特許第6346608号(P6346608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346608
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】積層体を備えるタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20180611BHJP
   B60B 15/02 20060101ALI20180611BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20180611BHJP
   B60C 11/24 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   B60C11/00 E
   B60C11/00 B
   B60B15/02 Z
   B60C11/03 200C
   B60C11/24 A
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-524454(P2015-524454)
(86)(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公表番号】特表2015-530948(P2015-530948A)
(43)【公表日】2015年10月29日
(86)【国際出願番号】US2013052098
(87)【国際公開番号】WO2014022199
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2015年1月27日
【審判番号】不服2017-2020(P2017-2020/J1)
【審判請求日】2017年2月10日
(31)【優先権主張番号】61/678,075
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/895,149
(32)【優先日】2013年5月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509333553
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレイションズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】トッド アラン バクストン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エイ バージンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アイ スタッキー
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ロバート レスメル
(72)【発明者】
【氏名】キャスリーン クレマー
(72)【発明者】
【氏名】サム ギブンズ
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 尾崎 和寛
【審判官】 一ノ瀬 覚
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−903(JP,A)
【文献】 特開2009−154791(JP,A)
【文献】 特開2007−182160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁の対と、
ベースゴムから形成された周方向トレッド、複数のバーおよび前記複数のバーの間に配置された複数の谷を有する前記周方向トレッドと、
前記周方向トレッド上に配置された高分子積層体とを備え、前記高分子積層体は前記複数のバーおよび前記複数の谷の全てを覆うように配置され、前記高分子積層体が、前記ベースゴムより10%〜40%高い硬度を有し、かつ、前記ベースゴムより10%〜40%高い破断伸びを有する、タイヤ。
【請求項2】
前記高分子積層体が1ミリメートル〜10ミリメートルの公称厚さを有する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記タイヤの寿命中に前記複数のバーの少なくともいくつかの上面から摩耗されるように前記高分子積層体が構成される、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記高分子積層体が前記複数のバーの少なくともいくつかの上面から摩耗された後、前記複数の谷を継続して覆うように前記高分子積層体が構成される、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記タイヤが農業用タイヤである、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記高分子積層体が前記側壁の対の少なくとも一つを覆う、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
基材から形成された周方向トレッドと、
前記周方向トレッドは複数のバーを有し、各前記複数のバーは上面および複数の側面を有し、
前記周方向トレッドはさらに前記複数のバーの間に配置された複数の谷を有し、
前記複数のバー及び前記複数の谷の全てを覆う積層体とを備え、前記積層体は、前記基材より10%〜40%高い硬度を有し、かつ、前記基材より10%〜40%高い破断伸びを有する、タイヤ。
【請求項8】
側壁の対と、
ベースゴムから形成された周方向トレッドと、
前記周方向トレッドは複数のバーを有し、各前記複数のバーは1つの上面および複数の側面を有し、
前記周方向トレッドはさらに前記複数のバーの間に配置された複数の谷を有し、
前記周方向トレッド上に配置された積層体とを備え、前記積層体が前記複数のバー及び前記複数の谷の全てを覆うように配置され、
前記積層体が、前記ベースゴムより10%〜40%だけ高い硬度を有し、かつ、前記ベースゴムより10%〜40%だけ高い破断伸びを有する、農業用タイヤ。
【請求項9】
前記積層体が前記ベースゴムの色と異なる色を有する、請求項8に記載の農業用タイヤ。
【請求項10】
前記積層体がゴム織布複合物である、請求項8に記載の農業用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、その上に積層体が配置されているタイヤおよびその製造方法に関する。より具体的には、本開示は下にあるベース化合物とは異なる属性を有する積層体を備えるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のタイヤトレッドは、少なくとも多少のカーボンブラックによる補強を含有し、このため黒色を有するゴム組成物である。トレッドのゴムは、その素材特性、例えばその硬度で選択され得る。トレッドが摩耗するように、トレッドゴムは同じ素材特性を維持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一実施形態では、タイヤは側壁の対と、ベースゴムから形成された周方向トレッドとを含む。周方向トレッドは複数のバーおよび複数のバーの間に配置された複数の谷を有する。タイヤはさらに、複数のバーおよび複数の谷を高分子積層体が覆うように、周方向トレッド上に配置された高分子積層体を含む。高分子積層体はベースゴムより高い硬度を有し、高分子積層体はベースゴムより高い破断伸びを有する。
【0004】
他の実施形態では、タイヤは基材から形成された周方向トレッドを含む。周方向トレッドは複数のバーを有し、各複数のバーは1つの上面と複数の側面を有する。周方向トレッドはさらに複数のバーの間に配置された複数の谷を有する。積層体は複数の谷の少なくともいくつかを覆う。積層体は基材より高い破断伸びを有する。
【0005】
なおも他の実施形態では、農業用タイヤは側壁の対と、ベースゴムから形成された周方向トレッドとを含む。周方向トレッドは複数のバーを有し、各複数のバーは1つの上面と複数の側面を有する。周方向トレッドはさらに複数のバーの間に配置された複数の谷を有する。積層体は周方向トレッド上に、積層体が複数のバーの側面の少なくとも一部分を覆うように、およびさらに複数の谷を覆うように配置される。ベースゴムは高分子積層体より低い破断伸びを有する。
【0006】
添付の図面では、下記に提供される詳細な説明とともに構造が図示され、特許請求された本発明の例示的な実施形態を説明する。同様の要素は同一の参照符号を付している。1つの構成要素として示される要素が複数の構成要素と置換されても、複数の構成要素として示される要素が1つの構成要素と置換されてもよいことが理解されたい。図は一定の縮尺ではなく、ある要素の比率が例証の目的のために誇張され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】その上に積層体が配置されているタイヤの一実施形態の斜視図である。
図2】周方向トレッド上に配置された積層体を有するタイヤの一実施形態の断面図である。
図3】周方向トレッドの溝内に配置された積層体を有するタイヤの一実施形態の断面図である。
図4】周方向トレッドと側壁の対上に配置された積層体を有するタイヤの一実施形態の断面図である。
図5】側壁の対上に配置された積層体を有するタイヤの一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本明細書で採用される選択された用語の画定を含む。画定には、用語の範囲内に収まり、実施のために使用されうる構成要素の様々な例または形態を含む。例は限定することを意図しない。用語の単数および複数形の両方が画定内であってよい。
【0009】
「軸方向の」または「軸方向に」は、タイヤの回転軸に平行な方向を意味する。
【0010】
「バー(Bar)」または「バー(bars)」は、トレッドの突起を意味する。
【0011】
「ビード」は、ホイールと接触し側壁の境界を画定するタイヤの部分を意味する。
【0012】
「周方向の」および「周方向に」は、軸方向に対し垂直なトレッドの表面の周囲に沿って延びる方向を意味する。
【0013】
「赤道面」は、タイヤの回転軸に垂直でタイヤのトレッドの中心を通過する平面を意味する。
【0014】
「半径方向の」および「半径方向に」は、タイヤの回転軸に対し垂直な方向を意味する。
【0015】
「側壁」は、トレッドとビードの間のタイヤの部分を意味する。
【0016】
「トレッド」は、正常膨張および負荷下で道路と接するタイヤの部分を意味する。
【0017】
「谷(Valley)」または「谷(valleys)」は、トレッド上のバーの間にある深淵を意味する。
【0018】
方向はタイヤの回転軸に関して、本明細書内で述べられる。用語「上向きの」および「上向きに」は、タイヤのトレッドに向かう一般的な方向を意味し、一方で「下向きの」および「下向きに」は、タイヤの回転軸に向かう一般的な方向を意味する。ゆえに関連する方向用語、例えば「上方」および「下方」または「上」および「下」が要素と関連して使用される場合、「上方」または「上」要素は「下方」または「下」要素よりトレッドの近くに位置される。加えて、関連する方向用語、例えば「の上」または「の下」が要素と関連して使用される場合、他の要素「の上」にある要素はその他の要素よりトレッドに近い。
【0019】
用語「内に」および「内へ」はタイヤの赤道面に向かう一般的な方向を意味し、一方で「外に」および「外へ」はタイヤの赤道面から離れタイヤの側壁に向かう一般的な方向を意味する。ゆえに、関連する方向用語、例えば「内側」および「外側」が要素と関連して使用される場合、「内側」要素は「外側」要素よりタイヤの赤道面の近くに位置される。
【0020】
図1〜5は、タイヤの外表面の少なくとも一部分上に配置される積層体を有するタイヤの様々な実施形態を示す。積層体はゴム、ゴム織布複合物、または他の高分子素材であってよい。一実施形態では、積層体の公称厚みは1.0〜10.0ミリメートルである。他の実施形態では、積層体の公称厚みは1.0ミリメートル未満である。しかしながら、より厚い積層体が採用され得ることが理解されたい。例えば、ある実施形態では、より大きなタイヤ上により厚い積層体を使用する事が望ましい場合がある。従って、積層体の厚さはタイヤのサイズに従って調整され得る。例えば、ある実施形態では、積層体の厚みは基材の25%であってよい。他の実施形態では、積層体の厚みは基材の50%であってよい。所望の厚さは使用用途、および乗り物の予測される速度によって変動し得る。積層体の厚さは、例証の目的のために図内で誇張され得る。
【0021】
図1は、その上に積層体110が配置されているタイヤ100の一実施形態の斜視図を示す。図で示した実施形態では、積層体110は実質的にタイヤの全外表面を覆う。図で示した実施形態では、タイヤ100は複数のバー130を伴う周方向トレッド120を有する。代替の実施形態(図示せず)では、タイヤは一つまたはそれ以上の固体周方向リブ、または一つまたはそれ以上のブロックを含み得る。タイヤが任意の特定のトレッドデザインを有するように限定されないことが理解されたい。
【0022】
周方向トレッド120は、ベースゴムまたは基材から形成される。積層体110は基材とは異なる素材から形成される。従って、積層体110は、下にある周方向トレッド120とは異なる特性を持つ。
【0023】
図1が農業用車両に好適なタイヤ100を図示する一方で、このタイヤは単なる例示である。本明細書内で説明される積層体は、自転車、オートバイ、全地形用車両、車、トラック、トラクターおよび他の農業用車両、路上外走行車、鉱業車両、飛行機、および他の全ての車輪のある乗り物を含む、任意の乗り物のタイヤに採用され得るが、これに限定されないことが理解されたい。積層体の素材特性は乗り物のタイプ、およびタイヤの予測される使用法によって変動し得る。
【0024】
図2は、周方向トレッド220上に配置された積層体210を有するタイヤ200の一実施形態の断面図である。積層体210は、バー230の上面とバー230間の谷240の両方を覆う。他のタイヤ、例えば乗用自動車タイヤでは、積層体210はスロット、サイプ、および他のトレッド要素も覆い得る(図示せず)。
【0025】
図3は周方向トレッド320上に配置された積層体310を有するタイヤ300の一実施形態の断面図である。本実施形態では、積層体310はバー330間の谷340の表面のみを多い、バー330の上を覆わない。他のタイヤ、例えば乗用自動車タイヤでは、積層体310はスロット、サイプ、および他のトレッド要素も覆いうる(図示せず)。
【0026】
一実施形態では、タイヤ200と300は同一で、図2は新しい状態のタイヤを図示し、図3は積層体310がバー330の上から摩耗してしまったがバー間の谷340には残存している、部分的に摩耗した状態のタイヤを図示する。そのような実施形態では、タイヤが更に摩耗するにつれて積層体310そのような実施形態では、積層体はタイヤから研削されたあとリサイクルされ得る。は谷340内に残存する。
【0027】
あるいは、タイヤ300は、最初は、積層体310がバー330の上面とその間に配置された谷340の両方を覆うように、全周方向トレッド320を積層体310で覆って作成され得る。バー330の上面上の積層体310はその後、研磨研削材を使用して研磨または研削される。
【0028】
タイヤ300を作成する代替方法では、積層体310は谷340の表面にのみ配置され、バー330の上面は積層体310で覆われないままにされる。そのような実施形態では、積層体310の研削または摩耗は必要ない。
【0029】
図4は、周方向トレッド420と側壁の対430上に配置された積層体410を有するタイヤ400の一実施形態の断面図である。積層体410は、バー440の上面とその間に配置された谷450の両方を覆う。他のタイヤ、例えば乗用自動車タイヤでは、積層体410はスロット、サイプ、および他のトレッド要素も覆い得る(図示せず)。
【0030】
図で示した実施形態では、積層体410はタイヤ400のヒール460まで各側壁430を下に延びる。代替の実施形態(図示せず)では、積層体は各側壁の一部のみを覆い得る。各側壁の被覆は同一である必要はないということが理解されたい。例えば、積層体はタイヤの外側の側壁を覆うが、タイヤの内側の側壁を覆わなくてもよい。
【0031】
積層体の被覆が連続的に示されている一方で、切れ目が存在し得ることが理解されたい。例えば、積層体410は周方向トレッド420の谷450の表面上に配置され得るが、図3で示されたのと同じく、バー440の上面にはなくてよい。加えて、側壁430の部分は覆われないまま、または積層体が側壁430の部分から研削され得る。
【0032】
図5は、側壁の対520上に配置された積層体510を有するタイヤ500の一実施形態の断面図である。図で示した実施形態では、積層体はタイヤ500の周方向トレッド530を覆わない。代わりに、積層体510は各側壁520のショルダー部540からタイヤ500のヒール550まで延びる。代替の実施形態(図示せず)では、積層体は各側壁の一部のみ覆う。各側壁の被覆は同一である必要はないということが理解されたい。例えば、積層体はタイヤの外側の側壁を覆うが、タイヤの内側の側壁を覆わなくてもよい。
【0033】
上述の実施形態では、積層体はゴム、ゴム織布複合物、または他の高分子素材であってよい。公知の一実施形態では、積層体はゴムとチョップドファイバーから形成されたゴム織布複合物である。公知の他の実施形態では、積層体はゴムとゴムにわたって延びる繊維コードから形成されたゴム織布複合物である。繊維コードは互いに平行であり得、周方向、横方向、または周方向について鋭角に延び得る。チョップドファイバーに使用される素材の例は、ケブラーやポリエステルを含むが、これに限定されない。
【0034】
積層体はその素材特性でも選択され得る。一実施形態では、積層体は下にあるタイヤのゴムより硬い素材から形成される。具体的な一実施形態では、積層体はデュロメーターショアAスケールを使用して測定される時、ベースゴムより高い硬度を有する。一実施形態例では、積層体は基材より0から40%高い硬度を有する。より具体的な実施形態では、積層体は基材の硬度より少なくとも10%高い硬度を有する。加えて、この実施形態では、積層体はベースゴムより高い破断伸びを有する。一実施形態例では、積層体は基材の破断伸びより0から40%高い破断伸びを有する。より具体的な例では、積層体は基材の破断伸びより少なくとも10%高い破断伸びを有する。そのような積層体は農業用タイヤ、およびに路上外走行車用タイヤにおいて有用であってよい。当業者に理解されるように、農業用タイヤは、トウモロコシの茎、岩、および他の硬い物体からの損傷を受けやすい。同様に路上外走行車のタイヤは岩および他の硬い物体からの損傷を受けやすい。
【0035】
そのような実施形態では、積層体の素材特性はベースゴムとは異なる性能を提供し得る。従って、積層体の公称厚さは積層体がタイヤの適切な保護を提供するのに十分に厚く、しかし望ましくない性能の引換、例えば熱および回転抵抗性、を結果生じてしまわないよう十分に薄くなるように選択され得る。
【0036】
他の実施形態において、積層体はスノー性能において好適な素材特性を有し得る。そのような一実施形態では、積層体は、積層体が下にあるゴムより柔らかくなるように、低弾性率を有する。そのような積層体は寒い気候で性能をより発揮し得る。積層体はさらなる静止摩擦を雪の中で提供するためにサイプも含み得る。下にあるタイヤのゴムは、全シーズンに好適であってよい。従って、そのようなタイヤは優れた冬特質を初期、その使用の最初のシーズンに有し得、その後全シーズン性能をその後有し得る。そのような積層体の公称厚さは様々な摩耗率で、積層体が冬を通して存続し春までに摩耗されるように、選択されることができる。
【0037】
他の実施形態では、積層体は耐オゾン性素材から作成される。そのような素材は太陽光での亀裂に抵抗し得、トレッドの溝において特に有用であってよい。
【0038】
さらに他の実施形態では、積層体はシーリング材である。そのような実施形態は鉱業車両のタイヤに特に有用であってよい。なおも他の実施形態では、積層体は下にあるゴムとは異なる空気透過性を有し得る。
【0039】
一実施形態では、タイヤのトレッド上の積層体の使用はタイヤが摩耗するにつれて性能を高めさせる。例えば、積層体がトレッドの上面と溝内に配置されている場合(図2に示すように)、トレッドの上面の積層体はタイヤの使用間に摩耗してしまい、結果タイヤの溝内にのみ積層体を有するタイヤ(図3に示すように)を生じる。公知の一実施形態では、溝内の積層体はスノー性能を向上させる理想的な冬素材である。
【0040】
一特定の実施形態では、積層体はカーボンブラックを含まない。そのような実施形態では、積層体は任意の色または色の組み合わせの顔料を含み得る。色は美的な理由で採用され得る。例えば、積層体はデザイン、文字、ロゴ、銘柄の名前、または他の絵や写真を表示するために着色され得る。ユーザは溝内にのみ配置された、またはトレッドと溝上の両方に配置された着色積層体を有する事が美的に喜ばしいと判断し得る。単一の積層体上に多色が採用され得る。例えば、積層体は迷彩模様の色を有し得る。一実施形態では、ユーザは積層体に転写される画像を提供することでタイヤをカスタマイズし得る。
【0041】
積層体の色は指標としても使用され得る。指標としての色の使用は、車が止まっていようとまたは動いていようとタイヤが観察者に同じ情報を表示することを可能にする。例えば、色は積層体そのものの素材特性を示すために選択され得る。または、色はタイヤの特性を示すために選択され得る。一実施形態では、青い積層体は、濡れた状態において優れた操作性を有するタイヤ上に採用され得る。加えて、色は銘柄を識別するためにも使用され得る。例えば、タイヤの銘柄は特定の色に紐づけられ得る。加えて、車の銘柄、車レンタルサービスの銘柄、または非車両サービスまたは製品が特定の色に紐づけられ得る。
【0042】
色はレース用の環境においても指標として役立ち得る。例えば、色はレーシングチームを指し示すために使用され得る。色はレーシングシリーズにおけるポイントリーダーを、またはポールポジションの乗り物を識別するためにも使用され得る。加えて、色はタイヤのある特定のタイプがレースで使用されていることを示すために使用され得る。一実施形態では、色はタイヤトレッドにおいて使用されている化合物のタイプを示すために使用され得る。
【0043】
図1から5は単一の積層体の使用を表示しているが、1つ以上の積層体が採用され得ることが理解されたい。一実施形態では、異なる積層体がタイヤの異なる区域で採用される。例えば、側壁、トレッドの上面、およびトレッドの溝上で異なる積層体が使用され得る。多層の積層体がタイヤの異なる部分に配置される場合、異なる色の積層体が所望の模様を形成するために採用され得る。例えば、異なる積層体はタイヤ上に迷彩模様を形成するために使用される。
【0044】
代替の実施形態では、一つまたはそれ以上の積層体は互いの上に重ねられ得る。積層体の層がトレッドの上面に配置される場合、各層はタイヤの使用間に摩耗されていく。第一の層が摩耗したとき、第二の層が露出するようになる。そのような構成では、層になった各積層体は異なる色を有し得る。そして観察者は層が摩耗し他の層が露出したとき視覚的に発見することができるであろう。
【0045】
加えて、多層の積層体が採用される場合、各層は異なる素材特性を有し得る。例えば、外側の層は優れたスノー性能を呈する素材から形成され得、内側の層は優れたウェット性能を呈する素材から形成され得、タイヤの残りの化合物は優れたドライ性能を呈する素材から形成され得る。そのようなタイヤは雪の降る冬、その後の濡れた春、および乾燥した夏を有する地理的場所に好適であってよい。各層の公称厚さは、各気候条件の様々な摩耗率に基づいて選択され得る。
【0046】
他の実施形態では、第一の層は耐オゾン性素材であり得、第二の層は寒い気候およびスノー性能のためのより柔らかい素材であってよい。タイヤの加硫中に、耐オゾン性素材は第一の層から第二の層へ浸出し得る。
【0047】
積層体は多くの異なる方法でタイヤに適用され得る。一実施形態では、積層体は、タイヤのベースゴムと積層体を共押出することによってタイヤ上に配置される。
【0048】
代替の実施形態では、積層体は、素材の薄い敷布を形成し生タイヤに別々につけることによってタイヤ上に配置される。積層体はその後生タイヤの所望の場所に配置される。積層体をベースゴムに押し付け、積層体とベースゴムの間に閉じ込められた空気を追い出すためにローラーが使用され得る。そのような工程は「ステッチング」と言われ得る。積層体がベースゴム上に配置され必要に応じてステッチングされ(stitched)た後、生タイヤと積層体は加硫される。
【0049】
一実施形態では、積層体は生タイヤ上に配置された敷布である。代替の実施形態では、積層体は生タイヤを中心に巻かれた、またはタイヤの溝内にのみ配置された細長い片である。
【0050】
他の代替の実施形態では、積層体は加硫されたタイヤ上に配置される。そのような積層体は真空法を使用してタイヤに適用され得る。一実施形態では、積層体は加硫されたタイヤ上に配置された敷布である。代替の実施形態では、積層体は加硫されたタイヤを中心に巻かれた、またはタイヤの溝内にのみ配置された細長い片である。
【0051】
用語「含む」または「備える」が本明細書または請求項内で使用される範囲において、請求項の移行句として採用される場合に用語「備える」が解釈されるのと同様に包含的であると意図される。さらに、用語「または」が採用される(例えば、AまたはB)範囲において、それは「AまたはBまたは両方」を意味すると意図される。本出願人が「AまたはBのみだが両方ではない」を示唆すると意図する場合、用語「AまたはBのみだが両方でない」が採用されるであろう。ゆえに、本明細書内の用語「または」の使用は包含的であり、排他的使用ではない。Bryan A. Garner、A Dictionary of Modern Legal Usage 624(2d.Ed.1995)を参照されたい。また、用語「の内」または「の内に」が本明細書または請求項内で使用される範囲において、それは追加的に「の上」または「の上に」を意図する。さらに、用語「接続する」が本明細書または請求項内で使用される範囲においてそれは「直接接続される」だけではなく、「間接的に接続する」、例えば他の構成部分を通して接続する、を意味すると意図される。
【0052】
本願はその実施形態の説明によって例証され、実施形態はかなり詳細に説明されたが、それは本出願人が添付の特許請求の範囲をそのように詳細に限定するまたは多少なりとも限定するという意図するものではない。追加の利点および変更は直ちに当業者にわかるであろう。それゆえ、本願は、そのより広い態様において、具体的な詳細、代表的な装置および方法、ならびに図示および説明された例示的な例に限定されない。従って、本願人の一般的発明概念の趣旨または範囲から逸脱することなく、そのような詳細から新たな試みが行われ得る。
図1
図2
図3
図4
図5