特許第6346609号(P6346609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346609
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】導入口閉口機構
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20060101AFI20180611BHJP
【FI】
   G01N27/62 101
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-525946(P2015-525946)
(86)(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公表番号】特表2015-525887(P2015-525887A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(86)【国際出願番号】GB2013052127
(87)【国際公開番号】WO2014023971
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2016年8月1日
(31)【優先権主張番号】61/680,865
(32)【優先日】2012年8月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/693,844
(32)【優先日】2012年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507235789
【氏名又は名称】スミスズ ディテクション−ワトフォード リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】ジョン パトリック フィッツジェラルド
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−231944(JP,A)
【文献】 特表平06−511104(JP,A)
【文献】 特表2003−536209(JP,A)
【文献】 国際公開第00/040882(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0121665(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0021673(US,A1)
【文献】 米国特許第03384101(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 1/04、
E21B 34/06、
F16K 35/08、
G01N 27/62、
H01J 49/00−49/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を受け取るように構成された試料導入口を規定する筐体と、
前記試料導入口に近接して配置され、前記筐体により規定される前記試料導入口と流体連結する導入経路を少なくとも部分的に規定する封止部材と、
前記封止部材に対して着座し、前記導入経路を塞ぐ着座部材と、
前記着座部材を少なくとも、前記封止部材と着座係合する第1の位置と前記封止部材と着座係合しない第2の位置との間で移動させる作動部材と、
前記試料導入口に近接して配置され、前記第1の位置において前記封止部材と着座係合する前記着座部材を付勢するための付勢部材と、を有し、
前記付勢部材は、前記筐体によって規定される試料導入口と流体連結する前記導入経路を少なくとも部分的に規定する、試料検出器。
【請求項2】
流体を受け取るように構成された試料導入口を規定する筐体と、
前記試料導入口に近接して配置され、前記筐体により規定される前記試料導入口と流体連結する導入経路を少なくとも部分的に規定する封止部材と、
前記封止部材に対して着座し、前記導入経路を塞ぐ着座部材と、
前記着座部材を少なくとも、前記封止部材と着座係合する第1の位置と前記封止部材と着座係合しない第2の位置との間で移動させる作動部材と、
前記試料導入口に近接して配置され、前記第1の位置において前記封止部材と着座係合する前記着座部材を付勢するための付勢部材と、を有し、
前記試料導入口から離れて配置され、前記封止部材と着座係合しない前記第2の位置における前記着座部材を付勢するための第2の付勢部材をさらに有する、試料検出器。
【請求項3】
流体を受け取るように構成された試料導入口を規定する筐体と、
前記試料導入口に近接して配置され、前記筐体により規定される前記試料導入口と流体連結する導入経路を少なくとも部分的に規定する封止部材と、
前記封止部材に対して着座し、前記導入経路を塞ぐ着座部材と、
前記着座部材を少なくとも、前記封止部材と着座係合する第1の位置と前記封止部材と着座係合しない第2の位置との間で移動させる作動部材と、
前記試料導入口に近接して配置され、前記第1の位置において前記封止部材と着座係合する前記着座部材を付勢するための付勢部材と、を有し、
前記着座部材と結合され、前記着座部材を前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動させる保持部をさらに有する、試料検出器。
【請求項4】
請求項記載の試料検出器において、前記保持部は、前記筐体により規定される、試料検出器。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の試料検出器において、前記試料導入口は、ピンホール試料導入口を含み、
前記ピンホール試料導入口は、直径が0.1mm以上、2mm未満の開口部からなる、試料検出器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の試料検出器において、前記封止部材は、ガスケット、ワッシャーおよびOリングシールのうちの少なくとも1つを備える、試料検出器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の試料検出器において、前記付勢部材は、前記着座部材を付勢するための磁石およびばねのうちの少なくとも1つを備える、試料検出器。
【請求項8】
流体を受け取るように構成された導入口を規定する筐体内に配置された封止部材であって、前記筐体により規定される前記導入口と流体連結する導入経路を少なくとも部分的に規定する封止部材と、
前記封止部材に対して着座し、前記導入経路を塞ぐ着座部材と、
前記着座部材を少なくとも、前記封止部材と着座係合する第1の位置と前記封止部材と着座係合しない第2の位置との間で移動させる作動部材と、
前記第1の位置において前記封止部材と着座係合する前記着座部材を付勢するための付勢部材と、を有し、
前記付勢部材は、前記筐体によって規定される導入口と流体連結する前記導入経路を少なくとも部分的に規定する、導入口閉口組立体。
【請求項9】
流体を受け取るように構成された導入口を規定する筐体内に配置された封止部材であって、前記筐体により規定される前記導入口と流体連結する導入経路を少なくとも部分的に規定する封止部材と、
前記封止部材に対して着座し、前記導入経路を塞ぐ着座部材と、
前記着座部材を少なくとも、前記封止部材と着座係合する第1の位置と前記封止部材と着座係合しない第2の位置との間で移動させる作動部材と、
前記第1の位置において前記封止部材と着座係合する前記着座部材を付勢するための付勢部材と、を有し、
前記導入口から離れて配置され、前記封止部材と着座係合しいない前記第2の位置における前記着座部材を付勢するための第2の付勢部材をさらに有する、導入口閉口組立体。
【請求項10】
流体を受け取るように構成された導入口を規定する筐体内に配置された封止部材であって、前記筐体により規定される前記導入口と流体連結する導入経路を少なくとも部分的に規定する封止部材と、
前記封止部材に対して着座し、前記導入経路を塞ぐ着座部材と、
前記着座部材を少なくとも、前記封止部材と着座係合する第1の位置と前記封止部材と着座係合しない第2の位置との間で移動させる作動部材と、
前記第1の位置において前記封止部材と着座係合する前記着座部材を付勢するための付勢部材と、を有し、
前記着座部材と結合され、前記着座部材を前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動させる保持部をさらに有する、導入口閉口組立体。
【請求項11】
請求項10記載の導入口閉口組立体において、前記保持部は、前記筐体により規定される、導入口閉口組立体。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載の導入口閉口組立体において、前記封止部材は、ガスケット、ワッシャーおよびOリングシールのうちの少なくとも1つを備える、導入口閉口組立体。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか一項に記載の導入口閉口組立体において、前記付勢部材は、前記着座部材を付勢するための磁石およびばねのうちの少なくとも1つを備える、導入口閉口組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導入口閉口機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン移動度分光計は、分子および原子のようなイオン化された物質の分離および同定に用いられる分析技術を参照している。イオン化された物質は、キャリアバッファガス内での移動度に基づき、気相内で同定される。したがって、イオン移動度分光計(IMS)は、物質をイオン化し、生じるイオンが検出器に到達するのに要する時間を測定することで、関心のある試料から物質を同定することができる。イオンの飛行時間は、イオン化された物質の質量および構造に関連する、そのイオンの移動度と関連付けられる。IMS検出器の出力は、ピーク高さ対ドリフト時間のスペクトルとして視覚的に表わされる。ある場合には、IMS検出は、高温下で(例えば、セ氏100℃以上で)行われる。別の場合には、IMS検出は、加熱無しに行われる。IMS検出は、例えば、麻薬、爆発物の検出など、軍事および保安用途のために用いられる。IMS検出はまた、実験的な分析用途のため、および、質量分析および液体クロマトグラフィーなどのような検出技術と相補的に用いられる。
【発明の概要】
【0003】
周辺環境から空気流のような流体を受け取るように構成された導入口を規定する筐体のための導入口閉口組立体が開示されている。導入口閉口組立体は、筐体によって規定される導入口と流体連結する導入経路を規定する封止部材を含む。導入口閉口組立体は、封止部材に対して着座する着座部材を含む。着座部材は、着座方向に導入経路を塞ぐように構成されている。導入口閉口組立体はまた、着座部材を、封止部材と着座係合し、および、着座係合しないように移動させる作動部材を含む。導入口閉口組立体はさらに、着座部材が導入口を塞ぐ位置にあるときに、封止部材と着座係合する着座部材を付勢する付勢部材を含む。付勢部材は、磁石、ばねなどを用いて実装される。
【0004】
上述した「発明の概要」は、以下の「発明を実施するための形態」で更に説明される簡単な形態での概念の選択を導入するためのものである。この「発明の概要」は、特許請求の範囲の主題の重要な特徴又は基本的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲の主題の範囲を決定する際の補助として用いることを意図するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明の詳細な説明を添付図面につき説明する。図面では、参照符号の最も左側の数字が、この参照符号が最初に現れる図面の番号を表している。以下の説明及び図面での異なる事例における同じ参照符号の使用により、同様な又は同じ要素を表すことができる。
【0006】
図1A図1Aは、本開示の実装例に係る、導入口と封止部材との間に配置され、封止部材と着座係合する着座部材を付勢するためのガスケットリングとして構成された磁性の付勢部材を含む導入口閉口組立体を示す部分等角図である。
図1B図1Bは、本開示の実装例に係る、導入口と封止部材との間に配置され、封止部材と着座係合する着座部材を付勢するためのOリングとして構成された磁性の付勢部材を含む導入口閉口組立体を示す部分等角図である。
図1C図1Cは、本開示の実装例に係る、導入口と封止部材との間に配置され、封止部材と着座係合する中空の着座部材を付勢するためのガスケットリングとして構成された磁性の付勢部材を含む導入口閉口組立体を示す部分等角図である。
図1D図1Dは、導入口および封止部材に隣接して配置され、封止部材と着座係合する着座部材を付勢するための磁性の付勢部材を含む導入口閉口組立体を示す部分等角図であり、ここで着座部材は、本開示の実装例に係るおりの中に保持されている。
図1E図1Eは、導入口と封止部材との間に配置され、封止部材と着座係合する着座部材を付勢するための磁性の付勢部材を含む導入口閉口組立体を示す部分等角図であり、ここで着座部材は、本開示の実装例に係るスライドアームを用いて移動される。
図1F図1Fは、導入口と封止部材との間に配置され、封止部材と着座係合する着座部材を付勢するための磁性の付勢部材を含む導入口閉口組立体を示す部分等角図であり、ここで着座部材は、本開示の実装例に係る、流体通路からなるスライドアームを用いて移動される。
図1G図1Gは、導入口と封止部材との間に配置され、封止部材と着座係合する着座部材を付勢するための磁性の付勢部材を含む導入口閉口組立体を示す部分等角図であり、ここで着座部材は、本開示の実装例に係る、2つの異なる導入口を開閉させるためのレバーアームを用いて移動される。
図1H図1Hは、本開示の実装例に係る、封止部材と着座係合する着座部材を付勢するためのばね付勢部材を含む導入口閉口組立体を示す部分等角図である。
図1J図1Jは、本開示の実装例に係る、導入口と第1の封止部材との間に配置され、第1の封止部材と着座係合しない着座部材を付勢するための第2の磁性の付勢部材とを含む導入口閉口組立体を示す部分等角図である。
図2A図2Aは、試料検出器の作動モジュールと結合可能な制御器を含むシステムの概略図であり、ここで、制御器は、試料検出器の1以上の導入口を開閉させるために作動モジュールの動作を制御するために用いられる。
図2B図2Bは、試料検出器と結合可能な制御器を含むシステムの概略図であり、ここで、制御器は、試料検出器の1以上の導入口を開閉させるために作動モジュールの動作を制御するために用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
多くの試料検出器は、乾燥した、あるいは少なくとも実質的には乾燥した、内部動作環境を用いて動作する検出機器を必要とする試料検出技術を採用している。例えば、イオン移動度分光計(IMS)では一般に、分光分析セル内の空気は、例えば、大気よりも乾燥していることが必要である。したがって、IMS装置は一般に、IMSセル、付随する空気パスなどから水蒸気を除去するための技術を採用している。これらの装置構成は、空気式ポンプや、気体および/または液体の吸収剤として用いられる、均一のサイズの小さな穴を含む物質などの乾燥剤(分子ふるい(molecular sieve)と称する)を含むことがある。別の構成では、IMS検出器の試料導入口は、蒸気は浸透させる一方、実質的に水がIMS検出器セルに入るのを防ぐように構成された薄膜を用いた外気とのインタフェースを提供する。
【0008】
ある場合には、小さな穴(ピンホール(pinholeと称する))が、外気とのインタフェースを提供するために、IMS検出器の試料導入口に用いられている。この構成では、ピンホールは、必要に応じて、少量の外気をIMSセル内に引き込むことができる。ピンホールは、検出動作のために用いられている間、開いたまま(例えば、覆われていない)とすることができるが、IMS検出器が使用されていないときは、ピンホールを閉じる(封止する)ことが望ましい。ピンホールを封止することは、内部乾燥剤の吸収の加速をもたらす、比較的湿った空気のセル内への拡散を防ぐことができる。試料導入口のピンホールを閉じる1つの技術は、IMSデバイスの導入口全体を覆うために用いられる、空気封止ガスケットを有するキャップなどの封鎖部材を用いるものである。キャップは、操作者による使用、例えば、キャップを上げたり下げたりするねじり動作により(例えば、キャップはIMSデバイスの導入口に螺入され、連結されている)、封止および非封止とされる。ある場合には、キャップを上下させるための電動の部品のような、IMS検出器の導入口の開閉のための自動化された技術が提供される。しかしながら、結果として生じる機構はかさばり、IMSセルへの外気の流れを妨げ、開閉のためにかなりの量の電力を消費することがある。「ピンホール」試料導入口は、直径が少なくとも0.1mm、任意的には少なくとも0.25mmであり、例えば、2mm未満、例えば、1mm未満の開口部からなる。ある「ピンホール」試料導入口は、直径が約0.5mm、例えば、0.3mmから0.7mmの間の開口部からなる。いくつかの例では、開口部は、これらの直径の1つを有する穴として規定され、深さは約3mmである。本開示の文脈において当業者に理解されるように、ピンホール試料導入口は円形である必要はなく、同じ幅を有する他の形状の開口部、あるいは、これらの直径の円形の開口部と同じ断面積を有する開口を用いることもできる。
【0009】
IMS検出器のためのピンホール導入口のような導入口を開いたり(例えば、覆わないようにしたり)、閉じたり(空気圧で封止したり)するための技術が開示されている。ある場合には、ここで開示されている技術は、自動的な開閉手順を促す、自動化されたおよび/または導入口の遠隔操作で用いられる。本開示による技術は、IMSデバイスの導入口全体を覆う閉口機構と比べて、比較小さいサイズで、低い質量および/または低電力の器具の使用により実装されうる導入口閉口組立体を採用している。実装では、導入口閉口組立体は、導入口を開閉するときにだけ電力を必要として、導入口を自動的に開いたり(覆われないようにしたり)、閉じたり(封止したり)させ、他の場合は、電力なしに、あるいは、実質的に電力なしに、導入口を開位置および/または閉位置に維持することが求められる。さらに、この方法での閉塞あるいは封止は、機械的な衝撃および/または時効効果に対する抵抗となることもある。例えば、閉口機構は、円形のガスケットおよび円形のガスケット内で着座と非着座とが可能な実質的に球体の閉塞物を用いて実装される自己着座閉口構成を含むことができる。
【0010】
実装では、導入口閉口組立体は、例えば、両方が全体的に、あるいは、少なくとも部分的には、不活性物質、化学抵抗材料、表面処理などを用いて供給される2つの部品からなる機械的に単純な構成を用いて、閉口あるいは封止を提供する。さらに、導入口閉口組立体の構成要素は、高精度な製造技術を必要とせず、経済的に作製可能な単純で幾何学的な形状で構成される。例えば、複数のフェライトボールベアリング、Oリング、ワッシャーおよび/またはガスケットがここで開示される機能を提供するために用いることができる。さらに、小さいサイズおよび/または低い質量の構成要素は、小規模のおよび/またはバッテリを動力源とする実装に望ましい、比較的小さく、低電力の作動技術を用いて、導入口の開閉を可能とする。例えば、小さいあるいは小規模のIMS検出器では、サイズの低減、低質量および/または低消費電力の特徴は、重要な設計検討事項となりうる。しかしながら、この例は、本開示を限定することを意味するものではない。ここで開示される技術は、大きく、携帯型でないデバイスにも用いることができる。
【0011】
図1Aから1Jを参照すると、導入口閉口組立体100が開示されている。実装では、導入口閉口組立体100は、図2Aおよび2Bに示される試料検出器202とともに用いられるように構成されるが、他の実装も考慮される。導入口閉口組立体100は、例えば、イオン化領域/分光分析システムのチャンバーのような試料検出器具類を収容するために用いられる筐体102内に与えられる。しかしながら、分光分析システムは、例示のためにだけに与えられたものであり、本開示を限定することを意味するものではない。したがって、導入口閉口組立体100は、幅広い他のデバイスで用いることができる。筐体102は、導入口閉口組立体100の近接環境から、大気のような流体を受け取るように構成された導入口104を規定する。ある場合には、第2の導入口104、第3の導入口、あるいは、3以上の導入口のような、複数の導入口が筐体102により定義され、導入口閉口組立体100に含まれる。それぞれの導入口104は、例えば、IMS検出セルに含まれ、関心のある試料を含む大気を検出セル内に供給するために用いられる。例えば、1または複数の導入口104は、ピンホール試料導入口として構成されうる。ある場合には、導入口閉口組立体100は、導入口104に大気を流入および/または流出させる1以上のファンを含むことがあるが、別の場合には、導入口閉口組立体100にファンが含まれている必要は必ずしもない。ファンが含まれていない場合には、検出セル内で生成された圧力パルスが、(例えば、5秒ごとに一度)導入口104から大気を引き込むに用いられる。別の場合には、圧縮ガスおよび/または真空が、導入口104から大気を引き込むために用いられる。
【0012】
導入口閉口組立体100は、導入口104に近接して(例えば、近接近および/または隣接して)位置する封止部材106を含む。封止部材106は、筐体102によって規定される導入口104と流体連結する導入経路108を、少なくとも部分的に規定する。実装では、封止部材106は、ガスケット(例えば、図1Aおよび1Cから1Jに示されるように、ガスケットリングあるいは円形のガスケット)、ワッシャー、(図1Bに示すような)Oリングなどのような、圧縮下で動作する機械的な封止部材として構成されうる。封止部材106は、器具の汚染を避けるために選択されうる、不活性物質、化学的抵抗材料、表面処理、表面仕上げなどを用いて構成されうる。例えば、ガスケットとして構成される封止部材106は、合成ゴム、フッ素化エチレンプロピレンでコートされたフッ素重合体エラストマー材料などの、不活性のあるいは少なくとも実質的に不活性の物質から構成される。しかしながら、これらの材料は、例示のためだけに与えられたものであり、本開示を限定することを意味するものではない。したがって、低摩擦材料、非反応性材料などを含む他の材料を用いてもよい。さらに、封止部材106は、ある場合には、例えば、筐体102とともに成形され、筐体102に挿入されて成形されるなどして、筐体102により完全に、あるいは、少なくとも部分的に規定されてもよい。例えば、ある場合には、封止部材106は、筐体102内に形成され、導入口104を規定してもよい。
【0013】
導入口閉口組立体100はまた、封止部材106に対して着座し、導入経路108を塞ぐように構成された着座部材(例えば、セルフセンタリング着座部材110)を含んでいる。例えば、着座部材110は、少なくとも一般的には球体であり、着座部材110が封止部材106と着座係合しているときに、方向性に依存しない方法で封止部材106に対して封止されるように構成されている。ある場合には、着座部材110は、フェライト系ステンレス鋼を用いて形成され、(例えば、化学蒸着ポリマーを用いて)めっき、コーティングされたボールベアリングから成る。さらに、着座部材110は、中空でもよく、(例えば、図1Cに示すように、)大規模デバイスの場合に、着座部材110の質量を減らすための中空の構造体を含む。実装では、着座部材110は、直径を少なくとも約2mmから0.5インチとすることができる。しかしながら、この範囲は、例示のためにだけに与えられたものであり、本開示を限定することを意味するものではない。したがって、他の構成では、着座部材110は、上述した範囲より大きくても、小さくてもよい。さらに、一般的な球体形状は、例示のためにだけに与えられたものであり、本開示を限定することを意味するものではない。したがって、着座部材110として、ローラー、くさび型、弾丸型、頂部が切断された円錐型、長円(例えば、楕円)型などを含む、他の形状を用いることができる。ある場合には、ローラーとして構成された着座部材は、マッチングチャネル内に配置することができる。この構成では、着座部材は、チャネルの長さ方向に沿って規定される長手方向軸に対して必ずしも中心にある必要はない。したがって、ローラーは、(例えば、チャネル内での位置的な変動を成すために、)その回転軸に一致する方向に、導入口104の開口よりも幅が広くてもよい。
【0014】
着座部材110はまた、器具の汚染を避けるために選択されうる、不活性物質、化学的抵抗材料、表面加工、表面仕上げなどを用いて構成されてもよい。例えば、ボールベアリングとして構成された着座部材110が、化学蒸着ポリマーおよび/またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような、不活性あるいは少なくとも実質的に不活性な物質でコーティングされてもよい。しかしながら、これらの物質は、例示のためにだけに与えられたものであり、本開示を限定することを意味するものではない。したがって、低摩擦材料、非反応性材料などを含む他の材料を用いてもよい。ある場合には、着座部材110は、全体的にあるいは部分的に、磁性物質を用いて構成されてもよい。
【0015】
導入口閉口組立体100はさらに、着座部材110と結合され、着座部材110が封止部材106と着座係合している(例えば、導入口104を覆いおよび/または封止している)位置と、着座部材110が封止部材106と着座係合していない(例えば、導入口104を覆っていない)別の位置との間を、着座部材110が移動できるようにする保持部112を含んでいてもよい。実装では、保持部112は、着座部材110を保持するが、着座部材110が導入口104を覆ったり、覆わなかったりするために移動できるように、おり、バスケット、フォークなどとして構成されてもよい。例えば、着座部材110は、(例えば、図1Dに示されるように、)封止のために着座部材110の十分に自由な移動を可能とするように構成された、おり構成の中でゆるく保持されていてもよい。この場合には、保持部112は、筐体102により規定されうる。ある場合には、保持部112は、器具の汚染を避けるために選択される、1あるいは複数のプラスチック物質などのような、1あるいは複数の物質から構成されうる。
【0016】
導入口閉口組立体100はさらに、着座部材110が封止部材106と着座係合している(例えば、導入口104を覆いおよび/または封止している)位置と、着座部材110が封止部材106と着座係合していない(例えば、導入口104を覆っていない)別の位置との間を、着座部材110を移動させるための作動部材114を含んでいてもよい。ある場合には、作動部材114は、(例えば、先述した封止位置と非封止位置との間で)着座部材110が移動するように保持部112を作動させるために、保持部112と結合される。実装では、作動部材114は、(例えば、図1Eおよび図1Fに示すように、)直線状の移動のためのスライドアーム、(例えば、図1Gに示すように、)回転状の移動のためのレバーアームとして実装されうる。図1Fに示す構成では、作動部材114は、作動部材114が導入口104を覆わないように移動されたときに、流体が導入口104に入るように、開口部、導管などの流体通路を規定する。他の実装では、作動部材114は、着座部材110を移動させるために用いられるトラップドアから成る。作動部材114は、種々の方法で作動されうる。例えば、ある特定の場合には、作動部材114は、温度変化のような入力に基づいて特定の構成をとるように構成された、形状記憶物質(例えば、形状記憶合金、形状記憶ポリマー)から成る。
【0017】
ある場合には、作動部材114は、機械的に、電磁性的に、圧電駆動的に作動されうる。例えば、作動部材114は、作動部材114を移動させるためのソレノイドに結合されうる。作動部材114はまた、例えば、作動部材114を移動させるための、線形あるいは回転電磁石モータおよび/または線形あるいは回転圧電駆動モータと、(例えば、線形あるいは回転モータに結合されたギアを介して、)結合されうる。しかしながら、これらの作動技術は、例示のためにだけに与えられたものであり、本開示を限定することを意味するものではない。したがって、他の実装では、作動部材114を作動させるために、圧電性ビーム作動技術、空気圧作動技術などの他の技術が用いられてもよい。
【0018】
作動部材114の一部は、筐体102の外部に延び、および/または、操作者により手動で作動させるための、筐体102の外部の機構に接続されうる。しるし、シンボルおよび/または他のマークが、封止部材106に対する着座部材110の位置を操作者に警告するために、例えば、試料検出器の筐体の外部に含まれうる。加えて、着座部材110の位置および/または作動部材114の向きを決定するために、位置を決定するための非接触光センサなどの着座部材110の位置を決定するためのセンサを用いたフィードバック機構が実装されうる。位置は、例えば、指示器(例えば、図2Bで示される指示器258)を用いて、表示される。
【0019】
実装では、導入口閉口組立体100は、封止部材106と着座係合する着座部材110を付勢するために、導入口104に近接して配置された付勢部材116を含む。付勢部材116が導入口104と封止部材106との間に配置された実装では、付勢部材116は、筐体102により規定される導入口104と流体連結する導入経路108を少なくとも部分的に(例えば、封止部材106との組み合わせにより)規定する。例えば、付勢部材116は、リング状の永久磁石(例えば、希土類磁性磁石)などの磁石として実装され、(例えば、図1Aから図1Cおよび図1Eから図1Jに示すように、)封止部材106と導入口104との間に配置されうる。他の構成では、磁性の付勢部材116は、(例えば、図1Dに示すように、)封止部材106に対して導入口104の反対側に配置されうる。この構成では、作動部材114は、(例えば、先述した封止位置と非封止位置との間で)着座部材110を移動させるために付勢部材116を作動させるために、付勢部材116と結合される。ある場合には、付勢部材116は、着座部材110を引き付けるように構成されうる。他の場合には、付勢部材116は、着座部材110に反発するように構成されうる。
【0020】
付勢部材116のために用いられうる磁性材料は、ネオジム鉄ボロン、サマリウムコバルトなどが含まれるが、これに限られるものではない。さらに、ある実装では、動作温度に基づいて磁性材料が選択され、めっき、コーティングなどされる。これらの磁性材料は、例示のためにだけに与えられたものであり、本開示を限定することを意味するものではない。付勢部材116は、電磁石として実装される磁石のような、着座部材110と相互作用するための磁界を生成するように構成された、他の構成および/または他の技術を用いて与えられてもよい。しかしながら、磁性の付勢部材は、例示のためにだけに与えられたものであり、本開示を限定することを意味するものではない。したがって、他の実装では、付勢部材116は、(例えば、図1Hに示すように、)ばねとして実装されてもよい。この方法では、着座部材110は、着座部材110が封止部材106と着座係合している状態であるときに、例えば、付勢部材116により与えられる磁気力および/またはスプリング力により保持される。したがって、導入口閉口組立体100に電力が供給されていないとき、導入口104は、付勢閉口されうる。付勢部材116はまた、着座部材110を適所に保持し、突然の移動のショックおよび/または衝撃に抗するために用いられうる。付勢部材116により与えられる封止力は乗り越えられ、着座部材110は、所望のときに、導入口104を非封止とし、導入口104に流体(例えば、蒸気試料)を送るために用いられるように、異なる位置に移動させられうる。
【0021】
ある実装では、導入口閉口組立体100はさらに、(例えば、図1Jに示すように)着座部材110が封止部材106と着座係合していない別の位置で着座部材110を付勢するために、導入口104から離れて配置された第2の付勢部材118を含む。これらの構成では、導入口閉口組立体100は、導入口104を覆うおよび覆わないときに着座部材110を移動させるためだけに電力が必要とされるので、双安定となりうる。さらに、(図1Gに示すように、)例えば、作動部材114が概ねその中心で旋回するレバーアームとして構成され、2あるいはそれ以上の導入口104が別の導入口の鏡像のように構成された機械的リンク機構を用いることで、2つあるいはそれ以上の離れた導入口104を同時に覆いおよび覆わないようにすることができる。
【0022】
図2は、イオン移動度分光計(IMS)システム200のような分光計システムの説明図である。ここではIMS検出技術で説明しているが、多様な別の分光計が、本開示の構成、技術およびアプローチから利益を受けうることに留意すべきである。そのような変更を網羅し、含むことが、開示の意図である。IMSシステム200は、非加熱(例えば、環境(大気あるいは室内)温度)検出技術を採用する分光計装置を含みうる。例えば、IMS200は、軽量の爆発物検出器として構成されうる。しかしながら、爆発物検出器は、例示のためにだけに与えられたものであり、本開示を限定することを意味するものではない。したがって、本開示の技術は、他の分光計構成に用いられてもよい。例えば、IMSシステム200は、化学物質検出器として構成されうる。IMSシステム200は、関心のある試料からの物質をイオン化領域/チャンバーに導入するための試料受けポートを有する試料検出器202のような、検出デバイスを含む。例えば、試料検出器202は、サンプルとされる空気が試料検出器202に収容される導入口104を含む。例示的な実装では、導入口104は、先述したように、筐体102により規定されうる。ある実装では、試料検出器202は、IMS導入口104に一列に接続された、ガスクロマトグラフ(不図示)のような別のデバイスを有しうる。
【0023】
導入口104は、様々な試料導入アプローチを採用することができる。ある場合には、空気流が用いられる。別の場合には、IMSシステム200は、物質を導入口104に引き込むために、様々な流体および/または気体を用いることができる。導入口104から物質を引き込むためのアプローチは、ファン、圧縮気体、ドリフト領域/チャンバーを通って流れるドリフトガスにより作りだされた真空などの使用が含まれる。例えば、試料検出器202は、周辺環境から空気(例えば、室内空気)がファンを用いて引き込まれるサンプリングラインに接続されうる。空気あるいは他の流体の流れが試料物質のイオン化領域への導入に用いられるが、IMSシステム200は、実質的に環境気圧で動作しうる。他の場合には、IMSシステム200は、より低い気圧(例えば、環境気圧より低い気圧)で動作しうる。さらに、IMSシステム200は、試料源からの物質の導入を成すための他の構成を含みえる。試料の少なくとも一部を蒸発させて(すなわち、その気相に入らせて)、試料の一部を導入口に引き込むことができるように、例えば、ヒータのような脱着装置が、IMSシステム200に含まれうる。例えば、試料探針、スワブ、ワイプなどが、表面から関心のある試料を得るために用いられうる。この場合、試料探針は、IMSシステム200の導入口104に試料を運ぶために用いられうる。IMSシステム200は、イオン化領域に入れるために、物質を濃縮するあるいは物質の塊を生成するための事前濃縮器を含みうる。
【0024】
試料の一部は、小さな開口導入口(すなわち、ピンホール)として構成された導入口104を通って、試料検出器202の室内容積と流体連結する隔壁を用いて、試料検出器202に引き込まれる。例えば、室内容積の内部圧が隔壁の動きにより減少すると、試料の一部が導入口104からピンホールを介して試料検出器202に運ばれる。ピンホールを通過した後、試料の一部は検出モジュール206に入る。検出モジュール206は、コロナ放電イオン発生器のような(つまり、コロナ放電点を有する)イオン化源を用いて試料がイオン化されるイオン化領域を含みうる。しかしながら、コロナ放電イオン発生器は、例示のためにだけに与えられたものであり、本開示を限定することを意味するものではない。他のイオン化源の例としては、光イオン化源、エレクトロスプレーイオン化源、マトリックス支援レーザ脱離イオン化源(MALDI)、ニッケル63(Ni63)イオン化源などの、放射性および電気的イオン化源を含むが、これに限られるものではない。ある場合には、イオン化源は、関心のある試料から複数のステップで物質をイオン化させることができる。例えば、イオン化源は、次に関心のある物質のイオン化に用いられる、イオン化領域内の気体をイオン化させるコロナを生成することができる。ガスの例には、窒素、水蒸気、空気を含むガスなどを含むが、これに限られるものはない。
【0025】
実装では、検出モジュール206は、ポジティブモード、ネガティブモード、ポジティブモードとネガティブモードとの間で切り換えでの動作が可能である。例えば、ポジティブモードでは、イオン化源は、関心のある試料から正イオンを生成し、一方、ネガティブモードでは、負イオンを生成する。ポジティブモード、ネガティブモード、あるいはポジティブモードとネガティブモードとの間で切り換えでの検出モジュール206の動作は、予想される試料のタイプ(例えば、爆発物、麻薬、中毒性工業化学物質)などの、実装上の優先事項に依存する。さらに、イオン化源は、(例えば、試料の導入、ゲートの開放、イベントの発生などに基づき)周期的にパルスを発生されうる。
【0026】
次に、試料イオンは、電界を用いてゲーティンググリッドに向けられる。ゲーティンググリッドは、試料イオンの小さい塊がドリフト領域に入ることができるように、一瞬開放される。例えば、検出モジュール206は、ドリフト領域の導入口の終わりに、電気的シャッターあるいはゲートを含みうる。実装では、ゲートがイオンのドリフト領域の入り口を制御する。例えば、ゲートは、電気的なポテンシャルの差が与えられたあるいは取り除かれたワイヤのメッシュを含みうる。ドリフト領域は、ドリフト領域に沿ってイオンを引き込みための、および/または、通常、ドリフト領域内でゲートの反対側に設けられた検出器にイオンを向けるための電界を印加するために、その長さに沿って間隔を空けて配置された電極(例えば、焦点リング)を有している。ドリフト領域に含まれる電極は、例えば、ドリフト領域内に実質的に均一な電界を印加することができる。試料イオンは、様々なイオンの飛行時間を分析するための分析装置に接続された集電極に収集される。例えば、ドリフト領域の遠端にある収集板が、ドリフト領域を通過したイオンを収集することができる。
【0027】
ドリフト領域は、ドリフト領域に入れられたイオンを各イオンのイオン移動度に基づいて分離するために用いられうる。イオン移動度は、イオンの電荷、イオンの質量、形状などにより決定される。この方法では、IMSシステム200は、飛行時間に基づいてイオンを分離する。ドリフト領域は、ゲートから収集器に伸びる実質的に均一な電界を有する。収集器は、イオンが接触した際にその電荷に基づきイオンを検出する収集板(例えば、ファラデープレート)としうる。実装では、収集板に向かうイオンの進行経路とは一般に反対方向にドリフト領域を流れる、ドリフトガスが供給されうる。例えば、ドリフトガスは、収集板に隣接する位置からゲートに向かって流れることができる。ドリフトガスの例としては、窒素、ヘリウム、大気、再循環された空気(例えば、清浄および/または乾燥された空気)を含みうるが、これに限られるものではない。例えば、イオンの流れの方向とは反対にドリフト領域に沿って空気を循環させるために、ポンプが用いられうる。空気は、例えば、分子篩パックを用いて、乾燥および清浄される。
【0028】
実装では、試料検出器202は、関心のある物質の同定を促進するための様々な構成を含みうる。例えば、試料検出器202は、検量体および/またはドーパント成分を含む1あるいはそれ以上のセルを含みうる。検量体は、イオン移動度の測定を校正するために用いられる。ドーパントは、選択的に分子をイオン化するために用いられうる。ドーパントはまた、試料物質と混ぜ合わされ、試料物質だけに対応するイオンよりも効果的に検出することができるイオンを形成するためにイオン化される。ドーパントは、1あるいはそれ以上の導入口104、イオン化領域および/またはドリフト領域に供給されうる。試料検出器202は、ドーパントを異なる位置に、場合によっては試料検出器202の動作中の異なる時点で供給するように構成されうる。試料検出器202は、IMSシステム200の他の構成要素の動作とドーパントの配送とが連動するように構成されうる。
【0029】
制御器250は、イオンが収集板に到達した際の収集板の電荷の変化を検出する。そして、制御器250は、対応するイオンから物質を同定することができる。実装では、制御器250はまた、ドリフト領域に沿った異なるイオンの飛行時間のスペクトルを生成するために、ゲートの開放を制御するために用いられる。例えば、制御器250は、ゲートに印加される電圧を制御するために用いられる。ゲートの動作は、イベントの発生に応じてなどのように、周期的に起こるように制御される。例えば、制御器250は、イベント(コロナ放電)の発生に基づき、また、周期的に、ゲートをどれだけ開閉するかの調整を行うことができる。さらに、制御器250は、イオン化源のモード(例えば、検出モジュール206がポジティブモードであるか、ネガティブモードであるか)に基づき、ゲートに印加する電気ポテンシャルを切り替えることができる。ある場合には、制御器250は、爆発物および/または化学物質の存在を検出し、警告あるいはそのような物質の印を指示器258に供給することができるように構成されうる。
【0030】
実装では、その構成要素のいくつかのあるいは全てを含むIMSシステム200は、コンピュータのコントロール下で動作することができる。例えば、プロセッサが、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア(例えば、固定論理電気回路)、手動処理あるいはそれらの組み合わせを用いて、ここで説明したIMSシステム200の構成要素および機能を制御するために、IMSシステム200に、あるいは、IMSシステム200内に含まれうる。ここで用いた「制御器」、「機能」、「サービス」および「論理」という語句は一般的に、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、あるいは、IMSシステム200の制御に関連するソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアの組み合わせを表わす。ソフトウェア実装の場合、モジュール、機能あるいは論理は、プロセッサ(例えば、1または複数のCPU)上で特定のタスクを実行させるプログラムコードを表わす。プログラムコードは、1あるいはそれ以上のコンピュータ読み取り可能な記憶デバイス(例えば、内部メモリおよび/または1あるいはそれ以上の有形的表現媒体)に記憶されてもよい。ここで説明した構造、機能アプローチおよび技術は、多様なプロセッサを有する市販の多様なコンピュータプラットフォーム上で実装可能である。
【0031】
例えば、図2Bに示すように、試料検出器202は、導入口104の開閉を制御するために制御器250に結合されてもよい。例えば、制御器250は、1あるいはそれ以上のソレノイド、線形電磁石モータ、回転電磁石モータ、線形圧電モータ、回転圧電モータ、圧電ビームアクチュエータ、空気圧力アクチュエータなどを含む、作動部材114を移動させ、導入口104を開閉させるための作動モジュール208と結合されてもよい。制御器250は、処理モジュール252と、通信モジュール254と、記憶モジュール256とを含んでいてもよい。処理モジュール252は、制御器250のための処理機能を提供し、プロセッサ、マイクロコントローラあるいは他の処理システムと、制御器250により生成あるいはアクセスされるデータおよび他の情報を記憶するための常駐メモリあるいは外部メモリとを含んでいてもよい。処理モジュール252は、ここで述べた技術を実装した、1または複数のソフトウェアプログラムを実行する。処理モジュール252は、形成される物質により、あるいは、ここで述べた処理メカニズムにより限定されるものではなく、(例えば、電気集積回路(IC)部品を用いて、)半導体および/またはトランジスタなどにより実装されてもよい。通信モジュール254は、試料検出器202の構成要素と通信可能となるように構成される。通信モジュール254はまた、(例えば、試料検出器202から処理モジュール252への入力を通信するために、)処理モジュール252と通信可能に結合されている。通信モジュール254および/または処理モジュール252はまた、インターネット、セルラー電話ネットワーク、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、無線ネットワーク、公衆電話ネットワーク、イントラネットなどの様々な異なるネットワークにより通信できるように構成されうるが、これらに限られるものではない。
【0032】
記憶モジュール256は、ここで述べた処理を実行するために、処理モジュール252および可能性のある制御器250の他の構成要素に指示するためのソフトウェアプログラムおよび/またはコードセグメント、あるいは、他のデータなどの、制御器250の動作に付随する様々なデータを記憶する記憶機能を提供する有形のコンピュータ読み取り可能媒体の一例である。したがって、メモリは、IMSシステム200(その構成要素を含む)を操作するための指示プログラム、スペクトルデータなどのデータを記憶することができる。単一の記憶モジュールが示されているが、種々のタイプのメモリ(例えば、有形メモリ、固定メモリ)とその組み合わせとが採用可能である。記憶モジュール256は、処理モジュール252と集積されてもよく、単独型メモリから構成されてもよく、これらの組み合わせでもよい。
【0033】
記憶モジュール256は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリ(例えば、SDメモリカード、ミニSDメモリカードおよび/またはマイクロSDメモリカード)、磁気メモリ、光メモリ、USBメモリデバイス、ハードディスクメモリ、外部メモリおよび他のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含むが、これらに限られない。実装では、試料検出器202および/または記憶モジュール256は、SIMカード、USIMカード、UICCカードなどにより与えられる、読み取り可能な集積回路カード(ICC)メモリを含んでもよい。
【0034】
実装では、種々の分析デバイスが、ここで開示された構成、技術、アプローチなどを利用することが可能である。したがって、ここではIMSシステム200を例として説明したが、種々の分析装置が、開示した技術、アプローチ、構成などを利用することができる。これらのデバイスは、制限機能(例えば、薄いデバイス)を備えた、あるいは、頑強な機能(例えば、厚いデバイス)を備えて構成されてもよい。したがって、デバイスの機能は、例えば、処理パワー、メモリ(例えば、データ記憶容量)、分析能力などの、デバイスのソフトウェアあるいはハードウェア資源に関連する。
【0035】
本発明を、構造上の特徴と方法論的作用との双方又は何れか一方に特有の言語で説明したが、特許請求の範囲に規定した本発明は必ずしも上述した特有の特徴又は作用に限定されるものではない。種々の構成が説明されているが、装置、システム、サブシステム、コンポーネントなどは、この開示から逸脱することなく種々の方法で構成することができる。むしろ、これらの特徴及び作用は、特許請求の範囲に開示した発明を実行する例示的形態として開示したものである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図2A
図2B