【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は下記実施例の内容に限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]
下記組成の電気ニッケルめっき液を用いて下記条件で厚み0.1mmのSUS板(縦30mm,横30mm)に電気めっきを行うことにより、厚み約10μmの、フッ素樹脂粒子を分散させた分散ニッケルめっき皮膜を得た。
【0032】
(電気ニッケルめっき液組成)
スルファミンニッケル 350g/L
塩化ニッケル 45g/L
ホウ酸 40g/L
疎水性基としてパーフルオロアルケニル基を含み、親水性基として4級アンモニウムの臭素塩を含むカチオン系のフッ素系界面活性剤((株)ネオス製のフタージェント320)
0.5g/L
PTFE粒子(ダイキン工業(株)製のルブロンL-5、平均粒子径5μm)
60g/L
【0033】
(条件)
pH 4.0
陰極電流密度 5A/dm
2
陽極 ニッケル板
温度 45℃
撹拌 機械撹拌
めっき時間 10分
【0034】
そして、得られた分散ニッケルめっき皮膜の十点平均高さRz及び中心線平均粗さRaを走査型レーザー顕微鏡(OLYMPUS LEXT3100)を用いて観察倍率500倍で測定した。その結果十点平均高さRzは2.127であり、中心線平均粗さRaは0.1929であった。測定で得られた走査型レーザー顕微鏡写真の鳥瞰図を
図2に示す。また、
図3に、得られた分散ニッケルめっき皮膜を走査型電子顕微鏡(JSM-7001F(日本電子(株)製)を用いて観察倍率7000倍で撮影したときの画像を示す。また、得られた分散ニッケルめっき皮膜中のフッ素樹脂粒子の共析率は23体積%であった。
【0035】
[比較例1]
下記組成の無電解ニッケルめっき液を用いて下記条件で厚み0.1mmのSUS板(縦30mm,横30mm)に無電解めっきを行うことにより、厚み約10μmの、フッ素樹脂粒子を分散させた分散ニッケルめっき皮膜を得た。
【0036】
(無電解ニッケルめっき液組成)
硫酸ニッケル 20g/L
次亜リン酸ナトリウム 24g/L
乳酸 27g/L
プロピオン酸 2g/L
PTFE粒子(ダイキン工業(株)製ルブロンL-5、平均粒子径5μm)
5g/L
【0037】
(条件)
pH 4.5
温度 90℃
撹拌 機械撹拌
めっき時間 60分
【0038】
そして、得られたフッ素分散ニッケルめっき皮膜の平滑性を実施例1と同様にして評価した。その結果、十点平均高さRzは3.4451であり、中心線平均粗さRaは0.4354あった。また、測定で得られた顕微鏡写真の鳥瞰図を
図4に示す。
【0039】
[比較例2]
実施例1において用いた、疎水性基としてパーフルオロアルケニル基を含み、親水性基として4級アンモニウムの臭素塩を含むフッ素系界面活性剤((株)ネオス製のフタージェント320)の代わりに、疎水性基としてパーフルオロアルケニル基を含み、親水性基としてスルホン酸ナトリウム塩を含むアニオン系のフッ素系界面活性剤((株)ネオス製のフタージェント100)を用いた下記組成の電気ニッケルめっき液を用いて下記条件で厚み0.1mmのSUS板(縦30mm,横30mm)に電気めっきを行うことにより、厚み約10μmの、フッ素樹脂粒子を分散させた分散ニッケルめっき皮膜を得た。
【0040】
(電気ニッケルめっき液組成)
スルファミンニッケル 350g/L
塩化ニッケル 45g/L
ホウ酸 40g/L
疎水性基としてパーフルオロアルケニル基を含み、親水性基としてスルホン酸ナトリウム塩を含むアニオン系のフッ素系界面活性剤((株)ネオス製のフタージェント100)
0.5g/L
PTFE粒子(ダイキン工業(株)製のルブロンL-5、平均粒子径5μm)
60g/L
【0041】
(条件)
pH 4.0
陰極電流密度 5A/dm
2
陽極 ニッケル板
温度 45℃
撹拌 機械撹拌
めっき時間 10分
【0042】
図5に、得られた分散ニッケルめっき皮膜の走査型レーザー顕微鏡写真の鳥瞰図を、
図6に走査型電子顕微鏡を用いて観察倍率7000倍で撮影したときの画像を示す。また、得られた分散ニッケルめっき皮膜中のフッ素樹脂粒子の共析率は0体積%であった。
【0043】
[比較例3]
実施例1において用いた、疎水性基としてパーフルオロアルケニル基を含み、親水性基として4級アンモニウムの臭素塩を含むフッ素系界面活性剤((株)ネオス製のフタージェント320)の代わりに、疎水性基としてパーフルオロアルケニル基を含み、親水性基としてトリメチルアンモニウム塩を含むカチオン系のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル(株)製のサーフロン221)を用いた下記組成の電気ニッケルめっき液を用いて下記条件で厚み0.1mmのSUS板(縦30mm,横30mm)に電気めっきを行うことにより、厚み約10μmの、フッ素樹脂粒子を分散させた分散ニッケルめっき皮膜を得た。
【0044】
(電気ニッケルめっき液組成)
スルファミンニッケル 350g/L
塩化ニッケル 45g/L
ホウ酸 40g/L
疎水性基としてパーフルオロアルケニル基を含み、トリメチルアンモニウム塩を含むカチオン系のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル(株)製のサーフロン221)
0.5g/L
PTFE粒子(ダイキン工業(株)製のルブロンL-5、平均粒子径5μm)
60g/L
【0045】
(条件)
pH 4.0
陰極電流密度 5A/dm
2
陽極 ニッケル板
温度 45℃
撹拌 機械撹拌
めっき時間 10分
【0046】
図7に、得られた分散ニッケルめっき皮膜の走査型レーザー顕微鏡写真の鳥瞰図を、
図8に走査型電子顕微鏡を用いて観察倍率7000倍で撮影したときの画像を示す。また、得られた分散ニッケルめっき皮膜中のフッ素樹脂粒子の共析率は7体積%であった。
【0047】
[比較例4]
実施例1において用いた、疎水性基としてパーフルオロアルケニル基を含み、親水性基として4級アンモニウムの臭素塩を含むフッ素系界面活性剤((株)ネオス製のフタージェント320)の代わりに、ベタイン型の両性界面活性剤((株)ネオス製のフタージェント410)を用いた下記組成の電気ニッケルめっき液を用いて下記条件で厚み0.1mmのSUS板(縦30mm,横30mm)に電気めっきを行うことにより、厚み約10μmの、フッ素樹脂粒子を分散させた分散ニッケルめっき皮膜を得た。
【0048】
(電気ニッケルめっき液組成)
スルファミンニッケル 350g/L
塩化ニッケル 45g/L
ホウ酸 40g/L
ベタイン型の両性界面活性剤((株)ネオス製のフタージェント410)
0.5g/L(有効成分量)
PTFE粒子(ダイキン工業(株)製のルブロンL-5、平均粒子径5μm)
60g/L
【0049】
(条件)
pH 4.0
陰極電流密度 5A/dm
2
陽極 ニッケル板
温度 45℃
撹拌 機械撹拌
めっき時間 10分
【0050】
図9に得られた分散ニッケルめっき皮膜の走査型レーザー顕微鏡写真の鳥瞰図を、
図10に走査型電子顕微鏡を用いて観察倍率7000倍で撮影したときの画像を示す。また、得られた分散ニッケルめっき皮膜中のフッ素樹脂粒子の共析率は0体積%であった。
【0051】
本発明に係る実施例1の、疎水性基としてパーフルオロアルケニル基,親水性基として4級アンモニウムの臭素塩を含むフッ素系界面活性剤を添加した電気ニッケルめっき液を用いて得られたフッ素樹脂粒子を分散させたニッケルめっき皮膜は、
図2に示すように極めて平滑性が高く、非常になめらかな表面を有する皮膜であった。実施例1の分散ニッケルめっき皮膜は、
図3のSEM写真を観察しても極めて平滑性が高い皮膜であることがわかる。また、皮膜中のフッ素樹脂粒子の共析率は23体積%と顕著に高かった。一方、例えば、疎水性基としてパーフルオロアルケニル基を含み、親水性基としてスルホン酸ナトリウム塩を含むアニオン系のフッ素系界面活性剤((株)ネオス製のフタージェント100)を添加した電気ニッケルめっき液を用いて得られた比較例2のニッケルめっき皮膜の場合、フッ素樹脂粒子の共析率は0体積%であるにもかかわらず、
図5及び
図6に示すように平滑性が著しく低い表面を有する皮膜であった。また、例えば、疎水性基としてパーフルオロアルケニル基を含み、親水性基としてトリメチルアンモニウム塩を含むカチオン系のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル(株)製のサーフロン221)を添加した電気ニッケルめっき液を用いて得られたフッ素樹脂粒子を分散させた比較例3のニッケルめっき皮膜の場合、共析率は7体積%であるにもかかわらず、
図7及び
図8に示すように実施例1よりも平滑性が低い表面を有する皮膜であった。また、例えば、ベタイン型の両性界面活性剤((株)ネオス製のフタージェント410)を添加した電気ニッケルめっき液を用いて得られた比較例4のニッケルめっき皮膜の場合、フッ素樹脂粒子の共析率は0体積%であるにもかかわらず、
図9及び
図10に示すように平滑性が低い表面を有する皮膜であった。