(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記フィルム状媒体による張力が掛からない状態で前記DCモータを駆動させる前記DCモータを駆動させる際に、前記供給スプール側から前記巻取スプール側に前記フィルム状媒体を搬送するときの前記DCモータの回転方向と同一方向に駆動させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
前記制御手段は、前記フィルム状媒体による張力が掛からない状態で前記DCモータを駆動させ、前記回転量検出手段で検出された前記DCモータの回転量に基づいて前記DCモータの回転速度を算出し、基準モータにおける回転速度と供給電流との関係を参照し、前記算出した回転速度における前記DCモータの供給電流で前記基準モータを駆動させるときの回転速度と同じ回転速度となる前記DCモータの供給電流を算出し、該算出した供給電流を供給するように前記モータドライバを制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を、カードに文字や画像を印刷記録するとともに、カードに磁気的ないし電気的な情報記録を行う印刷装置に適用した実施の形態について説明する。
【0019】
<システム構成>
図1および
図13に示すように、本実施形態の印刷装置1は印刷システム200の一部を構成している。すなわち、印刷システム200は、大別して、上位装置201(例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ)と、印刷装置1とで構成されている。
【0020】
印刷装置1は、図示を省略したインターフェースを介して、上位装置201に接続されており、上位装置201から印刷装置1に画像データや磁気的ないし電気的記録データ等を送信して、記録動作等を指示することが可能である。なお、印刷装置1は、オペパネ部(操作表示部)5を有しており(
図13参照)、上位装置201からの記録動作指示の他、オペパネ部5からの記録動作指示も可能である。
【0021】
上位装置201には、デジタルカメラやスキャナ等の画像入力装置204、上位装置201に命令やデータを入力するためのキーボードやマウス等の入力装置203、上位装置201によって生成されたデータ等の表示を行なう液晶ディスプレイ等のモニタ202が接続されている。
【0022】
<印刷装置>
図2に示すように、印刷装置1はハウジング2を有しており、ハウジング2内に情報記録部Aと、印刷部Bと、媒体収容部Cと、収容部Dと、回動ユニットFとを備えている。
【0023】
(情報記録部)
情報記録部Aは、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23と、接触式IC記録部27とで構成されている。
【0024】
(媒体収容部)
媒体収容部Cは、複数枚のカードを立位姿勢で整列して収納しており、その先端には分離開口7が設けられており、ピックアップローラ19で最前列のカードから順次繰り出して供給する。
【0025】
(回動ユニット)
繰り出されたブランクのカードCaは、搬入ローラ22で反転ユニットFに送られる。反転ユニットFはハウジング2に回動可能に軸支された回動フレーム80と、このフレームに支持された2つのローラ対20、21で構成されている。そして、ローラ対20、21は回動フレーム80に回転自在に軸支持されている。
【0026】
反転ユニットFが回動する外周には、上述した磁気記録部24、非接触式IC記録部23および接触式IC記録部27が配置されている。そして、ローラ対20、21は、これらの情報記録部23、24、27のいずれかに向けてカードCaを搬送するための媒体搬送路65を形成し、これらの記録部でカードCaには磁気的若しくは電気的にデータが書き込まれる。
【0027】
(印刷部)
印刷部Bは、カードCaの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成するもので、媒体搬送路65の延長上にカードCaを移送する媒体搬送経路P1が設けられている。また、媒体搬送経路P1にはカードCaを搬送する搬送ローラ29、30が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0028】
印刷部Bはフィルム状媒体搬送機構を有しており、この搬送機構により搬送される転写フィルム46に対して、サーマルヘッド40で画像を形成する画像形成部B1と、続いてヒートローラ33により媒体搬送経路P1上のカードCaの表面に転写フィルム46に形成された画像を転写する転写部B2とを備えている。
【0029】
印刷部Bの下流側には収容スタッカ60に印刷後のカードCaを移送する媒体搬送経路P2が設けられている。媒体搬送経路P2にはカードCaを搬送する搬送ローラ37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0030】
搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはデカール機構36が配置されており、搬送ローラ37、38間に保持されたカード中央部を押圧することにより、ヒートローラ33による熱転写で生じたカールを矯正する。このため、デカール機構36は図示しないカムを含む昇降機構により
図2に示す上下方向に位置移動可能に構成されている。
【0031】
(収容部)
収容部Dは、印刷部Bから送られたカードCaを収容スタッカ60に収容するように構成されている。収容スタッカ60は、昇降機構61にて
図2で下方に移動するように構成されている。
【0032】
(印刷部詳細)
次に、上述した印刷装置1の全体構成の中で印刷部Bについて、さらに詳しく説明する。
【0033】
転写フィルム46は、カードCaの幅方向より若干大きな幅を有する帯状を呈しており、上から順に、インクリボン41のインクを受容するインク受容層、インク受容層の表面を保護する透明の保護層、加熱によりインク受容層および保護層を一体に剥離を促進するための剥離層、基材(ベースフィルム)の順で積層されて形成されている。
【0034】
転写フィルム46は、モータMr2、Mr4の駆動により転写フィルムカセット内の回転する巻取ロールと操出ロールにそれぞれ巻き取りないし繰り出される。すなわち、転写フィルムカセット内には、巻取ロールの中心に巻取スプール47、操出ロールの中心に供給スプール48が配されており、巻取スプール47には図示しないギアを介してモータMr2の回転駆動力が伝達され、供給スプール48には図示しないギアを介してモータMr4の回転駆動力が伝達される。フィルム搬送ローラ49は、転写フィルム46を移送する主要な駆動ローラであり、このローラ49の駆動を制御することで転写フィルム46の搬送量および搬送停止位置が決まる。このフィルム搬送ローラ49は不図示のステッピングモータに連結されている。フィルム搬送ローラ49の駆動時にモータMr2、Mr4も駆動するが、巻取スプール47、供給スプール48のいずれ一方から繰り出された転写フィルム46をいずれか他方で巻き取るためのものであって、転写フィルム46を搬送の主体となって駆動するものではない。なお、モータMr2およびモータMr4には正逆転可能なDCモータが用いられている。
【0035】
フィルム搬送ローラ49の周面には、ピンチローラ32aとピンチローラ32bとが配置されている。ピンチローラ32a、32bは、
図2では示されていないが、フィルム搬送ローラ49に対して進出および退避するよう移動可能に構成されており、図の状態はフィルム搬送ローラ49に進出して圧接することで転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付けている。これにより、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49の回転数に応じた距離の正確な搬送が行われる。
【0036】
インクリボン41はインクリボンカセット42に収納され、このカセット42にインクリボン41を供給する供給スプール43とインクリボン41を巻き取る巻取スプール44との間で張架された状態で収容されており、巻取スプール44はモータMr1の駆動力で回転し、供給スプール43はモータMr3の駆動力で回転する。モータMr1およびモータMr3には正逆転可能なDCモータが用いられている。また、モータMr1、Mr3の間には、モータMr1、Mr3の雰囲気温度を測定するサーミスタ等の温度センサThが配置されている。
【0037】
インクリボン41は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)のカラーリボンパネルとBk(ブラック)リボンパネルとを長手方向に面順次に繰り返すことで構成されている。また、インクリボン41の終端部には、インクリボン41の使用限界を表すエンプティマークが付されている。
図2に示すSe2は、このエンプティマークを検出するための透過型センサである。なお、エンプティマークは、本実施形態では、インクリボン41の幅方向の一側から他側まで連続した黒色の1本ないし複数本の直線とされているが、本発明はこれに限るものではない。
【0038】
プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは画像形成部B1を構成しており、プラテンローラ45に対向する位置にサーマルヘッド40が配置されている。サーマルヘッド40は主走査方向に列設された複数の加熱素子を有しており、これらの加熱素子はヘッドコントロール用IC(図示せず)により印刷データに従って選択的に加熱制御され、インクリボン41を介して転写フィルム46に画像を印刷する。なお、冷却ファン39はサーマルヘッド40を冷却するためのものである。
【0039】
転写フィルム46への印刷が終了したインクリボン41は、剥離コロ25と剥離部材28とで転写フィルム46から引き剥がされる。剥離部材28はインクリボンカセット42に固設されており、剥離コロ25は印刷時に剥離部材28に当接して両者で転写フィルム46とインクリボン41とを挟持することで剥離が行われる。そして、剥離されたインクリボン41はモータMr1の駆動力で巻取スプール44に巻き取られ、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49により、プラテンローラ31とヒートローラ33とを有する転写部B2まで搬送される。
【0040】
転写部B2では、転写フィルム46はカードCaとともにヒートローラ33およびプラテンローラ31とで挟持されて、転写フィルム46上の画像がカード表面に転写される。なお、ヒートローラ33は、転写フィルム46を介してプラテンローラ31に圧接・離間するように昇降機構(不図示)に取り付けられている。
【0041】
画像形成部B1の構成をその作用とともにさらに詳しく説明する。
図3〜
図5に示すように、ピンチローラ32a、32bはピンチローラ支持部材57の上端部と下端部にそれぞれ支持されており、ピンチローラ支持部材57はその中央部を挿通する支持シャフト58に回動自在に支持されている。支持シャフト58は、
図10に示すように、両端部がピンチローラ支持部材57に形成された長穴76、77に架け渡されているとともに、中間部でブラケット50の固定部78にて固定されている。また、長穴76、77は支持シャフト58に対して水平方向および垂直方向に空間を持たせている。これにより、後述するフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32a、32bの調整が可能となる。
【0042】
支持シャフト58にはバネ部材51(51a、51b)が装着されており、ピンチローラ支持部材57のピンチローラ32a、32bが装着される側の端部は、それぞれバネ部材51と接してそのバネ力によりフィルム搬送ローラ49の方向へ付勢されている。
【0043】
ブラケット50は、カム受81でカム53のカム作動面と当接しており、駆動モータ54(
図10参照)の駆動力で回動するカム軸82を支点とするカム53の矢印方向への回動に応じてフィルム搬送ローラ49に対して図で左右方向に移動するように構成されている。従って、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき(
図4および
図5)、ピンチローラ32a、32bはバネ部材51に抗して転写フィルム46を挟んでフィルム搬送ローラ49に圧接し、転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付ける。
【0044】
このとき、ブラケット50の回動支点となる軸95から遠い位置にあるピンチローラ32bがまずフィルム搬送ローラ49を圧接し、続いてピンチローラ32aが圧接する。このように、回動支点である軸95をフィルム搬送ローラ49より上方に配置することで、ピンチローラ支持部材57は平行移動ではなく回動しながらフィルム搬送ローラ49と当接することになり、平行移動させるよりも幅方向のスペースが少なくてすむ利点がある。
【0045】
また、ピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49へ圧接したときの圧接力は、バネ部材51により転写フィルム46の幅方向の対して均一となる。その際、ピンチローラ支持部材57の両側に長穴76、77が形成され支持シャフト58は固定部78で固定されているために、ピンチローラ支持部材57を3方向に調整することができ、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46はスキューを起こすことなく正しい姿勢にて搬送される。なお、ここで言う3方向の調整とは、(i)フィルム搬送ローラ49に対してピンチローラ32a、32bの軸方向の圧接力を均一にするために、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a、32bの軸の水平方向の平行度を調整すること、(ii)フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aの圧接力とフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32bの圧接力とを均一にするために、フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aとピンチローラ32bとの移動距離を調整すること、および(iii)フィルム進行方向に対してピンチローラ32a、32bの軸が垂直になるように、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a、32bの軸の垂直方向の平行度を調整することである。
【0046】
さらに、ブラケット50には、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49に巻き付けられていない部分と当接する張力受け部材52とが設けられている。
【0047】
張力受け部材52は、ピンチローラ32a、32bが転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に圧接した際に生じる転写フィルム46の張力により、ピンチローラ32a、32bがそれぞれバネ部材51の付勢力に抗してフィルム搬送ローラ49から退避するのを防止するために設けられている。このため、張力受け部材52は、ピンチローラ32a、32bより図で左の位置で転写フィルム46と当接するようブラケット50の回動側端部の先端に取り付けられている。
図2は張力受け部材52が転写フィルム46と当接している状態を示している。
【0048】
これにより、転写フィルム46の弾性から生じる張力は張力受け部材52を通してカム53にて直接受け止めることができる。従って、この張力によりピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49から退避してピンチローラ32a、23bの圧接力が弱まることが防止されるので、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49への密着した巻き付け状態が維持されて正確な搬送を行うことができる。
【0049】
転写フィルム46の横幅方向に沿って配置されたプラテンローラ45は、
図9に示すように、軸71を支点として回動自在な一対のプラテン支持部材72に支持されている。一対のプラテン支持部材72はプラテンローラ45の両端を支持している。プラテン支持部材72はそれぞれ、軸71を共通の回動軸とするブラケット50Aの端部にバネ部材99を介して接続されている。
【0050】
ブラケット50Aは、基板87と、この基板87からのプラテン支持部材72の方向に折り曲げて形成されたカム受支持部85とを有しており、カム受支持部85でカム受84を保持している。基板87とカム受支持部85との間には、駆動モータ54にて駆動するカム軸83を支点に回動するカム53Aが配設されており、カム作動面とカム受84とが当接するよう構成されている。従って、カム53Aの回動によりブラケット50Aがサーマルヘッド40の方向へ進出すると、プラテン支持部材72も移動してプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接する。
【0051】
このようにブラケット50Aとプラテン支持部材72との間にバネ部材99とカム53Aとを上下に配置することにより、このプラテン移動ユニットはブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔内に収めることができる。また、幅方向はプラテンローラ45の幅内に収めることができ省スペース化を図ることができる。
【0052】
また、カム受支持部85は、プラテン支持部材72に形成した穿孔部72a、72b(
図9参照)に嵌合しているため、カム受支持部85をプラテン支持部材72の方向に突設しても、ブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔が広がることがなく、その面でも省スペース化を図ることができる。
【0053】
プラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接したとき、それぞれのプラテン支持部材72に接続されたバネ部材99は、それぞれ転写フィルム46の幅方向への圧接力が均一となるように作用する。このため、転写フィルム46がフィルム搬送ローラ49により搬送されるときスキュー(斜行)が防止され、転写フィルム46の印刷領域が幅方向にずれることがなくサーマルヘッド40による転写フィルム46への画像形成を正確に行うことができる。
【0054】
ブラケット50Aの基板87には、剥離コロ25の両端を支持する一対の剥離コロ支持部材88がバネ部材97を介して設けられており、剥離コロ25は、ブラケット50Aがカム53Aの回動によりサーマルヘッド40に対し進出したとき、剥離部材28と当接して両者で挟持された転写フィルム46とインクリボン41とを剥離する。剥離コロ支持部材88もプラテン支持部材72と同様に剥離コロ25の両端にそれぞれ設けられており、剥離部材28に対する幅方向の圧接力が均一となるように構成されている。
【0055】
ブラケット50Aの軸支59側の端部と反対側の端部には、張力受け部材52Aが設けられている。張力受け部材52Aは、プラテンローラ45と剥離コロ25とをサーマルヘッド40と剥離部材28とにそれぞれ圧接する際に生じる転写フィルム46の張力を吸収するように設けられている。バネ部材99とバネ部材97は、転写フィルム46の幅方向への圧接力を均一にするために設けられるが、逆にバネ部材99、97が転写フィルム46の張力に負けて転写フィルム46への圧接力が弱まってしまわないように、張力受け部材52Aにより転写フィルム46からの張力を受けている。なお、張力受け部材52Aも上述の張力受け部材52と同様にブラケット50Aに固定されているため、転写フィルム46の張力はブラケット50Aを介してカム53Aで受けることになるので、転写フィルム46の張力に負けることはない。これにより、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力および、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力が保たれるので、良好な印刷および剥離を行うことができる。また、フィルム搬送ローラ49の駆動時に転写フィルム46の搬送量に誤差を生じることがなく、印刷領域の長さ分が正確にサーマルヘッド40に搬送されて精度よく印刷できる。
【0056】
カム53とカム53Aとは、ベルト98(
図3参照)が張架されており同一の駆動モータ54により駆動される。
【0057】
印刷部Bが
図6に示す待機ポジションにあるときカム53およびカム53Aは
図3に示す状態にあり、ピンチローラ32a、32bはフィルム搬送ローラ49に圧接しておらず、またプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接していない。換言すると、待機ポジションにあるときは、プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは両者が離間した離間位置に位置している。
【0058】
そして、カム53およびカム53Aが連動して回転して
図4に示す状態となると、印刷部Bは
図7に示す印刷ポジションに移行する。その際、まずピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けるとともに、張力受け部材52は転写フィルム46と当接する。その後プラテンローラ45がサーマルヘッド40に圧接する。この印刷ポジションでは、プラテンローラ45がサーマルヘッド40に向けて移動して転写フィルム46とインクリボン41を挟み圧接して、剥離ローラ25が剥離部材28と接している。
【0059】
この状態で、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46の搬送が開始されると、同時にインクリボン41もモータMr1の動作により巻取スプール44により巻き取られて同じ方向に搬送される。この搬送の間、転写フィルム46に設けた位置出し用マークがセンサSe1を通過して所定量移動し、転写フィルム46が印刷開始位置に到達した時点で、転写フィルム46の所定領域にサーマルヘッド40による印刷が行われる。特に印刷中は転写フィルム46の張力が大きくなるため、転写フィルム46の張力はフィルム搬送ローラ46からピンチローラ32a、32bを離間させる方向および、剥離部材28とサーマルヘッド40から剥離コロ25とプラテンローラ45とを離間させる方向に働く。しかし、上述したように、転写フィルム46の張力は張力受け部材52、52Aが受けているため、ピンチローラ32a、32bの圧接力が弱くなることがなく、正確なフィルム搬送を行うことができ、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力および、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力も弱くなることがないため、正確な印刷および剥離を行うことができる。印刷終了後のインクリボン41は転写フィルム46から引き剥がされて巻取スプール44に巻き取られる。
【0060】
転写フィルム46の搬送による移動量、すなわち印刷が施される印刷領域の搬送方向の長さは、フィルム搬送ローラ49に設けられたエンコーダ(不図示)で検出され、それに応じてフィルム搬送ローラ49の回転が停止し、同時にモータMr1の動作による巻取スプール44による巻き取りも停止する。これにより、転写フィルム46の印刷領域への最初のインクパネルのインクによる印刷が終了する。
【0061】
次に、カム53およびカム53Aが連動してさらに回転し
図5に示す状態となると、印刷部Bは
図8に示す搬送ポジションに移行して、プラテンローラ45はサーマルヘッド40から退避する方向に復帰する。この状態では依然として、ピンチローラ32a、32bはフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けて、張力受け部材52は転写フィルム46と接しており、フィルム搬送ローラ49の逆方向の回転により転写フィルム46は初期位置にまで逆搬送される。このときも転写フィルム46の移動量はフィルム搬送ローラ49の回転によって制御されるが、印刷が施された印刷領域の搬送方向の長さ分が逆搬送される。なお、インクリボン41もモータMr3により所定量巻き戻され、次に印刷するインクのインクパネルを初期位置(頭出し位置)に待機させる。
【0062】
そして、カム53、53Aによる制御状態は再び
図4に示す状態となって
図7に示す印刷ポジションとなり、プラテンローラ45をサーマルヘッド40に圧接させ、フィルム搬送ローラ49が再び正方向への回転を行って転写フィルム46を印刷領域の長さ分移動させると、サーマルヘッド40にて次のインクパネルのインクによる印刷が行われる。
【0063】
このように、印刷ポジションと搬送ポジションでの動作は全てまたは所定のインクパネルのインクによる印刷が終了するまで繰り返される。そして、サーマルヘッド40による印刷が終了すると、転写フィルム46に画像形成された領域をヒートローラ33まで搬送するが、このときカム53および53Aは
図3に示す状態に移動して、転写フィルム46への圧接を解除する。その後、巻取スプール47の駆動で転写フィルム46を搬送しながらカードCaへの転写が行われる。
【0064】
このような印刷部Bは、3つのユニット90、91、92に分割されている。
【0065】
図9に示すように、第1のユニット90は、ユニット枠体75にモータ54(
図10参照)の駆動により回転する駆動軸70を装架しており、駆動軸70にフィルム搬送ローラ49を装着している。フィルム搬送ローラ49の下方には、ブラケット50Aと一対のプラテン支持部材72とが配置されており、これら部材はユニット枠体75の両側板に装架される軸71に回動自在に支持されている。
【0066】
図9では、プラテン支持部材72に形成した穿孔部72a、72bからブラケット50Aの一部である一対のカム受支持部85が現れている。カム受支持部85は、その後方に配置される一対のカム受84を保持する。そして、カム受84のさらに後方には、ユニット枠体75を挿通しているカム軸83に装着されるカム53Aが配置されている。カム軸83はユニット枠体75の両側板に装架される。
【0067】
上述したサーマルヘッド40は、転写フィルム46とインクリボン41の搬送パスを挟みプラテンローラ45と対向する位置に配置されている。
図11に示すように、サーマルヘッド40、加熱に関する部材および冷却ファン39は第3のユニット92に一体化しており、第1のユニット90に対向して配置されている。
【0068】
第1のユニット90は、移動可能なブラケット50Aにより、印刷動作で位置が変動するプラテンローラ45と剥離コロ25と張力受け部材52Aとを一括して保持することで、これら部材間の位置調整が不要となる。しかも、カム53の回動によりブラケット50Aを移動させることでこれら部材を所定の位置にまで移動させることができる。また、ブラケット50Aを設けたことで、固定のフィルム搬送ローラ49と同一のユニットに収納でき、転写フィルムを精度良く搬送しなければならないフィルム搬送ローラ49による搬送駆動部分と、プラテンローラ45による転写位置規制部分とが同じユニットに含まれるために両者間の位置調整が不要となる。
【0069】
図10に示すように、第2のユニット91は、ユニット枠体55にカム53が装着されるカム軸82を挿通させて、カム軸82を駆動モータ54の出力軸に連結している。そして、第2のユニット91は、カム53と当接するようブラケット50をユニット枠体55に移動自在に支持しており、ブラケット50には、ピンチローラ支持部材57を回動自在に支持している支持シャフト58と張力受け部材52とが固設されている。
【0070】
ピンチローラ支持部材57には、支持シャフト58にバネ部材51a、51bが取り付けられており、その端部をピンチローラ32a、32bを支持するピンチローラ支持部材57の両端にそれぞれ当接させて、フィルム搬送ローラ49の方向へ付勢している。ピンチローラ支持部材57は、長穴76、77に支持シャフト58が挿入されており、支持シャフト58は中央部でブラケット50に固定支持されている。
【0071】
ブラケット50とピンチローラ支持部材57との間には、ピンチローラ支持部材57をブラケット50に向けて付勢するバネ89が設けられている。このバネ89によりピンチローラ支持部材57は第1のユニット90のフィルム搬送ローラ49から後退する方向に付勢されるため、転写フィルムカセットを印刷装置1にセットするときに第1のユニット90と第2のユニット91の間に転写フィルム46を容易に通すことができる。
【0072】
第2のユニット91は、印刷動作に応じて位置が変動するピンチローラ32a、32bと張力受け部材52とをブラケット50Aで保持し、カム53の回動によりブラケット50Aを移動させることでピンチローラ32a、32bと張力受け部材52とを移動させるため、両者間の位置調整やピンチローラ32a、32bとフィルム搬送ローラ49との位置調整が簡略化される。このような第2のユニット91は、転写フィルム46を挟み第1のユニット90に対向して配置されている。
【0073】
このようにユニット化することで第1のユニット90、第2のユニット91および第3のユニット92は、転写フィルム46やインクリボン41の各カセットと同様に、それぞれ印刷装置1の本体から引き出すことも可能となる。従って、転写フィルム46やインクリボン41の消耗によるカセットの交換時にこれらユニット90、91、92も必要に応じてユニットを取り出しておけばカセット挿入時の転写フィルム46やインクリボン41を簡単に装置内に装架することができる。
【0074】
上述したように、プラテンローラ45とブラケット50Aとカム53Aとプラテン支持部材72とを一体化した第1のユニット90と、ピンチローラ32a、32bとブラケット50とカム53とバネ部材51とを一体化した第2のユニット91とを組み合わせるとともに、サーマルヘッド40が取り付けられた第3のユニット92をプラテンローラ45に対向して配置して組み付けることで、印刷装置の製造時における組み立てやメンテナンス時の調整を容易且つ正確に行うことができる。また、一体化したことで装置からの取り外しも容易に行え、印刷装置としての取扱い性が向上する。
【0075】
(スプールとモータとの関係)
次に、インクリボンカセット42のスプール43、44とモータMr3、Mr1との関係について説明する。
【0076】
図12に示すように、モータMr3のモータ軸の一側にはモータ軸に嵌着したギアが嵌着しており、供給スプール43の回転軸には供給スプール43より若干径が大きめのギアが嵌着している。モータMr3のモータ軸に嵌着したギアと供給スプール43の回転軸に嵌着したギアとは、これらのギアにそれぞれ噛合するギアを有する複数のギアで構成された連結ギア群8で連結されている。従って、モータMr3を正逆転することで供給スプール43も正逆転する。
【0077】
一方、モータMr3のモータ軸の他側には、複数(本例では8つ)のスリット(開口)が等間隔で形成された回転板11が嵌着しており、これらのスリットの位置に対応して透過型センサ13が配置されている。回転板11と透過型センサ13はエンコーダ15を構成している。従って、モータMr3の駆動で回転板11が回転することにより、エンコーダ15を構成する透過型センサ13からは、オン(ON)、オフ(OFF)の信号が出力される(
図19も参照)。
【0078】
巻取スプール44とモータMr1との関係も、上述した供給スプール43とモータMr3との関係と同じなため、
図12において括弧内に対応部材の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
次に、印刷装置1の制御および電気系統について説明する。
図13に示すように、印刷装置1は、印刷装置1全体の動作制御を行う制御部100と、商用交流電源から各機構部および制御部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部120とを有している。
【0080】
(制御部)
図13に示すように、制御部100は、印刷装置1の全体の制御処理を行うマイクロコンピュータ102(以下、マイコン102と略称する。)を備えている。マイコン102は、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、印刷装置1のプログラムや後述する基準モータ等に関するプログラムデータが記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAM、およびこれらを接続する内部バスで構成されている。
【0081】
マイコン102には外部バスが接続されている。外部バスには、上位装置201との通信を行うための図示を省略したインターフェース、カードCaに印刷すべき印刷データやカードCaの磁気ストライプや収容ICに磁気的ないし電気的に記録すべき記録データ等を一時的に格納するバッファメモリ101が接続されている。
【0082】
また、外部バスには、各種センサからの信号を制御するセンサ制御部103、各モータに駆動パルスや駆動電力を供給するモータドライバ等を含むアクチュエータ制御部104、サーマルヘッド40を構成する発熱素子への熱エネルギを制御するためのサーマルヘッド制御部105、オペパネ部5を制御するための操作表示制御部106、EEPROMやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ107、および上述した情報記録部Aが接続されている。
【0083】
ここで、アクチュエータ制御部104の一部を構成し、モータMr1、Mr3に駆動電力を供給するモータドライバ(不図示)について簡単に説明する。本実施形態では、モータドライバに、パルス列を発生させデューティ(供給電流)を変更可能なタイマICを有して構成されている。このようなデューティはマイコン102側からデータとして与えられる。なお、デューティは、スイッチング周波数の周期をT、通電時間をtとしたときに、{(T−t)/T}×100(%)で表される。このため、モータMr1、Mr3は、マイコン102のCPUで指定されたデューティに従ってタイマICで生成されたPWM(Pulse Width Modulation)パルスで駆動する。なお、モータMr1、Mr3には、ノイズを抑制するとともにエネルギ効率を高めるために、フライホイールダイオード(不図示)がそれぞれ並列に接続されている。
【0084】
(電源部)
電源部120は、制御部100、サーマルヘッド40、ヒートローラ33、オペパネ部5および情報記録部A等に作動/駆動電源を供給している。
【0085】
<動作>
次に、フローチャートを参照して、本実施形態の印刷装置1によるカード発行動作について、マイコン102のCPU(以下、単にCPUという。)を主体として説明する。なお、印刷装置1を構成する各部材はホーム(初期)位置に位置付けられ(例えば、
図2に示す状態)、ROMに格納されたプログラムおよびプログラムデータをRAMに展開する初期設定処理が終了したものとして説明する。また、印刷部B(画像形成部B1、転写部B2)の動作については既に説明したので、重複を避けるために簡単に説明する。
【0086】
図14に示すように、カード発行ルーチンでは、ステップ320において、上位装置201から印刷データ等を受信する。すなわち、CPUは、上位装置201から一面(例えば、表面)および他面(例えば、裏面)用の印刷データ(Bkの印刷データ、Y、M、Cの色成分印刷データ)並びに磁気ないし電気的記録データを受信しバッファメモリ101に格納する。
【0087】
次のステップ322では、画像形成部B1において、転写フィルム46に画像(鏡像)を形成する一次転写処理を行う。すなわち、バッファメモリ101に格納されたY、M、Cの色成分印刷データおよびBkの印刷データに従って画像形成部B1のサーマルヘッド40を制御することで、転写フィルム46にインクリボン41のY、M、CおよびBkインクによる画像を形成する。CPUは、サーマルヘッド制御部105を介して印刷データを1ラインごとにサーマルヘッド40側に出力することで、主走査方向に列設された発熱素子を選択的に加熱させてサーマルヘッド40を駆動させる。なお、本実施形態では、転写フィルム46の領域に一面側の画像を形成した後、転写フィルム46の次の領域に他面側の画像を形成する。
【0088】
ステップ322での一次転写処理と並行して、CPUは、媒体収容部CからカードCaを繰り出し、磁気ないし電気的記録データに基づいて、情報記録部Aを構成する磁気記録部24、非接触式IC記録部23、接触式IC記録部27のうちいずれかでカードCaの対する記録処理を行った後、カードCaを転写部B2に搬送する。
【0089】
次のステップ324では、転写部B2において、カードCaに転写フィルム46に形成された画像を転写する二次転写処理を行う。CPUは、この二次転写処理において、カードCaと転写フィルム46の領域に形成された画像とが同期して転写部B2に到着するように制御する。なお、CPUは、カードCaの一面に画像を転写した後、カードCaを回動ユニットF側に搬送してカードCaを180°回転させ、カードCaの他面に他面用の画像を転写する。
【0090】
次に、ステップ326において、センサSe2がインクリボン41の終端部に付されたエンプティマークを検出したか否かを判断し、否定判断のときはカード発行ルーチンを終了し、肯定判断のときは次のステップ328でDCモータ補正処理を実行してカード発行ルーチンを終了する。なお、CPUは、ステップ326、328と平行して、デカール機構36でヒートローラ33による熱転写で生じたカードCaのカールを矯正した後、収容スタッカ60に向けてカードCaを排出する。
【0091】
(DCモータ補正)
次に、
図15を参照して
図14のステップ328のDCモータ補正処理の詳細について説明するが、その前に、DCモータ補正処理の全体像について説明する。
【0092】
図17に示すように、CPUは、センサSe2がインクリボン41の終端部に付されたエンプティマークを検出した後(
図17(A)参照)、インクリボン41を弛ませるために、モータMr1を停止させた状態でモータMr3を正転駆動させる(
図17(B)参照)。モータMr1、Mr3は、供給スプール43側から巻取スプール44側にインクリボン41を搬送するときの回転方向(つまり、印刷処理の際にインクリボン41を搬送する方向ときの回転方向)が正転、その反対方向が逆転として設定されている。このような設定がなされている理由は、DCモータは回転方向によって回転速度に差が生じるためである。モータMr3が正転する場合には、画像形成部B1における画像形成動作と同じ方向のため、CPUはエンコーダ15で検出されたモータMr3の回転量を取り込む。
【0093】
次に、インクリボン41の弛みを取るために、モータMr1を停止させた状態でモータMr3を逆転駆動させた後(
図17(C)参照)、インクリボン41を弛ませるために、モータMr3を停止させた状態でモータMr1を逆転駆動させる(
図17(D)参照)。モータMr1が逆転する場合には、画像形成部B1における画像形成動作とは逆方向のため、CPUはエンコーダ16(
図12参照)で検出されたモータMr1の回転量は取り込まない。そして、モータMr3を停止させた状態でモータMr1を正転駆動させる(
図17(E)参照)。モータMr1が正転する場合には、画像形成部B1における画像形成動作と同じ方向のため、CPUはエンコーダ16で検出されたモータMr1の回転量を取り込む。
【0094】
なお、
図17(B)の状態から、
図17(C)、
図17(D)の状態を飛ばして
図17(E)の状態としてもよいが、インクリボン41の摺動負荷や巻きズレによりモータMr1の回転量を検出する際に誤差を生じるおそれがあるため、本実施形態では、
図17(C)、
図17(D)を経て
図17(E)でモータMr1の回転量を検出している。
【0095】
以上を前提に、DCモータ補正処理の詳細について説明する。
図15に示すように、DCモータ補正処理サブルーチンでは、ステップ332において、回転量の測定対象がMr1か否かを判断する。上述した
図17の例では、モータMr1よりモータMr3の回転量を先に測定するので(
図17(B)参照)、ステップ332での判断は否定となり、モータMr3が測定対象となる。
【0096】
次にステップ336では、モータMr3の回転量を測定し、回転速度を算出する。すなわち、本実施形態では、
図12に示すように、回転板11に8つのスリットが形成されており、
図19に示すように、回転板11が1回転するときのエンコーダ15から出力される8つの(オン、オフ)信号をカウントし、それに対応する時間(回転板11が8クロック分回転する際の時間)からモータMr3の回転量を測定する。つまり、モータMr3が1回転したことがエンコーダ15により検出される間に対応する時間(時刻t0から時刻t1までの時間)からモータMr3の回転速度を算出する。モータMr1、Mr3の回転当初はスプールに捲回されたインクリボン41の慣性による影響を受けるため、
図19に示すように、回転当初におけるエンコーダ15からの出力は参照されない(捨てられる)。なお、本実施形態では、1ms周期のタイマ機能を有するCPUが用いられている。
【0097】
次のステップ338では、温度センサThでモータMr3の雰囲気温度を測定し、次のステップ340において、ステップ336で算出したモータMr3の回転速度を、基準モータにおける予め定められた回転速度と温度との関係テーブルまたは関係式に当てはめて、所定温度(例えば、25°C)における回転速度に温度補正する。
【0098】
次いでステップ342で基準テーブルを読み出し、次のステップ344でモータMr3に対する供給電流を補正する。すなわち、ステップ342では、
図20に示すように、基準モータにおける予め定められた回転速度と供給電流との関係を示す関係テーブルまたは関係数式を読み出す。また、ステップ344では、ステップ340で温度補正されたモータMr3の回転速度とモータMr3を駆動させたときの供給電流を読み出した関係テーブルまたは関係数式に当てはめて、モータMr3を駆動させたときの供給電流で基準モータを駆動させるときの回転速度と同じ回転速度となるモータMr3の供給電流を算出し、算出されたモータMr3の供給電流の値を不揮発性メモリ107(
図13参照)に保存する。このように不揮発性メモリ107に算出結果を保存する理由は、エンプティマークを検出すると、CPUはオペパネ部5にインクリボンカセット42の交換が必要な旨表示するため、オペレータは新たなインクリボンカセットと交換する際に印刷装置1の電源を落とすことがあるからである。
【0099】
図20は、モータMr3の回転速度(回転数N)が例えば1000rpm、そのときのデューティが25%、そのデューティに対する基準モータの回転速度が1250rpmの場合を示しており、CPUは、回転(傾き)差異=(1250÷1000)=1.25を算出し、基準モータと同じ回転速度(1250rpm)とするために、供給電流(デューティ)を、供給電流=25%×1.25=31.25%として算出し、6.25%(32.25%−25%)分増加させる例を示したものである。
【0100】
次にステップ346では、
図17(C)に示したように、モータMr3を逆転駆動させ弛ませたインクリボン41を元の位置に戻し(弛みを除去し)、次のステップ348において、モータMr1に対するDCモータ補正処理が終了したか否かを判断する。上記の例では、モータMr1に対しては処理が終了していないので、ステップ332に戻ることとなる。
【0101】
ステップ332での判断は肯定となり、次のステップ334では、
図17(D)に示したように、モータMr1を逆転駆動させてインクリボン41に弛みを付与した後、モータMr3の場合と同様に、ステップ336〜344で、モータMr1を駆動させたときの供給電流で基準モータを駆動させるときの回転速度と同じ回転速度となるモータMr1の供給電流を算出し、算出されたモータMr3の供給電流の値を不揮発性メモリ107に保存する。そして、ステップ346では、
図17(E)に示したように、続けてモータMr3を正転駆動させ弛ませたインクリボン41を元の位置に戻し(弛みを除去し)、ステップ348の判断を経て(必然的に肯定判断となる)DCモータ補正サブルーチンを終了する。
【0102】
なお、印刷装置1はインクリボンカセット42の着脱を検出するための透過型センサを有しており、CPUは、この透過型センサの出力を監視することによりインクリボンカセット42が新たなインクリボンカセットに交換されたときに、または、上述した初期設定処理において、不揮発性メモリ107に保存された供給電流の値を上述したタイマICにデータとして付与することで、モータMr1、Mr3は補正された供給電流で駆動することになる。
【0103】
<効果等>
次に、本実施形態の印刷装置1の効果等について説明する。
【0104】
本実施形態の印刷装置1では、インクリボン41を弛ませた状態で、すなわち、モータMr1、Mr3にインクリボン41の張力が掛からない状態でモータMr1、Mr3を駆動させて(
図17(B)、(E))モータMr1、Mr3の回転速度を算出するので、モータMr1、Mr3の供給電流を適正に補正することができる。このため、本実施形態の印刷装置1によれば、モータMr1、Mr3に経年劣化があっても、画質の劣化を防止することができる。
【0105】
また、本実施形態の印刷装置1では、インクリボン41による張力が掛からない状態でモータMr1、Mr3を駆動させる際に、供給スプール43側から巻取スプール44側にインクリボン41を搬送するときのモータMr1、Mr3の回転方向と同一方向に(正転)駆動させて、回転速度を測定する。従って、正転駆動と逆転駆動とで回転速度に差異のあるDCモータにおいて、実際にインクリボン41を搬送する際の回転方向でモータMr1、Mr3の補正を行うため、モータMr1、Mr3への供給電流を精度よく補正することができる。
【0106】
さらに、本実施形態の印刷装置1では、インクリボン41に付されたエンプティマークを検出した後の新たなインクリボンカセット42が装着される前にモータMr1、Mr3の補正を行うので、弛んだインクリボン41にゴミが付着したり、インクリボン41の搬送時の斜行(スキュー)の主原因となる、一旦弛めたインクリボン41を巻き戻す際に生じる巻きズレが生じたりすることを防止できる。
【0107】
また、本実施形態の印刷装置1では、温度センサThを備え、算出した回転速度を予め定められた回転速度と温度との関係に当てはめて所定温度における回転速度に温度補正するので、モータMr1、Mr3への供給電流をさらに精度よく補正することができる。
【0108】
なお、本実施形態では、間接印刷方式の印刷装置1を例示したが、本発明はこれに限定されず、特許文献1に開示されているような直接印刷方式の印刷装置にも適用可能である。また、本実施形態では、フィルム状転写媒体としてインクリボン41を例示したが、本発明はこれに限らず、転写フィルム46にも適用可能である。すなわち、請求項1の「フィルム状媒体」がインクリボン41の場合、「被印刷媒体」は転写フィルム46で「印刷部」は画像形成部B1となり、「供給スプール」は供給スプール43、「巻取スプール」は巻取スプール44となる。また、請求項1の「フィルム状媒体」が転写フィルム46の場合、「被印刷媒体」はカードCaで「印刷部」は転写部B2となり、「供給スプール」は供給スプール48、「巻取スプール」は巻取スプール47となる。言い直せば、モータMr2、Mr4に対しても同様に供給電流の補正を行うことができる。
【0109】
また、本実施形態では、供給スプール43を回転させるモータMr3、巻取スプール44を回転させるモータMr1を例示したが、本発明はこれに制限されず、例えば、供給スプール43と巻取スプール44とを複数のギアを介して一つのDCモータで駆動させる態様でも適用可能である。このような態様では、一方のスプールへの回転駆動力の伝達を停止させるために、例えば電磁クラッチ等のクラッチ機構を用いるようにしてもよい。
【0110】
さらに、本実施形態では、モータMr1、Mr3が所定量回転したことがエンコーダ15、16により検出される間に対応する時間からモータMr1、Mr3の回転速度を算出する例を示したが(
図19参照)、本発明はこれに限らず、所定時間にエンコーダ15、16が検出したモータMr1、Mr3の回転量から回転速度を算出するようにしてもよい。
【0111】
また、本実施形態では、インクリボン41に付されたエンプティマークを検出した後にモータMr1、Mr3の補正を行う例を示したが、本発明はこれに制限されず、例えば、
図16に示すように、印刷の度毎に(例えば、ステップ322の一次転写処理の前に)DCモータ補正処理(ステップ328)を行うようにしてもよい。このような実施形態の利点は、モータMr1、Mr3の経年劣化に対する供給電流を補正できることの他に、印刷の度毎にDCモータ補正処理を行うため、モータMr1、Mr3の雰囲気温度に応じて直ちに適正な供給電流の補正を行えることである。
【0112】
さらに、本実施形態では、
図17(A)〜(E)に示したように、モータMr3、モータMr1の順で回転速度を測定する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、モータMr1、モータMr3の順で回転速度を測定するようにしてもよい。すなわち、
図17に則して説明すれば、
図17(A)、(D)、(E)、(B)、(C)の手順としてもよい。具体的には、CPUは、センサSe2がエンプティマークを検出した後に(
図17(A))、モータMr3の駆動を停止させた状態でモータMr1を逆転駆動させてインクリボン41を弛ませ(
図17(D))、モータMr3の駆動を停止させた状態でモータMr1を正転駆動させて(
図17(E))モータMr1の回転速度を算出して供給電流を補正し、モータMr1の駆動を停止させた状態でモータMr3を正転駆動させてモータMr3の回転速度を算出して供給電流を補正し(
図17(B))、モータMr1を停止させた状態でモータMr3を逆転駆動させてインクリボンの弛みを除去する(
図17(C))。
【0113】
また、インクリボン41に付されたエンプティマークはインクリボン41の使用限界を示すため、インクリボン41を破断させてモータMr1にインクリボン41の張力が掛からないようにしてもよい。このような実施形態では、インクリボン41にエンプティマークが付された位置よりさらに終端側に、例えば、ミシン目や部分的に切断された脆弱部が形成される。
図18はこのような実施形態におけるモータMr1、Mr3の回転速度の測定手順を示したものである。
【0114】
具体的には、CPUは、センサSe2がエンプティマークを検出した後に(
図18(A))、モータMr1の駆動を停止させた状態でモータMr3を正転駆動させてモータMr3の回転速度を算出し(
図18(B))、モータMr3の駆動を停止させた状態でモータMr1を正転駆動させてインクリボン41を巻取スプール44で巻き取らせつつ(
図18(C))、モータMr3を逆転駆動させてインクリボン41を露出した脆弱部で破断させ、なおも巻取スプール44でインクリボン41の破断した端部を巻き取らせ(
図18(D))、モータMr3の駆動を停止させた状態でモータMr1を正転駆動させてモータMr1の回転速度を算出して供給電流を補正する。なお、供給スプール44はモータMr3が停止する前にインクリボン41の破断した他端を巻き取る。
【0115】
さらに、本実施形態では、転写フィルム46の異なる領域にそれぞれ一面および他面用の画像を形成した後(ステップ322)、カードCaの一面、他面に転写フィルム46に形成された一面および他面用の画像をそれぞれ転写する(ステップ324)例を示したが、本発明はこれに限定されず、転写フィルム46に一面用の画像を形成しカードCaの一面に形成された一面用の画像を転写した後、転写フィルム46に他面用の画像を形成しカードCaの他面に形成された他面用の画像を転写するようにしてもよい。
【0116】
また、本実施形態では不揮発性メモリ107を有しているので、エンコーダ15の累計回転量を不揮発性メモリに格納しておき、累計回転量と劣化によるデューティ(供給電流)との関係をあらかじめ定めたテーブルまたは数式を参照して、モータMr1、MR3への供給電流を補正するようにしてもよい。
【0117】
なお、本実施形態では、インクリボン41および転写フィルム46の印刷処理時の搬送方向が供給スプール43、48から巻取スプール44、47側へ搬送する方向である構成を開示しているが、供給スプールでインクリボン41や転写フィルム46を巻き取りながら印刷処理を行ってもよい。その場合、DCモータの回転量を検出する際の回転方向は巻取スプール側から供給スプール側へインクリボン41や転写フィルム46を搬送するときの回転方向となる。いずれにしても、印刷処理の際にインクリボン41や転写フィルム46を搬送するときのDCモータの回転方向と同一方向に駆動した状態でDCモータの回転量を検出することが望ましい。
【0118】
そして、本実施形態では、インクリボンカセット42を例示したが、本発明はこれに制限されず、カセットを用いないタイプのインクリボンに適用可能なことは言うまでもない。