(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シート状部材を、搬送装置を用いて前記シート状部材の幅方向に対して垂直な方向に移動させ、前記シート状部材を裁断して平面視略矩形形状のマットとするシート状部材の裁断方法であって、
前記シート状部材は、湿式法で製造され、無機繊維、有機バインダ及び無機バインダを含むシート状部材であり、
前記平面視略矩形形状のマットは、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される保持シール材であり、
前記平面視略矩形形状のマットは、一方の辺と、向かい合う辺とで、互いに対応する凸部及び凹部を有しており、
前記搬送装置の上流に配置される縦切断部材を用いて、前記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に、かつ、前記縦切断部材が前記シート状部材の前記幅方向における両方の端部に接触しないように、前記シート状部材の幅方向の一部を切断して縦切断部を形成する縦切断工程と、
前記縦切断工程の後に、前記縦切断部材よりも下流に位置し、前記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置された横切断部材を用いて、前記複数個の横切断部材をそれぞれ前記シート状部材の厚さ方向に対して同じ角度傾斜させて前記シート状部材と接触させ、前記シート状部材を、前記シート状部材の移動方向に平行な方向、かつ、前記シート状部材の厚さ方向に対して傾斜した方向に切断して複数の横切断部を形成する横切断工程と、を備え、
前記横切断工程は、前記搬送装置を一旦停止させて、静止した前記シート状部材に対して行い、
前記縦切断部は、前記シート状部材の前記幅方向において、前記シート状部材の前記幅方向における一方の端部に最も近い前記横切断部から他方の端部に最も近い前記横切断部までを切断しており、
前記縦切断部と前記横切断部とで囲まれた平面視略矩形形状のマットが形成されることを特徴とするシート状部材の裁断方法。
前記搬送装置がベルト状の真空コンベアであって、前記縦切断工程において、前記シート状部材における前記縦切断部材が接近する側の面と反対側の面を前記真空コンベアで吸着することで、前記シート状部材を前記搬送装置上に固定する請求項1又は2に記載のシート状部材の裁断方法。
前記縦切断部材が、板刃、回転刃、ギロチン刃、レーザー切断装置及びウォータージェット切断装置からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
前記搬送装置がベルト状の真空コンベアであって、前記横切断工程において、前記シート状部材における前記横切断部材が接近する側と反対側の面を前記真空コンベアで吸着することで、前記シート状部材を前記搬送装置上に固定する請求項1〜4のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
前記複数の横切断部材を、前記シート状部材の幅方向に沿って移動させることで、前記横切断部材同士の距離を変更可能である請求項1〜6のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明のシート状部材の裁断方法における、縦切断工程と横切断工程とを模式的に示した俯瞰図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1において横切断工程が行われる前の一例を模式的に示したB−B線断面図であり、
図2(b)は、
図1において横切断工程が行われる瞬間の一例を模式的に示したB−B線断面図であり、
図2(c)は、
図1において横切断工程が行われた直後の一例を模式的に示したB−B線断面図である。
【
図3】
図3(a)は、縦切断工程において用いられる縦切断部材の一例を模式的に示した斜視図であり、
図3(b)は
図3(a)におけるC−C線断面図である。
【
図4】
図4は、縦切断工程において用いられる縦切断部材の別の一例を模式的に示した断面図である。
【
図5】
図5(a)は、横切断工程において用いられる横切断部材の一例を模式的に示した斜視図であり、
図5(b)は
図5(a)におけるD−D線断面図であり、
図5(c)は、横切断工程において用いられる横切断部材の別の一例を模式的に示した斜視図であり、
図5(d)は
図5(c)におけるE−E線断面図である。
【
図6】
図6は、安全ケースを用いた縦切断工程の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、
図6において、縦切断工程が行われる瞬間の一例を模式的に示したF−F線断面図であり、
図7(b)は、
図6において、縦切断部材がシート状部材を切断し、シート状部材から離れる瞬間の一例を模式的に示したF−F線断面図であり、
図7(c)は、
図6において、縦切断部材がシート状部材を切断し、安全ケース内に収納される瞬間の一例を模式的に示したF−F線断面図である。
【
図8】
図8(a)は、本発明のシート状部材の裁断方法により得られるマットの一例を模式的に示した斜視図であり、
図8(b)は
図8(a)におけるH−H線断面図である。
【
図9】
図9(a)は、本発明の排ガス浄化装置の製造方法に用いられる巻付体の一例を模式的に示す斜視図であり、
図9(b)は、
図9(a)におけるI−I線断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示した斜視図である。
【0034】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明のシート状部材の裁断方法について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0035】
以下、本発明のシート状部材の裁断方法について説明する。
本発明のシート状部材の裁断方法は、シート状部材を、搬送装置を用いて上記シート状部材の幅方向に対して垂直な方向に移動させ、上記シート状部材を裁断して平面視略矩形形状のマットとするシート状部材の裁断方法であって、上記搬送装置の上流に配置される縦切断部材を用いて、上記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に、かつ、上記縦切断部材が上記シート状部材の上記幅方向における両方の端部に接触しないように、上記シート状部材の幅方向の一部を切断して縦切断部を形成する縦切断工程と、上記縦切断工程の後に、上記縦切断部材よりも下流に位置し、上記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置された横切断部材を用いて、上記複数個の横切断部材をそれぞれ上記シート状部材の厚さ方向に対して同じ角度傾斜させて上記シート状部材と接触させ、上記シート状部材を、上記シート状部材の移動方向に平行な方向、かつ、上記シート状部材の厚さ方向に対して傾斜した方向に切断して複数の横切断部を形成する横切断工程と、を備え、上記縦切断部は、上記シート状部材の上記幅方向において、上記シート状部材の上記幅方向における一方の端部に最も近い上記横切断部から他方の端部に最も近い上記横切断部までを切断しており、上記縦切断部と上記横切断部とで囲まれた平面視略矩形形状のマットが形成されることを特徴とする。
【0036】
図1は、本発明のシート状部材の裁断方法における、縦切断工程と横切断工程とを模式的に示した俯瞰図である。
図1に示すように、本発明のシート状部材の裁断方法では、幅(
図1中、両矢印Wで示される長さ)を有するシート状部材100を、搬送装置1を用いてシート状部材100の幅方向に垂直な方向(
図1中、矢印Aで示される方向)に移動させる。そして、縦切断部材10を用いてシート状部材100に縦切断部110を形成したあと、縦切断部材10よりも下流に配置される横切断部材20を用いてシート状部材100に横切断部120を形成する。
また、
図1でのシート状部材100は搬送装置1の進行方向に長い連続体となっているが、シート状部材100の長さに特に制約はなく、マット200を決められた形状で1つ以上裁断できれば良い。
【0037】
縦切断工程では、縦切断部材10を用いて、縦切断部材10がシート状部材100の幅方向における両方の端部と接触しないように、シート状部材100の幅方向の一部を切断して縦切断部110を形成する。
縦切断工程では、縦切断部材10がシート状部材100の幅方向における両方の端部と接触しないため、縦切断部110には、シート状部材100の幅方向における端部105に最も近い端部111(
図1中、破線で囲まれる部分)と、もう一方の端部106に最も近い端部112(
図1中、破線で囲まれる部分)が存在している。言い換えると、シート状部材100の一方の端部105から縦切断部の一方の端部111までと、シート状部材100のもう一方の端部106から縦切断部のもう一方の端部112までは、シート状部材100が切断されていない。そのため、縦切断工程によってシート状部材がばらけることがなく、続く横切断工程における寸法のずれを抑制することができる。
【0038】
続く横切断工程では、横切断部材20を用いて、シート状部材100をシート状部材100の移動方向に対して平行な方向に切断し、横切断部120を形成する。横切断部材20は、シート状部材100の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個(20a、20b、20c)が配置されており、対応した横切断部(120a、120b、120c)を形成する。複数個の横切断部材20のうち、シート状部材100の幅方向における最も外側に位置する横切断部材20a及び20cは、それぞれが、縦切断工程において形成された縦切断部110の端部111及び112(
図1中、破線で囲まれる部分)よりもシート状部材100の幅方向における内側に位置している。そのため、シート状部材100の幅方向における一方の端部105に最も近い横切断部120aから他方の端部106に最も近い横切断部120cまでが、縦切断部110によって切断されるように、横切断部120a及び120cが形成されている。
【0039】
横切断工程を終えることで、縦切断部材10により形成された縦切断部110と、横切断部材20により形成された横切断部120とによって囲まれる略矩形形状に、シート状部材100が裁断されて、平面視略矩形形状のマット200となる。縦切断工程では、上述したように、シート状部材が幅方向に完全に切断されていないため、シート状部材が分離したり、ずれたりすることがない。従って、横切断工程によって、シート状部材を正確な寸法で裁断することができる。
【0040】
図2(a)は、
図1において横切断工程が行われる前の一例を模式的に示したB−B線断面図であり、
図2(b)は、
図1において横切断工程が行われる瞬間の一例を模式的に示したB−B線断面図であり、
図2(c)は、
図1において横切断工程が行われた直後の一例を模式的に示したB−B線断面図である。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、横切断工程では、複数の横切断部材(20a、20b、20c)をシート状部材100の厚さ方向に対して同じ角度(
図2(a)中、θ
1で表される角度)傾斜させてシート状部材100と接触させる。従って、
図2(c)に示すように、シート状部材100には、厚さ方向に対してθ
1だけ傾斜した横切断部120が形成され、隣接する2つの横切断部(120aと120b、又は、120bと120c)によって、シート状部材100がマットとして裁断された際に、厚さ方向に対してθ
1だけ傾斜した第1の長側面及び第2の長側面が形成されることとなる。
従って、本発明のシート状部材の裁断方法では、
縦切断部と横切断部とで囲まれた平面視略矩形形状であって、
横切断部によって、長手方向に沿い、かつ、厚さ方向に対して傾斜した長側面が形成され、縦切断部によって、長手方向と垂直な幅方向に沿った短側面が形成され、
幅方向に沿った断面図における断面形状が略平行四辺形であるマットが得られる。
このようなマットは、排ガス処理体に巻きつけてケーシングに圧入することで、圧入に伴う変形を相殺し、耐風食性に優れた保持シール材として用いることができる。
【0041】
横切断工程において、シート状部材の厚さ方向と横切断部とのなす角は、5〜60°であることが望ましく、10〜40°であることがより望ましく、15〜30°であることがさらに望ましい。
すなわち、横切断部材がシート状部材と接触する角度は、シート状部材の厚さ方向に対して5〜60°傾斜していることが望ましく、10〜40°傾斜していることがより望ましく、15〜30°傾斜していることがさらに望ましい。上記角度が5°未満であると、シート状部材を排ガス処理体に巻きつけてケージングに圧入した際に、圧入による変形を相殺することができないことがある。また、角度が60°以上であると、圧入による変形によってシート状部材の長側面の傾斜を相殺しきれないことがある。
【0042】
横切断工程において用いられる複数の横切断部材(20a、20b、20c)は、シート状部材100の幅方向に沿って移動させることで、横切断部材20同士の距離(
図1中、両矢印W
2及び両矢印W
3で示される長さ)を変更可能とすることが望ましい。横切断部材同士のシート状部材の幅方向における間隔を変更することで、横切断部が形成される位置を変更することができ、ひいては、裁断されるマットの形状や寸法を調整することができる。
【0043】
横切断工程においては、横切断部材20をシート状部材100の厚さ方向に対して傾斜させてシート状部材100と接触させるが、この際に、シート状部材100の厚さ方向と横切断部材20とのなす角は、調整可能であることが望ましい。
シート状部材100の厚さ方向と横切断部材20とのなす角を調整する際には、シート状部材の厚さ方向と各横切断部材とのなす角が全て同じとなるように調整することが望ましい。
シート状部材の厚さ方向と横切断部材とのなす角を調整することで、裁断されるシート状部材の長手方向における側面の角度を調整することができる。
【0044】
続いて、縦切断工程において用いられる縦切断部材について説明する。
図3(a)は、縦切断工程において用いられる縦切断部材の一例を模式的に示した斜視図であり、
図3(b)は
図3(a)におけるC−C線断面図である。
図3(a)に示すように、縦切断部材10としては、胴体部11と刃部12とを有する板状金属を所望の形状に折り曲げた板刃を用いることができる。
【0045】
縦切断部材10の長さ(
図3(b)中、両矢印L
1で示される長さ)は、特に限定されないが、切断するシート状部材の厚さよりも長いことが望ましい。
【0046】
縦切断部材10を構成する胴体部11の厚さ(
図3(b)中、両矢印Mで示される長さ)は特に限定されないが、0.5〜1.5mmであることが望ましく、0.8〜1.2mmであることがより望ましく、0.95〜1.05mmであることが特に望ましい。胴体部11の厚さが0.5mmよりも薄いと縦切断部材10の強度が低下しやすく、1.5mmよりも厚いと折り曲げ加工が困難になるとともに、切断するシート状部材の形状に影響を与えることがある。
【0047】
図3(b)に示すように、縦切断部材10は、胴体部11から所定の切り込み角度(
図3(b)中、θ
2及びθ
3で表される角度)で切り込まれることにより刃部12が形成されている。θ
2及びθ
3の角度差は、10°以内が望ましく、より望ましくは5°以内、さらに望ましくは0°である。θ
2及びθ
3の角度差が10°を超える場合、縦切断部材10をシート状部材に押圧したときに、刃部12が切り込み角度の小さい側に折れ曲がり、縦切断部材10の耐久性が低下することや、切断するシート状部材の寸法がずれることがある。
【0048】
θ
2及びθ
3はそれぞれ10〜30°であることが望ましく、15〜25°であることがより望ましく、17〜22°であることがさらに望ましい。
θ
2又はθ
3の角度が10°未満の場合には刃部12の強度が不足して刃部12が刃こぼ
れを起こすことがあり、θ
2又はθ
3の角度が30°を超える場合には、切断に要する圧力が大きくなるため、縦切断部材10の耐久性が低下することがある。
θ
2及びθ
3はそれぞれ異なっていてもよく、同一であってもよいが、シート状部材を切断する際の抵抗を低減する観点から、θ
2とθ
3とが同一(θ
2とθ
3との角度差が0°)であることが望ましい。
【0049】
また、縦切断部材10は両刃であることが望ましい。縦切断部材10が両刃であるとは、θ
2及びθ
3がいずれも0°を超えている状態を指す。縦切断部材10が両刃であると、シート状部材を切断する際の抵抗を低減することができる。
【0050】
縦切断部材10を構成する金属材料としては炭素鋼、ステンレス鋼、モリブデン鋼、特殊鋼(合金鋼)等の鋼類、コバルト合金(ステライト)、チタン合金等の合金類、ジルコニア、アルミナ等のファインセラミックス類が挙げられる。これらの中で、焼入れ処理により硬度を上昇させることができる鋼類が好ましく使用できる。さらに、硬度、耐久性が比較的高く、入手が容易であり、また、炭素の含有量を変化させることにより目的に応じ機械的特性を容易に変化させることができる炭素鋼がより好ましく使用される。炭素鋼は、炭素(C)含有量が2%以下の鉄と炭素の合金であり、通常、微量のケイ素、マンガン、リン、硫黄を含有する。炭素鋼は、炭素の含有量により、0.12%以下:極軟鋼、0.12〜0.2%:低炭素鋼(軟鋼)、0.2〜0.45%:中炭素鋼(半軟鋼、半硬鋼)、0.45〜0.8%:高炭素鋼(硬鋼)、0.8〜1.7%:最硬鋼(至硬鋼)に分けられる。炭素の含有量が多いほど焼き入れ硬化処理を施した際、硬さが上昇する。逆に、炭素の含有量が少ないほど防錆性が向上する。炭素鋼中の炭素の量は切断するシート状部材の材質、目的等に応じ適宜設定される。また、複数の金属材料が接合されるグラット材として使用しても良い。例えば、刃部12を硬くするために先端部に炭素含有量の高い炭素鋼を使用しても良い。また、表面の防錆性を向上させるために炭素含有量の低い炭素鋼を両面に積層させる三層構造の複層構造として構成してもよい。また、折り曲げ加工性を向上させるために屈曲部においては炭素含有量の低い炭素鋼を使用してもよい。シート状部材としてアルミナファイバを使用する場合、炭素含有率の高い炭素鋼を使用することが望ましい。
【0051】
縦切断部材10の表面には、低摩擦処理が施されていることが望ましい。低摩擦処理としては、特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂によるコーティング等が挙げられる。加えて、ナノオーダーの酸化アルミニウム砥粒などの、非常に粒子径が小さい砥粒を用いて縦切断部材10の表面を研磨することにより低摩擦化する方法も有効である。
縦切断部材10の表面に低摩擦処理が施されていると、縦切断部を形成する際に、シート状部材と縦切断部材とが滑りやすく、縦切断部工程におけるシート状部材へのダメージを最小限に抑えることができる。
【0052】
図4は、縦切断工程において用いられる縦切断部材の別の一例を模式的に示した断面図である。
図4に示すように、縦切断部材15は、胴体部16の厚さが刃部17から遠ざかるにつれて順次厚くなっていてもよい。胴体部16の厚さが刃部17から遠ざかるに連れて順次厚くなっていると、縦切断部材15の強度を向上させることができ、さらに、シート状部材を裁断した際の刃の倒れを抑制することができる。
なお、このような構成の縦切断部材15における刃部17の切り込み角度は、
図4に示すように、刃部17の先端から胴体部16に向かって垂直に伸ばした線と刃部17を構成する面とのなす角で表される。(
図4中、θ
4及びθ
5で示される)。
また、胴体部16(
図4中、両矢印L
2で示される部分)の厚さの平均値を胴体部16の厚さとする。
【0053】
縦切断部材としては、上記の板刃のほかにも、回転刃やギロチン刃等も用いることもでき、さらに、ウォータージェットやレーザーによる従来公知の切断方法を用いることもできる。このような切断部材を用いる場合、搬送装置を一旦停止させて、静止したシート状部材に対して縦切断工程を行ってもよい。また、切断部材の種類に応じて、搬送装置の種類を変更してもよい。
【0054】
続いて、横切断工程において用いられる横切断部材について説明する。
図5(a)は、横切断工程において用いられる横切断部材の一例を模式的に示した斜視図であり、
図5(b)は
図5(a)におけるD−D線断面図であり、
図5(c)は、横切断工程において用いられる横切断部材の別の一例を模式的に示した斜視図であり、
図5(d)は
図5(c)におけるE−E線断面図である。
横切断部材20は、シート状部材100を切断することができれば特に限定されないが、
図5(a)に示すような回転刃21や、
図5(c)に示すようなギロチン刃25を用いることができる。
【0055】
図5(b)に示すように、回転刃21は、円盤部22から所定の切り込み角度(
図5(b)中、θ
6及びθ
7で表される角度)で切り込まれることにより刃部23が形成されている。回転刃21を構成する材料、切り込み角度等の望ましい範囲は、縦切断部材10と同様であり、縦切断部材10と同様の低摩擦処理が施されることも望ましい。また、円盤部22の厚さ(
図5(b)中、両矢印N
1で示される長さ)は、特に限定されないが、縦切断部材の胴体部の厚さと同様であることが望ましい。
【0056】
図5(d)に示すように、ギロチン刃25は、胴体部26から所定の切り込み角度(
図5(d)中、θ
8及びθ
9で表される角度)で切り込まれることにより刃部27が形成されている。ギロチン刃25を構成する材料、切り込み角度等の望ましい範囲は、縦切断部材10と同様であり、縦切断部材10と同様の低摩擦処理が施されることも望ましい。また、胴体部26の厚さ(
図5(d)中、両矢印N
2で示される長さ)は、特に限定されないが、縦切断部材10の胴体部の厚さと同様であることが望ましい。
【0057】
また、横切断部材としては、ウォータージェットやレーザーによる従来公知の切断装置を用いることもできる。このような切断装置を用いる場合、搬送装置を一旦停止させて、静止したシート状部材に対して横切断工程を行ってもよい。また、横切断部材の種類に応じて、搬送装置の種類を変更してもよい。
【0058】
搬送装置としては、シート状部材を安定的に移動させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ゴムベルトコンベア、スチールベルトコンベア、金網ベルトコンベア、真空コンベア等のベルトコンベアや、ローラーコンベア等であってもよく、複数の搬送装置を隣接させて用いてもよい。真空コンベアは、シート状部材を搬送装置上に安定的に保持することができるため、シート状部材のズレ等を抑制できる点で望ましい。
縦切断工程において、シート状部材における縦切断部材が接近する側の面と反対側の面を真空コンベアで吸着することで、シート状部材を真空コンベア上に固定することができるため、縦切断工程におけるシート状部材のずれをさらに抑制することができる。
同様の理由で、横切断工程において真空コンベアを用いると、シート状部材をより正確な寸法で裁断することができる。
また、シート状部材を固定する方法として、真空コンベアでの吸着の他にも、円筒状のローラや板状の押さえ部材によりシート状部材を挟むようにして固定する方法でも良い。
【0059】
続いて、安全ケースについて説明する。
図6は、安全ケースを用いた縦切断工程の一例を模式的に示した斜視図である。
図6に示すように、安全ケース30は、縦切断部材10を収納するようになっており、縦切断部材10が通過可能なスリット32を有する底板31と、壁部33から構成されている。
縦切断工程においては、シート状部材を切断した後の縦切断部材に、シート状部材が付着することがある。このような場合、切断したシート状部材が縦切断部材と共に搬送装置上から持ち上げられ、シート状部材がたわんだり、シワが発生したりすることがあるため、これを防ぐために、シート状部材と縦切断部材との間に、安全ケースをさらに備えていてもよい。
同様の理由から、シート状部材と横切断部材との間に、安全ケースをさらに備えていてもよい。
【0060】
図7(a)は、
図6において、縦切断工程が行われる瞬間の一例を模式的に示したF−F線断面図であり、
図7(b)は、
図6において、縦切断部材がシート状部材を切断し、シート状部材から離れる瞬間の一例を模式的に示したF−F線断面図であり、
図7(c)は、
図6において、縦切断部材がシート状部材を切断し、安全ケース内に収納される瞬間の一例を模式的に示したF−F線断面図である。
図7(a)に示すように、縦切断部材10は、切断工程が行われる瞬間だけ、安全ケース30に形成されたスリット32を通過してシート状部材100に接触する。
また、
図7(b)に示すように、縦切断部材10が切断工程においてシート状部材100を切断した時に、シート状部材100が縦切断部材10に付着し、シート状部材100が搬送装置1上から持ち上げられてしまうことがある。
シート状部材100が搬送装置1上から持ち上げられてしまったとしても、
図7(c)に示すように、縦切断部材10は安全ケース30に設けられたスリット32を通過可能であるが、シート状部材100はスリット32を通過できないため、縦切断部材10が安全ケース30内に収納されると、縦切断部材10とシート状部材100とが分離されることとなる。安全ケース30内に収納された縦切断部材10は、次の縦切断工程までは安全ケース30内に収納されているため、作業者が縦切断部材10に接触する危険性を低減することができる。そのため、安全ケースを用いることで、作業者が縦切断部材に接触する危険性を低減することができ、かつ、シート状部材が縦切断部材に付着した場合に、シート状部材がたわんだり、シワが発生したりすることを抑制することができる。
【0061】
安全ケースを構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、金属、プラスチック、木材等が挙げられ、成形性及び取り扱い性の観点から、プラスチック製であることが望ましい。
【0062】
次に、シート状部材について説明する。
シート状部材を構成する材料としては、無機質繊維集合体や有機化合物からなる発泡性緩衝材が挙げられる。これらは、従来の裁断方法によってシート状部材を構成する無機繊維や泡等の三次元構造が破壊されるため、保持力、緩衝力等の低下が問題となっていた。これに対して、本発明のシート状部材の裁断方法では、シート状部材を圧縮する工程がないため、シート状部材の構造に与えるダメージを最小限とすることができ、保持力、緩衝力の高いシート状部材を得ることができる。
【0063】
シート状の無機質繊維集合体は、主に無機繊維から構成されており、従来公知のものを好適に用いることができる。
【0064】
無機繊維は、特に限定されないが、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、ムライト繊維、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1種から構成されていることが望ましく、アルミナ繊維及び生体溶解性繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより望ましい。
無機繊維がアルミナ繊維である場合には、耐熱性に優れているので、高温に晒された場合であっても、変質等が発生することがないため、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される保持シール材として特に好適である。
また、無機繊維が生体溶解性繊維である場合には、保持シール材を用いて排ガス浄化装置を作製する際に、飛散した無機繊維を吸入等しても、生体内で溶解するため、作業員の健康に害を及ぼすことがない。そして、ガラス繊維についても同様に、健康に害を及ぼすことはない。
【0065】
アルミナ繊維には、アルミナ以外に、例えば、カルシア、マグネシア、ジルコニア等の添
加剤が含まれていてもよい。
アルミナシリカ繊維の組成比としては、重量比でAl
2O
3:SiO
2=60:40〜80:20であることが望ましく、Al
2O
3:SiO
2=70:30〜74:26であることがより望ましい。
また、アルミナ繊維のムライト結晶化率は繊維100重量部に対して5重量部以下が望ましいが、さらには3重量部以下が望ましく、1重量部以下が最も望ましい。ムライト結晶化率は蛍光X線装置にて測定でき、5重量部以下であると繊維は脆くなく、弾力性を有するため、保持力及び緩衝性に優れた無機質繊維集合体となる。
【0066】
無機繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、望ましくは0.05〜150mm、より望ましくは0.35〜100mmである。
無機繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、マットの強度及び柔軟性の観点から、望ましくは1〜20μm、より望ましくは1〜10μmである。
無機質繊維集合体は湿式法で作られることが望ましく、その際の望ましい平均繊維長は0.05〜5mmであり、さらには0.5〜3mmが望ましい。湿式法により、容易に広範囲の坪量の無機質繊維集合体を製造することが可能であり、特に坪量は限定されないが、望ましい坪量は2000g/m
2〜6000g/m
2であり、より望ましくは3000〜5000g/m
2である。
【0067】
無機質繊維集合体は、無機繊維の他に、有機バインダ及び無機バインダを含んでいても良い。無機質繊維集合体が有機バインダ及び無機バインダを含んでいると、無機質繊維集合体を構成する無機繊維同士の絡み合いが強固となり、面圧の高い無機質繊維集合体となる。
【0068】
有機バインダとしては、特に限定されず、アクリル系樹脂、アクリレート系ラテックス、ゴム系ラテックス、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0069】
無機質繊維集合体に含まれる有機バインダは、固形分として、無機繊維100重量部に対して0.1〜15重量部含まれることが望ましく、1〜12重量部含まれることがより望ましく、3〜10重量部含まれることがさらに望ましい。
【0070】
無機バインダとしては、特に限定されず、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられる。
【0071】
無機質繊維集合体に含まれる無機バインダは、固形分として、無機繊維100重量部に対して0.1〜10重量部含まれることが望ましく、0.1〜3重量部含まれることがより望ましく、0.1〜2重量部含まれることがさらに望ましい。
【0072】
無機質繊維集合体の厚さは、15mm以上であることが望ましく、20mm以上であることがより望ましく、25mm以上であることがさらに望ましい。また、50mm以下であることが望ましく、40mm以下であることがより望ましい。厚さが上記範囲内である無機質繊維集合体は、本発明の裁断方法によって、無機質繊維集合体にダメージを与えずに裁断することができるため、高い面圧を有するマットとなる。
【0073】
有機化合物からなる発泡性緩衝材を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0074】
本発明のマットは、上述した本発明のシート状部材の裁断方法により、シート状部材を裁断することにより得られる。以下、本発明のマットについて説明する。
【0075】
図8(a)は、本発明のシート状部材の裁断方法により得られるマットの一例を模式的に示した斜視図であり、
図8(b)は
図8(a)におけるH−H線断面図である。
図8(a)に示すマット200は、長手方向の長さ(以下、単に全長ともいう。
図8(a)中、両矢印L
4で示す)、幅(
図8(a)中、矢印W
4で示す)及び厚さ(
図8(a)中、矢印T
4で示す)を有している。マット200は平面視略矩形形状であって、第1の主面201と第1の主面と対向する第2の主面202と、長手方向に沿い、かつ、厚さ方向に対して傾斜した長側面である第1の長側面205と第1の長側面205に対向する第2の長側面206と、長手方向に垂直な幅方向に沿った短側面であり、凸部203aが形成された端面203と凹部204aが形成された端面204とを有している。凸部203a及び凹部204aは、互いに対応しており、マット200を円筒形状の物品に巻き付けた際には、ちょうど互いに嵌合するような形状である。
マット200は、
図8(b)に示すように、幅方向に平行な断面におけるマット200の断面形状が平行四辺形となっている。すなわち、本発明のマットは、第1の側面205と第2の側面206とが、マット200の厚さ方向に対して、所定の角度(θ
1)傾いている。
【0076】
次に、本発明の排ガス浄化装置の製造に用いられる巻付体について説明する。
図9(a)は、本発明の排ガス浄化装置の製造方法に用いられる巻付体の一例を模式的に示す斜視図であり、
図9(b)は、
図9(a)におけるI−I線断面図である。
図9(a)及び
図9(b)に示すように、排ガス処理体320と第1の主面201とが接触するように、マット200を排ガス処理体320に巻き付けた場合、第1の主面201と第1の長側面205とのなす角(
図9(b)中、θ
10で表される角度)は鈍角となり、第1の主面201と第2の長側面206とのなす角(
図9(b)中、θ
11で表される角度)は鋭角となる。
【0077】
また、排ガス処理体320と第2の主面202とが接触するように、マット200を排ガス処理体320に巻き付けた場合には、第2の主面202と第1の長側面205とのなす角は鋭角となり、第2の主面202と第2の長側面206とのなす角は鈍角となる(図示しない)。
【0078】
次に、本発明の排ガス浄化装置の製造方法について説明する。
図10は、本発明の排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
図10に示すように、本発明の排ガス浄化装置の製造方法においては、排ガス処理体320と接触する第1の主面201とのなす角(
図10中、θ
10で表される角度)が鈍角となっている第1の長側面205を先頭として、巻付体400をケーシング310に圧入する。
第1の主面201と第1の長側面205とのなす角が鈍角であると、巻付体400をケーシング310に圧入する際に、まず、第2の主面202からケーシング310に圧入されることとなる。換言すると、第2の主面202は第1の主面201よりも先にケーシング310に圧入される。
【0079】
一般的に、巻付体をケーシング内部に圧入する際には、巻付体の外側となる保持シール材の主面に、圧入方向とは反対方向の応力が掛かる。そのため、ケーシングと接触する側の主面は、排ガス処理体と接触する側の主面と比較して圧入方向の後方に変形してずれることとなり、排ガス浄化装置の排ガス流入側端面において、保持シール材の端面が、排ガス処理体の端面と平行ではなくなる。
本発明の排ガス浄化装置の製造方法においては、あらかじめこの変形分を考慮した形状のマットを保持シール材として用いるため、巻付体をケーシング内部に圧入した後の排ガス浄化装置の排ガス流入側端面において、保持シール材の端面が排ガス処理体の端面と略平行となる。
従って、保持シール材の端面の全てが排ガス処理体とケーシングに圧縮されている。そのため、風食されやすい箇所が存在せず、耐風食性に優れた排ガス浄化装置を製造することができる。
【0080】
図10においては、第1の主面201と排ガス処理体320とが接触する巻付体をケーシングに圧入する場合について説明したが、本発明の排ガス浄化装置の製造方法においては、
図10に説明した方法に限られず、圧入時にマットの変形が相殺されるように圧入する方法であれば全て好適に用いることができる。例えば、第2の主面と排ガス処理体とが接触するよう巻き付けられた巻付体を用いて、第2の主面とのなす角が鈍角となっている側の長側面を先頭にして、巻付体をケーシングに圧入してもよい。
【0081】
続いて、本発明の排ガス浄化装置について説明する。
図11は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図11に示すように、本発明の排ガス浄化装置300は、ケーシング310と、ケーシング310に収容された排ガス処理体320と、排ガス処理体320及びケーシング310の間に配設されたマット200とを備えている。
排ガス処理体320は、多数のセル325がセル壁326を隔てて長手方向に併設された柱状のものであり、セル325のいずれか一方の端部は、封止材328によって封止されている。なお、ケーシング310の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と、排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることとなる。
【0082】
上述した構成を有する排ガス浄化装置300を排ガスが通過する場合について、
図11を参照して以下に説明する。
図11に示すように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置300に流入した排ガス(
図11中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体320(ハニカムフィルタ)の排ガス流入側端面320aに開口した一のセル325に流入し、セル325を隔てるセル壁326を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁326で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス処理側端面320bに開口した他のセル325から流出し、外部に排出される。
排ガスが排ガス処理体を通過する際には、排ガス処理体を保持する保持シール材にも排ガスが衝突することとなる。本発明の排ガス浄化装置300においては、あらかじめ圧入時の変形を考慮した形状の保持シール材を用いて、圧入による変形を相殺する方向から圧入を行っているため、排ガス流入側となる保持シール材の長側面207aが排ガス処理体の排ガス流入側端面と略平行となっている。そのため、保持シール材は排ガス流入側となる長側面において排ガス処理体とケージングによって均一に圧縮されており、排ガスによる風食を受けにくくなる。従って、本発明の排ガス浄化装置においては、保持シール材の風食を抑制することができる。
【0083】
次に、本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシング及び排ガス処理体(ハニカムフィルタ)について説明する。
なお、排ガス浄化装置を構成するマットの構成については、本発明のマットとしてすでに説明しているので省略する。
【0084】
本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば特に限定されず、具体的には、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。
【0085】
本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシングの形状は、略円筒型形状の他、クラムシェル型形状や、断面形状が略楕円型形状の筒形、断面形状が略多角形形状の筒形等を好適に用いることができる。
【0086】
続いて、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体について説明する。
【0087】
図12は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示した斜視図である。
図12に示す排ガス処理体320は、多数のセル325がセル壁326を隔てて長手方向に併設される柱状のセラミック質からなるハニカム構造体である。また、セル325のいずれか一方の端部は、封止材328で封止されている。また、ハニカム構造体の外周には、ハニカム構造体の外周部を補強したり、形状を整えたり、ハニカム構造体の断熱性を向上させたりする目的で、外周コート層327が設けられている。
【0088】
セル325のいずれか一方の端部が封止されている場合、排ガス処理体320の一方の端部からみたときに、端部が封止されたセルと封止されていないセルとが交互に配置されていることが望ましい。
【0089】
排ガス処理体320を長手方向に垂直な方向に切断した断面形状は、特に限定されず、略円形、略楕円形でもよく、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形であってもよい。
【0090】
排ガス処理体320を構成するセル325の断面形状は、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形でもよく、また、略円形、略楕円形であってもよい。また、排ガス処理体320は、複数の断面形状のセルが組み合わされたものであってもよい。
【0091】
排ガス処理体320を構成する素材は特に限定されないが、炭化ケイ素質及び窒化ケイ素質等の非酸化物、並びに、コージェライト及びチタン酸アルミニウム等の酸化物を用いることができる。これらのうち、特に、炭化ケイ素質又は窒化ケイ素質等の非酸化物多孔質焼成体であることが望ましい。
これら多孔質焼成体は、脆性材料であるので、機械的な衝撃等により破壊されやすい。しかし、本発明の排ガス浄化装置では、排ガス処理体の側面の周囲にはマットが介在し、衝撃を吸収するので、機械的な衝撃や熱衝撃により排ガス処理体にクラック等が発生するのを防止することができる。特に、本発明のマットは既に説明したように、保持力に優れており、排ガス処理体を安定的に保持することができる。
【0092】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が望ましく、この中では、白金がより望ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いる事もできる。これらの触媒は、単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
【0093】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体としては、コージェライト等からなり、一体的に形成された一体型ハニカム構造体であってもよく、あるいは、炭化ケイ素等からなり、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含むペーストを介して複数個結束してなる集合型ハニカム構造体であってもよい。
【0094】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、セルに封止材が設けられずに、セルの端部が封止されていなくてもよい。この場合、排ガス処理体は、白金等の触媒を担持させることによって、排ガス中に含まれるCO、HC又はNOx等の有害なガス成分を浄化する触媒担体として機能する。
【0095】
以下に、本発明のシート状部材の裁断方法、マット、排ガス浄化装置の製造方法及び排ガス浄化装置の作用について説明する。
(1)本発明のシート状部材の裁断方法では、縦切断工程においてシート状部材を幅方向に完全に切断しないまま、横切断工程を行う。そのため、縦切断工程を終えたシート状部材が搬送装置上を移動する際の振動等によりたわんだり、ずれたりすることがない。そのため、横切断工程において正確な寸法で裁断を行うことができ、マットの寸法のずれを抑制することができる。
(2)本発明のシート状部材の裁断方法では、横切断工程において、横切断部材をシート状部材の厚さ方向に対して傾斜させてシート状部材と接触させる。そのため、厚さ方向に対して傾斜した側面を有するマットを製造することができる。
(3)本発明のマットは、縦切断工程及び横切断工程においてマットの構造破壊の原因となる圧縮行程などを受けていないため、マットの構造が破壊されておらず、高い面圧や緩衝性を発揮することができる。
(4)本発明のマットは、長手方向を構成する長側面が厚さ方向に対して傾斜しており、幅方向に沿った断面図における断面形状が略平行四辺形である。そのため、本発明のマットを排ガス処理体に巻き付けてケーシングに圧入することで、圧入に伴う変形を相殺し、耐風食性に優れた保持シール材として用いることができる。
(5)本発明の排ガス浄化装置の製造方法では、本発明のマットを排ガス処理体に巻き付けて、長側面と第1の主面とのなす角が鈍角となっている側の長側面を先頭にして、ケーシング内部に圧入する。そのため、圧入に伴う変形を相殺し、排ガス流入側において、マットの長側面と排ガス処理体の端面とが平行とすることができ、耐風食性に優れた排ガス浄化装置を製造することができる。
(6)本発明の排ガス浄化装置は、排ガス処理体とケーシングの間に本発明のシート状部材の裁断方法により裁断された平面視略矩形形状のマットが配設されているため、排ガス処理体の保持性能に優れている。
(7)本発明の排ガス浄化装置は、保持シール材の排ガス流入側端面が排ガス処理体の排ガス流入側端面と平行であるため、耐風食性に優れている。
【0096】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0097】
(製造例1)
(a)無機質繊維集合体製造工程
三菱樹脂(株)製のアルミナシリカ繊維67.5gを、その繊維長が0.1〜5.0mmとなるように、ミキサーを用いて湿式解繊した。
上記解繊繊維に水18Lを加え、攪拌機を用いて攪拌した。続いて、有機バインダとしてLx−852(日本ゼオン社製)を4.725gと、無機バインダとしてDISPERAL P2(サソールジャパン株式会社)を0.81g加え、さらに撹拌した。その後、凝集剤としてPERCOL47(BASF社製)0.5重量%溶液を22.5g加えて攪拌することにより、混合液を調製した。
次に、底面にろ過用のメッシュ(メッシュ寸法:30メッシュ)が形成された成形器に混合液を流し込んだ後、メッシュを介して混合液中の水を脱水することにより、150mm×150mmの大きさの原料シートを作製した。
続いて、得られた原料シートを成形器から取り出し、プレス機を用いて厚さが16.5mmとなるように圧縮すると同時に、150℃で加熱乾燥させることにより、抄造シートからなる無機質繊維集合体を作製した。
製造した無機質繊維集合体は、坪量が3000g/m
2であり、厚さは16.5mmであった。
【0098】
(製造例2)
製造例1におけるアルミナシリカ繊維、有機バインダ、無機バインダ、凝集剤の添加量を1.5倍とし、坪量が4500g/m
2、厚さが24.8mmとなるよう変更したほかは、製造例1と同様の方法で製造例2に係る無機質繊維集合体を製造した。
【0099】
(実施例1)
製造例1で製造した無機質繊維集合体を、無機質繊維集合体を圧縮することなく、50mm×50mmの正方形に裁断した。裁断方法としては、まず、板刃を用いて縦切断部を形成し、続いて、無機質繊維集合体の厚さ方向に対して5°傾斜させた回転刃を接触させることにより横切断部を形成することで、実施例1に係るマットを製造した。板刃及び回転刃は炭素鋼から構成されており、刃部の角度は両面ともに20°であった。
【0100】
(実施例2)
製造例1に係る無機質繊維集合体に代わり、製造例2に係る無機質繊維集合体を用いたほかは、実施例1の同様の方法で実施例2に係るマットを製造した。
【0101】
(実施例3)
無機質繊維集合体の厚さ方向に対する回転刃の傾斜を15°に変更したほかは、実施例1と同様の方法で実施例3に係るマットを製造した。
【0102】
(実施例4)
無機質繊維集合体の厚さ方向に対する回転刃の傾斜を30°に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例4に係るマットを製造した。
【0103】
(実施例5)
無機質繊維集合体の厚さ方向に対する回転刃の傾斜を40°に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例5に係るマットを製造した。
【0104】
(比較例1)
厚さが18mmであるベニヤ板に対して、一辺が50mmの正方形状に厚さ1mmの板状の炭素鋼を埋め込んだ。続いて、板状金属が埋め込まれているベニヤ板の表面に厚さ35mmのN−145ゴムスポンジ((株)イノアックコーポレーション製)を添着した打ち抜き型を製造した。打ち抜き型から突出する板状金属の長さは30mmで、刃部の角度は、両面ともに20°であった。上記打ち抜き型を用いて製造例1に係る無機質繊維集合体を打ち抜くことで比較例1に係るマットを製造した。
比較例1によって形成されたマットの側面は全て、マットの厚み方向に対して平行な面(傾斜0°)であった。
【0105】
(比較例2)
比較例1で用いた打ち抜き型を用いて、製造例2に係る無機質繊維集合体を打ち抜くことで、比較例2に係るマットを製造した。
比較例2によって形成されたマットの側面は全て、マットの厚み方向に対して平行な面(傾斜0°)であった。
【0106】
(比較例3)
無機質繊維集合体の厚さ方向に対する横切断部の傾斜を0°に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例3に係るマットを製造した。
【0107】
(面圧の測定)
万能試験機で圧縮復元サイクル試験を行うため、実施例1〜2及び比較例1〜2に係るマットを試験機にセッティングし、室温状態で、1mm/minの速度でマットの嵩密度(GBD)が所定の値(0.2g/cm
3、0.25g/cm
3、0.3g/cm
3)となるまで圧縮し、このときの荷重を各GBDにおける面圧として測定した。
なお、評価サンプルの嵩密度(GBD:Gap Bulk Density)は、「嵩密度=評価サンプルの重量/(評価サンプルの面積×評価サンプルの厚さ)」で求められる値である。
【0108】
風食試験は以下の手順で行った。
まず、実施例1及び3〜5、並びに、比較例1及び3のマットを、ステンレス板の上に静置し、さらにセラミック板を載せて上記マットをステンレス板とセラミック板とで挟み込んだ。続いて、マットのGBDが0.3g/cm
3となるように、セラミック板とステンレス板とでマットを圧縮しながら、セラミック板と接触する側のマットの主面と長手方向の長側面とのなす角が鋭角となる側面から、鈍角となる側面に向かって(比較例1及び3のマットについては、いずれか1の側面に対して垂直な方向に向かって)、上記セラミック板とマットを10mm移動させ、その状態でマットがずれないように圧縮させたままセラミック板を固定した。
その後、600℃環境下にステンレス板とセラミック板で挟まれたままマットを設置し、マット内部の有機分を完全焼失させるために24時間放置した。そして、700℃環境下に設置した後、移動後のマットについて、移動時に先頭となっていたマットの長側面に対して、10mmの距離をおいたノズルから0.2MPaの空気流を吹付けた。
空気流は0.5秒(流通)/1.0秒(遮断)の繰り返しサイクルとし、試験時間は30分とした。風食試験後に、空気流を吹き付けたマットの長側面の状態を目視で確認し、下記の基準によって評価した。
○:風食を受けた跡が確認できない。(1mmより小さい風食による窪み)
△:風食を受けた跡が少しだけ確認できる。(1〜9mm以下の風食による窪み)
×:風食を受けた跡がはっきりと確認できる。(10mm以上の風食による窪み)
【0109】
実施例1に係るマットの各GBD(0.2g/cm
3、0.25g/cm
3、0.3g/cm
3)における面圧を100%とした場合に、比較例1に係るマットの各GBDにおける面圧は、それぞれ、62%、80%、91%であった。
また、実施例2に係るマットの各GBDにおける面圧を100%とした場合に、比較例2に係るマットの各GBDにおける面圧は、それぞれ、44%、63%、82%であった。
このことから、無機質繊維集合体は裁断時に圧縮されることにより面圧が低下してしまうこと、及び、本発明のシート状部材の裁断方法を用いることで、面圧の高いマットを製造できることがわかった。
【0110】
風食試験の結果、実施例3及び4に係るマットでは風食を受けた跡を確認できなかった(評価:○)が、実施例1及び5に係るマットでは風食を受けた跡が少しだけ確認でき(評価:△)、比較例1及び3に係るマットではセラミック板側の一部に風食を受けた跡がはっきりと確認できた(評価:×)。このことから、本発明のマットを圧入することにより製造された本発明の排ガス浄化装置は、耐風食性に優れることがわかった。