(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
付着促進剤または接着促進剤ともしばしば称されるプライマーは、多方面で市販の製品の形態で、または技術文献から知られている。プライマーを調合する際に使用可能な物質または物質群に関する概要は、J.Bielemann、Lackadditive(1998)、4.3.章、114〜129頁(非特許文献1)に示されている。
【0003】
プライマー組成物は、多数の特許公報において開示されているが、接着テープの付着性を改善するというプライマーは小数の公報にしか記載されていない。
【0004】
公報WO2008/094721(A1)(特許文献1)では、接着テープの適用に関連して、無水マレイン酸で修飾されたポリオレフィンおよび有機ジアミンをベースとするプライマー組成物が提案されており、この組成物を用いることで、ポリオレフィンをベースとする材料への付着性が改善されるという。
【0005】
JP2008−156566(A)(特許文献2)では、接着テープの適用に関して、酸性アクリレートポリマーおよびフッ素含有コポリマーをベースとするプライマー組成物が開示されている。
【0006】
メラミン樹脂が塗布された基材への接着テープの付着性を改善するために、WO02/100961(A1)(特許文献3)は、末端に第一級アミノ基を有するアミノアルキル基でグラフトされたアクリレートコポリマーのグラフトコポリマーと、さらに分子鎖中にカルボキシル基を有するアクリレートコポリマーと、溶剤とを含むプライマー組成物を提案している。
【0007】
WO03/052021(A1)(特許文献4)は、電子リッチな基を有するポリジオルガノシロキサン−ポリ尿素を含有し、かつプライマー、接着剤、感圧接着剤、または別のコーティング材料の形をとり得るプライマー組成物を記載している。このプライマー組成物も、接着テープの適用に関連して挙げられている。
【0008】
公報EP833 865(B1)(特許文献5)、EP833 866(B1)(特許文献6)、EP739 383(B1)(特許文献7)、およびUS5,602,202(特許文献8)では、スチレンブロックコポリマー/ジエンブロックコポリマーまたはスチレンブロックコポリマー/水素化ジエン−ブロックコポリマーおよび選択されたポリアクリレートからなる混合物をベースとするプライマー組成物が記載されており、この組成物は、両面感圧接着性発泡接着テープの、低エネルギー表面への付着性も、より高エネルギー表面への付着性も改善するという。
【0009】
貼り付きづらい基材、特に亜鉛めっき鋼およびオレフィンをベースとする熱可塑性エラストマー、例えばPP/EPDMへの接着テープの接着性を改善するために適しているプライマーが、DE10 2011 077 510(A1)(特許文献9)に開示されている。
【0010】
しかしながら前述の公報はいずれも、ガラスへの付着促進に関するものではない。
【0011】
親水性の下地、例えば、ガラスなどへの付着を促進するためには多くの場合に、シランプライマーもしくはシラン付着促進剤または接着促進剤が使用されている。そのようなものは例えば、DE10 2009 007 930(A1)(特許文献10)またはDE10 2007 030 196(A1)(特許文献11)に、さらにEP 577 014(A1)(特許文献12)、EP1 693 350(特許文献13)、EP1 730 247(特許文献14)、US2008 0245 271(特許文献15)、US2008 023 425(特許文献16)、またはWO2008/02586(特許文献17)に記載されている。
【0012】
しかし、上述の公報で開示されている化合物は、ガラスへの接着テープの接着力を改善するためには不十分にしか適していない。それというのもそれらの化合物は、感圧接着剤への接着性、特にアクリル酸エステルおよび場合によってアクリル酸からなるコポリマーをベースとする感圧接着剤への接着性を改善する適切な成分を含有しないからである。
【0013】
追加的に、機能性充填物質をプライマーに混入することが望ましい場合、前記の公報の化合物は全く役に立たない。それというのも、非常に希液性の分散液、溶液、または調合物は、そのような充填物質を取り込むことができないからである。したがって特に、着色が不透明でなければならないとしても、そのようなプライマーを着色することは不可能である。
【0014】
US6,646,048(B2)(特許文献18)は、そのうちの少なくとも1種は少なくとも1個の芳香環を有する側鎖を有する2種の異なるメタクリレートからなる反応性アクリル樹脂と、シラン化合物と、ビスフェノールAタイプのエポキシド樹脂と、カーボンブラックとからなるプライマー組成物を開示している。反応性アクリル樹脂とシランとからなるこのプライマー組成物は、ウレタンをベースとする充填物または反応性接着剤のガラスへの付着を改善するためには確かに適しているが、感圧接着剤テープのガラスへの付着を改善するためには全く適していない。適用後にもなお架橋し、したがって反応によってプライマーと化学的に結合し得るウレタンをベースとする充填物または反応性接着剤とは異なり、接着テープ上の感圧接着剤のベースであるポリマーは、接着テープを適用することによりもはや反応性ではなく、したがって、米国公報のプライマー組成物によっては、所望の付着改善が達成されることはない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
プライマーとは、DIN EN ISO 4618に従うと本明細書では基礎コーティングを製造するためのコーティング材料のことである。一般にプライマーまたはコーティング材料は基材の表面に塗布され、その後に、溶剤の蒸発および/または別の化学的もしくは物理的な硬化プロセスもしくは薄膜形成プロセスにより薄膜を形成し、その後に、そのように製造された層上に、さらなる別の材料、例えば塗料、インク、接着剤、または接着テープを施すことができる。プライマーの付着促進作用の前提条件は、一方では、本明細書ではその表面を下地とも言う基材に対するプライマー層の非常に良好な付着性が達成されることであり、もう一方では製造されたプライマー層に、その上に施されるべきさらなる別の材料も非常に良く付着することである。プライマーの上に施された材料またはプライマーの上に施された接着製品、例えば接着テープを剥離する試験の際に、凝集破壊が材料、接着製品、または接着テープの内部で生じる場合、またはその際に、プライマーが先にその上に施された基材の破壊が生じる場合に、プライマーは最適な付着促進作用を有する。プライマーに施された材料、接着製品、または接着テープを剥離するために必要な力が、プライマーが使用されていない場合の力よりも大きい場合に、付着改善または接着力の改善が得られている。この力が大きいほど、付着改善または接着力の改善が大きい。
【0026】
本明細書の意味における溶剤とは、独立請求項に開示されている混合物を溶解または少なくとも微分散させるために適したあらゆる既知の液体である。好ましい本発明による溶剤は、例をいくつか挙げるに過ぎないが、例えばアルコール、エステル、ケトン、脂肪族または芳香族の炭化水素、およびハロゲン化炭化水素などの有機溶剤である。水または他の無機溶剤も同様に本発明思想に取り込まれている。
【0027】
分散した混合物とは、本明細書では微分散した均質な混合物のことである。微分散性および均質性の度合いは厳密には定義されていないが、コーティング後にすき間のない層が形成されるのに十分でなければならず、かつ分子レベルでは溶解しない凝塊または凝集体の大きさが、付着促進層としてのプライマー層の機能を保証するのにこと足りる小ささであるくらいに十分でなければならない。
【0028】
本発明によるプライマーに含有される混合物の本質的な特徴は、この混合物が、以下のモノマー:
ビニルカプロラクタムおよび/またはビニルピロリドン、ならびに以下のモノマー:
a)アルコールのアルキル基中に2〜10個の炭素原子を有する直鎖の第一級アルコールのアクリル酸エステル、
b)アルコールのアルキル基中に4〜12個の炭素原子を有する分枝状で非環状のアルコールのアクリル酸エステル、
c)アクリル酸
のうちの1種または複数の、好ましくはラジカル共重合することによって得られる少なくとも1種のコポリマーを含むことであり、その際、ビニルカプロラクタムおよび/またはビニルピロリドン、ならびに成分a)〜c)の合計は有利には、数種のコポリマーのそれぞれで、そのコポリマーの100質量パーセントを占める。
【0029】
コポリマーが感圧接着剤である上述のプライマーが、特に有利である。
【0030】
感圧接着剤とは、本明細書では一般的な慣用語においてのとおり、通常は、特に室温で継続的に接着性の材料および接着能力がある材料のことである。感圧接着剤には、圧力により基材に施すことができ、そこで付着し続けるという特徴があり、その際、掛けるべき圧力およびこの圧力の作用時間は詳しくは定義されていない。多くの場合、感圧接着剤、温度および湿度、ならびに基材の正確な種類に応じて、短い瞬間的な軽い接触を超えない短期のごく僅かな圧力の作用で、付着効果の達成には十分であり、その他の場合には、高い圧力でより長期の作用時間が必要な可能性もある。
【0031】
感圧接着剤は、とりわけ特徴的な粘弾特性を有しており、この特性が継続的な接着性および接着能力をもたらす。
【0032】
感圧接着剤に特徴的なのは、機械的に変形されると、粘性流動プロセスも、弾性復元力の発生も起こることである。両方のプロセスは、それぞれの割合に関して、考察すべき感圧接着剤の正確な組成、構造、および架橋度にも、変形の速度および継続時間にも、ならびに温度にも応じて、互いに特定の比率で生じる。
【0033】
割合に応じた粘性流動は、接着性を達成するために必要である。可動性が比較的大きい巨大分子によってもたらされる粘性部分だけが、貼付するべき基材への優れた濡れ性および優れた表面流動を可能にする。粘性流動の割合が高いと、感圧接着性(タックまたは表面接着性とも言う)が高くなり、したがって多くの場合に接着力も高くなる。強架橋された系、結晶性ポリマー、またはガラス状に凝固したポリマーは、流動可能な部分の欠如により、一般的には全く、または少なくとも少ししか感圧接着性ではない。
【0034】
割合に応じた弾性復元力は、凝集性を達成するために必要である。この復元力は、例えば非常に長鎖で強く絡んだ巨大分子および物理的または化学的に架橋された巨大分子によってもたらされ、接着結合に作用する力の伝達を可能にする。復元力により、接着結合が、例えば継続的なせん断負荷の形で接着結合に作用する継続負荷に十分に、比較的長時間にわたって持ちこたえ得るようになる。
【0035】
弾性部分および粘性部分の尺度ならびにこれらの部分の互いの比率をより正確に表現しかつ定量化するためには、動的機械分析(DMA)によって確定可能な値である貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を引用することができる。G’は、物質の弾性部分のための尺度であり、G”は物質の粘性部分のための尺度である。両方の値は変形周波数および温度に左右される。
【0036】
この値は、レオメータによって確定することができる。その際、調べるべき材料は、例えばプレート・プレート構成において、正弦波状に振動するせん断負荷に曝される。ずり応力制御された機器の場合、時間の関数としての変形およびずり応力の導入に対するこの変形の時間的ずれが測定される。この時間的ずれは位相角δと呼ばれる。
【0037】
貯蔵弾性率G’は次のように定義されている。すなわちG’=(τ/γ)・cos(δ)(τ=ずり応力、γ=変形、δ=位相角=ずり応力ベクトルと変形ベクトルの位相ずれ)。損失弾性率G”の定義は、G”=(τ/γ)・sin(δ)(τ=ずり応力、γ=変形、δ=位相角=ずり応力ベクトルと変形ベクトルの位相ずれ)である。
【0038】
材料が、一般的に感圧接着性とみなされ、また本明細書の意味において感圧接着性と定義されるのは、室温においてであり、ここでは定義に基づき23℃で、変形周波数が10
0〜10
1rad/secの範囲の際に、G’が少なくとも部分的に10
3〜10
7Paの範囲内にある場合で、かつG”も同様に少なくとも部分的にはこの範囲内にある場合である。部分的とは、変形周波数(横座標)が10
0rad/sec以上10
1rad/sec以下でG’値(縦座標)が10
3Pa以上10
7Pa以下の範囲に広がるウィンドウ内に、G’曲線の少なくとも一区間があることであり、同様にG”曲線の少なくとも一区間がこのウィンドウ内にある場合である。
【0039】
ビニルカプロラクタムおよび/またはビニルピロリドンをコポリマー中に含有する感圧接着剤は通常は、平均的な接着特性しか有さない。したがってなおさら、本発明の範囲において、ビニルカプロラクタムおよび/またはビニルピロリドンをモノマー成分として有する本発明によるコポリマーを感圧接着剤として含有するプライマーが、プライマーとして優れた付着促進特性を有し、かつ親水性基材、特にガラスへの接着テープの非常に強い結合をもたらすことが発見されたことは意外であった。
【0040】
そのコポリマーがさらなる共重合性モノマーを含有することなく、独立請求項に挙げられている成分のみを有する、すなわち、それらの成分からのみなり、かつそのコポリマーが感圧接着剤であるプライマーは、特に適していて、特に良好な付着促進特性を有する。したがって、このようなコポリマーでは、コポリマーは、ビニルカプロラクタムおよび/またはビニルピロリドン、ならびに成分a)からc)に限られるので、このコポリマーは、アルコールのアルキル基中に2〜10個のC原子を有する直鎖のアクリル酸エステル、アルコールのアルキル基中に4〜12個以下の炭素原子を有する分枝状で非環状のアクリル酸エステル、およびアクリル酸以外のさらなる共重合性モノマーをベースとしない。本発明によるプライマーの成分としての感圧接着剤は、上記以外の、特に軟化性の、コモノマーおよび成分が存在しなくてよいことを特色とする。つまり例えば環状の炭化水素構成体を有するコモノマーを完全に含まなくて済む。
【0041】
アルキル基に2〜10個のC原子を有する直鎖状のアルキル酸エステルは、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、n−デシルアクリレートである。
【0042】
アルコールのアルキル基に4〜12個以下の炭素原子を有する分枝状で非環状のアクリル酸エステルは好ましくは、2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)、2−プロピルヘプチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、および/またはイソデシルアクリレートからなる群から選択される。特に有利なのは、分枝状で非環状のアクリル酸エステルとして、2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)、2−プロピルヘプチルアクリレート、および/またはイソオクチルアクリレート(より正確には、アルコール成分が第一級イソオクタノールの混合物に由来しているアクリル酸エステル、つまりイソヘプテン混合物からヒドロホルミル化および続く水素化によって獲得され得るアルコールに由来しているアクリル酸エステル)が使用される場合であることが分かった。
【0043】
非常に好ましいのは、そのコポリマーがビニルカプロラクタムおよび/またはビニルピロリドン、ならびに厳密に種類a)の1種のモノマーに基づいている感圧接着剤であり、その際、特に好ましくは、種類a)のモノマーとしてn−ブチルアクリレートを選択する。さらなるモノマーとしては、ビニルカプロラクタムが特に好ましい。したがって特に適したコポリマーは、成分ビニルカプロラクタムおよびn−ブチルアクリレートの両方からなる。
【0044】
他の本発明の有利な形態では、コポリマーは、モノマーの合計に対して最大10質量パーセントのさらなる共重合性モノマーを有する。
【0045】
任意選択で、最大10質量パーセント使用されるさらなる共重合性モノマーとしては、当業者に既知のラジカル重合性でC=C二重結合を有する全てのモノマーまたはモノマー混合物を、特別な制限なく使用することができる。これに関し、例示的に挙げられるモノマーは下記のとおりである。すなわちメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、sec.−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、t−ブチルフェニルアクリレート、t−ブチルフェニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、n−ウンデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、3,5−ジメチルアダマンチルアクリレート、4−クミルフェニルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルメタクリレート、4−ビフェニルアクリレート、4−ビフェニルメタクリレート、2−ナフチルアクリレート、2−ナフチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、無水マレイン酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、アリルアルコール、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、3−メトキシアクリル酸メチルエステル、3−メトキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、ブチルジグリコールメタクリレート、エチレングリコールアクリレート、エチレングリコールモノメチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート350、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート500、プロピレングリコールモノメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−(1−メチルウンデシル)アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−(n−オクタデシル)アクリルアミド、さらにN,N−ジアルキル置換アミド、例えばN,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−tert−オクチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル、エチルビニルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルエステル、例えばビニルアセテート、塩化ビニル、ハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、ハロゲン化ビニリデン、ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルフタルイミド、スチレン、a−およびp−メチルスチレン、a−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、3,4−ジメトキシスチレン。マクロモノマー、例えば2−ポリスチレンエチルメタクリレート(分子量MW4000〜13000g/mol)、ポリ(メチルメタクリレート)エチルメタクリレート(MW2000〜8000g/mol)。
【0046】
好ましくは、本発明によるプライマーのコポリマーは、コポリマーの全てのモノマーの合計に対して最大50質量パーセント、好ましくは最大40質量パーセントのビニルカプロラクタムおよび/またはビニルピロリドンを含有する。さらに、本発明によるプライマーのコポリマーは好ましくは、コポリマーの全てのモノマーの合計に対して少なくとも15質量パーセント、好ましくは少なくとも20質量パーセントのビニルカプロラクタムおよび/またはビニルピロリドンを含有し、その際、30質量パーセントのビニルカプロラクタムおよび/またはビニルピロリドンが特に好ましい。
【0047】
アクリル酸の割合については、コポリマーのモノマー全ての合計に対して、コポリマーの20質量パーセント、好ましくは10質量パーセント、特に好ましくは0質量パーセントの割合が特に有利である。
【0048】
モノマーをコポリマーにする架橋は有利には、熱架橋によって行う。「熱架橋」という概念は、1つの化学的架橋反応または複数の架橋反応を、放射線作用によってではなく温度作用によって生じさせるか、または開始させることに関する。本発明における架橋反応は好ましくは、化学線によっても、例えばUV線、X線、さらに電子線などの電離放射線によっても開始されない。化学的な架橋反応が生じるか、または開始する温度は、室温またはそれ未満でさえあり得る。架橋反応は溶剤の蒸発後にスタートする。
【0049】
さらなる感圧接着剤成分は、感圧接着剤のために添加剤として、または成分として当業者に知られているような、例えば、追加の他のポリマー、樹脂、軟化剤、安定剤、レオロジー添加剤、充填物質、架橋剤、開始剤、触媒、促進剤、およびその類似物であってよい。
【0050】
有利には、本発明によるプライマーは、追加の他のポリマー、特に塩素化ポリオレフィンを含有しない。有利には、追加の架橋剤も同様に存在しない。エポキシド樹脂も存在しないと、特に適切なプライマーが生じる。本発明によるプライマーは有利には、軟化剤および開始剤、触媒、または促進剤も含有しない。
【0051】
ここで塩素化ポリオレフィンとは、塩素化されたポリオレフィンのことである。エポキシド樹脂とは、ここでは全ての未架橋で、室温で固体または液体で、適切な溶剤に可溶性で、2個以上のエポキシド基を持つオリゴマーを意味している。
【0052】
上記で既に説明したとおり、本発明による少なくとも1種の有機官能性シランは、一般式(R
1O)
3Si−R
2Xまたは(R
1O)
2(R
3)Si−R
2Xの化合物のことである。置換基(R
1O)の典型的な例は、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、またはアセトキシ基である。置換基R
3は典型的には、メチル基である。該当する典型的な置換基R
2Xは、例をいくつか挙げるに過ぎないが、3−グリシドキシプロピル基、ビニル基、メタクリルオキシメチル基、3−メタクリルオキシプロピル基、メチル基、イソオクチル基、ヘキサデシル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基である。
【0053】
本発明では、グリシドキシ官能性である有機官能性シランが特に好ましい。ここでは特に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを挙げることができ、これらは、Wacker社から、製品名GENIOSIL(登録商標)GF 80またはGENIOSIL(登録商標)GF 82で販売されている。
【0054】
アミノ官能性またはビニル官能性であるそのような有機官能性シランがさらに好ましい。アミノ官能性シランとして、N−シクロヘキシルアミノメチルメチルジエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、および3−ウレイドプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。ビニル官能性シランとしては例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)−シラン、およびビニルトリアセトキシシランを使用することができる。
【0055】
好ましくは、金属錯体または金属酸化物をベースとする染料または着色顔料は、黒色染料または黒色着色顔料、好ましくは、名称「Neozapon(登録商標)Black X55」でBASF社が販売しているCAS番号117527−94−3を有するクロム錯体染料または名称Black 30C965でShepherd社が製造しているCAS番号68186−91−4を有する亜クロム酸銅黒色スピネルである。しかし、任意の他の金属錯体染料もしくは着色顔料またはスピネル型の金属酸化物染料もしくは着色顔料も可能である。
【0056】
本発明によるプライマーのための溶剤として、アルコールまたはアルコールを含有する溶剤が特に適しており、その際、単一のアルコールまたは複数種のアルコールの混合物を使用することができる。アルコールのなかでも、イソプロパノールが特に有利であることが判明している。
【0057】
コポリマーと有機官能性シランとの比について、1種または複数の溶剤中に溶解または分散している混合物のコポリマーの濃度は好ましくは、1種または複数の有機官能性シランの濃度よりも高い。
【0058】
本発明では、1種または複数の溶剤中に溶解または分散している混合物のコポリマーの濃度が、それぞれプライマーに対して1.0質量パーセント以上30.0質量パーセント以下、好ましくは2.0質量パーセント以上20.0質量パーセント以下、特に3.0質量パーセント以上10.0質量パーセント以下であると、特に好ましい。有機官能性シランは有利には、0.1質量パーセント以上5質量パーセント以下、好ましくは0.5質量%以上2.0質量%以下の濃度である。
【0059】
染料または着色顔料の有機官能性シランおよびコポリマーに対する比については、1種または複数の溶剤中に溶解または分散している混合物中における染料の濃度が、1種または複数の有機官能性シランの濃度よりも高い、好ましくはコポリマーの濃度よりも高い、特に好ましくは、1種または複数の有機官能性シランおよびコポリマーを合わせた濃度よりも高いと、特に好ましい。
【0060】
本発明によるプライマーのさらなる有利な一実施形態では、プライマーは1種または複数の既知の蛍光光学増白剤をさらに含有する。蛍光光学増白剤の機能は、プライマーが塗布された下地の識別化である。プライマーの塗布厚は一般的に非常に薄く、したがって光学的にはほとんど見えないので、光学的な識別化がないと、プライマーを塗布した下地とプライマーを塗布していない下地を区別することは多くの場合に難しい。既知の蛍光光学増白剤は、2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)、CAS番号7128−64−5であり、商品名Tinopal OB(登録商標)で、市場で入手可能である。
【0061】
生成物の特性
上述の組成によるプライマーは、特にガラスに、しかしその他の多くの親水性表面、例えばセラミックなどにも、優れた付着性を有する。極性の感圧接着剤を備えた、特に、アクリル酸エステルおよびアクリル酸からなるコポリマーをベースとする感圧接着剤を備えた接着テープは、このプライマーに非常に良く付着する。付着性が優れていることは、この場合に接着テープが主として破壊、つまり接着テープ内での割裂によってでしか剥離できないことで示される。プライマーでコーティングされた下地に接着された接着テープの、温度が60℃〜90℃で同時に相対湿度が80%以上であることを伴う何週間かの湿熱貯蔵または空気調節変化下での貯蔵の後でも、接着テープは主としてそれ自体の破壊によってでしか剥離できない。さらに、このプライマーは不透明に着色されている。そのことによって例えば、接着テープの色に関わらず、全体で黒色の接着面を提供する不透明な黒色プライマー層を製造することが可能であるので、ガラスに貼付した際の色印象は、接着テープ上のガラス表面を通して見た場合に黒色である。僅か約5μmから10μmの層厚でも既に不透明性を達成することができる。
【0062】
意外にも、本発明の範囲において、プライマーに染料または着色顔料が添加されても、プライマーの付着促進作用は、悪影響を受けないか、または少なくとも測定可能な程度には悪影響を受けないことが見出された。付着促進作用に悪影響を及ぼすことなく、シラン濃度の数倍に相当する染料割合または着色顔料割合が可能である。
【0063】
本発明によるプライマーを用いての付着促進層の製造は、公知の方法で、つまり、基材上に先ずプライマーを塗布することによって行う。続いて、1種または複数の溶剤を蒸発させ、その後に、接着テープを施与することができる。塗布し/溶剤を蒸発させてから、接着テープを施与するまでの間隔は、僅か数分でも、数日または数週間でもよい。
【0064】
以下の例に基づいて本発明をより詳しく説明するが、これらの例により本発明を制限する意図はない。
【0065】
本発明によって製造したサンプルを簡単に特徴づけるため、以下の試験法を用いた。
【0066】
貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”を決定するための動的機械分析(DMA)
プライマー中に含有されているコポリマーの感圧接着性を特徴づけるため、動的機械分析(DMA)を用いて貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”の決定を行った。
【0067】
測定は、ずり応力制御されたRheometric Scientific社のレオメータDSR200Nにより、プレート・プレート構成で、正弦波状に振動するせん断負荷での振動試験において行われた。貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”は、温度23℃で、周波数掃引10
−1〜10
2rad/secにおいて決定した。G’およびG”は次のように定義されている。
G’=τ/γ・cos(δ)(τ=ずり応力、γ=変形、δ=位相角=ずり応力ベクトルと変形ベクトル間の位相ずれ)。
G”=τ/γ・sin(δ)(τ=ずり応力、γ=変形、δ=位相角=ずり応力ベクトルと変形ベクトル間の位相ずれ)。
角周波数の定義はω=2π・f(f=周波数)である。単位はrad/secである。
【0068】
測定した感圧接着性コポリマー試料の厚さは、常に0.9〜1.1mmの間(1+/−0.1mm)であった。感圧接着性コポリマーの試料は、後で説明するコポリマーを、両面がシリコーン被覆されたポリエステルフィルム(剥離ライナー)に塗布し、70℃で溶剤を蒸発させ、こうして得られた100μm厚の塗抹標本を、約1mmの厚さに達するまで何度も重ねることによって製造した。試料直径はそれぞれ25mmであった。プレテンションは3Nの負荷で生じさせた。試料体のストレスは、全ての測定で2500Paであった。
【0069】
接着力
接着力は、PSTC−101に依拠して室温で決定した。この方式に基づき、最初にプライマーを基材(下地)に薄く塗布した。これは、基材にプライマーを刷毛で塗ることによって行われた。溶剤の蒸発後、このときには層厚が約3μm〜10μmのプライマーを有している下地に、測定すべき接着細長片(接着テープ)を施した(接着した)。これに関しては、プライマーでコーティングされた寸法50mm×125mm×1.1mmの下地に、規定の幅(標準:20mm)の接着テープ細長片を、5kgのスチールローラを上で10回転がして押すことにより接着した。
【0070】
接着テープの上で最後に転がして押してから引き剥がすまでの時間はa)1時間、b)3日であった。引き剥がし角度はそれぞれ90°、引き剥がし速度は300mm/分であった。引き剥がしに必要な力が接着力であり、この接着力は単位N/cmで示され、つまり規格化された1cmの接着テープ幅に対するものである。接着力に加えて、接着結合の不具合の種類が確定された。測定した接着細長片は、トリクロル酢酸でエッチング加工された23μm厚のポリエステルフィルムで裏面を補強されていた。全ての測定を、23℃および相対湿度50%の空気調節された空間内で実施した。
【0071】
空気調節下での貯蔵
貼付の空気調節負荷耐性を確定するため、本発明によるプライマーでコーティングされた基材およびその上に接着された接着テープからなる複合体を、選択された空気調節条件で貯蔵した。
【0072】
貯蔵a):85℃および相対湿度85%の空気調節下での2週間の貯蔵
貯蔵b):4時間−40℃、4時間加熱/冷却、4時間80℃/相対湿度80%のサイクルでの2週間の空気調節変化下での貯蔵
貯蔵時間が終了した後、トリクロル酢酸でエッチング加工された23μm厚のポリエステルフィルムで裏面を補強した試料に、23℃および相対湿度50%の空気調節された空間内で、それぞれ引き剥がし角度90°および引き剥がし速度300mm/分での接着力試験を行った。
【0073】
UV/VIS分光計での透過率の測定
Kontron社のUV/VISスペクトロメーターUVIKON 923を用いて、190〜850nmの波長範囲で、光透過率の測定を行った。
【0074】
静的ガラス転移温度
静的ガラス転移温度の決定は、DIN53765に基づく示差走査熱量測定によって行われる。ガラス転移温度T
gについての表示は、個々の場合において別の記載がなければ、DIN53765:1994−03に基づくガラス転移温度の値T
gに関している。加熱曲線は、加熱速度10K/分で延びている。穴のあいた蓋を備えたAlるつぼ内で、かつ窒素雰囲気中でサンプルを測定する。第2の加熱曲線を分析する。ガラス転移温度はサーモグラムにおける変曲点として認識可能である。
【0075】
分子量
平均分子量M
wまたは平均分子量M
Nおよび多分散度Dの決定は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって行われた。溶離液として、0.1体積%のトリフルオロ酢酸を含むTHFが用いられた。測定は25℃で行った。プレカラムとして、PSS−SDV、5μm、10
3Å(10
−7m)、ID8.0mm×50mmを使用した。分離のために、カラムPSS−SDV、5μm、10
3Å(10
−7m)、10
5Å(10
−5m)、および10
6Å(10
−4m)が、それぞれID8.0mm×300mmで用いられた。試料濃度は4g/lであり、貫流量は1分当たり1.0mlであった。PMMA標準に対して測定された。
【0076】
固体含有率
固体含有率は、ポリマー溶液中の蒸発不能成分の割合に関する尺度である。固体含有率は重量測定法で決定され、これは、溶液を量り入れ、その後に、乾燥庫内で2時間、120℃で、蒸発可能な部分を蒸発させ、再び残留物の重さを量ることによって行われる。
【0077】
K値(フィケンチャー法に基づく)
K値は、高重合体物質の平均分子サイズに関する尺度である。測定のため、トルエンに溶かした1パーセント(1g/100ml)のポリマー溶液を製造し、VOGEL−OSSAG粘度計によりこの溶液の動粘性を決定した。トルエンの粘度に基づく規格化により相対的な粘度が得られ、この粘度からフィケンチャー法に基づいてK値を算定することができる(Polymer 8/1967、381頁以降(非特許文献2))。
【0078】
基材(最初にプライマーが塗布され、続いてその上に接着テープが接着された下地)として、Rocholl GmbH社のガラス試験片を使用した。
【0079】
プライマーを試験した接着テープ(試験接着テープ)は、ポリアクリレート感圧接着剤をベースとしていた。このポリアクリレート感圧接着剤を製造するために下記の原料を使用した。
【0081】
マイクロバルーンの膨張能力は、TMA密度[kg/m
3]の決定によって表すことができる(Mettler Toledo社のStare熱分析システム、加熱速度20℃/分)。このTMA密度とは、標準圧力下の特定の温度T
maxでの、マイクロバルーンが崩壊する前に達成可能な最小密度である。
【0082】
樹脂の軟化点の決定は、DIN ISO 4625に基づいて行われる。
【0083】
さらに、試験接着テープ中に含有されているポリアクリレート感圧接着剤を製造するために下記の溶剤を使用した。
【0085】
試験接着テープ1
試験接着テープ1を製造するための例示的なポリアクリレート感圧接着剤1を次のように製造した。ラジカル重合のために慣用の反応器に、2−エチルヘキシルアクリレート54.4kg、メチルアクリレート20.0kg、アクリル酸5.6kg、およびアセトン/イソプロパノール(94:6)53.3kgを充填した。撹拌しながら窒素ガスを45分間導通させた後に、反応器を58℃に加熱し、Vazo67 40gをアセトン400g中に溶解させて添加した。続いて外側の加熱浴を75℃に加熱し、この外側温度で一定にして反応を実施した。1時間後に新たにVazo67 40gをアセトン400g中に溶解させて加え、4時間後にアセトン/イソプロパノール混合物(94:6)10kgで希釈した。
【0086】
5時間後および7時間後にそれぞれ、それぞれアセトン400g中に溶解させたビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート120gで再び開始させた。22時間の反応時間の後に、重合を中断し、室温まで冷却した。生成物は固体含有率55.9%を有し、負圧の濃縮押出機内で溶剤が除去された(残留溶剤の含有率≦0.3質量パーセント)。生じたポリアクリレートは、K値58.8、平均分子量Mw=746,000g/mol、多分散度D(Mw/Mn)=8.9、および静的ガラス転移温度T
g=−35.6℃を有した。
【0087】
このベースポリマーを、供給押出機(ドイツ、TROESTER GmbH & Co KG社の一軸スクリュー搬送押出機)内で溶融させ、供給押出機により、ポリマーメルトとして、加熱可能な管を介してEntex社(ボーフム)の遊星ロール押出機内に搬送した。その後に、配量添加口を介し、溶融した樹脂Dertophene T 110を加え、これによりメルト中の樹脂濃度は28.3質量パーセントになった。さらに架橋剤Polypox R16を添加した。メルト中の架橋剤濃度は0.14質量パーセントであった。全ての成分が均質なポリマーメルトへと混合された。
【0088】
メルトポンプおよび加熱可能な管により、ポリマーメルトが二軸スクリュー押出機(Berstorff社)内に移送された。二軸スクリュー押出機では促進剤Epikure925が添加された。メルト中の促進剤濃度は0.14質量パーセントであった。続いてこのポリマー混合物全体は、圧力175mbarの真空ドーム内で、全てのガス含有物を除去された。真空ゾーンのすぐ後ろでは、マイクロバルーンが配量添加され、かつ混合要素によって、ポリマー混合物中に均質に混入された。メルト中のマイクロバルーン濃度は0.7質量パーセントであった。生じたメルト混合物はノズル内に移送された。
【0089】
ノズルを出た後、つまり圧力が低下した後、混入させたマイクロバルーンが膨張し、この圧力低下によって、ポリマー接着剤がせん断なく冷却された。発泡したポリアクリレート感圧接着剤ができ、この感圧接着剤を続いてロールカレンダにより厚さ0.8mmのシート状に成形し、両面がシリコーン被覆された剥離フィルム(50μmポリエステル)で覆い、この間、化学的な架橋反応が進展している。巻き付けられた薄膜は、後にプライマー試験に使用する前に4週間、室温で貯蔵した。この巻き付けられた薄膜が、試験接着テープ1である。
【0090】
試験接着テープ2
三層の試験接着テープ2の真ん中の層を製造するための例示的なポリアクリレート感圧接着剤2Aを次のように製造した。
【0091】
ラジカル重合のために慣用の反応器に、2−エチルヘキシルアクリレート30.0kg、ブチルアクリレート67.0kg、アクリル酸3.0kg、およびアセトン/イソプロパノール(96:4)66.7kgを充填した。撹拌しながら窒素ガスを45分間導通させた後に、反応器を58℃に加熱し、Vazo67 50gをアセトン500g中に溶解させて添加した。続いて外側の加熱浴を70℃に加熱し、この外側温度で一定にして反応を実施した。1時間後に新たにVazo67 50gをアセトン500g中に溶解させて加え、2時間後にアセトン/イソプロパノール混合物(96:4)10kgで希釈した。5.5時間後にビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート150gをアセトン500g中に溶解させて加え、6時間30分後に新たにアセトン/イソプロパノール混合物(96:4)10kgで希釈した。7時間後にさらなるビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート150gをアセトン500g中に溶解させて加え、加熱浴を60℃の温度に調節した。
【0092】
22時間の反応時間の後に、重合を中断し、室温まで冷却した。生成物は固体含有率50.2%を有し、乾燥された。生じたポリアクリレートは、K値が75.2、平均分子量Mw=1370000g/mol、多分散度D(Mw/Mn)=17.13、および静的ガラス転移温度Tg=−38.0℃を有した。
【0093】
このベースポリマーを、供給押出機(ドイツ、TROESTER GmbH & Co KG社の一軸スクリュー搬送押出機)内で溶融させ、供給押出機により、ポリマーメルトとして、加熱可能な管を介してEntex社(ボーフム)の遊星ロール押出機内に搬送した。その後に、配量添加口を介して架橋剤Polypox R16を添加した。メルト中の架橋剤濃度は0.22質量パーセントであった。全ての成分が均質なポリマーメルトへと混合された。
【0094】
メルトポンプおよび加熱可能な管により、ポリマーメルトが二軸スクリュー押出機(Berstorff社)内に移送された。二軸スクリュー押出機では促進剤Epikure925が添加された。メルト中の促進剤濃度は0.14質量パーセントであった。続いてこのポリマー混合物全体は、圧力175mbarの真空ドーム内で、全てのガス含有物を除去された。真空ゾーンのすぐ後ろでは、マイクロバルーンが配量添加され、かつ混合要素によって、ポリマー混合物中に均質に混入された。メルト中のマイクロバルーン濃度は2.0質量パーセントであった。生じたメルト混合物はノズル内に移送された。
【0095】
ノズルを出た後、つまり圧力低下によって、混入させたマイクロバルーンが膨張し、この圧力低下によって、ポリマー接着剤がせん断なく冷却された。発泡したポリアクリレート感圧接着剤2Aができ、この感圧接着剤を続いてロールカレンダにより厚さ0.8mmのシート状に成形し、両面がシリコーン被覆された剥離フィルム(50μmポリエステル)で覆い、この間、化学的な架橋反応が進展している。巻き付けられた薄膜は、さらなる加工(下記参照)の前に1日、室温で貯蔵した。
【0096】
三層の試験接着テープ2の両方の外側の層を製造するための例示的なポリアクリレート感圧接着剤2Bを次のように製造した。
【0097】
ラジカル重合のために慣用の100Lガラス反応器に、アクリル酸4.8kg、ブチルアクリレート11.6kg、2−エチルヘキシルアクリレート23.6kg、およびアセトン/特殊ベンジン60/95(1:1)26.7kgを充填した。撹拌しながら窒素ガスを45分間導通させた後に、反応器を58℃に加熱し、AIBN30gを添加した。続いて外側の加熱浴を75℃に加熱し、この外側温度で一定にして反応を実施した。1時間の反応時間の後に再びAIBN30gを加えた。4時間後および8時間後に、それぞれアセトン/特殊ベンジン60/95(1:1)混合物10.0kgで希釈した。残留開始剤を少なくするため、8時間後および10時間後にそれぞれビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート90gを加えた。24時間の反応時間の後に、反応を中断し、室温まで冷却した。続いてポリアクリレートを架橋剤Uvacure(登録商標)1500 0.2質量パーセントと混合し、アセトンで固体含有率30%に希釈し、その後に、溶液の状態で、両面がシリコーン被覆された剥離フィルム(50μmポリエステル)上にコーティングした。(コーティング速度2.5m/分、乾燥路15m、温度はゾーン1:40℃、ゾーン2:70℃、ゾーン3:95℃、ゾーン4:105℃)。厚さは50μmであった。巻き付けられた薄膜は、後に試験接着テープ2の製造に使用する前に2日間、室温で貯蔵した。
【0098】
ポリアクリレート感圧接着剤2Aの発泡した薄膜の両面に、ポリアクリレート感圧接着剤2Bの薄膜を貼り合わせた。ポリアクリレート感圧接着剤2Bの薄膜をポリアクリレート感圧接着剤2Aの発泡した薄膜に貼り合わせる直前に、ポリアクリレート感圧接着剤2Aの薄膜のそれぞれ貼り合わせるべき表面を、35W分/m
2のコロナドーズ量で空気コロナ前処理した。第2の貼り合わせの前に、発泡したポリアクリレート感圧接着剤2Aから、両面がシリコーン被覆された剥離フィルムを外した。第2の貼り合わせの後に、両方の発泡したポリアクリレート感圧接着剤2Bの、両面がシリコーン被覆された剥離フィルムの一方も外した。ポリアクリレート感圧接着剤2B/ポリアクリレート感圧接着剤2A/ポリアクリレート感圧接着剤2Bからなる三層の複合体を巻き付け、後にプライマー試験に使用する前に4週間、室温で貯蔵した。この巻き付けられた複合体が、試験接着テープ2である。
【0099】
組成および製造法を例示的に述べたこのポリアクリレート感圧接着剤は、DE102010062669(特許文献19)に詳しく記載されている。この公報の開示内容は明確に本発明の開示内容に組み込まれている。
【0100】
本発明によりプライマー中に含有されているポリアクリレート感圧接着剤を製造するために下記の原料を使用した。
【0102】
さらに、以下の溶剤を、本発明によりプライマー中に含有されているポリアクリレート感圧接着剤を製造するために使用した。
【0104】
本発明によるプライマー中の成分として使用するための例示的なポリアクリレート感圧接着剤を次のとおり製造した。
【0105】
プライマー用感圧接着剤1
ラジカル重合のために慣用の100Lガラス反応器に、N−ビニルカプロラクタム12.0kg、ブチルアクリレート28.0kg、およびアセトン/特殊ベンジン60/95(1:1)26.7kgを充填した。撹拌しながら窒素ガスを45分間導通させた後に、反応器を58℃に加熱し、AIBN30gを添加した。続いて外側の加熱浴を75℃に加温し、この外側温度で一定にして反応を実施した。1時間の反応時間の後に、再び、AIBN30gを添加した。4時間および8時間後に、それぞれアセトン/特殊ベンジン60/95(1:1)混合物10.0kgで希釈した。残留開始剤を少なくするために、8時間後および10時間後にそれぞれビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート90gを添加した。24時間の反応時間の後に、反応を中断し、室温まで冷却した。ポリアクリレートを、アセトンで固体含有率34.9質量パーセントに希釈した。こうして得られた溶液がプライマー用感圧接着剤1である。
【0106】
プライマー用感圧接着剤2
ラジカル重合のために慣用の100Lガラス反応器に、N−ビニルカプロラクタム8.0kg、2−エチルヘキシルアクリレート32.0kg、およびアセトン/特殊ベンジン60/95(1:1)26.7kgを充填した。撹拌しながら窒素ガスを45分間導通させた後に、反応器を58℃に加熱し、AIBN30gを添加した。続いて外側の加熱浴を75℃に加温し、この外側温度で一定にして反応を実施した。1時間の反応時間の後に、再び、AIBN30gを添加した。4時間および8時間後に、それぞれアセトン/特殊ベンジン60/95(1:1)混合物10.0kgで希釈した。残留開始剤を少なくするために、8時間後および10時間後にそれぞれビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート90gを添加した。24時間の反応時間の後に、反応を中断し、室温まで冷却した。ポリアクリレートを、アセトンで固体含有率34.9質量パーセントに希釈した。こうして得られた溶液がプライマー用感圧接着剤2である。
【0107】
プライマー用感圧接着剤3
ラジカル重合のために慣用の100Lガラス反応器に、N−ビニル−2−ピロリドン8.0kg、ブチルアクリレート32kg、およびアセトン/特殊ベンジン60/95(1:1)26.7kgを充填した。撹拌しながら窒素ガスを45分間導通させた後に、反応器を58℃に加熱し、AIBN30gを添加した。続いて外側の加熱浴を75℃に加温し、この外側温度で一定にして反応を実施した。1時間の反応時間の後に、再び、AIBN30gを添加した。4時間および8時間後に、それぞれアセトン/特殊ベンジン60/95(1:1)混合物10.0kgで希釈した。残留開始剤を少なくするために、8時間後および10時間後にそれぞれビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート90gを添加した。24時間の反応時間の後に、反応を中断し、室温まで冷却した。ポリアクリレートを、アセトンで固体含有率34.9質量パーセントに希釈した。こうして得られた溶液がプライマー用感圧接着剤3である。
【0108】
比較例用のプライマー用感圧接着剤4
ラジカル重合のために慣用の100Lガラス反応器に、ブチルアクリレート15.6kg、2−エチルヘキシルアクリレート24.4kg、およびアセトン/特殊ベンジン60/95(1:1)26.7kgを充填した。撹拌しながら窒素ガスを45分間導通させた後に、反応器を58℃に加熱し、AIBN30gを添加した。続いて外側の加熱浴を75℃に加温し、この外側温度で一定にして反応を実施した。1時間の反応時間の後に、再び、AIBN30gを添加した。4時間および8時間後に、それぞれアセトン/特殊ベンジン60/95(1:1)混合物10.0kgで希釈した。残留開始剤を少なくするために、8時間後および10時間後にそれぞれビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート90gを添加した。24時間の反応時間の後に、反応を中断し、室温まで冷却した。ポリアクリレートを、アセトンで固体含有率34.9質量パーセントに希釈した。こうして得られた溶液がプライマー用感圧接着剤4である。
【0109】
プライマー用感圧接着剤1〜4を、DMA測定により簡潔に特徴づけた。プライマー用感圧接着剤1〜4のG’曲線およびG”曲線は、23℃で変形周波数が10
0〜10
1rad/secの範囲内では、常に少なくとも部分的に10
3〜10
7Paの範囲内にあった。
【0110】
本発明によるプライマーを製造するために、その製造および組成について上で説明したプライマー用感圧接着剤および下記の原料を使用した。
【0112】
さらに、プライマー用感圧接着剤に含有される溶剤に加えて、本発明によるプライマーを製造するために下記の溶剤を使用した。
【0114】
例えば、以下の染料または着色顔料をプライマーに混入した。
【0118】
プライマーを下記のとおり、試験接着テープを用いて試験したところ、下記の結果が得られた。
【0120】
ガラス上のこのプライマーの5μm厚層は、不透明であった。300nm〜650nmの波長範囲での透過率は0%であった。
【0123】
プライマーを下記のとおり、試験接着テープを用いて試験したところ、下記の結果が得られた。
【0125】
ガラス上のこのプライマーの10μm厚層は、不透明であった。300nm〜650nmの波長範囲での透過率は0%であった。
【0128】
プライマーを下記のとおり、試験接着テープを用いて試験したところ、下記の結果が得られた。
【0130】
ガラス上のこのプライマーの5μm厚層は、不透明であった。300nm〜650nmの波長範囲での透過率は0%であった。
【0133】
プライマーを下記のとおり、試験接着テープを用いて試験したところ、下記の結果が得られた。
【0135】
ガラス上のこのプライマーの8μm厚層は、不透明であった。300nm〜650nmの波長範囲での透過率は0%であった。
【0138】
プライマーを下記のとおり、試験接着テープを用いて試験したところ、下記の結果が得られた。
【0140】
ガラス上のこのプライマーの9μm厚層は、不透明であった。300nm〜650nmの波長範囲での透過率は0%であった。
【0143】
プライマーを下記のとおり、試験接着テープを用いて試験したところ、下記の結果が得られた。
【0145】
ガラス上のこのプライマーの10μm厚層は、不透明であった。300nm〜650nmの波長範囲での透過率は0%であった。
【0148】
プライマーを下記のとおり、試験接着テープを用いて試験したところ、下記の結果が得られた。
【0150】
ガラス上のこのプライマーの10μm厚層は、不透明であった。300nm〜650nmの波長範囲での透過率は0%であった。
本願は、特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
1種または複数の溶剤中に溶解または分散している混合物を含むプライマーであって、混合物が、
ビニルカプロラクタムおよび/またはビニルピロリドン、ならびに以下のモノマー:
a)アルコールのアルキル基中に2〜10個の炭素原子を有する直鎖の第一級アルコールのアクリル酸エステル、
b)アルコールのアルキル基中に4〜12個の炭素原子を有する分枝状で非環状のアルコールのアクリル酸エステル、
c)アクリル酸
のうちの1種または複数を含んでなる、共重合、好ましくはラジカル共重合によって得られるコポリマーと、
1種または複数の有機官能性シランと、
金属錯体またはスピネル型の金属酸化物をベースとする染料または着色顔料とを含んでなるプライマー。
2.
コポリマーが感圧接着剤であることを特徴とする、上記1に記載のプライマー。
3.
コポリマーが追加的に、モノマーの合計に対して10質量パーセントまでのさらなる共重合性モノマーを含有することを特徴とする、上記1または2に記載のプライマー。
4.
コポリマーが、コポリマーのモノマー全ての合計に対して最大50質量パーセント、好ましくは最大40質量パーセントのビニルカプロラクタムおよび/またはビニルピロリドンを含有することを特徴とする、上記1〜3のいずれか一つに記載のプライマー。
5.
コポリマーが、コポリマーのモノマー全ての合計に対して少なくとも15質量パーセント、好ましくは少なくとも20質量パーセントのビニルカプロラクタムおよび/またはビニルピロリドンを含有することを特徴とする、上記1〜4のいずれか一つに記載のプライマー。
6.
コポリマーが、コポリマーのモノマー全ての合計に対して最大20質量パーセント、好ましくは最大10質量パーセント、特に好ましくは0質量パーセントのアクリル酸を含有することを特徴とする、上記1〜5のいずれか一つに記載のプライマー。
7.
コポリマーを構成しているモノマーのうちの1種がブチルアクリレートであることを特徴とする、上記1〜6のいずれか一つに記載のプライマー。
8.
有機官能性シランが、グリシドキシ官能性またはアミノ官能性またはビニル官能性であることを特徴とする、上記1〜7のいずれか一つに記載のプライマー。
9.
金属錯体または金属酸化物をベースとする染料または着色顔料が、黒色、好ましくはCAS番号117527−94−3を有するクロム錯体染料であることを特徴とする、上記1〜8のいずれか一つに記載のプライマー。
10.
金属錯体または金属酸化物をベースとする染料または着色顔料が、黒色、好ましくはCAS番号68186−91−4を有する亜クロム酸銅黒色スピネルであることを特徴とする、上記1〜9のいずれか一つに記載のプライマー。
11.
溶剤がイソプロパノールまたは他のアルコールであるか、またはイソプロパノールまたは他のアルコールを含有することを特徴とする、上記1〜10のいずれか一つに記載のプライマー。
12.
1種または複数の溶剤中に溶解または分散している混合物のコポリマーの濃度が、1種または複数の有機官能性シランの濃度よりも高いことを特徴とする、上記1〜11のいずれか一つに記載のプライマー。
13.
1種または複数の溶剤中に溶解または分散している混合物のコポリマーの濃度が、1.0質量パーセント以上30.0質量パーセント以下、好ましくは2.0質量パーセント以上20.0質量パーセント以下、特に好ましくは3.0質量パーセント以上10.0質量パーセント以下であることを特徴とする、上記1〜12のいずれか一つに記載のプライマー。
14.
1種または複数の溶剤中に溶解または分散している混合物中における染料または着色顔料の濃度が、1種または複数の有機官能性シランの濃度よりも高い、好ましくはコポリマーの濃度よりも高い、特に好ましくは、1種または複数の有機官能性シランおよびコポリマーを合わせた濃度よりも高いことを特徴とする、上記1〜13のいずれか一つに記載のプライマー。
15.
付着促進層を製造するための、上記1〜14のいずれか一つに記載のプライマーの使用。