(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346770
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】解体性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20180611BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20180611BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/04
C09J163/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-76399(P2014-76399)
(22)【出願日】2014年4月2日
(65)【公開番号】特開2015-196791(P2015-196791A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 淳哉
【審査官】
松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−325224(JP,A)
【文献】
特開2011−042705(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0190013(US,A1)
【文献】
特開2009−114276(JP,A)
【文献】
特表2002−521512(JP,A)
【文献】
特開2013−067744(JP,A)
【文献】
特開2010−270316(JP,A)
【文献】
特開2010−106193(JP,A)
【文献】
特開2006−111716(JP,A)
【文献】
特開昭54−018844(JP,A)
【文献】
特開2014−051578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有機系接着剤成分、及び(B)金属ハロゲン化物を含む加熱解体性接着剤組成物であって、該金属ハロゲン化物のハロゲン原子と金属原子の電気陰性度の差が1.7未満であることを特徴とする加熱解体性接着剤組成物。
【請求項2】
前記金属ハロゲン化物が、ヨウ化リチウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化アルミニウム、及び塩化アルミニウムからなる群から選ばれる、請求項1に記載の加熱解体性接着剤組成物。
【請求項3】
前記有機系接着剤成分がエポキシ樹脂系接着剤である、請求項1又は2に記載の加熱解体性接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤によって組み立てられた構造体又は物品をその接着接合部において容易に解体させることを可能にする解体性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤は、構造用接着剤をはじめとして、より接着力が強く、より耐久性が長く、さらには、耐熱性、温度環境の変動にも強いものが求められ、開発が進められてきた。しかしながら、限り有る資源を有効に使用しようとするリサイクルの面では、アセンブリーされた部品を再利用するために、解体可能な接着剤の開発が必須である。解体性接着剤とは、使用期間後に何らかの処置により接合部をはがしうるものである。このような接着剤として、熱可塑性接着剤は、加熱により接合部の解体が可能であるが、いったん冷却すると再び接着力が復元する。解体する場合は、接着剤だけを加熱することは困難であるため、高い雰囲気温度下で解体する必要があるが、高温となった接合物の解体は、危険性の高いものであった。
【0003】
この問題を解決するため、熱可塑性よりもより高強度の接着力が要求される熱硬化性接着剤にも適用可能な解体性接着剤として、接着剤成分にバーミキュライトや熱膨張性黒鉛等の熱膨張性無機物を添加した解体性接着剤の開発が進められている。しかしながら、これらの解体性接着剤は、加熱後に接着強度が低下するものの完全に強度がゼロにはならないという問題があった(特許文献1参照)。また、解体温度は400℃以上という高温を想定しているため、多大な熱エネルギーが必要であることに加え、被着体が樹脂材料の場合、加熱時に被着体自身が熱劣化するため再利用が困難であるという問題があった(特許文献2参照)。
【0004】
接着剤成分に熱膨張性樹脂バルーンや化学発泡剤を添加した解体性接着剤の開発も進められている。しかしながら、これらの解体性接着剤は、高強度の接着剤は解体できず、10MPa以下の接着強度を有する接着剤の解体に留まっていた(特許文献3、特許文献4参照)。
【0005】
高接着強度を有する接着剤を解体するため、接着剤成分に有機ポリマーを添加した解体性接着剤の開発が進められているが、200℃以上という高温条件下でのみ接着強度がゼロとなるため、熱可塑性接着剤同様に、高温となった接合物の解体は、危険性が高いという問題があった(特許文献5参照)。
【0006】
また、同様に熱硬化性接着剤に適用可能な酸化剤混入接着剤の開発も進められているものの、一部では酸化剤と硬化剤の反応により発泡し、初期強度が低下してしまうという問題があった(特許文献6参照)。この問題を回避するために、接着剤との混合前に、酸化性陰イオンを含有するオニウム塩とアミン系化合物とを反応させる方法が検討されているが、接着剤製造工程を増やす必要があった。(特許文献7参照)。
【0007】
さらに、有機カチオンのハロゲン化物を添加した解体性接着剤の開発も進められているが、十分な解体性能が発現させるためには、有機系接着剤成分に対して多量の有機カチオンのハロゲン化物を添加する必要があった(特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−204332号公報
【特許文献2】特願2004−189856号公報
【特許文献3】特開2002−187973号公報
【特許文献4】特開2003−171648号公報
【特許文献5】特開2004−231808号公報
【特許文献6】WO 2007/083566
【特許文献7】WO 2009/011421
【特許文献8】特開2011−42705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、簡便な製造方法により、塗布性に優れ、高強度の接着剤を用いて接合された構造体又は物品を、必要な場合に外的刺激によって、比較的低温で接着接合部を解体可能な接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、特定の電気陰性度特性を有する金属ハロゲン化物を有機系接着剤成分に含有してなる
加熱解体性接着剤組成物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
【0011】
[1](A)有機系接着剤成分、及び(B)金属ハロゲン化物を含む解体性接着剤組成物であって、該金属ハロゲン化物のハロゲン原子と金属原子の電気陰性度の差が1.7未満であることを特徴とする
加熱解体性接着剤組成物。
【0012】
[2]前記金属ハロゲン化物が、ヨウ化リチウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化アルミニウム、及び塩化アルミニウムからなる群から選ばれる、前記[1]に記載の
加熱解体性接着剤組成物。
【0013】
[3]前記有機系接着剤成分がエポキシ樹脂系接着剤である、前記[1]又は[2]に記載の
加熱解体性接着剤組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特定の電気陰性度を有する金属ハロゲン化物は、有機系接着剤との反応性がないため、高強度の接着剤を用いて接合された構造体又は物品を、必要な場合に外的刺激によって、比較的低温で接着接合部を解体可能な接着剤を簡便に提供することが可能となる。さらに、特定の電気陰性度を有する金属ハロゲン化物は少量の添加で十分な解体性能を発現するため、粘度の上昇を抑え、取扱性の良い接着剤組成物を提供することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施態様を詳細に説明する。
本発明において利用できる有機系接着剤成分としては、何ら限定されるものではないが、本発明の主旨が、解体しにくいものを解体することにあるから、構造用の接着剤を用いること好ましい。構造用接着剤とは、「長期間破壊することなく、その最大破壊荷重に比較的近い応力を加えることのできる信頼性の保証された接着剤」(接着応用技術 日経技術図書株式会社発行 1991年 P93 接着剤の分類参照)であり、化学組成による分類によれば、(同上図書 P99)熱硬化性、アロイがよい。
【0017】
本発明の解体性接着剤に用いることができる接着剤成分を例示すれば、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、レゾルシノール樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンズイミダゾール、アクリル(SGA)、アクリル酸ジエステル、シリコーンゴム系などを主成分とする接着剤を挙げることができる。アロイとしては、エポキシフェノリック、エポキシポリサルファイド、エポキシナイロン、二トリルフェノリック、クロロプレンフェノリックビニルフェノリック等、あるいは上記物質を変性させた樹脂、上記物質を2種類以上混合した樹脂が使用できる。特に、エポキシ樹脂系接着剤は、副生成物を遊離せずに硬化し、高い剪断強さを有しており、好ましい。
【0018】
本発明の接着剤成分としてエポキシ樹脂を使用する場合、主剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂類、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル類、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのグリシジルアミン類、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油などの線状脂肪族エポキサイド類、3,4エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレートなどの脂環族エポキサイド類、あるいはこれらを2種類以上混合したものが使用できる。
【0019】
硬化剤としては、重付加型硬化剤として、例えば、ジエチレントリアミン、メタキシレンジアミン、ジシアンジアミドなどのアミン系硬化剤、無水フタル酸、テトラヒドロメチル無水フタル酸などの酸無水物系硬化剤、その他フェノールノボラック硬化剤やポリメルカプタン硬化剤が使用できる。また、触媒型硬化剤として、例えば、第三アミンやルイス酸錯体が使用することができ、これらを2種類以上混合したものが使用できる。
構造用接着剤の場合、実施例で示すような接着強度測定を常温で実施したときに10MPa以上の値を示すものが好ましい。
【0020】
本明細書中、金属ハロゲン化物とは、金属原子とハロゲン原子との化合物である。金属の一般的定義としては、一般的に、(1)金属単体の性質によるもの、(2)金属原子の結合様式によるもの、(3)金属中の電子のバンド理論によるものに分類されているが、本発明では(2)の結合様式が金属結合であるものを言い、周期表1族のアルカリ金属、周期表2族のアルカリ土類金属、周期表3〜11族の遷移金属の他、金属結合を有するもののことである。ハロゲンとは、周期表17族に記されるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のことである。
【0021】
一般的に電気陰性度とは、(1)ポーリングの電気陰性度、(2)マリケンの電気陰性度、(3)オールレッド・ロコウの電気陰性度が知られているが、本発明では、(1)ポーリングの電気陰性度のことであり、例えば、岩波 理化学辞典 第5版 912頁(2003年発行、岩波書店)等に記載され、広く用いられている。
【0022】
本発明の金属ハロゲン化物は、接着剤成分との反応性がなく、少量の添加で解体性を付与するものが好ましく、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化アルミニウム、塩化アルミニウムが好ましい。
【0023】
金属ハロゲン化物の含有量は、有機系接着剤成分100重量部に対して、1重量部以上100重量部以下が好ましい。この範囲であれば、金属ハロゲン化物の含有量が少なすぎることによる解体性の低下がなく、金属ハロゲン化物の含有量が多すぎることによる接着剤の著しい粘度上昇はない。より好ましい金属ハロゲン化物の含有量は、接着剤成分100重量部に対して、2重量部以上50重量部以下であり、さらに好ましくは3重量部以上20重量部以下である。
【0024】
金属ハロゲン化物の粒径については、一般的に接着剤の厚みが最大でも1mm程度であることから、1mm以下が好ましい。接着剤の塗工作業性が向上し、接着剤成分中における金属ハロゲン化物の分散性も向上することから、400μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、10μm以下が特に好ましい。なお、本発明における粒径とは、レーザー回折式粒度分布計を用いて測定したメジアン径をいう。
【0025】
本発明においては、接着剤の流動性調整のため、非反応性希釈剤や反応性希釈剤、炭酸カルシウムやタルク、アルミナ等のフィラーを添加することができる。
また、可とう性付与のため、モノエポキサイド、ジエポキサイド、ポリチオールなどの可塑剤や、液状ゴムを添加してもよい。
解体性を向上させるために、熱膨張性黒鉛や熱膨張性樹脂バルーン、アゾジカルボンアミド等の化学発泡剤を添加することもできる。
接着剤成分と金属ハロゲン化物、その他流動性調整成分、可とう性付与成分等の混合順は、接着剤の接着強度、解体性等を損なわなければ、どの順序で混合してもよい。また、塗布直前に混合してもよいし、予め一部の成分を混合しておいてもよい。
本発明の接着剤は、液状で用いてもよいし、テープ状で用いるために、フィルム基材に塗布して用いてもよい。
【0026】
本発明の接着剤は外的刺激によって接着性が低下又は消失するため、該接着剤を用いて接着した接着構造体を容易に解体することが可能となる。
本明細書中、「外的刺激」とは、熱、火等の物理的な刺激をいい、より具体的には、熱風加熱、赤外線照射、高周波加熱、マイクロ波加熱、化学反応熱、摩擦熱等、ガスバーナーなどの火による加熱が挙げられる。本発明の接着剤によって接着された接着構造体に上記外的刺激が与えられると、接着剤の温度が上昇し、接着剤成分自身の凝集力や被着体との接着力が低下するという現象に加え、外的刺激を受けることで、その際、金属ハロゲン化物が、有機系接着剤の熱分解を促進し、接着力を大きく低減、あるいは消失させることができる。
【0027】
大型の接着された構造体を均一加熱するという点では、電気炉、ガス炉等の内部構造に加熱部を有し、外部が断熱材で構成されたものの内部空間で構造体を加熱する方法がより好ましい。また、解体時の温度としては、金属/FRP接合体、FRP/FRP接合体などは、FRPのマトリックス樹脂の融点以下で短時間での解体を可能とすることは、極めて重要な課題である。例えば、複合材料に使用される樹脂PPS(ポリフェニレンサルファイド、融点:280℃)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン、融点:335℃)などの接着構造体の解体においては、リユースを考慮した場合に、樹脂に対して融点以上の温度での加熱を長時間行わないことは樹脂の変質を招かないために重要であり、加熱温度は350℃以下が好ましく、より好ましくは、300℃以下である。
【0028】
加熱解体時の昇温速度については、被接着体の熱劣化を抑制すること、また、高い解体性を付与する場合があることから、高い昇温速度で接着剤を加熱することが好ましく、具体的には5℃/min以上、より好ましくは10℃/min以上の昇温速度で昇温することが好ましい。
また、被接着体のリサイクル等を考慮すると、リサイクル等したい側の被接着体界面で剥離させることが望ましい。このため、リサイクル等したい被接着体側から加熱することで、解体面を選択することができる。
【0029】
本発明の接着剤の使用箇所は、特に制限されるものではないが、リサイクル、リユース、リワーク用途に使用することが可能であり、金属−FRPや、金属−ガラスのような異材質の接着に好適に用いることができる。また、異種の金属−金属、FRP−FRPの接着に用いることも可能である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例で本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
構造用接着剤として、広く用いられるエポキシ樹脂系接着剤を用いた。エポキシ樹脂系接着剤は、主剤としてビスフェノールF型エポキシ(株式会社ADEKA社製、商品名アデカレジンEP−4901)、硬化剤として、変性脂肪族ポリアミン(株式会社ADEKA社製、商品名アデカハードナーEH−463)を使用した。
金属ハロゲン化物として、ヨウ化リチウム、ヨウ化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化鉄(III)、ヨウ化カリウム、塩化リチウム、塩化カリウム(いずれも、和光純薬工業株式会社製)を使用した。比較例として、シクロヘキシルアミン塩酸塩(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
各実施例、各比較例について、以下の表1に示す組成で、接着接合体を作製し、引張剪断試験、加熱解体試験を以下の方法で行った。
【0031】
<接着接合体の作製>
以下の表1に示す各接着剤組成に従い、主剤、金属ハロゲン化物、硬化剤の順に十分混合し、接着剤を作製した。被接着体は、幅25mm、長さ100mm、厚さ1.6mmの金属板(SUS304製)を用い、ラップ長は12.5mmとした。接着面は、紫外線オゾン処理による表面処理を行った。接着面に、作成した接着剤を塗布して貼り合わせ、接着接合部をクリップで止め、25℃の恒温槽中で24時間保持した(プレキュア)。その後、120℃の電気炉で1時間保持し、硬化させた(ポストキュア)。なお、接着剤の作成から、接着剤の塗布、被着体の貼り合わせまでの工程は、金属ハロゲン化物、シクロヘキシルアミン塩酸塩の潮解を防ぐため、窒素雰囲気下で行った。
【0032】
<引張剪断試験>
上記方法で得られた接着接合体を25℃まで冷却後、株式会社島津製作所製オートグラフ(型式AGS−J、ロードセル1トン用)を用いて、引張モード、変位速度5mm/minで試験片が破壊するまでの最大荷重を測定した。最大荷重を接着接合部の面積で除して、引張剪断接着強さを算出した。5試験体について測定を行い、その平均値を算出した。測定結果を以下の表1に示す。
【0033】
<加熱解体試験>
上記方法で得られた接着接合体を25℃まで冷却後、剥離試験時の加熱は、電気炉を用いて実施した。270℃の加熱炉に試験片を入れ、30分間加熱し、加熱により接着接合部が解体するか確認を行った。解体していなかった場合には、上記と同一の試験条件で引張剪断強度を得た。結果を以下の表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例1、実施例2の解体性接着剤は、金属ハロゲン化物と硬化剤との反応性もなく、発泡等の強度低下につながるような事象も観られなかった。
実施例1の条件では、10MPa以上の引張剪断強度を有するが270℃30分の加熱により、1MPa以下まで接着強度を低下させることが分かった。実施例2の条件では、10MPa以上の引張剪断強度を有するが、270℃の加熱中に強度が消失し、接着接合部が解体した。
【0036】
金属ハロゲン化物を添加しない比較例1は10MPa以上の引張剪断強度を有するものの、270℃30分の加熱後も強度の低下が観られなかった。
実施例2と類似した金属ハロゲン化物を添加した比較例2、比較例3は270℃30分の加熱後も強度の低下は観られなかった。
シクロヘキシルアミン塩酸塩を添加した比較例4は、270℃30分の加熱後も引張剪断強度が約8MPa残存し、解体は困難であった。シクロヘキシルアミン塩酸塩の配合量を30重量部に増加させた比較例5は、270℃の加熱中に接着強度が消失するものの、接着剤成分に対しての配合量が多いために、接着剤の塗布性が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の解体性接着剤を使用すれば高強度の接着剤を容易に解体することができる。従って、本発明の接着剤は、リサイクル、リユース、リワーク用途に有用であり、金属−FRPや、金属−ガラスのような異材質の接着に好適に用いることができる。