機構は、有機分子のCOOH基及びOH基と粒子の表面の金属イオンとの相互作用を伴うように思われる。没食子酸は、懸濁液中におけるTiO及びMnO粒子の安定化を実現し、それらの付着を可能にする有効なフィラー添加剤である。TiO−MnOを含有する複合フィルムは、TiO及びMnOに共通の分散剤として没食子酸を用いて得ることができる。複合フィルムのTi/Mn比は最大で1.3に及ぶ可能性がある。フィルムの厚さは最大で10μmに及ぶ可能性がある。そこに開示されている酸化物懸濁液によって塗膜が更に形成されるが、その付着性は開示されていない。この文献の教示を再現すると更にフィルムの付着に導かれるが、そのフィルムは容易に除去され、したがって非付着性である。
【0010】
残念なことに、これらの技法はエネルギーの消費量が大きく、一般に実施するのに費用がかかる。
【0011】
更に、白金で被覆されたシリコンディスク又は鋼板上への粉体粒子のPVD(物理蒸着法)による付着物も公知である。残念なことに、これらの方法も、層の付着に対して適した条件(高真空)を保証するためにかなりのエネルギー消費量を伴い、また付着が遅く、工業生産に適合させることが困難である。更に、このような設備のコストは法外に高い。
【0012】
今日では、ゾル−ゲル経路を介したガラス物体(光学ガラス又は建築産業で使用されるガラス)への付着が上記の付着方法及び工程に対する代案であるが、たいていは付着層において必ずしも特に望ましいとは限らない材料又は元素の存在を導入する。
【0013】
したがって、基材及びゾル−ゲル経路を介したこれらの方法による塗膜を含む複合材料製品は、当初は機能をもたない表面に特定の機能を付与する目的で、光学、電子工学、建築産業の領域の市場の関心が増大しているが、家庭用電気器具、建築産業における自浄性材料、より具体的には光起電力表面若しくは太陽集光装置の表面といったグリーンエネルギー市場向けの材料、リチウムイオン電池、超コンデンサなどのエネルギー貯蔵デバイス向けの材料、更には触媒材料といった様々な領域の市場の関心も増大している。
【0014】
上述の市場の関心は、混合酸化物の塗装層又は複合材料層を付着することができる能力にもある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、より具体的には、基材と粉体をベースにした塗膜とを含む複合材料を製造する方法であって、
a)少なくとも1種の第1アルコール溶媒を含有する第1溶液を用いた前記基材の表面処理を含む、基材を官能化するステップと、
b)第1安定コロイドゾルを形成するステップと、
c)前記第1コロイドゾルの少なくとも1層を官能化基材上に少なくとも1回塗布するステップと、
d)前記第1コロイドゾルの前記少なくとも1層を乾燥するステップと、
e)50℃超500℃未満の温度に加熱することによって、前記基材に付着している前記第1コロイドゾルによって形成される第1塗膜層を形成するステップと
を含む方法に関する。
【0016】
この種の方法は、E. Gressel−Michelらの「マイクロ波フラッシュ合成TiOコロイド懸濁液からTiO薄膜(From a microwave flash−synthesized TiO2 colloidal suspension to TiO2 thin films)」という名称の論文により公知であり、その論文はTiCl及びHClを含有する水溶液をマイクロ波に曝露することからなるMWAR(マイクロ波オートクレーブ反応器)法で合成されたTiOのコロイドゾルを調製する方法を教示する。次いで、TiOのコロイドゾルをベースとする薄層を浸漬(ディップ塗装)により基材上、例えばエタノール中で予め官能化されたソーダ石灰ガラスに塗布する。
【0017】
残念なことに、この種の方法では、前駆体(TiCl及びHCl)から酸化物がその場で生成するので、酸化物の特性の完全な制御を行うことができない。更に、この文献には、薄層のXRDによる特性決定を行うことができなかったことが開示され(文献の項目3.5)、この開示は読者をTiOをベースとする薄層は結晶化しておらず、純粋なアナタース形でないという結論に導く。最後に、この方法はマイクロ波オートクレーブ反応器(MWAR)の使用を伴い、そのことがこの方法を経済上及び実用上の見地から見て限定的なものとする。
【0018】
上述からわかるように、現行の公知方法、特に本明細書で先に記載した方法には、エネルギー需要、使用される物質の性質、又は酸化物が前駆体からその場で形成され、それらの特性の完全な制御を行うことができないという点に重大な欠点がある。
【0019】
他方では、得られる複合材料製品は、有利には、親水性、電気伝導、触媒活性、帯電防止性、イオン伝導、制御された気孔率及び制御された透過率の組合せ又は非組合せのような塗膜特性が、粉体、特にその中に組み込まれている酸化物の塗膜特性と同一又はほとんど同一であるべきである。したがって、基材上の塗装粉体は、基材上への付着方法の間における劣化又は変質をできる限り少なくするべきである。更に、塗膜の基材上への付着性は高くあるべきであり、塗膜を形成するのに塗布された粉体の粒子は基材の表面上に均一に分散されるべきである。このことは、多くの場合、塗膜層として付着させる粉末状材料が、層が付着されるべき基材に対して低い親和性を示すに過ぎず、ナノメートルスケールでの材料の凝離を付着時に回避するのがしばしば困難であるので、達成するのはしばしば困難である。
【0020】
本発明の目的は、エネルギー的に費用のあまりかからず、塗膜の付着性が最適であり、塗膜内における粒子分布が均一であり、そのようにすることによって均質特性を塗膜全体にわたって基材に付与し、塗布される粉体の塗膜が塗膜を形成する際に粉体の性質及び特性を保持するような仕方で、粉体、特に酸化物の付着を可能にする方法を提供することによって、従来技術の欠点を解消することである。
【0021】
この課題を解決するために、最初に示した本発明による方法であって、
f)前記第1安定コロイドゾルを形成する前に、第1粉体を官能化するステップ
を更に含むこと、及び、前記第1安定コロイドゾルが第2溶媒中で官能化された前記第1粉体をベースとしており、前記塗膜が均一分布した前記第1粉体で形成されている方法が提供される。
【0022】
これは上述からわかるように、本発明でいうところの塗膜を形成するために塗布される粉体は官能化され、溶媒中に官能化粉体を含有するコロイドゾルを形成する。目標は、粉体中に存在するが基材上には存在しない特性/機能と同一の特性/機能を基材上に固定することである。
【0023】
本発明でいうところのコロイド又はコロイドゾルは、混合物を均質とするのに十分に小さい粒子をコロイド懸濁液として含有する液体又はゲルの形の物質である。本発明でいうところのコロイドゾルは、通常2から1,000ナノメートル、好ましくは2から500ナノメートル、更に優先的には2から200ナノメートルの粒径を有する固体粒子の均質な分散体を形成する。
【0024】
確実に基材の規則的で均質な塗膜となるようにすることが可能であるコロイドゾルを得るために、安定コロイドゾルを得るべきである。コロイド溶液の安定性は粒子及び粒子間に影響を及ぼす吸引相互作用と反発相互作用との間のバランスに起因し、本発明によれば、任意選択でカルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する作用物質の存在下に溶媒、例えばアルコールの特定の使用による。本発明によれば、安定コロイドゾルを少なくとも24時間、好ましくは少なくとも3日間、又は更には数週間若しくは数か月得ることができた。そのことにより、粉体の粒子が完全に分散している均質な塗膜を得ることができた。安定性の期間という概念は使用される酸化物によるであろう。例えば、MnOは本発明によるコロイドゾルにおいて5か月間の安定性を示すが、LiCoOは少なくとも1日乃至14日間の安定性を示す。それゆえ、本発明に従ってコロイドゾルを調製すれば、ナノメートル粒子の凝離なく均質ゾルを得ることが可能となり、選択された粉状生成物の均質層を実現することが可能になる。したがって、ゾルの処方は、その後に多様な付着方法で使用することができる能力である良好な均質性を保証するように適合される。
【0025】
実際に、とりわけ本発明によるコロイドゾルの安定性により、多くの塗布技法の使用が可能になる。例えば、Elcometer 4340など、例えば2乃至6μmなどの所定深さのスパイラルバーを任意選択的に装備したバー塗装用アプリケーター(バーコーター)、浸漬による塗装用アプリケーター(ディップコーター)、遠心コーター(スピンコーター)、吹付け塗装で用いられるコーター(スプレーコーター)、スライド塗装で用いられるコーター(スライドコーター)、スクリーン印刷用の印刷機(スクリーン印刷機)、及びスロットコーター(スライドコーター)、インクジェット式印刷機、更にはロールを備えたコーター(ロールコーター)などのフィルムの自動アプリケーターなどである。このようにして、コロイドゾルはその均質性及びその安定性ゆえ、様々な方式で、異なる多くの基材上に塗布することができる。平面形状かどうかを問わない基材、糸、繊維、可撓性基材、更には接着性が保留された状態であるので成形以前の基材などである。したがって、本発明によるこの方法によって、考えられる複数の機能、複数の基材と粉体の使用が可能となる。次いで、本発明によるコロイドゾル層の反復塗布による粉体の1層又は複数層の塗布によって得られたフィルムは低温で注意深く乾燥され、なんら電気化学現象を必要としない。
【0026】
したがって、本発明による方法は、エネルギーの点から要求の厳しい方法に頼ることなく、粉体、特に酸化物由来の塗膜の層を付着させることができ、また本発明の範囲内では結合剤はステップe)において50乃至500℃の温度に加熱することによって燃焼ステップで除去されるのであるから、塗膜に残存し得る結合剤にも頼らないので、粉体の形状の生成物の純度に応じて作製された付着物の純度を保証することができる。したがって、特定の特性(例えば、触媒、光触媒、伝導、着色特性)を備えた粉体、特に酸化物の粉体は、形成された付着性塗膜を介してその同じ特定の特性を基材に、塗装された基材の表面全体にわたって均一に付与する。接着性は塗膜の品質にとって本質的な特性であるので、基材は本発明に従って第1アルコール溶媒での処理に由来するOH基で予め官能化される。付着させる前記粉体も官能化され、前記第2溶媒中で前記官能化粉体のコロイドゾルを形成する。
【0027】
更に、本発明による方法において、50℃超500℃未満の温度での加熱による処理の後に前記基材に付着している塗膜が得られる。この加熱は、前記アルコール溶媒及びカルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する作用物質(単数又は複数)、特に、コロイドゾルを形成し、表面及び粉体を官能化するのに使用されるカルボン酸(単数又は複数)の蒸発及び/又は燃焼を可能にする。このようにして塗膜の純度は保証され、基材は、プロセスの出口において、純粋な、しかも結合剤が塗膜に残存しない粉体から形成された付着性塗膜で塗装される。理解されるとおり、熱処理は燃焼、すなわち穏やかな処理であり、いわゆる焼成温度の使用を必要とせず、したがって環境影響が限定される。というのは、温度と関連した特性(例えば、温度によって引き起こされる結晶化度や光活性)を得るために過度のエネルギーを付着に供給する必要がないからである。
【0028】
最後に、本発明による方法の一連のステップは工業運転ラインと両立する反応速度を有し、これによって既存の塗装ラインに比較して追加の機器を必ずしも必要とすることなく容易に適応可能になるということを強調しなければならない。
【0029】
前記第1塗膜を形成するために、前記ステップc)及びd)を交互に前記第1粉体の必要とされる層の数に応じて所定の回数繰り返すことが有利である。
【0030】
このようにして、本発明によれば、コロイドゾルのいくつかの層で形成された塗膜を得ることができる。50℃超500℃未満の温度に加熱することによる、前記基材に付着している前記コロイドゾルで形成される塗膜の形成は、連続ステップc)及びd)を所定の回数、例えば10回行った後にしか必要でない。したがって、ステップc)及びd)を10回繰り返し、ステップe)を適用し、引き続いて再度ステップc)及びd)の塗布を10回行い、所望の厚さが得られた後、第2のステップe)を選択することによって、所望の厚さの塗膜を得ることができる。
【0031】
本発明による別の実施形態において、本方法は、下記のステップを更に含む:
a)n番目(n≧2)の粉体を官能化し、Z番目(Z≧n+1)の溶媒中に官能化された前記n番目(n≧2)の粉体を含有するn番目(n≧2)のコロイドゾルを形成するステップと、
b)前記n番目の粉体の前記n番目のコロイドゾルの少なくとも1層(one layer)を前記(n−1)番目の塗膜(coating)で塗装された(coated)基材上に塗布する(application)ステップと、
c)前記n番目のコロイドゾルの前記少なくとも1層を乾燥するステップと、
d)50℃超500℃未満の温度に加熱することによって、前記(n−1)番目の塗膜に付着している前記n番目の粉体の前記n番目のコロイドゾルで形成される塗膜層を任意選択的に形成するステップ。
【0032】
これはわかるように、本発明の方法によれば、(それ自体任意選択的に複数の粉体の混合物であってもよい)第1粉体からの第1塗膜が設けられている基材を形成すること、及びこの第1塗膜上に第2塗膜を形成すること、及び所望の一連の塗膜を得ることまで可能である。したがって、本発明に従って得られた塗装基材としては、塗膜A、塗膜B、塗膜C及び塗膜Dのみならず、塗膜A、塗膜B、塗膜A及び最後にまた塗膜Bで塗装された基材(他の任意の組合せが更に可能である)を挙げることができる。
【0033】
前記n番目の塗膜を形成するために、前記ステップb)及びc)を交互に前記n番目の粉体の層の数に応じて所定の回数繰り返すことが有利である。
【0034】
このようにして、本発明によれば、n番目のコロイドゾルの複数の層で形成された塗膜を得ることができる。50℃超500℃未満の温度に加熱することによって、前記基材に付着している前記コロイドゾルで形成される塗膜の形成は、一連のステップb)及びc)を所定の回数、例えば10回行った後にしか必要とされない。したがって、ステップb)及びc)を10回繰り返し、ステップd)を適用し、引き続いて再度ステップb)及びc)を10回適用し、所望の厚さが得られた後、第2ステップd)を選択することにより所望の厚さの塗膜を得ることができる。一代替形態では、第1粉体を用いてステップb)及びc)を数回適用し、n番目の粉体を用いてステップb)及びc)を数回適用し、次いで単純に50℃超500℃未満の温度に加熱することによって前記基材に付着している前記コロイドゾルで形成される塗膜を形成することが可能である。
【0035】
前記第1及び/又は前記n番目のコロイドゾルは水を含有する場合もある。
【0036】
好ましくは、前記粉体は、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物、ポスト遷移金属酸化物(post−transition metal oxide;un oxyde de metal pauvre)、メタロイド酸化物、ランタニド酸化物、アクチニド酸化物、好ましくは金属酸化物及び/又は酸化ケイ素を含む粉体であり、より優先的には酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化パラジウム、酸化銅、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化鉛及びそれらの組合せ、例えばコバルトとリチウム、鉄とマンガン、リチウムとチタンなどの混合酸化物などの群から選択される1種又は複数の酸化物を含む粉体などである。
【0037】
本発明の有利な実施形態において、前記基材は金属、ガラス又は石英、セラミック支持体、又は二酸化チタン若しくは酸化ケイ素で塗装された他の任意の材料からなる群から選択され、特に酸化物が均一分布し、その初期の特性を保持していることが望ましい場合に、これらの基材を酸化物で塗装するのは特に困難であるのであるから、好ましくは金属、セラミック支持体又は二酸化チタン若しくは酸化ケイ素で塗装された他の任意の材料である。
【0038】
好ましくは、前記金属は、圧延又は非圧延、塗装又は非塗装の形鋼又は非形鋼、特に低、中、又は高炭素鋼、ステンレス平鋼又は形鋼、任意選択的に他の支持体に付着させた白金、圧延又は非圧延の、任意選択的に成形されたアルミニウムからなる群から選択され、より具体的には、前記金属がシート被覆鋼、プレコート鋼、アルミニウム板又は二酸化チタンの層で塗装された鋼板の群から選択される。
【0039】
前記ガラス又は石英は、アルカリガラス又は非アルカリガラス、板ガラス又は例えば、管、糸若しくは繊維などの形状の成形ガラス、シート、管、糸又は繊維の形状の石英などからなる群から選択されることが有利である。
【0040】
前記第1及び/又はn番目のコロイドゾルがカルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する作用物質の存在下で形成されることが有利である。
【0041】
更に詳細には、前記第1官能化粉体を含有する前記第1コロイドゾルの形成に伴う前記第1粉体の前記官能化ステップ(ステップa)及びb))は、以下のステップを含む:
a)前記第2溶媒SO1中においてカルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する前記作用物質の第1溶液S1を調製するステップであって、前記第2溶媒SO1が少なくとも1つのアルコール官能基を含む線状の飽和又は不飽和鎖の有機アルコールから選択されるステップと、
b)前記第1粉体を前記第1溶液S1に分散させることによって、懸濁液Sp1を調製するステップと、
c)希釈溶液S1dを生成するために、水を前記第1溶液S1に添加するステップと、
d)前記希釈溶液S1d及び前記懸濁液Sp1を10℃と前記第2溶媒の還流温度との間に含まれる温度で混合するステップと、
e)前記第1官能化粉体を含有する前記第1コロイドゾルが得られるまで、前記混合物を均質化するステップ。
【0042】
有利には、均質化は、超音波を用いて任意選択的に改善できる。したがって、付着させる前記粉体は、前記第2アルコール溶媒により、他方ではカルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する前記作用物質により官能化され、安定コロイドゾルSOL1の形成を可能にする。
【0043】
更に、特定の一実施形態において、前記n番目(n≧2)の官能化粉体を含有するn番目(n≧2)のコロイドゾルの形成に伴う前記n番目の粉体(n≧2)の前記官能化ステップ(ステップa及びb)は以下のステップを含む:
a)前記Z番目の(Z≧n+1)溶媒SO2中において、カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する前記作用物質のn番目(n≧2)の溶液Snを調製するステップであって、当該溶媒が少なくとも1つのアルコール官能基を含む直鎖の飽和又は不飽和の有機アルコールから選択されるステップと、
b)前記n番目(n≧2)の粉体を前記n番目(n≧2)の溶液Snに分散させることによって、懸濁液Spnを調製するステップと、
c)n番目(n≧2)の希釈溶液Sndを生成するために、水を前記n番目(n≧2)の溶液Snに添加するステップと、
d)前記n番目(n≧2)の希釈溶液Snd及び前記懸濁液Spnを10℃と前記Z番目(Z≧n+1)のアルコール溶媒の還流温度との間に含まれる温度で混合するステップと、
e)前記n番目(n≧2)の官能化粉体を含有する前記n番目(n≧2)のコロイドゾルが得られるまで、前記混合物を均質化するステップ。
【0044】
均質化は、超音波を用いて任意選択的に改善できる。この場合も、付着させる前記粉体は、前記Z番目のアルコール溶媒により、他方ではカルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する前記作用物質を形成するために、カルボキシル基により官能化され、安定コロイドSOLnが更に形成される。
【0045】
本発明による代替形態では、コロイドゾルを形成する前に付着させる粉体の予備官能化を実施するために、前記第1粉体が官能化溶媒Sf中、任意選択的に水の存在下に以下のステップで官能化されることが有利である:
a)前記第1官能化粉体を前記第2溶媒SO1に分散させることによって、懸濁液Sp1を調製するステップと、
b)希釈溶液S1dを生成するために、水を前記第2溶媒SO1に添加するステップと、
c)前記希釈溶液S1d及び前記懸濁液Sp1を10℃と前記第2溶媒SO1の還流温度との間に含まれる温度で混合するステップと、
d)前記第1官能化粉体を含有する中間コロイドゾルが得られるまで、前記混合物を均質化するステップと、
e)前記第1コロイドゾルSOL1を形成するために、カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する作用物質を第3溶媒、好ましくはアルコール溶媒中に含有する溶液を前記中間コロイドゾルに添加するステップ。
【0046】
別の代替形態では、下記のステップによりコロイドゾルを形成する前に、付着させる粉体の予備官能化を実現するために、前記n番目(n≧2)の粉体は官能化溶媒Sf中、任意選択的に水の存在下に官能化される:
a)前記n番目(n≧2)の粉体を前記Z番目(Z≧n+1)の溶媒(SOZ)に分散させることによって、懸濁液Spnを調製するステップと、
b)希釈溶液Sndを生成するために、水を前記Z番目(Z≧n+1)の溶媒に添加するステップと、
c)前記希釈溶液Snd及び前記懸濁液Spnを10℃と前記Z番目(Z≧n+1)の溶媒の還流温度との間に含まれる温度で混合するステップと、
d)前記n番目の官能化粉体を含有する溶液の中間コロイドゾルが得られるまで、前記混合物を均質化するステップと、
e)前記n番目のコロイドゾルSOLnを形成するために、カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する作用物質を第3溶媒、好ましくはアルコール溶媒中に含有する溶液を前記中間コロイドゾルに添加するステップ。
【0047】
本発明の特に優先的な実施形態において、前記第1アルコール溶媒、前記第2溶媒、前記第3溶媒及び前記Z番目(Z≧n+1)の溶媒は互いに独立に、水及び少なくとも1つのアルコール官能基を含む飽和又は不飽和の直鎖有機アルコールからなる群から選択され、好ましくはメトキシエタノール、エタノール、エチレングリコール、1−プロパノール、メタノール、n−ブタノール、2−フェニルエタノール、2−プロパノール及びそれらの混合物の群から選択され、同一でも異なってもよい。
【0048】
本発明による有利な代替形態では、前記第1アルコール溶媒は、好ましくはエチレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール10000及びポリエチレングリコール15,00000、エトキシ化天然脂肪アルコール、好ましくはステアリルアルコールをベースとするエトキシ化天然脂肪アルコール、より具体的にはBrij(登録商標)S10、Pluronic F12(登録商標)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び4−ヒドロキシ安息香酸、並びにそれらの混合物の群から選択される添加剤を含む。
【0049】
優先的な実施形態によれば、前記官能化溶媒は、エチレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール10000及びポリエチレングリコール15,00000、エトキシ化天然脂肪アルコール、好ましくはステアリルアルコールをベースとするエトキシ化天然脂肪アルコール、より具体的にはBrij(登録商標)S10、Pluronic F12(登録商標)、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、パラ−ヒドロキシ安息香酸、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0050】
優先的に、カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する前記作用物質は、任意選択的にアルコール鎖及び/又は任意選択的にベンゼン環を有し、及び/又は飽和若しくは不飽和の炭素鎖を有する単官能又は多官能カルボン酸の群から選択されるカルボン酸又は関連するカルボキシラートであり、好ましくはカルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する前記作用物質は4−ヒドロキシ安息香酸である。
【0051】
有利には、カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する前記作用物質はカルボキシルアミノ酸、特にチロシンである。
【0052】
本発明による方法の他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0053】
本発明は、例えば本発明による方法で得られた複合材料をも目的とする。
【0054】
特に、本発明は、基材と粉体をベースにした少なくとも1つの塗膜とを含む材料であって、前記塗膜が前記粉体からなり、前記基材への付着力がASTM4541規格に従って17N/mmを超えることを特徴とする、材料に関する。
【0055】
材料は、本発明によればn番目の粉体をベースとするn番目(n≧2)の塗膜を備え、前記n番目の塗膜は前記n番目の粉体からなることが有利である。
【0056】
本発明による材料において、前記粉体は、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物、ポスト遷移金属酸化物(post−transition metal oxide;un oxyde de metal pauvre)、メタロイド酸化物、ランタニド酸化物、アクチニド酸化物、好ましくは金属酸化物及び/又は酸化ケイ素、より優先的には酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化パラジウム、酸化銅、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化鉛及びそれらの組合せ、例えば、コバルトとリチウム、鉄とマンガン、リチウムとチタンの混合酸化物などの群から選択される1種又は複数の酸化物を含む粉体である。
【0057】
本発明による特定の実施形態において、前記基材は金属、ガラス又は石英、セラミック支持体、二酸化チタン及び酸化ケイ素で塗装された他の任意の材料からなる群から選択される。
【0058】
好ましくは、圧延又は非圧延、塗装又は非塗装の形鋼又は非形鋼、特に低、中、又は高炭素鋼、ステンレス平鋼又は形鋼、任意選択的に他の支持体に付着させた白金、圧延又は非圧延の、任意選択的に成形されたアルミニウムからなる群から選択され、より具体的には、前記金属はシート被覆鋼、プレコート鋼、アルミニウム板又は二酸化チタンの層で塗装された鋼板の群から選択される。
【0059】
或いは、前記ガラス又は石英は、アルカリガラス又は非アルカリガラス、板ガラス又は例えば、管、糸若しくは繊維などの形状の成形ガラス、シート、管、糸又は繊維の形状の石英などからなる群から選択される。
【0060】
本発明による複合材料の他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0061】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、非限定的なものとして、添付の図面及び下記の実施例を参照しながら以下に示す説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1a】本発明による方法の一実施形態を示すブロック図である。
図1b】本発明による方法の有利な一実施形態を示すブロック図である。
図2】TEM(透過型電子顕微鏡)及びXRD(X線回折)により、例1で得られた粉体の特性決定を示す図である。
図3】例1において基材上に得られた塗膜のXRDによる特性決定を、図2において特性決定された粉体と比較して示す図である。
図4図2において特性決定された粉体から基材上に得られた塗膜のEDX(エネルギー分散型X線分光法)による元素特性決定を示す図である。
図5図2において特性決定された粉体から基材上に得られた図3の塗膜のEDXマッピングを示す図である。
図6図2において特性決定された粉体から基材上に得られた図3の塗膜のTG−DSC(熱重量−示差走査熱量測定)による分析及び図2において特性決定された粉体の分析の結果を示すグラフである。
図7】むき出しの基材又は図2において特性決定された粉体から基材上に得られた図3の塗膜で塗装された基材の存在下、食品成分を代表する有機分子(脂肪酸)の低温分解速度を比較するグラフである。
図8】比較例2の反応生成物(MnO粉体)のXRDによる特性決定を示す図である。
図9】比較例3を乾燥した後のR−MnO(MnOラムスデライト)膜の回折プロファイル(XRD)を示す図である。
図10a】比較例6で浸漬塗装することによって得られた3層の塗膜の回折プロファイル(XRD)を示す図である。
図10b】は比較例6で浸漬塗装することによって得られた3層の塗膜のSEM写真を示す図である。
図11図11a及び図11bは、例4のLiCoOゾルのスピン塗装及び500℃での1時間の焼成を行う前(図11b)と後(図11a)のALUSI(登録商標)のプレートの写真を比較する図である。
図12図12a及び図12bは、例5に従ってLiCoOゾルのスピン塗装及び500℃での1時間の焼成を行った後のPt/Siプレートの中の1枚の写真を比較する図である。
図13】例5に従ってLiCoO−Cコロイドを塗布する前に白金プレートのXRDのグレージング角でのX線回折プロファイルを示す図である。
図14】例5に従ってLiCoO−C系のスピン塗装及び焼成を適用した後の白金プレートのX線回折プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図面において、同一又は類似の要素には同じ符号を付してある。
【0064】
これは図1aでわかるように、本発明はそれゆえ、基材と粉体をベースにした塗膜とを含む複合材料を製造する方法に関する。本方法の第1ステップは基材の官能化にある(ステップ7)。最初に、基材は、例えば脱脂剤Chemetall Gardoclean S5183などの市販の工業用脱脂剤で脱脂される。次いで、基材を水で洗浄し、その後アルコール溶媒、任意選択的に水で処理し、カルボン酸と任意選択的に混合する。使用されるアルコール溶媒SOAは、少なくとも1つのアルコール官能基を備えた直鎖の飽和又は不飽和の有機アルコールから選択されたアルコールであり、更に具体的にはエタノール基を含むアルコールであり、更に具体的にはエタノールである。
【0065】
次いで、基材を、乾燥空気を用いて、好ましくは60と150℃との間に含まれる温度で乾燥させる。基材の表面処理は表面の第1官能化に対応する。この表面処理によって、選択された分子をそこにグラフトすることができ、したがって反応性表面を得ることができ、次いで形成されたコロイドゾルと反応させることができる。
【0066】
これは図1aでわかるように、本発明による方法は、懸濁液(SP)を得るために、カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する少なくとも1種の作用物質及び第2アルコール溶媒、及び任意選択的に水を前記粉体に添加することによる粉体の官能化(1)をも含む。
【0067】
好ましくは、第1コロイドゾルSOL1を以下のようにして調製する。第1粉体P1は、前記基材の塗膜に求められている特性に応じて選択される。上述したように、この粉体P1は、酸化物粉体、酸化物の混合物の粉体、又は同一若しくは異なる性質の混合酸化物である。
【0068】
アルコール溶媒(先に第2アルコール溶媒と呼んだもの)SO1と単官能若しくは多官能カルボン酸AC1又はカルボキシラートとの混合物を含有する溶液S1を調製する。アルコール溶媒中のカルボン酸の濃度は0.001から2g/Lである。
【0069】
次いで、粉体P1を溶液S1中に、10g/Lを超えると溶液は飽和するので、1乃至10g/Lの範囲に含まれる濃度量で分散させ、得られた分散体は毎分100回転と毎分5000回転の間に含まれる速度で攪拌しながら超音波で15分乃至60分間均質化する(6)。それによって均質化した分散体を懸濁液Sp1と呼ぶ。懸濁液Sp1では、モル比AC1/P1は0.001と1との間に含まれる。
【0070】
溶液S1への水の添加は、水中における濃度が1乃至50g/Lになるまで実行される。それによって希釈された溶液S1(S1d)を、10℃と溶媒SO1の還流温度との間に含まれる温度で懸濁液Sp1と混合し、コロイドゾルSOL1を形成するために、毎分100回転と毎分5000回転との間に含まれる速度で撹拌しながら超音波で15分乃至96時間均質化する。次いで、コロイドゾルSOL1を1時間と16時間との間に含まれる時間傾瀉する。
【0071】
第2アルコール溶媒SO1は、少なくとも1つのアルコール官能基を備えた、エチレングリコールの、直鎖の飽和又は非飽和の有機アルコールの群から選択されるアルコールであり、メトキシエタノールが好ましいが、これに限定されない。
【0072】
カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する作用物質は、アルコール官能基含有又は不含、ベンゼン環含有又は不含、及び飽和炭素鎖含有又は不含の単官能又は多官能カルボン酸の群から選択されるカルボン酸AC1であり、好ましくはパラ−ヒドロキシ安息香酸であるが、これに限定されない。
【0073】
図1bは、この有利な実施形態が粉体の予備官能化(PF)を更に含む点を除いて図1aについて記載された方法のすべてのステップを含む。予備官能化は、コロイドゾルを生成する前に予備官能化溶媒中で行われる(Spf)。予備官能化ステップ(PF)は、十分に官能化された粉体が得られるように1回又は複数回繰り返すことが有利である。続いて使用される官能化溶液(1)は、優先的には第1官能化において使用される性質と同一又は異なる性質を有するものであり、任意選択的に水を含有してもよい。有利には、予備官能化ステップにカルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する作用物質の粉体への添加を含めれば、後続の官能化ステップでは、粉体を官能化するのに、カルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する少なくとも1種の作用物質、特にカルボン酸の使用を必要としない。
【0074】
予備官能化(PF)は、第1溶媒、次いで任意選択的に第2溶媒を用いて粉体を予備官能化することからなる。次に、濾過を行い、それによって得られた固体を乾燥すると、この場合には予備官能化された粉末P1が形成する。
【0075】
これは基材に塗膜を付着させる後続のステップを同様に示す図1a及び1bでわかるように、第1粉体P1が選択され、官能化溶媒及び任意選択的に水を含有する官能化溶液Sfに分散される。溶液Sfに分散させた粉体P1を、毎分100乃至5,000回転の速度で24時間撹拌しながら超音波で15乃至60分間均質化する(Sf P1懸濁液)。次に、この粉体を濾過により回収し、水ですすいだ後に乾燥した。この固体は官能化された粉末P1である。
【0076】
次いで、官能化された粉体P1を前記第2溶媒に1乃至10g/Lの濃度量で分散させる。得られた分散体を、毎分100回転と毎分5,000回転との間に含まれる速度で撹拌しながら超音波で15乃至96時間均質化する。
【0077】
このように均質化された分散体をSp1と呼ぶ。
【0078】
次いで、希釈溶液S1dを生成するため、前記第2溶媒SO1への水の添加を同様に行った。
【0079】
こうして、S1dを、10℃と溶媒SO1の還流温度との間に含まれる温度でSp1と混合し、中間コロイドゾルを形成するために、毎分100回転と毎分5000回転との間に含まれる速度で撹拌しながら超音波で15分乃至240分間均質化し、次いで1時間と16時間の間に含まれる時間傾瀉する。
【0080】
最後に、前記SOL1を形成するために、アルコール溶媒中にカルボキシル又はカルボキシラート官能基を有する作用物質、特にカルボン酸AC1を含有する溶液を中間コロイドゾルに添加する。
【0081】
次いで、このように形成されたコロイドゾルを、ディップ塗装、任意選択的に螺旋状のバー、気化、遠心分離その他の慣用の塗装技法(2)によって塗布する。次いで、塗布したコロイドゾル層を低温(3)で加熱することによって、すなわち、例えば、必要に応じて、任意選択的にもう1回塗布する前に、溶媒の一部を蒸発させるため、任意選択的に水の存在下で5秒乃至5時間、しかしより具体的には5秒乃至0.5時間、好ましくは5秒乃至5分間にわたる時間、50と190℃との間、より具体的には60と110℃との間、優先的には75と90℃との間に含まれる温度で、0.05と15バールとの間、より具体的には0.5と2.5バールとの間、優先的には0.7と1.3バールとの間に含まれる絶対圧力で、オーブンに通すことによって乾燥させる。いくつかの層が必要な場合には、第2、次いで第3のコロイドゾル層を順に塗布し、次の層を塗布する前にその都度乾燥させる。
【0082】
所定数の層を塗布した(同じ生成物の連続塗布又は異なる生成物の連続塗布)後、50℃超、500℃以下の温度、より具体的には150と500℃との間に含まれる温度、好ましくは285乃至415℃、好ましくは300と350℃との間の温度範囲で加熱することによって(4)、基材に付着する、前記コロイドゾルで形成された第1塗膜層を形成する(5)。熱処理の時間は、通常5秒と5時間の間、より具体的には5秒と0.5時間の間、優先的には5秒と5分間の間に含まれる。必要に応じて、第1塗膜層の上に他のコロイドゾル層が塗布されることは前述したとおりである。他の塗布されたコロイドゾル層は、同じ粉体からなってもよく、別の粉体からなってもよい。
【0083】
塗膜相に関与する反応時間及び関与する乾燥時間により、この方法の工業化を何らの留保もなく検討することができる。
【実施例】
【0084】
(例1)
アルミニウム及びケイ素塗膜(ALUSI)で被膜された圧延鋼基材へのラムスデライト構造を有する二酸化マンガン(MnO−R)薄層の付着。
ラムスデライトのこの薄層の付着の目的は、光と熱の複合効果で活性触媒表面を製造することである。
【0085】
酸化マンガン(MnO−R)のナノ粒子は、Portehaultら、Chem.Mater.19(2007)5410−5417頁によって提案された手順に従ってKMnO及びMnSO・HOから合成した。
【0086】
MnO−Rの固定化はcm単位で様々な寸法(2×8、10×10、21×29.7cm)のALUSI(登録商標)型鋼の刃の上に行った。
【0087】
それらを使用する前に、すべてのALUSI(登録商標)刃をChemetal社製のGardoclean S5183で脱脂し、(HO、エタノールで)洗浄し、120℃で(1時間)乾燥させた。
【0088】
4−ヒドロキシ安息香酸0.5gを2−メトキシエタノール500mL中に混合することによって、カルボン酸の溶液S1を調製した。脱イオン水0.75mLをS1 30mLに添加することによって、第2混合物をS1から調製した。この水性混合物は希釈溶液S1となる。
【0089】
次に、超音波(30分)により、かつ、撹拌(毎分1500回転、2時間)により、二酸化マンガン(MnO−R)0.3gを溶液S1 30mLに懸濁及び分散した(懸濁液Sp1)。この懸濁液に、希釈溶液S1 30mLを添加し、次いでその溶液を超音波で30分間均質化し、2時間撹拌した。
【0090】
この間に、コロイド相(黒色)の形成が認められ、過剰の固体を16時間傾瀉した。このコロイド溶液をSOL1とする。
【0091】
ALUSI(登録商標)上へのMnO−Rの固定化
上記で得られた官能化鋼の刃を自動フィルムアプリケーターに入れる。特定容量の溶液SOL1を刃上に付着させる。付着容量はプレートの大きさに応じて変化させる。刃(単位cm):2×8、10×10及び21×29.7cmに対してそれぞれ、0.125mL、0.580mL、1,200mLである。
【0092】
コロイド溶液SOL1の第1層を刃に塗布する。次いで、刃を気流中80℃で1時間乾燥する。次に、この塗布と80℃での乾燥の手順を、10層が形成されるまで繰り返す。最後に、刃を気流中500℃(加熱勾配20℃/分)で(1時間)加熱処理する。
【0093】
XRDによる粉体の特性決定(図2を参照のこと)によって、出発時の粉体が実際にラムスデライトであることを確認することができる。TEMによる別の特性決定によって、粉体の個々の粒子のナノメートルのサイズを決定することができる(長さ50乃至120nmに対し、幅10乃至30nm程度)(図2)。
【0094】
基材上の塗膜のXRDによる特性決定によって、回折図に存在するピーク(図3を参照)は粉体(図1に示す)及び基材に対応することを確認することができ、それにより、汚染することなく純粋な粉体を基材に付着させるという本発明の目的を果たすこの方法の能力が立証される(図3)。
【0095】
基材及び層のEDXによる特性決定によって、付着物が純粋であること及び合成の際の化合物に由来する汚染がないことを改めて検証することができる(図4)。
【0096】
EDXマッピングによる特性決定によって、更にマイクロメートルのスケールで付着物の均質性を検証することができる(図5)。
【0097】
本発明による方法に従って調製された付着物のTG−DSCによる特性決定によって、塗膜及び出発時の粉体の信号が実際に同じであること、それらは薄層の付着を補助するために使用されるものによって変化しないことを検証することができる。したがって、これにより、付着物が純粋であることが改めて検証される。
【0098】
更に、本願の目標は光及び熱の併用効果で活性触媒層を形成することであるところ、図7において、食品廃棄物に特徴的な有機汚染物質の分解速度について4倍を超える係数でドーピングを可能とするMnO−R層の正の効果を確認できる。
【0099】
このようにして形成された層の接着性を、接着剤の試験、水及びアセトン中での耐浸漬性、エタノールでの洗浄、乾燥摩擦試験、基材の折り畳み、250℃及び500℃における物質の損失を測定する熱量試験、水中での耐UV/可視光線など様々な試験で評価する。
【0100】
接着剤の試験は3M社から入手可能なScotch(登録商標)ブランドの接着テープを使用し、接着テープを塗膜に貼り付け、はがすことからなる。次いで、はがれた材料の量を、目視検査によって接着テープの透明部分で評価する。
【0101】
水及びアセトン中での耐浸漬性は、粉体で塗装された基材を水又はアセトン中に24時間浸漬することからなる。次いで、水又はアセトン中に浸漬させた品を非浸漬品と目で見て比較する。
【0102】
エタノールによる洗浄試験は、酸化物層で被覆された基材を擦ることなく毎分50乃至100回転で攪拌しながらエタノール溶液中に24時間浸漬することからなる。次いで、塗膜の一部分が基材から脱落したかどうかを検知するために、目視評価を実施する。
【0103】
乾燥摩擦試験は、TORKブランドの乾いた布で100回往復を実行することからなる。布及び塗装された基材の目視検査によって、塗膜の接着力の測定を評価することができる。
【0104】
250℃及び500℃における材料の損失を測定する熱量試験は、酸化物層で塗装された基材を250及び500℃の温度に上げることからなる。次いで、物質損失を定性的に評価する。
【0105】
水中での耐UV/可視光線の試験は、酸化物層で被覆された基材を水中にUV/可視光線下に24時間置くことからなる。次いで、表面の劣化を目視検査する。
【0106】
このようにして酸化物層で塗装された基材によれば、その接着力は、試料が上記の試験すべてに合格する程度に満足のいくものであったということが示された。最後に、例1に従って得られた試料を、ASTM4541規格に従って塗膜の剥離性試験に供した。
【0107】
鋼試験体(3.1cmの表面)を、遅乾性型の2成分を含む無溶媒エポキシ系接着剤によって、例1に従って塗装された2枚の鋼板と接着結合させる。
【0108】
牽引力を表面に対して垂直に加える。
【0109】
破壊した後、破壊の型を評価し、力の大きさを以下に示す表1に記載する。
【表1】
【0110】
このことはわかるように、塗膜の接着力は2成分エポキシ接着剤で得られたものよりも高い。
【0111】
(例2)
アルミニウム基材上への二酸化マンガン層(ラムスデライト)の付着。
二酸化マンガンの粉体を例1に記載の手順に従って合成する。
【0112】
次いで、この粉体を例1で取った手順に従って混合してコロイド溶液とし、基材も例1に記載したのと同じように処理する。
【0113】
塗膜の性質を確認する試験を行い、粉体は純粋であり、前記基材の表面に均質に分散されていたという結論に至った。更に、実施した種々の接着性試験から、アニールされた塗膜の接着力は満足のいくものであったことがわかった。
【0114】
(例3)
二酸化チタンで塗装された鋼基材上への二酸化マンガン層(ラムスデライト)の付着。
二酸化チタンフィルムは、Microporous and Mesoporous Materials 122(2009)247−254に記載されている方法を修正することによって合成されたゾルをベースとしてディップ塗装によって付着させる。
【0115】
すなわち、鋼を予め二酸化チタンで被覆し、次いで例3の基材として使用した。再現された手順は例1のそれである。
【0116】
塗膜の性質を確認する試験によって、粉体は純粋であり、前記基材の表面に均質に分散されていたという結論に至った。更に、実施した種々の接着性試験から、アニールされた塗膜の接着性は満足のいくものであったことがわかった。
【0117】
(例4)
アルミニウムとケイ素の塗膜(ALUSI)で被覆された積層鋼基材上への市販のコバルト(III)及びリチウム酸化物(LiCoO−C)の薄層の付着。
コバルト及びリチウム酸化物(LiCoO−C)はAldrich Chemistry(ロット#MKBF6341V)から購入した。LiCoO−Cの固定化は、寸法が2×2cmのタイプALUSI(登録商標)の鋼の刃上で実施した。
【0118】
それらを使用する前に、すべてのALUSI(登録商標)刃を脱脂し、(HO、エタノールで)洗浄し、120℃で(1時間)乾燥させた。
【0119】
LiCoO−C予備官能化ステップ:
4−ヒドロキシ安息香酸1.0gを脱イオンHO 200mL中に混合することによって、カルボン酸の官能化水溶液Sfを調製した。次に、超音波(30分)により、かつ、撹拌(毎分1500回転、24時間)により、LiCoO−C 4.0gを溶液Sf 150mLに懸濁及び分散した(懸濁液Sfp1)。最後に、懸濁液Sfp1を濾過し、固体を脱イオン水(450mL)で洗浄し、80℃で24時間乾燥させた。この官能化し、乾燥させた固体を下記ではLiCoO−C/Fとする。
【0120】
コロイドゾルを形成するステップ
次に、LiCoO−C/F 0.5gをエタノール50mLに懸濁及び分散した(SP1)。分散は、超音波(30分)により、かつ、攪拌(毎分1500回転、2時間)により行った(懸濁液Sp1)。Sp1に、エタノール50mL(S1)と脱イオン水1.25mLの混合物(Sd1)を添加し、次いで、その溶液を3時間超音波で超音波処理し、1時間撹拌した。コロイド溶液から過剰の固体を分離するために、懸濁液を16時間傾瀉しておき、毎分5,000回転で15分間(15℃)遠心分離した。
【0121】
最後に、得られたコロイド溶液20mLに、4−ヒドロキシ安息香酸の2−メトキシエタノール(10g/L)溶液2mlを添加し、このコロイド溶液をSOL1とする。
【0122】
LiCoO−CのALUSI上での固体化
上記で得られた調製した鋼の刃をスピンコーター上に配置する。15乃至20μLのSOL1溶液を付着させることにより、コロイド溶液の第1層を刃上に塗布する。次に、スピン塗装を毎分2000回転で20秒作動させ、次いで、溶媒を乾燥させるのに必要な45秒間停止する。次に、この塗布と乾燥の手順をSOL1 1乃至2mLが添加されるまで繰り返す。
【0123】
最後に、刃を気流中500℃(20℃/分)で(1時間)加熱処理する。
【0124】
図11は、スピン塗装及び500℃での1時間焼成を行う前(図11b)及び後(図11a)のALUSI(登録商標)プレートのうちの1枚の写真を比較したものである。そこには、ALUSI(登録商標)層でコーティングされた鋼板(灰色の背景)上に均質に分布した固体の付着物(ブロンズ色のフィルム)の存在を観察することができる。
【0125】
(例5)
白金塗膜で被覆されたケイ素基材上への市販のコバルト(III)及びリチウム酸化物(LiCoO−C)の薄層の付着。
コバルト及びリチウム酸化物は、Aldrich Chemistry(ロット#MKBF6341V)から入手した。LiCoO−Cの固定化は、寸法が2×2cmのPt°/Siの刃上で実施した。
【0126】
この粉体を、例4で取った手順に従って官能化し(官能化ステップ、LiCoO−C/F)、次いで、例4で取った手順に従ってコロイド溶液とし、付着させ(LiCoO−Cの固定化)、基材も、例1及び例4に記載されているのと同様の方法で前処理する。
【0127】
図12は、スピン塗装及び500℃での1時間焼成を行った後のPt°/Siのプレートのうちの1枚の写真を比較したものである。2つの領域を認めることができる(A及びB)。領域Aはコロイドが塗布されていない白金プレートの部分に対応し、領域Bは均質に分散された固体の存在を示している。
【0128】
図13は、LiCoO−Cコロイドを塗布する前に白金プレートのグレージング角でのX線の回折プロファイル(XRD)を示したものであり、白金金属について観察される典型的なピークをも示している。未加工の白金金属の刃について、2本の主要なピークが2θ=39.86及び68.69において観察される。これらのピークは白金金属の特徴的ピークと一致する(Ptとして確認される)。
【0129】
図14は、エタノール中LiCoO−C系のスピン塗装塗布を行った後、500℃で1時間焼成を行った後の白金プレートのXRDの回折プロファイルを示すものである。図14は、白金の特徴的なピーク(2θ=39.86及び68.89)に加えて、他の新しい2本のピークが2θ=18.95及び45.26で観察されることを示している。これらの新しいピークは、LiCoO−Cの特徴的な結晶学的プロファイルの最も強い信号(LiCoO−Cとして同定されているライン)と一致する。
【0130】
(例6)
純粋な白金塗膜(Pt°)で被覆されたSiO基材上への市販のコバルト(III)及びリチウム酸化物(LiCoO)の薄層の付着(塗装するのが特に困難な塗膜)。
コバルト及びリチウム酸化物(LiCoO)はSigma−Aldrichから購入した(CAS番号:12190−79−3)。LiCoOの固定化は白金塗膜(Pt°、直径=15cm)で被覆されたSiOディスク上で行った。
【0131】
ディスクは使用する前に、脱脂し、洗浄し、乾燥した。LiCoOの添着はスプレー塗装によって実施した。
【0132】
LiCoO予備官能化ステップ
カルボン酸(SA1)の官能化水溶液Sfは、脱イオン水600mL中に4−ヒドロキシ安息香酸(4−HB)3.0gを撹拌(毎分1,500回転)により混合し、60℃の温度を(1時間)維持することによって調製した。次に、LiCoO 36gを溶液SA1中に撹拌(毎分1500回転、24時間)により懸濁液とし、温度を60℃で維持した(懸濁液SA2)。次に、SA2の濾過により黒色固体(LiCoO−HB)を回収し、脱イオン熱水で洗浄した(1.2L、60℃)。固体LiCoO−HBを80℃で24時間乾燥した。
【0133】
コロイドゾルを形成するステップ
LiCoO−HBコロイドを調製するために、2つの溶液を使用した。純粋な2−メトキシエタノール300mLの溶液S1と、2−メトキシエタノール300mLに脱イオン水7.2mLを添加することによって調製された溶液S2である。
【0134】
次に、超音波(30分)により、かつ、撹拌(毎分1500回転、30分間)により、LiCoO−HB 3.0gを溶液S1(2−メトキシエタノール)50mLに懸濁及び分散した(懸濁液Sp1)。この懸濁液に、溶液S2 50mLを添加した。次いで、その溶液を超音波で24時間音波処理した。この間に、コロイド相の形成が観察される。過剰の固体は、毎分5,000回転で1.5分間実施された第1遠心(18℃)及び毎分8回転で8.5分間実施された第2遠心(18℃)により分離した。最後に、LiCoO−HB/メトキシエタノール/HOコロイド100mLが得られた。
【0135】
LiCoO−HBコロイドゾルを形成する全手順を、LiCoO−HB/メトキシエタノール/HOコロイド約600mLが得られるまで6回繰り返した。
【0136】
SiO/Pt°ディスクの前処理
製品S5183(Chemetal社のGardoclean)15gを脱イオン水1L中に混合することによって、脱脂溶液を調製した。各ディスクをこの脱脂溶液中に2秒間ゆっくり浸漬し、最終的にゆっくりと溶液から出した。これらの2つのステップを10回繰り返した。次に、刃を脱イオン水で洗浄した。ディスクは120℃で1時間乾燥した。
【0137】
LiCoO−HB/メトキシ−エタノール/HOの固定化
120℃に予熱したスプレー塗装装置の中央部の支持体上にディスクを置く。次に、LiCoO−HB/メトキシ−エタノール/HOコロイドのスプレー塗装を行い、120℃でLiCoO−HB/メトキシ−エタノール/HOコロイド 550mLの付着できた。乾燥後、0.10492gの量のLiCoO−HBがSiO/Pt°基材上に付着した。最終的に、350℃において1時間(20℃/分)で実施した焼成ステップによって、0.04836グラムの量のLiCoOが付着できた。
【0138】
(比較例1)
MnO−バーネス鉱のゾル−ゲル合成中のMnOのその場固定化
Segalら(Chem.Mater.1997,9,98−104)によって提案された方法の変形によって、ALUSI(登録商標)の浸漬を、KMnOとサッカロースとの相互作用から形成されたゲル中で行った。このようにゲル中に浸漬させた刃を次いで、110℃のオーブン中24時間乾燥した。
【0139】
次いで、基材を450℃で24時間加熱した。加熱した後、黒色フィルムが観察された。しかし、このフィルムはあまり均質ではなく、機械的及び化学的安定性もほとんどなかった。その上、水との接触で剥がれた。
【0140】
(比較例2)
MnO−エヌスタ鉱のゾル−ゲル合成中のMnOのその場固定化。
この方法は、もともとエヌスタ鉱マンガン酸化物を粉体として得るために提案された(J.Sol−Gel Sci.Technol.2009,51,169−174)。この例では、同じ手順に従ったが、MnOのフィルムを得るためにクエン酸の存在下でMnAc(酢酸マンガン2)をゲル化中に刃を導入した。ゲルの適用は浸漬、ディップ塗装、スピン塗装の3つの技法を用いて行った。しかし、溶媒と刃との間の親和性の欠如によって、基材上に層を形成することができなかった。結局、反応生成物(MnO粉体)の図8に示されているXRDによる特性決定から、これは論文によって示唆されていたものとは異なり、厳密にはMnO−エヌスタ鉱であるというわけではない。
【0141】
(比較例3)
シリカートフィルム中の共ゲル化を経由したMnO−ラムスデライト粉体の固定化。
【0142】
固定仕込量のR−MnOを様々な濃度でケイ酸ナトリウム水溶液に添加した(28.5、14.2、7、3.5及び2.8重量%)。それらの懸濁液を30分間超音波にかけ、更に30分間撹拌した。それら混合物をALUSI(登録商標)刃上にスピン塗装、ディップ塗装及びスパチュラ塗装によって付着させた。フィルムを最後に120℃で24時間乾燥した。得られたすべてのフィルムのうち、スパチュラ塗装により調製されたSiO濃度2.8%のフィルムが許容可能な機械的安定性を示した唯一のフィルムであった。図9は、乾燥後のそのフィルムのR−MnOの回折プロファイル(XRD)を示す。見てわかるように、ラムスデライト型MnOは、固定化処理(黒丸)後も維持されている。しかし、水と接触したときのその安定性は非常に低い。
【0143】
(比較例4)
ポリフッ化ビニリデンフィルムにおける共ゲル化を経由したMnO−ラムスデライト粉体の固定化。
R−MnO 0.005gをN−メチルピロリドン(NMP)中PVDF溶液に添加した。その懸濁液を超音波に10分間かけ、更に5分間撹拌した。次いで、その混合物を含浸により刃上に付着させ、120℃で24時間乾燥した。そのフィルムは低い機械的安定性及び化学安定性を示した。
【0144】
(比較例5)
シリカートフィルムにおける共ゲル化を経由したMnO−ラムスデライト粉体の固定化。
J.Catal.1997,170,366−376のスキーム2による手順に従い、R−MnOをアルコールに懸濁した後、混合物を2つに分け、それぞれTEOS(オルトケイ酸テトラエチル)と水を添加した。そのゾルはまったく安定性を示さず、即時にゲルを形成し、ALUSI(登録商標)刃上にはフィルムを形成しなかった。
【0145】
(比較例6)
TiOを用いた共ゲル化を経由したMnO−ラムスデライト粉体の固定化。
R−MnOを安定な溶液が形成されるまで2−メトキシエタノール中に懸濁させた点を除いて、(比較例5)を繰り返した。そのコロイドを2つの部分に分割した。チタンテトライソプロポキシドを第1部分に添加し、水を第2部分に添加した。R−MnO/TiOフィルムをゲル化時に:(i)スピン塗装又はディップ塗装又はスプレー塗装によって調製し、次いで80℃で1時間乾燥した。このようにして3層を塗布した。図10a及び10bはそれぞれ、ディップ塗装によって得られた3層の塗膜の回折プロファイル(XRD)及びSEM写真を示すものである。これらのフィルムは化学的及び機械的に良好な安定性を示すが、R−MnOの存在は認められなかった。
【0146】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、多くの修正形態が、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく行われ得ることは当然である。

図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14